(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299372
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20180319BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20180319BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
H01L23/30 B
H01L21/56 E
H01L21/56 R
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-86540(P2014-86540)
(22)【出願日】2014年4月18日
(65)【公開番号】特開2015-207632(P2015-207632A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】仲俣 祐子
(72)【発明者】
【氏名】市村 裕司
【審査官】
木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/172862(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0006991(US,A1)
【文献】
特開2011−014863(JP,A)
【文献】
特開2002−279384(JP,A)
【文献】
特開平03−124051(JP,A)
【文献】
特開2013−163709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/28−23/31
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AMB基板と、
前記AMB基板に電気的に接続された半導体チップと、
前記半導体チップと電気的に接続された外部端子と、
前記AMB基板、前記半導体チップ、前記外部端子の一部を封止し、着色剤を含有しない樹脂であって、ガラス転移温度が210℃以上である第1樹脂組成物と、
前記第1樹脂組成物の表面を被覆し、前記第1樹脂組成物より高いガラス転移温度を有し、着色剤を含有する第2樹脂組成物と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第2樹脂組成物のガラス転移温度が235℃以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記第2樹脂組成物の厚さが、100μm以上、500μm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
AMB基板、前記AMB基板に電気的に接続された半導体チップ、前記半導体チップと電気的に接続された外部端子の一部を、着色剤を含有しない樹脂組成物であってガラス転移温度が210℃以上である第1樹脂組成物で封止する第1工程と、
前記第1工程後、前記第1樹脂組成物より高いガラス転移温度を有し、着色剤を含有する第2樹脂組成物の樹脂粉体で前記第1樹脂組成物の表面を流動浸漬法により被覆する第2工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置の製造方法において、
前記流動浸漬法に用いられる前記樹脂粉体の粒径分布は、直径40μmより大きい前記樹脂粉体を25重量%以下、かつ、直径30μmより小さい前記樹脂粉体を25重量%以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1工程の第1樹脂組成物の封止温度は、前記第2工程の第2樹脂組成物の被覆温度より高いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
前記樹脂粉体が、熱硬化性樹脂を主成分とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1樹脂組成物に用いられる樹脂がエポキシ樹脂であり、
前記第2樹脂組成物に用いられる前記熱硬化性樹脂が、マレイミド変性エポキシ樹脂、マレイミド変性フェノール樹脂もしくはマレイミド樹脂のいずれか一つであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記請求項4または5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1工程と前記第2工程との間に、前記外部端子の前記第1樹脂組成物で被覆されなかった部分の少なくとも一部を被覆材で覆う第3工程と、
前記第2工程の後に前記被覆材を剥離する第4工程と、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パワー半導体モジュールなどの半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の半導体装置200の要部断面図である。半導体装置200は、樹脂封止構造の半導体装置である。この半導体装置200は、AMB(Active Metal Brazing)基板1と、AMB基板1のおもて側の厚銅板3上にはんだ10で電気的に接続した半導体チップ11を備える。さらに、半導体チップ11の上方には、絶縁板6と、絶縁板6のおもて側に配置された銅板7と、絶縁板6の裏側に配置された銅板8と、を備えた絶縁回路基板5が配置されている。絶縁回路基板5の銅板7、8は、銅ピン9とはんだ12を介して半導体チップ11と電気的に接続されている。そして、外部端子13が、厚銅板3上にはんだ14で電気的に接続されている。AMB基板1裏面の厚銅板4の下面と外部端子13の一部を除いて、AMB基板1と絶縁回路基板5と外部端子13と銅ピン9と半導体素子11と各はんだ10,12,14は、樹脂組成物20で封止されている。AMB基板1は、セラミック基板52のおもて側、裏側に厚銅板3,4をAMB法で接合した放熱用の絶縁基板であり、おもて側の厚銅板3には回路配線となるパターンが形成されている。絶縁回路基板5はポリイミドなどの絶縁板6のおもて側と裏側に固着した銅板7,8と、裏側の銅板8に固着した銅ピン9で構成され、銅ピン9がはんだ12で半導体チップ11に固着されている。前記の樹脂組成物20により、半導体チップ11、AMB基板1、絶縁回路基板5および外部端子13の相互間の絶縁性が確保されている。
半導体装置200は図示しない冷却体に取り付けられ放熱される。この場合、裏側の厚銅板4と冷却体との隙間を埋めて伝熱性を確保するために、一般にシリコーン系の放熱グリスを塗布している。また、放熱グリスの代わりに熱伝導シートを用いることもある。
上記のように、従来の半導体装置200は、樹脂組成物20が用いられているが、製品に特長を出すため樹脂組成物20の色をさまざまに変える要望がある。さらに、樹脂組成物20に求められる特性としては、家電製品などから電力関連機器などへ大容量化が進むにつれて、耐熱性の向上が求められている。
【0003】
また、特許文献1では、半導体素子が金属リードフレームのインナーリード又は有機回路基板の回路とワイヤーで接続された半導体装置において、ワイヤーの周囲部を液状樹脂組成物の硬化物(第1の樹脂)で封止し、更にその上から固形の樹脂組成物の硬化物(第2の樹脂)で封止することで、導電性異物に起因する電気的短絡不良を防止することが記載されている。また、液状樹脂組成物と固形の樹脂組成物のそれぞれのガラス転移温度Tgは、100℃と130℃であることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、基板と、前記基板の少なくとも一方側に設けられる半導体素子と、前記基板、半導体素子、前記半導体素子との間を充填する第1の樹脂組成物を硬化させて得られる第1の樹脂と、前記基板および前記第1の樹脂を覆い、前記第1の樹脂組成物を硬化した後に、第2の樹脂組成物を硬化させて得られる第2の樹脂を有している半導体装置が記載されている。そして、第1の樹脂と第2の樹脂との接着強度が、室温で18MPa以上であることが記載されている。
【0005】
また、特許文献3では、樹脂封止型半導体装置の樹脂表面を導電性被膜で被覆することで、樹脂封止型半導体装置の帯電防止した半導体装置が記載されている。また、半導体を絶縁体モールド(第1の樹脂)で封止後、着色された導電性被膜をコーティングすると色で種類を判断できることが記載されている。
【0006】
また、特許文献4では、半導体素子、リード、さらにこれらの両者を接続するボンディングワイヤを含む本体構成部を一体的に封止する第1の封止樹脂体と、この第1の封止樹脂体の外周部の少なくとも一部を被覆するように形成された第2の封止樹脂体とを具備し、前記第1の封止樹脂体の線膨張率よりも、前記第2の封止樹脂体の線膨張率が小さくされるように、前記第1のおよび第2の封止樹脂体が選定されるようにした半導体装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−235669号公報
【特許文献2】特再公表2010−29726号公報
【特許文献3】特開平5−243425号公報
【特許文献4】特開平4−92459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の半導体装置200で着色された樹脂組成物20の色を変更するには、例えば、顔料を添加した樹脂を用いて、高価なトランスファー法により樹脂組成物20を成型する方法が行われる。しかし、樹脂への顔料添加により、樹脂の不純物濃度が上がり腐食の可能性が高まり、樹脂組成物20の耐湿性が低下するという問題が発生する。また、前記したように、現状の樹脂組成物20の耐熱性は必ずしも要望を十分に満足していない。
耐湿性および耐熱性が低い樹脂組成物20で被覆された半導体装置200が、高温環境下に晒されると、樹脂組成物20に割れ、カケまたは剥離などが生じて絶縁破壊を起こす可能性がある。
【0009】
また、特許文献1では、第1樹脂および第2樹脂のガラス転移温度Tgが100℃、130℃と低いために、耐熱性が低いものと推測される。
【0010】
また、特許文献2では、第1の樹脂と第2の樹脂の接着強度を高めることは記載されているが、樹脂のガラス転移温度Tgが低く耐熱性が低いものと推測される。
【0011】
また、特許文献3では、第2の樹脂は導電性であり、絶縁性が要求される樹脂には用いられない。
【0012】
前記の特許文献1〜4では、樹脂組成物の表面に色をつけるために、樹脂組成物よりもガラス転移温度Tgが高く絶縁性の樹脂粉体と、着色剤とを含んだ混合物で樹脂組成物の表面に絶縁被膜にさらに形成することについては記載されていない。
【0013】
この発明の目的は、前記の課題を解決して、安価な設備で樹脂組成物20の色の変更ができて、耐熱性の向上を図ることができる半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の態様は、AMB基板と、前記AMB基板に電気的に接続された半導体チップと、前記半導体チップと電気的に接続された外部端子と、前記AMB基板、前記半導体チップ、前記外部端子の一部を封止し、着色剤を含有しない樹脂であって、ガラス転移温度が210℃以上である第1樹脂組成物と、前記第1樹脂組成物の表面を被覆し、前記第1樹脂組成物より高いガラス転移温度を有し、着色剤を含有する第2樹脂組成物と、を備える。着色剤を含まない第1樹脂組成物で絶縁基板と半導体チップと外部端子を封止することで、第1樹脂組成物の内部に封止された部品が腐食が防止されることを防止でき、第1樹脂組成物より高いガラス転移温度を有し着色剤を含有する第2樹脂組成物で第1樹脂組成物を被覆することで、半導体装置の表面の色を容易に変更でき、半導体装置の耐湿性と耐熱性を高めることができる。
なお、ガラス転移温度の測定は、TMA(Thermal Mechanical Analysis)法にて測定した。第1樹脂組成物のガラス転移温度が210℃未満であると耐熱性が低く、例えば、半導体素子の最高動作温度が175℃や200℃である場合に対応できないという問題がある。例えば、第1樹脂組成物のガラス転移温度の上限は、230℃以下であることが望ましい。例えば、第1樹脂組成物としてエポキシ樹脂を用いる場合、第1樹脂組成物のガラス転移温度が230℃を超えるものを製造することが困難である。エポキシ樹脂は、230℃を超えるとエポキシ樹脂に添加されている難燃剤が昇華したり、エポキシ樹脂のC−O結合が切断されて樹脂が劣化し、樹脂が割れたり、欠けたりする問題が生じる可能性がある。
【0015】
また、本発明の第2の態様は、前記第1の態様において、前記第2樹脂組成物のガラス転移温度が、235℃以上である。第2樹脂組成物のガラス転移温度が第1樹脂組成物のガラス転移温度より高いので、前記第2樹脂組成物で覆われていない半導体装置よりも、耐熱性を向上できる。第2樹脂組成物のガラス転移温度が235℃未満であると上記と同様に耐熱性が不十分という問題がある。第2樹脂組成物のガラス転移温度は、350℃以下が望ましい。
【0016】
また、本発明の第3の態様は、前記第1または第2の態様において、前記第2樹脂組成物の厚さを、100μm以上、500μm以下にすることである。そうすれば、第1樹脂組成物を第2樹脂組成物で良好に被覆でき、また第2樹脂組成物の厚みムラの少ない被覆ができる。前記第2樹脂組成物の厚さが、100μm未満では、下地の第1樹脂組成物15が露出する個所が発生し易い。一方、500μm超では、厚さにムラができ易く商品価値が低下する。そのため、さらに好ましくは、200μm以上300μm以下程度がよい。また、本発明の第4の態様の半導体装置の製造方法は、AMB基板、前記AMB基板に電気的に接続された半導体チップ、前記半導体チップと電気的に接続された外部端子の一部を、着色剤を含有しない樹脂組成物であってガラス転移温度が210℃以上である第1樹脂組成物で封止する第1工程と、前記第1工程後、前記第1樹脂組成物より高いガラス転移温度を有し、着色剤を含有する第2樹脂組成物の樹脂粉体で前記第1樹脂組成物の表面を流動浸漬法により被覆する第2工程と、を含む。第2樹脂組成物が厚い場合は、第2樹脂組成物を成形するために金型を作成する必要があったが、本発明の方法の構成によれば、第2樹脂組成物を流動浸漬法で作成していることから、第2樹脂組成物を成形するための金型を作成する必要が無く、製造コストを低減できる。そして、高耐熱性であるため高価である第2樹脂組成物を樹脂粉体とし、第1樹脂組成物の表面を薄く被覆させているため、第2樹脂組成物の使用量を低減できるので、製造コストを低減できる。
【0017】
また、本発明の第5の態様は、前記第4の態様において、前記流動浸漬法に用いられる前記樹脂粉体の粒径分布は、直径40μmより大きい前記樹脂粉体を25重量%以下、かつ、直径30μmより小さい前記樹脂粉体を25重量%以下である。この構成によれば、第2樹脂組成物による樹脂被膜を良好に形成できる。
【0018】
また、本発明の第6の態様は、前記第4または第5の態様において、前記第1工程の第1樹脂組成物の封止温度は、前記第2工程の第2樹脂組成物の被覆温度より高い。この構成によれば、半導体装置の内部は、さまざまな部品があるため樹脂の流動性が高いことが望ましいため、より高温にされており、半導体装置の外側は、高い流動性を要しない粉体樹脂を使った流動浸漬法であるため、内部に使用される第1樹脂組成物より低い温度で第2樹脂組成物を形成できる。第2樹脂組成物よる樹脂被膜を形成する温度が低いので、製造コストを低減できる。
【0019】
また、本発明の第7の態様は、前記第6の態様において、前記樹脂粉体が、熱硬化性樹脂を主成分としているとよい。
【0020】
また、本発明の第8の態様は、前記第7の態様において、前記第1樹脂組成物に用いられる樹脂がエポキシ樹脂であり、前記第2樹脂組成物に用いられる前記熱硬化性樹脂が、マレイミド変性エポキシ樹脂、マレイミド変性フェノール樹脂もしくはマレイミド樹脂のいずれか一つであるとよい。
【0021】
また、本発明の第9の態様は、前記第4または第5の態様において、前記第1工程と前記第2
工程との間に、前記外部端子の前記第1樹脂組成物で被覆されなかった部分の少なくとも一部を被覆材で覆う第3工程と、前記第2工程の後に前記被覆材を剥離する第4工程と、を備える。このような方法によれば、外部端子の第1樹脂組成物で被覆されなかった部分が被覆材で覆われているので、第2工程で第2樹脂組成物が付着しても第4工程で被覆材を剥離させるので、外部端子の露出表面を良好に形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、簡便な設備で半導体装置の樹脂の外観色を変更でき、耐熱性の向上を図ることができ、製造コストを低減できる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る一実施例の半導体装置の要部断面図である。
【
図2】
図1の半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【
図3】比較例1または2の半導体装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の半導体装置100は、AMB(Active Metal Brazing)基板1と、前記AMB基板1に電気的に接続された半導体チップ11と、前記半導体チップ11と電気的に接続された外部端子13と、前記AMB基板1、前記半導体チップ11、前記外部端子13の一部を封止し、着色剤を含有しない樹脂であって、ガラス転移温度が210℃以上である第1樹脂組成物15と、前記第1樹脂組成物15の表面を被覆し、前記第1樹脂組成物15より高いガラス転移温度を有し、着色剤を含有する第2樹脂組成物16と、を備えている。
実施の形態を以下の実施例で説明する。尚、下記の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。
(実施例)
図1は、本発明に係る一実施例の半導体装置100の要部断面図である。半導体装置100は、樹脂封止構造を有している。従来のパワー半導体モジュール500との違いは、顔料などの着色剤を含有しない未着色の第1樹脂組成物15で絶縁基板6や半導体チップ11をモールド成型し、さらに成形された第1樹脂組成物15の表面を、着色剤を含有する第2樹脂組成物16で被覆した点である。第1樹脂組成物15の色は、ナチュラル樹脂の樹脂自身の色であり、例えばベージュ色をしている。第2樹脂組成物16で被覆される前の半導体装置100を予め製作しておいて、必要な時に、作成途中の半導体装置100を着色された第2樹脂組成物16で被覆すれば、その都度毎に第1樹脂組成物15自体に色付けするよりも容易にしかも安価に色を付けることができる。第1樹脂組成物15および第2樹脂組成物16には、無機充填材や、硬化剤や、架橋剤などの内、少なくとも1種類以上を含有していてもよい。
【0025】
半導体装置100は、AMB基板1と、絶縁回路基板5と、銅ピン9と、半導体チップ11と、はんだ10、12、14と、外部端子13と、第1樹脂組成物15と、第2樹脂組成物16と、を備えている。
AMB基板1は、セラミック板2と、セラミック板2の表側に厚銅板3と、セラミック板2の裏側に厚銅板4とを備えている。厚銅板3には回路配線パターンが形成されている。絶縁回路基板5は、絶縁板6と、絶縁板6の表側にある銅板7と、絶縁板6の裏側にある銅板8とを備えている。銅板7、8には、回路配線パターンが形成されている。絶縁回路基板5の銅板7,8には半導体チップ11の主電流を流すので、絶縁回路基板5の銅板7,8の厚さは主電流の容量に応じた厚さを備えている。
半導体チップ11の下面は、厚銅板3の上にはんだ10を介して電気的に接続されている。半導体チップ11の上面は、はんだ12で銅ピン9と電気的に接続されている。銅ピン9は、絶縁回路基板5の銅板7、銅板8と電気的に接続されている。
外部端子13は、厚銅板3の上に電気的に接続されており、厚銅板3とはんだ10を介して半導体チップ11と電気的に接続されている。
【0026】
第1樹脂組成物15は、絶縁回路基板5と、銅ピン9と、半導体チップ11と、はんだ10、12、14と、外部端子13とを封止している。ただし、外部端子13の上部と、厚銅板4の下面は、第1樹脂組成物15から露出している。
第2樹脂組成物16は、外部端子13の上部と、厚銅板4の下面を除いて、第1樹脂組成物の周囲を封止している。第2樹脂組成物16に添加する着色剤を変えることで、半導体装置100の表面の色を自由に変えることができる。
半導体装置100は、第1樹脂組成物15によって、内部に配置された半導体チップ11、AMB基板1、絶縁回路基板5および外部端子13などの相互間の絶縁性が確保されている。
【0027】
半導体装置100の放熱は、厚銅板4の下面に図示しない冷却体を取り付けて行われる。またこの場合に、厚銅板4の下面と冷却体の間に、シリコーン系の放熱グリスなどのサーマルコンパウンドを塗布し、伝熱性を向上させている。また、放熱グリスの代わりに熱伝導シートを用いることもある。
次に、本発明の半導体装置の製造方法の一実施例を説明する。
図2は、半導体装置100aの外表面に第2樹脂組成物16を形成する方法を示した図である。
図2(a)〜
図2(c)は、工程順に示した要部工程図である。
本発明の半導体装置の製造方法は、AMB基板、前記AMB基板に電気的に接続された半導体チップ、前記半導体チップと電気的に接続された外部端子の一部を、着色剤を含有しない樹脂組成物であってガラス転移温度が210℃以上である第1樹脂組成物で封止する第1工程S1と、前記第1工程後、前記第1樹脂組成物より高いガラス転移温度を有し、着色剤を含有する第2樹脂組成物の樹脂粉体で前記第1樹脂組成物の表面を流動浸漬法により被覆する第2工程S2と、を含むことを特徴とする。
より具体的には、まず、
図2(a)の半導体装置100aのように、AMB基板1と、絶縁回路基板5と、銅ピン9と、はんだ10、12、14と、半導体チップ11と、外部端子13と、を備えた内部構造体が組み立てられ、この内部構造体がリフロー炉を通されてはんだ付けした。
【0028】
次に、第1工程S1では、
図2(a)の半導体装置100aのように、顔料などの着色剤を配合しない樹脂(ガラス転移温度Tg=210℃)である第1樹脂組成物15で、例えば180℃でモールド成型して内部構造体を樹脂封止した。この段階で未着色の第1樹脂組成物15を有する半導体装置100aが出来上がる。
次に、
図2(a)に示したように、外部端子13の一端に被覆材24を形成し、厚銅板4の下面に被覆材27を形成した。そして、恒温槽21に入れて160℃で予熱をした。
次に、第2工程S2では、
図2(b)に示すように、150℃の流動槽22内に、着色剤が配合された樹脂粉体23(ガラス転移温度Tg=235℃)を入れ、空気で樹脂粉体23を流動化させ、その中に未着色の半導体装置100aを30分浸漬させた。このとき、第1樹脂組成物15から露出した外部端子や、厚銅板4の底面、および第1樹脂組成物15の裏面は、被覆材24,27で被覆されているので樹脂粉体23が直接付着しないようにした。
【0029】
以下に、樹脂粉体23によって第1樹脂組成物15に樹脂被膜16を被覆する方法について、より詳しく説明する。流動浸漬法とは、流動槽の中に多孔質の上げ底板を置き、流動槽内の上げ底板の上側に樹脂粉体を入れ、上げ底板の下側から空気を吹き込んで流動槽内の樹脂粉体を流動させ、浮遊する樹脂粉体中に予熱された第1樹脂組成物15を浸漬し、第1樹脂組成物15表面に樹脂粉体を溶融流動させ、連続した樹脂被膜16を形成する方法である。樹脂被膜16の厚さTは、100μm以上、500μm以下であるとよい。本実施例では、厚さ200μmの樹脂被膜16を形成した。
樹脂被膜16の色としては、赤色、青色、緑色、黄色、黒色などがあり着色剤が配合されていない第1樹脂組成物15の色(例えば、ベージュ色)とは異なっている。また、色としてはこれらに限定されることはない。着色剤は特に限定されないが、例えば有機系着色剤や、無機系顔料や、カーボンブラックなどが用いられる。着色剤の濃度は、樹脂粉体23に対して、例えばppmオーダの濃度である。着色させる色は、赤色、青色、緑色、黄色、黒色でそれぞれUSPCB試験と耐熱性試験を行い、それぞれ同様の結果を得た。代表として、実験結果を表1に示した。前記したいずれの色でも樹脂被膜16のガラス転移温度Tgは235℃であり、第1樹脂組成物15のガラス転移温度Tgである210℃より高かった。前記の樹脂粉体23の粒子径は30μm以上40μm以下の範囲に揃っていると望ましい。しかし、実際用いられている樹脂粉体23の粒子径は、粒子径分布を有しており、30μm未満が25%程度以下、30μm以上40μm以下が50%程度、40μm超が25%程度以下の粒子径分布であってもよい。
【0030】
前記の実施例では、第1樹脂組成物15は、固体の樹脂材を用いてトランスファーで成型して製作したが、液状の樹脂材をポッティングして製作する場合もある。つまり、第1樹脂組成物15の素材としての樹脂材は、液体でも固体でも構わない。樹脂材が液体の場合は、ポッテング法で封止が行われる。樹脂材が固体の場合は、トランスファー法で封止が行われる。
また、着色された樹脂被膜16となる樹脂粉体23の材質は、ガラス転移温度Tgが第1樹脂組成物15より高い熱硬化性樹脂である、マレイミド変性エポキシ樹脂、マレイミド変性フェノール樹脂、マレイミド樹脂などの高耐熱樹脂を使用できる。本実施例では、第1樹脂組成物としてエポキシ樹脂を用い、第2樹脂組成物としてマレイミド樹脂を用いた。
【0031】
また、着色された樹脂被膜16は流動浸漬法を用いて形成するため、半導体装置100は、比較的安価な設備で製造できる。尚、流動浸漬法以外に、溶融流動化した樹脂粉体23を刷毛などを用いて塗布する場合もある。また、本発明では、第1樹脂組成物15の外周部分を高耐熱の樹脂粉体23を被膜化した樹脂被膜16で被覆することにより、第1樹脂組成物15へ不純物が導入されることを抑制して、第1樹脂組成物15の表面の色を容易に変えることができる。また、第1樹脂組成物15よりも高い耐熱性(高いガラス転移温度Tg)を有する樹脂被膜16で第1樹脂組成物15を被覆することにより、半導体装置100の耐熱性を表1で示すように後述の比較例1に比べて向上させることができる。そうすると、図(c)に示すように、第1樹脂組成物15の表面に第2樹脂組成物16が形成される。
【0032】
次に、対象物を流動槽22から取り出し、被覆材24、27を剥離する。
このようにして、半導体装置100aは、着色された第2樹脂組成物16の樹脂被膜で被覆され、
図1に示す半導体装置100が完成する。
なお、半導体装置100aに樹脂被膜16を形成することは、
図1のように絶縁回路基板5と銅ピン9を用いた内部構造体に限ることはなく、例えば、絶縁回路基板5などの代わりに、ボンディングワイヤやリードフレームを用いた半導体装置にも適用できる。
【0033】
(比較例1)
図3は、
図1の半導体装置100の比較例を示す半導体装置200の要部断面図である。
図1の半導体装置100との違いは、半導体装置200の樹脂組成物20が、顔料などの着色剤が配合されたエポキシペーストを用いて成型され、その結果、樹脂組成物20自体が着色されている点である。赤色、青色、緑色、黄色、黒色の各着色剤にそれぞれ変えた条件で実験を行ったところ、それぞれ表1の比較例1に示した結果と同様の結果を得た。いずれの色でも樹脂組成物20のガラス転移温度Tgは210℃であった。
【0034】
(比較例2)
比較例2は、比較例1の着色剤を除いたこと以外は、同様に実験を行った実験結果である。樹脂組成物20のガラス転移温度Tgは210℃であった。
(不飽和プレッシャークッカーバイアス試験(USPCB試験))
前記の実施例の半導体装置100、比較例1の半導体装置200、第2樹脂組成物で被覆する前の半導体装置100であって第1樹脂組成物に着色剤を含有しないナチュラル品の樹脂を使用したもの(比較例2)について、USPCB試験を実施した。USPCB試験の試験条件は例えば、温度が120℃、湿度が85%、蒸気圧が1.7×10
5Paであり、これは耐湿性をチェックする耐湿性試験である。
【0035】
(耐熱性試験)
前記の実施例の半導体装置100、比較例1の半導体装置200、第2樹脂組成物で被覆する前の半導体装置100であって第1樹脂組成物に着色剤を含有しないナチュラル品の樹脂を使用したもの(比較例2)について、UL1557規格の加速試験条件に準じた試験を実施した。UL1557規格の試験条件は、例えば、調査対象物を200℃および230℃の条件で所定時間加熱する加速温度試験であり、耐熱性をチェックする耐熱性試験である。尚、この耐熱性試験は、オーブン内で加速条件の温度で長時間加熱した後、3kVで10秒間パルス電圧を印加し、絶縁性が維持されるかどうかの有無で行った。また、このUL1557規格の加速条件が200℃、6000時間以上で175℃の耐熱性が保証され、230℃で4800時間以上で200℃の耐熱性が保証される。
USPCB試験と耐熱性試験の結果を表1に示す。
【0037】
表1に示したように、USPCB試験結果は、実施例の半導体装置では400時間、比較例1の半導体装置では300時間、着色剤を含有しないナチュラル品の樹脂を使用した比較例2の半導体装置では400時間であった。従って、実施例の半導体装置は、従来の着色剤を含有しないナチュラル品の樹脂を使用した半導体装置(すなわち、比較例2)と同等の性能であることが判る。一方、比較例1の半導体装置は、300時間であり、実施例の半導体装置より短い。これは、比較例1の半導体装置では、着色エポキシペーストを配合した樹脂で樹脂組成物20を成型しているため、樹脂の不純物濃度が上がり、腐食が発生したためと推測される。
【0038】
また、表1に示したように、耐熱性試験結果は、実施例の半導体装置では200℃、比較例1の半導体装置200は175℃、比較例2の半導体装置では200℃であった。従って、実施例の半導体装置は、従来の着色剤を含有しないナチュラル品の樹脂を使用した半導体装置(すなわち、比較例2)と同等の性能であることが判る。一方、比較例1の半導体装置は、175℃であり、実施例の半導体装置より耐熱性が低下した。これは、実施例の着色した樹脂被膜16で被覆された第1樹脂組成物15の表面のガラス転移温度Tg(235℃)に比べて、比較例1の樹脂組成物20のガラス転移温度Tg(210℃)の方が低いためと考えられる。
【0039】
以上の結果から、樹脂粉体23を用いて着色した半導体装置100は着色剤を含有しない樹脂で形成した第1樹脂組成物15を有する半導体装置100aと同等の信頼性が確保できることが分かった。つまり、着色による信頼性の低下は発生しないことが分かった。また、比較例1で示した半導体装置より信頼性を向上できることが分かった。
【0040】
また、本発明の樹脂粉体23を用いて行う着色は、流動浸漬法を用いるため、着色エポキシペーストを配合した樹脂でトランスファー法を用いて行う着色より、製造設備は安価にできる。
【符号の説明】
【0041】
1 AMB基板
2 セラミック板
3,4 厚銅板
5 絶縁回路基板
6 絶縁板
7,8 銅板
9 銅ピン
10,12,14 はんだ
11 半導体チップ
13 外部端子
15 第1樹脂組成物
16 樹脂被膜(第2樹脂組成物)
20 樹脂組成物
21 恒温槽
22 流動槽
23 着色剤を含有した樹脂粉体
24 被覆材
25 多孔質の上げ底板
26 ブロア
100,200 半導体装置
S1 第1工程
S2 第2工程
T 樹脂被膜の厚さ