(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299552
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】天井埋込型空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 13/20 20060101AFI20180319BHJP
F24F 13/22 20060101ALI20180319BHJP
F24F 1/00 20110101ALI20180319BHJP
F24F 13/32 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
F24F1/00 401E
F24F1/00 361D
F24F1/00 301
F24F1/00 426
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-209322(P2014-209322)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-80207(P2016-80207A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】小椋 拓
【審査官】
佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−211136(JP,A)
【文献】
特開2000−018635(JP,A)
【文献】
特開2004−085003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/20
F24F 1/00
F24F 13/22
F24F 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調室の天井に埋設される箱型の筐体と、同筐体の下面に取り付けて前記天井を覆う化粧パネルとからなり、前記筐体は内部中央に送風ファンと同送風ファンを囲む熱交換器とを備え、前記送風ファンの下部と前記化粧パネルの間には内部入口が吸込口となり同吸込口から空気を取り込み前記送風ファンまで導くラッパ状のベルマウスを設け、前記ベルマウスの前記化粧パネル側には電装品箱が配置され、前記ベルマウスの周囲と前記筐体の下面を覆うドレンパンを設け、同ドレンパンは前記熱交換器で生じるドレン水を受け、前記熱交換器で熱交換された空気を吹き出す吹出口を備えた天井埋込型空気調和機において、
前記ドレンパンには、前記筐体内部側に前記電装品箱内の制御基板とケーブルで接続される電装部品が配置され、
前記ベルマウスの下縁には下方に向かって垂直に立設されたケーブル収納壁と、同ケーブル収納壁の端の全周または一部に前記ドレンパン側に延出するフランジとを備え、前記ドレンパンと前記ケーブル収納壁の間に前記ケーブルが収納可能なケーブル通路を形成し、
前記ドレンパンは前記フランジの対面にテーパ面を設け、前記フランジの端部と前記テーパ面の間の隙間でなるケーブル挿入口が、前記ケーブルの直径よりも狭く、また前記ケーブルが変形した状態で通過でき、且つ変形が復元した状態では前記ケーブルが抜け落ちないことを特徴とする天井埋込型空気調和機。
【請求項2】
前記ドレンパンは、前記ドレンパンの底面の角隅からケーブル通路までの間にケーブル溝を設け、同ケーブル溝の出口を前記テーパ面に設けることを特徴とする請求項1に記載の天井埋込型空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井内に筐体が埋設された天井埋込型空気調和機に関し、さらに詳しく言えばベルマウスとドレンパンの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天井埋込型空気調和機は、空調室の天井に埋設される箱型の筐体と、同筐体の下面に取り付けて天井を覆う化粧パネルとからなる。筐体は内部中央に送風ファンと同送風ファンを囲む熱交換器とを備え、送風ファンの下部には吸込口から空気を取り込み送風ファンまで導くベルマウスが設けられる。ベルマウスの吸込口の端には天井埋込型空気調和機を制御する電装部品および制御基板が収納された電装品箱が配置される。またベルマウスの外側と筐体の下面を覆うドレンパンが配置されている。ドレンパンは熱交換器で生じるドレン水を受けるとともに、熱交換器で冷媒と熱交換された空気を吹き出す吹出口を備える。
【0003】
送風ファンにより化粧パネルに設けた吸込グリルから吸い込まれた空気は吸込口からベルマウスを通り熱交換器で冷媒と熱交換して、吹出口から風向板で風向を調節して室内に送出される。
【0004】
ドレンパンには、筐体内部側にドレンパンに溜まったドレン水の水位を検知するフロートスイッチと、フロートスイッチの信号によりドレン水を屋外へ排出するドレンポンプが配置され、フロートスイッチとドレンポンプはいずれも電装品箱内の制御基板とケーブルで接続される。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5293623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ケーブルを制御基板に接続する作業は、まずケーブルをドレンパンの筐体内部側から筐体とドレンパンの隙間を通し電装品箱側へ引き出す。電装品箱側は化粧パネルを開放した際に使用者の視界に入るので、ケーブルが弛んで使用者の視界に入らないようにケーブルをドレンパンとベルマウスの間の通路に差し込んで吸込口の周囲を這わせたのち電装品箱内の制御基板に接続する。この時ベルマウスは弾性変形することで、片手でベルマウスを開き、もう一方の手でケーブルを通路に入れ込む作業となる。
しかし、片手でベルマウスを開き、もう一方の手でケーブルを通路に入れ込むのは非常に困難な作業となる。
【0007】
本発明は以上述べた問題点を解決し、ドレンパンとベルマウスの間の通路にケーブルを入れ込む作業を容易にした天井埋込型空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために本発明は、空調室の天井に埋設される箱型の筐体と、同筐体の下面に取り付けて前記天井を覆う化粧パネルとからなり、前記筐体は内部中央に送風ファンと同送風ファンを囲む熱交換器とを備え、前記送風ファンの下部と前記化粧パネルの間には内部入口が吸込口となり同吸込口から空気を取り込み前記送風ファンまで導くラッパ状のベルマウスを設け、前記ベルマウスの前記化粧パネル側には電装品箱が配置され、前記ベルマウスの周囲と前記筐体の下面を覆うドレンパンを設け、同ドレンパンは前記熱交換器で生じるドレン水を受け、前記熱交換器で熱交換された空気を吹き出す吹出口を備えた天井埋込型空気調和機において、
前記ドレンパンには、前記筐体内部側に前記電装品箱内の制御基板とケーブルで接続される電装部品が配置され、前記ベルマウスの下縁には下方に向かって垂直に立設されたケーブル収納壁と、同ケーブル収納壁の端の全周または一部に前記ドレンパン側に延出するフランジとを備え、前記ドレンパンと前記ケーブル収納壁の間に前記ケーブルが収納可能なケーブル通路を形成し、前記ドレンパンは前記フランジの対面にテーパ面を設け、前記フランジの端部と前記テーパ面の間の隙間でなるケーブル挿入口が、前記ケーブルの直径よりも狭く、また前記ケーブルが変形した状態で通過でき、且つ変形が復元した状態では前記ケーブルが抜け落ちないことを特徴とする。
【0009】
また前記ドレンパンは、前記ドレンパンの底面の角隅からケーブル通路までの間にケーブル溝を設け、同ケーブル溝の出口を前記テーパ面に設けることも含まれる。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した本発明の天井埋込空気調和機は、ドレンパンの筐体内部側に配置された電装部品から電装品箱側に引き出されたケーブルをケーブル通路に収納させ電装品箱に接続させることでケーブルが弛まずに使用者の目に触れないように設置することができる。
【0011】
またケーブルはフランジの端部とテーパ面の間の隙間でなるケーブル挿入口が、ケーブルの直径よりも狭く、またケーブルが変形した状態で通過でき、且つ変形が復元した状態ではケーブルが抜け落ちない隙間であるから、ケーブルを入れ込むとき片手でベルマウスを開く必要がないため作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】ドレンパンとベルマウスの構成を示す斜視図である。
【
図5】ケーブル取付説明図であり、(a)はケーブル取付前の説明図で、(b)はケーブル取付後の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
図1と
図2に示す本発明による天井埋込形空気調和機1(以下空気調和機1とする)は、空調室内Kの天井Tに埋設される箱型の筐体10と、同筐体の下面101に取り付ける四角形の化粧パネル3とからなる。筐体10は筐体10の側板11に複数備えられた取付金具12で図示しない天井裏壁面に埋め込まれた複数の吊りボルトに吊下げて設置される。また化粧パネル3は、取付金具12に空調室内K側からネジで固定することで筐体10に取り付けられ、筐体10の下面101と底面101周囲の空調室内K側の天井面T1を覆う。
【0015】
化粧パネル3には中央に筐体10に空気を取り入れるためドット状の複数の吸込孔401が全体で四角形状となるように配置された吸込グリル40が着脱可能に取り付けられている。また後述する本体吹出口15に合わせた吹出口31を設け、同吹出口31には回動可能な風向板5を備える。
【0016】
筐体10の外郭は、板金で形成された天板13と、天板13の外周から下方に延在する側板11とで形成される。天板13と側板11の内周面には
図2に示すように断熱部材14が設けられる。また、天板13の中央内側にはネジによりファンモータ21が固定され、ファンモータ21から下方に伸びるシャフト22に送風ファン23のハブ23aが軸支される。送風ファン23はハブ23aとシュラウド23bと複数のブレード23cとからなる所謂ターボファンである。送風ファン23はファンモータ21とともに筐体10の内部のほぼ中央に配置される。
【0017】
図2ないし
図5に示すように送風ファン23の下部と化粧パネル3との間には内部入口が吸込口16となるラッパ状のベルマウス24を設ける。ベルマウス24は、樹脂製で送風ファン23から徐々にラッパ状に広がる吸込案内部241と、吸込案内部241の下端に位置し、吸込グリル4の四角形状に配置された吸込孔401に合わせ吸込孔401を覆う吸込口枠242とからなる。また吸込口枠242の下縁には下方に向かって垂直に立設されたケーブル収納壁243を備える。
【0018】
ファンモータ21により回転駆動される送風ファン23により、空調室内Kの空気が吸込グリル4の吸込孔401から吸込口16に吸い込まれる。筐体10に吸い込まれた空気は、ベルマウス24の吸込案内部241に沿って送風ファン23に案内され、送風ファン23の外方に向かって吹き出される。
【0019】
筐体10にはベルマウス24の周囲と筐体10の下面101を覆う発泡断熱材でなるドレンパン60を設ける。ドレンパン60は後述する熱交換器25で生じるドレン水を受けるとともに、熱交換器25で冷媒と熱交換された空気を吹き出す本体吹出口15を備える。
【0020】
送風ファン23の周囲には、断熱部材14とドレンパン60とで上下を挟まれた熱交換器25が配設される。熱交換器25は所定の間隔で積層された複数の矩形のアルミフィン251と、このアルミフィン251に直交するように配設された複数の伝熱管252とからなるフィンチューブ型の熱交換器25である。熱交換器25は送風ファン23を筐体10の四辺に沿って囲むように設けられる。また熱交換器25の一角部では熱交換器25の端部と端部の間で伝熱管252を外へ引き出すために隙間が設けられている。この角部が配管接続部26となり引き出された伝熱管252は図示しない屋外の室外機と連結される。
【0021】
図3に示すようにベルマウス24の化粧パネル側で配管接続部26に位置する吸込口枠242にはL字状に形成された電装品箱18が配置される。電装品箱18はL字状の箱体181と箱体181を覆う蓋182からなり、箱体181内にはL字状の一方にコンデンサやコイルを有する電源部品183を収納し、もう一方にコネクタ184aや制御に関係する部品が配置された制御基板184を収納する。L字状の両端で箱体181と蓋182の間には後述するケーブル67を引き込むケーブル引込口185が設けられる。
電装品箱18を配管接続部26側に配置するのは、配管接続部26に熱交換器25のない隙間がありこの隙間では熱交換されないためベルマウス24から熱交換器25に流れる空気が少なくても影響が少ない場所のためである。
【0022】
熱交換器25は、図示しない冷房運転と暖房運転とが可能な可逆式の冷凍サイクル回路に接続されており、送風ファン23から導かれた空気を冷房運転時には蒸発器として機能して冷却し、暖房運転時には凝縮器として機能して加熱する。
【0023】
熱交換器25と側板11周囲の断熱部材14との間と、ドレンパン60に設けられた筐体10の四辺それぞれに沿った4つの本体吹出口15は、送風ファン23から吹き出された空気を化粧パネル3の吹出口31へ案内する送風路17となる。熱交換器25で熱交換された空気は送風路17と本体吹出口15を通り化粧パネル3の吹出口31から空調室内Kに吹き出される。
【0024】
熱交換器25の下部を受けるドレンパン60は、熱交換器25と対向する面に樹脂製のドレンパンプレート62を備え熱交換器25で生成されるドレン水を受け止める。ドレン水は
図3に示す筐体10内部側で配管接続部26に隣り合った一方の角部27にある電装部品のドレンポンプ65と、ドレンポンプ65に繋がったドレンパイプ(図示なし)により屋外へ排出される。ドレンポンプ65はケーブル67で電装品箱18の制御基板184に接続される。
【0025】
配管接続部26に向かい合った角部28のドレンパン60にはドレンパンプレート62に溜まったドレン水の水位を図る電装部品のフロートスイッチ66が配置されている。フロートスイッチ66はケーブル67で電装品箱18の制御基板184に接続される。
【0026】
尚、ケーブル67は押圧により弾性変形するものであり、
図5(a)に示すようにケーブル67の直径a1は例えば約6.5mmである。
【0027】
図5(a)に示すようにドレンパン60は、ベルマウス24のケーブル収納壁243の対面にケーブル収納壁243と平行となる壁面601を設ける。この壁面601とケーブル収納壁243との間がケーブル67を収納可能とし、またケーブル67を変形した状態で保持して自重で落ちない隙間a2を有するケーブル通路68となる。
【0028】
ベルマウス24のケーブル収納壁243は、ケーブル収納壁243下端の全周または一部にドレンパン60側に延出するフランジ244を備える。またドレンパン60はフランジ244の対面に位置する部分にテーパ面602を設ける。そしてフランジ244の端部244aとテーパ面602の間の隙間a3がケーブル挿入口69となる。ここで隙間a3の長さはフランジ244の端部244aからテーパ面602に引いた垂線の長さである。
ケーブル挿入口69はケーブル67の直径a1よりも狭く、また変形した状態のケーブル67が通過でき、この変形が復元した状態ではケーブル67が抜け落ちない隙間にする。
【0029】
尚、ケーブル67の直径a1と、ケーブル通路68の隙間a2と、ケーブル挿入口69の隙間a3は、a1>a2≧a3となるのが望ましい。例えばケーブル67の直径a1を約6.5mmとした場合は、ケーブル通路68の隙間a2は約6mmで、ケーブル挿入口69の隙間a3は約5.8〜6mmとなる。
【0030】
また、
図5(a)と
図6に示すようにドレンパン60のテーパ面602の下端601aとフランジ244の端部244aは水平もしくはフランジ244の端部244aをテーパ面602の下端601aより上方に位置させる。そしてケーブル挿入口69は必ずフランジ244の端部244aとテーパ面602の間に形成されるようにする。
【0031】
また、ドレンパン60は、
図3と
図4に示すように筐体10の側板11との間と、ドレンパン60の底面603にケーブル溝63を備える。ケーブル溝63は電装品箱18が配置されていない角部27、28、29の角隅27a、28a、29aからケーブル通路68までの間に形成された溝であり、ケーブル溝63の出口63aはテーパ面602に設けられる。
【0032】
またベルマウス24のフランジ244は必ずしもケーブル収納壁243の全周に設けるのではなく、例えば
図4に示すように角部28のケーブル溝63から角部29のケーブル溝63aの上を通り電装品箱18のケーブル引込口185の間に設けてもよい。これにより角部28、29から引き出されたケーブル69を電装品箱18に繋ぐことができる。
【0033】
以上の構成により、例えば電装部品のフロートスイッチ66から引き出されたケーブル67を電装品箱18の制御基板184に接続する作業は、まずケーブル67をドレンパン60の筐体10内部側からドレンパン60と筐体の10の側板11の間のケーブル溝63を通しドレンパン60の底面603側に引き出す。引き出されたケーブル67はドレンパン60の底面603のケーブル溝63に沿わせて、ドレンパン60のテーパ面602とベルマウス24のケーブル収納壁243の間にあるケーブル挿入口69からケーブル通路68に指でケーブル67を入れ込む。入れ込んだケーブル67はケーブル通路68に収納される。ケーブル通路68に収納されたケーブル67をベルマウス24の収納壁243に沿って這わせたのちに蓋182が外された状態の電装品箱18のケーブル引込口185から電装品箱18に挿入させ制御基板184のコネクタ184aに接続させる。
そして、その他の電装部品(例えばドレンポンプ65)との接続が完了した時に電装品箱18の蓋182を閉じる。
【0034】
一連の作業では、従来例のようにベルマウス24を開く作業が必要ないため両手でケーブル通路68にケーブル67を入れ込むことが可能であり、一旦入れ込んだケーブル67は抜けにくくなることから作業性が向上する。また、ケーブル通路68を形成する部品(ベルマウス24、ドレンパン60)を弾性変形させる必要がないため、部品の強度が確保できる。
【符号の説明】
【0035】
1:天井埋込型空気調和機(空気調和機)、10:筐体、16:吸込口、18:電装品箱、182:蓋、184:制御基板、185:ケーブル引込口
23:送風ファン、24:ベルマウス、243:ケーブル収納壁、244:フランジ、25:熱交換器
3:化粧パネル、31:吹出口、4:吸込グリル、401:吸込孔、5:風向板
60:ドレンパン、602:テーパ面、63:ケーブル溝、65:ドレンポンプ、66:フロートスイッチ、67:ケーブル、68:ケーブル通路、69:ケーブル挿入口
a1:(ケーブル)直径、a2:隙間、a3:隙間、K:空調室内、T1:天井面