(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である自動取引装置の斜視図である。
図において、自動取引装置100(100a)は、金融機関や流通機関等に配置されるATM(Automated Teller Machine)であり、紙幣入出金部1と、顧客操作表示部21と、レシートユニット22と、カードユニット23と、テンキー部24と、外部シャッタ25と、制御装置26とを備え、各部は本体筐体29の内部に格納されている。
【0019】
紙幣入出金部1は、接客部(紙幣投入口)31(
図2)に投入された媒体としての紙幣(紙葉類)を鑑別し、金種毎に計数し、複数の紙幣収納庫(紙幣カセット)36a,36b,36c,36d(
図2)に金種別に格納するカセット式の機構部である。本実施形態は、紙幣入出金部1の内部に実装された送電機能付通信装置27と紙幣収納庫36a,36b,36c,36dの内部に実装された受電機能付通信装置28(
図4)とを非接触、且つ電気的に接続させる手段を提案するものであり、送電機能付通信装置27から受電機能付通信装置28に電源電力を供給し、送電機能付通信装置27と受電機能付通信装置28との間のデータ通信を無線で行うものである。
【0020】
図2は本発明の第1実施形態である紙幣入出金部の構成図であり、
図3は紙幣入出金部からカセット装填フレームが引き出された状態を示す図である。
紙幣入出金部1は、接客部31と、鑑別部32と、一時保留部33と、搬送路34(34a,34b,34c,34d,34e)と、カセット装填フレーム35と、紙幣収納庫(紙幣カセット)36a,36b,36c,36dとを備えている。また、紙幣収納庫36a,36b,36c,36dは、カセット装填フレーム35の上部に搭載されており、搬送路フレーム38が紙幣収納庫(紙幣カセット)36a,36b,36c,36dの上部に配置されている。
【0021】
また、紙幣入出金部1は、カセット装填フレーム35の下方に、非接触送電手段としての4つのコイル4bが配設されており、紙幣収納庫36a,36b,36c,36dの下部に非接触受電手段としてのコイル4aが配設されている。また、コイル4aとコイル4bとは対向し、且つ離間している。カセット装填フレーム35は、紙幣収納庫36a,36b,36c,36dを搭載する金属フレームであり、磁界や電磁波の反射を防止するために、コイル4aとコイル4bとの間や、アンテナ6a,6b(
図4)の間には開口部が形成されている。
【0022】
図3のように、紙幣入出金部1は、操作者が紙幣入出金部フレームからカセット装填フレーム35を前後方向に引き出し、搬送路フレーム38を開いて、さらに、紙幣収納庫36a,36b,36c,36dを上方に持ち上げることにより、操作者が紙幣収納庫36a,36b,36c,36dに紙幣を補充し、また紙幣収納庫36a,36b,36c,36dから紙幣を回収することができるように構成されている。このカセット装填フレーム35が引き出された引き出し状態のとき、コイル4bは、紙幣収納庫1の内部に留まっており、コイル4a,4bは、互いに離間している離間状態である。これに対し、
図2の収納状態においては、コイル4a,4bは、互いに接近しており、接近状態になっている。
【0023】
紙幣入出金部1は、操作者が紙幣入出金部フレーム(自動取引装置100aの本体筐体を構成する本体フレーム)からカセット装填フレーム35を前後方向に引き出し、紙幣収納庫36a,36b,36c,36dを上方に持ち上げることができるように、カセット装填フレーム35と紙幣収納庫36a,36b,36c,36dとは、互いに嵌合する凹凸が鉛直方向に設けられており、紙幣収納庫36a,36b,36c,36dを略鉛直方向にスライドさせる。また、カセット装填フレーム35と紙幣入出金部フレームとは、収納状態(
図2)において、互いに嵌合する凹凸が水平方向に設けられており、カセット装填フレーム35を引き出し方向にスライドさせる。なお、鑑別部32は、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びCPU(Central Processing Unit:制御部)を備えている。
【0024】
接客部31は、外部シャッタ25(
図1)の近傍に配置されており、使用者が紙幣を投入したり、紙幣を取り出したりする部位である。鑑別部32は、接客部31に投入された紙幣を鑑別し、金種毎に計数する部位である。搬送路34(34a,34b,34c,34d,34e)は、接客部31に投入された紙幣を鑑別部32を介して一時保留部33に搬送し、一時保留部33から鑑別部32を介して金種毎に紙幣収納庫36a,36b,36c,36dに搬送するものである。また、搬送路34は、紙幣収納庫36a,36b,36c,36dから、鑑別部32を介して接客部31に紙幣を搬送するものである。ここで、搬送路34と紙幣収納庫36a,36b,36c,36dとの双方は、紙幣を搬送させる電動機(搬送モータ)を備えており、紙幣収納庫36a,36b,36c,36dは、電源電力を非接触で受電するコイル4aやデータ通信用のアンテナ6a(
図4)を設けている。
【0025】
また、紙幣入出金部1は、紙幣収納庫36a,36b,36c,36dの各々の下方であり、且つ、カセット装填フレーム35の下方に、コイル4bを含む送電機能付通信装置27a(
図1,4)を備えている。送電機能付通信装置27aは、制御装置26の制御により、紙幣入出金部1の紙幣収納庫36a,36b,36c,36dに電源電力を供給し、紙幣収納庫36a,36b,36c,36dとの間で制御用データを送受信する。
【0026】
顧客操作表示部21(
図1)は、タッチパネル式のLCD(Liquid Crystal Display)であり、取引画面が表示される。レシート処理ユニット22は、取引内容を伝票に印字するプリンタである。カードユニット23は、金融カードに貼付された磁気テープやICに格納された情報を読み取り、取引データ等をICに格納するユニットである。
【0027】
制御装置26は、FC(Factory Computer)により、構成されており、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性記憶部に格納されたOS(Operations System)や取引プログラムをRAMに展開して、CPUが実行することにより、各部を制御する。
【0028】
図4は、本発明の第1実施形態である自動取引装置の本体と紙幣収納庫との間で行われる電力伝送及び情報通信の説明図である。
紙幣収納庫36aは、その筐体の内部に、モータ2やセンサ3等を有し、これらは制御回路8(8a)と接続されている。なお、紙幣収納庫36b,36c,36dは、収納される紙幣の種類が異なるものの、紙幣収納庫36aと同様の構成であるので、説明を省略する。
【0029】
また、紙幣収納庫36aは、その筐体の底面に、コイル4(4a)とアンテナ6(6a)とが配置されている。コイル4aは、受電回路5(5a)を経由して制御回路8(8a)と接続されている。アンテナ6(6a)は、無線機7(7a)を経由して制御回路8aと接続されている。また、コイル4a,4bは、円環状コイルであり、互いに離間しつつも、結合係数を高めるために同軸上に対向している。
【0030】
また、カセット装填フレーム35が紙幣入出金部1の外部に引き出された状態(
図3)において、2つのコイル4a,4bは引き出し方向に離間する離間状態である。一方、カセット装填フレーム35が紙幣入出金部1の内部に収納された収納状態(
図2)において、2つのコイル4a,4bは互いに接近している接近状態である。無線機7aは、無線LANで多用される2.4GHz帯でデータ通信を行うものである。
【0031】
紙幣収納庫36aの筐体底面は、電磁波が通過しやすい成形物(例えば、樹脂やガラス)で構成されている。なお、この筐体底面(特に、カセット装填フレーム35と密接乃至近接する部分)は、コネクタはもちろん、突起物は無くてもよいが、紙幣収納庫36aの位置合わせのための小さなくぼみやマーカ等は備えている方が好ましい。紙幣収納庫36aは、モータやアクチュエータ等も有しており、種々のセンサも実装されているが、
図4においては、それらをまとめてモータ2、センサ3として記載している。
【0032】
自動取引装置100aの本体筐体29の下部には、送電機能付通信装置27aが設けられており、送電機能付通信装置27aは、コイル4b、送電回路10(10a)、アンテナ6b、無線機7b、及び制御回路8bを含んでいる。また、カセット装填フレーム35が紙幣入出金部1の内部に収納された収納状態において、コイル4aとコイル4bとは互いに対向し、且つ接近状態であり、アンテナ6aとアンテナ6bとは互いに対向し、且つ接近状態である。
【0033】
(動作説明)
コイル4bは、送電回路10aから数10kHzの高周波電力が供給されている。紙幣収納庫36aのコイル4aと送電機能付通信装置27aのコイル4bとは、対向し、且つ接近している。また、コイル4aとコイル4bとの間に存在する成形物(具体的には、紙幣収納庫36の筐体底面)は電磁波(電界及び磁界)が通過しやすい素材が使われている。これらの事象により、コイル4aは、電磁誘導による誘導起電力が発生する。この誘導起電力(交流電圧)は、受電回路5aにて、検波・整流され、整流された直流電力が、制御回路8aを介して様々な回路やモータ2、センサ3に供給される。つまり、モータ2やセンサ3等に供給される直流電力は、コイル4bが受電する高周波電力よりも少ない。
【0034】
一方、紙幣収納庫36aと送電機能付通信装置27aとの間のデータの送受信は、無線機7a,7b、及びアンテナ6a,6bを介して行われる。送電機能付通信装置27aから伝送される通信情報は、紙幣収納庫36a内部のモータ2の制御信号等であり、紙幣収納庫36a側から伝送される通信情報はステージモータで制御されたステージの位置情報や、蓄積させた紙幣の量に関するセンサ情報等である。ここで、アンテナ6a,6bは、対向させて近接配置されている点でコイル4a,4bと同様である。しかしながら、アンテナ6a,6bは、送受信する電波の波長が短いため(2.4GHzで波長12.5[cm])、アンテナの大きさがコイル4a,4bよりも小さくなる。このため、アンテナ6a,6bは、設置場所に自由度が生じ、また、電波伝搬の特性次第では、紙幣収納庫36aや自動取引装置100の本体筐体29(
図1)内の任意の位置に設置することができる。
【0035】
ここで、電磁誘導と電磁波(平面波)とについて説明する。コイル4bは、高周波電力が供給されているので、電磁波が放射される。しかしながら、周波数が数10kHzと低いので、コイル4bの近傍では、電界よりも磁界が支配的となり、コイル4aには、電磁誘導による誘導起電力が発生する。これに対して、アンテナ6bは、リング形状ではなくダイポール形状であることが多いので、アンテナ6bの近傍において、電界が支配的となる。また、アンテナ6bは、同じ電磁波でも周波数が高いので、電界強度と磁界の強さとが距離に反比例する球面波の成分が強くなり、遠方で平面波となる。なお、2.4GHz帯において、近傍界と遠方界との境界は、距離r=λ/2π=2[cm]程度である。つまり、電磁誘導による電力伝送とは、近傍界において、電界よりも磁界が支配的な電力伝送を意味する。また、2.4GHz帯で情報通信を行う電磁波は、球面波の成分を含み、平面波に近くなっている。
【0036】
(効果)
これにより、自動取引装置100aは、その紙幣入出金部フレーム(自動取引装置100aの本体フレーム)と紙幣収納庫36aとの間をコネクタやケーブルで接続する必要がなくなる。このため、自動取引装置100aは、ジャックインコネクタで問題となる経年変化やゴミに起因する接点不良が発生しなくなる。また、自動取引装置100aは、カセット装填フレーム35を設置する本体筐体29にコネクタを設置する必要がなくなるので、その部分を平固な成形物で構成できる。これにより、自動取引装置100aは、本体筐体の清掃がしやすくなり、紙幣入出金部1との接続部分だけでなく、自動取引装置100a全体の品質の向上が期待できる。
【0037】
(第1実施形態の変形例)
なお、第1実施形態においては、電源電力は電磁誘導により、自動取引装置100aの送電機能付通信装置27aから紙幣収納庫36a(受電機能付通信装置28b)まで伝送されたが、磁気共鳴、電磁波、電界結合といった他の方式でもかまわない。その場合、
図4のコイルは、それぞれの方式にあった部品に変更される。また、電磁誘導による電力伝送は、単に、コイル4b(
図4)をスイッチングする駆動するだけではなく、コイルにコンデンサを接続(直列接続/並列接続)した共振状態で、スイッチング駆動したり、コイル4aにコンデンサを接続したりして、共振電流を流すこともできる。
【0038】
(第2実施形態)
第1実施形態は、コイル4a,4bを用いて電力伝送を行い、アンテナ6a,6bを用いてデータ伝送を行うものであった。第2実施形態は、一つのアンテナを用いて、電力伝送とデータ伝送とを実現するものである。
紙幣収納庫36eは、モータ2、センサ3、受電回路5b、無線機7c、制御回路8a等を有し、これらの機能については、第1実施形態と同様である。但し、紙幣を搬送するモータ2は、モータ非設置又は電力消費が少ないアクチュエータを前提としている。つまり、紙幣を搬送する搬送用モータは、数十Wの出力(消費電力)が必要であるが、アンテナを用いた電磁波では伝送効率が悪く、数十Wの電力伝送は技術的には可能であるが、実現方式として適さないためである。
【0039】
コンバイナ9aは、受電回路5bと無線機7cの信号を合成・分離する。また、コンバイナ9aはアンテナ6cと接続されている。自動取引装置側の送電機能付通信装置27bは、コンバイナ9bを介して、送電回路10b、無線機7d、及び制御回路8bとアンテナ6dとが接続されている。
【0040】
第2実施形態においては、電力伝送とデータ伝送との双方が一対のアンテナ6c,6dを用いて行われる。まず、電力伝送については、送電回路10bが高周波電力を生成し、生成された高周波電力は、コンバイナ9aを介してアンテナ6cに供給され、アンテナ6cから放射電力として出力される。その放射電力は、アンテナ6dで受電され、コンバイナ9bを介して受電回路5bに送られ、非接触で電力伝送が行われる。受電回路5bは、高周波電力を検波・整流し、整流された直流電力を制御回路
8aに供給する。つまり、電力伝送は、ATM本体側から紙幣入出金部側の単方向であり、しかも紙幣入出金部1に蓄電機能が無い場合は、途切れることなく常に行われる必要がある。
【0041】
一方、データ伝送については、コンバイナ9a,9bを介すること以外、第1実施形態と同様である。つまり、データ伝送は、双方向通信で行われ、制御回路8a,8bで指定されたタイミングで実行される。この両方を一つのアンテナで行うためには、電力伝送の周波数とデータ伝送の搬送周波数とを十分に離し、コンバイナ9a,9b内部のフィルタで、十分なアイソレーションを確保することが必要である。但し、アンテナ6c,6dは、その長さを電力伝送の駆動周波数とデータ伝送の搬送周波数との双方において、λ/2の整数倍の関係にして、共振させる必要がある。
【0042】
第2実施形態の構成では、電力伝送とデータ伝送とのアンテナが一つでよい。したがって、実装面積を小さくすることができる。しかも、電力伝送に電磁誘導ではなく、平面波(電磁波)による伝送方式を使うことにより、アンテナの位置ずれがあっても特性劣化が少ない、という特長がある。但し、前記したように、伝送できる電力に応じてモータ2は、選定される必要がある。
【0043】
また、第1実施形態において、紙幣収納庫36a,36bは、モータ2を備え、他の紙幣収納庫36c,36dにはモータ2を備えないようにすることもできる。この場合の他の紙幣収納庫36c,36dは、第2実施形態の紙幣収納庫36eを用い、コイル4a,4b(
図4)を使うことなく、アンテナ6c,6dのみで、センサ3に対する電力伝送及びデータ伝送を行うことができる。
【0044】
(第3実施形態)
第1実施形態、及び第2実施形態では
図6に示すように、紙幣収納庫36a,36b,36c,36dと送電機能付通信装置27とが一対になるように構成されていた。しかしながら、
図7に示すように、複数の紙幣収納庫36a,36b,36c,36dが単一のコイル4bから電力供給を受ける、といった構成も可能になる。
【0045】
図7は、本発明の第3実施形態である自動取引装置の構成図であり、複数の紙幣収納庫が単一の送電回路から電力供給を受ける形態を示す。第1実施形態(
図4)では、コイル4a,4bを用いて、電磁誘導で電力伝送を行い、アンテナ6a,6bを用い、電磁波でデータ伝送を行っていた。しかしながら、送電機能付通信装置27aのコイル4bは、4つの紙幣収納庫36a,36b,36c,36dの4つのコイル4aの全てを取り囲むように配設されている点で相違する。つまり、コイル4bは、4つの紙幣収納庫36a,36b,36c,36dの底面を略矩形状に周回した形状である。これにより、単一のコイル4bを用いて、4つのコイル4a(
図4)に送電することができる。
【0046】
なお、紙幣入出金部(紙幣収納庫36)1の筐体下方に自動取引装置100a側から電力供給及びデータ通信を行う回路(送電機能付通信装置27)を設置したが、紙幣収納庫36の筐体の側面側や上方にあってもかまわない。
【0047】
(第4実施形態)
図8は、本発明の第4実施形態の紙幣入出金部の構成図である。
第1実施形態(
図3)の紙幣入出金部1は、送電機能付通信装置27aのコイル4bを紙幣入出金部フレーム(自動取引装置100aの本体筐体)内に設置したが、カセット装填フレーム35の底面に設置することもできる。
【0048】
つまり、本実施形態の紙幣入出金部1bは、カセット装填フレーム35を引き出すことにより、送電機能付通信装置27aと受電機能付通信装置28aとの複数の対も引き出されるようになっている。紙幣収納庫36を紙幣入出金部フレームに収納した収納状態においても、カセット装填フレーム35を紙幣入出金部フレームから引き出した引き出し状態においても、送電機能付通信装置27aのコイル4bと受電機能付通信装置28aのコイル4aとは、接近状態になっている。また、紙幣入出金部1bは、送電機能付通信装置27aとATM本体側(例えば、制御装置26(
図1))とは、電源ケーブルで接続されており、カセット装填フレーム35の引き出しに応じて、該電源ケーブルが屈曲する。
【0049】
なお、送電機能付通信装置27aとATM本体側とは、電源ケーブルで接続することなく、コイルで電力伝送することもできる。紙幣入出金部1bは、例えば、紙幣入出金部フレーム(自動取引装置100aのフレームの当該部分)の後端部、及びカセット装填フレーム35の後端部にコイルが配設されており、カセット装填フレーム35を引き出した引き出し状態でコイルが引き出し方向に離間する離間状態になり、カセット装填フレーム35を紙幣入出金部フレームに収納したときに接近状態になる。
【0050】
(第5実施形態)
前記第1実施形態乃至第4実施形態は、自動取引装置100aの本体筐体29は、シールドが施されており、データ通信に使用される電波が外部からの干渉波(例えば、無線LANで多用される2.4GHz帯の電磁波)に影響されないことを前提として、説明した。しかしながら、自動取引装置100aの本体筐体29は、ファンや空気取込口等の開口部が設けられており、外部からの干渉波が侵入し易くなっている。特に、電力伝送に用いられるコイル4(
図4)は、データ通信に使用されるアンテナ6よりも面積が大きく、紙幣収納庫36の内部に外部からの干渉波侵入が容易である。
【0051】
図9は、本発明の第5実施形態の自動取引装置の構成図である。
自動取引装置100bは、本体筐体29の内部に、紙幣入出金部1と顧客操作表示部21とカードユニット23とレシートユニット22とテンキー部24と外部シャッタ25と制御装置26とを備えていることは、前記各実施形態と同様である。
しかしながら、
図9においては、本体筐体にファン及び通気口を記載しており、本体筐体29の外部に情報通信装置45を記載している点で相違する。以下、第5実施形態において、カードユニット23bに本発明を適用した場合の一例として説明するが、紙幣収納庫に適用した場合でも同様の作用効果を奏する。
【0052】
カードユニット23bは、その筐体内部に、センサを内蔵した複数の送受信機としてのデータキャリア41a,41bと、送受信機としてのアクセスポイント(AP)42と、受電機能付通信装置44とを備えている。アクセスポイント42は、例えば、2.4GHz帯の周波数f1で、複数のデータキャリア41a,41b、及び受電機能付通信装置44とデータ通信を行うものである。受電機能付情報装置44は、アンテナ6eを備えた無線機7eと、コイル4cを備えた受電回路5cとを有している。
【0053】
データキャリア41a,41bは、カードの挿入や引き出し等を検出したり、カード情報を検出したりして、アクセスポイント42にデータを送信する機能を有する。ここで、送受信周波数f1は、無線LAN用の2.4GHz帯である。また、アクセスポイント42は送電機能を有し、データキャリア41a,41bは受電機能を有している。
【0054】
カードユニット23bの筐体は、金属メッキ又は金属蒸着された樹脂筐体であり、アンテナ6bとアンテナ6eとの間は、開口部が設けられている。ここで、カードユニット23bの筐体は、金属筐体であってもよいが、この場合は、コイル4bとコイル4cとの間、及びアンテナ6bとアンテナ6eとの間に開口部を設け、少なくとも、コイル4bとコイル4cとの間は、金属メッキ又は金属蒸着された樹脂である必要があり、アンテナ6bとアンテナ6eとの間は開口部又は単なる樹脂である必要がある。単なる樹脂は、金属メッキ及び金属蒸着が施されていないが、開口部も金属メッキ及び金属蒸着が施されていない。
【0055】
前記実施形態と同様に、自動取引装置100bは、本体筐体29の内部に、送電機能付通信装置27cが搭載されており、送電機能付通信装置27cは、コイル4bを備えた送電回路10aと、アンテナ6bを備えた無線機7bと、制御回路8bとを備えている。また、
アンテナ6bと無線機7bとを金属筐体で取り囲んでおり、この金属筐体は、端部がカードユニット23bの筐体に近接している。無線機7b,7eは、周波数f2であり、f2=f1でもよく、f2≠f1でもよい。例えば、f2に5GHz帯を使い、f2≠f1とすることにより、干渉波の影響が無線機7bと無線機7eとの間の通信に影響を及ぼさない。
【0056】
コイル4bとコイル4cとの間は、数10kHzの電磁波を通過させ、2.4GHzの電磁波を遮断する必要がある。数10kHzの表皮厚さは厚く、2.4GHzの表皮厚さは薄いので、樹脂筐体の金属メッキ又は金属蒸着の金属厚さを適切にすることにより、数10kHzの磁界や電磁波を通過させ、2.4GHzの電磁波(平面波)を遮断することが可能である。
【0057】
表皮厚さdは、
d=√(2ρ/ωμ)
である。ここで、ρは導体の電気抵抗率であり、μは透磁率であり、ωは角周波数である。例えば、アルミの電気抵抗率ρは、2.65×10
−8 [Ωm]であり、透磁率μは、1.000×μ
0=4π×10
−7[H/m]であるので、2.4GHzでは、
d=√(2ρ/ωμ)=5.289[μm]
である。
【0058】
一方、100kHでは、
d=√(2ρ/ωμ)=518[μm]
である。つまり、アルミの膜厚を20〜100[μm]、好ましくは、40〜50[μm]にするのが好ましい。
【0059】
(動作説明)
自動取引装置100bの本体筐体29は、シールドされているが、ファンや通気口が設けられており、本体筐体29の外部に設置された情報通信装置45から2.4GHz帯の干渉波(電磁波)が内部に侵入してしまう。ここで、カードユニット23bの筐体が単なる樹脂筐体であれば、侵入した干渉波は、データキャリア41a,41bとアクセスポイント42との間の通信に干渉してしまう。一方、カードユニット23bの筐体が金属筐体であれば、コイル4bとコイル4cとの間、及びアンテナ6bとアンテナ6eとの間は、金属筐体で挟まれていることになるので、磁界や電磁波を反射してしまい、電力伝送もデータ通信も困難になってしまう。
【0060】
そこで、本実施形態のカードユニット23bの筐体は、金属メッキ又は金属蒸着された樹脂筐体であり、アンテナ6bとアンテナ6eとの間に開口部を設けたものである。これにより、カードユニット23bの筐体は、数10kHzの電力伝送用の磁界(電磁波)を通過させ、2.4GHz帯の干渉波を遮断することができる。ここで、アンテナ6b,6eにより挟まれる開口部は、2.4GHz帯の干渉波を通過させるが、この開口部はコイル4b,4cよりも面積が少ないので、干渉波の影響が少ない。また、必要に応じて、アンテナ6b及び無線機7bを金属筐体で囲えば、開口部を通過する干渉波の強度が低減する。
【0061】
(変形例)
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。例えば、下記の変形が可能である。
前記第1実施形態は、紙幣収納カセット37の筐体底面に電力伝送のためのコイル4aを設置したが、自動取引装置100の本体と近接する部分であれば、筐体の底面でなくてもよい。例えば、筐体の側面に設置することができる。また、第1実施形態、及び第2実施形態のアンテナは、高周波の電磁波を用いるため、設置場所はより大きな自由度がある。第2実施形態は、高周波で電力伝送及びデータ通信を行うとしたが、電磁誘導の誘導電流の変化に情報を載せることでデータ通信を実現することもできる。電界結合等、他の電力伝送方式に対して、その信号を変化させることで情報を伝送することも本発明の範囲内である。前記実施形態は、現金を預け払い機能を有した自動取引装置(ATM)を前提としていたが、紙幣入出金部1を有したロッカー、自動販売機、入出金機、券売機等もこの発明に含まれる。