特許第6299390号(P6299390)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299390
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20180319BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   H01L29/78 301J
   H01L29/78 301D
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-92131(P2014-92131)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2015-211140(P2015-211140A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】豊田 善昭
(72)【発明者】
【氏名】片倉 英明
【審査官】 市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−053152(JP,A)
【文献】 実開平04−087660(JP,U)
【文献】 特開2012−256633(JP,A)
【文献】 特開2003−168796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板の表面層に選択的に設けられた第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の内部に選択的に設けられた第1導電型の第2半導体領域と、
前記第1半導体領域の内部に、前記第2半導体領域と離して選択的に設けられた第1導電型の第3半導体領域と、
前記第1半導体領域の内部に、前記第3半導体領域を覆うように設けられ、かつ前記第1半導体領域の、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域とに挟まれた部分に延在して前記第2半導体領域に接する、前記第2半導体領域および前記第3半導体領域よりも不純物濃度の低い第1導電型の第4半導体領域と、
前記第4半導体領域の、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域とに挟まれた部分の表面層に選択的に設けられた局部絶縁膜と、
前記第4半導体領域の、前記局部絶縁膜と前記第2半導体領域とに挟まれた部分の表面上にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記第4半導体領域の、前記局部絶縁膜よりも前記第2半導体領域側の部分に設けられ、前記第2半導体領域に接する、前記第4半導体領域よりも不純物濃度の低い第1導電型の第5半導体領域と、
前記第2半導体領域に接する第1電極と、
前記第3半導体領域に接する第2電極と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第5半導体領域は、前記局部絶縁膜と離して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板には、前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、前記第3半導体領域、前記第4半導体領域、前記第5半導体領域、前記局部絶縁膜、前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極を有する半導体素子が複数設けられており、
複数の前記半導体素子は、それぞれ前記局部絶縁膜と前記第5半導体領域との間の距離が異なることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第4半導体領域の、前記局部絶縁膜と前記第2半導体領域とに挟まれた部分の深さは、前記第4半導体領域の、残余の部分の深さよりも浅いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)は、設計条件によって、ゲート電圧が0Vのときにオフ状態にあるエンハンスメント型(ノーマリオフ型)、および、ゲート電圧が0Vのときにオン状態にあるデプレッション型(ノーマリオン型)の動作モードを実現可能であることが公知である。以下に、従来のエンハンスメント型MOSFETおよびデプレッション型MOSFETの構造について説明する。
【0003】
まず、従来のエンハンスメント型MOSFETの構造について、横型の中耐圧(例えば80V程度)エンハンスメント型nチャネルMOSFETを例に説明する。図16は、従来のエンハンスメント型MOSFETの構造を示す断面図である。図16に示すエンハンスメント型MOSFET(以下、第1従来例とする)において、n型半導体基板101の表面層には、p型ウエル領域102が選択的に設けられている。p型ウエル領域102の内部には、n+型ソース領域103、p+型コンタクト領域104およびn+型ドレイン領域105がそれぞれ選択的に設けられている。
【0004】
また、p型ウエル領域102の内部には、n+型ドレイン領域105の下側(基板内部側)の面全体を覆うようにn型オフセット拡散領域106が設けられている。n型オフセット拡散領域106の、n+型ドレイン領域105とp型ウエル領域102とに挟まれた部分の表面上には、酸化膜(SiO2)からなる絶縁層107が設けられている。p型ウエル領域102の、n+型ソース領域103とn型オフセット拡散領域106とに挟まれた部分の表面上には、ゲート絶縁膜108を介してゲート電極109が設けられている。
【0005】
ゲート電極109の、n+型ドレイン領域105側の端部は、絶縁層107上に延在している。絶縁層107によってn+型ドレイン領域105とゲート電極109とを分離し、n+型ドレイン領域105とゲート電極109との距離を大きくすることで、ゲート電極109の位置をn+型ソース領域103側に片寄らせたオフセットゲート構造が構成されている。オフセットゲート構造とすることにより、ゲート電極109の、n+型ドレイン領域105側端部での電界集中を防止している。
【0006】
一方、デプレッション型MOSFETは、上述したようにゲート電圧が0Vのときにオン状態にあり、ゲート電圧が0Vのときでもドレイン・ソース間にほぼ一定のドレイン電流(飽和電流)を流すことができる。このため、単体で集積回路(IC:Integrated Circuit)の基準定電流源を構成することができるなど、回路構成の簡素化に有用である。また、中耐圧デプレッション型MOSFETは、電源電圧の高いICに用いることができるため、回路設計の自由度が高い。
【0007】
従来のデプレッション型MOSFETの構造について、例えば横型の中耐圧デプレッション型nチャネルMOSFETを例に説明する。図17は、従来のデプレッション型MOSFETの構造を示す断面図である。図17に示すデプレッション型MOSFET(以下、第2従来例とする)は、第1従来例のn型オフセット拡散領域(図17では符号116で示す)をほぼ活性領域全体に延在させて、n型オフセット拡散領域116を介してn+型ドレイン領域105とn+型ソース領域103とが接する構造とすることでデプレッション型としている(例えば、下記非特許文献1参照。)。活性領域とは、オン状態のときに電流が流れる領域である。
【0008】
また、従来のデプレッション型MOSFETの別の一例の構造について説明する。図18,19は、従来のデプレッション型MOSFETの構造の別の一例を示す断面図である。図18に示すデプレッション型MOSFET(以下、第3従来例とする)が第2従来例と異なる点は、微細化を図るために、絶縁層107に代えて、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)などのLOCOS膜117によってn+型ドレイン領域105とゲート電極109とを分離している点である。
【0009】
図19に示すデプレッション型MOSFET(以下、第4従来例とする)が第2従来例と異なる点は、n型オフセット拡散領域116を活性領域全体に延在させるのに代えて、p型ウエル領域102の、n+型ソース領域103とn型オフセット拡散領域106とに挟まれた部分にn型拡散領域136が設けられている点である。活性領域の、ゲート電極109の直下の部分(ゲート絶縁膜108を介してゲート電極109に対向する部分)のn型不純物濃度を最適化することができるため、電流特性を改善させることができる(例えば、下記非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】木内 伸、外2名、自動車用スマートMOSFET、富士時報、富士電機株式会社、2003年、第76巻、第10号、p.606−611
【非特許文献2】ワイ・トヨダ(Y.Toyoda)、外4名、60V−クラス パワー IC テクノロジー フォア アン インテリジェント パワー スイッチ ウィズ アン インテグレイティッド トレンチ MOSFET(60V−Class Power IC Technology for an Intelligent Power Switch with an Integrated Trench MOSFET)、プロシーディングス オブ ザ 25th インターナショナル シンポジウム オン パワー セミコンダクター デバイシズ アンド ICs:ISPSD(Proceedings of The 25th International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs:ISPSD)、2013年5月、p.147−150
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記第2〜4従来例では、ICの基準定電流源とする場合、ICの特性を調整するために飽和電流量(電流能力)を変更するための設計変更が必要な場合があるが、次の問題が生じる。上記第2従来例では、n型オフセット拡散領域116の不純物濃度を変更して飽和電流量を調整する場合、n型オフセット拡散領域116の、ゲート電極109の直下の部分(ゲート絶縁膜108を介してゲート電極109に対向する部分)の不純物濃度は最適値となるが、n型オフセット拡散領域116の、n+型ドレイン領域105付近の不純物濃度が最適な濃度からずれるため、耐圧特性を維持することができない。すなわち、耐圧特性を維持し、かつ十分な飽和電流量を確保するためのn型オフセット拡散領域106の不純物濃度調整の自由度が低い。
【0012】
上記第3従来例では、上記第2従来例と同様に、n型オフセット拡散領域126の不純物濃度を変更して飽和電流量を調整する場合、耐圧特性を維持することができない。すなわち、上記第3従来例においてもn型オフセット拡散領域126の不純物濃度調整の自由度が低い。また、上記第3従来例では、LOCOS膜117を形成するための熱酸化処理により、シリコン部のp型不純物がLOCOS膜117に吸い出され、LOCOS膜117との界面付近においてシリコン部のp型不純物濃度が低くなる。一方、n型不純物はパイルアップにより再分布し、LOCOS膜117との界面付近においてシリコン部のn型不純物濃度が高くなる。このため、n型オフセット拡散領域126の、LOCOS膜117の直下の部分(LOCOS膜117に対向する部分)の正味の不純物濃度が高くなってしまう。上記の現象を考慮してn型オフセット拡散領域126の不純物濃度を最適化することで、耐圧特性を維持することができるが、この場合、n型オフセット拡散領域126の、ゲート電極109の直下の部分の不純物濃度が低くなり、この部分の拡散深さが他の部分よりも浅くなるため、十分な飽和電流量を確保することができない。
【0013】
上記第4従来例では、n型オフセット拡散領域106およびn型拡散領域136によって、LOCOS膜117およびゲート電極109の直下の部分におけるシリコン部のn型不純物濃度をそれぞれ最適化可能である。このため、十分な飽和電流量を確保することができるが、n型オフセット拡散領域106とn型拡散領域136とが重なる部分136aのn型不純物濃度が高くなり、耐圧が低下する虞がある。したがって、n型拡散領域136の不純物濃度範囲の上限値が制限される。
【0014】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、耐圧特性を維持して所定の電流能力を確保することができ、かつ微細化を図ることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。第1導電型の半導体基板の表面層に、第2導電型の第1半導体領域が選択的に設けられている。前記第1半導体領域の内部に、第1導電型の第2半導体領域が選択的に設けられている。前記第1半導体領域の内部に、前記第2半導体領域と離して第1導電型の第3半導体領域が選択的に設けられている。前記第1半導体領域の内部に、前記第3半導体領域を覆うように第1導電型の第4半導体領域が設けられている。前記第4半導体領域は、前記第1半導体領域の、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域とに挟まれた部分に延在して前記第2半導体領域に接する。前記第4半導体領域の不純物濃度は、前記第2半導体領域および前記第3半導体領域よりも低い。前記第4半導体領域の、前記第2半導体領域と前記第3半導体領域とに挟まれた部分の表面層に局部絶縁膜が選択的に設けられている。前記第4半導体領域の、前記局部絶縁膜と前記第2半導体領域とに挟まれた部分の表面上にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極が設けられている。前記第4半導体領域の、前記局部絶縁膜よりも前記第2半導体領域側の部分に、第1導電型の第5半導体領域が設けられている。前記第5半導体領域は、前記第2半導体領域に接する。前記第5半導体領域の不純物濃度は、前記第4半導体領域よりも低い。前記第2半導体領域に接する第1電極が設けられている。前記第3半導体領域に接する第2電極が設けられている。
【0016】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第5半導体領域は、前記局部絶縁膜と離して配置されていることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記半導体基板には、前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、前記第3半導体領域、前記第4半導体領域、前記第5半導体領域、前記局部絶縁膜、前記ゲート絶縁膜および前記ゲート電極を有する半導体素子が複数設けられている。複数の前記半導体素子は、それぞれ前記局部絶縁膜と前記第5半導体領域との間の距離が異なることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第4半導体領域の、前記局部絶縁膜と前記第2半導体領域とに挟まれた部分の深さは、前記第4半導体領域の、残余の部分の深さよりも浅いことを特徴とする。
【0019】
上述した発明によれば、局部絶縁膜からなるオフセットゲート構造を構成して微細化を図るとともに、第2半導体領域および第3半導体領域に接する第4半導体領域の、ゲート電極の直下の部分(ゲート絶縁膜を介してゲート電極に対向する部分)に設けた第5半導体領域により、第4半導体領域の、ゲート電極の直下の部分の不純物濃度を補完して最適化することができる。第5半導体領域は、第4半導体領域の、ゲート電極の直下の部分に設けるため、第4半導体領域によって実現される耐圧特性に悪影響を及ぼすことはない。このため、飽和電流量調整の自由度が高くなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる半導体装置によれば、耐圧特性を維持して所定の電流能力を確保することができ、かつ微細化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図2A図1の切断線A−A’における不純物濃度分布を示す特性図である。
図2B図1のLOCOS膜の直下の部分の正味の不純物濃度分布を示す特性図である。
図3】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図4】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図5】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図6】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図7】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図8】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図9】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図10】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図11】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図12】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図13】実施の形態にかかる半導体装置を用いて構成された回路の一例を示す説明図である。
図14】実施の形態にかかる半導体装置を用いて構成された回路の一例を示す説明図である。
図15】実施の形態にかかる半導体装置の飽和電流量を示す特性図である。
図16】従来のエンハンスメント型MOSFETの構造を示す断面図である。
図17】従来のデプレッション型MOSFETの構造を示す断面図である。
図18】従来のデプレッション型MOSFETの構造の別の一例を示す断面図である。
図19】従来のデプレッション型MOSFETの構造の別の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
(実施の形態)
実施の形態にかかる半導体装置の構造について、横型の中耐圧(例えば80V程度)デプレッション型nチャネルMOSFETを例に説明する。図1は、実施の形態にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。図2Aは、図1の切断線A−A’における不純物濃度分布を示す特性図である。図2Bは、図1のLOCOS膜の直下の部分の正味の不純物濃度分布を示す特性図である。図1に示す実施の形態にかかる半導体装置10において、n型半導体基板(半導体チップ)1の表面層には、p型ウエル領域(第1半導体領域)2が選択的に設けられている。p型ウエル領域2の内部には、基板表面に露出されるように、n+型ソース領域(第2半導体領域)3、p+型コンタクト領域4およびn+型ドレイン領域(第3半導体領域)5がそれぞれ選択的に設けられている。n+型ソース領域3およびp+型コンタクト領域4は互いに接する。
【0024】
+型ドレイン領域5は、n+型ソース領域3の、p+型コンタクト領域4側に対して反対側に、n+型ソース領域3から離れて配置されている。また、p型ウエル領域2の内部には、n+型ドレイン領域5の下側(基板内部側)の面全体を覆うように第1n型オフセット拡散領域(第4半導体領域)6が設けられている。すなわち、第1n型オフセット拡散領域6は、n+型ドレイン領域5の下側の面全体を覆うように、n+型ドレイン領域5とp型ウエル領域2との間に設けられている。第1n型オフセット拡散領域6の基板表面からの拡散深さは、p型ウエル領域2の基板表面からの拡散深さよりも浅い。第1n型オフセット拡散領域6を設けることで、第1n型オフセット拡散領域6の不純物濃度に応じた高耐圧が実現される。
【0025】
また、第1n型オフセット拡散領域6は、n+型ソース領域3側に向かって後述するゲート電極9の直下の部分(ゲート絶縁膜8を介してゲート電極9に対向する部分)まで延在し(ほぼ活性領域全体に延在)、n+型ソース領域3に接する。このようにn+型ソース領域3およびn+型ドレイン領域5に接する第1n型オフセット拡散領域6をチャネルとするデプレッション型のMOSゲート(金属−酸化膜−半導体からなる絶縁ゲート)構造が構成されている。第1n型オフセット拡散領域6は、n+型ソース領域3の下側の面全体を覆っていてもよいし、p+型コンタクト領域4とp型ウエル領域2とが所定箇所で一部接するようにp+型コンタクト領域4の下側の面を覆っていてもよい。
【0026】
第1n型オフセット拡散領域6の、ゲート電極9の直下の部分は、第1n型オフセット拡散領域6の、後述するLOCOS膜(局部絶縁膜)7の直下の部分(LOCOS膜7に対向する部分)よりも不純物濃度が低い。また、第1n型オフセット拡散領域6の、ゲート電極9の直下の部分の基板表面(ゲート電極9と第1n型オフセット拡散領域6との界面)からの拡散深さ(すなわち第1n型オフセット拡散領域6の、LOCOS膜7とn+型ソース領域3とに挟まれた部分の深さ)は、第1n型オフセット拡散領域6の、LOCOS膜7側の部分の基板表面(n+型ドレイン領域5とドレイン電極14との界面)からの拡散深さよりも浅い。その理由は、次の通りである。
【0027】
LOCOS膜7となる酸化膜(SiO2膜)が第1n型オフセット拡散領域6の表面層に形成される過程において、シリコン部の不純物が再分布され、シリコン部のp型不純物がLOCOS膜7に吸い出される。これにより、LOCOS膜7との界面付近のシリコン部のp型不純物濃度が低くなる。一方、n型不純物はパイルアップにより再分布し、LOCOS膜7との界面付近においてシリコン部のn型不純物濃度が高くなる。このため、第1n型オフセット拡散領域6の、LOCOS膜7の直下の部分の正味のn型不純物濃度が高くなり、図2Bに示すように、第1n型オフセット拡散領域6の、LOCOS膜7の直下の部分の拡散深さ(LOCOS膜7と第1n型オフセット拡散領域6との界面から基板主面に垂直な方向の深さ)d1も深くなる。このような第1n型オフセット拡散領域6の拡散深さおよび正味の不純物濃度の変化は、パイルアップによるn型不純物の再分布の影響よりも、p型不純物のLOCOS膜7への吸い出しによる影響のほうが大きい。すなわち、第1n型オフセット拡散領域6の、LOCOS膜7の直下の部分の拡散深さd1が深くなるのは、LOCOS膜7形成前後のp型不純物の低下量Dpによる影響が大きく、LOCOS膜7形成前後のn型不純物の上昇量Dnによる影響は小さい。一方、第1n型オフセット拡散領域6の、ゲート電極9の直下の部分では、パイルアップによるn型不純物の再分布およびp型不純物のLOCOS膜7への吸い出しはほぼ生じないため、n型不純物濃度およびp型不純物濃度ともにLOCOS膜7形成後もLOCOS膜7形成前の状態が維持され、その拡散深さはLOCOS膜7形成前の拡散深さd3と同等になる。
【0028】
特に限定しないが、例えば実施の形態にかかる半導体装置が耐圧80Vクラスである場合には、第1n型オフセット拡散領域6およびp型ウエル領域2の不純物濃度は次の値をとる(図2A)。第1n型オフセット拡散領域6の、LOCOS膜7の直下の部分の不純物濃度のピーク値は、例えば2×1017/cm3以上3×1017/cm3以下程度であってもよい。p型ウエル領域2の、LOCOS膜7の直下の部分の不純物濃度のピーク値は、例えば2×1016/cm3以上3×1016/cm3以下程度であってもよい。第1n型オフセット拡散領域6の、LOCOS膜7の直下の部分の拡散深さd1は、例えば0.5μm以上0.9μm以下程度であってもよい。p型ウエル領域2の、LOCOS膜7の直下の部分の拡散深さ(p型ウエル領域2の、LOCOS膜7と第1n型オフセット拡散領域6との界面から基板主面に垂直な方向の深さ)d2は、例えば3μm以上4μm以下程度であってもよい。なお、n+型ドレイン領域5上にはLOCOS膜7が設けられていないため、第1n型オフセット拡散領域6の、n+型ドレイン領域5の直下の部分(n+型ドレイン領域5に対向する部分)の基板表面からの拡散深さは、第1n型オフセット拡散領域6の、LOCOS膜7側の他の部分の基板表面からの拡散深さよりも若干浅くなる。
【0029】
第1n型オフセット拡散領域6の、n+型ドレイン領域5とn+型ソース領域3とに挟まれた部分には、第1n型オフセット拡散領域6の表面層を熱酸化させてなるLOCOS膜7が局部的に設けられている。第1n型オフセット拡散領域6の、n+型ソース領域3とLOCOS膜7とに挟まれた部分の表面上には、ゲート絶縁膜8を介してゲート電極9が設けられている。ゲート電極9の、n+型ドレイン領域5側の端部は、LOCOS膜7上に延在している。LOCOS膜7によってn+型ドレイン領域5とゲート電極9とを分離し、n+型ドレイン領域5とゲート電極9との距離を大きくすることで、ゲート電極9の位置をn+型ソース領域3側に片寄らせたオフセットゲート構造が構成されている。
【0030】
このようにオフセットゲート構造とすることにより、ゲート電極9の、ドレイン領域5側端部に電界が集中することを防止することができ、耐圧を向上させることができる。またLOCOS膜7によってはオフセットゲート構造を形成することで、第1,2従来例(図16,17)のように基板上に設けた絶縁層によってオフセットゲート構造を形成する場合よりも微細化を図ることができる。LOCOS膜7は、n+型ドレイン領域5よりも外側およびp+型コンタクト領域4よりも外側にもそれぞれ設けられ、オフセットゲート構造と図示省略する他の素子とを電気的に分離している。
【0031】
第1n型オフセット拡散領域6の内部には、LOCOS膜7よりもn+型ソース領域側の部分(すなわちゲート電極9の直下の部分)に、第2n-型オフセット拡散領域(第5半導体領域)16が選択的に設けられている。第2n-型オフセット拡散領域16は、n+型ソース領域3に接する。第2n-型オフセット拡散領域16は、n+型ソース領域3の下側の面全体を覆っていてもよいし、p+型コンタクト領域4とp型ウエル領域2とが所定箇所で一部接するようにp+型コンタクト領域4の下側の面を覆っていてもよい。第2n-型オフセット拡散領域16の深さは、設計条件に合わせて種々変更可能であり、第1n型オフセット拡散領域6の深さよりも浅くてもよいし深くてもよい。
【0032】
第2n-型オフセット拡散領域16は、上述したp型不純物の吸い出しおよびパイルアップによるn型不純物の再分布を考慮してn型オフセット拡散領域6の不純物濃度が設定されることで不足する、第1n型オフセット拡散領域6の、ゲート電極9の直下の部分の不純物濃度を補完して最適化する機能を有する。すなわち、第2n-型オフセット拡散領域16を設けることで、第1n型オフセット拡散領域6の、ゲート電極9の直下の部分の不純物濃度を高くすることができ、所定の飽和電流量を得ることができる。第2n-型オフセット拡散領域16の不純物濃度は、第1n型オフセット拡散領域6の、LOCOS膜7の直下の部分の不純物濃度よりも低い。このため、第1n型オフセット拡散領域6の、ゲート電極9の直下の部分のn型不純物濃度を第2n-型オフセット拡散領域16によって補完しても、この部分のn型不純物濃度が高くなりすぎることはなく、耐圧特性や電流特性に悪影響を及ぼすことはない。
【0033】
また、第2n-型オフセット拡散領域16は、第2n-型オフセット拡散領域16とn+型ドレイン領域5との間に配置されたLOCOS膜7から離れて配置されるのが好ましい。その理由は、次の通りである。p型ウエル領域2の、LOCOS膜7の直下の部分の不純物濃度は、上述したようにp型不純物の吸い出しにより低くなっている。このため、LOCOS膜7の直下の部分においてn型不純物濃度が高くなりすぎると、n型領域(n型半導体基板1の裏面側のn型領域として残る部分)と第1n-型オフセット領域6とに挟まれたp型ウエル領域2の実効幅が減少し、両n型領域間のパンチスルーが生じやすくなる。第2n-型オフセット拡散領域16をLOCOS膜7から離れて配置することで、第1n-型オフセット領域6の、LOCOS膜7の直下の部分の不純物濃度が高くなりすぎることを防止し、p型ウエル領域2がパンチスルーすることを防止することができるからである。
【0034】
第2n-型オフセット拡散領域16とn+型ドレイン領域5との間に配置されたLOCOS膜7から、第2n-型オフセット拡散領域16の、n+型ドレイン領域5側の端部までの距離(以下、第2n-型オフセット拡散領域16とLOCOS膜7との間の距離とする)xは、設計条件に合わせて種々変更可能である。第2n-型オフセット拡散領域16とLOCOS膜7との間の距離xを調整することにより、第2n-型オフセット拡散領域16の不純物濃度を変えずに、飽和電流量を調整することができる。具体的には、第2n-型オフセット拡散領域16とLOCOS膜7との間の距離xを広げるほど、飽和電流量を小さくすることができる。
【0035】
層間絶縁膜11は、ゲート電極9を覆うようにn型半導体基板1の表面に設けられている。ソース電極(第1電極)12は、深さ方向に層間絶縁膜11を貫通するコンタクトホール13を介してn+型ソース領域3およびp+型コンタクト領域4に接し、層間絶縁膜11によってゲート電極9と電気的に絶縁されている。ドレイン電極(第2電極)14は、深さ方向に層間絶縁膜11を貫通するコンタクトホール15を介してn+型ドレイン領域5に接する。上述した構成部以外の素子構造は図示省略するがn型半導体基板1の表面はパッシベーション保護膜で保護されている。また、n型半導体基板1上には、ソースパッドやゲートパッドなどの電極パッドを含む一般的な配線構造が構成されている。
【0036】
次に、実施の形態にかかる半導体装置10の製造方法について説明する。図3〜12は、実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、図3に示すように、フォトリソグラフィにより、n型半導体基板(半導体ウエハ)1の表面に、p型ウエル領域2の形成領域に対応する部分が露出するイオン注入用マスク21を形成する。次に、イオン注入用マスク21をマスクとしてn型不純物をイオン注入22することにより、n型半導体基板1の表面層にp型ウエル領域2を選択的に形成する。次に、図4に示すように、イオン注入用マスク21を除去した後、熱処理により、p型ウエル領域2を拡散させる。
【0037】
次に、図5に示すように、フォトリソグラフィにより、n型半導体基板1の表面に、第1n型オフセット拡散領域6の形成領域に対応する部分が露出するイオン注入用マスク23を形成する。次に、イオン注入用マスク23をマスクとしてn型不純物をイオン注入24することにより、p型ウエル領域2の内部に第1n型オフセット拡散領域6を選択的に形成する。次に、図6に示すように、イオン注入用マスク23を除去した後、フォトリソグラフィにより、n型半導体基板1の表面に、第2n-型オフセット拡散領域16の形成領域に対応する部分が露出するイオン注入用マスク25を形成する。
【0038】
次に、イオン注入用マスク25をマスクとしてn型不純物をイオン注入26することにより、第1n型オフセット拡散領域6の内部に第2n-型オフセット拡散領域16を選択的に形成する。次に、図7に示すように、イオン注入用マスク25を除去した後、第1n型オフセット拡散領域6および第2n-型オフセット拡散領域16を拡散させる。次に、図8に示すように、n型半導体基板1の表面に、シリコン酸化膜27aおよびシリコン窒化膜(SiN膜)27bを順に堆積する。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングによりシリコン酸化膜27aおよびシリコン窒化膜27bをパターニングし、LOCOS膜7の形成領域に対応する部分を露出させる。
【0039】
次に、図9に示すように、シリコン酸化膜27aおよびシリコン窒化膜27bの残部をマスク(以下、選択酸化用マスクとする)27とするLOCOS技術により、選択酸化用マスク27の開口部に露出するシリコン部を熱酸化してLOCOS膜7となる酸化膜(SiO2膜)を局部的に形成する。このLOCOS膜7を形成するための熱酸化時、上述したp型不純物の吸い出しおよびパイルアップによるn型不純物の再分布によって、LOCOS膜7との界面付近においてシリコン部のp型不純物濃度が低くなり、第1n型オフセット拡散領域6の、LOCOS膜7の直下の部分の正味の不純物濃度が高くなる。これによって、第1n型オフセット拡散領域6の、LOCOS膜7側の部分の基板表面からの拡散深さは、第1n型オフセット拡散領域6の、ゲート電極9の直下の部分の基板表面からの拡散深さよりも深くなる。
【0040】
次に、選択酸化用マスク27(シリコン窒化膜27b、およびその下地のシリコン酸化膜27a)を除去した後、図10に示すように、LOCOS膜7間に露出するシリコン部を熱酸化し、酸化膜(SiO2)からなるゲート絶縁膜8を形成する。次に、LOCOS膜7およびゲート絶縁膜8上に、ゲート電極9となるポリシリコン(poly−Si)層を形成する。次に、図11に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングによりポリシリコン層をパターニングし、ポリシリコン層の、第2n-型オフセット拡散領域16上から第1n型オフセット拡散領域6上にわたる部分をゲート電極9として残す。
【0041】
次に、エッチングによりn+型ソース領域3、p+型コンタクト領域4およびn+型ドレイン領域5の形成領域に対応する部分を露出させる。次に、図12に示すように、フォトリソグラフィにより、n型半導体基板1の表面に、p+型コンタクト領域4の形成領域に対応する部分が露出するイオン注入用マスク28を形成する。次に、イオン注入用マスク28をマスクとしてp型不純物をイオン注入29することにより、p型ウエル領域2の内部にp+型コンタクト領域4を選択的に形成する。
【0042】
次に、イオン注入用マスク28を除去した後、フォトリソグラフィにより、n型半導体基板1の表面に、n+型ソース領域3およびn+型ドレイン領域5の形成領域に対応する部分が露出するイオン注入用マスク(不図示)を形成する。次に、このイオン注入用マスクをマスクとしてn型不純物をイオン注入することにより、p型ウエル領域2の内部にn+型ソース領域3を選択的に形成するとともに、第1n型オフセット拡散領域6の内部にn+型ドレイン領域5を選択的に形成する。
【0043】
次に、n+型ソース領域3およびn+型ドレイン領域5の形成に用いたイオン注入用マスクを除去した後、n+型ソース領域3、p+型コンタクト領域4およびn+型ドレイン領域5を活性化させる。次に、一般的な方法により、n型半導体基板1の表面に、層間絶縁膜11、ソース電極12、ドレイン電極14、および図示省略するパッシベーション保護膜など残りの素子構造を形成する。その後、一般的な配線工程を行うことにより、図1に示す中耐圧デプレッション型nチャネルMOSFETが完成する。
【0044】
次に、実施の形態にかかる半導体装置(以下、デプレッション型nチャネルMOSFETとする)10を用いて構成された回路の一例について説明する。図13,14は、実施の形態にかかる半導体装置を用いて構成された回路の一例を示す説明図である。図13,14には、(a)に回路図を示し、(b)に(a)の回路の入出力信号波形を示す。図13に示すように、実施の形態にかかるデプレッション型nチャネルMOSFET10を用いて、例えばインバータ回路を構成してもよい。図13に示すインバータ回路は、接地電位の接地端子GNDと電源電圧が印加される電源端子Vccとの間に、デプレッション型nチャネルMOSFET10とエンハンスメント型nチャネルMOSFET31とが直列に接続され、入力端子INから入力されたパルス信号の位相を反転させて出力端子OUTから出力する。
【0045】
具体的には、エンハンスメント型nチャネルMOSFET31のゲートは、入力端子INに接続されている。エンハンスメント型nチャネルMOSFET31のソースおよびベースは、接地端子GNDに接続されている。エンハンスメント型nチャネルMOSFET31のドレインは、デプレッション型nチャネルMOSFET10のソースに接続されている。エンハンスメント型nチャネルMOSFET31のドレインとデプレッション型nチャネルMOSFET10のソースとの接続点は、出力端子OUTに接続されている。デプレッション型nチャネルMOSFET10のゲート(ゲート電極9)およびベース(n型半導体基板1)は、デプレッション型nチャネルMOSFET10のソースに接続されている。デプレッション型nチャネルMOSFET10のドレインは、電源端子Vccに接続されている。
【0046】
また、図14に示すように、実施の形態にかかるデプレッション型nチャネルMOSFET10を用いて、例えばフィルタを構成してもよい。図14に示すフィルタは、コンデンサ32に電流を充電する際に、デプレッション型nチャネルMOSFET10によってコンデンサ32への充電電流(飽和電流量)を低減させて充電時間を調整する。具体的には、デプレッション型nチャネルMOSFET10のドレインは、入力端子INに接続されている。デプレッション型nチャネルMOSFET10のゲートおよびベースは、デプレッション型nチャネルMOSFET10のソースに接続されている。デプレッション型nチャネルMOSFET10のソースは出力端子OUTに接続されている。コンデンサ32の一端はデプレッション型nチャネルMOSFET10のドレインに接続され、他端は接地端子GNDに接続されている。
【0047】
次に、第2n-型オフセット拡散領域16とLOCOS膜7との間の距離xと、飽和電流量との関係について説明する。図15は、実施の形態にかかる半導体装置の飽和電流量を示す特性図である。まず、上述した実施の形態にかかる半導体装置の製造方法にしたがい、第2n-型オフセット拡散領域16とLOCOS膜7との間の距離xの異なる複数の試料(以下、実施例とする)を作製した。実施例において、p型ウエル領域2を形成するためのイオン注入22のドーズ量を1.2×1013/cm2とした。第1n型オフセット拡散領域6を形成するためのイオン注入24のドーズ量を4.0×1012/cm2とした。第2n-型オフセット拡散領域16を形成するためのイオン注入26のドーズ量を1.0×1012/cm2とした。
【0048】
また、第1n型オフセット拡散領域6の、LOCOS膜7の直下の部分の拡散深さd1を0.5μmとした。p型ウエル領域2の、LOCOS膜7の直下の部分の拡散深さd2を4.0μmとした。第1n型オフセット拡散領域6の、LOCOS膜7側の部分よりも基板表面からの拡散深さの浅いゲート電極9の直下の部分のn+型ドレイン領域5側の端部から、n+型ソース領域3のn+型ドレイン領域5側の端部までの距離を25μmとした。そして、これら各実施例の飽和電流量をそれぞれ測定し、第2n-型オフセット拡散領域16とLOCOS膜7との間の距離xと、飽和電流量との関係について検証した結果を図15に示す。
【0049】
図15において、第2n-型オフセット拡散領域16とLOCOS膜7との間の距離xが0μmとは、n+型ドレイン領域5とn+型ソース領域3との間に設けられたLOCOS膜7のn+型ソース領域3側の端部位置を示している。図15横軸の始点(x=0)および当該距離xは、第2n-型オフセット拡散領域16を形成する際のイオン注入用マスク25の開口部の、n+型ドレイン領域5側の端部と、LOCOS膜7を形成する際のシリコン窒化膜27の開口部の、n+型ソース領域3側の端部とを基準に算出している。図15に示す結果より、第2n-型オフセット拡散領域16とLOCOS膜7との間の距離xが広くなるほど、飽和電流量が小さくなることが確認された(丸枠で囲む部分)。
【0050】
したがって、本発明を適用したデプレッション型MOSFETの電流能力を変更する場合に、第2n-型オフセット拡散領域16とLOCOS膜7との間の距離xを変更することで、第1n型オフセット拡散領域6および第2n-型オフセット拡散領域16の不純物濃度を変更せずに、大きな設計変更を伴うことなく飽和電流量を調整することができる。例えば、第2n-型オフセット拡散領域16とLOCOS膜7との間の距離xを変更して飽和電流量を調整することで、チャネル長Lおよびチャネル幅Wを最小寸法とすることができるため、チャネル長Lおよびチャネル幅Wを調整して飽和電流量を変更する場合よりも微細化を図ることができる。チャネル長Lとは、n+型ソース領域3とn+型ドレイン領域5との間の最短距離である。チャネル幅Wとは、チャネル長Lに直交する方向のチャネルの幅である。チャネル長Lおよびチャネル幅Wを調整するとは、チャネル長Lに対するチャネル幅Wの比を大きくすることで飽和電流量を増大させること、および、チャネル長Lを伸ばしてチャネル長Lに対するチャネル幅Wの比を小さくすることで飽和電流量を低減させることである。
【0051】
また、本発明を適用したデプレッション型MOSFETは、単体で基準定電流源を構成可能である。例えば1つの半導体チップ上に電流能力の異なる複数の基準定電流源を配置したICを作製(製造)する場合、第2n-型オフセット拡散領域16とLOCOS膜7との間の距離xが異なる複数のデプレッション型MOSFETを配置すればよく、デプレッション型MOSFETの素子構造を変える必要がないため、レイアウト設計が容易となる。また、第2n-型オフセット拡散領域16を形成するためのマスクを変えることで、第2n-型オフセット拡散領域16とLOCOS膜7との間の距離xを容易に変更することができるため、設計変更に伴う製造工程やレイアウトの大幅な変更は生じない。また、本発明を適用したデプレッション型MOSFETは、例えば回路を流れる電流の放電時間を調整するなど、電流密度を調整するための抵抗体として用いることができる。例えば電流密度を低減させる場合、本発明を適用したデプレッション型MOSFETを抵抗体として用いることで、一般的な電気抵抗用材料からなる抵抗体を用いる場合よりも高抵抗でかつ小型の抵抗体を構成することができる。このように、本発明を適用して1つの半導体チップ上に、第2n-型オフセット拡散領域16とLOCOS膜7との間の距離xの異なる複数のデプレッション型MOSFETを配置することで、それぞれ飽和電流量(電流能力)の異なるデプレッション型MOSFETで構成されたインバータ(図13)やフィルタ(図14)、基準定電流源、抵抗体などを備えたICを作製することができる。
【0052】
以上、説明したように、実施の形態によれば、LOCOSからなるオフセットゲート構造を構成し、かつn+型ソース領域およびn+型ドレイン領域に接する第1n型オフセット拡散領域の、ゲート電極の直下の部分(ゲート絶縁膜を介してゲート電極に対向する部分)に所定の不純物濃度で第2n-型オフセット拡散領域を設けることにより、第1n型オフセット拡散領域の、ゲート電極の直下の部分の不純物濃度を補完して最適化することができる。第2n-型オフセット拡散領域は、第1n型オフセット拡散領域の、ゲート電極の直下の部分に設けるため、第1n型オフセット拡散領域によって実現される耐圧特性に悪影響を及ぼすことはない。このため、第2n-型オフセット拡散領域の不純物濃度の調整(飽和電流量の調整)の自由度が高くなる。
【0053】
また、実施の形態によれば、第1n型オフセット拡散領域の内部に第2n-型オフセット拡散領域を設けるため、第2n-型オフセット拡散領域の不純物濃度を高くする必要がなく、第1n型オフセット拡散領域と第2n-型オフセット拡散領域とが重なり合う部分においてn型不純物濃度が過度に高濃度化することを防止することができる。また、実施の形態によれば、第2n-型オフセット拡散領域とLOCOS膜との間の距離を種々変更することにより飽和電流量が変化するため、第2n-型オフセット拡散領域の不純物濃度および位置(LOCOS膜との間の距離)を調整することによって飽和電流量の調整が可能である。
【0054】
これらのことから、実施の形態によれば、LOCOS技術によって微細化を図るとともに、第1n型オフセット拡散領域によって実現される高耐圧を維持したまま、飽和電流量の高いデプレッション型MOSFETを実現することができる。また、第1n型オフセット拡散領域および第2n-型オフセット拡散領域のn型不純物濃度調整の自由度が高く、飽和電流量を容易に調整することができる。また、第2n-型オフセット拡散領域とLOCOS膜との間の距離を調整することで、第1n型オフセット拡散領域および第2n-型オフセット拡散領域のn型不純物濃度調整や、素子サイズを変えることなく飽和電流量(電流能力)を調整することができるため、回路特性を容易に調整することができる。
【0055】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した実施の形態において、たとえば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、上述した実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明にかかる半導体装置は、産業用や自動車用のインテリジェント・パワースイッチ(IPS:Intelligent Power Switch)などに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 n型半導体基板
2 p型ウエル領域
3 n+型ソース領域
4 p+型コンタクト領域
5 n+型ドレイン領域
6 第1n型オフセット拡散領域
7 LOCOS膜
8 ゲート絶縁膜
9 ゲート電極
10 半導体装置(デプレッション型nチャネルMOSFET)
11 層間絶縁膜
12 ソース電極
13、15 コンタクトホール
14 ドレイン電極
16 第2n-型オフセット拡散領域
31 エンハンスメント型nチャネルMOSFET
32 コンデンサ
GND 接地端子
IN 入力端子
OUT 出力端子
Vcc 電源端子
x 第2n-型オフセット拡散領域16とLOCOS膜7との間の距離
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19