【実施例】
【0077】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は係る実施例に限定されるものではない。
【0078】
成績係数(COP)は、一般に認められている冷媒性能の尺度であり、熱伝達用組成物の蒸発または凝縮を含む特定の加熱または冷却のサイクルにおける熱伝達用組成物の相対的な熱力学的効率を表すのに特に有益である。圧縮する際に圧縮機によって加えられた仕事量に対する蒸発器において冷媒が被冷却媒体から受け入れる熱量の比率をCOP
Rで表す。一方、蒸気を圧縮する際に圧縮機によって加えられた仕事量に対する凝縮器において熱伝達用組成物が被加熱媒体へ放出する熱量の比率をCOP
Hで表す。
【0079】
熱伝達用組成物の体積能力は、圧縮機の単位吸込み体積当たりの熱伝達用組成物が与える冷却または加熱の熱量を表す。すなわち、特定の圧縮機に対して、熱伝達用組成物の体積能力が大きいほど、その熱伝達用組成物はより大きな熱量を吸熱または放熱することができる。
【0080】
[実施例1]
<シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの混合熱伝達用組成物>
シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表1に示す条件で成績係数を算出した。熱伝達用組成物の物性値は、米国国立標準技術研究所(NIST)のREFPROP ver.9.0により求めた。
【0081】
以下に、高温ヒートポンプサイクル計算条件1を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
ヒートポンプサイクル条件1は、凝縮器において、熱伝達用組成物と熱源水との熱交換による80℃熱水の生成を想定している。
【0084】
なお、高温ヒートポンプサイクル性能(COP
H)を算出するにあたり、次の項目を仮定した。
(A)圧縮機の圧縮過程は等エントロピー圧縮とする。
(B)膨張弁における絞り膨張過程は等エンタルピー膨張とする。
(C)配管および熱交換器における熱損失、圧力損失は無視する。
(D)圧縮機効率ηを0.7とする。
【0085】
以下に、高温ヒートポンプサイクル性能(COP
H)を算出する式について詳細に説明する。蒸発器への入熱量Q
EVAは、
Q
EVA=G×(h
1−h
4)・・・(1)
であり,凝縮器における放熱量Q
CONは、
Q
CON=G×(h
2−h
3)・・・(2)
となる。
【0086】
ただし、等エントロピー圧縮後の圧縮機出口における熱伝達用組成物のエンタルピーをh
2thで表したとき、圧縮機効率を加味したときの圧縮機出口における熱伝達用組成物のエンタルピーh
2は、
h
2=h
1+(h
2th−h
1)/η・・・(3)
となる。
【0087】
熱伝達用組成物蒸気を圧縮する際に圧縮機によって加えられた仕事量Wは、
W=G×(h
2−h
1)・・・(4)
となる。
【0088】
高温ヒートポンプサイクルの成績係数(COP
H)は、
COP
H=Q
GC/W=(h
2−h
3)/(h
2−h
1)・・・(5)
となる。
【0089】
次に、熱伝達媒体の体積能力(CAP)を算出する式について詳細に説明する。圧縮機吸い込み口における熱伝達媒体の蒸気密度はρ
2であり、ガスクーラーにおける放熱量Q
GCであるから、
CAP=ρ
2×Q
GC=ρ
2×(h
2−h
3)・・・(6)
となる。
【0090】
なお、上記(1)〜(6)において、各種記号は以下を意味する。
G :熱伝達用組成物循環量
W :圧縮仕事
Q
EVA :入熱量
Q
CON :放熱量
COP
H :成績係数(加熱)
CAP :体積能力(加熱)
h :比エンタルピー
1,2,3,4:サイクルポイント
2th :等エントロピー圧縮後のサイクルポイント
【0091】
図2において、実施例1(シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン:1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。図において、サイクルポイント1、2、3、4は蒸気圧縮サイクル計算条件1を示す。
【0092】
[実施例2]
<シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物>
シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表1に示す条件で成績係数を算出した。なお、
図3において、実施例2(シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。
【0093】
[実施例3]
<シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの混合熱伝達用組成物>
シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表2に示す条件で成績係数を算出した。なお、
図4において、実施例3(シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン:1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。
【0094】
以下に、高温ヒートポンプサイクル計算条件2を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
ヒートポンプサイクル条件2は、凝縮器において、熱伝達用組成物と熱源水との熱交換による110℃加圧熱水の生成を想定している。
【0097】
[実施例4]
<シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物>
シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表2に示す条件で成績係数を算出した。なお、
図5において、実施例4(シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。
【0098】
[実施例5]
<シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの混合熱伝達用組成物>
シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表3に示す条件で成績係数を算出した。なお、
図6において、実施例5(シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン:1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。
【0099】
以下に、高温ヒートポンプサイクル計算条件3を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
ヒートポンプサイクル条件3は、凝縮器において、熱伝達用組成物と熱源水との熱交換による130℃加圧熱水の生成を想定している。
【0102】
[実施例6]
<シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物>
シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表3に示す条件で成績係数を算出した。なお、
図7において、実施例6(シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。
【0103】
[実施例7]
<シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物>
シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表1に示す条件で成績係数を算出した。なお、
図8において、実施例7(シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン:トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。
【0104】
[実施例8]
<シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物>
シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表2に示す条件で成績係数を算出した。なお、
図9において、実施例8(シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン:トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。
【0105】
[実施例9]
<シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物>
シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表3に示す条件で成績係数を算出した。なお、
図10において、実施例9(シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン:トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。
【0106】
[実施例10]
<シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物>
シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表1に示す条件で成績係数を算出した。なお、
図11において、実施例10(シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン:2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。
【0107】
[実施例11]
<シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物>
シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表2に示す条件で成績係数を算出した。なお、
図12において、実施例11(シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン:2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。
【0108】
[実施例12]
<シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物>
シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表3に示す条件で成績係数を算出した。なお、
図13において、実施例12(シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン:2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。
【0109】
[比較例1]
<1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン>
本発明の熱伝達用組成物の代わりに、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンの混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表1に示す条件で成績係数を算出した。なお、
図14において、比較例1(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン:1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。
【0110】
<1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)>
HFC−365mfcは、可燃性であり、毒性が低い。なお、HFC−365mfcの沸点は、大気圧下において40.2℃、大気寿命は8.6年、地球温暖化係数(GWP)は794(IPCC4次評価報告書 2007)である。
【0111】
[比較例2]
<1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン>
本発明の熱伝達用組成物の代わりに、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表2に示す条件で成績係数を算出した。なお、
図15において、比較例2(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン:1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。
【0112】
[比較例3]
<1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン>
本発明の熱伝達用組成物の代わりに、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン混合熱伝達用組成物を用いた高温ヒートポンプサイクルの性能評価において、表3に示す条件で成績係数を算出した。なお、
図16において、比較例3(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン:1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンの質量比が95:5)におけるPh線図を示す。
【0113】
実施例1〜12および比較例1〜3の高温ヒートポンプサイクル性能(COP
H)の算出結果を表4〜18に示す。
【0114】
実施例1〜12および比較例1〜3において、熱伝達用組成物の第一成分および第二成分の値は質量百分率で示す。実施例1、3および5は、混合熱伝達用組成物の第一成分がシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであり、第二成分が1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンである。
【0115】
実施例2、4および6は、混合熱伝達用組成物の第一成分がシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであり、第二成分がトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである。
【0116】
実施例7〜9は、混合熱伝達用組成物の第一成分がシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであり、第二成分がトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンである。
【0117】
実施例10〜12は、混合熱伝達用組成物の第一成分がシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであり、第二成分が2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである。
【0118】
比較例1、2および3は、混合熱伝達用組成物の第一成分が1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンであり、第二成分が1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンである。
【0119】
表4、表5、表10および表13に示した実施例1、実施例2、実施例7および実施例10の相対COPおよび相対CAPは、表16に示した比較例1の混合熱伝達用組成物の各成分比の場合におけるCOPおよびCAPをそれぞれ1.00とする相対値として算出した。同様に、表6、表7、表11および表14に示した実施例3、実施例4、実施例8および実施例11の相対COPおよび相対CAPは、表17に示した比較例2の混合熱伝達用組成物の各成分比の場合におけるCOPおよびCAPをそれぞれ1.00とする相対値として算出した。表8、表9、表12および表15に示した実施例5、実施例6、実施例9および実施例12では比較例3の相対COPおよび相対CAPは、表18に示した比較例3の混合熱伝達用組成物の各成分比の場合におけるCOPおよびCAPをそれぞれ1.00とする相対値として算出した。
【0120】
【表4】
【0121】
【表5】
【0122】
【表6】
【0123】
【表7】
【0124】
【表8】
【0125】
【表9】
【0126】
【表10】
【0127】
【表11】
【0128】
【表12】
【0129】
【表13】
【0130】
【表14】
【0131】
【表15】
【0132】
【表16】
【0133】
【表17】
【0134】
【表18】
【0135】
表4〜18に示す通り、本発明の混合熱伝達用組成物は、上記特許文献1(特開2013−525720号)に記載の1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンの混合熱伝達用組成物よりも高温ヒートポンプに適用したときの成績係数および体積能力よりも高い値であることがわかる。
【0136】
[実施例13]
SUS316製オートクレーブに作動媒体30gを充填し、150℃に加熱して、5週間保持した。ガスクロマトグラフィーを用いて、作動媒体の分解生成物および作動媒体の異性体生成物の有無について、評価を行った。得られた結果を表19に示す。
【表19】
【0137】
いずれの熱伝達用組成物も、熱分解生成物は見られなかった。また、表19に示した結果から明らかなように、HFO−1234zeは、トランス体、シス体ともに、異性化反応は進行しなかった。HCFO−1233zdのトランス体は、少量の異性体生成が確認された。本発明に用いる熱伝達用組成物は熱安定性に優れていることがわかる。
【0138】
[実施例14]
シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(Z))を用いて熱安定性試験を行った。JIS−K−2211「冷凍機油」のシールドチューブテストに準拠して、熱伝達用組成物1.0gと金属片(鉄、銅、アルミニウムの各試験片)をガラス試験管に封入し、所定温度に加熱して2週間保持した。なお、加熱温度を175、200または250℃とした。2週間後の熱伝達用組成物の外観、純度、酸分(F
−イオン)を測定し、熱安定性の評価を行った。得られた結果を表20に示す。
【0139】
【表20】
【0140】
[実施例15]
1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)を用いて熱安定性試験を行った。JIS−K−2211「冷凍機油」のシールドチューブテストに準拠して、熱伝達用組成物1.0gと金属片(鉄、銅、アルミニウムの各試験片)をガラス試験管に封入し、所定温度に加熱して2週間保持した。なお、加熱温度を175、200または250℃とした。2週間後の熱伝達用組成物の外観、純度、酸分(F
−イオン)を測定し、熱安定性の評価を行った。得られた結果を表21に示す。
【0141】
【表21】
【0142】
表20および21に示した結果から明らかなように、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの熱分解生成物は見られなかった。また、熱安定性試験後の副生酸分(F
−)は極微量であり、本発明に用いる熱伝達用組成物は、高温度状態においても、熱安定性に優れていることがわかる。
【0143】
[実施例16]
JIS−K−2211「冷凍機油」の熱伝達用組成物と冷凍機油の相溶性試験に準拠して、熱伝達用組成物1.7gと冷凍機油0.3gを厚肉ガラス試験管中に加え、液体窒素で冷却し、熱伝達用組成物および冷凍機油の混合物を固化した。熱伝達用組成物および冷凍機油の混合物が固化した後、試験管の上部と真空ポンプを接続して、残存する空気を除去し、試験管の上部をガスバーナーで溶封した。溶封した厚肉ガラス試験管を−20℃まで冷却した恒温槽に入れ、恒温槽の温度とガラス試験管内の組成物が等しい温度となるまで静置した。その後、目視により、熱伝達用組成物と冷凍機油との相溶性について、評価を行った。恒温槽の温度を−20〜+80℃まで変化させて、相溶性を評価した。得られた結果を表22〜26に示す。表22〜26において、均一に相溶したときは○、二層分離または組成物に濁りを生じたときは×で評価した。
【0144】
相溶性試験には、以下の5種類の潤滑油を使用した。
鉱物油(MO):スニソ4GS(日本サン石油製)
ポリオールエステル油(POE):SUNICE T68(日本サン石油製)
アルキルベンゼン油(AB):アトモス68N(JX日鉱日石エネルギー製)
ポリアルキレングリコール油(PAG):SUNICE P56(日本サン石油製)
ポリビニルエーテル油(PVE):ダフニーハーメチックオイルFVC68D(出光興産製)
【0145】
【表22】
【0146】
【表23】
【0147】
【表24】
【0148】
【表25】
【0149】
【表26】
【0150】
いずれの熱伝達用組成物も、合成油であるPOEに対して、良好な相溶性を有した。また、塩素原子を含有するHCFO−1233zdは、トランス体、シス体ともに、鉱物油に対しても良好な相溶性を有した。