(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記パワーコンディショナーが動作することができる電圧範囲に含まれる間、前記負荷部に流れる電流を増加させて、前記測定部により電圧と電流を測定する請求項1記載の発電出力測定装置。
前記制御部は、測定開始から測定終了までの間の、所定電圧における電流、所定電流における電圧、または電力を、前記複数の発電装置の間で比較して、相対的な良否判定を行う請求項1から3のいずれかの項に記載の発電出力測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の従来の発電出力測定装置では、各ストリングが並列接続されているが、それぞれのストリングを手動により電圧および電流を測定する際には、スムーズに測定できることが望まれている。
【0006】
そこで本発明は、複数の発電装置を順次測定する場合でも、スムーズに測定することができる発電出力測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、負荷へ電力を供給するパワーコンディショナーに接続された自然エネルギーを利用した複数の発電装置の出力を測定する発電出力測定装置であって、前記発電装置から電流が流れる負荷部と、前記負荷部における電圧と電流を測定する測定部と、前記測定の終了を報知させるための報知部と、前記測定部により測定された電圧と電流との関係を示すグラフを表示するための表示部と、前記測定部により測定された電圧が、所定電圧以上であることを契機に、前記負荷部に流れる電流を増加させて、前記測定部により電圧と電流を測定し、前記測定部による測定が終了したときに前記報知部により報知させ、前記測定部により測定された電圧および電流の関係を示すグラフを、前記複数の発電装置に対応させて、前記表示部に重ね合わせて表示する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、測定部により測定された電圧が、所定電圧以上であることを契機に、負荷部に流れる電流を増加させて、測定部により電圧と電流を測定し、測定部による測定が終了したときに報知部により報知させ、測定部により測定された電圧および電流の関係を示すグラフを、複数の発電装置に対応させて、表示部に重ね合わせて表示するように、制御部が制御することにより、操作者は次々に発電装置の電流電圧特性のグラフを表示部に表示させることができる。
【0009】
前記発電装置の出力端子に接触して、前記発電装置の電流を前記負荷部に流し込むためのプローブを備えることができる。操作者はプローブにより発電装置の出力端子に接触させることができる。
【0010】
前記制御部は、前記パワーコンディショナーが動作することができる電圧範囲に含まれる間、前記負荷部に流れる電流を増加させて、前記測定部により電圧と電流を測定することができる。
発電装置からの電流を負荷部へ引き込んだとしても、制御部が、負荷部に流れる電流をパワーコンディショナーが動作することができる電圧範囲に含まれる間だけ増加させるので、パワーコンディショナーを停止することなく、発電装置の測定を測定部により行うことができる。
【0011】
前記制御部は、前記負荷部に流す電流の時間を、前記測定部により測定された電圧が、前記パワーコンディショナーが動作することができる電圧範囲に含まれるときから、前記パワーコンディショナーが停止電圧以下となった後に、前記パワーコンディショナーが停止するまでの時間未満とするのが望ましい。このように制御部が負荷部に流れる電流を制御することで、パワーコンディショナーの停止電圧以下とする電圧までの電圧および電流を測定することができる。
【0012】
前記負荷部と前記測定部とが、並列接続された前記発電装置のそれぞれに対応させて設けられ、前記制御部は、前記複数の負荷部への電流の流し込みを同時に指示して、前記複数の測定部により電圧と電流を同時測定するのが望ましい。
並列接続された発電装置を、負荷部と測定部とを複数設けて測定するときに、制御部が負荷部への電流の流し込みを同時に指示して、複数の測定部により電圧と電流を同時測定するので、同じ条件で並列接続された発電装置を測定することができる。
【0013】
前記負荷部が、並列接続された前記発電装置のそれぞれに対応させて設けられ、前記複数の負荷部と、前記測定部との接続を切り替える切替部が接続され、前記制御部は、前記切替部により前記負荷部と前記測定部との接続を順次選択して、前記測定部により電圧と電流を順次測定するのが望ましい。
制御部が、複数の負荷部と、測定部との接続を切替部により切り替えながら、測定部により電圧と電流を順次測定することで、測定部を発電装置に対応させて設けなくてもよい。また、制御部が切替部を順次切り替えながら測定することで、制御部が高速に動作しなくてもよいので、低速なものが使用できる。
【0014】
前記負荷部に、並列接続された前記発電装置のそれぞれの出力を切り替える切替部が接続され、前記制御部は、前記切替部により前記複数の発電装置からの出力と前記負荷部への接続を順次選択して、前記測定部により電圧と電流を順次測定するのが望ましい。
制御部が、切替部により並列接続された発電装置のそれぞれの出力を切り替えながら、負荷部と測定部とにより電圧と電流を順次測定することで、負荷部と測定部とを発電装置に対応させて設けなくてもよい。また、制御部が切替部を順次切り替えながら測定することで、制御部が高速に動作しなくてもよいので、低速なものが使用できる。
【0015】
前記制御部は、前記測定部により測定された電圧が所定電圧以上であることを契機に、前記負荷部に流れる電流を増加させて、前記測定部により電圧と電流を測定し、前記測定部による測定が終了したことを報知部により報知するのが望ましい。
発電装置の出力を測定する際に、手動で発電装置の出力に接触させる場合、確実に負荷部を発電装置に接続する必要がある。制御部が、測定部により測定された電圧が所定電圧以上であることを契機に、負荷部に流れる電流を増加させて測定を開始することで、確実な接触状態で測定を開始することができる。また、制御部が測定部による測定が終了したことを報知部により報知するので、測定終了を認識することができる。
【0016】
前記制御部が、前記測定部により測定された電圧および電流を読み込み、電圧と電流との関係を示すグラフを、前記複数の発電装置に対応させて、表示部に重ね合わせ表示することにより、同じ発電環境での測定結果を比較することができるので、相対的な評価が可能となる。従って、発電装置の発電を評価するために、自然環境を測定する測定装置が不要である。
【0017】
前記パワーコンディショナーと、前記発電装置との間に、接続と開放とを切り替える接続装置が設けられていると、発電装置とパワーコンディショナーとを切り離した状態で、電圧と電流の特性が測定できるので、開放電圧および短絡電流が測定できる。
【0018】
前記制御部が、測定開始から測定終了までの間の、所定電圧における電流、所定電流における電圧、または電力を、前記並列接続された発電装置で比較して、相対的な良否判定を行うと、幅広い範囲で自動的に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、操作者は次々に発電装置の電流電圧特性のグラフを表示部に表示させることができるので、数の発電装置を順次測定する場合でも、スムーズに測定することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る発電出力測定装置を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、発電出力測定装置10は、パワーコンディショナーPに接続された自然エネルギーを利用した発電装置の一例である太陽光発電装置Sが発生する出力電力を測定するものである。
【0022】
太陽光発電装置Sは、1台の太陽光発電パネルを直列接続したストリングとすることで所定電圧を出力する。例えば、200VをパワーコンディショナーPの入力電圧とする場合、20Vの出力電圧の太陽光発電パネルを10台直列接続した1つのストリングとする。
パワーコンディショナーPは、負荷Lへ太陽光発電装置Sからの出力を調整された電力として供給するものである。パワーコンディショナーPの機能としては、太陽光発電装置Sからの直流の出力を交流に変換することの他に、最大出力動作点制御(MPPT:Maximum Power Point Tracking)により、刻々と変化する環境変化のその時々における最大電力を負荷Lへ出力する。
【0023】
発電出力測定装置10は、太陽光発電装置Sの出力またはパワーコンディショナーPの入力に接続される。発電出力測定装置10からの接続は、太陽光発電装置Sの出力端子またはパワーコンディショナーPの入力端子に固定することで常時接続としてもよいし、発電出力測定装置10の接続線にプローブを採用して、検査時のみに接続するようにしてもよい。また、太陽光発電装置Sの出力端子またはパワーコンディショナーPの入力端子の間に、接続端子を介在させて、発電出力測定装置10のプローブを接触させるようにしてもよい。
【0024】
発電出力測定装置10は、
図2に示すように、負荷部20と、測定部30と、制御部40と、表示部50と、入力部60と、メモリ媒体装着部70とを備えている。
負荷部20は、電圧ダミーロードおよび電流ダミーロードを備え、発電装置から電流を流して、太陽光発電装置Sの電流や電圧を測定するためのものである。負荷部20は、例えば、
図3に示す回路構成とすることができる。
【0025】
図3に示す負荷部20の一例では、電流ダミーロードとして端子IN+からの電流をゲート電圧に応じて流し込むFET21と、制御部40により出力電圧が調整される直流電源部22と、直流電源部22からの電圧をFET21のゲート電圧とするOPアンプ23と、FET21のゲート電圧に応じたドレイン−ソース間電流が流れる抵抗24と、電圧ダミーロードとして端子IN+と端子IN−との間に配置された分割抵抗を構成する抵抗25および抵抗26とを備えている。
端子IN+と端子IN−間の電圧を抵抗26の両端の電圧を測定することで、太陽光発電装置Sの出力電圧としているため、抵抗26の抵抗値は抵抗25より十分大きなものとするのが望ましい。
【0026】
測定部30は、分割抵抗のうち抵抗26の両端の電圧の測定と、抵抗24の両端の電圧に基づいて抵抗24に流れる電流を測定して、測定された電圧および電流を制御部40へ通知する機能を備えている。測定部30は、例えば、抵抗26の両端に接続されたAD変換器と、抵抗24の両端に接続されたAD変換器と、AD変換器により測定された電圧を抵抗24の抵抗値により除算して電流を算出する除算器とすることができる。なお、本実施の形態では、測定部30の除算器を制御部40の機能の一部として含ませている。
【0027】
制御部40は、負荷部20へ流れる電流を直流電源部22へ電圧により指示し、測定部30により測定された電圧および電流に基づいて、表示部50へ表示させる機能を備えている。制御部40は、演算や制御を行うCPUや、記憶部としての不揮発性メモリであるROMおよび揮発性メモリであるRAMなどから構成することができる。ROMは、入力部60から入力される設定値や発電出力測定プログラムを格納するために書き換え可能な不揮発性メモリ、例えば、フラッシュメモリとすることができる。CPUがROMに格納された発電出力測定プログラムを実行することで、CPU、ROM、RAMなどを制御部40として機能させている。
制御部40に設定される設定値としては、パワーコンディショナーPの動作下限値(停止電圧)や太陽光発電装置Sのストリング数、太陽光発電装置Sの故障を検出するための閾値などがある。本実施の形態1では、設定値として、パワーコンディショナーPの停止電圧を100Vとし、ストリング数を1としている。
【0028】
表示部50は、制御部40からの表示データを表示する。表示部50は、LCDパネル、有機ELパネルなどとすることができる。入力部60は、設定を入力したり、制御部40へ動作を指示したりするもので、本実施の形態ではタッチパネルを採用している。入力部60は、タッチパネルとする他に、キーボードや専用キーを並べたスイッチ群とすることができる。
【0029】
メモリ媒体装着部70は、メモリ媒体を装着して、測定された電圧、電流、グラフ、他の測定条件を書き込むためのインタフェースである。メモリ媒体しては、USBメモリとしたり、不揮発性メモリが封入されたメモリカードとしたりすることができる。メモリカードであれば、例えば、SDカードやコンパクトフラッシュ(登録商標)、メモリースティック(商標)などとすることができる。
【0030】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る発電出力測定装置10の動作および使用状態について、図面に基づいて説明する。
図4に示すように、まず、制御部40は連系ストリング電圧V
STを測定する(ステップS10)。発電出力測定装置10における連系ストリング電圧V
STは、パワーコンディショナーPが負荷Lに対して最大電力で電力を供給している状態で、かつ、
図3に示すFET21に電流が流れていない状態での端子IN+および端子IN−の端子間電圧を示す。制御部40は、抵抗26の電圧を測定部30により読み込むことで、連系ストリング電圧V
STを得ることができる。
【0031】
次に、制御部40は、負荷部20に引き込む電流を、負荷部20の直流電源部22の出力電圧として設定する(ステップS20)。制御部40からの電圧の設定により、直流電源部22はOPアンプ23を介在させてFET21のゲートへ制御部40に指示された電圧を出力する。FET21は、ゲート電圧に応じた電流を、ドレイン−ソース間電流として、端子IN+から端子IN−に流す。
電流が抵抗24に流れることで発生する抵抗24の両端の電圧が発生する。測定部30は、抵抗24の両端の電圧を抵抗24の抵抗値で除算した電流を算出する。制御部40は、測定部30により算出された測定電流を読み込む。また、制御部40は、測定部30は抵抗26の両端の測定電圧を読み込む。制御部40では、測定部30にて測定された電圧および電流を制御部40内の記憶部に格納する(ステップS30)。
【0032】
制御部40は、測定部30にて測定された電圧が、パワーコンディショナーPが動作する電圧範囲に含まれているか否かを判断するため、パワーコンディショナーPの停止電圧以下か否かを判定する(ステップS40)。
負荷部20が電流を引き込むことで、太陽光発電装置Sの出力電圧が低下する。パワーコンディショナーPが停止してしまえば負荷Lや売電に影響を与えるため、パワーコンディショナーPが動作することができる電圧範囲としては、パワーコンディショナーPの停止電圧より大きい電圧とすることが考えられ、測定をパワーコンディショナーPの停止電圧より大きい電圧範囲だけで行うことが考えられる。
しかし、例えば、パワーコンディショナーPの動作電圧の下限である停止電圧が100Vを下回り、停止電圧以下となってしまっても、測定時間が短ければ通常動作する。
本実施の形態1に係る発電出力測定装置10では、制御部40が1回の電流増加のステップを約20〜30μSで実行している。そのため、パワーコンディショナーPは停止電圧以下であっても、負荷部20に流す電流の時間を、測定部30により測定された電圧が、パワーコンディショナーPが動作することができる電圧範囲に含まれるときから、パワーコンディショナーPが停止電圧以下となった後に、パワーコンディショナーPが停止するまでの時間未満とした短時間な測定とすることで停止しない。従って、測定部30にて測定された電圧が、既に、パワーコンディショナーPの停止電圧以下であっても、パワーコンディショナーPには影響を与えない。従って、測定を短時間とすることで、パワーコンディショナーPが動作することができる電圧範囲としては、停止電圧以下とすることができる。
【0033】
なお、本実施の形態1では、
図4のステップS40に示す、測定の終了をパワーコンディショナーPの停止電圧以下か否かで判定している。しかし、パワーコンディショナーPへの入力電圧が0Vであっても測定が短時間であれば、パワーコンディショナーによっては通常動作する場合がある。この場合、パワーコンディショナーPが動作することができる電圧範囲の下限を0Vとすることができる。そして、入力部60により停止電圧の設定を0Vとすることで、測定部30により測定された電圧が0Vとなるまで測定を続けることができる。つまり、太陽光発電装置Sの出力を短絡させたときの太陽光発電装置Sが流せる電流である短絡電流I
SCを測定することができる。
このように、測定時間を短時間とすることで、負荷部20への引き込み電流の増加範囲を広くすることができる。
【0034】
ステップS40では、測定された電圧がパワーコンディショナーPの停止電圧以下であれば、停止電圧であると判定して測定を終了し、停止電圧以下でなければステップS50へ移行する。
【0035】
次に、制御部40は、規定回数測定したか否かを判定する(ステップS50)。本実施の形態では、負荷部20の抵抗24が10Aまで流せるものを採用しており、制御部40が抵抗24に流れる電流を0.1Aずつ段階的に増加させるように、直流電源部22に電圧値を指示しているため、ステップS50では、100回測定したか否かを判定している。
【0036】
ステップS50にて、制御部40が規定回数未満であると判定した場合には、ステップS20に戻り、増加させた電流が負荷部20に流れるよう、負荷部20の直流電源部22へ指示する。ステップS50にて、規定回数測定したと判定された場合には、制御部40は負荷部20の直流電源部22へ、電圧出力の停止を指示して、負荷部20への電流の引き込みを終了し、測定を終了する(ステップS60)。
【0037】
このように、ステップS20からステップS50までを繰り返すことで、負荷部20へ流し込む電流は、
図5(A)に示すように、0Aから徐々に増加する波形となる。
なお、
図5(A)では、1回の測定で、電流を負荷部20へ1回流し込んでいるが、
図5(B)に示すように、まず、電流を1回負荷部20へ流し込み、太陽光発電装置Sの太陽光発電パネルに内在する容量に蓄積された電荷を放電させてから、測定のための負荷部20へ電流の流し込みを行うようにしてもよい。そうすることで測定を精度よく行うことができる。
【0038】
制御部40は、制御部40内の記憶部に格納された電圧および電流のそれぞれのデータに基づいて、表示部50に、電流電圧特性グラフ(IV特性特性グラフ)を、
図6(A)に示すように表示する。
図6(A)に示すように、表示部50では、連系ストリング電圧V
STから負荷部20への引き込み電流を増加させ、太陽光発電装置Sの出力電圧を低下させたときの電流をグラフにして表示しているので、測定者が一目で特性を把握することができる。
【0039】
測定者が、測定した電圧および電流を他のパーソナルコンピュータへ持って行き、処理したい場合には、表示部50に表示された「データ保存」ボタンB1を押下する。この押下によりタッチパネルとした入力部60から「データ保存」ボタンB1が押下された旨の通知が制御部40へ通知される。そして、制御部40が、外部メモリ装着部70に装着されたメモリ媒体にデータを書き込むことで、データが格納されたメモリ媒体を持ち出せることができる。メモリ媒体に書き込まれるデータは、例えば、テキスト形式、またはテキスト形式でもCSV形式としたり、バイナリ形式したりすることができる。
【0040】
このようにして、太陽光発電装置Sからの電流を負荷部20へ引き込ませ、制御部40が、負荷部20に流れる電流をパワーコンディショナーPが動作する電圧範囲に含まれる間だけ増加させるので、パワーコンディショナーPを停止することなく、太陽光発電装置Sの出力の測定を測定部30により行うことができる。従って、発電出力測定装置10は、太陽光発電装置Sの発電ロスを抑えることができる。
【0041】
また、測定時間を短時間とし、短絡電流I
SCが測定されるまで、負荷部20への流し込み電流を増加させることにより、
図6(B)に示すグラフのように、幅広い電流電圧特性を測定することができる。また、短絡電流I
SCを測定することにより、太陽光発電装置Sの短絡電流I
SC時における特性の変化を容易に確認することができる。例えば、短絡電流I
SC時では、太陽光発電パネルの特性劣化に起因する異常を検出することができる。
制御部40は、測定された短絡電流I
SCと、制御部40内に設定された太陽光発電装置Sの特性劣化の閾値とを比較して、測定された短絡電流I
SCが閾値より小さい場合に、表示部50に「太陽光発電装置の特性が劣化しています」等のメッセージを表示させることができる。このとき、電流値が段々に小さくなるように、閾値を段階的に数種類設け、太陽光発電装置Sの劣化の度合いをレベルで表示するようにしてもよい。
【0042】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る発電出力測定装置を図面に基づいて説明する。なお、
図7においては
図1と、
図8においては
図2と、同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図7に示す本実施の形態2に係る発電出力測定装置11は、1台の太陽光発電パネルを直列接続したものを1ストリングとして、複数のストリングを並列接続した太陽光発電装置S0の出力を、それぞれ測定する機能を備えている。
それぞれのストリングS1〜S4は、ダイオードDを介在させて接続され、パワーコンディショナーPに接続されている。
【0043】
図8に示すように、発電出力測定装置11は、ストリングS1〜S4とダイオードDとの接続線に、接続される。発電出力測定装置11に、負荷部20と測定部30とが、それぞれにストリングS1〜S4に対応させて設けられている。
制御部41は、
図9の波形にて示すように、負荷部20への電流の流し込みを、負荷部20の全部に、かつ同時に負荷部20の直流電源部22に指示する。制御部41による測定は、
図4に示すフローチャートと同様に行うことができる。電流が増加するごとに、すべての測定部30により電圧および電流を測定して、制御部41が制御部41内の記憶部に格納する。
このように、一度に全部の負荷部20に対して制御部41が指示を出力し、ストリングS1〜S4の電圧および電流を測定することで、同じ発電環境の元で測定することができる。
【0044】
また、制御部41は、
図10の波形にて示すように、負荷部20への電流の流し込みを、負荷部20のそれぞれに、かつ順番に負荷部20の直流電源部22に指示する。制御部41による測定は、
図4に示すフローチャートと同様に行うことができる。電流が増加するごとに、すべての測定部30により電圧および電流を測定して、制御部41が制御部41内の記憶部に格納する。このように順序を決めてストリングS1〜S4を測定することもできる。ストリングS1〜S4を順番に測定することで、制御部41のCPUが高速に動作するものでなくても、電圧および電流を測定することができる。なお、ストリングS1〜S4を順番に測定する間隔はできるだけ短い方が、ストリングS1〜S4のそれぞれの発電環境の変化を抑えるためにも望ましい。例えば、測定間隔は1μSから1Sまでが望ましい。
【0045】
制御部41は、制御部41内の記憶部に格納された電圧および電流のそれぞれのデータに基づいて、ストリングS1〜S4の電流電圧特性グラフを、表示部50に表示する。
図11に示す表示部50では、連系ストリング電圧V
STから負荷部20への引き込み電流を増加させ、太陽光発電装置Sの出力電圧を低下させたときの電流をグラフにして表示しているので、測定者が一目で特性を把握することができる。
【0046】
また、ストリングS1〜S4のそれぞれの電流電圧特性グラフが重ね合わせて表示されることで、同じ発電環境での比較ができるので、相対的な評価が可能である。例えば、
図11では、ストリングS4が他のストリングより電流出力が低下していることが判る。このように、特定のストリングのみの発電状態が悪化しているときには、そのストリングの太陽光発電パネルに、樹木の影が落ちた、内部インピーダンスが上昇しているなどのなんらかの障害が発生していることが推定できる。従って、日照計などの環境測定器が不要である。
【0047】
更に、制御部41は、表示部50に電流電圧特性グラフにより、測定者に視覚的に判定させるだけでなく、それぞれのストリングS1〜S4の測定された電圧と電流とに基づいて、相対的な評価を自動的に行うこともできる。
例えば、制御部41は、測定開始から測定終了までの間の所定電圧における電流、または所定電流における電圧を、所定間隔ごとに、ストリングS1〜S4で比較する。この比較は、最大値と最小値との差が閾値以上であるか否かを判定したり、平均値と最小値の差が閾値以上であるか否かを判定したり、測定開始から測定終了までの積算電力の差が閾値以上であるか否かを判定したりすることができる。
制御部41は、これらの差が閾値以上と判定した場合に、異常として表示部50に表示して、比較したそれぞれの数値をストリングに対応させて表示する。そうすることで、負荷部20に電流に引き込まないときの電圧(連系ストリング電圧V
STまたは後述する開放電圧V
OC)と、負荷部20を短絡状態とした短絡電流I
SCのポイント的な判定ではなく、幅広い電圧範囲および/または電流範囲で、相対的な良否判定を、自動的に行うことができる。
【0048】
このように、複数のストリングであっても、パワーコンディショナーPを停止させることなく、各ストリングの出力を測定することができる。
【0049】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る発電出力測定装置を図面に基づいて説明する。なお、
図12においては
図7と、
図13においては
図8と、同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0050】
図12に示す本実施の形態3に係る発電出力測定装置12は、実施の形態2と同様に、4つのストリングS1〜S4を、それぞれ測定する機能を備えている。発電出力測定装置12は、
図13に示すように、並列接続されたストリングS1〜S4に対応させた負荷部20と、負荷部20との接続を切り替える切替部80と、切替部80により接続が切り替えられた負荷部20の電圧および電流を測定する測定部30とを備えている。
【0051】
制御部42は、
図14に示すように、切替部80に測定部30の接続を切り替えることで、ストリングS1〜S4の選択を指示すると共に、負荷部20への電流の流し込みを、負荷部20のそれぞれに、かつ順番に負荷部20の直流電源部22に指示する。
【0052】
制御部42による測定は、
図4に示すフローチャートと同様に行うことができる。電流が増加するごとに、制御部42は、切替部80によるストリングS1〜S4の選択に対応させて、測定部30による電圧および電流の測定した結果を、制御部42内の記憶部に格納する。
ストリングS1〜S4の選択を、切替部80による負荷部20と測定部30との接続の切り替えで行うことで、測定部30をストリングの数に対応させて設ける必要がなく、測定部30を兼用させることができる。また、測定に時間間隔が空くため、制御部42のCPUが高速に動作するものでなくても、電圧および電流を測定することができる。
このようにして測定された電圧および電流は、実施の形態2と同様に、
図11に示す表示内容を表示部50に、ストリングS1〜S4の電流電圧特性グラフとして表示することができる。
【0053】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る発電出力測定装置を図面に基づいて説明する。なお、
図15においては
図7と、
図16においては
図8と、同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0054】
図15に示す本実施の形態3に係る発電出力測定装置13は、実施の形態2と同様に、4つのストリングS1〜S4を、それぞれ測定する機能を備えている。発電出力測定装置12は、
図16に示すように、並列接続されたストリングS1〜S4との負荷部20との接続を切り替える切替部81を備えている。
【0055】
制御部43は、
図17に示すように、切替部81にストリングS1〜S4を順次選択する指示を出力すると共に、負荷部20への電流の流し込みを、所定間隔ごとに、負荷部20の直流電源部22に指示する。
【0056】
制御部43による測定は、
図4に示すフローチャートと同様に行うことができる。電流が増加するごとに、制御部43は、切替部81によるストリングS1〜S4の選択に対応させて、測定部30による電圧および電流の測定の結果を、制御部41内の記憶部に格納する。
ストリングS1〜S4の選択を、切替部81によるストリングS1〜S4と負荷部20との接続の切り替えで行うことで、負荷部20および測定部30を、ストリングの数に対応させて設ける必要がなく、兼用させることができる。また、測定に時間間隔が空くため、制御部42のCPUが高速に動作するものでなくても、電圧および電流を測定することができる。
このようにして測定された電圧および電流は、実施の形態2と同様に、
図11に示す表示内容を表示部50に、ストリングS1〜S4の電流電圧特性グラフとして表示することができる。
【0057】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5に係る発電出力測定装置を図面に基づいて説明する。なお、
図18においては
図7と、
図19においては
図2と、同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0058】
図18に示す本実施の形態5に係る発電出力測定装置14は、4つのストリングS1〜S4を、それぞれ手動により測定する機能を備えている。手動によりストリングS1〜S4のそれぞれの電圧および電流を測定するために、発電出力測定装置14は、
図19に示すように、負荷部20の端子IN+,IN−となり、それぞれのストリングS1〜S4の出力端子に接触するためのプローブ20a,20bと、1回の測定の終了を操作者に通知する報知部90とを備えている。
【0059】
報知部90は、音や光、表示などにより操作者に測定完了を通知するものである。本実施の形態5では、プローブ20a,20bを両手に持ち、発電出力測定装置14から離れていても、操作完了が認識できるように、報知部90をブザーとしているが、光により通知する場合には、LEDとしたり回転灯としたりすることができ、表示により通知する場合には、表示部50に表示したり、別体としたモニタに表示させたりすることができる。
【0060】
ここで、発電出力測定装置14の動作および使用状態を
図20に基づいて説明する。なお、発電出力測定装置14には、予めストリングS1〜S4の4つのストリングを測定することが入力部60により設定されているものとする。
【0061】
まず、操作者は、プローブ20a,20bを測定対象であるストリングS1〜S4のいずれかに接続する(ステップS110)。例えば、操作者がストリングS1に接続すると、制御部44は、ストリングS1の連系ストリング電圧V
STを測定する。連系ストリング電圧V
STは、負荷部20による電流の引き込みなしに、
図3の抵抗26の電圧を測定部30により測定することで得られる。このときの電圧が所定電圧、例えば10V以上であれば、プローブ20a,20bがストリングに接触していると判断して測定を開始する(ステップS120)。連系ストリング電圧V
STが所定電圧未満であれば、プローブ20a,20bがストリングに接触していないと判断して、電圧が検出されるまでステップS120を繰り返して待機する。
【0062】
測定が開始されれば、以下、
図4に示すフローチャートのステップS20からステップS60と同様に、制御部44はステップS130からステップS170までを実行して、負荷部20に流れる電流に応じたストリングの電圧および電流を測定する。
【0063】
そして、ストリングS1の電圧および電流の測定が終了すると、制御部44は報知部90によりストリングS1の測定終了を通知する(ステップS180)。操作者は、報知部90により測定終了が通知されるので、プローブ20a,20bをストリングS1から外し、次のストリングS2へ移すタイミングを得ることができる。
【0064】
制御部44は、制御部44内の記憶部に格納された電圧および電流のそれぞれのデータに基づいて、電流電圧特性グラフを、表示部50に表示する(ステップS190)。2回目(次のストリング)の測定であれば、制御部44は、グラフを重ね合わせて表示する。例えば、
図11に示す表示部50のグラフのように表示させることができる。
【0065】
制御部44は、予め設定された測定対象のストリングの測定が完了したか否かの判定を行う(ステップS200)。全部のストリングの測定が完了していなければ、ステップS110へ戻り、測定を繰り返す。全部のストリングの測定が完了していれば、処理を終了する。
【0066】
このように、実施の形態2〜4と異なり、本実施の形態5に係る発電出力測定装置14では、複数のストリングの測定を手動で行っているが、測定部30により測定された電圧が所定電圧以上であることを契機に、負荷部20に流れる電流を増加させて、測定部30により電圧と電流を測定し、測定部30による測定が終了したことを報知部90により報知するので、パワーコンディショナーPを停止させることなく、複数のストリングの測定を手動でも確実に行うことができる。また両手がプローブ20a,20bで塞がっていてもスムーズに測定することができる。
【0067】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6に係る発電出力測定装置を図面に基づいて説明する。なお、
図21においては、
図7と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図21に示すように、発電出力測定装置15は、実施の形態2〜5に係る発電出力測定装置11〜14を装置本体16として、この装置本体16に、接続装置17を加えたものである。
【0068】
接続装置17は、各ストリングとパワーコンディショナーPとを接続したり開放としたりするスイッチの一例である過電流検出可能なブレーカ171〜174と、ストリングS1〜S4の各接続線に装置本体16を接続するための端子盤175とを備えている。
【0069】
ブレーカ171〜174により、ストリングS1〜S4とパワーコンディショナーPとの接続を切断して、ストリングS1〜S4のそれぞれの単体の測定を行うことができるので、装置本体16は、負荷部20に電流を流し込まない状態から、負荷部20にて端子IN+,IN−間を短絡とした状態までの電圧および電流を測定することができる。
【0070】
この測定について、装置本体16が
図8に示す発電出力測定装置11である場合を例に説明する。
制御部41は、まず、負荷部20に電流を流し込まないときの端子間(ストリングS1〜S4のそれぞれの端子IN+,IN−の間)の電圧を開放電圧V
OCとして、負荷部20の抵抗26(
図3参照)の電圧を測定部30により測定する。
【0071】
次に、制御部41は、ストリングS1〜S4に対応する負荷部20に徐々に電流を増加させ、測定部30により、そのときの電圧および電流を測定する。そして、制御部41は、負荷部20のFET21のソース−ドレイン間が短絡状態となるまで直流電源部22へ指示をして負荷部20への電流の引き込みを増加させると測定を終了する。
制御部41は、制御部41内の記憶部に格納された電圧および電流のそれぞれのデータに基づいて、電流電圧特性グラフを表示部50に表示することができる(
図22参照)。
【0072】
このようにして、各ストリングとパワーコンディショナーPとを切り離すことで、開放電圧V
OCと短絡電流I
SCが測定できるので、制御部41はストリングS1〜S4のそれぞれの極性因子FFを算出して表示することができる。この極性因子FFは、
図23に示すように、測定結果による最大電力P
MPPTを、開放電圧V
OCと短絡電流I
SCとを乗算して得られる計算上の最大電力P
maxで除算したものである。
図22においては、制御部41は極性因子FFを「FF値」として表示している。
【0073】
また、開放電圧V
OCと短絡電流I
SCとを測定しているので、ストリングS1〜S4のそれぞれの開放電圧V
OC時と短絡電流I
SC時の特性の変化を容易に確認することができる。
短絡電流I
SC時の特性の変化では、前述したように、太陽光発電パネルの特性劣化に起因する異常を検出することができる。
【0074】
また、開放電圧V
OC時の特性の変化は、ストリングを構成する太陽光発電パネルの断線等が考えられるため、このような場合に、制御部41は、表示部50に「太陽光発電装置の断線が発生しています」等のメッセージを表示させることができる。このとき、電圧値が段々に小さくなるように、段階的に閾値を数種類設け、太陽光発電装置Sの不具合の度合いをレベルで表示するようにしてもよい。
【0075】
なお、本実施の形態6では、複数のストリングのそれぞれの電圧および電流を測定するために、装置本体16を実施の形態2〜4に係る発電出力測定装置11〜15としたが、太陽光発電装置を、1台の太陽光発電パネルとしたり、太陽光発電パネルを直接接続した1つのストリングとしたりした場合には、装置本体16を実施の形態1に係る発電出力測定装置10とすることができる。
【0076】
以上、本発明の実施の形態1〜6に係る発電出力測定装置について説明した。本実施の形態1〜6では、自然エネルギーを利用した発電装置として太陽光発電装置を例に説明したが、風力発電装置としてもよい。
また、実施の形態2〜5において、実施の形態1と同様に、パワーコンディショナーPが動作することができる電圧範囲をパワーコンディショナーPの停止電圧とするのではなく、測定部30により測定された電圧が0Vとなるまで測定を続けることで、太陽光発電装置の出力を短絡させたときの短絡電流I
SCを測定することができる。短絡電流I
SCを測定することにより、それぞれのストリングS1〜S4の短絡電流I
SC時における特性の変化を容易に確認することができる。
更に、実施の形態2〜5において、実施の形態1と同様に、負荷部20への電流の引き込みを2回にして、太陽光発電装置Sの太陽光発電パネルに内在する容量に蓄積された電荷を放電させてから、測定のための負荷部20へ電流の流し込みを行うようにしてもよい。
また、実施の形態2と同様に、実施の形態3〜6においても、制御部は、測定開始から測定終了までの間の、所定電圧における電流、所定電流における電圧または電力を、ストリングS1〜S4で比較することで、それぞれのストリングS1〜S4の相対的な評価を自動的に行うこともできる。
更に、実施の形態5では、制御部44は、測定終了を報知部90により操作者に通知しているが、実施の形態1〜4,6においても、報知部90を設け、制御部40〜43が報知部90によりストリングごとの測定終了を通知するようにしてもよい。