(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも基材層、第1の接着層、バリア層、第2の接着層、シーラント層がこの順で積層されてなる電池外装用ラミネートフィルムであって、該シーラント層は、下記成分(A)と下記成分(B)を含む配合物で形成された(I)層を少なくとも1層有することを特徴とする電池外装用ラミネートフィルム。
成分(A):メタロセン系触媒を用いて製造された密度0.930g/cm3以上0.950g/cm3以下のポリエチレン
成分(B):ポリプロピレンマトリックスにゴムが分散されたポリプロピレン系エラストマー
前記(I)層を構成する配合物が、更に成分(C):エチレン−1−オクテンブロック共重合体を含有することを特徴とする請求項1に記載の電池外装用ラミネートフィルム。
前記(I)層を構成する配合物が、前記成分(A)を20重量%以上80重量%以下、前記成分(B)を5重量%以上55重量%以下、前記成分(C)を5重量%以上55重量%以下含有することを特徴とする請求項2に記載の電池外装用ラミネートフィルム。
前記バリア層が、少なくとも電解液接液面側の表面にベーマイト皮膜が形成されたアルミニウム箔よりなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電池外装用ラミネートフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の電池外装用ラミネートフィルムの実施の形態を示す断面図であり、
図2は、本発明の電池外装用ラミネートフィルムの製造方法の一例を示す熱ラミネーション工程の概略図、
図3は、本発明の電池外装用ラミネートフィルムを用いた電池外装材の一例を示す斜視図である。ただし、
図1〜3は、本発明の実施形態の一例を示すものであり、本発明の電池外装用ラミネートフィルム、電池外装材は、何ら
図1,3に示すものに限定されるものではない。また、本発明の電池外装用ラミネートフィルムの製造方法も何ら
図2に示す熱ラミネーション工程を経るものに限定されるものではない。
【0031】
なお、本明細書において、樹脂又は樹脂組成物の引張り弾性率は、ISO1184−1970に基づき15mm幅の短冊状のサンプルを、チャック間距離100mmでテンシロン型引張り試験機にて1mm/minで測定される値である。また、MFR(メルトフローレート)は、JISK7210A法に基づき、ポリエチレン樹脂又は酸変性されたポリエチレン樹脂或いはこれらを主成分とする樹脂組成物の場合は、190℃、2.16kgf荷重にて測定される値であり、ポリプロピレン樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物の場合は、230℃、2.16kgf荷重にて測定される値である。また、樹脂の密度はJISK7112A法(水中置換法)により求められるものである。
また、融点は、DSC(示差走査熱量計)にて昇温速度10℃/分で測定した時の融解終了温度により求められるものである。
【0032】
[電池外装用ラミネートフィルム]
図1に示すように、本発明の電池外装用ラミネートフィルム10は、少なくとも基材層1、第1の接着層2、バリア層3、第2の接着層4、シーラント層5がこの順で積層されてなり、シーラント層5が、成分(A):メタロセン系触媒を用いて製造された密度0.930g/cm
3以上0.950g/cm
3以下のポリエチレンと、成分(B):ポリプロピレンマトリックスにゴムが分散されたポリプロピレン系エラストマーとを含む配合物で形成された(I)層を少なくとも1層有することを特徴とする。
【0033】
<基材層>
本発明における基材層1は、突き刺し等による外部からの力によるバリア層3の破損を防ぐために、バリア層3を補強すると共に、電池外装用ラミネートフィルムの加工時の電池外装用ラミネートフィルム自体の破損を防止するための層であり、単層であっても2層以上の積層であってもよい。
基材層1は、機械的強度に優れ、耐熱性にも優れていることが要求され、引張り弾性率の高い樹脂フィルムよりなることが好ましい。
【0034】
基材層1に用いられる好ましい樹脂としては、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリアセタール(POM)、ポリアリレート(Par)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)などのポリアルキレンテレフタレート(PAT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフェニレンオキシド(PPE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリオキシベンジレン(POB)、液晶性ポリエステル、ポリスルフォン(PSF)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリビスアミドトリアゾール、ポリアミノビスマレイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの熱可塑性樹脂の1種又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0035】
これらのうち、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリアルキレンテレフタレート(PAT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)が好ましい。
【0036】
基材層1は無延伸フィルムであっても延伸フィルムであってもよいが、機械的強度及び耐熱性の観点から延伸フィルムであることが好ましく、中でも2軸延伸フィルムであることが好ましい。特に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム又は2軸延伸ポリアミドフィルムからなるものは、引張り弾性率が高く、安価であり好ましい。
【0037】
基材層1は、電池としての組み立ての際の外部からの突き刺し等の変形によるバリア層2のピンホール発生を阻止するための役割と、パウチ、エンボス加工する際に一般的に行われるプレス加工や張り出し加工時における電池外装用ラミネートフィルムの破損を防止するための役割を担うために、ある程度の弾性率と厚みが必要である。
【0038】
基材層1の引張り弾性率は通常2000MPa以上、好ましくは2200MPa以上であり、特に好ましくは2400MPa以上である。この引張り弾性率の上限は特に定めないが、上述のような好適樹脂の引張り弾性率は通常6000MPa以下である。
【0039】
また、基材層1の厚みは、好ましくは10μm以上50μm以下である。基材層1の厚みが50μmよりも厚いと、電池外装用ラミネートフィルムの剛性が高くなりすぎ、プレス加工等の加工がしにくくなるばかりか、面密度が大きくなり軽量化が図れなくなる傾向にある。また、基材層1の厚みが10μmより薄いと耐突き刺し性に影響が出る場合がある。基材層1の厚みは特に12μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0040】
電池外装用ラミネートフィルムを
図3に例示されるようなエンボスタイプの外装材とする場合、基材層1にはプレス成形時の金型との滑り性も必要となるため、基材層1の表面(電池外装用ラミネートフィルムの最表面)に滑剤を塗布したり、凹凸を付与するなどして滑り性を高めることが好ましい。
【0041】
ただし、滑剤を用いた場合は、滑剤による金型汚染の問題が懸念されるため、特に基材層1の表面に凹凸をつけて金型との摩擦係数を低下させた構成とすることが好ましい。この場合、基材層1の表面の凹凸は、キーエンス社製レーザー顕微鏡VK8500によりレンズ100倍、ピッチ0.01μm、シャッタースピードAUTO、ゲイン835の測定条件にて40μm×40μmのエリアで測定された表面粗さRaを4点測定した平均値で0.3μm以上1.0μm以下であることが好ましい。Raが上記下限より小さいと滑り性が不足する傾向があり、上記上限よりも大きいと凹凸にごみが付着しやすくなる傾向がある。好ましい基材層1の表面粗さRaは0.35μm以上0.70μm以下である。
【0042】
<第1の接着層>
第1の接着層2は、基材層1とバリア層3とを接着するための層であり、基材層1とバリア層3とをドライラミネーション法により貼り合わせる場合には、ドライラミネーション用の接着剤、例えば、脂肪族ポリエステル系、芳香族ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリエーテル系、シアノアクリレート系、ウレタン系、有機チタン系、ポリエーテルウレタン系、エポキシ系、ポリエステルウレタン系、イミド系、イソシアネート系、ポリオレフィン系、シリコーン系、アクリル系などの各種の接着剤を用いることができる。
これらの接着剤の中でも、芳香族ポリエステル系、ポリオレフィン系、アクリル系の接着剤が耐電解液性に優れ、好ましい。
【0043】
更なる耐電解液性が必要とされる場合には、第1の接着層2に酸変性樹脂フィルムを用いて熱ラミネーション法により基材層1とバリア層3とを貼り合わせてもよい。
【0044】
第1の接着層2の厚みは限定されないが、通常1〜10μm程度である。
【0045】
<バリア層>
バリア層3は、外部からの水分が電池内部に浸入することを防止(バリア)するための層であり、ピンホールが無いこと、電池外装用ラミネートフィルムとしての高い引張強度を有していること、エンボス加工、パウチ加工時の変形及び伸びに対する耐クラック性を有していること等が要求される。
【0046】
バリア層3としては金属箔(金属層)が好ましく、特に好ましいのはアルミニウム箔である。またプレス加工やエンボス加工時の耐クラック性の面から、伸び性に優れたアルミニウム箔が好ましく、鉄を0.3重量%以上、3.0重量%以下含有するアルミニウム箔が好ましい。鉄の含有量がこの範囲より少ないと伸びが十分でない傾向にあり、この範囲より多い場合には、電解液から発生するフッ化水素酸等によるバリア層3の腐食の問題が発生する傾向にある。アルミニウム箔の好ましい鉄含有量は0.5重量%以上1.7重量%以下である。
また、アルミニウム箔には、硬質アルミニウム箔と軟質アルミニウム箔とが存在するが、焼鈍処理を施してある軟質アルミニウム箔が柔軟性を有しているため好ましい。
【0047】
アルミニウム箔等のバリア層3の厚みは、9μm以上60μm以下、特に20μm以上50μm以下であることが、薄膜化とバリア性を両立させる上で好ましい。
なお、バリア層3は、通常、予め成形された金属箔(金属層)を用いるが、例えば、蒸着法や塗布法によってバリア層3を形成する態様も包含する。
【0048】
<アルミニウム箔の表面処理>
本発明におけるバリア層として好適なアルミニウム箔の表面処理は必ずしも必要とされないが、耐腐食性を付与するための表面処理を施したものであってもよい。
【0049】
バリア層としてのアルミニウム箔に表面処理を行う場合、表面処理としては公知の処理が用いられ、例えば、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、リン酸−クロム酸塩処理、クロム酸塩処理、アルカリクロム酸塩処理、塗布型クロメート処理等のクロム系化成処理、あるいは、ジルコニウム、チタン、リン酸亜鉛等の塗布型ノンクロム系処理や、ベーマイト処理、陽極酸化処理等が挙げられる。これらの処理以外にも、コロナ処理、プラズマ処理又は火炎処理等のアルミニウム箔表面に極性基を付与する処理を行って、第2の接着層との接着性を高めることにより耐腐食性を付与してもよい。また、これらの処理を2つ以上組み合わせて行ってもよい。
【0050】
上記の表面処理のうち、環境負荷が少なく、安価に表面処理可能なベーマイト処理が好ましいものとして挙げられる。
ベーマイト処理とは、高温のベーマイト処理水中に一定時間アルミニウム箔を保持することにより、アルミニウム箔の表面にベーマイトの結晶構造を有するアルミニウム水和酸化皮膜(ベーマイト皮膜)を形成する処理である。
【0051】
好ましいベーマイト処理水は、脱イオン水に、トリエタノールアミン、アンモニアのようなアルカリを、0.1重量%以上2重量%以下、好ましくは0.3重量%以上1重量%以下、より好ましくは0.6重量%以上1重量%以下の濃度に添加したものであり、ベーマイト処理は、このようなベーマイト処理水を90〜100℃に加熱し、アルミニウム箔を20秒〜5分間、好ましくは20秒〜1分間浸漬させることにより行うことができる。
【0052】
このようなベーマイト処理により、少なくとも電解液接液面側の表面に、厚みが好ましくは0.1μm以上1μm以下、より好ましくは0.1μm以上0.8μm以下、更に好ましくは0.2μm以上0.4μm以下のベーマイト皮膜を形成したアルミニウム箔であれば、第2の接着層として好ましく用いられる後述の酸変性ポリエチレン樹脂層との熱ラミネーションにおいて、強固な接着性が得られ、耐電解液性に優れた電池外装用ラミネートフィルムとすることができる。ベーマイト皮膜の厚みが上記範囲よりも薄いとベーマイト処理による接着性の向上効果を十分に得ることができず、上記範囲よりも厚いと、ベーマイト結晶がアルミニウム箔との界面から脱離しやすくなり好ましくない。
【0053】
<シーラント層>
シーラント層5には、電池に要求される耐熱性、積層フィルムとしての層間接着性に加えて、電池外装材としての加工時のヒートシール性と、耐電解液性、更には電極タブとの接着性を強化するために電極タブに周巻きされるタブシール層(通常は各種ポリエチレン、ポリプロピレンの単層又は積層フィルムが使用される)との接着性が必要とされる。
本発明におけるシーラント層5は、成分(A):メタロセン系触媒を用いて製造された密度0.930g/cm
3以上0.950g/cm
3以下のポリエチレンと、成分(B):ポリプロピレンマトリックスにゴムが分散されたポリプロピレン系エラストマーを含み、好ましくは更に成分(C):エチレン−1−オクテンブロック共重合体を含む配合物で形成された(I)層を有する。
なお、本発明において、上記の(I)層を形成する配合物は、上記の成分を含むものであれば、他の成分を含んでいてもよい。
また、シーラント層5は、上記の(I)層のみからなる単層構造であってもよく、本発明の効果を阻害しない範囲においてこの(I)層と他の層との2層以上の多層構造であってもよい。さらに、シーラント層5は(I)層を少なくとも1層有していれば良く、2層以上有していても良い。
【0054】
ポリエチレンは、一般にその密度により名称が分けられ、密度0.910g/cm
3以上0.930g/cm
3未満を低密度ポリエチレン(LDPE)、密度0.942g/cm
3以上を高密度ポリエチレン(HDPE)と称する。また、エチレンに対し各種α-オレフィンを部分的に共重合させた、密度0.910g/cm
3以上0.925g/cm
3未満のものを線状低密度ポリエチレン(LLPE)と称する。いずれのポリエチレンもポリプロピレンより融点は低いが、熱が繰り返し加えられることにより分子が架橋するポリマーであり、電池外装材としての用途で必要な80〜90℃の高温環境下での長時間暴露に対し、分子切断しにくく、ポリプロピレンより長期耐熱性が優れている。
【0055】
更にポリエチレンは、溶融張力も高く、柔軟性があり、電池外装材として加工される場合の変形に対しても強く、変形時の白化もしにくく、耐寒性にも優れる。また、ポリエチレンはポリプロピレンより密度が高く、外部からの水分や電解液の極性溶媒であるカーボネート系溶媒への耐性も強い。
【0056】
本発明に係る(I)層には、このように諸特性に優れたポリエチレンの中でも、適度な柔軟性を有し、電極タブに周巻きされるポリプロピレン製のタブシール層との接着性に優れることから、成分(A)として、メタロセン系触媒を用いて製造された密度0.930g/cm
3以上0.950g/cm
3以下のポリエチレン(以下、「メタロセン系ポリエチレン」と称す場合がある。)を用いる。
メタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレンは、一般的な触媒(チーグラーナッタ触媒)を用いて重合されたポリエチレンと比較して非常に狭い分子量分布を示し、コモノマーの分布も均一であることから、シーラント層の要求特性の中でも特に耐電解液性に対しての適応性に優れる。
【0057】
しかし、シーラント層が、密度が低い一般的なメタロセン系線状低密度ポリエチレンから構成される場合、タブシール素材のポリプロピレンとの接着性は他のポリエチレン樹脂より優れる点において好ましいが、電池用の外装材としては更なる向上が必要であった。また、密度が低い一般的なメタロセン系線状低密度ポリエチレンのみから構成されるシーラント層では、シール強度、耐熱性に問題がある。
そこで、本発明では、この成分(A)のポリエチレンとの混和性に優れ、しかも、成分(A)の耐熱性、シール強度、耐電解液性を効果的に改善し得る成分(B):ポリプロピレンマトリックスにゴムが分散されたポリプロピレン系エラストマー(以下、「ゴム分散ポリプロピレン系エラストマー」と称す場合がある。)を配合したものを、(I)層を形成する配合物の主成分として用いる。
ここでいう主成分とは、複数の成分を配合してなる材料において、当該配合材料中、重量割合で最も多く含まれている成分をさす。
メタロセン系ポリエチレンにゴム分散ポリプロピレン系エラストマーを配合して用いると、シーラント層のフィルム製膜時に、メタロセン系ポリエチレンの存在下でゴム分散ポリプロピレン系エラストマーのポリプロピレンが層状に多層となったモロフォロジーを形成し、メタロセン系ポリエチレンによる耐電解液性とポリプロピレンによる耐熱性を兼備するものとなると共に、メタロセン系ポリエチレンの分子鎖及び分岐側鎖が、当該ポリエチレンのみならずゴム分散ポリプロピレン系エラストマー由来のポリプロピレンとの分子のからみ合いを起こし易くし、シーラント層同士、シーラント層と第2の接着層、シーラント層とタブシール層の何れとの接着性をも高めることができる。
【0058】
本発明において、メタロセン系ポリエチレンは、エチレンと炭素数4〜20程度のα−オレフィンとの共重合体であってもよく、α−オレフィンで構成される分岐側鎖の具体例としては、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1、テトラセン−1、オクタデセン−1等の各種コモノマーが挙げられる。これらのα−オレフィンは2種以上を併用してもよい。また、炭素数4〜20程度のα−オレフィンをコモノマーとして用いていれば、さらにプロピレンをコモノマーとしてもよい。
【0059】
成分(A)のメタロセン系ポリエチレンの密度が、0.930g/cm
3未満であると、密度が低すぎ耐電解液性が劣り、密度が0.950g/cm
3より高いと、脆くなりシール強度が不足する。シール強度と耐電解液性を両立させるために、メタロセン系ポリエチレンの密度は0.930g/cm
3以上0.950g/cm
3以下であることが必要である。メタロセン系ポリエチレンの密度は、好ましくは0.935g/cm
3以上0.945g/cm
3以下であり、この範囲であれば、シール強度と耐電解液性を最上級に引き上げることができ好ましい。
【0060】
メタロセン系ポリエチレンのMFRは、特に制限はないが、MFR0.1g/10min以上10g/10min未満のものが好ましい。特に好ましいMFRは0.1g/10min以上1g/10min未満であり、MFRがこの範囲であれば、ヒートシール時に樹脂が溶融してシーラント層の厚みが薄くなることによるシール強度の低下を阻止する点、成分(B)のゴム分散ポリプロピレン系エラストマーとの分散性をより良くする点において特に好ましい。
【0061】
一方、成分(B)のゴム分散ポリプロピレン系エラストマーとしては、特に、ホモポリプロピレンマトリックスにゴムが分散されたものが、耐熱性の点で好ましく、中でも、ポリプロピレンマトリックスに存在するゴム分散粒子径が1μm以下と小さく、層状のモロフォロジーを形成するものが、メタロセン系中密度ポリエチレンの存在下で、ホモポリプロピレンが良好な層状の多層モロフォロジーを形成し、メタロセン系中密度ポリエチレンによる耐電解液性とポリプロピレンによる耐熱性を兼ね備えたものとなるため好ましい。
ゴム分散ポリプロピレン系エラストマーの特に好ましいゴム分散粒子径は0.5μm以下である。ゴム分散粒子径の下限については特に制限はない。ここで、ゴム分散ポリプロピレン系エラストマーのゴム分散粒子径は、フィルムの断面を押し出し方向と垂直な方向に切削し作製した切片を、四酸化ルテニウム等の強酸化剤で染色し、透過型電子顕微鏡にて観察した時の短い方の径により求められる値である。
【0062】
また、ゴム分散ポリプロピレン系エラストマーのゴム含有量は30重量%以上であることが柔軟性を高め、積層フィルムとしての層間接着性を高めるため好ましい。特に、ゴム含有量が40重量%以上の高ゴム含有量のゴム分散ポリプロピレン系エラストマーを用いると、その配合物が構成する上記(I)層は、ゴム分散ポリプロピレン系エラストマー由来のゴム層にメタロセン系ポリエチレン成分が入り込み、ポリエチレン層とポリプロピレン層が十分に厚くなるモロフォロジーを形成し、より一層優れた耐電解液性と耐熱性を兼ね備えた構造になり好ましい。ただし、ゴム含有量が過度に多いゴム分散ポリプロピレン系エラストマーは、低密度でブリードしやすく耐電解液性が損なわれるため、ゴム分散ポリプロピレン系エラストマーのゴム含有量は通常70重量%以下である。
【0063】
ゴム分散ポリプロピレン系エラストマーに分散しているゴムとしては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のエチレン系エラストマーが、ゴム分散ポリプロピレン系エラストマーのポリプロピレン、メタロセン系ポリエチレンとの分散性、結合性の点で好ましい。ゴム分散ポリプロピレン系エラストマーは、上記のゴムの1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0064】
成分(B)のゴム分散ポリプロピレン系エラストマーのMFRは、0.1g/10min以上10g/10min以下であることが、成分(A)のメタロセン系ポリエチレンとの分散性の点から好ましいが、より好ましくは、0.5g/10min以上3g/10min以下である。なるべく、成分(A)と(B)のMFRを同じにすることが分散性の観点から好ましい。また、ゴム分散ポリプロピレン系エラストマーの密度は0.850g/cm
3以上0.900g/cm
3以下であることが好ましい。
【0065】
上記(I)層を形成する配合物は、良好なインフレーション成形安定性、耐熱性、耐電解液性、ポリプロピレン製タブシール層との接着性が得られる点で、成分(A)のメタロセン系ポリエチレンを40重量%以上95重量%以下、成分(B)のゴム分散ポリプロピレン系エラストマーを5重量%以上60重量%以下の割合で含むことが好ましい。この配合割合であれば、エチレンとプロピレンのブロック構造を層状に維持でき、耐熱性、耐電解液性が向上する点でも好ましい。
特に好ましい配合割合は、成分(A):メタロセン系ポリエチレン50重量%以上90重量%以下、成分(B):ゴム分散ポリプロピレン系エラストマー10重量%以上50重量%以下である。
【0066】
上記(I)層を形成する配合物は、上記成分(A)及び成分(B)以外の成分、例えば、メタロセン系ポリエチレン以外のポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂を含んでいてもよい。具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)や中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、ランダムポリプロピレン(R−PP)、ブロックポリプロピレン(B−PP)、ホモポリプロピレン(H−PP)等を配合することができる。
また、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のオレフィン系エラストマー等を更に配合しても良い。
特に、成分(A)及び成分(B)に加え更にポリエチレン系のエラストマーを配合することが好ましく、ポリエチレン系エラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等が好ましものとして挙げられ、特に成分(C):エチレン−1−オクテンブロック共重合体を配合すると、成分(A)のメタロセン系ポリエチレンと、成分(B)のゴム分散ポリプロピレン系エラストマーのゴム成分であるエチレン系エラストマーとの結着効果が発現し、分子鎖とのからみあいが多くなり、更に強いシール強度が得られるようになり、これにより、ポリエチレン成分とポリプロピレン成分が層状に分散し、且つ、層間が強固に接合し、互いの良物性を打ち消しあうことなく、即ち、ゴム分散ポリプロピレン系エラストマーのポリプロピレン成分による耐熱性と、メタロセン系ポリエチレンの耐電解液性、エチレン−1−オクテンブロック共重合体による高強度シール性が得られるため、特に好ましい。また、溶融時の張力が増し、これにより、インフレーション成形時の製膜性が安定し、得られるフィルムの機械強度、特にシール強度が向上する効果もあり好ましい。
【0067】
成分(C)のエチレン−1−オクテンブロック共重合体のエチレン含有量は、上記効果が有効に発揮される点において、5重量%以上55重量%以下であることが好ましい。また、エチレン−1−オクテンブロック共重合体のMFRは0.1g/10min以上10g/10min以下であることが好ましく、シール強度を向上させるためには、より好ましくは0.5g/10min以上3g/10min以下である。成分(C)のエチレン−1−オクテンブロック共重合体の密度は0.850g/cm
3以上0.910g/cm
3以下であることが好ましい。
【0068】
上記(I)層を形成する配合物が成分(A)と成分(B)と成分(C)とを含む場合、各成分の好ましい配合割合は、成分(A):密度0.930g/cm
3以上0.950g/cm
3以下のメタロセン系ポリエチレン20重量%以上80重量%以下、成分(B):ゴム分散ポリプロピレン系エラストマー5重量%以上55重量%、成分(C):エチレン−1−オクテンブロック共重合体5重量%以上55重量%以下であり、更に好ましくは、成分(A):密度0.930g/cm
3以上0.950g/cm
3以下のメタロセン系ポリエチレン30重量%以上70重量%以下、成分(B):ゴム分散ポリプロピレン系エラストマー10重量%以上50重量%以下、成分(C):エチレン−1−オクテンブロック共重合体5重量%以上50重量%以下である。
また、配合物中の成分(B)由来のゴム成分と成分(C)との合計の含有量は、10重量%以上75重量%以下、特に30重量%以上70重量%以下であることが好ましい。
【0069】
上記(I)層を形成する配合物には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に上記以外の他の樹脂成分を配合してもよい。他の樹脂成分としては、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の各種エラストマー成分、エチレン−酢酸ビニル共重合体や、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のエチレンとα−オレフィン以外のコモノマーとを共重合したエチレン系樹脂;プロピレン系樹脂;塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
ただし、上記(I)層として、成分(A),(B),(C)以外の樹脂を多量に含有する場合には、成分(A),(B),(C)を用いることによる効果を損なう場合があるため、成分(A),(B),(C)以外の樹脂は、上記(I)層の中に、20重量%以下、好ましくは15重量%以下の少ない量の範囲で用いる必要がある。
【0070】
また、上記(I)層を形成する配合物には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、各種可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0071】
シーラント層の引張り弾性率は、柔軟性を付与しすぎると変形等の外力が作用した時に材料破壊を引き起こしやすくなるため100MPa以上であり、反対に硬くなりすぎると脆くなりやすく、第2の接着層を介して接するバリア層3との間で剥離しやすくなるため1500MPa以下であることが好ましい。シーラント層の引張り弾性率はより好ましくは130MPa以上1000MPa以下、特に好ましくは180MPa以上900MPa以下である。
【0072】
本発明では、シーラント層5に、成分(A):メタロセン系ポリエチレンと成分(B):ゴム分散ポリプロピレン系エラストマーを主成分とする配合物で形成された(I)層を有しているため、耐電解液性、シール性は向上できるが、タブシール層との接着性を更に高める必要がある場合、少なくともシーラント層とタブシール層と接触する部分に、特定の酸変性ポリエチレン樹脂や酸変性ポリプロピレン樹脂やポリプロピレン樹脂よりなる層を積層してもよい。
ここで、ポリエチレン樹脂の変性に用いる酸の種類や変性方法については、後述する第2の接着層4を構成する樹脂における酸や変性方法を同様に採用することができる。
ただし、酸変性した樹脂は、酸変性していない樹脂に比較して耐熱性が低く、特に高温で製膜するサンドラミネーション方式や、押し出しラミネーション方式での製膜時には、低分子量成分が析出する場合がある。このような層を最内層、即ち、電解液と直接接触する層に使用した場合、低分子量成分が析出した部分から電解液の溶媒または電解液の加水分解で発生するフッ化水素酸の内層への浸透を速めることになり、耐電解液性に問題がでてくる場合がある。このため、シーラント層に積層するこの層は、変性率の少ない酸変性ポリエチレン樹脂か或いは酸変性していないポリエチレン樹脂層であることが好ましい。
ここで「変性率の少ない」とは、具体的には変性率0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下を意味する。
【0073】
また、シーラント層全体を多層構造とし、上記の(I)層と、例えばランダムポリプロピレン層又はブロックポリプロピレン層との積層構造としてもよい。即ち、本発明における(I)層は、ポリプロピレン樹脂との接着性に優れるため、電極タブ部分に用いられるポリプロピレン樹脂製タブシール層との良好な接着性を有するが、例えば上記のようなポリプロピレン樹脂層を上記の(I)層と第2の接着層4との間に配置し積層構造とすることによって、シーラント層の耐熱性をより高めることができる。また、タブシール層との良好な接着性を得るためにシーラント層の最内層に上記のようなポリプロピレン樹脂層を配置した積層構造としても、(I)層を形成する前述の配合物は層間接着性に優れるため問題はない。
【0074】
シーラント層5の厚みは、3μm以上80μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上60μm以下、特に好ましくは12μm以上50μm以下である。シーラント層5の厚みが上記範囲よりも薄いと、シーラント層同士のシール強度を十分に得ることができない場合があり、上記範囲よりも厚いと、インフレーション成形時の製膜性が劣り、厚みが均一になりにくく、更に熱ラミネーション時にシーラント層5が溶融しにくくなりシワ、空気の巻き込みが発生しやすくなる場合がある。
多層構造のシーラント層5の場合も、合計の厚みが上記範囲となるようにすることが好ましい。
【0075】
なお、シーラント層5は、基材層1と同様、エンボス加工時の滑り性を高めるために、電池外装用ラミネートフィルムの最表面となる面(第2の接着層4と反対側の面)に凹凸を付与することが、金型汚染の問題のある滑剤を不要とすることができ、好ましい。この場合、シーラント層5の凹凸付与面の表面粗さRaは、0.02〜0.08μm、特に0.03〜0.07μm程度であることが好ましい。ここで、シーラント層5の表面粗さRaは、前述の基材層1の表面粗さRaと同様にして測定された値である。この表面凹凸は、後述の熱ラミネーション工程で付与することができる。
【0076】
<第2の接着層>
第2の接着層4はバリア層3とシーラント層5とを接着するための層であり、その材料は限定されないが、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ホモポリプロピレン等のポリプロピレン樹脂や、各種ポリエチレン等の樹脂を含有することが耐電解液性の点で好ましく、その中でも線状低密度ポリエチレン(LLPE)を主成分とするポリエチレン樹脂を含有することが好ましく、特に、第2の接着層4は、LLPEを主成分とするポリエチレン樹脂よりなり、該ポリエチレン樹脂の少なくとも一部は酸変性されており、且つ、MFR0.1g/10min以上3g/10min以下、密度0.920g/cm
3以上0.950g/cm
3以下、引張り弾性率100MPa以上1000MPa以下であることが好ましい。また、第2の接着層4は、ポリエチレン樹脂以外の他の成分を含んでいてもよい。
【0077】
前述の如く、ポリエチレン樹脂はポリプロピレン樹脂より融点は低いが、熱が繰り返し加えられることにより分子が架橋するポリマーであり、電池外装材としての用途で必要な80〜90℃の高温環境下での長時間暴露に対し、分子切断しにくく、ポリプロピレン樹脂より長期耐熱性が優れている。
【0078】
更にポリエチレン樹脂は、溶融張力も高く、柔軟性があり、電池外装材として加工される場合の変形に対しても強く、変形時の白化もしにくく、耐寒性にも優れる。また、ポリエチレン樹脂はポリプロピレン樹脂より密度が高く、外部からの水分や電解液の極性溶媒であるカーボネート系溶媒への耐性も強い。
このようなポリエチレン樹脂を酸変性させた樹脂は、バリア層を構成するアルミニウム箔等の金属箔との接着性も優れ、アルミニウム箔に環境汚染を引き起こすクロム系化成処理や、リン系の化成処理を施さなくても、強固な接着力を得ることができる。
【0079】
本発明では、ポリエチレン樹脂の中でも、適度な柔軟性を有し、アルミニウム箔等のバリア層との接着性に優れることから、線状低密度ポリエチレン(LLPE)を主成分としたポリエチレン樹脂を用いることが好ましい。
ここでいう主成分とは、複数の成分を配合してなる材料において、当該配合材料中、重量割合で最も多く含まれている成分をさす。
【0080】
本発明において線状低密度ポリエチレン(LLPE)とは、前述の如く、エチレンと炭素数4〜20程度のα−オレフィンとの共重合体を意味し、α−オレフィンで構成される分岐側鎖の具体例としては、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1、テトラセン−1、オクタデセン−1等の各種コモノマーが挙げられる。これらのα−オレフィンは2種以上を併用してもよい。また、炭素数4〜20程度のα−オレフィンをコモノマーとして用いていれば、さらにプロピレンをコモノマーとしてもよい。その中でも特に、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1のうち少なくとも何れかの側鎖がついた線状低密度ポリエチレンが適度な柔軟性を有するため好ましい。線状低密度ポリエチレン(LLPE)の製造方法は限定されないが、ポリオレフィン樹脂を製造する公知の方法を採用することが出来る。
【0081】
第2の接着層4を構成するポリエチレン樹脂には、線状低密度ポリエチレン(LLPE)以外のポリエチレン樹脂も配合することができ、その線状低密度ポリエチレン(LLPE)以外のポリエチレン樹脂としては限定されないが、具体的には、前述の(I)層における成分(A)であるメタロセン系ポリエチレン以外のポリエチレン樹脂として例示した、高密度ポリエチレン(HDPE)や中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)等が挙げられる。
【0082】
第2の接着層4を構成するポリエチレン樹脂は、少なくとも一部が酸変性されたポリエチレン樹脂を含むことが好ましい。このような酸変性ポリエチレン樹脂は、例えば、ポリエチレン樹脂に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフト重合で変性することで製造することができる。
【0083】
好ましい酸変性ポリエチレン樹脂は、線状低密度ポリエチレン(LLPE)と、高密度ポリエチレン(HDPE)とのブレンド材の酸変性ポリエチレン樹脂であり、このブレンド材はLLPEが50重量%以上98重量%以下、HDPEが2重量%以上50重量%以下であることが、耐熱性、耐電解液浸透性の点で好ましい。更にインフレーション成形安定性を付与するために、低密度ポリエチレン(LDPE)を第3成分として配合してもよく、その場合の配合割合は、LLPE50重量%以上95重量%以下、HDPE5重量%以上40重量%以下、LDPE1重量%以上30重量%以下であることが好ましい。
【0084】
ポリエチレン樹脂の酸変性に用いられる不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸の誘導体としては、特に限定されるものではないが、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等のジカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、無水メサコン酸等のジカルボン酸無水物やアミド、イミド、エステルなどの誘導体などが挙げられる。これらの中でも、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸を用いるのが好ましく、特に無水マレイン酸が好適である。
【0085】
ポリエチレン樹脂の変性方法としては特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン樹脂を有機溶媒に溶解させ、これをラジカル発生剤の存在下に酸(無水マレイン酸など)と反応させる溶液法、ポリエチレン樹脂を加熱溶融させ、これをラジカル発生剤の存在下に酸(無水マレイン酸など)と反応させる溶融法等が挙げられる。
【0086】
なお、酸変性するポリエチレン樹脂としては、主成分である線状低密度ポリエチレン(LLPE)であってもよいし、これと併用することの出来る他のポリエチレン樹脂、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)や低密度ポリエチレン(LDPE)等であってもよい。更に、酸変性されたポリエチレン樹脂と、酸変性されていないポリエチレン樹脂とを適宜配合して用いることができる。
また、線状低密度ポリエチレン(LLPE)と共に他のポリエチレン樹脂を併用する場合においては、これらのポリエチレン樹脂を混合または共存させた状態で酸変性してもよいし、少なくとも何れかのポリエチレン樹脂を予め酸変性しておき、これと、酸変性されていない他のポリエチレン樹脂とを混合して用いてもよい。
【0087】
酸変性ポリエチレン樹脂の変性率(酸変性ポリエチレン樹脂中の酸基の含有量)は、少な過ぎると酸変性したことによる接着性の向上効果を十分に得ることができない場合があり、多過ぎると酸変性ポリエチレン樹脂の耐熱性が低下する傾向にあるため、0.05重量%以上10重量%以下、特に0.2重量%以上5重量%以下であることが好ましい。ここで、酸変性ポリエチレン樹脂の変性率は、例えば、赤外吸収スペクトル分析(IR)や、滴定法などの手段で確認することができる。なお、酸変性されたポリエチレン樹脂と、酸変性されていないポリエチレン樹脂とを配合して用いる場合においては、当該変性率とは、酸変性されていないポリエチレン樹脂を含む全ポリエチレン樹脂中における変性率を意味するものとする。
なお、酸変性ポリエチレン樹脂としては、市販品を用いることも出来、例えば、三菱化学社製、モディック(商品名)シリーズや、三井化学社製、アドマー(商品名)等の中から、上記に該当するものを適宜選択して使用することができる。
【0088】
第2の接着層4には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記のポリエチレン樹脂以外の樹脂を含有していてもよい。ポリエチレン樹脂以外の樹脂は限定されないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体や、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のエチレンとα−オレフィン以外のコモノマーとを共重合したエチレン系樹脂;プロピレン系樹脂;塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。なお、第2の接着層4として、ポリエチレン樹脂以外の樹脂を多量に含有する場合には、前記したポリエチレン樹脂を用いることによる効果を損なう場合があるため、これらの樹脂は、第2の接着層中に、20重量%以下、好ましくは15重量%以下の範囲で用いることが好ましい。
【0089】
更に、第2の接着層4には、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のオレフィン系エラストマーや、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の各種エラストマー成分、酸化防止剤、熱安定剤、各種可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0090】
第2の接着層は、MFR0.1g/10min以上3g/10min以下、密度0.920g/cm
3以上0.950g/cm
3以下、引張り弾性率100MPa以上1000MPa以下であることが好ましい。
【0091】
第2の接着層4のMFRが、3g/10minより大きいと、流動性が高過ぎてシール時に樹脂の溶融による流動が発生し、シール部の厚みが不足してシール強度の低下を引き起こす場合がある。更には、分子量が低くなり、電解液から発生するフッ化水素酸に対しての浸透性が高くなり、バリア層を腐食させてしまう場合がある。第2の接着層4のより好ましいMFRは2g/10min以下、さらに好ましくは1.5g/10min以下である。第2の接着層4のMFRの下限は、インフレーション成形法で製膜する場合において、製膜性に問題が無いレベルであることが好ましいため0.1g/10min以上であることが好ましく、特に0.3g/10min以上であれば、インフレーション成形における高速成形性と高シール強度を維持できるため好ましい。
【0092】
また、第2の接着層4の密度としては、0.920g/cm
3以上であることが好ましい。これより密度が小さいと、耐溶媒性、耐電解液性が悪化する場合がある。外部からの水分を遮断し、また電解液と水分との加水分解で発生するフッ化水素酸に対する耐性を高めるためにも、第2の接着層4の密度は高い方がよく、より好ましい密度の下限は0.923g/cm
3以上であり、特に好ましくは0.925g/cm
3以上である。第2の接着層4の密度の上限は、ポリエチレン樹脂の柔軟性を損なわなければ特に制限されるものではないが、通常、密度の上限は0.950g/cm
3以下であり、バリア層との接着性、耐フッ化水素酸性、プレス或いは張り出し加工での耐白化性を考慮すると、密度の上限は好ましくは0.945g/cm
3以下である。
第2の接着層4の密度を上記範囲とするための手段は限定されないが、例えば使用するポリエチレン樹脂を適宜選択する方法が挙げられ、特に、酸変性に用いるポリエチレン樹脂の最適化、変性率の最適化のほか、前記の通り、酸変性されていないポリエチレン樹脂やポリエチレン樹脂以外の樹脂等を併用し、それら配合比率を最適化することなどが挙げられる。
【0093】
また、第2の接着層4の引張り弾性率は、柔軟性を付与しすぎると変形等の外力が作用した時に材料破壊を引き起こしやすくなるため100MPa以上であることが好ましく、反対に硬くなりすぎると脆くなりやすくバリア層との界面で剥離しやすくなるため1000MPa以下であることが好ましい。第2の接着層4の引張り弾性率はより好ましくは130MPa以上800MPa以下、特に好ましくは180MPa以上600MPa以下である。
【0094】
なお、前述のMFR、密度、引張り弾性率の値は、第2の接着層4を構成する材料の特性を意味し、ポリエチレン樹脂として複数のポリエチレン樹脂を併用する場合や、ポリエチレン樹脂以外の樹脂を含有する場合においては、樹脂組成物としての値を意味するものである。
【0095】
第2の接着層4の厚みは、3μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上40μm以下、特に好ましくは12μm以上35μm以下である。第2の接着層4の厚みが上記範囲よりも薄いと、バリア層3とシーラント層5との接着に十分な接着強度を得ることができない場合があり、上記範囲よりも厚いと、シーラント層5の厚みを薄くしなければならなくなり、耐電解液性が劣る場合がある。
【0096】
[電池外装用ラミネートフィルムの製造方法]
以下、シーラント層を前述の(I)層の単層構造とする場合を例示して、本発明の電池外装用ラミネートフィルムの製造方法について説明する。なお、シーラント層を(I)層と他の層との積層構造とする場合には、以下において、共押出インフレーション成形法により製膜すればよい。
【0097】
本発明の電池外装用ラミネートフィルムの製造方法としては特に制限はないが、少なくともシーラント層については、インフレーション成形法により製膜し、その後、熱ラミネーション法で第2の接着層を介してバリア層と貼り合わせることが好ましい。
また、共押出インフレーション成形法(多層インフレーション成形法)により予め第2の接着層とシーラント層との積層フィルムを製膜し、その後、熱ラミネーション法により金属箔/第2の接着層/シーラント層の積層フィルムとしてもよい。更には、第2の接着層、シーラント層を予め別々に製膜し、熱ラミネーション時にこれらを同時に貼り合わせて金属箔/第2の接着層/シーラント層の積層フィルムとしてもよい。また、予めインフレーション成形にて形成されたシーラント層と、基材層と貼りあわせたバリア層との間に、第2の接着層を押し出すことによってラミネートしてもよい。
何れの場合でも、本発明におけるシーラント層の(I)層は、ポリエチレンだけでなく、ポリプロピレンとの接着性にも優れているため、熱ラミネーション時にシーラント層と第2の接着層の結晶性が高まり、シーラント層の結晶ラメラが耐電解液性を生み出し、また、第2の接着層の酸変性ポリエチレン樹脂の結晶ラメラがバリア層の金属箔表面に入り込みやすくなり、高い接着強度と耐熱性、耐電解液性が得られる。
【0098】
また、熱ラミネーションに供するバリア層の金属箔は、予めドライラミネーション法等により第1の接着層を介して基材層を貼り合わせた積層フィルムとして用いた方が、熱ラミネーション時に第2の接着層側がよりゆっくりと冷却されるようになり、結晶化が進行して、耐熱性、耐電解液性に優れた電池外装用ラミネートフィルムを得ることができるため好ましい。
【0099】
以下、インフレーション成形法によりシーラント層と第2の接着層のフィルムをそれぞれ成形し、これを熱ラミネーションによりバリア層、好ましくは基材層を第1の接着層で貼りあわせたバリア層と貼り合わせて本発明の電池外装用ラミネートフィルムを製造する方法について説明する。
【0100】
<インフレーション成形>
インフレーション成形法とは、環状ダイより押し出された製膜材料の溶融チューブの中に空気等を入れ、環状ダイの直径より大きく膨らまし、空冷または水冷により冷却固化させつつ連続的に引き取り製膜する溶融押出成形法である。
【0101】
インフレーション成形法では、押出機から押し出された溶融樹脂はチューブ状に成形され、インフレーションダイで溶融樹脂は環状の流路を流れる。この流路は外側ダイと内部マンドレルの間にある。溶融樹脂フィルムが、環状ダイから出た後、すぐ空気圧をチューブ内部に加え、それを膨張させる。膨張したチューブはニップロールで締め付けられて空気圧を保つように構成されている。膨張したチューブ(バブル)はダイ出口の上の冷却リングからの空気で冷却される。
【0102】
バブルは押出方向(MD方向)、円周方向(TD方向)で大きくなるので、ニップロールでのフィルム速度はダイ出口でのチューブの速度よりはるかに速いものでなければならない。MD方向ではフィルムは延伸され、TD方向では膨張する。延伸比は最終フィルム速度と初期速度の比、ブローアップ比は最終チューブ径と初期径(環状ダイ径)の比で表されるが、ブローアップ比の大きさは1:1から10:1の範囲が好ましく、1.3:1から5:1の範囲が特に好ましい。
【0103】
一般的に、電池外装用フィルムに用いられる樹脂としては、耐熱性の観点から、ポリプロピレンが用いられる場合が多く、また、低コストを重視するため、押出ラミネーション法、サンドラミネーション法又はキヤスト法で製膜したポリプロピレンを使用する場合が多い。しかしながら、これらは全てT型の金型(帯状の樹脂吐出口)から押し出した溶融樹脂を冷却して製膜するため、MD方向とTD方向とで引張強度、伸度、引張り弾性率といった物性に差が発生しやすい。そのため、電池外装用フィルムとして使用する際の、プレス加工や張り出し加工時には、その方向による機械物性の差のために、加工時のシワが発生しやすい傾向がある。
また、前述の如く、基材層の高弾性フィルムも通常Tダイで延伸成形されるため、MD/TD方向の差がでやすい。
【0104】
このようなことから、本発明においては、シーラント層、更には第2の接着層はインフレーション成形でMD/TD方向での物性の差を出にくくし、また、基材層の物性とのバランスを考慮し、電池外装用ラミネートフィルムとして、異方性がなくなるように上述のブローアップ比の範囲で調整して製膜することが好ましい。
【0105】
このように、インフレーション成形法により製膜されるフィルムは、押出方向(MD方向)と押出方向と垂直な円周方向(TD方向)との機械的物性の差が出にくく、プレス加工や張り出し加工される積層フィルムとしてはその方向により機械物性の差が少ないため、加工時のシワが発生しにくいといった利点がある。
【0106】
また、インフレーション成形法に適合する樹脂原料には、MFRが低く、高分子量であるとともに、溶融張力が大きいといった特性が必要となり、また、製膜時の加工温度も低くする必要がある点において、高温で成形加工され、かつ高MFR、高流動の樹脂特性を必要とする押出ラミネート法又はサンドイッチラミネート法で使用される樹脂とはその特性が異なる。このため、本発明では(I)層の樹脂、更には第2の接着層の酸変性ポリエチレン樹脂として、好ましくは前述のような低MFRの樹脂を用いるが、これらの樹脂は、低MFR性と高溶融張力性により、高シール強度が得られやすいといった利点もある。
【0107】
本発明では、インフレーション成形法によるフィルムの異方性の少なさをより生かしつつ、電池外装用フィルムとしての機械物性、シール性、耐熱性、成形性等の各種特性を付与すために、インフレーション成形法に使用されるその樹脂特性に着目し、前記した特定の樹脂及び特定の物性を有するシーラント層を構成することにより、バリア層であるアルミニウム箔にクロム系化成処理を施さずともアルミニウム箔との接着性に優れ、水分の浸入を阻止することができ、耐電解液性に優れた、高シール強度を有する電池外装用ラミネートフィルムが得られる。
【0108】
<熱ラミネーション法>
本発明において、インフレーション法により製膜されたシーラント層(シーラント層形成用フィルム)、好ましくは、シーラント層と第2の接着層との積層フィルムを熱ラミネーション法により熱圧着してバリア層と接着させることは、耐電解液性の向上のために重要である。
【0109】
熱ラミネーション法とは、2つ以上のロールを用いてロール間に2種以上のフィルムを挟み込み、少なくとも一方のロールを回転駆動させながらフィルムを移送させ、かつ、少なくとも一方のロールを加熱しながらフィルムを加熱して接着させるラミネート方法である。本方法ではドライラミネーション、押出ラミネーション法と比べて、ライン速度は遅いが、冷却過程が急速ではないため、樹脂の結晶化を促進させる加工条件を作りやすい。
【0110】
本発明では、シーラント層に前述の成分(A)及び成分(B)、好ましくは更に成分(C)を含む配合物を用い、熱ラミネーション法でこのシーラント層と第2の接着層を溶融させて熱圧着させる方法を採用することにより、シーラント層と第2の接着層の結晶化を図り、さらに冷却過程でゆっくりと冷却させることによる結晶化の促進で、シーラント層の発達した結晶ラメラが電解液に対するバリア性を生み出すと共に、同種のポリマー成分よりなる第2の接着層との高分子のからみあいで接着性にも優れ、耐電解液性、耐熱性も向上するという効果が得られる。
また、第2の接着層においても発達した結晶ラメラが第2の接着層とバリア層である金属箔と強固な接着を生み出す結果、接着強度が高められるとともに結晶ラメラは、特に、ベーマイト皮膜を形成したアルミニウム箔のベーマイト皮膜の細孔内に入り込み、より一層高い接着強度と耐電解液性を実現する効果がある。
【0111】
図2は、熱ラミネーション法による第2の接着層とシーラント層との積層フィルム14と、基材層を第1の接着層でバリア層と予め積層一体化した基材層/バリア層積層フィルム12とを貼り合わせる工程の一例を示す図であり、第2の接着層/シーラント層積層フィルムの巻回体13から送り出された第2の接着層/シーラント層積層フィルム14と基材層/バリア層積層フィルムの巻回体11から送り出された基材層/バリア層積層フィルム12と、更に耐熱フィルムの巻回体15から送り出された耐熱樹脂フィルム16とが加熱ロール17A,17B間で加熱加圧されることにより、第2の接着層/シーラント層積層フィルム14の第2の接着層側14Aと、基材層/バリア層積層フィルム12のバリア層側12Aとが熱ラミネートされる。
熱ラミネートされた電池外装用ラミネートフィルム10は送りロール18A,18B間を通過して巻き取りロール20に巻き取られる。
一方、耐熱樹脂フィルム16は、電池外装用ラミネートフィルム10から剥離されて巻き取りロール19に巻き取られる。
【0112】
このような熱ラミネーション法での、加熱ロール17A,17B間での加熱温度は、第2の接着層、シーラント層が溶融する温度に到達する温度で任意に設定できるが、シーラント層側の加熱ロール17Aの温度はシーラント層((I)層)の融点より20℃以上、好ましくは25〜100℃高い温度であることが、加熱後の冷却段階でより除冷となり、シーラント層及び第2の接着層のラメラ結晶が成長しやすくなり、シーラント層と第2の接着層との接着強度や第2の接着層とバリア層との接着強度が向上する点で好ましい。この加熱ロール17Aの温度が上記下限よりも低いとシーラント層、第2の接着層が溶融しにくくなり接着強度が不足する傾向にあり、上記上限より高いとシーラント層及び第2の接着層の樹脂が流動し、各層間の接着強度が低下する傾向がある。なお、シーラント層の融点は通常120〜168℃程度である。
【0113】
また、熱ラミネーションにおける加熱温度は、第2の接着層側の温度、即ち、加熱ロール17Aの温度とバリア層側の温度、即ち、加熱ロール17Bの温度とで温度差をつけた方が、第2の接着層の酸変性ポリエチレン樹脂の結晶の配向性がより一層高められ、厚み方向の結晶成長が促進され、より強度にバリア層と接着するようになるため好ましい。この場合、第2の接着層側の温度、即ち、加熱ロール17Aの温度は、前述のシーラント層の融点との関係も含めて、170℃以上、例えば200℃以上260℃以下とし、バリア層側の温度、即ち、加熱ロール17Bの温度は170℃未満、例えば120℃以上165℃以下とし、両者に10℃以上、好ましくは20℃以上70℃以下の温度差をつけることが望ましい。加熱ロール17A,17Bの温度が低過ぎると十分な接着を行うことができないが、高過ぎると樹脂が劣化したり、溶融流動し接着層厚みが薄くなり、結果として十分な接着を行うことができなくなる傾向がある。また、両者の温度差が小さ過ぎると、温度差を設けることによる結晶成長の促進効果を十分に得ることができず、また、この温度差を過度に大きくすることは、各々の加熱ロール設定温度条件を満たす上で困難である。
【0114】
また、このような高温下で熱ラミネーションを行う場合、加熱ロールにシーラント層の樹脂が溶着する場合がある。この溶着を防止する目的と、バリア層表面への第2の接着層の結晶ラメラの成長やシーラント層の第2の接着層への結晶ラメラの成長を促進させ、層間の接着をより強固にする目的で、シーラント層の更に外側(非貼り合わせ面)に、
図2に示すように耐熱樹脂フィルム16を重ね、熱ラミネーション後に、耐熱樹脂フィルム16を剥がすようにすることが好ましい。
この時、耐熱樹脂フィルムの少なくともシーラント層と接触する側に、予めマット処理等により表面粗さRa0.1μm以上1μm以下、好ましくは0.25μm以上0.75μm以下の凹凸をつけた耐熱樹脂フィルムを用いると、熱ラミネーション時に耐熱フィルムの凹凸がシーラント層に熱転写されて適度な凹凸がシーラント層の表面に付与され、エンボス加工時等に必要な金型との滑り性が得られるため、好ましい。
【0115】
この耐熱樹脂フィルム16としては、耐熱性に優れ、熱ラミネーション時の加熱ロール17Aと非溶着でかつシーラント層とも非溶着性のもの、例えば、加熱ロール17Aの温度よりも融点が高く、シーラント層の融点より20℃以上融点が高く、シーラント層のポリエチレン樹脂と熱溶着しない、ポリエチレン樹脂以外の樹脂よりなる樹脂フィルムが好ましい。特に好ましいのは、シーラント層の融点より20℃以上高い融点を有し、例えば融点150℃以上、好ましくは200〜350℃の耐熱性を有する、前述の基材層と同様な熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。具体的には二軸延伸PAフィルム、二軸延伸PETフィルム、二軸延伸PPフィルム、一軸延伸PPフィルム、無延伸PPフィルム等が好ましい。耐熱樹脂フィルム16の厚みは、通常25μm以上125μm以下である。耐熱樹脂フィルム16の厚みが薄過ぎると耐熱樹脂フィルム16を設けたことによる結晶ラメラの成長促進効果を十分に得ることができない場合があり、厚過ぎると熱ラミネーション時の加熱効率が悪くなる傾向がある。
【0116】
[電池外装材]
本発明の電池外装用ラミネートフィルムは、常法に従って、電池外装材に加工することができる。
電池外装材とは、電池本体を包装する外装体を形成するものであって、その形式によりパウチタイプ、エンボスタイプがある。
【0117】
図3はエンボスタイプの外装材の一実施形態を示し、第1の外装材31には、電池本体30の収容部31bとなる凹部が形成され、その開口周縁に鍔部(フランジ)31aが形成されている。第2の外装材32はこの第1の外装材31の開口を覆う蓋材となるものである。第1の外装材31は収容部31bの内壁側がシーラント層となり、第2の外装材32は、第1の外装材31への当接面側がシーラント層となる。
電極タブ30A、30Bが鍔部(フランジ)31aと第2の外装材32に当接する部分の電極タブには、タブシール層(図示せず)としてポリプロピレン等からなるフィルムが巻かれている。
この第2の外装材32を、電極タブ30A,30Bを引き出した状態で第1の外装材31にかぶせ、周縁をヒートシールして密閉することにより、電池が組み立てられる。
【0118】
エンボスタイプの外装材には、このように片側に凹部を形成したものの他に、両方の外装材に凹部を形成したタイプのものもある。また、第1の外装材の一側辺の鍔部から第2の外装材に相当する蓋片部が延出したタイプのものもある。
一方、パウチタイプは、三方シールタイプ、四方シールタイプ、ピロータイプ等の袋形状がある。
【0119】
本発明の電池外装用ラミネートフィルムは、エンボスタイプ、パウチタイプ等含め、各種の電池外装材として用いることができる。
【0120】
[電池]
本発明の電池は、本発明の電池外装用ラミネートフィルムよりなる外装材に電池本体を封入したものであり、各種リチウム電池や燃料電池等の電池において、軽量・薄肉・小型化と、低コスト化、長期耐久性、信頼性の向上を図ることができる。
【実施例】
【0121】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0122】
なお、以下の実施例及び比較例において、シーラント層及び第2の接着層の製膜に用いた材料は以下の表−1の通りである。
第2の接着層に使用した酸変性LLPE−1は、側鎖としてブテン−1を有し、エチレン含有量が70重量%のエチレン−プロピレン共重合体よりなるLLPEを主成分とし、このLLPEと、酸変性高密度ポリエチレンが配合されたものである。
表−1中のメタロセンPE−1,−2,−3は、成分(A)のメタロセン系ポリエチレンに該当する。
また、成分(B):ゴム分散ポリプロピレン系エラストマーとしては、ホモポリプロピレンマトリックスに、分散粒子径0.2μm以下のエチレン−プロピレン共重合体ゴムが連続相構造を示すタイプのもの(以下「PP−E」と略記する。)を用いた。PP−Eのゴム含有量は50重量%である。
ポリエチレン系エラストマー(以下「PE−E」と略記する。)としては、成分(C):エチレン−1−オクテンブロック共重合体を用いた。
【0123】
【表1】
【0124】
[実施例1〜9、比較例1〜7]
以下の方法で電池外装用ラミネートフィルムを作製した。
バリア層としては、厚み40μmのJIS 8079−O材(鉄を1.0重量%含む軟質アルミニウム箔)の両面にベーマイト処理を施したものを用いた。
ベーマイト処理は、脱イオン水にトリエタノールアミンを0.4重量%の濃度で添加した95℃のベーマイト処理水に、上記のアルミニウム箔を1分間浸漬させることにより行い、厚さ0.25μmのベーマイトの針状結晶皮膜を形成した。
【0125】
次に、基材層として、厚み25μm、表面粗さRa0.03μmの片面コロナ処理した二軸延伸ポリアミドフィルム(引張り弾性率2500MPa、密度1.148g/cm
3)を用い、ドライラミネーション法により厚み4.5μmの芳香族ポリエステルとポリイソシアネートとの2液混合系ドライラミ用接着剤層(第1の接着層)を介して上記のアルミニウム箔の片面と二軸延伸ポリアミドフィルムのコロナ処理面とを貼り合わせた。
【0126】
第2の接着層に酸変性LLPE−1を、シーラント層に、表−2に記載の成分組成の配合物を用い、直径(バレル内径)75mmの押出機から押し出す共押し出しインフレーション成形機を用い、環状ダイ径φ300mm、ダイギャップ3mmのスパイラル型環状ダイより押し出し成形し、チューブ径φ560mm、ブローアップ比1.87、引取り速度15m/minで引き取り、第2の接着層の厚みが12μm、シーラント層の厚みが38μmとなるように押出機の押出量を調整しつつ、2層フィルムとして製膜した。
【0127】
上述の方法で得られた第2の接着層及びシーラント層の2層フィルムを用い、
図2に示すように第2の接着層の面がアルミニウム箔側になるように、二軸延伸ポリアミドフィルム/アルミニウム箔の貼り合わせ積層フィルムと熱ラミネーション法により貼り合わせた。この熱ラミネーションにおいて、シーラント層積層フィルム側の加熱ロール17Aの温度は200℃とし、二軸延伸ナイロンフィルム/アルミニウム箔積層フィルム側の加熱ロール17Bの温度は180℃とした。また、耐熱樹脂フィルム16としては、厚み75μmのPETフィルム(融点260℃)を用いた。このPETフィルムのシーラント層に接する面側は、表面粗さRa0.06μmに凹凸を設けてある。
【0128】
このようにして得られた電池外装用ラミネートフィルムについて、以下の方法でラミネート強度、シール強度、耐電解液性、タブシール層との接着強度(タブシール強度)の評価を行って、結果を表−2に示した。
なお、耐熱樹脂フィルムとして用いたPETフィルムの表面凹凸により、得られた電池外装用ラミネートフィルムのシーラント層表面には、表面粗さRa0.06μmの凹凸が形成された。
【0129】
<ラミネート強度>
アルミニウム箔と第2の接着層との間のラミネート強度は、15mm幅の短冊状にカットしたサンプルを用い、アルミニウ箔と第2の接着層側との界面の180°ピール強度を、テンシロン引張り試験機を用いて50mm/minの引張り速度の条件で測定し、この値をラミネート強度とした。
【0130】
<シール強度>
予め65mm×65mmに切った2枚の電池外装用ラミネートフィルムのシーラント層同士を、富士インパルス社製片側ヒータ付きヒートシーラ「OPL−200−10」を用い、シール幅10mm、長さ65mmにわたって、240℃、シール圧0.45MPa、ヒートシール時間5秒の条件でヒートシールし、その後23℃で24時間以上放置した後、シール部分を幅15mmの短冊に裁断してシール強度測定用サンプルとした。
上記のシール強度測定用サンプルをシーラント層同士を引き剥がすようにして、テンシロン引張り試験機を用いて、引張り速度300mm/minでシール強度を測定した。
【0131】
<耐電解液性(電解液浸漬後のラミネート強度とシール強度)>
混合溶媒として、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1(容積比)を用い、6フッ化リン酸リチウム1molをこの混合溶媒に溶解させて、6フッ化リン酸リチウム1mol/L溶液の電解液を調製した。
この電解液をPFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)製のブローボトルの中に入れ、その電解液中に上記のシール強度測定用サンプルとシールしていないラミネート強度測定用サンプルとを入れて蓋を閉め、80℃の恒温水槽の中に50時間放置した。その後サンプルを取り出し、水洗した後、23℃で24時間以上放置し、その後、それぞれ上記と同様にラミネート強度とシール強度を測定した。
【0132】
<タブシール強度(タブ接着性)>
タブシール用フィルムとして65mm×65mmに切ったランダムPPフィルム(日本ポリプロ社製 ノバテックEG6Dの100μm(厚さ)のフィルム)を用い、予め65mm×65mmに切った電池外装用ラミネートフィルム2枚のシーラント層同士の間に、上記の65mm×65mmに切ったランダムPPフィルムを入れ、富士インパルス社製片側ヒータ付きヒートシーラ「OPL−200−10」を用い、シール幅10mm、長さ65mmにわたって、240℃、シール圧0.45MPa、ヒートシール時間5秒の条件でヒートシールした。その後、23℃で24時間以上放置後、幅15mmの短冊3本に裁断して上記のシール強度測定用サンプルのシーラント層同士を引き剥がすようにして、テンシロン引張り試験機を用いて、引張り速度300mm/minでタブシール用フィルムとの接着強度を測定し、下記基準で評価した。
○:接着強度15N/10mm以上
△:接着強度15N/10mm未満10N/10mm以上
×:接着強度10N/10mm未満
【0133】
<耐熱性>
シーラント層の融点から、下記基準で評価した。
○:シーラント層の融点が140℃以上
×:シーラント層の融点が140℃未満
なお、シーラント層が1成分のみで構成される場合、当該成分の融点をシーラント層の融点とした。また、シーラント層が2成分以上で構成される場合、構成成分中最も融点の高い成分の融点をシーラント層の融点とした。即ち、この場合、シーラント層の構成成分は非相溶系材料であるため、そのうち最も融点の高い成分の融点をシーラント層の融点とすることができる。
【0134】
【表2】
【0135】
表−2より次のことが分かる。
実施例1〜9の電池外装用ラミネートフィルムは、本発明で規定される密度のメタロセン系ポリエチレンと、ゴム分散オレフィン系エラストマーを主成分として形成されるシーラント層を有するため、シール性、ラミネート強度、耐熱性、耐電解液性、タブシール層との接着性において、全て優れる。
【0136】
これに対して、シーラント層が低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンとのブレンドにより見かけ上本発明で特定する密度の範囲にしたポリエチレンで構成される比較例1〜3では、シール性、ラミネート強度、耐電解液性に優れていても、耐熱性、タブシールであるポリプロピレンとの接着性に劣る。
また、メタロセン系線状低密度ポリエチレン(メタロセンLLPE)を用いた比較例4、高密度ポリエチレン(HDPE)を用いた比較例5、線状低密度ポリエチレン(LLPE)を用いた比較例6、メタロセン系ポリエチレン(メタロセンPE−2)のみを用いた比較例7は、何れも耐熱性、タブシールであるポリプロピレンとの接着性に劣る。
【0137】
なお、表2において「総合評価」は、電池外装用ラミネートフィルムとして以下の基準で判断した。
○:ラミネート強度、シール強度、耐熱性、耐電解液性、タブシール強度が非常に優れている。
△:ラミネート強度、シール強度、耐熱性、耐電解液性、タブシール強度が使用可能なレベルにある。
×:ラミネート強度、シール強度、耐熱性、耐電解液性、タブシール強度が不十分である。