特許第6299392号(P6299392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299392
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】テーブル装置
(51)【国際特許分類】
   G12B 5/00 20060101AFI20180319BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20180319BHJP
   H02K 33/00 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   G12B5/00 T
   H01L21/68 K
   H02K33/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-92624(P2014-92624)
(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公開番号】特開2015-210214(P2015-210214A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 豊
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−4898(JP,A)
【文献】 特開2010−40945(JP,A)
【文献】 特開2004−251668(JP,A)
【文献】 特開2003−121574(JP,A)
【文献】 特開平2−151256(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/080523(WO,A1)
【文献】 米国特許第6049974(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G12B 5/00
H01L21/68
H02K33/00−33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに対向させて、前記ベースと平行な面内で回転移動可能に支持されたテーブルと、
前記ベースと前記テーブルの対向面のいずれか一方に、前記テーブルの回転中心に対して対称となる位置に設けられた少なくとも1対の1次側磁束発生部と、
前記対向面の他方に、前記少なくとも1対の1次側磁束発生部と対向するように設けられた2次側磁束発生部とを備え、
前記テーブルを前記回転中心の回りに回転移動させるテーブル装置において、
前記1次側磁束発生部を、前記回転移動方向に沿って互いに異なる磁極の向きとした少なくとも1組の永久磁石を配列した少なくとも2つの各磁石ユニットの周囲にコイルを巻回し、前記少なくとも2つの各磁石ユニットを、前記永久磁石の磁極の向きの配列が互いに逆向きとなるように隣合わせて磁性体で連結したものとし、
前記2次側磁束発生部を、前記各磁石ユニットと対向する少なくとも2つの鉄心で形成した各突極を磁性体で連結したものとしたことを特徴とするテーブル装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つの各磁石ユニットと各突極を、前記テーブルの回転方向に沿う円弧方向に連結した請求項1に記載のテーブル装置。
【請求項3】
前記ベースを前記テーブルと平行な面内で直線移動させる直線移動機構を設けた請求項1または2に記載のテーブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを搭載するテーブルを移動させて搬送や位置合わせを行うテーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アライメント装置や検査装置等に用いられ、ワークを搭載するテーブルを移動させて搬送や位置合わせを行うテーブル装置には、Xテーブル装置やXYテーブル装置のように、テーブルをX方向または直交するXY方向に直線移動させるものと、θテーブル装置のように、テーブルをθ方向に回転移動させるものとがある。これらの直線移動と回転移動を組み合わせたXθテーブル装置やXYθテーブル装置もある。通常、Xθテーブル装置やXYθテーブル装置では、回転移動機構が直線移動機構の上側に配置される。
【0003】
上述したテーブルを回転移動させるθテーブル装置(Xθテーブル装置とXYθテーブル装置を含む)には、回転移動機構として回転モータを採用し、移動側にロータを設け、固定側にステータを設けたもの(例えば、特許文献1参照)や、回転方向に沿って対称となる位置で、固定側と移動側の対向面のいずれか一方に少なくとも1対の1次側磁束発生部を設け、他方に各1次側磁束発生部と対向する2次側磁束発生部を設けて、1対の1次側磁束発生部と2次側磁束発生部間を通る磁束による磁力で移動側を回転移動させるもの(例えば、特許文献2参照)がある。
【0004】
特許文献1、2に記載されたテーブル装置は、いずれもXYθテーブル装置とされている。特許文献1に記載されたものは、ベースの上にYテーブルとXテーブルを順に積み重ね、最上段のXテーブルの中心孔に回転モータを固定して、回転モータのロータを回転移動する載置部としている。
【0005】
特許文献2に記載されたものは、回転方向に沿って対称となる位置で、下段側のベースに、永久磁石を設けた磁石ユニットの周囲にコイルを巻回した1対または2対の1次側磁束発生部を設け、上段側のテーブルに、各1次側磁束発生部と対向する鉄心からなる突極とした2次側磁束発生部を設けて、ベースに対してテーブルを回転移動させるようにしている。なお、テーブルのX方向とY方向への直線移動も、ベースとテーブルに対向させた設けた1次側磁束発生部と2次側磁束発生部で行うようにしている。
【0006】
なお、アライメント装置等に用いられるテーブル装置では、回転移動のための回転角度を高々数°程度しか必要としないものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4175135号公報
【特許文献2】特開2013−4898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたテーブル装置の回転移動機構は、大きな回転角度を得ることができるが、回転モータの軸方向寸法が長くなるので、テーブル装置の高さ寸法をコンパクトに設計できない問題がある。
【0009】
特許文献2に記載されたテーブル装置の回転移動機構は、テーブル装置の高さ寸法をコンパクトに設計することができる。また、1次側磁束発生部と2次側磁束発生部とが対向しない位置に外れると回転駆動できないので、回転移動可能な回転角度は小さくなるが、上述した大きな回転角度を必要としないアライメント装置等のテーブル装置には適用することができる。
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載された回転移動機構は、1箇所の1次側磁束発生部が1つの磁石ユニットの周囲にコイルを巻回したものとされ、これと対向する2次側磁束発生部が1つの突極で形成されているので、1次側磁束発生部のコイルに通電したときに、テーブルを回転させるように1次側磁束発生部と2次側磁束発生部間に発生する磁束を、これらの対向箇所と別の箇所に迂回させて磁束の閉ループを形成する必要がある。このため、磁束を別の箇所に迂回させるために、テーブルやベースを磁束を通す鉄等の重い磁性材料で形成する必要がある。よって、特に回転移動側のテーブルの重量が重くなって、回転駆動のために大きな磁力を必要とする問題がある。また、テーブル装置全体の重量も重くなる。さらに、特許文献1等に記載されたテーブル装置のように、下側に直線移動するXテーブルやYテーブルを積み重ねたテーブル構成のものでは、これらの下側のテーブルを直線移動させるための駆動力も大きくする必要がある。
【0011】
そこで、本発明の課題は、1次側磁束発生部と2次側磁束発生部を対向させる回転移動機構で、1次側と2次側の磁束発生部を設けるテーブルやベースを軽量な非磁性材料で形成できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、ベースと、前記ベースに対向させて、前記ベースと平行な面内で回転移動可能に支持されたテーブルと、前記ベースと前記テーブルの対向面のいずれか一方に、前記テーブルの回転中心に対して対称となる位置に設けられた少なくとも1対の1次側磁束発生部と、前記対向面の他方に、前記少なくとも1対の1次側磁束発生部と対向するように設けられた2次側磁束発生部とを備え、前記テーブルを前記回転中心の回りに回転移動させるテーブル装置において、前記1次側磁束発生部を、前記回転移動方向に沿って互いに異なる磁極の向きとした少なくとも1組の永久磁石を配列した少なくとも2つの各磁石ユニットの周囲にコイルを巻回し、前記少なくとも2つの磁石ユニットを、前記永久磁石の磁極の向きの配列が互いに逆向きとなるように隣合わせて磁性体で連結したものとし、前記2次側磁束発生部を、前記各磁石ユニットと対向する少なくとも2つの鉄心で形成した各突極を磁性体で連結したものとした構成を採用した。
【0013】
すなわち、1次側磁束発生部を、回転移動方向に沿って互いに異なる磁極の向きとした少なくとも1組の永久磁石を設けた少なくとも2つの各磁石ユニットの周囲にコイルを巻回し、少なくとも2つの磁石ユニットを、永久磁石の磁極の向きの配列が互いに逆向きとなるように隣合わせて磁性体で連結したものとし、2次側磁束発生部を、各磁石ユニットと対向する少なくとも2つの鉄心で形成した各突極を磁性体で連結したものとすることにより、1次側磁束発生部の各コイルに通電したときに、テーブルを回転せるように対向する少なくとも2つの磁石ユニットと突極間に発生する磁束が、これらの磁石ユニットと突極をそれぞれ連結する磁性体を通って閉ループを形成するようにし、1次側と2次側の磁束発生部を設けるテーブルやベースを軽量な非磁性材料で形成できるようにした。
【0014】
前記非磁性材料としては、アルミニウム、チタン等の軽金属とこれらの合金、各種プラスチックやその強化材等の軽量なものが挙げられる。なお、軽量ではないが、オーステナイト系ステンレス鋼等も挙げられる。
【0015】
前記少なくとも2つの各磁石ユニットと各突極を、前記テーブルの回転方向に沿う円弧方向に連結することにより、磁石ユニットと突極との対向面の重なり代が回転移動しても減少しないようにするとともに、磁石ユニットと突極間を通る磁束により発生する磁力を回転方向に沿う円弧方向に向けて、テーブルを回転移動させる駆動トルクを大きくすることができる。
【0016】
前記ベースを前記テーブルと平行な面内で直線移動させる直線移動機構を設けることにより、ベースやテーブルを軽量化して、直線移動機構の駆動力を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るテーブル装置は、1次側磁束発生部を、回転移動方向に沿って互いに異なる磁極の向きとした少なくとも1組の永久磁石を設けた少なくとも2つの各磁石ユニットの周囲にコイルを巻回し、少なくとも2つの磁石ユニットを、永久磁石の磁極の向きの配列が互いに逆向きとなるように隣合わせて磁性体で連結したものとし、2次側磁束発生部を、各磁石ユニットと対向する少なくとも2つの鉄心で形成した各突極を磁性体で連結したものとしたので、1次側磁束発生部の各コイルに通電したときに、テーブルを回転せるように対向する少なくとも2つの磁石ユニットと突極間に発生する磁束が、これらの磁石ユニットと突極をそれぞれ連結する磁性体を通って閉ループを形成するようにして、1次側と2次側の磁束発生部を設けるテーブルやベースをアルミニウム等の軽量な非磁性材料で形成することができる。よって、テーブルの回転移動機構の駆動力を低減することができる。また、テーブル装置全体を軽量化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態のテーブル装置を示す外観斜視図
図2図1の対向する1組の1次側磁束発生部と2次側磁束発生部を示す斜視図
図3】(a)、(b)、(c)は、それぞれ図2のコイルへの非通電時と通電時に発生する磁束を説明する側面図
図4】(a)、(b)、(c)は、それぞれ図2のコイルへの非通電時と通電時における2次側磁束発生部の回転移動形態を示す平面図
図5図4の1次側磁束発生部と2次側磁束発生部の平面形状の変形例を示す平面図
図6図5の1組の対向する1次側磁束発生部と2次側磁束発生部を示す斜視図
図7】(a)、(b)、(c)は、それぞれ図3の1次側磁束発生部と2次側磁束発生部の変形例を示す側面図
図8】第2の実施形態のテーブル装置を示す外観斜視図
図9】第3の実施形態のテーブル装置を示す外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図4は、第1の実施形態を示す。図1に示すように、このテーブル装置は、固定側の矩形板状のベース1と、ベース1の上側に対向させて、ベース1と平行な面内で回転移動可能に支持された移動側の矩形板状のテーブル2と、ベース1にテーブル2の回転中心に対して対称となる位置に設けられた1対の1次側磁束発生部10と、テーブル2に各1次側磁束発生部10と対向するように設けられた2次側磁束発生部20とを備えている。ベース1とテーブル2は、軽量な非磁性材料としてのアルミニウムで形成されている。なお、テーブル2のみを非磁性材料で形成してもよい。
【0020】
前記テーブル2はベース1の中央部にベアリング3で回転移動可能に支持されている。テーブル2は空気軸受等の別の手段で支持してもよい。また、1対の1次側磁束発生部10と2次側磁束発生部20は、それぞれベース1とテーブル2の対向する1組の辺部近傍に設けられている。
【0021】
図2に示すように、前記固定側のベース1に設けられた1次側磁束発生部10は、矩形柱状の鉄心部11の上面に、磁極を互いに上下方向逆向きとした1組の永久磁石12を、テーブル2の回転移動方向に配列した2つの磁石ユニット13a、13bと、各磁石ユニット13a、13bの鉄心部11の周囲に巻回されたコイル14a、14bと、各磁石ユニット13a、13bの鉄心部11を基部側で連結する磁性体15とから成る。磁性体15は矩形板状とされ、2つの磁石ユニット13a、13bをベース1の辺に沿う方向に連結して、ベース1の辺部近傍に設けられた孔に嵌め込まれる。
【0022】
また、前記移動側のテーブル2に設けられた2次側磁束発生部20は、2つの磁石ユニット13a、13bと対向する2つの鉄心で形成された突極21a、21bと、各突極21a、21bを基部側で連結する磁性体22とから成る。各突極21a、21bは、各磁石ユニット13a、13bの1組の永久磁石12の境界に沿う方向に延びる直方体形状とされている。磁性体22も矩形板状とされ、2つの突極21a、21bをテーブル2の辺に沿う方向に連結して、テーブル2の辺部近傍に設けられた孔に嵌め込まれる。なお、各磁性体15、22は、それぞれ1次側磁束発生部10の鉄心部11や2次側磁束発生部20の突極21a、21bを形成する鉄心と一体に形成することもできる。
【0023】
以下に、図3(a)、(b)、(c)に基づいて、前記1次側磁束発生部10の各コイル14a、14bへの非通電時と通電時に発生する磁束の形態を説明する。これらの各図に示すように、隣合う左側の磁石ユニット13aと右側の磁石ユニット13bとでは、1組の永久磁石12のN極とS極の配列の向きが互いに逆になっている。すなわち、左側の磁石ユニット13aでは、N極が上向きのものが右側、S極が上向きのものが左側とされ、右側の磁石ユニット13bでは、N極が上向きのものが左側、S極が上向きのものが右側とされている。
【0024】
図3(a)は、各磁石ユニット13a、13bの各コイル14a、14bに非通電の状態を示す。この状態では、各磁石ユニット13a、13bの1組の永久磁石12による磁束mが、一方の永久磁石12のN極から各突極21a、21bに入り、他方の永久磁石12のS極に戻る。したがって、各突極21a、21bは、各磁石ユニット13a、13bの1組の永久磁石12の境界部となる中立位置に停止する。
【0025】
図3(b)、(c)は、それぞれ各磁石ユニット13a、13bの各コイル14a、14bに互いに逆向きの電流を通電した状態を示す。図3(b)の電流の向きの場合は、右ねじの法則によって、左側の磁石ユニット13aでは上向きの磁束Mが、右側の磁石ユニット13bでは下向きの磁束Mが発生する。このため、左側では突極21aから永久磁石12のS極に戻る磁束がキャンセルされるとともに、N極から突極21aに入る磁束が強められ、N極から突極21aに入る磁束経路L1が形成される。逆に右側では永久磁石12のN極から突極21bに入る磁束がキャンセルされるとともに、突極21bからS極に戻る磁束が強められ、突極21bからS極に戻る磁束経路L2が形成される。よって、左側の突極21aが磁石ユニット13aのN極が上向きとされた右側の永久磁石12に引き寄せられるとともに、右側の突極21bが磁石ユニット13bのS極が上向きとされた右側の永久磁石12に引き寄せられ、移動側の2次側磁束発生部20には、右向きの磁力Fが作用する。
【0026】
図3(c)の電流の向きの場合は、左側の磁石ユニット13aでは下向きの磁束Mが、右側の磁石ユニット13bでは上向きの磁束Mが発生する。したがって、図3(b)の場合と同様の原理によって、左側では突極21aから磁石ユニット13aの永久磁石12のS極に戻る磁束経路L2が形成され、右側では磁石ユニット13bの永久磁石12のN極から突極21bに入る磁束経路L1が形成される。よって、左側の突極21aが磁石ユニット13aのS極が上向きとされた左側の永久磁石12に引き寄せられるとともに、右側の突極21bが磁石ユニット13bのN極が上向きとされた左側の永久磁石12に引き寄せられ、移動側の2次側磁束発生部20には、左向きの磁力Fが作用する。
【0027】
前記各磁束経路L1、L2は、各磁性体15、22を通って閉ループLを形成する。したがって、この閉ループLはベース1やテーブル2を通ることなく形成されるので、ベース1とテーブル2は、上述したように、非磁性材料で形成することができる。
【0028】
以下に、図4(a)、(b)、(c)に基づいて、前記1対の1次側磁束発生部10の各コイル14a、14bへの非通電時と通電時における1対の2次側磁束発生部20の回転移動形態を説明する。これらの各図では、1対の1次側磁束発生部10の各磁石ユニット13a、13bにおける1組ずつの永久磁石12のN極とS極の磁極の向きが互いに同じ向きとされている。なお、これらの各図では、分かりやすくするために、ベース1、テーブル2および各2次側磁束発生部20の磁性体22を表示していない。
【0029】
図4(a)は、1対の1次側磁束発生部10の各コイル14a、14bに非通電の状態を示す。この状態では、図3(a)で説明したように、1対の2次側磁束発生部20の各突極21a、21bは、各磁石ユニット13a、13bの1組の永久磁石12の境界部となる中立位置に停止する。したがって、テーブル2(図示省略)は回転しない。
【0030】
図4(b)は、右辺側の1次側磁束発生部10の各コイル14a、14bには、図3(b)に示した向きの電流Iを通電し、左辺側の1次側磁束発生部10の各コイル14a、14bには、図3(c)に示した向きの電流Iを通電した状態を示す。したがって、右辺側の2次側磁束発生部20の各突極21a、21bには本図の上向き(図3(b)の右向き)の磁力Fが作用し、左辺側の2次側磁束発生部20の各突極21a、21bには本図の下向き(図3(c)の左向き)の磁力Fが作用する。よって、テーブル2(図示省略)は反時計回りにθ方向へ回転移動する。
【0031】
図4(c)は、右辺側の1次側磁束発生部10の各コイル14a、14bには、図3(c)に示した向きの電流Iを通電し、左辺側の1次側磁束発生部10の各コイル14a、14bには、図3(b)に示した向きの電流Iを通電した状態を示す。したがって、右辺側の2次側磁束発生部20の各突極21a、21bには本図の下向き(図3(c)の左向き)の磁力Fが作用し、左辺側の2次側磁束発生部20の各突極21a、21bには本図の上向き(図3(b)の右向き)の磁力Fが作用する。よって、テーブル2(図示省略)は時計回りにθ方向へ回転移動する。
【0032】
なお、図4(a)、(b)、(c)では、1対の1次側磁束発生部10の各磁石ユニット13a、13bにおける1組ずつの永久磁石12のN極とS極の磁極の向きを互いに同じ向きとしたが、これらの向きは互いに逆向きとすることもできる。この場合は、図4(b)、(c)に示した右辺側と左辺側の1次側磁束発生部10の各コイル14a、14bに通電する電流を、いずれも図3(b)または図3(c)に示した向きとするように、互いに同じ向きとすればよい。
【0033】
図5および図6は、前記1次側磁束発生部10と2次側磁束発生部20の平面形状の変形例を示す。この変形例では、1次側磁束発生部10の磁性体15と2次側磁束発生部20の磁性体22が平面内で少し屈曲する平面形状とされ、1次側磁束発生部10の2つの磁石ユニット13a、13bと、2次側磁束発生部20の2つの突極21a、21bが、それぞれテーブル2の回転方向に沿う円弧方向に各磁性体15、22で連結されている。したがって、テーブル2が回転移動しても各磁石ユニット13a、13bと突極21a、21bとの対向面の重なり代が減少せず、かつ、磁石ユニット13a、13bと突極21a、21b間を通る磁束により発生する磁力が回転方向に沿う円弧方向に向けられるので、テーブル2を回転移動させる駆動トルクを大きくすることができる。
【0034】
図7(a)、(b)、(c)は、それぞれ図3の1次側磁束発生部10と2次側磁束発生部20の変形例を示す。図7(a)の変形例は、1次側磁束発生部10に3つの磁石ユニット13a、13b、13cを設け、2次側磁束発生部20にこれらと対向する3つの突極21a、21b、21cを設けて、これらの3つずつの磁石ユニット13a、13b、13cと突極21a、21b、21cを、それぞれ磁性体15、22で連結したものである。各磁石ユニット13a、13b、13cには、磁極を逆向きとした1組ずつの永久磁石12が設けられ、隣合う磁石ユニット13aと磁石ユニット13b、および磁石ユニット13bと磁石ユニット13cは、1組の永久磁石12の磁極の向きの配列が互いに逆向きとされている。
【0035】
図7(a)の変形例では、例えば、各コイル14a、14b、14cに図中に示す方向に電流を通電すると、磁石ユニット13aの永久磁石12のN極から突極21aに入り、磁性体22を通って突極21bから磁石ユニット13bのS極に戻り、磁性体15を通って磁石ユニット13aに返る磁束の閉ループLと、磁石ユニット13cのN極から突極21cに入り、磁性体22を通って突極21bから磁石ユニット13bのS極に戻り、磁性体15を通って磁石ユニット13cに返る磁束の閉ループLとが形成される。これらの2つの閉ループLによって、2次側磁束発生部20に左向きの磁力Fが作用する。図示は省略するが、各コイル14a、14b、14cに通電する電流の向きを逆にすれば、右向きの磁力Fが作用する。
【0036】
図7(b)の変形例は、1次側磁束発生部10と2次側磁束発生部20に、それぞれ4つずつの対向する磁石ユニット13a、13b、13c、13dと突極21a、21b、21c、21dを設けて、これらをそれぞれ磁性体15、22で連結したものである。この変形例でも、各磁石ユニット13a、13b、13c、13dには、磁極を逆向きとした1組ずつの永久磁石12が設けられ、隣合う磁石ユニット13aと磁石ユニット13b、磁石ユニット13bと磁石ユニット13c、および磁石ユニット13cと磁石ユニット13dは、1組の永久磁石12の磁極の向きの配列が互いに逆向きとされている。
【0037】
図7(b)の変形例では、例えば、各コイル14a、14b、14c、14dに図中に示す方向に電流を通電すると、磁石ユニット13aの永久磁石12のN極から突極21aに入り、磁性体22を通って突極21bから磁石ユニット13bのS極に戻り、磁性体15を通って磁石ユニット13aに返る磁束の閉ループLと、磁石ユニット13cのN極から突極21cに入り、磁性体22を通って突極21bから磁石ユニット13bのS極に戻り、磁性体15を通って磁石ユニット13cに返る磁束の閉ループLと、磁石ユニット13cのN極から突極21cに入り、磁性体22を通って突極21dから磁石ユニット13dのS極に戻り、磁性体15を通って磁石ユニット13cに返る磁束の閉ループLとが形成される。これらの3つの閉ループLによって、2次側磁束発生部20に左向きの磁力Fが作用する。図示は省略するが、各コイル14a、14b、14c、14dに通電する電流の向きを逆にすれば、右向きの磁力Fが作用する。
【0038】
図7(c)の変形例は、1次側磁束発生部10の2つの磁石ユニット13a、13bに、磁極を交互に上下方向逆向きとした2組ずつの永久磁石12を設け、2次側磁束発生部20に、2つの磁石ユニット13a、13bの2組の永久磁石12、すなわち4組の永久磁石12と対向する4つの突極21a、21b、21c、21dを設け、2つの磁石ユニット13a、13bを磁性体15で連結し、4つの突極21a、21b、21c、21dを磁性体22で連結したものである。この変形例では、隣合う磁石ユニット13aと磁石ユニット13bは、2組の永久磁石12の磁極の向きの配列が互いに逆向きとされている。
【0039】
図7(c)の変形例では、例えば、各コイル14a、14bに図中に示す方向に電流を通電すると、磁石ユニット13aの2つのN極からそれぞれ2つの突極21a、21bに入り、磁性体22を通って2つの突極21c、21dからそれぞれ磁石ユニット13bの2つのS極に戻り、磁性体15を通って磁石ユニット13aに返る磁束の閉ループLが形成される。よって、2次側磁束発生部20に左向きの磁力Fが作用する。図示は省略するが、各コイル14a、14bに通電する電流の向きを逆にすれば、右向きの磁力Fが作用する。
【0040】
図8は、第2の実施形態を示す。このテーブル装置は、前記矩形板状のベース1とテーブル2の対向する2組の辺部近傍に、それぞれ2対の1次側磁束発生部10と2次側磁束発生部20が、テーブル2の回転中心に対して対称となる位置に設けられている点が第1の実施形態のものと異なる。その他の部分は第1の実施形態のものと同じであり、図2に示したものと同様に、各1次側磁束発生部10の2つの磁石ユニット13a、13bは磁性体15で連結され、各2次側磁束発生部20の2つの突極21a、21bは磁性体22で連結されている。また、各磁性体15、22は、それぞれベース1とテーブル2の各辺近傍に設けられた孔に嵌め込まれて固定されている。
【0041】
上述した第1および第2の実施形態では、ベースとテーブルを横向きに配置し、ベースの上側にテーブルを対向させたが、本発明に係るテーブル装置は、ベースとテーブルを縦向きに配置し、ベースの横側にテーブルを対向させたものとすることもできる。この場合は、テーブルを横向きの軸で回転移動可能に支持するとよい。
【0042】
図9は、第3の実施形態を示す。このテーブル装置は、ベース101の上側に、Y方向に直線移動するYテーブル102と、X方向に直線移動するXテーブル103を順に積み重ね、Xテーブル103の上側にθ方向に回転移動するθテーブル104を配置したXYθテーブル装置である。回転移動の固定側のベースとなるXテーブル103には、対向する1組の辺部に1対の1次側磁束発生部10が、θテーブル104の回転中心に対して対称となる位置に設けられ、θテーブル104の1組の辺部近傍には、各1次側磁束発生部10と対向するように1対の2次側磁束発生部20が設けられている。プレート103aとθテーブル104は、非磁性材料としてのアルミニウムで形成されている。
【0043】
第1の実施形態のものと同様に、前記θテーブル104はXテーブル103のプレート103aの中央部にベアリング3で回転移動可能に支持されている。また、図2に示したものと同様に、1次側磁束発生部10は2つの磁石ユニット13a、13bを磁性体15で連結したものとされ、2次側磁束発生部20は2つの突極21a、21bは磁性体22で連結したものとされている。なお、磁性体15は、Xテーブル103の辺部に設けられた切欠き部に嵌め込まれて固定され、磁性体22は、第1の実施形態のものと同様に、θテーブル104の辺部近傍に設けられた孔に嵌め込まれて固定されている。
【0044】
なお、前記Xテーブル103とYテーブル102は、それぞれリニアモータ105a、105bによって直線駆動され、レール106a、106bに案内されて直線移動する。この実施形態では、上側のプレート103aとθテーブル104が軽量なアルミニウムで形成されているので、これらのリニアモータ105a、105bの出力を低減することができる。
【0045】
上述した第3の実施形態では、テーブル装置をXYθテーブル装置とし、XテーブルとYテーブルをリニアモータで直線移動させるものとしたが、本発明に係るテーブル装置は、例えば、X方向とY方向の2方向に移動可能なテーブルを備えた異なるテーブル構成のXYθテーブル装置や、X方向に移動するテーブルのみを備えたXθテーブル装置とすることもできる。また、直線移動機構もリニアモータに限定されることはなく、他の形式の磁力式移動機構や、ボールねじ等を用いた機械式移動機構とすることもできる。さらに、この実施形態でも、ベース、Yテーブル、Xテーブルおよびθテーブルを縦向きに並べて配置することもできる。
【0046】
上述した各実施形態では、固定側のベースに1次側磁束発生部を設け、移動側のテーブルに2次側磁束発生部を設けたが、移動側に1次側磁束発生部を設け、固定側に2次側磁束発生部を設けることもできる。
【0047】
上述した各実施形態では、ベースやテーブルを形成する非磁性材料をアルミニウムとしたが、この非磁性材料は軽量なものが好ましく、他の軽金属やその合金、プラスチックや強化プラスチック等とすることもできる。また、テーブル装置の用途によっては、非磁性のオーステナイト系ステンレス鋼等とすることもできる。
【0048】
上述した各実施形態では、ベースとテーブルを矩形状のものとし、1次側磁束発生部と2次側磁束発生部をこれらの辺部近傍に沿わせて設けたが、少なくとも1対の1次側磁束発生部と2次側磁束発生部は、テーブルの回転中心に対して対称となる位置にあればよく、ベースやテーブルのコーナー部等に設けることもできる。また、ベースとテーブルの形状も矩形状に限定されることはなく、多角形状や円形状等とすることもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 ベース
2 テーブル
3 ベアリング
10 1次側磁束発生部
11 鉄心部
12 永久磁石
13a、13b、13c、13d 磁石ユニット
14a、14b、14c、14d コイル
15 磁性体
20 2次側磁束発生部
21a、21b、21c、21d 突極
22 磁性体
101 ベース
102 Yテーブル
103 Xテーブル
104 θテーブル
105a、105b リニアモータ
106a、106b レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9