特許第6299569号(P6299569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299569
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】車両搭載用荷室構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 9/06 20060101AFI20180319BHJP
【FI】
   B60R9/06
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-238094(P2014-238094)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-97889(P2016-97889A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】神谷 光真
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−116326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
9/06
B62J 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の枠材にて形成された枠体と前記枠体の外面に取付けられた壁板とを備える荷室本体と、前記荷室本体の少なくとも一側方に設けられた開口部と、前記開口部を開閉する荷室扉とを備えた車両搭載用荷室構造において、
前記荷室本体には、
前記開口部の上部周縁に沿って延出された樋部と、
前記荷室本体の側部において上下方向に延出されて上端が前記樋部の樋口に連結されるとともに、前記樋部が受けた雨水を前記荷室本体下部から外部へ排出する排水部とを有し、
前記排水部が、前記複数の枠材のうちの一部の枠材にて構成され
前記壁板には、前記荷室本体の天板を含み、
前記樋部は、前記天板と一体に折曲げ形成されている車両搭載用荷室構造。
【請求項2】
前記壁板は、前記荷室本体の側壁を形成する側壁壁板を含み、
前記荷室本体の枠体の一部を構成する前記排水部は、前記側壁壁板の内面を固定する管状の枠材であって、単独で排水部を構成し、
または、
前記荷室本体の枠体の一部を構成する前記排水部は、前記側壁壁板との間で排水部を形成するように溝を有する枠材である請求項1に記載の車両搭載用荷室構造。
【請求項3】
前記溝を有する枠材は、断面ハット状に形成されている請求項2に記載の車両搭載用荷室構造。
【請求項4】
前記荷室扉は、跳ね上げ式であって、
前記荷室扉が前記開口部を閉じた状態において、前記荷室扉には前記樋部内に遊びをもって挿入可能に、かつL字状に折曲げ形成された挿入片を備えている請求項1乃至請求項のうちいずれか1項に記載の車両搭載用荷室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載用荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両搭載用荷室では、例えば、特許文献1が公知である。特許文献1では、小型の電気自動車の後部に荷室本体が設けられ、荷室本体の後部側には、同後部に設けられた開口部を開閉する跳ね上げ式の荷室扉を有している。前記荷室扉は、前記荷室本体の上面に対してヒンジを介して連結されている。
【0003】
また、前記開口部の周縁部において、上部及び車両幅方向の両側部には、車両後方に突出したフランジが一体に設けられており、前記荷室扉が閉じられた状態では、前記フランジが前記荷室扉にて覆われるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−83858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の車両搭載用荷室では、雨が降ると、荷室扉の開閉状態に関係なく荷室本体の上面と荷室扉の上面の見切り部の隙間から雨水が浸入し、前記フランジを伝って荷室本体内の運搬物に前記雨水が掛かる虞があった。
【0006】
本発明の目的は、荷室本体の上面と荷室扉の上面の見切り部の隙間から浸入する雨水を好適に排水できる車両搭載用荷室構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、本発明の車両搭載用荷室構造は、複数の枠材にて形成された枠体と前記枠体の外面に取付けられた壁板とを備える荷室本体と、前記荷室本体の少なくとも一側方に設けられた開口部と、前記開口部を開閉する荷室扉とを備えた車両搭載用荷室構造において、前記荷室本体には、前記開口部の上部周縁に沿って延出された樋部と、前記荷室本体の側部において上下方向に延出されて上端が前記樋部の樋口に連結されるとともに、前記樋部が受けた雨水を前記荷室本体下部から外部へ排出する排水部とを有し、前記排水部が、前記複数の枠材のうちの一部の枠材にて構成され、前記壁板には、前記荷室本体の天板を含み、前記樋部は、前記天板と一体に折曲げ形成されているものである。
【0008】
また、前記壁板は、前記荷室本体の側壁を形成する側壁壁板を含み、前記荷室本体の枠体の一部を構成する前記排水部は、前記側壁壁板の内面を固定する管状の枠材であって、単独で排水部を構成し、または、前記荷室本体の枠体の一部を構成する前記排水部は、前記側壁壁板との間で排水部を形成するように溝を有する枠材としてもよい。
【0009】
また、前記溝を有する枠材は、断面ハット状に形成されていることが好ましい
【0010】
また、前記荷室扉は、跳ね上げ式であって、前記荷室扉が前記開口部を閉じた状態において、前記荷室扉には前記樋部内に遊びをもって挿入可能に、かつL字状に折曲げ形成された挿入片を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、荷室本体の上面と荷室扉の上面の見切り部の隙間から浸入する雨水を好適に排水できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態における車両の左後方から見た斜視図。
図2】一実施形態における車両の左側方から見た側面図。
図3】一実施形態における荷室ボックスの開閉扉を開放した状態を左後方から見た斜視図。
図4】一実施形態における荷室ボックスの開閉扉を省略した状態を左後方から見た斜視図。
図5】一実施形態における開閉扉を左後方から見た斜視図。
図6】排水部を形成する枠材及び枠材の周辺の断面図。
図7】一実施形態の樋部において、荷室扉の閉じた状態におけるヒンジ周辺の断面図。
図8】一実施形態の樋部において、荷室扉の閉じた状態の断面図。
図9】(a)は一実施形態の樋部と排水部との連結部の斜視図、(b)及び(c)は、それぞれ他の実施形態の樋部と排水部との連結部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の車両搭載用荷室構造を具体化した一実施形態について図1図9(a)を参照して説明する。なお、図において矢印FRは車両前後方向のうち、前方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印RIは車両幅方向のうち、右方向を示している。
【0014】
図1に示すように本実施形態の車両10は、一人乗り用の電気自動車であって、その後部に荷台12を備えている。荷台12上には、荷室ボックス20が搭載されている。荷室ボックス20は、荷室本体30と荷室扉60を備えている。
【0015】
図3図4に示すように、荷室本体30は、枠体31と前記枠体31の外面に固定された複数の壁板41、42、43、44、45から構成されている。壁板41、42、43、44、45は金属製パネルからなる。
【0016】
図4に示すように、枠体31は、下部枠33と、下部枠33から立設された複数の縦枠材34a〜34d、35、36a、36b、37a,37bと、所定の縦枠材の上端間を連結した複数の連結枠材38a〜38dとを備えている。前記枠体31を構成する各枠材は、金属(例えば、鋼材、アルミ材)からなる。
【0017】
下部枠33を構成する枠材33a〜33dと、縦枠材34a〜34d、35、36a、36b、37a,37bと、連結枠材38a〜38dとは、それぞれ本発明の枠材に相当する。
【0018】
図4に示すように下部枠33は、断面L字状をなした枠材33a,33b,33c、33dにて長四角枠状に形成されている。そして、枠材33a、33dは、車両前後方向において、前後に並ぶように平行に配置されている。枠材33c、33dは、車両幅方向において、左右に並ぶように平行に配置されている。
【0019】
また、下部枠33において、枠材33a,33dの車幅方向の中央部間は、同じく金属製の枠材33eにて連結されている。
図4に示すように縦枠材34a、34bは、断面L字状をなしており、下部枠33の前部において車両幅方向の右コーナ及び左コーナにそれぞれ下端部が固定されるとともに上方に延出されて相互に同一高さを有している。
【0020】
また、図4に示すように縦枠材34c、34dは、断面L字状をなしており、下部枠33の後部において車両幅方向の右コーナ及び左コーナに下端部が固定されるとともに上方に延出されて相互に同一高さを有している。
【0021】
なお、縦枠材34c、34dの上下長さは、縦枠材34a、34bの上下長さよりも短くなるように設定されていて、縦枠材34c、34dの上端は縦枠材34a、34bの上端よりも低くされている。
【0022】
また、縦枠材35は、溝を有するように断面ハット状をなしており、枠材33aの車両幅方向の中央部に下端部が固定されているとともに上方に延出されている。また、縦枠材35は、前記溝が車両前後方向の前方を向くように配置されている。
【0023】
図4に示すように、縦枠材36a、36bは、断面L字状をなしており、枠材33b、33cの車両前後方向の略中央部に下端部が固定され、上方へ延出されている。縦枠材36a、36bの上端の高さは、縦枠材34a,34bの高さと同一とされている。
【0024】
図4に示すように縦枠材37a,37bは、溝を有するように断面ハット状をなしており、縦枠材36a、36bよりもそれぞれ車両前後方向において若干前方よりの位置において、枠材33b、33cに対して下端部が固定されるとともに上方へ延出されている。縦枠材37aは、前記溝が車両幅方向の右方を向くように配置されている。また、縦枠材37bは、前記溝が車両幅方向の左方を向くように配置されている。図6には、縦枠材37aの断面ハット状の形状が示されている。
【0025】
同図に示すように、縦枠材37aは、底部sと、底部sの両側に設けられた側部k1、k2と、側部k1,k2の反底部側の端部に設けられたフランジf1,f2とを有しており、側部k1,k2と底部sとにより囲まれた溝mを有する。また、縦枠材37b、35においても、縦枠材37aと同様に形成された溝を有する。なお、本実施形態では、縦枠材37a,37bの高さは、縦枠材36a,36bの高さよりも若干低くなるように設定されている。
【0026】
図4に示す連結枠材38aは、断面L字状をなしており、その両端が縦枠材34aの上端及び縦枠材34cの上端にそれぞれ固定されるとともに、その中央部が縦枠材36aの上端に固定されている。図4に示すように、連結枠材38aにおいて、縦枠材34aから縦枠材36aの間は、直線状に延出されて水平(なお、水平には略水平を含む)に配置されている。また、連結枠材38aにおいて、縦枠材36aを後方へ過ぎた箇所から縦枠材34cの間は下方へ折曲げ形成されている。以下、この下方へ折曲げ形成された部位を単に折曲げ部位O1という。
【0027】
図4に示すように、連結枠材38bは、断面L字状をなしており、その両端が縦枠材34bの上端及び縦枠材34dの上端にそれぞれ固定されるとともに、その中央部が縦枠材36bの上端に固定されている。図4に示すように、連結枠材38bにおいて、縦枠材34bから縦枠材36bの間は、直線状に延出されて水平(なお、水平には略水平を含む)に配置されている。また、連結枠材38bにおいて、縦枠材36bを後方へ過ぎた箇所から縦枠材34dの間は下方へ折曲げ形成されている。以下、この下方へ折曲げ形成された部位を単に折曲げ部位O2という。
【0028】
また、図4に示す連結枠材38cは、断面L字状をなしており、その両端が縦枠材34aの上端及び縦枠材34bの上端にそれぞれ固定されるとともに、その中央部が縦枠材35の上端に固定されている。連結枠材38cは水平(なお、水平には略水平を含む)に配置されている。
【0029】
また、図4に示す連結枠材38dは、図7図8に示すように断面L字状をなしており、その両端が連結枠材38a、38bの水平に配置された部位の後端間に固定されている。
【0030】
壁板41は、四角板状をなしており、その四辺が下部枠33の枠材33a、33b,33c,33dの下面に対してリベット等によりそれぞれ固定されるとともに車両幅方向の略中央部が枠材33eの下面に対してリベット等により固定されている。
【0031】
壁板42は、四角板状をなしており、縦枠材34a、34bの前面に対して左右の両側端がリベット等により固定されるとともに上下両端が連結枠材38c、枠材33aに対してリベット等により固定されている。また、壁板42は、車両幅方向の略中央部が、縦枠材35のフランジに対してリベット等により固定されている。壁板42は、本実施形態では前側側壁になる。
【0032】
壁板43は、台形板状をなしており、縦枠材34a、34cの右側面に対して前後の両側端がリベット等により固定されるとともに上下両端が連結枠材38a、枠材33bの右側面に対してリベット等により固定されている。
【0033】
また、壁板43は、車両前後方向の略中央部が、図6に示すように縦枠材36aの右側面及び縦枠材37aのフランジf1、f2に対してリベット等により固定されている。なお、壁板43と縦枠材37aのフランジf1との間、及び壁板43とフランジf2との間は、シール材を介在させて水密にすることが好ましい。壁板43は、本実施形態では、右側側壁であって、本発明の側壁壁板に相当する。
【0034】
上記のようにして、縦枠材37aの溝mの右側方が、壁板43により水密状に閉塞されていることにより、縦枠材37aと壁板43で囲まれた空間が排水部H1として形成されている。
【0035】
なお、縦枠材37aの下端に接続された枠材33b及び壁板41において、溝mに相対する部位には、図示しない貫通孔が形成されるとともに、その貫通孔に対応した荷台12には、図示しない排水孔が形成されている。排水部H1に流れ込んだ雨水は、前記貫通孔及び排水孔を介して、外部に排出可能となっている。
【0036】
壁板44は、台形板状をなしており、縦枠材34b、34dの左側面に対して前後の両側端がリベット等により固定されるとともに上下両端が連結枠材38b、枠材33cの左側面に対してリベット等により固定されている。
【0037】
また、壁板44は、車両前後方向の略中央部が、縦枠材36aの左側面及び縦枠材37bのフランジに対してリベット等により固定されている。なお、壁板44と縦枠材37bのフランジとの間は、壁板43と縦枠材37aの場合と同様にシール材を介在させて水密にすることが好ましい。壁板44は、本実施形態では、左側側壁であって、本発明の側壁壁板に相当する。
【0038】
上記のようにして、縦枠材37bの溝m(説明の便宜上、縦枠材37aの溝mと同じ符号を付す。以下、同じ)の左方が、壁板44により水密状に閉塞されていることにより、縦枠材37bと壁板44で囲まれた空間が排水部H2として形成されている。
【0039】
なお、縦枠材37bの下端に接続された枠材33c及び壁板41において、溝mに相対する部位には、図示しない貫通孔が形成されるとともに、その貫通孔に対応した荷台12には、図示しない排水孔が形成されている。排水部H2に流れ込んだ雨水は、前記貫通孔及び排水孔を介して、外部に排出可能となっている。
【0040】
壁板45は、四角板状をなしており、車両前後方向において壁板41の略半分の大きさに形成されている。図4に示すように壁板45は、前部下面が連結枠材38cの上面に対して、後部下面が、連結枠材38dの上面に対してそれぞれリベット等により固定されている。また、壁板45は、その車両幅方向の左右両側部下面が連結枠材38b、38aの水平に配置された上面に対してそれぞれリベット等により固定されている。
【0041】
また、壁板45は、車両前後方向において前縁、及び車両幅方向において左右の両縁には、下方に折曲げ形成された垂下片46が設けられている。なお、図1図3図4では、車両幅方向において左側縁の垂下片46のみが図示されている。前記垂下片46は、壁板42の上端前面(外面)、壁板43及び壁板44の上端側面(外面)をそれぞれ覆うよう配置されてこれらの外面に対してリベット等により固定されている。壁板45は、天板を構成している。
【0042】
また、図7図8に示すように、壁板45の車両前後方向において後縁には樋部48が形成されている。すなわち、樋部48は、後述する開口部50の上部周縁に沿って延出されている。前記樋部48は、壁板45を構成する金属製パネルをチャンネル状に折曲げすることにより一体に形成されている。すなわち、樋部48は、壁板45の上面45aから下方に垂下する側壁48aと、側壁48aから後方に向かって折曲げられた底部48bと、底部48bの後縁から上方へ折曲げられた側壁48cを有する。従って、樋部48は、壁板45の上面45aよりも下方に配置されている。
【0043】
樋部48は、車両幅方向の左右に延出されて、図9(a)に示すように、樋口を構成する底部48bの右端が縦枠材37aの上端の底部sに対して水漏れしないように一体に連結されるとともに、底部48bの左端が縦枠材37bの上端の底部に対して同様に連結されている。すなわち、壁板45の上面45a及び後述する荷室扉60の上面から樋部48で受けた雨水は、樋部48の両端の樋口から排水部H1,H2に流すことが可能となっている。
【0044】
また、本実施形態では、側壁48cの長手方向(車両幅方向)の長さは、底部48bの長手方向(車両幅方向)の長さと同一とされている。本実施形態では、図9(a)に示すように、縦枠材37a、37bの上下高さ(すなわち、底部s、及び側部k1、k2の上下長さ)は、底部sが底部48bと連結する高さに設定されている。
【0045】
なお、図9(a)では、説明の便宜上、樋部48と縦枠材37aとの関係を明示するために縦枠材36a等の周辺の部材は、省略して図示されている。
荷室本体30において、壁板41、42、43、44、45に囲まれた空間を荷室Nとしている。また、図4に示すように荷室本体30は、連結枠材38a、38bの両折曲げ部位O1、O2、樋部48、縦枠材34c、34d及び枠材33dで囲まれた開口部50を有する。開口部50により、荷室Nは、車両前後方向において、後方に大きく開放可能とされている。
【0046】
上記のように構成された荷室本体30は、長手方向が車両幅方向に一致するように、荷台12に対して載置されて、下部枠33に挿通された図示しないビス等の締結手段により締結固定されている。
【0047】
荷室扉60は、上下方向に回動させて開口部50を開閉する跳ね上げ式の扉であって、壁板45の上面に対して複数のヒンジ66を介して上下に回動可能に連結されている。
荷室扉60の上部において、左右の両側からはカバーフランジ62が下方に延出されていて、開口部50を閉じた状態では、連結枠材38a、38bの両折曲げ部位O1、O2に臨む壁板43、44の上部外面を覆うようにされている。
【0048】
図7図8に示すように、荷室扉60が開口部50を閉じた状態では、壁板45の上面45aと、荷室扉60の上面60aの見切り部Rに隙間が形成されている。
図7図8に示すように、荷室扉60の上部前縁は、下方にL字状に折曲げ形成された挿入片61が設けられている。
【0049】
挿入片61は、荷室扉60が閉じた状態では、側壁48aに対して略平行に、かつ遊びを有するように離間して配置される相対部61aと、底部48bに略平行に配置される下部片61bとを有する。このように荷室扉60が閉じた状態では、下部片61bは、樋部48内に挿入されるように設定されている。
【0050】
荷室扉60が閉じた状態では、上記のように樋部48内に挿入片61が挿入されることにより、雨水が壁板45の上面45a及び荷室扉60の上面から樋部48にする浸入する際に、挿入片61と樋部48の側壁48aにより規制されて樋部48での雨水の跳ね等の挙動を制限している。
【0051】
なお、図7図8に示すように、樋部48の側壁48cには側壁48cの全長に亘って、ウエザーストリップ70が取付けられている。ウエザーストリップ70は、合成ゴム等により形成されて弾性を有している。ウエザーストリップ70は、側壁48cを挟着するU字状の取付側壁72と、取付側壁72の上部に一体に形成された中空部74を有している。中空部74は、閉じた状態の荷室扉60の裏面に弾性的に当接して中空部74と荷室扉60の裏面間が水密となるように配置されている。
【0052】
取付側壁72の相対する内面には、側壁48cに弾性的に当接する複数の保持リップ76が設けられている。保持リップ76が、側壁48cに弾性的に当接することにより、側壁48cと取付側壁72間は水密となっている。また、取付側壁72の側壁48a側の側面には、リップ78が突出されている。図7図8に示すようにリップ78は、荷室扉60が閉じた状態で、挿入片61の下部片61bと当接可能に延出されている。
【0053】
図3に示すように、荷室本体30と荷室扉60との間には、一対のダンパー68が介装されている。
一方のダンパー68は、そのロッド68a側の先端部が開口部50の右側部の縦枠材36a,37aに固定されたブラケットに対して回転可能に軸支されるとともに図示しないヘッド側の先端部が荷室扉60の右側部の裏面に回転可能に軸支されている。
【0054】
他方のダンパー68は、そのロッド68a側の先端部が開口部50の左側部の縦枠材36b,37b(図4参照)に固定されたブラケットに対して回転可能に軸支されるとともにヘッド68b側の先端部が荷室扉60の左側部の裏面に回転可能に軸支されている。
【0055】
各ダンパー68は、ロッド68aを突き出す伸張側に付勢力を有する。このダンパー68の伸張側の付勢力が荷室扉60を上方へ回動させるように作用し、使用者は荷室扉60を小さな力で楽に上方へ回動させて開放することができる。また、荷室扉60の閉じ操作は、ダンパー68の付勢力に抗して縮小側に作動させながらなされる。
【0056】
図1図3に示すように荷室扉60の回動先端部には、ロック解除レバー80を有するロック装置が設けられている。一方、開口部50の下部である枠材33d上には、前記ロック装置が有するロック部材(図示しない)が係合する被係合部材81が設けられている。荷室扉60を下方へ回動して開口部50を閉じると、この扉ロック装置のロック部材が被係合部材81に係合することにより、荷室扉60の閉じた状態がロックされる。また、荷室扉60の閉じた状態で、ロック解除レバー80をアンロック操作すると、扉ロック装置のロック部材の被係合部材81に対する係合が解除されて荷室扉60を上方へ回動して開くことが可能である。
【0057】
(実施形態の作用)
上記のように構成された車両搭載用荷室構造の作用を説明する。
図7図8に示すように、荷室扉60が開口部50を閉じた状態において、雨が降ると、荷室本体30の上面45aと荷室扉60の上面60aの見切り部Rの隙間から雨水が浸入する。浸入した雨水は、図9(a)に示すように、樋部48に流入する。このとき雨水は側壁48aと挿入片61の相対部61aに規制されることにより、樋部48での跳ね等の挙動が制限される。
【0058】
図9(a)に示すように、樋部48内に流下した雨水は、樋部48にガイドされて縦枠材37a、37bの排水部H1、H2内に入る。排水部H1を流下した雨水は、枠材33bと壁板41の各貫通孔及び荷台12の図示しない排水孔を介して、荷室本体30の外部へ排水される。また、排水部H2を流下した雨水は、枠材33cと壁板41の各貫通孔及び荷台12の図示しない排水孔を介して、荷室本体30の外部へ排水される。
【0059】
また、本実施形態では、樋部48の側壁48cには、ウエザーストリップ70が取付けられており、荷室扉60が閉じた状態では、ウエザーストリップ70の中空部74が荷室扉60の裏面に弾性的に当接して水密にするとともに、取付側壁72が側壁48cに対して水密となるように取付けられている。このため、樋部48に浸入した雨水の高さが樋部48の側壁48cの高さよりも高くなっても、荷室N内に雨水が漏れ出すことはない。
【0060】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の車両搭載用荷室構造は、荷室本体30には、開口部50の上部周縁に沿って延出された樋部48を有する。また、荷室本体30の側部において上下方向に延出されて上端が樋部48の樋口に連結されるとともに、樋部48が受けた雨水を荷室本体30下部から外部へ排出する排水部H1,H2とを有する。また、排水部H1,H2が、複数の枠材のうちの一部の縦枠材37a、37b(枠材)にて構成されている。
【0061】
この結果、本実施形態によれば、荷室本体の上面と荷室扉の上面の見切り部の隙間から浸入する雨水を好適に排水できる効果を奏する。
また、排水部H1,H2が、複数の枠材のうちの一部の縦枠材37a、37b(枠材)にて構成されていることから、荷室本体の剛性を向上できる。
【0062】
(2)本実施形態では、壁板43、44は、荷室本体30の右側側壁、及び左側側壁をそれぞれ形成する側壁壁板としている。また、荷室本体30の枠体31の一部を構成する排水部H1,H2は、側壁壁板との間で排水部を形成するように溝mを有する枠材としている。この結果、本実施形態では、枠体31の一部を構成している枠材と側壁壁板との間で排水部を形成することにより、上記(1)の効果を容易に実現できる。
【0063】
(3)本実施形態では、縦枠材37a、37bは、断面ハット状に形成されることにより、溝mを有する。この結果、前記排水部H1、H2を前記溝を利用して容易に形成することができる。
【0064】
(4)本実施形態では、荷室本体30の壁板45(天板)と樋部48とは、一体に連結されるとともに、樋部48は折曲げ形成されている。この結果、本実施形態によれば、樋部48を別体に気伊瀬して、天板に取付けする場合に比して、部品点数を少なくして、組み付け工数を少なくできて、簡便に樋部を形成することができる。
【0065】
(5)本実施形態の荷室扉60は、跳ね上げ式であって、荷室扉60が開口部50を閉じた状態において、荷室扉60には樋部48内に遊びをもって挿入可能に、かつL字状に折曲げ形成された挿入片61を備えている。
【0066】
この結果、荷室扉60が開口部50を閉じた状態においては挿入片61が樋部48に挿入されることにより、雨水は挿入片61に規制されることにより、樋部での跳ね等の挙動が制限される。
【0067】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態では、図9(a)に示すように、縦枠材37a、37bの上下高さ(すなわち、底部s、及び側部k1、k2の上下長さ)は、底部sが底部48bと連結する高さに設定されている。これに代えて、図9(b)に示すように、縦枠材37a、37bの底部sを、前記実施形態と同様の高さとし、側部k1、k2の上下長さをそれよりも高くしてもよい。図9(b)に示すように、この例では、側部k1、k2の高さが、側壁48cの高さと同一となるように前記実施形態よりもその上下長さが長くされている。
【0068】
・前記実施形態では、図9(a)に示すように、樋部48の側壁48cの長手方向(車両幅方向)の長さは、底部48bの長手方向(車両幅方向)の長さと同一とした。これに代えて、図9(c)に示すように、樋部48の側壁48cの端部を底部48bの端部よりも長くして樋口の形状を変更してもよい。この例では、側壁48cを、縦枠材37aの側部k1、k2の車幅方向長さの略1/2まで延出している。もちろん、樋部48の側壁48cを縦枠材37aの側部k1、k2の車幅方向長さの全長に亘るまで延出して、樋部48の樋口の形状を変更してもよい。
【0069】
・前記実施形態では、排水部H1を、断面ハット状の縦枠材37aと壁板43で囲まれた空間とした。また、排水部H2を、断面ハット状の縦枠材37bと壁板44で囲まれた空間とした。これらの構成に代えて、縦枠材37a、37bを断面ハット状から、管状の枠材に変更してもよい。この場合、排水部H1、H2を前記管状の枠材のみにて構成するとともに、この管状の枠材に対して、壁板43、44の内面をブラケット等を介して固定するものとする。
【0070】
・前記、荷室扉60は跳ね上げ式以外であってもよく、例えば側壁に開口部を形成して、横方向に開く片開き式、或いは、観音扉であってもよい。
・前記実施形態では、開口部は、1つとしたが、1つに限定するものではなく、複数個あってもよい。
【0071】
・前記実施形態では、開口部は、車両後方に向かって設けられているものに限定するものではなく、開口部を車両幅方向に向かって設けられていてもよい。例えば、開口部は、車両幅方向の両端に一対設けられていてもよい。
【0072】
・前記実施形態では、排水部は、上下方向に配置したが、上下方向成分を含むものであれば、斜めに配置されていてもよい。
・前記実施形態では、ウエザーストリップ70を設けたが、ウエザーストリップ70を省略してもよい。
【0073】
・排水部H1、H2のうち、いずれか一方を省略してもよい。
・樋部48は、前記実施形態では、水平になるように形成したが、樋部48を斜めに配置してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…車両、20…荷室ボックス、30…荷室本体、31…枠体、
33…下部枠、33a〜33d…枠材、
34a〜34d…縦枠材(枠材)、35…縦枠材(枠材)、
36a、36b…縦枠材(枠材)、37a,37b…縦枠材(枠材)、
38a〜38d…連結枠材(枠材)、
41…壁板(底壁)、42…壁板(前側側壁)、
43…壁板(右側側壁、側壁壁板)、44…壁板(左側側壁、側壁壁板)、
45…壁板(天板)、45a…上面、
46…垂下片、48…樋部、50…開口部、60…荷室扉、60a…上面、
61…挿入片、61a…相対部、61b…下部片61b、
66…ヒンジ、68…ダンパー、68a…ロッド、68b…ヘッド、
70…ウエザーストリップ、72…取付側壁、74…中空部、
76…保持リップ、78…リップ、
80…ロック解除レバー、81…被係合部材、
s…底部、f1,f2…フランジ、k1,k2…側部、m…溝、
O1、O2…折曲げ部位、H1、H2…排水部、R…見切り部。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9