(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(C)熱伝導性フィラーが、平均粒子径が互いに異なる3種類の熱伝導性フィラー(C−1)熱伝導性フィラー、(C−2)熱伝導性フィラーおよび(C−3)熱伝導性フィラーを含有し、(C−1)熱伝導性フィラーの平均粒子径をd1、(C−2)熱伝導性フィラーの平均粒子径をd2、(C−3)熱伝導性フィラーの平均粒子径をd3として、平均粒子径比d1/d2が1.5以上15以下、かつ平均粒子径比d2/d3が1.5以上15以下である請求項1〜4のいずれか記載の接着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、(A)可溶性ポリイミド、(B)エポキシ樹脂および(C)熱伝導性フィラーを含有する接着剤組成物であって、(A)可溶性ポリイミドが下記一般式(1)で表される構造を有するジアミン残基、下記一般式(2)で表されるジアミン残基、下記一般式(3)で表されるジアミン残基を含有し、
前記一般式(3)で表されるジアミン残基が全ジアミン残基中5モル%以上であり、(B)エポキシ樹脂の含有量が(A)可溶性ポリイミド100重量部に対して30重量部以上100重量部以下であることを特徴とする接着剤組成物である。
【0016】
(一般式(1)中、Xは1以上10以下の整数、nは1以上20以下の整数を示す。)
【0018】
(一般式(2)中、mは1以上30以下の整数、R
5およびR
6は同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30のアルキレン基またはフェニレン基を示す。R
1〜R
4はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30のアルキル基、フェニル基またはフェノキシ基を示す。)
【0020】
本発明における(A)可溶性ポリイミドとは、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジエチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、γ−ブチロラクトン、メチルモノグライム、メチルジグライム、メチルトリグライム、エチルモノグライム、エチルジグライム、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒のいずれかの有機溶媒100gに対して、25℃で1g以上溶解するものを指す。
【0021】
また、本発明における(A)可溶性ポリイミドは、主としてテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応により得られ、テトラカルボン酸二無水物の残基とジアミンの残基を有する。ここで、本発明における(A)可溶性ポリイミドは上記一般式(1)で示される構造を有するジアミン残基を含有する。アルキレンオキサイド骨格は柔軟性が高いため、この構造を有するポリイミドを用いて得られる接着剤組成物は、弾性率が低くなり、基板に対する密着性が向上する。弾性率を低くする観点から、上記一般式(1)で示される構造を有するジアミン残基の含有量は、全ジアミン残基中30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましい。また耐熱性を高くできる点から、該ジアミン残基の含有量は80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
【0022】
一般式(1)で示される構造において、C
xH
2xの具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ノニレン基などのアルキレン基が挙げられる。また、直鎖構造である必要はなく、例えばプロピレン基の場合は、n−プロピレン基、i−プロピレン基のいずれでもよい。また、ブチレン基の場合は、n−ブチレン基、i−ブチレン基、t−ブチレン基のいずれでもよい。このことはより炭素数の大きいアルキレン基についても当てはまる。
【0023】
一般式(1)で示される構造を有するジアミンとしては、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシ)メタン、1、3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1、4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1、5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、トリメチレン−ビス(4−アミノベンゾエート)、テトラメチレン−ビス(4−アミノベンゾート)、ポリテトラメチレンオキシド−ビス(4−アミノベンゾエート)、ポリ(テトラメチレン/3−メチルテトラメチレンエーテル)グリコールビス(4−アミノベンゾエート)などが挙げられる。またこれらのジアミンに対応する製品としては、BASF(株)製のD230、D400、D2000、T403、T5000、イハラケミカル(株)製のエラスマー250P、エラスマー650P、エラスマー1000P、エラスマー1000、ポレアSL−100A、CUA−4などが挙げられる。なお、本発明に用いられる一般式(1)で示される構造を有するジアミンの例は上記に限られるものではない。
【0024】
本発明において、(A)可溶性ポリイミドはさらに下記一般式(2)で示されるジアミン残基を含有する。該ジアミン残基を有することによって、可溶性ポリイミドの有機溶媒に対する溶解性が向上する。また、シロキサン結合によってポリイミド骨格に柔軟性が付与されるため、そのような構造を有するポリイミドを含有する接着剤組成物の弾性率は低くすることができる。弾性率を低くする観点から、下記一般式(2)で示されるジアミン残基の含有量は、全ジアミン残基中10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であればより好ましい。また、シロキサン結合部分の疎水性による分散性を向上させる観点から50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。
【0026】
一般式(2)中、mは1〜30の整数を示す。R
5およびR
6は同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30のアルキレン基またはフェニレン基を示す。R
1〜R
4はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30のアルキル基、フェニル基またはフェノキシ基を示す。炭素数1〜30のアルキレン基は特に制限はないが、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましい。また、炭素数1〜30のアルキル基は特に制限はないが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。なお、前記C
xH
2xの説明と同様、アルキレン基およびアルキル基は直鎖構造である必要はない。
【0027】
一般式(2)で表されるジアミンの具体例としては、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。またこれらのジアミンに対応する製品としては、信越化学(株)製のLP7100、PAM−E、KF8010、X−22−161A、X−22−161B、KF8012、KF8008などが挙げられる。
【0028】
本発明において、(A)可溶性ポリイミドはさらに下記一般式(3)で示されるジアミンの残基を含有する。該ジアミン残基が芳香族基を多く含むことから、該ジアミン残基を含有することにより、接着組成物の熱線膨張係数を低くすることができる。また、カルボキシル基は(B)エポキシ樹脂と反応して架橋構造を形成できるため、接着剤組成物の高温での耐熱性や熱膨張係数を低くすることができる。接着剤組成物の熱膨張係数を下げて、耐熱性を向上させる観点から下記一般式(3)で示されるジアミン残基の含有量は、全ジアミン残基中5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましい。また柔軟性を向上する観点から、該ジアミン残基の含有量は、60モル%以下であることが好ましく、50モル%以下であることがより好ましい。
【0030】
本発明において、(A)可溶性ポリイミドの重量平均分子量は、5,000以上1,000,000以下であることが好ましい。可溶性ポリイミドを2種以上含有する場合、そのうちの少なくとも1種の重量平均分子量が上記範囲であればよい。該重量平均分子量が5,000以上であれば、機械強度の低下と、接着強度の低下がより少なくなる。この点から、該重量平均分子量は、好ましくは10,000以上である。一方、該重量平均分子量が1,000,000以下であれば、樹脂組成物の粘度がより適度となり、熱伝導性フィラーの分散性がより高くなる。この点から、該重量平均分子量は、好ましくは500,000以下である。なお、本発明における該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)によって測定しポリスチレン換算で算出する。
【0031】
本発明における(A)可溶性ポリイミドは、上記ジアミン残基の他に、本発明の効果を損なわない程度に他のジアミン残基を含有していてもよい。例えば、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2,5−ジハロゲノベンゼンなどのベンゼン環1個を含むジアミン類、ビス(4−アミノフェニル)エ−テル、ビス(3−アミノフェニル)エ−テル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(3−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、o−ジアニシジン、o−トリジン、トリジンスルホン酸類などのベンゼン環2個を含むジアミン類、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンなどのベンゼン環3個を含むジアミン類、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセンなどのベンゼン環4個以上を含むジアミン類などのジアミン化合物の残基が挙げられる。なお、他のジアミン残基の例はこれらに限られない。
【0032】
本発明における(A)可溶性ポリイミドが有する酸二無水物残基としては特に限定がなく、例えば、無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、2,2’−ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)、1,2−エチレンビス(アンヒドロトリメリテート)(TMEG)などの酸二無水物の残基が挙げられる。なお、酸二無水物残基の例はこれらに限られない。
【0033】
上記の中で、テトラカルボン酸二無水物の残基とジアミンの残基としては、下記1)〜3)の構造が好ましい。1)ベンゼン環が少ない、2)分子量が大きく嵩高い、または3)エーテル結合などの屈曲部位が多い。このような構造を有することにより分子鎖間の相互作用が弱くなるため、可溶性ポリイミドの有機溶媒における溶解性が向上する。
【0034】
本発明における(A)可溶性ポリイミドは、ポリイミド構造単位からなるもののみであってもよいし、ポリイミド構造単位のほかに共重合成分として他の構造も有する共重合体であってもよい。また、ポリイミド構造単位の前駆体(ポリアミック酸構造)が含まれていてもよい。またこれらの混合体であってもよい。さらに、これらのいずれかに他の構造で表されるポリイミドが混合されていてもよい。他の構造で表されるポリイミドが混合される場合は、本発明における(A)可溶性ポリイミドを50モル%以上含有していることが好ましい。共重合あるいは混合に用いられる構造の種類および量は、本発明の効果を損なわない範囲で選択することが好ましい。
【0035】
本発明に用いられる(A)可溶性ポリイミドの合成方法は特に限定されず、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を用いて、公知の方法で合成される。例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物(一部をアニリン誘導体に置換してもよい)を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとの反応によりジエステルを得、その後ジアミン(一部をアニリン誘導体に置換してもよい)と縮合剤の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとの反応によりジエステルを得、その後残りの2つのカルボキシル基を酸クロリド化し、ジアミン(一部をアニリン誘導体に置換してもよい)と反応させる方法などの方法を利用して、ポリイミド前駆体を得、これを、公知のイミド化方法を利用して合成することができる。
【0036】
本発明の接着剤組成物は、(B)エポキシ樹脂を含有する。エポキシ樹脂を含有すると、Bステージまでは接着剤組成物の粘度が低くなることから、接着剤組成物をシート状に成型したもの(接着剤シート)と基板との熱圧着性が向上する。またエポキシ樹脂による硬化反応によって3次元で架橋反応が進むことから、接着後の機械強度や耐熱性及び基板に対する密着性が向上する。
【0037】
本発明に用いられる(B)エポキシ樹脂は下記一般式(4)で示す構造を含有することが好ましい。該構造を含有することによって、耐熱性が高くなるとともに、熱線膨張係数を低くすることができる。下記一般式(4)で示す構造を含有するエポキシ樹脂の含有量は、熱膨張係数を低くする観点から、(B)エポキシ樹脂配合量全体の5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。このようなエポキシ樹脂に対応する製品としてDIC(株)製のHP4032、HP4032D、HP4700や日本化薬(株)製のNC7300などが挙げられる。
【0039】
本発明に用いられる(B)エポキシ樹脂に特に制限はないが、高温での流動特性や硬化後の機械強度を高くして、かつ熱膨張係数を低くする観点から結晶性のエポキシ樹脂が好ましい。結晶性のエポキシ樹脂とは、ビフェニル基、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、フェニルベンゾエート基、ベンズアニリド基などのメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂である。このようなエポキシ樹脂に対応する製品としては、三菱化学(株)製のJERYX4000、JERYX4000H、JERYX8800、JERYL6121H、JERYL6640、JERYL6677、JERYX7399や日本化薬(株)製のNC3000、NC3000H、NC3000L、CER−3000Lや新日鐵化学(株)製のYSLV−80XY、YDC1312などが挙げられる。
【0040】
また、本発明に用いられる(B)エポキシ樹脂としては、(C)熱伝導性フィラーの分散性を向上して、硬化後の絶縁性を向上させる観点からフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。このようなエポキシ樹脂として大阪ガスケミカル(株)製のPG100、CG500、CG300−M2、EG200,EG250などが挙げられる。
【0041】
また、本発明に用いられる(B)エポキシ樹脂は、Bステージでの柔軟性や基板との密着強度の観点から室温で液状であるエポキシ樹脂が好ましい。室温で液状であるエポキシ樹脂とは、25℃、1.013×10
5N/m
2で150Pa・s以下の粘度を示すものであり、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アルキレンオキサイド変性エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などから選ぶことができる。このようなエポキシ樹脂に対応する製品としては、三菱化学(株)製のJER827、JER828、JER806、JER807、JER801N、JER802、JER604、JER630、JER630LSDやDIC(株)製のエピクロン840S、エピクロン850S、エピクロン830S、エピクロン705、エピクロン707や新日鐵化学(株)製のYD127、YD128、PG207N、PG202などが挙げられる。
【0042】
また、本発明に用いられる(B)エポキシ樹脂は1種類でもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。(B)エポキシ樹脂の含有量は、(A)可溶性ポリイミド100重量部に対して30重量部以上100重量部以下である。Bステージにおける接着剤シートの基板との熱圧着性の観点から30重量部以上である必要があり、40重量部以上であることが好ましい。また、硬化後のエポキシ樹脂の架橋密度を下げて接着剤組成物の弾性率を低くする観点から、(B)エポキシ樹脂の含有量は、(A)可溶性ポリイミド100重量部に対して、100重量部以下である必要があり、90重量部以下であることが好ましい。
【0043】
さらに本発明の接着剤組成物は必要により硬化剤を含有しても良い。エポキシ樹脂と硬化剤を組み合わせることにより、エポキシ樹脂の硬化を促進して短時間で硬化させることができる。硬化剤としては、イミダゾール類、多価フェノール類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジド類、ポリメルカプタン類、ルイス酸−アミン錯体類、潜在性硬化剤などを用いることができる。その中でも、保存安定性と硬化物の耐熱性が優れるイミダゾール類、多価フェノール類、潜在性硬化剤が好ましく用いられる。これらは、単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0044】
イミダゾール類としてはキュアゾール2MZ、キュアゾール2PZ、キュアゾール2MZ−A、キュアゾール2MZ−OK(以上商品名、四国化成工業(株)製)などがあげられる。多価フェノール類としては、スミライトレジンPR−HF3、スミライトレジンPR−HF6(以上商品名、住友ベークライト(株)製)カヤハードKTG−105、カヤハードNHN(以上商品名、日本化薬(株)製)、フェノライトTD2131、フェノライトTD2090、フェノライトVH−4150、フェノライトKH−6021、フェノライトKA−1160、フェノライトKA−1165(以上商品名、DIC(株)製)などがあげられる。また、潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド型潜在性硬化剤、アミンアダクト型潜在性硬化剤、有機酸ヒドラジド型潜在性硬化剤、芳香族スルホニウム塩型潜在性硬化剤、マイクロカプセル型潜在性硬化剤、光硬化型潜在性硬化剤が挙げられる。
【0045】
ジシアンジアミド型潜在性硬化剤としては、DICY7、DICY15、DICY50(以上商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)、アミキュアAH−154、アミキュアAH−162(以上商品名、味の素ファインテクノ(株)製)などが挙げられる。アミンアダクト型潜在性硬化剤としては、アミキュアPN−23、アミキュアPN−40、アミキュアMY−24、アミキュアMY−H(以上商品名、味の素ファインテクノ(株)製)、フジキュアFXR−1030(商品名、富士化成(株)製)などが挙げられる。有機酸ヒドラジド型潜在性硬化剤としては、アミキュアVDH、アミキュアUDH(以上商品名、味の素ファインテクノ(株)製)などが挙げられる。芳香族スルホニウム塩型潜在性硬化剤としては、サンエイドSI100、サンエイドSI150、サンエイドSI180(以上商品名、三新化学工業(株)製)などが挙げられる。マイクロカプセル型潜在性硬化剤としては、上記の各硬化剤をビニル化合物、ウレア化合物、熱可塑性樹脂でカプセル化したものが挙げられる。アミンアダクト型潜在性硬化剤をイソシアネートで処理したマイクロカプセル型潜在性硬化剤としてはノバキュアHX−3941HP、ノバキュアHXA3922HP、ノバキュアHXA3932HP、ノバキュアHXA3042HP(以上商品名、旭化成ケミカルズ(株)製)などが挙げられる。また、光硬化型潜在性硬化剤としては、オプトマーSP、オプトマーCP((株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0046】
接着剤組成物に硬化剤が含まれる場合、その含有量は、(B)エポキシ樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上35重量部以下であることが好ましい。
【0047】
本発明の接着剤組成物は(C)熱伝導性フィラーを含有する。本発明において、熱伝導性フィラーとは、25℃において熱伝導率が2W/m・K以上であるフィラーをいう。フィラーの熱伝導率は、厚みが1mm前後で気孔率が10%以下の焼結体を得た後、JIS R1611(2010)に従って測定して求めることができる。なおJIS R1611(2010)の「7.2測定方法」において「c)かさ密度 熱拡散率の測定は、JIS R1634などによる」と記載されているが、本発明における測定では、「c)かさ密度」の測定はJIS R1634(1998)に従って求めた値をいう。このようなフィラーであれば制限がなく、例としてカーボンブラック、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化珪素、窒化珪素、銅、アルミニウム、マグネシウム、銀、亜鉛、鉄、鉛ななどが挙げられる。これらのフィラーは単独で用いられるか、または複数のフィラーを組み合わせて用いられてもよい。またフィラーの形状は特に制限がなく、真球状、球状、鱗片状、フレーク状、箔片状、繊維状、針状など用いることができる。高密度に熱伝導性フィラーを含有させる観点では、真球状のフィラーが好ましい。
【0048】
本発明において、(C)熱伝導性フィラーの含有量は、接着剤組成物において60体積%以上90体積%以下であることが好ましい。該含有量が60体積%以上90体積%以下であることにより接着剤組成物の熱伝導率がより高くなる。より好ましくは65体積%以上85体積%以下である。なお、接着剤組成物を後述のようにシートとして用いる場合は、シートにおける(C)熱伝導性フィラーの含有量が60体積%以上90体積%以下であることが好ましく、65体積%以上85体積%以下であることがより好ましい。
【0049】
フィラーの体積含有量は、接着剤組成物に含まれる成分のそれぞれの重量含有量と比重から、各成分の体積含有量を算出することで求める。ここで、接着剤組成物およびシートにおけるフィラーの体積含有率(体積%)の算出においては、接着剤組成物およびシートが溶媒を含む場合には、その溶媒は計算に含めないものとする。すなわち、接着剤組成物またはシートに含まれる成分のうち溶媒を除いた成分の体積含有量の合計を分母として、フィラーの体積含有率を計算する。
【0050】
シートの硬化物からフィラーの体積含有率を算出する方法としては、以下のような熱重量分析を利用する方法が挙げられるが、これに限られない。まずシートの硬化物を600〜900℃まで昇温して樹脂分を分解・揮発させ、含有するフィラー重量を測定し、さらに樹脂の重量を算出する。その後、フィラーおよび樹脂の比重で除して体積を算出して、計算する。
【0051】
(C)熱伝導性フィラーが、平均粒子径が互いに異なる3種類の熱伝導性フィラー(C−1)熱伝導性フィラー、(C−2)熱伝導性フィラーおよび(C−3)熱伝導性フィラーを含有し、(C−1)熱伝導性フィラーの平均粒子径をd1、(C−2)熱伝導性フィラーの平均粒子径をd2、(C−3)熱伝導性フィラーの平均粒子径をd3として、平均粒子径比d1/d2が1.5以上15以下であり、かつ平均粒子径比d2/d3が1.5以上15以下であることが好ましい。平均粒子径比d1/d2は、より好ましくは2.0以上10以下であり、平均粒子径比d2/d3は、より好ましくは2.0以上10以下である。平均粒子径比d1/d2が1.5以上15以下であり、かつ平均粒子径比d2/d3が1.5以上15以下であることにより接着剤組成物中に熱伝導性フィラーをより高密度にすることが可能となり、より高い熱伝導率と絶縁性が得られる。
【0052】
(C−1)熱伝導性フィラーは平均粒子径が20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。該平均粒子径が20μm以上であることで、より高い熱伝導率の接着剤組成物が得られる。また該平均粒子径が200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。該平均粒子径を200μm以下にすることによって、接着剤組成物のBステージでの表面粗度を小さくすることができ、より接着強度をより高くすることができる。
【0053】
(C−3)平均粒子径が2μm以下の熱伝導性フィラーを含有することにより、上記の(C−1)熱伝導性フィラーと(C−2)熱伝導性フィラーの隙間に(C−3)熱伝導性フィラーを充填することが可能となり、充填密度を上げることができ、高い絶縁性と低い熱膨張係数の接着剤組成物が得られる。該平均粒子径の下限としては特に制限されないが、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がさらに好ましい。
【0054】
また、(C−1)熱伝導性フィラーの含有量は、より高い熱伝導率接着剤組成物を得る観点から(C)熱伝導性フィラー全体の40体積%以上であることが好ましく、50体積%以上であることがより好ましい。また熱伝導性フィラーの充填密度を大きくしてより高い熱伝導性と絶縁性を有する接着剤組成物得る観点から、(C−1)熱伝導性フィラーの含有量は、(C)熱伝導性フィラー全体の80体積%以下であることが好ましく、70体積%以下であることがより好ましい。
【0055】
また、(C−1)熱伝導性フィラーは、窒化アルミであることが好ましい。窒化アルミは絶縁性の熱伝導性フィラーとして熱伝導率が170W/m・K程度と高い為、より高い熱伝導率の接着剤樹脂組成物が得られる。このような窒化アルミ粒子として、古河電子(株)製のFAN−f30、FAN−f50、FAN−f80や(株)MARUWA製のM30、M50、M80などが挙げられる。
【0056】
また、(C−2)熱伝導性フィラーとしては、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、シリカなどが好ましい。フィラーの熱伝導率が高く、接着剤樹脂組成物の熱伝導率を高くする効果が高いためである。
【0057】
また、(C−3)熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素であることが好ましい。窒化ホウ素はフィラー表面には、アミノ基やヒドロキシル基などの極性の官能基が存在する為、(A)可溶性ポリイミドのアミノ基やヒドロキシル基などとの相互作用によりこれらへの分散性が良く、より充填密度を大きくすることができ、かつ接着剤樹脂組成物の絶縁性を向上させることができる。また、窒化ホウ素は絶縁性の熱伝導性フィラーとして熱伝導率が40W/m・K程度と高い為、接着剤樹脂組成物でもより高い熱伝導率が得られる。例えばこのような窒化ホウ素粒子として、三井化学(株)製のMBN−010Tなどが挙げられる。
【0058】
なお、本発明において平均粒子径とは粒子が凝集していない場合は1次粒子の平均粒子径であり、粒子が凝集している場合はその凝集体の平均粒子径である。 本発明の接着剤組成物は必要に応じて界面活性剤を含有してもよく、これにより基板との塗れ性を向上させることができる。また、メチルメタクリロキシジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、チタンキレート剤などを接着剤組成物中0.5〜10重量%含有してもよい。
【0059】
次に本発明の接着剤組成物をシート状に加工して接着剤シートとする方法について説明する。本発明の接着剤組成物をシート状に加工するには、例えば接着剤組成物を溶媒中で混合してワニス状としたものを支持体上に塗布、乾燥してシート状に加工することができる。
【0060】
ここで用いる溶媒としては前記成分を溶解するものを適宜選択すればよく、たとえばケトン系溶剤のアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、エーテル系溶剤の1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、グリコールエーテル系溶剤のメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、その他ベンジルアルコール、プロパノール、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。特に大気圧下沸点が120℃以下であるものを用いると、低温、短時間で脱溶媒化できるためシート化が容易となる。
【0061】
本発明の接着剤組成物をワニス状にする方法は特に限定されるものではないが、(A)可溶性ポリイミド、(B)エポキシ樹脂および(C)熱伝導性フィラー並びに必要に応じ含まれる他の成分を上記溶媒中でプロペラ攪拌機、ホモジナイザー、混練機などを用いて混合させた後、(C)熱伝導性フィラーの分散性を向上させる観点から、ビーズミル、ボールミル、3本ロールミル等で混合することが好ましい。
【0062】
支持体へワニスを塗布する方法としては、スピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、あるいは、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマロールコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター、スリットダイコーターなどを用いたものを挙げられる。
【0063】
塗工機としては、ロールコーター、コンマロールコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター、スリットダイコーターなどを用いることができるが、スリットダイコーターがコーティング時の溶媒の揮発が少なく塗布性が安定するため好ましく使用される。シート化した接着剤組成物(接着剤シート)の厚みは特に限定されるものではないが、耐電圧などの絶縁性や放熱特性の観点から20〜300μmの範囲が好ましい。
【0064】
乾燥には、オーブン、ホットプレート、赤外線などを使用することができる。乾燥温度および乾燥時間は、有機溶媒を揮発させることが可能な範囲であればよく、接着剤シートが未硬化または半硬化状態(Bステージ状態)となるような範囲を適宜設定することが好ましい。具体的には、40℃から120℃の範囲で1分間から数十分間保持することが好ましい。また、これらの温度を組み合わせて段階的に昇温してもよく、例えば、70℃、80℃、90℃で各1分間ずつ熱処理してもよい。
【0065】
支持体は特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルムなど、通常市販されている各種のフィルムが使用可能である。
【0066】
支持体の接着剤組成物との接合面は、密着性と剥離性を向上させるために、シリコーン、シランカップリング剤、アルミキレート剤、ポリ尿素などの表面処理が施されていてもよい。また、支持体の厚みは特に限定されないが、作業性の観点から、10〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0067】
また、接着剤シートは、その表面を保護するために保護フィルムを有してもよい。これにより、大気中のゴミやチリ等の汚染物質から接着剤シート表面を保護することができる。
【0068】
保護フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。保護フィルムは、接着剤シートとの接着力が小さいものであると好ましい。
【0069】
次に、本発明の接着剤組成物または接着剤シートを利用して基板や部材を接着する方法について、例を挙げて説明する。接着剤組成物は上記のようなワニス状にして用いることが好ましい。まず、接着剤組成物ワニスを用いて接着すべき基板または部材の一方の面に接着剤組成物被膜を形成する。基板や部材としては銅やSUSなど金属素材の薄板や、それと貼り合わせるべき半導体装置(そのリードフレーム部分等)などが挙げられる。接着剤組成物ワニスの塗布方法としてはスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷などの方法が挙げられる。また、塗布膜厚は、塗布手法、樹脂組成物の固形分濃度および粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が50μm以上400μm以下になるように塗布することが好ましい。次に、接着剤組成物ワニスを塗布した基板を乾燥して、接着剤組成物被膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線ランプなどを使用することができる。乾燥温度および乾燥時間は、有機溶媒を揮発させることが可能な範囲であればよく、接着剤樹脂組成物被膜が未硬化または半硬化状態となるような範囲を適宜設定することが好ましい。具体的には、50〜150℃の範囲で1分間から数時間行うのが好ましい。
【0070】
一方、接着剤シートは、保護フィルムを有する場合にはこれを剥離し、接着剤シートと基板を対向させて熱圧着により貼り合わせる。熱圧着は、熱プレス処理、熱ラミネート処理、熱真空ラミネート処理等によって行うことができる。貼り付け温度は、基板への密着性、埋め込み性の点から40℃以上が好ましい。また、貼り付け時に温度が高くなると接着剤シートが硬化する時間が早くなり、作業性が低下するため貼り付け温度は250℃以下が好ましい。接着剤シートが支持体を有する場合、支持体は貼り合わせ前に剥離してもよいし、熱圧着工程のいずれかの時点または熱圧着後に剥離してもよい。
【0071】
このようにして得られた接着剤組成物被膜が形成された基板を他の基板や他部材に熱圧着する。熱圧着温度は、100〜400℃の温度範囲が好ましい。また圧着時の圧力は0.01〜10MPaの範囲が好ましい。時間は1秒〜数分間が好ましい。
【0072】
熱圧着後、120℃から400℃の温度を加えて硬化することで硬化膜が得られる。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間から5時間実施する。一例としては、130℃、200℃で各30分間ずつ熱処理する。あるいは室温より250℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。この際、加熱温度は150℃以上、300℃以下の温度が好ましく、180℃以上、250℃以下であることがさらに好ましい。
【0073】
このように熱圧着して得られた接着体はその剥離強度が、接着信頼性の観点から2N/cm以上であることが好ましく、より好ましくは3N/cm以上である。
【0074】
銅板とアルミ板を接着剤で熱圧着して積層し、この積層体に対し冷熱サイクル試験を実施した場合、接着界面での熱応力を低減する観点から、接着剤の硬化膜の弾性率は低く、熱膨張係数は銅やアルミに近い値であることが好ましい。
【0075】
熱圧着して得られた硬化膜の弾性率は、低温での熱応力を低減する観点から‐45℃で33GPa以下であることが好ましく、より好ましいくは30GPa以下である。同様の観点から該弾性率は、25℃で14GPa以下であることが好ましく、より好ましくは12GPa以下である。
【0076】
熱圧着して得られた硬化膜の熱膨張係数は、熱応力を低減する観点から−45〜125℃で15ppm以上25ppm以下であることが好ましく、より好ましくは17ppm以上23ppm以下である。
【0077】
硬化膜の膜厚は、任意に設定することができるが、50μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0078】
次に本発明における接着剤組成物の用途について一例を挙げて説明するが、本発明の接着剤組成物の用途は以下に限定されるものではない。
【0079】
本発明における接着剤組成物は、半導体装置の接着剤として広く使用できるが、特にパワーICパッケージに好適に用いられる。パワーICとは電力制御用のICのことで、従来のSi半導体に加え、SiC半導体なども用いられているものであって、演算用のICに比較して高温で動作させたり、発熱量が大きかったりするICである。金属基板からなる放熱フィンに接着剤シートを貼り付けるか、または接着剤組成物のワニスを塗布、乾燥することにより、接着剤層を形成する。その後パワーICが実装された半導体装置の銅からなるリードフレームに熱圧着して放熱フィンを接着させることによってパワーICパッケージが得られる。なお、本発明でいう半導体装置とは半導体素子を基板に接続したものや、半導体素子同士または基板同士を接続したものだけでなく、半導体素子の特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路基板及びこれらを含む電子部品は全て半導体装置に含まれる。
【実施例】
【0080】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、各実施例において略号で示した原料の詳細を以下に示す。
【0081】
<ポリイミドの原料>
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物(マナック(株)製)
NJM−06:1,3‘−ビス(4−アミノ−2−カルボキシフェノキシ)ベンゼン(日本純良薬品(株)製)
LP7100:ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学(株)製)
KF8010:ジアミノポリシロキサン(信越化学(株)製)
エラスマー1000:ポリテトラメチレンオキシド−ジ−パラ−アミノベンゾエート(イハラケミカル工業(株)製)
BAPP:2,2‘−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン(和歌山精化工業(株)製)
<エポキシ樹脂>
JER828:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)製)
HP4032:ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(DIC(株)製)
<熱伝導性フィラー>
DAW−45:アルミナ粒子(平均粒子径:45μm、熱伝導率:26W/m・K)(電気化学工業(株)製)
AO509:アルミナ粒子(平均粒子径:9μm、熱伝導率:20W/m・K)(アドマテックス(株)製:商標名アドマテックス)
AO502:アルミナ粒子(平均粒子径:0.7μm、熱伝導率:20W/m・K)(アドマテックス(株)製:商標名アドマテックス)
FAN−30:窒化アルミニウム粒子(平均粒子径:30μm、熱伝導率:170W/m・K)(古河電子(株)製)
FAN−50:窒化アルミニウム粒子(平均粒子径:50μm、熱伝導率:170W/m・K)(古河電子(株)製)
FAN−80:窒化アルミニウム粒子(平均粒子径:80μm、熱伝導率:170W/m・K)(古河電子(株)製)
MBN−010T:窒化ホウ素(平均粒子径:0.9μm、熱伝導率:40W/m・K)(三井化学(株)製)。
【0082】
<硬化剤>
2P4MZ:2−フェニル−4−メチルイミダゾール
<溶剤>
トリグライム:トリエチレングリコールジメチルエーテル
各実施例・比較例における評価方法を次に示す。
【0083】
<合成したポリイミドの重量平均分子量>
ポリイミドをN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPとする)に溶解した固形分濃度0.1重量%の溶液を用い、下に示す構成のGPC装置Waters2690(Waters(株)製)によりポリスチレン換算の重量平均分子量を算出した。GPC測定条件は、移動層をLiClとリン酸をそれぞれ濃度0.05mol/lで溶解したNMPとし、展開速度を0.4ml/分とした。
検出器:Waters996
システムコントローラー:Waters2690
カラムオーブン:Waters HTR−B
サーモコントローラー:Waters TCM
カラム:TOSOH grard comn
カラム:THSOH TSK−GEL α−4000
カラム:TOSOH TSK−GEL α−2500。
【0084】
<合成したポリイミドのイミド化率>
まず、ポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し、ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピーク(1780cm
−1付近、1377cm
−1付近)の存在を確認した。次に、そのポリマーについて、350℃で1時間熱処理した後、再度、赤外吸収スペクトルを測定し、熱処理前と熱処理後の1377cm
−1付近のピーク強度を比較した。熱処理後のポリマーのイミド化率を100%として、熱処理前のポリマーのイミド化率を求めた。
【0085】
<接着剤シートの作製>
各実施例および比較例で作製した接着剤組成物をコンマロールコーターを用いて、支持体フィルムとして厚さ38μmのPETフィルム上に塗布し、100℃で30分間乾燥を行った後、保護フィルムとして、厚さ10μmのPPフィルムをラミネートし、接着剤シートを得た。接着剤シートにおける接着層の膜厚は220μmとなるように塗工を行った。
【0086】
<銅箔への貼り付け性>
上記の方法で作製した接着剤シートの保護フィルムを剥離し、該剥離面を、銅箔(NA−VLP厚み15μm:三井金属(株)製)上に、熱板プレス機を用いて、プレス温度100℃、圧力1MPa、加圧時間5分でプレスした。そして、支持体フィルムを剥がした時、接着剤シートが支持体フィルムに残らず、銅箔に貼り付けされたものを良(○)、貼り付けできず支持体フィルムに残っているものを否(×)とした。
【0087】
<接着強度>
上記の方法で作製した接着剤シートの保護フィルムを剥がし、剥離面を銅箔上に熱板プレス機を用いて、プレス温度100℃、圧力1MPa、加圧時間5分でプレスした。支持体フィルムを剥がした後、接着剤組成物の上に更に銅箔を積層して、プレス温度180℃、圧力2MPa、加圧時間10分でプレスした。その後180℃の熱風循環型乾燥機で1時間かけて熱硬化した。このようにして得られた積層体の銅箔を片側のみ第二塩化鉄水溶液でエッチング除去して線幅2mmの回路加工をおこなった。その後、プッシュプルゲージで2mm幅の銅箔を積層体に対して90℃の方向に持ち上げて引っ張り、接着強度を測定した。
【0088】
<熱伝導率>
上記の方法で作製した接着剤シートの保護フィルムを剥がし、剥離面を銅箔上に熱板プレス機を用いて、プレス温度100℃、圧力1MPa、加圧時間5分間でプレスした。支持体フィルムを剥がした後、接着剤組成物の上に更に銅箔を積層して、プレス温度180℃、圧力2MPa、加圧時間10分間でプレスした。その後180℃の熱風循環型乾燥機で1時間かけて熱硬化した。このようにして得られた積層体の銅箔を全て第二塩化鉄水溶液でエッチング除去し、厚みが200μmの接着剤組成物の硬化物を得た。その後、ネッチ(株)製のレーザーフラッシュ法熱拡散率測定装置LFA447で硬化物の熱拡散率を測定した。またアルキメデス法で硬化物の比重を測定し、DSC法で硬化物の比熱を測定して、熱拡散率×比重×比熱で熱伝導率を算出した。フィラーの体積含有率は、添加した樹脂組成物の各成分の重量を比重で割って体積を計算して、算出した。
【0089】
<耐電圧>
上記と同様にして、厚みが200μmの接着剤組成物の硬化物を得た。これについて、菊水電子工業(株)製の耐電圧試験器TOS5101で温度23℃、湿度50%RHにおける耐電圧を測定した。測定は、交流で昇圧速度5.0kV/秒で実施して、0.2mA以上の電流が流れた時の電圧を耐電圧とした。
【0090】
<弾性率>
上記と同様にして、厚みが200μmの接着剤組成物の硬化物を得た。これを5mm×30mmのサイズにカットして、動的粘弾性測定装置DVA220(アイティー計測制御(株)製)で−45〜125℃までの弾性率を測定した。測定条件は、チャック間距離20mm、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、ひずみ0.1%でおこなった。
【0091】
<熱膨張係数>
上記と同様にして、厚みが200μmの接着剤組成物の硬化物を得た。これを3mm×30mmのサイズにカットして、熱機械的分析装置TMASS/6100Sで−45〜125℃までの熱膨張係数を測定した。測定条件は、チャック間距離20mm、昇温速度5℃/min、引っ張り荷重200mNでおこなった。
【0092】
<冷熱サイクル試験(TCT試験)>
上記の方法で得られた接着剤シートの保護フィルムを剥がし、剥離面を80×80×6mm(厚み)のアルミ板にのせて熱板プレスを用いて、プレス温度100℃、圧力1MPa、加圧時間5分間でプレスした。支持体フィルムを剥がした後、60×60×7.5(厚み)mmの銅板をのせてプレス温度180℃、圧力2MPa、加圧時間10分間でプレスした。その後180℃の熱風循環型乾燥機で1時間かけて熱硬化した。このようにして得られた積層体を冷熱サイクル試験機(タバイ・エスペック(株)製)で−45℃で15分間、125℃で15分間を1サイクルとして1000サイクル実施した後、積層体接着界面に剥離がないものを○、剥離やクラックがあるものを×とした。積層体接着界面の剥離有無については、超音波映像装置FineSAT/FS300III(日立エンジリアニング・アンド・サービス(株)製)にて観察した。
【0093】
実施例1
300mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、窒素導入管および滴下ロートを設置して、窒素雰囲気下、トリグライム 113.33g、ODPA 11.79gを仕込み、60℃で撹拌溶解させた。その後、60℃で撹拌しながらエラスマー1000 22.28g、KF8010 12.04g、BAPP 1.64g、NJM−06 1.52gを添加して1時間撹拌した。その後180℃まで昇温させて3時間撹拌した後、室温まで冷却してポリイミド溶液A(固形分濃度30.0重量%)を得た。ポリイミドの重量平均分子量を測定した結果、48,200であり、イミド化率を測定した結果、99%であった。
【0094】
上記の方法により得られたポリイミド溶液A 48.63gに、HP4032を4.16g、JER828を6.25g、2P4MZを0.8gを添加して混合撹拌し、これにFAN−50を132g、AO509を100g、MBN−010Tを25g添加して3本ロールミルで5回繰り返し混練して、粘性液体である接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0095】
実施例2
300mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、窒素導入管および滴下ロートを設置して、窒素雰囲気下、トリグライム 111.84g、ODPA 11.79gを仕込み、60℃で撹拌溶解させた。その後、60℃で撹拌しながらエラスマー1000 22.28g、KF8010 12.04g、LP7100 0.99g、NJM−06 1.52gを添加して1時間撹拌した。その後180℃まで昇温させて2時間撹拌した後、室温まで冷却してポリイミド溶液B(固形分濃度30.0重量%)を得た。ポリイミドの重量平均分子量を測定した結果、44,000であり、イミド化率を測定した結果、99%であった。このようにして得られたポリイミドB 48.63gについて、実施例1と同様の方法で表1に記載の各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0096】
実施例3
300mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、窒素導入管および滴下ロートを設置して、窒素雰囲気下、トリグライム 103.98g、ODPA 11.79gを仕込み、60℃で撹拌溶解させた。その後、60℃で撹拌しながらエラスマー1000 14.86g、KF8010 13.76g、BAPP 3.28g、NJM−06 1.52gを添加して1時間撹拌した。その後180℃まで昇温させて2時間撹拌した後、室温まで冷却してポリイミド溶液C(固形分濃度30.0重量%)を得た。ポリイミドの重量平均分子量を測定した結果、41,000であり、イミド化率を測定した結果、99%であった。このようにして得られたポリイミドC48.63gについて、実施例1と同様の方法で表1に記載の各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0097】
実施例4
300mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、窒素導入管および滴下ロートを設置して、窒素雰囲気下、トリグライム 114.87g、ODPA 14.74gを仕込み、60℃で撹拌溶解させた。その後、60℃で撹拌しながらエラスマー1000 12.38g、KF8010 17.20g、LP7100 3.73g、NJM−06 1.90gを添加して1時間撹拌した。その後180℃まで昇温させて2時間撹拌した後、室温まで冷却してポリイミド溶液C(固形分濃度30.0重量%)を得た。ポリイミドの重量平均分子量を測定した結果、39,600であり、イミド化率を測定した結果、99%であった。このようにして得られたポリイミドC48.63gについて、実施例1と同様の方法で表1に記載の各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0098】
実施例5
300mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、窒素導入管および滴下ロートを設置して、窒素雰囲気下、トリグライム 104.92g、ODPA 15.36gを仕込み、60℃で撹拌溶解させた。その後、60℃で撹拌しながらエラスマー1000 6.19g、KF8010 17.20g、LP7100 4.97g、NJM−06 1.90gを添加して1時間撹拌した。その後180℃まで昇温させて2時間撹拌した後、室温まで冷却してポリイミド溶液C(固形分濃度30.0重量%)を得た。ポリイミドの重量平均分子量を測定した結果、36,500であり、イミド化率を測定した結果、99%であった。このようにして得られたポリイミドC48.63gについて、実施例1と同様の方法で表1に記載の各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0099】
実施例6
実施例1で得られたポリイミド溶液A55.5gにHP4032を3.75g、JER828を4.58g、2P4MZを0.8gを添加して混合撹拌し、これにFAN−50を132g、AO509を100g、MBN−010Tを25g添加して3本ロールミルで5回繰り返し混練して、粘性液体である接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0100】
実施例7
実施例1で得られたポリイミド溶液A48.63gにHP4032を2.06g、JER828を8.35g、2P4MZを0.8gを添加して混合撹拌し、これにFAN−50を132g、AO509を100g、MBN−010Tを25g添加して3本ロールミルで5回繰り返し混練して、粘性液体である接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0101】
実施例8
実施例1で得られたポリイミド溶液A48.63gにJER828を10.41g、2P4MZを0.8g添加して混合撹拌し、これにFAN−50を132g、AO509を100g、MBN−010Tを25g添加して3本ロールミルで5回繰り返し混練して、粘性液体である接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0102】
実施例9
実施例1で得られたポリイミド溶液A 48.63gにHP4032を10.41g、2P4MZを0.8g添加して混合撹拌し、これにFAN−50を132g、AO509を100g、MBN−010Tを25g添加して3本ロールミルで5回繰り返し混練して、粘性液体である接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0103】
実施例10
FAN−50を148g添加した以外は実施例1と同様の方法で各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0104】
実施例11
FAN−50を116g添加した以外は実施例1と同様の方法で各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0105】
実施例12
FAN−50をFAN−80に変更した以外は実施例1と同様の方法で各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0106】
実施例13
FAN−50をFAN−30に変更した以外は実施例1と同様の方法で各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0107】
実施例14
FAN−50をDAW−45にして、160g添加した以外は実施例1と同様の方法で各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0108】
実施例15
MBN−010Tを35g添加した以外は実施例1と同様の方法で各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0109】
実施例16
MBN−010Tを45g添加した以外は実施例1と同様の方法で各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0110】
実施例17
MBN−010TをAO502にして、40g添加した以外は実施例1と同様の方法で各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0111】
実施例18
AO502を80g添加した以外は実施例15と同様の方法で各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0112】
実施例19
AO502を100g添加した以外は実施例15と同様の方法で各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0113】
実施例20
FAN−50を99g、AO509を160g添加した以外は実施例1と同様の方法で各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0114】
実施例21
FAN−50を66g、AO509を200g添加した以外は実施例1と同様の方法で各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0115】
実施例22
実施例1で得られたポリイミド溶液A48.63gにHP4032を4.16g、JER828を6.25g、2P4MZを0.8gを添加して混合撹拌し、これにAO509を280g、MBN−010Tを25g添加して3本ロールミルで5回繰り返し混練して、粘性液体である接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0116】
比較例1
実施例1で得られたポリイミド溶液A83.33gに、FAN−50を132g、AO509を100g、MBN−010Tを25g添加して3本ロールミルで5回繰り返して混練して、粘性液体である接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率の評価を行ったが、銅箔に貼り付けることができなかった。そこで接着剤組成物を支持体フィルムから剥がして、“テフロン(登録商標)”製のシャーレの上で熱硬化して、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数を測定した。
【0117】
比較例2
300mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、窒素導入管および滴下ロートを設置して、窒素雰囲気下、トリグライム 112.13g、ODPA 10.90gを仕込み、60℃で撹拌溶解させた。その後、60℃で撹拌しながらエラスマー1000 25.19g、KF8010 11.14g、BAPP 1.52gを添加して1時間撹拌した。その後180℃まで昇温させて3時間撹拌した後、室温まで冷却してポリイミド溶液D(固形分濃度30.0重量%)を得た。ポリイミドの重量平均分子量を測定した結果、49,500であり、イミド化率を測定した結果、99%であった。このようにして得られたポリイミド溶液D48.63gについて実施例1と同様の方法で表3に記載の各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0118】
比較例3
300mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、窒素導入管および滴下ロートを設置して、窒素雰囲気下、トリグライム 90.62g、ODPA 10.90gを仕込み、60℃で撹拌溶解させた。その後、60℃で撹拌しながらKF8010 25.46g、BAPP 3.04gを添加して1時間撹拌した。その後180℃まで昇温させて3時間撹拌した後、室温まで冷却してポリイミド溶液E(固形分濃度30.0重量%)を得た。ポリイミドの重量平均分子量を測定した結果、37,500であり、イミド化率を測定した結果、99%であった。このようにして得られたポリイミド溶液E48.63gについて実施例1と同様の方法で表3に記載の各成分と混合し、接着剤組成物を得た。得られた接着剤組成物について、上記の方法で、銅箔への貼り付け性、接着強度、熱伝導率、耐電圧、弾性率、熱膨張係数について測定し、TCT試験を実施した。
【0119】
各実施例および比較例で得られた接着剤組成物の組成を表1〜表3、評価結果を表4〜表6に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
【表6】