特許第6299435号(P6299435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299435
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】媒体収納装置及び媒体取引装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20180319BHJP
   B65H 29/51 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   G07D9/00 405C
   G07D9/00 456F
   B65H29/51
【請求項の数】14
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-111422(P2014-111422)
(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公開番号】特開2015-225596(P2015-225596A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082740
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵基
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】岩月 敬
【審査官】 須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−196431(JP,A)
【文献】 特開2011−016625(JP,A)
【文献】 特開平06−091983(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/052795(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D9/00−9/06
B65H29/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉状の媒体が周側面に巻き付けられるドラムと、
前記ドラムの周囲に形成された走行経路に沿って走行し、前記ドラムの周側面に前記媒体を巻き付けるテープと、
前記テープの走行方向に関する端部近傍に設けられ、該テープに照射される光に対する応答特性が前記端部以外の通常領域と相違する相違領域と、
前記走行経路上に設定された検出箇所において、前記テープから光の照射に対する応答特性を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果を基に、前記テープのうち使用により前記応答特性が変化した変化領域と区別して、前記相違領域が前記検出箇所に到達したか否かを判断する判断部と
を具えることを特徴とする媒体収納装置。
【請求項2】
前記判断部は、前記検出部による検出結果が所定の判断条件を満たすか否かを基に、前記テープのうち前記検出箇所に到達した部分が、前記相違領域又は前記変化領域の何れであるかを判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体収納装置。
【請求項3】
前記判断条件は、前記検出部により前記通常領域の場合と異なる前記応答特性が得られた期間が、所定の基準期間を超えることである
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体収納装置。
【請求項4】
前記判断条件は、前記テープのうち前記検出部により前記通常領域の場合と異なる前記応答特性が得られた部分の長さが、所定の基準長さを超えることである
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体収納装置。
【請求項5】
前記判断部は、前記判断条件が満たされない場合、前記テープのうち前記応答特性が前記通常領域と相違する部分の長さを表す相違長値を所定の通知対象に通知する
ことを特徴とする請求項4に記載の媒体収納装置。
【請求項6】
前記判断部は、前記判断条件が満たされない場合、前記テープのうち前記応答特性が前記通常領域と相違する部分の長さを表す相違長値を所定の記憶部に記憶する
ことを特徴とする請求項4に記載の媒体収納装置。
【請求項7】
前記相違長値は、所定の基準長さに対する、前記応答特性が前記通常領域と相違する部分の長さの割合である
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の媒体収納装置。
【請求項8】
前記相違領域は、前記テープに対し、前記媒体が前記ドラムに巻き付けられた場合の周方向に沿った長さよりも長い範囲に渡り形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体収納装置。
【請求項9】
前記判断部は、前記判断条件が満たされない場合であって、且つ前記判断条件と異なる保守判断条件が満たされる場合、所定の通知対象に対し、前記テープの保守作業を促す通知を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体収納装置。
【請求項10】
前記ドラムに巻き付けられた前記媒体の枚数を検出する枚数検出部
をさらに具え、
前記判断部は、前記判断条件が満たされる場合、さらに前記枚数検出部による前記媒体の枚数を検出した結果を用いる枚数判断条件を満たすか否かを基に、前記テープの前記相違領域が前記検出箇所に到達したか否かを判断する
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体収納装置。
【請求項11】
前記判断部は、前記判断条件が満たされ前記枚数判断条件が満たされなかった場合、所定の通知対象に対し、前記テープの保守作業を促す通知を行う
ことを特徴とする請求項10に記載の媒体収納装置。
【請求項12】
前記テープは、前記ドラムに前記媒体を巻き付け始める始端部と、当該ドラムに当該媒体を巻き付け終える終端部とに前記相違領域がそれぞれ設けられ、
前記判断部は、前記始端部の前記相違領域が前記検出部に到達したか否かを判断するための前記判断条件と、前記終端部の前記相違領域が前記検出部に到達したか否かを判断するための前記判断条件とを相違させる
ことを特徴とする請求項2に記載の媒体収納装置。
【請求項13】
前記検出部は、前記テープの一面側から所定の検出光を照射し、その反対面側において前記テープを透過した前記検出光の強度を検出し、
前記テープは、前記相違領域における前記検出光の透過率が他の領域よりも低減されている
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体収納装置。
【請求項14】
利用者との間で取引される紙葉状の媒体が周側面に巻き付けられるドラムと、
前記ドラムの周囲に形成された走行経路に沿って走行し、前記ドラムの周側面に前記媒体を巻き付けるテープと、
前記テープの走行方向に関する端部近傍に設けられ、該テープに照射される光に対する応答特性が前記端部以外の通常領域と相違する相違領域と、
前記走行経路上に設定された検出箇所において、前記テープから光の照射に対する応答特性を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果を基に、前記テープのうち使用により前記応答特性が変化した変化領域と区別して、前記相違領域が前記検出箇所に到達したか否かを判断する判断部と
を具えることを特徴とする媒体取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は媒体収納装置及び媒体取引装置に関し、例えば顧客との間で紙幣等の媒体を取引する現金自動預払機(ATM)等に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関等で使用される現金自動預払機等においては、顧客との取引内容に応じて、例えば顧客に紙幣や硬貨等の現金を入金させ、また顧客へ現金を出金するようになっている。
【0003】
現金自動預払機としては、例えば顧客との間で紙幣の授受を行う紙幣入出金口と、投入された紙幣の金種及び真偽を鑑別する鑑別部と、投入された紙幣を一時的に保留する一時保留部と、金種ごとに紙幣を格納する紙幣収納庫とを有するものがある。
【0004】
この現金自動預払機は、入金取引において、顧客により紙幣入出金口に紙幣が投入されると、投入された紙幣を鑑別部で鑑別し、正常紙幣と鑑別された紙幣を一時保留部で保留する一方、取引すべきでないと鑑別された紙幣を紙幣入出金口へ戻して顧客に返却する。続いて現金自動預払機は、入金金額を顧客に提示し、入金金額の確定及び取引の継続が指示されると、一時保留部に保留している紙幣を鑑別部へ搬送し、鑑別された金種に応じて各紙幣収納庫へ収納する。
【0005】
一時保留部としては、例えば回転する円筒状のドラム及び2本の長いテープを有し、両テープの間に紙幣を挟んだ状態で当該ドラムの周囲に紙幣を巻き付けていくものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
各テープは、それぞれ所定のリールに巻き取られており、当該リールから引き出され、所定の走行経路に沿って走行した後、ドラムの周側面に到達する。各テープの始端部は、ドラムの周側面に重ねるように固定されている。また各テープの終端部は、各リールにそれぞれ固定されている。
【0007】
この一時保留部は、紙幣を収納する場合、2本のテープの間に紙幣を挟んだ状態で、ドラムを所定の巻付方向に回転させることにより、当該ドラムの周側面に紙幣を順次巻き付け、収納していく。また一時保留部は、紙幣を繰り出す場合、ドラムを巻付方向と反対の巻戻方向へ回転させると共に各リールを回転させてテープを巻き取ることにより、ドラムの周側面から紙幣を順次引き剥がし、繰り出していく。
【0008】
ところで各テープは、全体的に光透過率の高い樹脂材料等により構成されると共に、一方のテープにおける始端部近傍及び他方のテープにおける終端部近傍に、光透過率が低く遮光する遮光領域がそれぞれ形成されている。
【0009】
さらに一時保留部には、各テープの走行経路上における所定の検出箇所に、当該テープが光を透過するか否かを検出するテープセンサがそれぞれ設けられており、このテープセンサによる検出結果を所定の制御部に通知する。
【0010】
制御部は、この検出結果を基に、光の透過率が低いことを検出した場合、検出箇所にテープの始端部又は終端部が到達したと判断して、一時保留部におけるドラムやリールの回転を停止させる。これにより一時保留部は、テープに過大な張力が加えられることによる損傷を未然に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2013−196432号公報(第5図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら一時保留部では、入金された紙幣が汚れていた場合、この汚れがテープに付着することがあり、紙幣の収納及び繰出が繰り返されることにより、汚れが蓄積していく可能性がある。このような場合、一時保留部のテープセンサは、テープのうち汚れが付着した部分が検出箇所に到達したときに、遮光領域の場合と同様、光の透過率が低いことを検出して制御部に通知することになる。
【0013】
このとき制御部では、テープの汚れが付着した部分を遮光領域と誤認してしまい、ドラムやリールの回転を誤って停止させてしまう可能性がある。具体的には、例えばドラムにテープと共に巻き付けられた紙幣が残っているにも拘わらず、テープの始端部に到達したものと誤認して紙幣の繰出を途中で停止してしまうおそれがある。このような場合、現金自動預払機では、入金取引等を正常に継続できないため、金融機関の職員や保守作業員等による対処が必要となる、という問題があった。
【0014】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、媒体の収納及び繰出を正常に行い得る媒体収納装置及び媒体取引装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる課題を解決するため本発明の媒体収納装置においては、紙葉状の媒体が周側面に巻き付けられるドラムと、ドラムの周囲に形成された走行経路に沿って走行し、ドラムの周側面に媒体を巻き付けるテープと、テープの走行方向に関する端部近傍に設けられ、該テープに照射される光に対する応答特性が端部以外の通常領域と相違する相違領域と、走行経路上に設定された検出箇所において、テープから光の照射に対する応答特性を検出する検出部と、検出部による検出結果を基に、テープのうち使用により応答特性が変化した変化領域と区別して、相違領域が検出箇所に到達したか否かを判断する判断部とを設けるようにした。
【0016】
また本発明の媒体取引装置においては、利用者との間で取引される紙葉状の媒体が周側面に巻き付けられるドラムと、ドラムの周囲に形成された走行経路に沿って走行し、ドラムの周側面に媒体を巻き付けるテープと、テープの走行方向に関する端部近傍に設けられ、該テープに照射される光に対する応答特性が端部以外の通常領域と相違する相違領域と、走行経路上に設定された検出箇所において、テープから光の照射に対する応答特性を検出する検出部と、検出部による検出結果を基に、テープのうち使用により応答特性が変化した変化領域と区別して、相違領域が検出箇所に到達したか否かを判断する判断部とを設けるようにした。
【0017】
これにより、検出部においてテープに光を照射したときに得られる応答特性が、通常領域の応答特性と相違した場合、判断部により、この応答特性が得られた部分が変化領域であるか相違領域であるかを適切に区別した上で、相違領域が検出箇所に到達したか否かを精度良く判断することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、検出部によりテープから得られた応答特性が通常領域と相違した場合、判断部により変化領域であるか相違領域であるかを適切に区別した上で、相違領域が検出箇所に到達したか否かを精度良く判断することができる。かくして本発明は、媒体の収納及び繰出を正常に行い得る媒体収納装置及び媒体取引装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】現金自動預払機の外観構成を示す略線的斜視図である。
図2】現金自動預払機の内部構成を示すブロック図である。
図3】遠隔管理システムの構成を示す略線図である。
図4】紙幣入出金機の構成を示す略線図である。
図5】一時保留部の構成を示す略線図である。
図6】一時保留部の構成を示す略線図である。
図7】テープの構成を示す略線図である。
図8】第1の実施の形態による巻取処理手順を示すフローチャートである。
図9】第1の実施の形態による巻戻処理手順を示すフローチャートである。
図10】第2の実施の形態による巻取処理手順を示すフローチャートである。
図11】第2の実施の形態による巻戻処理手順を示すフローチャートである。
図12】第3の実施の形態による巻取処理手順を示すフローチャートである。
図13】第3の実施の形態による巻戻処理手順を示すフローチャートである。
図14】第3の実施の形態による保守画面の構成を示す略線図である。
図15】第3の実施の形態によるリモート保守監視画面の構成を示す略線図である。
図16】第4の実施の形態による巻取処理手順を示すフローチャートである。
図17】第5の実施の形態による巻取処理手順を示すフローチャートである。
図18】第6の実施の形態による巻取処理手順を示すフローチャートである。
図19】第6の実施の形態による巻戻処理手順を示すフローチャートである。
図20】第6の実施の形態による汚れ情報保存処理手順を示すフローチャートである。
図21】第6の実施の形態による保守画面の構成を示す略線図である。
図22】第6の実施の形態によるリモート保守監視画面の構成を示す略線図である。
図23】第7の実施の形態による一時保留部の構成を示す略線図である。
図24】第7の実施の形態によるテープの構成を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0021】
[1.第1の実施の形態]
[1−1.現金自動預払機の全体構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関等に設置され、顧客との間で入金取引や出金取引等の現金に関する取引を行うようになっている。
【0022】
筐体2は、その前側に顧客が対峙した状態で紙幣BLの投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に接客部3が設けられている。接客部3は、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになされており、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
【0023】
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入され、または排出する。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部4A(後述する)が設けられている。入出金口5は、顧客が入金する紙幣BLが投入され、また顧客へ出金する紙幣BLを排出する。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞する。因みに紙幣BLは、例えば長方形の紙で構成されている。
【0024】
操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチパネルとが一体化されている。因みに操作表示部は、保守作業員等によって保守作業が行われる場合、保守作業用の画面を表示することもできる。
【0025】
テンキー7は、「0」〜「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部8A(後述する)が設けられている。
【0026】
以下では、現金自動預払機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0027】
筐体2内には、図2に示すように、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣BLに関する種々の処理を行う紙幣入出金機10の他、上述したカード処理部4A、レシート処理部8Aや操作表示部6等が設けられている。また主制御部9は、外部との間で種々の情報を送受信する通信ケーブル77が接続されている。
【0028】
主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成され、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0029】
ところで現金自動預払機1は、図3に示すように、遠隔管理システム70と接続されている。遠隔管理システム70は、リモート保守センタ72と金融機関等の店舗71とがネットワーク回線73によりそれぞれ接続された構成となっている。
【0030】
各店舗71には、複数の現金自動預払機1が設置されている。各現金自動預払機1は、それぞれ固有の装置番号が割り当てられており、また通信ケーブル77を介してルータ等でなるネットワーク機器76と接続されている。このネットワーク機器76は、ネットワーク回線73と接続されている。一方、リモート保守センタ72には、保守装置78が設置されている。この保守装置78は、一般的なコンピュータ装置と同様、表示部や操作部等を有している。
【0031】
保守装置78は、ネットワーク回線73、ネットワーク機器76及び通信ケーブル77を介して各店舗71の各現金自動預払機1と情報を送受信し、各現金自動預払機1から送信されるエラー情報等を一元的に管理する。
【0032】
一方、現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、図4に側面図を示すように、紙幣に関する種々の処理を行う複数の部分が組み合わされた構成となっている。また紙幣入出金機10の各部分は、紙幣制御部11により制御される。
【0033】
紙幣制御部11は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣の搬送先を決定する処理等、種々の処理を行う。また紙幣制御部11は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0034】
例えば顧客が現金自動預払機1との間で入金取引を行う場合、紙幣制御部11は、主制御部9(図1)等と連携しながら、操作表示部6を介して所定の操作入力を受け付けた後、入出金口5のシャッタを開いて入出金部12内へ紙幣を投入させる。
【0035】
入出金部12は、紙幣が投入されると、入出金口5(図1)のシャッタを閉じてから紙幣を1枚ずつ取り出し、搬送部13へ受け渡す。搬送部13は、紙幣入出金機10内で紙幣を各部へ搬送し得るようになっており、受け渡された紙幣を短辺方向に沿って進行させ、鑑別部14へ搬送する。鑑別部14は、その内部で紙幣を搬送しながら当該紙幣の金種及び真偽、並びに損傷の程度等を鑑別し、その鑑別結果を紙幣制御部11へ通知する。これに応じて紙幣制御部11は、取得した鑑別結果に基づいて当該紙幣の搬送先を決定する。
【0036】
このとき搬送部13は、鑑別部14において正常と鑑別された紙幣(いわゆる正券)を一時保留部15へ搬送する等して一時的に保留させる一方、取引すべきでないと鑑別された紙幣(いわゆる損券や偽券等)を入出金部12へ搬送して顧客に返却する。
【0037】
その後紙幣制御部11は、操作表示部6(図1)を介して顧客に入金金額を確定させ、一時保留部15に保留している紙幣を鑑別部14へ搬送させてその金種及び損傷の程度等を鑑別させ、その鑑別結果を取得する。そして紙幣制御部11は、紙幣の損傷の程度が大きければ、これを再利用すべきでないリジェクト紙幣としてリジェクト庫17へ搬送して収納させ、損傷の程度が小さければ、その金種に応じた紙幣収納庫16に収納させる。
【0038】
一方、例えば顧客が現金自動預払機1との間で出金取引を行う場合、紙幣制御部11は、主制御部9等と連携しながら、操作表示部6(図1)を介して所定の操作入力を受け付けた後、出金すべき金額に応じた紙幣を紙幣収納庫16から繰り出させる。続いて紙幣制御部11は、この紙幣を搬送部13により鑑別部14へ搬送して鑑別させた上で入出金部12へ搬送し、入出金口5(図1)のシャッタを開いてこの紙幣を顧客に取り出させる。
【0039】
このように紙幣入出金機10では、入金取引において、顧客から入金された紙幣を一時保留部15へ搬送して収納し、また当該一時保留部15から紙幣を繰り出して各紙幣収納庫16等へ搬送するようになっている。
【0040】
[1−2.一時保留部の構成]
一時保留部15は、図5(A)及び(B)に示すように、フレーム20内に各部品が取り付けられた構成となっている。因みに図5(A)及び(B)は、一時保留部15の右側面図及び後面図をそれぞれ模式的に表したものであり、説明の都合上、モータやギア等といった一部の部品を省略している。
【0041】
一時保留部15は、制御部21により全体を制御されるようになっている。制御部21は、主制御部9や紙幣制御部11(図4)と同様、図示しないCPUを中心に構成されている。また制御部21は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に巻取処理プログラムや巻戻処理プログラムのような各種プログラム及び各種変数等、種々の情報を記憶させる。
【0042】
この制御部21は、記憶部から各種プログラムを読み出して実行し、また紙幣制御部11等とも連携することにより、ドラムの回転やテープの走行に関する制御等、種々の処理を行う。
【0043】
一時保留部15のフレーム20内における中央付近には、ドラム22が設けられている。ドラム22は、中心軸を左右方向に向けた円筒状に形成されており、フレーム20に対し回転軸23を介して回転可能に取り付けられている。ドラム22は、制御部21の制御に基づいてモータ(図示せず)からの駆動力が伝達されることにより、回転軸23を中心として巻取方向R1又は巻戻方向R2へ回転する。
【0044】
ドラム22の前方には、紙幣入出部24が設けられている。紙幣入出部24は、図示しないローラやガイド部材等の組み合わせによって構成されており、搬送部13(図4)との間で紙幣BLを授受すると共に、当該紙幣BLの紙面を上下に向け短辺を前後方向に沿わせた姿勢のまま前後方向に搬送する。
【0045】
ドラム22の上方には、紙幣BLを案内する可動ガイド25が設けられている。可動ガイド25は、前後方向に長い板状に形成されると共に、その前端において回動軸26を介して紙幣入出部24に対し回動可能に支持されている。また可動ガイド25は、後端近傍にローラ27が取り付けられており、図示しない付勢手段により、当該ローラ27の周側面をドラム22の周側面に当接させている。さらに可動ガイド25の前方には、紙幣BLを案内する搬送ガイド28が設けられている。
【0046】
またフレーム20内には、細長いフィルム状に形成された外テープ31及び内テープ41をそれぞれ所定の走行経路に沿って走行させる外テープ走行系30及び内テープ走行系40が設けられている。
【0047】
外テープ31及び内テープ41は、いずれも光の透過性が高い樹脂材料でなり、薄いフィルム状に形成されている。このため外テープ31及び内テープ41は、多層に重ねられた場合にもその厚さを比較的小さく抑えることができ、また柔軟性に富んでいる反面、強度が比較的弱くなっている。
【0048】
外テープ31及び内テープ41における長手方向の長さは、例えば30[m]のように、ドラム22の周側面に対し数十周に渡って巻き付け得る程度に十分に長くなっている。一方、外テープ31及び内テープ41における短手方向の長さ(すなわちテープ幅)は、例えば18[mm]のように、紙幣BLの長辺よりも十分に短くなっている。
【0049】
外テープ走行系30は、フレーム20内における概ね上側半分の範囲に配置されており、外テープ31の他、外リール32、回転軸33及びプーリ34により構成されている。
【0050】
外リール32は、糸巻き状に構成されており、フレーム20内におけるドラム22の上方に設けられている。この外リール32は、ドラム22の回転軸23と平行な回転軸33に挿通されており、当該回転軸33を中心に回転する。また外リール32には、外テープ31における長手方向の一端である終端部が周側面に固定された上で、当該周側面に当該外テープ31が巻回される。
【0051】
プーリ34は、中心軸を左右方向に向けた小さな円筒状に形成されており、紙幣入出部24内における上寄りに設けられている。プーリ34は、左右方向に沿った回転軸を中心として、自在に回転する。
【0052】
外リール32に巻回された外テープ31は、その先端が当該外リール32から前下方へ引き出され、プーリ34における前側ないし下側の周側面に沿って後方向へ折り返されるよう引き回されてから、ドラム22の周側面に到達し、固定されている。因みに外リール32は、図示しないテンションスプリングにより、外テープ31を巻き取る方向へ付勢されており、当該外テープ31に対し常に所定の張力を持たせている。
【0053】
内テープ走行系40は、外テープ走行系30と概ね上下対称に構成されている。すなわち内テープ走行系40は、フレーム20内における概ね下側半分の範囲に配置されており、内テープ41の他、内リール42、回転軸43及びプーリ44により構成されている。
【0054】
内リール42は、外リール32と同様の糸巻き状に構成されており、ドラム22の下方に設けられ、回転軸43を中心に回転する。また内リール42には、内テープ41の終端部が周側面に固定された上で、当該周側面に当該内テープ41が巻回される。因みに内リール42における内テープ41の巻回方向は、外リール32における外テープ31の巻回方向とは反対となる。プーリ44は、プーリ34と同様に構成されており、紙幣入出部24内における下寄りに設けられている。
【0055】
内リール42に巻回された内テープ41は、その先端が当該内リール42から前上方へ引き出され、プーリ44における前側ないし上側の周側面に沿って後方向へ折り返されるよう引き回されてから、ドラム22の周側面に対し、外テープ31の内側に重なるように固定されている。因みに内リール42は、外リール32と同様、内テープ41に対し常に所定の張力を持たせている。
【0056】
かかる構成により一時保留部15は、ドラム22を巻取方向R1へ回転させると、その周側面に内テープ41及び外テープ31を順次重ねるようにして巻き付けていく。このとき一時保留部15は、内テープ41と外テープ31との間に紙幣BLを挟んでいれば、当該内テープ41及び外テープ31と共に当該紙幣BLをドラム22の周側面に巻き付けることができる。一時保留部15は、このような巻付処理を繰り返すことにより、図6に示すように、ドラム22の周側面に紙幣BLを順次巻き付けて収納する。
【0057】
また一時保留部15は、ドラム22を巻戻方向R2へ回転させると共に外リール32及び内リール42をそれぞれ所定の巻取方向へ回転させると、当該ドラム22の周側面から外テープ31及び内テープ41により挟まれたままの紙幣BLを引き剥がす。この紙幣BLは、紙幣入出部24により搬送部13(図4)へ受け渡され、一時保留部15から繰り出される。一時保留部15は、このような巻戻処理を繰り返すことにより、ドラム22の周側面に巻き付けていた紙幣BLを順次引き剥がして繰り出す。
【0058】
さらに外テープ走行系30には、外テープ31の走行経路上における所定の箇所、具体的には外リール32とプーリ34との間に、テープセンサ35が配置されている。テープセンサ35は、外テープ31を両面から挟むように、所定の波長でなる検出光を発光する発光部と当該検出光を受光する受光部とを対向させている。
【0059】
このテープセンサ35は、発光部から検出光を発光し、この検出光のうち外テープ31を透過した部分を受光部により受光してその明るさに応じた受光信号を生成し、これを制御部21に送出する。すなわちテープセンサ35は、外テープ31のうち検出光が照射されている箇所(以下これを検出箇所P1と呼ぶ)における検出光の透過率、すなわち明るさに応じた受光信号を制御部21へ送出する。
【0060】
制御部21は、テープセンサ35から取得した受光信号の信号レベルが所定のしきい値以上であれば「明」レベルと判別し、当該しきい値未満であれば「暗」レベルと判別する。すなわち、このとき制御部21において得られた判別結果は、この時点でテープセンサ35の位置にある外テープ31の光透過率を、「明」レベル又は「暗」レベルに2値化した値となる。
【0061】
これと対応するように、内テープ走行系40には、内テープ41の走行経路上における所定の箇所、具体的には内リール42とプーリ44との間に、テープセンサ35と同様に構成されたテープセンサ45が配置されている。テープセンサ45は、内テープ41の検出箇所P2における検出光の透過率に応じた受光信号生成して制御部21へ送出する。
【0062】
一方、図7(A)及び(B)に示すように、外テープ31における始端部(ドラム22に固定されている部分)の近傍と、内テープ41における終端部(内リール42に固定されている部分)の近傍には、遮光領域SAが設けられている。
【0063】
内テープ41の終端部に設けられた遮光領域SAは、巻取処理において内リール42から内テープ41が終端まで完全に引き出される前に検出箇所P2に到達するよう、十分に長い長さL1となっている。また外テープ31の始端部に設けられた遮光領域SAは、巻戻処理においてドラム22から外テープ31が始端まで完全に引き出される前に検出箇所P1に到達するよう、やはり十分に長い長さL2となっている。この長さL1及びL2は、紙幣BLにおける短辺の長さと比較しても十分に長くなっている。
【0064】
相違領域としての遮光領域SAは、外テープ31及び内テープ41における他の領域(以下これを通常領域NAと呼ぶ)と比較して、光の透過率が低減されている。このため制御部21は、検出箇所P1及びP2に外テープ31及び内テープ41の遮光領域SAが位置していれば、受光信号を基に「暗」レベルと判別し、通常領域NAが位置していれば、同様に「明」レベルと判別することになる。
【0065】
制御部21は、受光信号の判別結果を基に、巻付処理であればテープセンサ45の検出箇所に内テープ41の終端部が到達した時点で、巻戻処理であればテープセンサ35の検出箇所に外テープ31の始端部が到達した時点で、ドラム22の回転を停止させる(詳しくは後述する)。これにより制御部21は、各テープに過大な負荷が加えられること、及びこれに伴い各テープが損傷することを未然に防止できる。
【0066】
このように一時保留部15は、外テープ31及び内テープ41を用いてドラム22の周側面に紙幣を巻き付け、また引き剥がすと共に、テープセンサ35及び45により当該外テープ31及び内テープ41の検出箇所P1及びP2における光の透過率を検出し、その検出結果を基にドラム22の回転を制御する。
【0067】
[1−3.一時保留部における巻取処理及び巻戻処理]
上述したように、一時保留部15における基本的な動作原理として、制御部21は、テープセンサ35から取得した受光信号が「暗」レベルであれば、検出箇所P1が遮光領域SA、すなわち外テープ31の始端部近傍であると判断できる。また制御部21は、テープセンサ45から取得した受光信号が「暗」レベルであれば、検出箇所P2が遮光領域SA、すなわち内テープ41の終端部近傍であると判断できる。
【0068】
ところで一時保留部15では、紙幣BLを収納する場合、各紙幣BLの短辺を進行方向、すなわち外テープ31及び内テープ41における長手方向に合わせ、且つ各紙幣BL同士の間隔をほぼ一定に隔てながら、ドラム22の周側面に巻き付けていく。すなわち一時保留部15では、紙幣の収納及び繰出を繰り返したとしても、外テープ31及び内テープ41に対し紙幣BLが当接する部分は、毎回ほぼ同じ箇所となる。
【0069】
このため一時保留部15では、紙幣の収納及び繰出を繰り返すことにより、例えば図7(C)に示すように、内テープ41において毎回紙幣BLと当接する離散的な箇所に、汚れが徐々に付着していく。この汚れは、付着量が多い場合、テープセンサ35及び45の検出光を遮る場合がある。以下では、検出光を遮る程度に汚れが付着した領域を汚れ領域DAと呼ぶ。
【0070】
また一時保留部15では、紙幣の収納及び繰出をさらに繰り返した場合、図7(D)に示すように、変化領域としての汚れ領域DAの形成箇所が増加し、また各汚れ領域DAの範囲(長手方向に沿った長さ)も延長されていく。
【0071】
因みに一時保留部15では、その構造上、外テープ31及び内テープ41における始端側から順に紙幣BLを所定間隔毎に巻き付けていく。このため外テープ31及び内テープ41では、始端側から離散的な箇所に汚れ領域DAが形成されていくことになる。
【0072】
このように制御部21は、検出箇所P1又はP2に汚れ領域DAが到達していた場合にも、受光信号を「暗」レベルと判別することになる。このため制御部21は、受光信号の単純な判別結果を基に、検出箇所P1又はP2に遮光領域SAが到達しているか否か、すなわち外テープ31の始端部近傍又は内テープ41の終端部近傍が到達しているか否かを判断した場合、その判断を誤る可能性がある。
【0073】
そこで制御部21は、受光信号が「暗」レベルとなった期間を基に、検出箇所が遮光領域SAであるか否かを判断するようになっている。以下では、巻取処理及び巻戻処理それぞれにおける具体的な処理手順について説明する。
【0074】
[1−3−1.巻取処理手順]
一時保留部15の制御部21は、紙幣制御部11(図2)等から紙幣BLを内部に収納する指示を受け付けると、図8に示す巻取処理手順RT1を開始してステップSP1へ移る。ステップSP1において制御部21は、ドラム22の巻取方向R1への回転を開始させ、次のステップSP2に移る。ステップSP2において制御部21は、経過時間を計測するためのタイマ変数TEを値「0」に初期化し、次のステップSP3へ移る。
【0075】
ステップSP3において制御部21は、テープセンサ45から受光信号を取得し、次のステップSP4へ移る。ステップSP4において制御部21は、取得した受光信号が「明」レベルか否かを判定する。
【0076】
ここで肯定結果が得られると、このことは検出箇所P2において内テープ41が通常領域NAであり、遮光領域SA又は汚れ領域DAの何れでもないことを表している。このため制御部21は、再度ステップSP3へ戻ってドラム22の回転を継続させる。
【0077】
一方、ステップSP4において否定結果が得られると、このことは取得した受光信号が「暗」レベルであるため、検出箇所P2において内テープ41が遮光領域SA又は汚れ領域DAのいずれかであることを表している。このとき制御部21は、遮光領域SA又は汚れ領域DAのいずれであるかを判断するべく、次のステップSP5へ移る。
【0078】
ステップSP5において制御部21は、タイマ変数TEのカウントを開始し、次のステップSP6へ移る。因みにタイマ変数TEは、カウントが開始されると、所定時間毎に値が自動的に増加され、カウントが開始されてから経過した時間を表すようになっている。すなわちタイマ変数TEは、受光信号が「明」レベルから「暗」レベルに切り替わった時点(以下これを暗レベル開始時点と呼ぶ)からの経過時間を表すことになる。
【0079】
ステップSP6において制御部21は、タイマ変数TEが所定のしきい値SK1よりも大きいか否かを判定する。ここでしきい値SK1は、例えば内テープ41が所定の走行速度で、紙幣BLにおける短辺の長さと同等の距離を走行するのに要する時間を表す値となっている。このステップSP6において否定結果が得られると、このことは暗レベル開始時点からの経過時間が比較的短いことを表している。このとき制御部21は、次のステップSP7へ移る。
【0080】
ステップSP7において制御部21は、ステップSP3と同様にテープセンサ45から受光信号を取得し、次のステップSP8へ移る。ステップSP8において制御部21は、ステップSP4と同様に、取得した受光信号が「明」レベルか否かを判定する。
【0081】
ここで否定結果が得られると、このことは暗レベル開始時点以降、受光信号が「暗」レベルのまま継続していることを表している。このとき制御部21は、再度ステップSP6及びSP7を繰り返すことにより、タイマ変数TEがしきい値SK1を超えるのを待ち受ける。
【0082】
これと反対に、ステップSP8において肯定結果が得られると、このことは、暗レベル開始時点以降、タイマ変数TEがしきい値SK1に到達する前に受光信号が「明」レベルに変化したこと、すなわち内テープ41において検出光を遮った部分の長さが比較的短いことを表している。これは、内テープ41の終端部に比較的長い範囲LS(図7)に渡って形成された遮光領域SAでは無く、比較的短く形成された汚れ領域DAが検出箇所P2に位置しているため、この時点ではドラム22の回転を停止するべきでないことを意味している。このため制御部21は、再びステップSP2へ戻り、一連の処理を繰り返す。
【0083】
一方、ステップSP6において肯定結果が得られると、このことは暗レベル開始時点以降、受光信号が「暗」レベルのまま比較的長い時間が経過したこと、すなわち内テープ41において検出光を遮った部分の長さが比較的長いことを表している。これは、内テープ41の終端部に比較的長い範囲LS(図7)に渡って形成された遮光領域SAが検出箇所P2に位置しているため、ドラム22の回転を直ちに停止するべきであることを意味している。
【0084】
このとき制御部21は、次のステップSP9へ移ってドラム22の回転を停止させた後、その次のステップSP10へ移って巻取処理手順RT1を終了する。
【0085】
このように制御部21は、巻取処理において、タイマ変数TEがしきい値SK1を超える程度に長い時間に渡って受光信号が「暗」レベルであった場合にのみ、遮光領域SAが検出箇所P2に位置しているものと判断してドラム22の回転を停止させるようになっている。
【0086】
因みに一時保留部15では、しきい値SK1を大きくすることにより、汚れ領域DAと遮光領域SAとの判別精度を高めることができる反面、遮光領域SAであった場合に、受光信号が「暗」レベルになってから遮光領域SAであると判断できるまでに要する時間が長くなり、この間に内テープ41を巻ききってしまう恐れがある。この場合、内テープ41の全長及び遮光領域SAの長さを延長することで回避可能であるものの、今度は材料費の増加を招いてしまう。そこで実際のしきい値SK1は、これらの事情が総合的に勘案された上で、適切な値に設定されている。
【0087】
[1−3−2.巻戻処理手順]
一時保留部15の制御部21は、紙幣制御部11(図2)等から紙幣BLを繰り出す指示を受け付けると、図8と対応する図9に示す巻戻処理手順RT2を開始してステップSP11へ移る。ステップSP21において制御部21は、ドラム22の巻戻方向R2への回転を開始させ、次のステップSP22に移る。ステップSP2において制御部21は、時間を計測するためのタイマ変数TSを値「0」に初期化し、次のステップSP23へ移る。ステップSP23において制御部21は、テープセンサ35から受光信号を取得し、次のステップSP24へ移る。
【0088】
ステップSP24〜SP30において制御部21は、巻取処理手順RT1(図8)におけるステップSP4〜SP10とそれぞれ同様の処理を行う。ただし制御部21は、ステップSP25及びSP26において、タイマ変数TEに代えてタイマ変数TSを用い、また当該ステップSP26においてしきい値SK1に代えてしきい値SK2を用い、さらにステップSP27においてテープセンサ35から受光信号を取得する。
【0089】
すなわち制御部21は、巻戻処理において始端部を検出するためのしきい値SK2を、巻取処理において終端部を検出するために用いたしきい値SK1と別に用意することで、それぞれに最適な値を設定できるようになっている。
【0090】
かくして制御部21は、巻戻処理において、比較的長い時間に渡って受光信号が「暗」レベルであった場合にのみ、遮光領域SAが検出箇所P1に位置しているものと判断してドラム22の回転を停止させるようになっている。
【0091】
[1−4.動作及び効果]
以上の構成において、第1の実施の形態による一時保留部15の制御部21は、巻取処理及び巻戻処理において、テープセンサ35及び45からの受光信号が「暗」レベルとなった場合、その継続期間を表すタイマ変数TE又はTSをしきい値SK1又はSK2と比較する。
【0092】
ここで制御部21は、タイマ変数TE又はTSがしきい値SK1又はSK2を超えることにより、受光信号の「暗」レベルが比較的長く継続した場合のみ、外テープ31又は内テープ41の遮光領域SAが検出箇所P1又はP2に到達したと判断する。
【0093】
外テープ31又は内テープ41では、紙幣BLをドラム22の周側面に巻き付ける際に当該紙幣BLと当接する部分がほぼ決まっているため、汚れ領域DAが形成されたとしても、離散的であり、長手方向の長さが紙幣BLにおける短辺の長さを大きく超えることは無い。
【0094】
このため制御部21は、受光信号が「暗」レベルになったとしても、その継続期間が比較的短く、しきい値SK1又はSK2を超えなかった場合、これが汚れ領域DAに起因するものであることを精度良く判断できる。このような場合、制御部21は、ドラム22の回転を継続させることで、ドラム22に巻き付けるべき紙幣BLを引き続き巻き付けて収納することや、ドラム22から引き剥がすべき紙幣BLを引き続き引き剥がして繰り出すことができる。
【0095】
すなわち制御部21は、汚れ領域DAを終端部の遮光領域SAと誤検出してドラム22を誤って停止した場合における、巻取処理において収納すべき紙幣を収納しきれずに残してしまうことや、巻戻処理において繰り出すべき紙幣を繰り出さずに残してしまうことを未然に回避できる。
【0096】
また一時保留部15では、保守作業等において、汚れ領域DAを遮光領域SAと誤認識することを未然に防ぐためのテープの頻繁な清掃や交換を行う必要が無く、作業工数や費用の増加を必要最小限に抑えることも可能となる。
【0097】
以上の構成によれば、第1の実施の形態による一時保留部15は、巻取処理及び巻戻処理において、受光信号が「暗」レベルとなってからの継続期間を表すタイマ変数TE又はTSがしきい値SK1又はSK2を超えた場合のみ、外テープ31又は内テープ41の遮光領域SAが検出箇所P1又はP2に到達したと判断する。このため一時保留部15は、外テープ31及び内テープ41の汚れ領域DAを遮光領域SAと誤検出する可能性を格段に低減でき、真に遮光領域SAが検出箇所P1又はP2に到達した場合に、このことを正しく判断してドラム22の回転を停止させ、外テープ31又は内テープ41の損傷を適切に防止することができる。
【0098】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による一時保留部115(図5及び図6)は、第1の実施の形態による一時保留部15と比較して、制御部21に代わる制御部121を有する点において相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
【0099】
制御部121は、第1の実施の形態による制御部21と同様、図示しないCPUを中心に構成され、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有している。この制御部121は、第1の実施の形態と一部異なる手順に従い、巻取処理及び巻戻処理を行うようになっている。
【0100】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態におけるしきい値SK1及びSK2に代えて、長さしきい値FK1及びFK2が用いられる。この長さしきい値FK1及びFK2は、それぞれ次の(1)式及び(2)式により算出される。
【0101】
FK1=SK1×SPD ……(1)
FK2=SK2×SPD ……(2)
【0102】
ここで値SPDは、一時保留部115における外テープ31及び内テープ41の走行速度である。すなわち長さしきい値FK1及びFK2は、時間に相当する値であるしきい値SK1及びSK2にそれぞれ速度が乗算されることにより、長さを表す値となっている。
【0103】
この第2の実施の形態において、制御部121は、第1の実施の形態における巻取処理手順RT1及び巻戻処理手順RT2に代えて、図10に示す巻取処理手順RT3及び図11に示す巻戻処理手順RT4により、それぞれ巻取処理及び巻戻処理を行う。
【0104】
具体的に制御部121は、巻取処理手順RT3のステップSP46において、この時点における内テープ41の走行速度を表す値SPDを用いて(1)式に従って長さしきい値FK1を算出した上で、この長さしきい値FK1を用いた比較処理を行う。
【0105】
また制御部121は、巻戻処理手順RT4のステップSP66において、この時点における外テープ31の走行速度を表す値SPDを用いて(2)式に従って長さしきい値FK2を算出した上で、この長さしきい値FK2を用いた比較処理を行う。
【0106】
かかる構成により一時保留部115の制御部121は、外テープ31及び内テープ41の走行速度が変化する場合であっても、その時点における値SPDを用いて長さしきい値FK1及びFK2をそれぞれ算出することで、各テープの速度に依存しない、長さの次元における比較処理を行うことができる。
【0107】
その他の点においても、第2の実施の形態による一時保留部115は、第1の実施の形態による一時保留部15と同様の作用効果を奏し得る。
【0108】
以上の構成によれば、第2の実施の形態による一時保留部115は、巻取処理及び巻戻処理において、しきい値SK1及びSK2に内テープ41及び外テープ31の速度SPDをそれぞれ乗算して長さしきい値FK1及びFK2を算出し、タイマ変数TE又はTSがこの長さしきい値FK1及びFK2を超えた場合のみ、内テープ41又は外テープ31の遮光領域SAが検出箇所P2又はP1に到達したと判断する。このため一時保留部115は、外テープ31及び内テープ41の走行速度に拘わらず、汚れ領域DAを遮光領域SAと誤検出する可能性を格段に低減でき、真に遮光領域SAが検出箇所P2又はP1に到達した場合に、このことを正しく判断してドラム22の回転を停止させ、外テープ31及び内テープ41の損傷を適切に防止することができる。
【0109】
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による一時保留部215(図5及び図6)は、第1の実施の形態による一時保留部15と比較して、制御部21に代わる制御部221を有する点において相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
【0110】
制御部221は、第1の実施の形態による制御部21と同様、図示しないCPUを中心に構成され、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有している。この制御部221は、第1の実施の形態と一部異なる手順に従い、巻取処理及び巻戻処理を行うようになっている。
【0111】
この第3の実施の形態では、しきい値SK1及びSK2よりもそれぞれ小さい値でなるしきい値SK3及びSK4を予め設定しておき、タイマ変数TE又はTSがしきい値SK3及びSK4を超えた場合には、比較的長い汚れ領域DAがあるものと判断し、このことをプレアラームとして保守作業員や遠隔監視員等に通知するようになっている。
【0112】
具体的な処理として、制御部221は、第1の実施の形態における巻取処理手順RT1及び巻戻処理手順RT2に代えて、図12に示す巻取処理手順RT5及び図13に示す巻戻処理手順RT6により、それぞれ巻取処理及び巻戻処理を行う。
【0113】
制御部221は、巻取処理を行う場合、巻取処理手順RT5を開始してステップSP81へ移り、フラグFEの値を「0」にセットし、次のステップSP82へ移る。ここでフラグFEは、その値が「0」であれば、比較的長い汚れ領域DAが存在せず、その値が「1」であれば、比較的長い汚れ領域DAが存在することを意味する。
【0114】
ステップSP82〜SP86において制御部221は、第1の実施の形態におけるステップSP1〜SP5とそれぞれ同様の処理を行い、次のステップSP87へ移る。ステップSP87において制御部221は、タイマ変数TEがしきい値SK3よりも大きいか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、制御部221は、次のステップSP88へ移る。
【0115】
ステップSP88〜SP89において制御部221は、ステップSP84〜SP85とそれぞれ同様の処理を行う。このステップSP89において否定結果が得られると、制御部221は、再度ステップSP87及びSP88を繰り返すことにより、タイマ変数TEがしきい値SK3を超えるのを待ち受ける。
【0116】
一方、ステップSP89において肯定結果が得られると、このことは、暗レベル開始時点以降、タイマ変数TEがしきい値SK3に到達する前に受光信号が「明」レベルに変化したこと、すなわち内テープ41において検出光を遮った部分の長さが極めて短く、保守作業員や遠隔監視員等に通知する必要が無いことを表している。このとき制御部221は、再びステップSP83へ戻り、一連の処理を繰り返す。
【0117】
また、ステップSP87において肯定結果が得られると、このことは暗レベル開始時点以降、タイマ変数TEがしきい値SK3を超えており、内テープ41において検出光を遮った部分が少なくともある程度の長さを有していることを表している。このとき制御部221は、次のステップSP90へ移る。
【0118】
ステップSP90において制御部221は、今度はタイマ変数TEがしきい値SK1よりも大きいか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、制御部221は、次のステップSP91へ移る。
【0119】
ステップSP91〜SP92において制御部221は、ステップSP88〜SP89とそれぞれ同様の処理を行う。このステップSP92において否定結果が得られると、制御部21は、再度ステップSP90及びSP91を繰り返すことにより、タイマ変数TEがしきい値SK1を超えるのを待ち受ける。
【0120】
一方、ステップSP92において肯定結果が得られると、このことは、暗レベル開始時点以降、タイマ変数TEがしきい値SK3に到達した後であって、しきい値SK1に到達する前に受光信号が「明」レベルに変化したこと、すなわち内テープ41において検出光を遮った部分の長さが比較的長く、保守作業員や遠隔監視員等に通知する必要があることを表している。
【0121】
このとき制御部221は、次のステップSP93へ移り、フラグFEの値を「1」にセットしてから再びステップSP83へ戻り、遮光領域SAを検出するべく一連の処理を繰り返す。
【0122】
一方、ステップSP90において肯定結果が得られると、このことは内テープ41において検出光を遮った部分の長さが十分に長く、検出箇所P2に遮光領域SAが位置していることを意味している。このとき制御部221は、次のステップSP94へ移ってドラム22の回転を停止させた後、その次のステップSP95へ移る。
【0123】
ステップSP95において制御部221は、フラグFEの値が「1」であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは内テープ41に比較的長い汚れ領域DAが形成されていることを表しており、このとき制御部221は次のステップSP96へ移る。ステップSP96において制御部221は、プレアラームを主制御部9(図1及び図2)へ通知した後、ステップSP97へ移って巻取処理手順RT5を終了する。
【0124】
一方、ステップSP95において否定結果が得られた場合、このことは内テープ41に長い汚れ領域DAが形成されておらず、敢えてプレアラームを通知する必要が無いことを表している。このとき制御部221は、次のステップSP96へ移って巻取処理手順RT5を終了する。
【0125】
このように制御部221は、巻取処理において、タイマ変数TEがしきい値SK1を超えた段階で、遮光領域SAが検出箇所P2に位置しているものと判断してドラム22の回転を停止させる。これに加えて制御部221は、タイマ変数TEがしきい値SK3を超えた場合、十分に長い汚れ領域DAが形成されているものとして主制御部9へプレアラームを通知するようになっている。
【0126】
因みにしきい値SK3は、汚れ領域DAを解消する観点からはできるだけ小さい値とした方が良いものの、その反面として内テープ41の清掃や交換の頻度が高まり、保守作業における手間やコストの増加に繋がってしまう。反対に、しきい値SK3を大きな値とした場合、プレアラームの通知から実際に汚れ領域DAを遮光領域SAと誤検出してしまうまでの期間が短くなり、保守作業が行われる前に誤検出が発生する恐れもある。このためしきい値SK3は、これらの事情が勘案された上で、適切な値に設定される。
【0127】
また制御部221は、巻戻処理を行う場合、巻戻処理手順RT6(図13)を開始する。この巻戻処理手順RT6において、制御部221は、上述した巻取処理手順RT5(図12)と同様の処理を行う。
【0128】
ただし制御部221は、ステップSP101、SP113及びSP115において、フラグFEに代わるフラグFSを用い、またステップSP102においてドラム22を巻戻方向R2へ回転させる。さらに制御部221は、ステップSP103、SP106、SP107及びSP110においてタイマ変数TSを用い、ステップSP107においてしきい値SK4を、ステップSP110においてしきい値SK2を、それぞれ用いる。
【0129】
かくして制御部221は、巻戻処理において、タイマ変数TSがしきい値SK2を超えた段階で、遮光領域SAが検出箇所P1に位置しているものと判断してドラム22の回転を停止させる。これに加えて制御部221は、タイマ変数TSがしきい値SK4を超えた場合、十分に長い汚れ領域DAが形成されているものとして主制御部9へプレアラームを通知する。
【0130】
その後、現金自動預払機1の主制御部9は、保守作業員等による所定の保守操作が行われた場合、例えば操作表示部6(図1)や筐体2の後面側に設けられた保守用表示部(図示せず)等に、図14に示すような保守画面D1を表示する。このとき主制御部9は、この保守画面D1に、「Pre Alarm:テープが汚れています」といった内容のメッセージM1を表示することで、外テープ31又は内テープ41に比較的長い汚れ領域DAが形成されていることを保守作業員等に通知する。
【0131】
また現金自動預払機1の主制御部9は、リモート保守センタ72(図3)の保守装置78に対し、一時保留部15から通知されたプレアラームを、店舗71を識別するための情報や装置番号等と共に通知する。これに応じて保守装置78は、例えば所定の表示部に対し、図15に示すような監視テーブルT1を含むリモート保守監視画面D2を表示する。
【0132】
監視テーブルT1には、店舗71を特定するための「銀行」や「支店」、現金自動預払機1を特定するための「装置番号」、及びテープが汚れているか否かを表す「テープ汚れ」といった欄が設けられており、通知されたプレアラームに基づいた情報が各欄に表示される。このため保守装置78は、リモート保守センタ72のオペレータ等に対し、各店舗71の各現金自動預払機1に関する情報を統括的に通知することができる。
【0133】
以上の構成において、一時保留部215の制御部221は、タイマ変数TE及びTSがしきい値SK3又はSK4を超えた場合、十分に長い汚れ領域DAが形成されているものとして主制御部9へプレアラームを通知する。
【0134】
これにより一時保留部215は、運用の継続により外テープ31及び内テープ41に汚れが徐々に付着していくなかで、汚れ領域DAがある程度長くなった時点で、このことを検出してプレアラームを通知することができる。
【0135】
すなわち一時保留部215は、そのまま運用を継続した場合、汚れ領域DAがさらに長くなって遮光領域SAと誤認識する恐れがあるところ、その前の段階でプレアラームを通知することで、必要最小限の頻度で保守作業員等に外テープ31及び内テープ41の清掃作業や交換作業を行わせることができる。これを換言すれば、一時保留部215は、プレアラームを通知することにより、遮光領域SAの誤検知に伴う誤動作の発生頻度を格段に低減させ得る。
【0136】
これと反対に一時保留部215は、タイマ変数TE及びTSがしきい値SK3又はSK4よりも小さく、汚れ領域DAが十分に小さい段階では、プレアラームを通知しないことにより、保守作業員等に無駄な清掃作業や交換作業を行わせずに済む。
【0137】
その他の点においても、第3の実施の形態による一時保留部215は、第1の実施の形態による一時保留部15と同様の作用効果を奏し得る。
【0138】
以上の構成によれば、第3の実施の形態による一時保留部215は、巻取処理及び巻戻処理において、タイマ変数TE又はTSがしきい値SK1又はSK2を超えた場合、内テープ41又は外テープ31の遮光領域SAが検出箇所P2又はP1に到達したと判断することに加えて、しきい値SK3又はSK4を超えた場合、ある程度長い汚れ領域DAが形成されていると判断し、プレアラームを通知する。このため一時保留部215は、汚れ領域DAが極めて長くなり遮光領域SAとして誤検出される前に、外テープ31及び内テープ41の清掃や交換を促すことができると共に、真に遮光領域SAが検出箇所P2又はP1に到達した場合に、このことを正しく判断してドラム22の回転を停止させ、外テープ31及び内テープ41の損傷を適切に防止することができる。
【0139】
[4.第4の実施の形態]
第4の実施の形態による一時保留部315(図5及び図6)は、第1の実施の形態による一時保留部15と比較して、制御部21に代わる制御部321を有する点において相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
【0140】
制御部321は、第1の実施の形態による制御部21と同様、図示しないCPUを中心に構成され、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有している。この制御部321は、第1の実施の形態と一部異なる手順に従い、巻取処理及び巻戻処理を行うようになっている。
【0141】
一時保留部315は、その構造上、例えば内テープ41の終端部に形成された遮光領域SAが検出箇所P2に到達する場合、紙幣BLの収納枚数が、収納可能な最大の枚数(例えば200枚)に近い値となるはずである。また一時保留部315は、外テープ31の始端部終端部に形成された遮光領域SAが検出箇所P1に到達する場合、紙幣BLが殆ど収納されていないはずである。
【0142】
そこで第4の実施の形態では、タイマ変数TE又はTSがしきい値SK1又はSK2を超えた場合であっても、一時保留部315における紙幣BLの収納枚数が所定のしきい値ZE以上又はしきい値ZS以下であった場合に、検出箇所P2又はP1に遮光領域SAが到達したものと判断するようになっている。
【0143】
具体的な処理として、制御部321は、第1の実施の形態における巻取処理手順RT1に代えて、図16に示す巻取処理手順RT7により巻取処理を行う。制御部321は、巻取処理を行う場合、巻取処理手順RT7を開始してステップSP121へ移る。
【0144】
制御部321は、ステップSP121〜SP128において、第1の実施の形態におけるステップSP1〜SP8(図8)とそれぞれ同様の処理を行い、ステップSP126において肯定結果が得られると、次のステップSP129へ移る。
【0145】
ステップSP129において制御部321は、この時点においてドラム22の周側面に巻き付けられている紙幣BLの枚数、すなわち一時保留部315内に収納されている紙幣BLの枚数である収納枚数Z1を取得し、次のステップSP130へ移る。
【0146】
因みに一時保留部315は、紙幣入出部24(図5)内に、紙幣が通過したか否かを検出する紙幣通過センサが設けられており、その検出結果を制御部321へ通知している。制御部321は、この検出結果を基に、紙幣が通過した数を計数することにより、収納枚数Z1を取得する。
【0147】
ステップSP130において制御部321は、収納枚数Z1がしきい値ZE以上であるか否かを判定する。ここでしきい値ZEは、紙幣BLの検出誤差等を考慮し、例えば最大収納枚数が200枚である場合に、その90%である180枚に設定されている。
【0148】
ここで否定結果が得られると、このことは、一時保留部315におけるこの時点での紙幣BLの収納枚数が比較的少ないことから、内テープ41の終端部に形成された遮光領域SAが検出箇所P2に到達しておらず、汚れ領域DAが比較的長く形成されたためにタイマ変数がTEがしきい値SK1を超えた可能性が高いことを表している。このとき制御部321は、再びステップSP122へ戻り、一連の処理を繰り返すことにより、真に遮光領域SAが検出箇所P2に到達するのを待ち受ける。
【0149】
一方、ステップSP130において肯定結果が得られた場合、このことは内テープ41の終端部に形成された遮光領域SAが検出箇所P2に到達した可能性が高いことを表している。このとき制御部321は、次のステップSP131へ移ってドラム22の回転を停止させた後、その次のステップSP132へ移って巻取処理手順RT7を終了する。
【0150】
かくして制御部321は、巻取処理において、タイマ変数TEがしきい値SK1を超え、且つ収納枚数Z1がしきい値ZE以上であった場合に、内テープ41の終端部に形成された遮光領域SAが検出箇所P2に到達したものと判断して、ドラム22の回転を停止させる。
【0151】
なお制御部321は、巻戻処理においては、この巻取処理と対応する手順に従うことにより、タイマ変数TSがしきい値SK2を超え、且つ収納枚数Z1が所定のしきい値ZS以下であった場合に、外テープ31の始端部に形成された遮光領域SAが検出箇所P1に到達したものと判断して、ドラム22の回転を停止させる。
【0152】
このしきい値ZSは、紙幣BLの検出誤差等を考慮し、例えば最大収納枚数が200枚である場合に、その5%である10枚に設定されている。
【0153】
以上の構成において、一時保留部315の制御部321は、タイマ変数TE及びTSがしきい値SK1又はSK2を超えた場合、さらに一時保留部315における紙幣BLの収納枚数Z1が所定のしきい値ZE以上又はしきい値ZS以下であった場合に、ドラム22の回転を停止させるようにした。
【0154】
このため制御部321は、仮に比較的長い汚れ領域DAが形成されており、この汚れ領域DAにおいてタイマ変数TEがしきい値SK1を超えたとしても、収納枚数Z1がしきい値ZE未満であった場合、これが遮光領域SAではなく汚れ領域DAに起因したものであると判断でき、ドラム22の回転を停止させずに紙幣BLの巻取を継続できる。
【0155】
これを換言すれば、制御部321は、受光信号が「暗」レベルとなる期間と一時保留部315における紙幣BLの収納枚数とを組み合わせることで、遮光領域SAと汚れ領域DAとの判別精度を格段に高めることができる。
【0156】
特に一時保留部315では、上述したように、内テープ41のうち終端側よりも始端側の使用頻度が高いため、始端近傍に汚れが付着しやすく、汚れ領域DAが長くなりやすい。このため一時保留部315では、特に巻取処理において、収納枚数Z1がしきい値ZE未満であった場合に遮光領域SAと判断しないことにより、誤った判断を行う可能性を効果的に排除できる。
【0157】
その他の点においても、第4の実施の形態による一時保留部315は、第1の実施の形態による一時保留部15と同様の作用効果を奏し得る。
【0158】
以上の構成によれば、第4の実施の形態による一時保留部315は、巻取処理及び巻戻処理において、タイマ変数TE又はTSがしきい値SK1又はSK2を超えた場合、一時保留部315における紙幣BLの収納枚数Z1がしきい値ZE以上又はしきい値ZS以下であった場合に、検出箇所P2又はP1に遮光領域SAが到達したものと判断する。このため一時保留部315は、比較的長い汚れ領域DAが形成されておりタイマ変数TE又はTSがしきい値SK1又はSK2を超えたとしても、収納枚数Z1がしきい値ZE以上又はしきい値ZS以下でない限り、これを汚れ領域DAとして正しく判別でき、真に遮光領域SAが検出箇所P2又はP1に到達した時のみ、このことを正しく判別してドラム22の回転を停止させ、外テープ31及び内テープ41の損傷を適切に防止することができる。
【0159】
[5.第5の実施の形態]
第5の実施の形態による一時保留部415(図5及び図6)は、第1の実施の形態による一時保留部15と比較して、制御部21に代わる制御部421を有する点において相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
【0160】
制御部421は、第1の実施の形態による制御部21と同様、図示しないCPUを中心に構成され、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有している。この制御部421は、第1の実施の形態と一部異なる手順に従い、巻取処理及び巻戻処理を行うようになっている。
【0161】
制御部421は、第4の実施の形態と同様、タイマ変数TE又はTSがしきい値SK1又はSK2を超えた場合、一時保留部315における紙幣BLの収納枚数Z1がしきい値ZE以上又はZS以下であった場合、検出箇所P2又はP1に遮光領域SAが到達したものと判断する。さらに制御部421は、収納枚数Z1がしきい値ZE未満又はZSを超えた場合、第3の実施の形態と同様、プレアラームを通知するようになっている。
【0162】
具体的な処理として、制御部421は、第1の実施の形態における巻取処理手順RT1に代えて、図17に示す巻取処理手順RT8により巻取処理を行う。制御部421は、巻取処理を行う場合、巻取処理手順RT8を開始してステップSP141へ移る。
【0163】
ステップSP141において制御部421は、第3の実施の形態におけるステップSP81(図12)と同様、フラグFEの値を「0」にセットし、次のステップSP142へ移る。
【0164】
ステップSP142〜ステップSP151において制御部221は、第4の実施の形態におけるステップSP121〜SP130とそれぞれ同様の処理を行う。このステップSP151において否定結果が得られた場合、このことは、この時点での紙幣BLの収納枚数Z1が比較的少ないことから、内テープ41の終端部に形成された遮光領域SAが検出箇所P2に到達しておらず、汚れ領域DAが比較的長く形成されたためにタイマ変数がTEがしきい値SK1を超えた可能性が高いことを表している。
【0165】
このとき制御部421は、比較的長い汚れ領域DAが形成されていることを通知するべく、次のステップSP152へ移ってフラグFEに値「1」をセットした後、再度ステップSP143へ戻って一連の処理を繰り返すことにより、真に遮光領域SAが検出箇所P2に到達するのを待ち受ける。
【0166】
一方、ステップSP151において肯定結果が得られた場合、このことは内テープ41の終端部に形成された遮光領域SAが検出箇所P2に到達した可能性が高いことを表している。このとき制御部421は、次のステップSP131へ移ってドラム22の回転を停止させた後、その次のステップSP154へ移る。
【0167】
ステップSP154及びSP155において制御部421は、第3の実施の形態におけるステップSP95及びSP96(図12)と同様の処理を行った後、その次のステップSP156へ移って巻取処理手順RT8を終了する。
【0168】
かくして制御部421は、巻取処理において、タイマ変数TEがしきい値SK1を超えた場合、さらに収納枚数Z1がしきい値ZE以上であれば、遮光領域SAが検出箇所P2に到達したと判断してドラム22の回転を停止させ、収納枚数Z1がしきい値ZE未満であればプレアラームを通知する。
【0169】
なお制御部421は、巻戻処理においては、この巻取処理と対応する手順に従うことにより、タイマ変数TSがしきい値SK2を超えた場合、さらに収納枚数Z1がしきい値ZS以下であれば、遮光領域SAが検出箇所P1に到達したと判断してドラム22の回転を停止させ、収納枚数Z1がしきい値ZSを超えていればプレアラームを通知する。
【0170】
以上の構成において、一時保留部415の制御部421は、タイマ変数TE及びTSがしきい値SK1又はSK2を超えたものの、一時保留部415における紙幣BLの収納枚数Z1が所定のしきい値ZE未満であり又はしきい値ZSを超えた場合、ドラム22の回転を停止させずにプレアラームを通知する。
【0171】
これにより制御部421は、外テープ31又は内テープ41に、遮光領域SAと誤検出するような比較的長い汚れ領域DAが形成されていることを保守作業員等に通知することができるので、外テープ31及び内テープ41の清掃や交換を促すことができる。
【0172】
その他の点においても、第5の実施の形態による一時保留部415は、第1の実施の形態による一時保留部15及び第4の実施の形態による一時保留部315と同様の作用効果を奏し得る。
【0173】
以上の構成によれば、第5の実施の形態による一時保留部415は、巻取処理及び巻戻処理において、タイマ変数TE又はTSがしきい値SK1又はSK2を超えた場合、一時保留部415における紙幣BLの収納枚数Z1がしきい値ZE以上又はしきい値ZS以下であった場合に、検出箇所P2又はP1に遮光領域SAが到達したものと判断する。さらに一時保留部415は、収納枚数Z1がしきい値ZE未満であった場合又はしきい値ZSを超えた場合、プレアラームを通知する。このため一時保留部415は、比較的長い汚れ領域DAと遮光領域SAとを精度良く判別して真に遮光領域SAが検出箇所P2又はP1に到達した時のみドラム22の回転を停止させ得ると共に、外テープ31及び内テープ41の清掃又は交換を適切に促すことができる。
【0174】
[6.第6の実施の形態]
第6の実施の形態による一時保留部515(図5及び図6)は、第1の実施の形態による一時保留部15と比較して、制御部21に代わる制御部521を有する点において相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
【0175】
制御部521は、第1の実施の形態による制御部21と同様、図示しないCPUを中心に構成され、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有している。この制御部521は、第1の実施の形態と一部異なる手順に従い、巻取処理及び巻戻処理を行うようになっている。
【0176】
この制御部521は、第3及び第5の実施の形態におけるプレアラームの通知に代えて、汚れ領域DAのうち最も長いものについて、その長さを数値により表した汚れ情報を通知するようになっている。
【0177】
具体的な処理として、制御部521は、第1の実施の形態における巻取処理手順RT1及び巻戻処理手順RT2に代えて、図18に示す巻取処理手順RT8及び図19に示す巻戻処理手順RT9により、それぞれ巻取処理及び巻戻処理を行うようになっている。
【0178】
制御部521は、巻取処理を行う場合、巻取処理手順RT8を開始してステップSP161へ移り、変数TEmaxの値を「0」にセットし、次のステップSP162へ移る。ここで変数TEmaxは、汚れ領域DAの長さをタイマ変数TEの値(すなわち時間の長さ)に換算した値のうち、最も長いものを格納するための変数となっている。
【0179】
ステップSP162〜SP169において制御部521は、第1の実施の形態におけるステップSP1〜SP8(図8)とそれぞれ同様の処理を行う。このステップSP169において肯定結果が得られると、このことは、内テープ41において検出光を遮った部分の長さが比較的短く、汚れ領域DAである可能性が高いことを表している。このとき制御部521は、次のステップSP170へ移る。
【0180】
ステップSP170において制御部521は、この時点のタイマ変数TEが変数TEmaxよりも大きいか否かを判断する。ここで否定結果が得られると、このことは変数TEmaxを更新する必要が無いことを表している。このとき制御部521は、再度ステップSP163へ戻って一連の処理を繰り返す。
【0181】
一方、ステップSP170において肯定結果が得られると、このことは検出箇所P2に位置している汚れ領域DAが他の汚れ領域DAよりも長く、変数TEmaxを更新する必要があることを表している。このとき制御部521は、変数TEmaxとしてこのときのタイマ変数TEの値をセットした後、再度ステップSP163へ戻って一連の処理を繰り返す。
【0182】
またステップSP167において肯定結果が得られると、このことは内テープ41において検出光を遮った部分の長さが比較的長く、内テープ41の終端部に比較的長い範囲LS(図7)に渡って形成された遮光領域SAが検出箇所P2に位置していることを意味している。
【0183】
このとき制御部521は、次のステップSP172へ移ってドラム22の回転を停止させた後、その次のステップSP173へ移る。ステップSP173において制御部521は、変数TEmaxの値を主制御部9(図1及び図2)へ通知した後、ステップSP174へ移って巻取処理手順RT8を終了する。
【0184】
このように制御部521は、巻取処理において、タイマ変数TEがしきい値SK1を超えなかった場合に、その最も大きい値を変数TEmaxに格納しておく。また制御部521は、タイマ変数TEがしきい値SK1を超えた場合に、内テープ41の遮光領域SAが検出箇所P2に位置しているものと判断してドラム22の回転を停止させると共に、変数TEmaxの値を主制御部9へ通知する。
【0185】
また制御部521は、巻戻処理を行う場合、巻戻処理手順RT9(図19)を開始する。この巻戻処理手順RT9において、制御部521は、上述した巻取処理手順RT8(図18)と同様の処理を行う。
【0186】
ただし制御部521は、ステップSP181、SP191及びSP193において、変数TEmaxに代わる変数TSmaxを用い、またステップSP182においてドラム22を巻戻方向R2へ回転させる。さらに制御部521は、ステップSP183、SP186、SP187及びSP191においてタイマ変数TSを用い、ステップSP187においてしきい値SK2を用いる。
【0187】
かくして制御部521は、巻戻処理において、タイマ変数TSがしきい値SK2を超えなかった場合に、その最も大きい値を変数TSmaxに格納しておく。また制御部521は、タイマ変数TSがしきい値SK2を超えた場合に、外テープ31の遮光領域SAが検出箇所P1に位置しているものと判断してドラム22の回転を停止させると共に、変数TSmaxの値を主制御部9へ通知する。
【0188】
これに応じて主制御部9は、図20に示す汚れ情報保存処理手順RT10に従い、テープの汚れに関する情報である汚れ情報を生成して保存するようになっている。具体的に主制御部9は、汚れ情報保存処理手順RT10を開始してステップSP201へ移り、変数TSmaxをしきい値SK1で除算することにより、汚れ割合TSPを算出して、次のステップSP202へ移る。ここで汚れ割合TSPは、内テープ41の汚れ領域DAのうち最も長い箇所が、しきい値SK1により表される長さに対してどの程度であるかを比率として表した値となる。
【0189】
ステップSP202において制御部521は、変数TEmaxをしきい値SK2で除算することにより、汚れ割合TEPを算出して、次のステップSP203へ移る。ここで汚れ割合TEPは、外テープ31の汚れ領域DAのうち最も長い箇所が、しきい値SK2により表される長さに対してどの程度であるかを、汚れ割合TSPと同様に比率として表した値となる。
【0190】
ステップSP203において制御部521は、汚れ割合TSPが汚れ割合TEPよりも大きいか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、制御部521は次のステップSP204へ移り、大きい方の汚れ割合TSPを汚れ情報として保存した後、次のステップSP206へ移って汚れ情報保存処理手順RT10を終了する。
【0191】
またステップSP203において否定結果が得られると、制御部521は次のステップSP205へ移る、大きい方の汚れ割合TEPを汚れ情報として保存した後、次のステップSP206へ移って汚れ情報保存処理手順RT10を終了する。
【0192】
このように主制御部9は、一時保留部515から取得した変数TSmax及びTEmaxをそれぞれ汚れ割合TSP及び汚れ割合TEPに変換した上で、大きい方の値を汚れ情報として保存する。
【0193】
このようにして生成された汚れ情報は、第3の実施の形態におけるプレアラームと同様、現金自動預払機1の主制御部9やリモート保守センタ72(図3)の保守装置78へ通知され、操作表示部6(図1)や保守装置78における表示部等に表示される。
【0194】
具体的に主制御部9は、保守作業員等による所定の保守操作が行われた場合、例えば操作表示部6(図1)や筐体2の後面側に設けられた保守用表示部(図示せず)等に、図14と対応する図21に示すような保守画面D3を表示する。このとき主制御部9は、この保守画面D3に、汚れ情報を基に「テープ汚れ:**%」といった内容のメッセージM2を表示することで、外テープ31又は内テープ41における汚れ領域DAの長さを表す比率を保守作業員等に通知することができる。
【0195】
また主制御部9は、一時保留部15から通知された汚れ情報をリモート保守センタ72(図3)の保守装置78へ通知する。これに応じて保守装置78は、例えば所定の表示部に対し、図15と対応する図22に示すような監視テーブルT2を含むリモート保守監視画面D4を表示する。
【0196】
監視テーブルT2には、監視テーブルT1と同様の「銀行」、「支店」、「装置番号」及び「テープ汚れ」といった各欄が設けられている。このうち「テープ汚れ」の欄には、汚れ情報の値が表示される。このため保守装置78は、リモート保守センタ72のオペレータ等に対し、各店舗71の各現金自動預払機1に関する情報を統括的に提示できる。
【0197】
以上の構成において、一時保留部515の制御部521は、タイマ変数TE及びTSがしきい値SK1又はSK2を超えなかった場合、より大きい値を変数TEmax及びTSmaxとして随時更新していくことで、内テープ41又は外テープ31に形成された最も長い汚れ領域DAの長さを取得し、これを主制御部9へ通知する。
【0198】
主制御部9は、変数TEmax及びTSmaxの値をしきい値SK1及びSK2によりそれぞれ除算することで、最も長い汚れ領域DAの長さを、遮光領域SAとして誤認してしまう長さに対する比率として表すことができる。
【0199】
これにより制御部521は、外テープ31又は内テープ41に、汚れ領域DAの長さを比率として保守作業員等に提示することができるので、外テープ31及び内テープ41の清掃や交換を促すことができる。特にこの場合、プレアラームではなく比率が通知されるため、保守作業員等は、外テープ31及び内テープ41の清掃や交換を何れのタイミングで行うか、或いは清掃と交換との何れを行うべきか、といったことを、比率を基に自らの経験等を加味して判断することができる。
【0200】
その他の点においても、第6の実施の形態による一時保留部515は、第1の実施の形態による一時保留部15と同様の作用効果を奏し得る。
【0201】
以上の構成によれば、第6の実施の形態による一時保留部515は、巻取処理及び巻戻処理において、タイマ変数TE又はTSがしきい値SK1又はSK2を超えた場合、検出箇所P2又はP1に遮光領域SAが到達したものと判断する。また一時保留部515は、変数TEmax及びTSmaxの値を随時更新していくことで、内テープ41又は外テープ31に形成された最も長い汚れ領域DAの長さを取得し、これを主制御部9へ通知する。このため一時保留部515は、比較的長い遮光領域SAが検出箇所P2又はP1に到達した場合にドラム22の回転を停止させることができると共に、外テープ31及び内テープ41における汚れ領域の長さを提示することで、その清掃又は交換を適切に促すことができる。
【0202】
[7.第7の実施の形態]
図5と対応する図23に示すように、第7の実施の形態による一時保留部615は、第1の実施の形態による一時保留部15と一部異なる構成となっている。具体的に一時保留部615は、一時保留部15と比較して、制御部21及び外テープ走行系30に代わる制御部621及びテープ走行系630を有し、内テープ走行系40に代わる搬送ガイド628及びスクレーパ629を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0203】
制御部621は、第1の実施の形態による制御部21と同様、図示しないCPUを中心に構成され、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有している。テープ走行系630は、第1の実施の形態における外テープ走行系30比較して、外テープ31及び外リール32に代えてテープ631及びリール632を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0204】
このうちテープ631は、外テープ31と同様、薄く細長いフィルム状に形成されており、始端部分がドラム22の外周面に固定され、終端部分がリール632に固定されている。リール632は、外リール32と同様に構成されており、テープ631が巻回されている。
【0205】
搬送ガイド628は、紙幣BLの下面側を案内することで、当該紙幣を前後方向へ進行させる。スクレーパ629は、前後方向に長くなるよう形成されており、後端をテープ631の下側においてドラム22の周側面に当接させている。
【0206】
かかる構成により一時保留部615は、ドラム22を巻取方向R1へ回転させると、その周側面に紙幣BLの外側からテープ631を重ねるようにして巻き付けていく。一時保留部615は、この巻付処理を繰り返すことにより、ドラム22の周側面に紙幣を巻き付けながら紙幣BLを収納していくことができる。
【0207】
また一時保留部615は、ドラム22を巻戻方向R2へ回転させると共にリール632を所定の巻取方向へ回転させると、当該ドラム22の周側面からテープ631を引き剥がす。このとき紙幣BLは、スクレーパ629によりドラムの周側面から引き剥がされ、搬送ガイド628に沿って前方へ搬送され、繰り出される。一時保留部615は、このような巻戻処理を繰り返すことにより、ドラム22の周側面に巻き付けていた紙幣BLを順次引き剥がして繰り出していくことができる。
【0208】
またテープ走行系630には、テープ631の走行経路上における所定の検出箇所P、具体的にはリール632とプーリ34との間に、第1の実施の形態と同様のテープセンサ35が配置されている。一方、テープ631は、図7(A)及び(B)と対応する図24(A)に示すように、始端部及び終端部の双方に遮光領域SAが形成されている。
【0209】
因みに制御部621は、テープセンサ35により遮光領域SAを検出した場合、さらにドラム22の回転方向を基に、これがテープ631の始端部又は終端部の何れであるかを判断するようになっている。
【0210】
例えば制御部621は、ドラム22を巻取方向R1へ回転させているときに遮光領域SAを検出した場合、既にテープ631が走行している以上、検出箇所Pに始端部が到達する可能性は極めて低いため、これを当該テープ631の終端部であると判断する。また制御部621は、ドラム22を巻戻方向R2へ回転させているときに遮光領域SAを検出した場合、既にテープ631が走行している以上、検出箇所Pに終端部が到達する可能性は極めて低いため、これを当該テープ631の始端部であると判断する。
【0211】
かかる構成において、制御部621は、第1の実施の形態と同様に、巻取処理手順RT1(図8)及び巻戻処理手順RT2(図9)に従い、巻取処理及び巻戻処理を行う。このため一時保留部615は、第1の実施の形態と同様、テープセンサ35から得られる受光信号を基に、汚れ領域DAを遮光領域SAとを精度良く区別することができる。
【0212】
またその他の点についても、第7の実施の形態による一時保留部615は、第1の実施の形態による一時保留部15と同様の作用効果を奏し得る。
【0213】
[8.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、巻取処理及び巻戻処理において、互いに異なるしきい値SK1及びSK2を用いる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば巻取処理及び巻戻処理において共通のしきい値を用いても良い。第2〜第7の実施の形態についても同様である。また第3の実施の形態においては、しきい値SK3及びSK4についても同様である。
【0214】
また上述した第1の実施の形態においては、通常領域NAにおける光の透過率を高めると共に、相違領域としての遮光領域SAにおける光の透過率を低減させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば通常領域における光の透過率を低減させ、相違領域における光の透過率を高めるようにしても良い。或いは、通常領域NAにおける光の反射率を高めると共に、各テープの始端部及び終端部に相違領域としての非反射領域を設け、テープセンサ35等において光の反射率を検出するようにしても良い。要は、光の照射に対する応答特性が変化することをセンサ等により検出できれば良い。第2〜第7の実施の形態についても同様である。
【0215】
さらに上述した第3の実施の形態においては、しきい値SK1及びSK2とは別に設定したしきい値SK3及びSK4をステップSP87(図12)及びステップSP107(図13)においてそれぞれ用いる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばしきい値SK1及びSK2にそれぞれ所定の係数を乗じた値をステップSP87(図12)及びステップSP107(図13)においてそれぞれ用いるようにしても良い。
【0216】
さらに上述した第3の実施の形態としては、プレアラームを保守画面D1(図14)やリモート保守監視画面D2(図15)により、保守作業者等に文字情報により通知する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば警告灯の点灯や点滅のように光や色の変化により通知しても良く、またアラーム音や音声アナウンス等のように音を介して通知しても良く、さらにはこれらを組み合わせても良い。第6の実施の形態についても同様である。
【0217】
さらに上述した第3の実施の形態においては、一時保留部15の制御部221から主制御部9へプレアラームを通知する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば主制御部9が定期的に制御部221と通信処理を行うことにより、当該制御部221からプレアラームを取得するようにしても良い。第6の実施の形態についても同様である。
【0218】
さらに上述した第6の実施の形態においては、しきい値SK1又はSK2に相当する長さよりも短い汚れ領域DAのうち最も長いものの長さを表す変数TEmax及びTSmaxをそれぞれ主制御部9へ通知し、これを汚れ割合TSP及びTEPに換算した上で、大きい方の値を汚れ情報として保存する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば汚れ割合TSP及びTEPの双方を汚れ情報として保存しても良く、また変数TEmax及びTSmaxに各テープの速度SPDを乗じて長さに換算した値のうち大きい方又はその双方を汚れ情報として保存しても良い。
【0219】
或いは、例えば受光信号が「暗」レベルから「明」レベルに変化したときのタイマ変数TS及びTEの値を累積加算することにより、汚れ領域DAの長さの積算値に相当する値を算出し、この値を長さに変換した値やこの値を外テープ31及び内テープ41の全長により除算した値を、その双方又は何れか大きい方のみを保存するようにしても良い。
【0220】
さらに上述した第1の実施の形態においては、一時保留部15の制御部21において巻取処理手順RT1(図8)及び巻戻処理手順RT2(図9)を実行する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣制御部11(図4)や主制御部9(図1)、或いはこれらが制御部21と協働して実行するようにしても良い。第2〜第7の実施の形態についても同様である。また第6の実施の形態においては、汚れ比率TSP及びTEPの算出や両者の比較を制御部521で行うようにしても良い。
【0221】
さらに上述した第1の実施の形態においては、一時保留部15に外テープ走行系30及び内テープ走行系40を1系統ずつ設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、一時保留部15に外テープ走行系30及び内テープ走行系40を2系統以上ずつ設けても良い。
【0222】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ドラム22を円筒状(円柱状)に形成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばドラム22を六角柱状や八角柱状等、種々の角柱状としても良い。第2〜第7の実施の形態についても同様である。
【0223】
さらに上述した第1の実施の形態においては、現金自動預払機1の紙幣入出金機10に搭載される一時保留部15に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば金融機関の窓口等に設置されており主に金融機関の職員等が紙幣を入出する紙幣整理装置(いわゆるテラーマシン)に搭載される一時保留部等、他の種々の機器に組み込まれる一時保留部に本発明を適用しても良い。第2〜第7の実施の形態についても同様である。
【0224】
さらに上述した実施の形態においては、媒体としての紙幣BLを外テープ31及び内テープ41と共にドラム22の周側面に巻き付けて収納し、或いはこれを引き剥がして繰り出す場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば各種金券や証券、或いは入場券や葉書等、種々の紙葉状の媒体をテープと共にドラムの周側面に巻き付けて収納する種々の収納装置に本発明を適用しても良い。第2〜第7の実施の形態についても同様である。
【0225】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0226】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ドラムとしてのドラム22と、テープとしての外テープ31及び内テープ41と、相違領域としての遮光領域SAと、検出部としてのテープセンサ35及び45と、判断部としての制御部21とによって媒体収納装置としての一時保留部15を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなるドラムと、テープと、相違領域と、検出部と、判断部とによって媒体収納装置を構成するようにしても良い。
【0227】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ドラムとしてのドラム22と、テープとしての外テープ31及び内テープ41と、相違領域としての遮光領域SAと、検出部としてのテープセンサ35及び45と、判断部としての制御部21及び主制御部9とによって媒体取引装置としての現金自動預払機1を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなるドラムと、テープと、相違領域と、検出部と、判断部とによって媒体取引装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0228】
本発明は、紙葉状の媒体をテープと共にドラムの周側面に巻き付けて収納し、またテープと共に当該媒体をドラムの周側面から引き剥がして繰り出す種々の装置でも利用できる。
【符号の説明】
【0229】
1……現金自動預払機、6……操作表示部、9……主制御部、10……紙幣入出金機、11……紙幣制御部、15、115、215、315、415、515、615……一時保留部、21、121、221、321、421、521、621……制御部、22……ドラム、30……外テープ走行系、31……外テープ、32……外リール、35、45……テープセンサ、40……内テープ走行系、41……内テープ、42……内リール、630……テープ走行系、631……テープ、632……リール、BL……紙幣、NA……通常領域、SA……遮光領域、DA……汚れ領域、P、P1、P2……検出箇所、SK1、SK2、SK3、SK4、FK1、FK2……しきい値、SPD……速度、TE、TS……タイマ変数、TEP、TSP……割合、TEmax、TSmax……変数、FE、FS……フラグ、Z1……収納枚数、ZE、ZS……しきい値。
図1
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