特許第6299471号(P6299471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299471
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】死角補助装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/04 20060101AFI20180319BHJP
【FI】
   B60R1/04 H
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-126522(P2014-126522)
(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公開番号】特開2016-2975(P2016-2975A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春山 加苗
(72)【発明者】
【氏名】小幡 雅人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐一
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−63047(JP,U)
【文献】 実開昭61−70161(JP,U)
【文献】 実開昭61−18956(JP,U)
【文献】 スイス国特許発明第288615(CH,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物によって遮られる死角領域の像を映す死角補助装置であって、
前記像を表す光を入射し、視認者側に設けられ光の一部を反射し一部を透過する半透過ミラーと、光を前記半透過ミラーへ反射するミラーとが互いに対向するように配置される一対のミラーと、
前記半透過ミラーの前記視認者側に設けられ、前記視認者側から前記半透過ミラーに所定の角度で入射する光を遮る第一の遮光部と、
前記半透過ミラーの入射側端部に設けられ、前記視認者側から前記半透過ミラーを介さずに前記ミラーに所定の角度で入射する光を遮る第二の遮光部と、を備えてなることを特徴とする死角補助装置。
【請求項2】
前記第二の遮光部は、前記第一の遮光部と一体的に形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の死角補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内のフロントピラーなどの障害物によって遮られる死角領域の像を映す死角補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内のフロントピラーなどの障害物によって生じる死角を映す視認装置として、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。この視認装置は、車両前方を映す第1ミラーと、この第1ミラーに入射した光を運転者側に反射させる第2ミラーを備え、車両のフロントピラーを挟む直接視認エリアを通して運転者が見える像と前記第2ミラーに映る像が連続するように、前記第1ミラー及び/または前記第2ミラーを調整可能に構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−231998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る視認装置では、運転者から見て第2ミラー及び風景を遮らないように第1,第2ミラーの互いの位置関係を調整する必要があり、設置作業や調整作業が煩雑であるという問題点があった。また、第2ミラーに死角を映す場合、死角領域の像を示す光以外にも外光が第2ミラーで反射して運転者の目に入り、視認性が損なわれるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、より容易に視認者が直接視認する像と連続して死角領域の像を映すことが可能であり、また、視認性を向上させることが可能な死角補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る死角補助装置は、障害物によって遮られる死角領域の像を映す死角補助装置であって、
前記像を表す光を入射し、視認者側に設けられ光の一部を反射し一部を透過する半透過ミラーと、光を前記半透過ミラーへ反射するミラーとが互いに対向するように配置される一対のミラーと、
前記半透過ミラーの前記視認者側に設けられ、前記視認者側から前記半透過ミラーに所定の角度で入射する光を遮る第一の遮光部と、
前記半透過ミラーの入射側端部に設けられ、前記視認者側から前記半透過ミラーを介さずに前記ミラーに所定の角度で入射する光を遮る第二の遮光部と、を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より容易に視認者が直接視認する像と連続して死角領域の像を映すことが可能となり、また、視認性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る死角補助装置が配置される車両の運転席付近の概観を示す図である。
図2】同上死角補助装置の概観を示す平面図である。
図3】同上死角補助装置を示す斜視図である。
図4】同上死角補助装置を示す図である。
図5】同上死角補助装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る死角補助装置を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は本実施形態に係る死角補助装置100が配置される車両1の運転席付近の概観を示す図である。車両1は、図1に示すように、ステアリング10と、ウインドシールドガラス20と、サイドガラス30,40と、フロントピラー50,60と、を備える。また、21,22は、ウインドシールドガラス20の周辺部に印刷形成される遮光性の黒セラ(黒セラミック)部である。
【0011】
車両1において、視認者(主に運転者)は、ウインドシールドガラス20(黒セラ部21の部分を除く)とサイドガラス30,40が配置される領域では風景を直接視認する一方、フロントピラー50,60と黒セラ部21,22が配置される領域ではフロントピラー50,60と黒セラ部21,22とによって視認者の視界が遮られ、風景を直接視認することができない死角領域が生じる。すなわち、フロントピラー50,60と黒セラ部21,22とは、本発明における障害物に該当する。
【0012】
次に、図1図3に基づいて本実施形態に係る死角補助装置100の構成について説明する。なお、図2は、死角補助装置100の概観を示す平面図であり、図3は、死角補助装置100を示す斜視図である。
死角補助装置100は、図1及び図2に示すように、視認者側から見て右側(運転者側)のフロントピラー50に図示しないホルダ部材を介して配置され、フロントピラー50及び黒セラ部21によって遮られる死角領域の像を映すものである。なお、死角補助装置100は、視認者から見てフロントピラー50及び黒セラ部21と対向するように配置される。
【0013】
死角補助装置100は、図2及び図3に示すように、一対の平行平面ミラー(一対のミラー)110と、複数のルーバー(第一の遮光部)121〜126を有する遮光部材120と、を備える。
【0014】
一対の平行平面ミラー110は、入射した光の一部を反射し一部を透過する半透過平面ミラー(半透過ミラー)111と、平面ミラー(ミラー)112とが互いに平行に対向するように配置されることによって構成される。なお、半透過平面ミラー111と平面ミラー112は図示しないホルダ部材に配置されることで平行な位置関係で固定される。なお、本発明の一対のミラーは、互いに対向するように配置されるものであれば完全な平行に配置されなくともよく、また、平面ミラーでなく曲面ミラーであってもよい。
【0015】
半透過平面ミラー111は、視認者側に配置され、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル等の透光性の樹脂材料からなる基材の表面にアルミなどの金属を蒸着させることにより、所望の反射率を有するように反射率調整層を形成してなる。反射率調整層の厚さや種類などにより、反射率(透過率)が調整される。本実施形態の半透過平面ミラー111における透過光と反射光の光量比は、透過光:反射光=1:9である。なお、半透過平面ミラー111は、基材の表面に誘電体多層膜をコーティングして形成してもよい。半透過平面ミラー111は、平面ミラー112と対向する基部111aと基部111aから延設される延設部111bとを有し、半透過平面ミラー111と平面ミラー112とが水平方向に段違い状となるように配置される。
【0016】
平面ミラー112は、その平面(反射面)が半透過平面ミラー111の平面(半透過反射面)と平行となるように配置されるものであり、例えば上述の透光性樹脂材料からなる基材の表面にアルミなどの金属を蒸着させてなる平面アルミ蒸着ミラーである。
【0017】
半透過平面ミラー111と平面ミラー112とは、それぞれの平面(半透過反射面及び反射面)が、一対の平行平面ミラー110における光Lの進行方向(図3の矢印で示す)に対して垂直方向の幅が一対の平行平面ミラー110における光Lの進行方向に向かって徐々に小さくなるように、略楔状に形成されている。視認者の視野範囲から外れる不要個所を除去して小型化及び軽量化するためである。また、半透過平面ミラー111と平面ミラー112とは互いの平面形状が相似であり(ほぼ相似である場合を含む)、平面ミラー112の一対の平行平面ミラー110における光の進行方向Lに対して垂直方向の幅が、半透過平面ミラー111の一対の平行平面ミラー110における光Lの進行方向に対して垂直方向の幅よりも大きくなるように形成されている。斜め下あるいは斜め上から死角補助装置100を見た場合に、上下方向で半透過平面ミラー111と平面ミラー112との間を遮光する図示しない遮光壁(例えば前記ホルダ部材の一部からなる)が映り込むことを抑制するためである。また、半透過平面ミラー111の入射側端部(入射側の側辺)E10と、平面ミラー112の入射側端部(入射側の側辺)E11とは、ウインドシールドガラス20のガラス面に沿って傾斜している。ウインドシールドガラス20のガラス面に近接して配置可能とするためである。
【0018】
遮光部材120は、半透過平面ミラー111の視認者側の平面に設けられる非透光性部材であり、例えば黒色の合成樹脂材料からなる。遮光部材120は、半透過平面ミラー111の外形に応じた枠部127に、半透過平面ミラー111の視認者側の平面に沿って複数のルーバー121〜126が設けられてなる。ルーバー121〜126は、遮光部材120と同様の材料からなる非透光性の板状部である。なお、図2においては図を見やすくするために枠部127を省略して図示している。また、ルーバー121〜126は、その先端部が視認者側を向くように半透過平面ミラー111の視認者側の平面に対して所定の角度傾いて配置される。ルーバー121〜126の作用については後で詳述する。
【0019】
次に、図2を用いて、一対の平行平面ミラー110の作用について説明する。なお、図2は、視認者が運転席に着座した状態を示しており、2は視認者の視点(アイポイント)を示している。
【0020】
図2において、視認者(視点2)の前方視界には、フロントピラー50(図示しないが黒セラ部21も含む)によって遮られる死角領域Dが生じる。したがって、視点2からは死角領域Dに存在する物体Mを直接視認することができない。
一方、物体Mからの光Lは、一対の平行平面ミラー110に入射し、一対の平行平面ミラー110の間で反射を繰り返しつつ、一部の光Lは一対の平行平面ミラー110から出射する(半透過平面ミラー111を透過する)。なお、一対の平行平面ミラー110に入射し、一対の平行平面ミラー110の間で反射を繰り返すのは一対の平行平面ミラー110の平行な平面に対して傾きを有する光である。一対の平行平面ミラー110から出射する光Lの一部は、視点2に達する。したがって、視点2からは直接視認できる風景と連続して平面ミラー112に映る物体Mの像を半透過平面ミラー111越しに視認することができる。なお、死角領域Dのうちフロントピラー50の背面側の僅かな領域(ハッチングで示す部分)は、この領域からの光が一対の平行平面ミラー110に入射できず、その像を一対の平行平面ミラー110によって映すことができないが、それ以外の殆どの領域において死角領域Dの像を一対の平行平面ミラー110によって映すことができる。
なお、死角領域Dの像を一対の平行平面ミラー110によって映すに当たって、視認者は、死角補助装置100をフロントピラー50の任意の高さ(視点2に合った高さ)に、一対の平行平面ミラー110に死角領域Dの像が映るように、すなわち、死角領域Dからの光Lが視点2に達するように一対の平行平面ミラー110の角度を調整して配置する。半透過平面ミラー111と平面ミラー112とは互いの位置関係が平行に固定されるため、一度の配置作業で一対の平行平面ミラー110を同時に配置することができ、また、一度の調整作業で一対の平行平面ミラー110の角度を同時に調整することができる。
【0021】
ところで、光Lは一対の平行平面ミラー110の間で反射を繰り返すので、光Lが半透過平面ミラー111にn回入射した場合、物体Mの像を示すn個の光Lが1つの平行平面ミラー110から出射される。すなわち、一対の平行平面ミラー110からは視点2の左右方向に沿って、n個の物体Mの像を示す光Lが出射することとなる。したがって、視認者は左右方向の広い範囲で物体Mの像を視認することができる。なお、一対の平行平面ミラー110から出射される光Lは半透過平面ミラー111での反射回数が増加するのに伴って輝度が低下する。
【0022】
次に、図4を用いて、ルーバー121〜126の作用について説明する。なお、図4は、死角補助装置100を手前側上方から見た図であり、図4においては図を見やすくするために遮光部材120の枠部127を省略して図示している。
【0023】
一対の平行平面ミラー110には、死角領域Dからの光L以外に視認者(視点2)側からも外光が入射する。視認者側から一対の平行平面ミラー110に入射する外光のうち、図4に示すように、特に半透過平面ミラー111の平面の垂線Pに対して光Lの入射側に傾いて半透過平面ミラー111に入射する光(以下、第一の迷光SL1という)は、その一部が半透過平面ミラー111で視点2に向かって反射され、あるいは一部が半透過平面ミラー111を透過して平面ミラー112で反射されて、再度半透過平面ミラー111から視点2に向かって出射され、平面ミラー112に映る物体Mの像の視認性を低下させる要因となる。これに対し、死角補助装置100は、半透過平面ミラー111の視認者側の平面にルーバー121〜126を設けることによって、半透過平面ミラー111に入射する第一の迷光SL1を遮って高い視認性を確保することができる。なお、ルーバー121〜126の長さ及び個数は、半透過平面ミラー111によって視点2に向けて反射されうる第一の迷光SL1を遮る機能を果たすとともに、視点2からの視界を過度に遮らないように適宜定められる。すなわち、ルーバー121〜126は、その長さが長いほど1個のルーバーで多くの第一の迷光SL1を遮ることができるものの、ルーバー自体が視点2からの視界を遮るおそれがある。これに対し、複数のルーバー121〜126を設けることでルーバー各々の長さを低減することができる。本実施形態では、6つのルーバー121〜126で第一の迷光SL1を遮る機能を果たしている。なお、第一の迷光SL1の全てがルーバー121〜126で遮られることが望ましいが、一部が遮られる場合であっても視認性向上の効果を得ることができる。
【0024】
また、遮光部材120のルーバー121〜126のうち、最も半透過ミラー111の入射側に位置するルーバー121は、その一端(視点2から遠方側の端部)が半透過ミラー111の入射側端部E10よりも平面ミラー112側まで延長され、半透過平面ミラー111の視認者側の遮光基部121aと平面ミラー112側の遮光延設部(第二の遮光部)121bからなるように形成される。すなわち、遮光延設部121bはルーバー121と一体的に形成される。
【0025】
例えば、死角補助装置100の周囲、特にウインドシールドガラス20との間に十分なスペースがないなどの設計上の理由で半透過平面ミラー111の延設部111bが短くなると、視認者側から一対の平行平面ミラー110に入射する外光のうち、図4に示すように、半透過ミラー111を介さずに平面ミラー112に対して所定の角度以上の入射角で入射する光(以下、第二の迷光SL2という)は、平面ミラー112で視点2に向かって反射され、平面ミラー112に映る物体Mの像の視認性を低下させる要因となる。これに対し、死角補助装置100は、半透過平面ミラー111の入射側端部E10に延設遮光部121bを設けることによって、平面ミラー112に入射する第二の迷光SL2を遮って高い視認性を確保することができる。具体的には、延設遮光部121bを、半透過平面ミラー111の入射側端部E10から、視認者の視点2から平面ミラー112の入射側端部E11に入射し、入射側端部E11で視認者側に反射した光路R1を遮る位置まで設ける。これによって、半透過平面ミラー111の延長やルーバーの個数増加などで死角補助装置100全体を大きくすることなく、平面ミラー112で反射されて視点2に到達する第二の迷光SL2を遮ることができる。なお、遮光延設部121bの内側面(平面ミラー112側の平面)には死角領域Dの方向からの光が入射し、平面ミラー112に向けて反射されると迷光となり得るため、遮光延設部121bの内側面は黒色塗装などの反射防止処理を施すことが望ましい。また、本実施形態では、遮光延設部121bは遮光基部121aと直線状となるように設けられたが、遮光延設部121bが遮光基部121aから屈折して設けられても良い。例えば遮光延設部121bが半透過平面ミラー111の平面に対して垂直に延設されてもよい。
【0026】
次に、ルーバー121〜126の配置位置及び角度について図3及び図5を用いて説明する。なお、図5は、死角補助装置100を手前側上方から見た図であり、図5においては図を見やすくするために遮光部材120の枠部127を省略して図示している。
【0027】
視点2から一対の平行平面ミラー110の平面を視認すると、ルーバー121〜126の各々は、死角領域Dを含む前方視界における上下方向の線として視認される。また、平面ミラー112の入射側端部E11も同様に視点2から見て前方視界における上下方向の線として視認される。さらに、平面ミラー112の入射側端部E11は、半透過平面ミラー111で反射され、平面ミラー112に映り込む複数の入射側端部E11の像E12〜E14が同様に視点2から見て前方視界における上下方向の線として視認される。これらの線が全て別々に視認されると死角補助装置100の視認性が損なわれるおそれがある。これに対し、本実施形態においては、ルーバー121〜126のうち、ルーバー123〜126を、基準視点位置として定める視点2から見て、平面ミラー112の入射側端部E11あるいは入射側端部E11の像E12〜E14と重なるように配置し、前方視界における上下方向の線を低減してルーバー121〜126を設ける構成であっても良好な視認性を確保している。
具体的には、まず図3に示すように、一対の平行平面ミラー110の平面側から見て、ルーバー123〜126を平面ミラー112の入射側端部(入射側の側辺)E11と平行となる角度に設ける。
そして図5に示すように、ルーバー123を視点2から見て入射側端部E11と重なるように、視点2と入射側端部E11とを結ぶ直線S1上に配置する。直線S1は、視点2から見て半透過平面ミラー111を介して背景を視認する領域(1回目)と、半透過平面ミラー111、平面ミラー112の順で光Lが反射されて、再度(2回目)半透過平面ミラー111に入射する像を視認する領域との境界である。
また、ルーバー124を視点2から見て平面ミラー112に映り込む入射側端部E11の像E12と重なるように、視点2と入射側端部E11から一対の平行平面ミラー110の平面に対して垂直方向に半透過平面ミラー111と平面ミラー112との間隔Aを2回分移動した点E21とを結ぶ直線S2上に配置する。直線S2は、2回目に半透過平面ミラー111に入射する像とさらに半透過平面ミラー111、平面ミラー112の順で光Lが反射されて、再度(3回目)半透過平面ミラー111に入射する像を視認する領域との境界であり、平面ミラー112の入射側端部E11の像E12は直線S2上で視認されるためである。
また、ルーバー125を視点2から見て平面ミラー112に映り込む入射側端部E11の像E13と重なるように、視点2と点E21から一対の平行平面ミラー110の平面に対して垂直方向に間隔Aをさらに2回分移動した点E31とを結ぶ直線S3上に配置する。直線S3は、3回目に半透過平面ミラー111に入射する像とさらに半透過平面ミラー111、平面ミラー112の順で光Lが反射されて、再度(4回目)半透過平面ミラー111に入射する像を視認する領域との境界であり、平面ミラー112の入射側端部E11の像E13は直線S3上で視認されるためである。
また、ルーバー126を視点2から見て平面ミラー112に映り込む入射側端部E11の像E14と重なるように、視点2と点E31から一対の平行平面ミラー110の平面に対して垂直方向に間隔Aをさらに2回分移動した点E41とを結ぶ直線S4上に配置する。直線S4は、4回目に半透過平面ミラー111に入射する像とさらに半透過平面ミラー111、平面ミラー112の順で反射されて、再度(5回目)半透過平面ミラー111に入射する像を視認する領域との境界であり、平面ミラー112の入射側端部E11の像E13は直線S4上で視認されるためである。
【0028】
また同様に、視点2から一対の平行平面ミラー110の平面を視認すると、半透過平面ミラー111の入射側端部E10も視点2から見て前方視界における上下方向の線として視認される。これに対し、本実施形形態は、ルーバー121〜126のうち、ルーバー121を、基準視点位置として定められる視点2から見て、半透過平面ミラー111と重なるように配置し、前方視界における上下方向の線を低減してルーバー121〜126を設ける構成であっても良好な視認性を確保している。
具体的には、まず図3に示すように、ルーバー121を半透過平面ミラー111の入射側端部(入射側の側辺)E10と重なるように設ける。
そして、図5に示すように、ルーバー121を視点2から見て入射側端部E10と重なるように、視点2と入射側端部E10とを結ぶ直線S0上に配置する。直線S1は、視点2から見て直接背景を視認する領域と半透過平面ミラー111を介して背景を視認する領域との境界である。
【0029】
ルーバー121〜126のうち、ルーバー122は、ルーバー121の長さを低減するためにルーバー121とルーバー123との間に設けられる。ルーバー122の半透過平面ミラー111の平面に対する角度θ2は、ルーバー121の半透過平面ミラー111の平面に対する角度θ1と同様とした(θ1=θ2)。
【0030】
このように、ルーバー121〜126を配置すると、ルーバー121〜126の半透過平面ミラー111の平面に対する角度θ1〜θ6が、入射側から出射側に向かって(一対の平行平面ミラー110の光Lの進行方向に向かって)段階的に大きくなるように設けられることとなる(θ1=θ2<θ3<θ4<θ5<θ6)。
【0031】
以上の構成からなる死角補助装置100は、車両1内の障害物によって遮られる死角領域Dの像を映す死角補助装置100であって、
前記像を表す光Lを入射し、視認者側に設けられ光Lの一部を反射し一部を透過する半透過平面ミラー111と、光Lを半透過平面ミラー111へ反射する平面ミラー112とが互いに対向するように配置される一対の平行平面ミラー110と、
半透過平面ミラー111の前記視認者側に設けられ、前記視認者側から半透過平面ミラー111に所定の角度で入射する第一の迷光SL1を遮るルーバー121〜126と、
半透過平面ミラー111の入射側端部E10に設けられ、前記視認者側から半透過平面ミラー111を介さずに平面ミラー112に所定の角度で入射する第二の迷光SL2を遮る遮光延設部121bと、を備えてなる。
これにより、一対の平行平面ミラー110の一方に半透過平面ミラー111を用いたため、視認者は半透過平面ミラー111越しに平面ミラー112に映る物体Mの像及び風景を視認することができ、一対の平行平面ミラー110の配置位置の自由度が増し、より容易に視認者が直接視認する像(風景)と連続して死角領域Dの像を映すことが可能となる。また、死角領域Dを撮像するカメラ及び撮像画像を表示する表示器が不要であるためこれらを使用する場合と比較して安価である。また、ルーバー121〜126によって第一の迷光SL1が半透過平面ミラー111に入射することを防ぎ、さらに、遮光延設部121bによって第二の迷光SL2が平面ミラー112に入射することを防ぐことができ、視認性を向上させることができる。
【0032】
また、遮光延設部121bは、ルーバー121と一体的に形成されてなる。
これによれば、容易に第二の遮光部を設けることができる。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態及び図面によって限定されるものではない。上記実施形態及び図面に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。本発明の第二の遮光部は、第一の遮光部と別体に形成されるものであってもよい。また、例えば、ルーバー121〜126を軸部を介して配置するなどしてルーバー121〜126の角度を手動などで調整可能に配設してもよい。この場合、全てのルーバー121〜126を半透過平面ミラー111の平面に対して近づけて傾けた状態でルーバー121〜126によって半透過平面ミラー111の平面が覆われるようにすれば、不使用時に半透過平面ミラー111にゴミや埃が付着することを防止し、また、傷や破損を防止することができる。また、ルーバー121〜126を含む遮光部材120をシリコーンなどの柔軟性を有する材料によって構成してもよい。これによれば、容易に遮光部材120を着脱することができ、遮光部材120を外して半透過平面ミラー111の汚れを除去しやすく、また、色やデザインにバリエーションを持たせて視認者が好みに応じて交換する際にも利便性が高い。さらに、視認者等が誤って死角補助装置100に接触する際に緩衝部材としての機能を果たすことができる。また、本実施形態では、一対の平行平面ミラー110の間は中空であったが、一対の平行平面ミラー110の間に透明な樹脂材料(透光性部材)を充填するなどして中実構造としてもよい。これによって、埃や汚れなどが一対の平行平面ミラー110の内面に付着することを防止することができる。
【0034】
本実施形態の死角補助装置100は、車両1の運転席側から見て右側のフロントピラー50に配置されるものであったが、左側のフロントピラー60にも同様の死角補助装置が配置されてもよい。また、車両内の障害物として、フロントピラーの他にもセンターピラーやリアピラーなどに配置され、これらによって遮られる死角領域の像を映す死角補助装置であってもよい。
【0035】
また、本発明は、車両以外の分野にも障害物によって遮られる死角領域の像を映す死角補助装置として広く適用することができる。例えば、本発明の死角補助装置を住宅に用いる場合、大面積の死角補助装置を天井に取り付けて入射部分のみを壁などから屋外に出すことで屋内に居ながら天井の死角補助装置で空の様子を見ることができ、また、天井から屋内に太陽光を導くことができる。住宅密集地や通常の窓を付けられない事情のある住宅には特に好適である。
また、例えば観光施設等の高層建築物で、高層階の床下に大面積の死角補助装置を埋め込み、光入射部分のみを屋外に出すことで、床下の死角補助装置で眼下の風景を直接足下に感じることが可能となり、建築物の高さを強調することができる。同様の効果を得るために、従来は床下に空間を設ける必要があったが、本発明の死角補助装置によれば既存の建築物にも容易に配置することができ好適である。
このほか、壁面に用いる例としては、道路に近接して塀が立っている見通しの悪い交差点などにおいて、塀の角に本発明の死角補助装置を配置することで、死角領域の歩行者や車両の存在をいち早く認識することができ、出会い頭の事故の防止に貢献することができる。
以上のように、本発明の死角補助装置は、電力などのエネルギーを必要とすることなく、これまで視認することができなかった障害物に遮られた死角領域を、光入射部分のスペースを確保するのみで広範囲に亘って障害物を透けたように視認させることができるものであり、その用途は室内外を問わず広く適用でき、健康、安全あるいは感動など多岐に亘る効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、障害物によって遮られる死角領域の像を映す死角補助装置に好適である。
【符号の説明】
【0037】
1 車両
2 視点
100 死角補助装置
110 一対の平行平面ミラー(一対のミラー)
111 半透過平面ミラー(半透過ミラー)
111a 基部
111b 延設部
112 平面ミラー(ミラー)
120 遮光部材
121〜126 ルーバー(第一の遮光部)
121a 遮光基部
121b 遮光延設部(第二の遮光部)
127 枠部
図1
図2
図3
図4
図5