特許第6299866号(P6299866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299866
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】充電器
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20180319BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20180319BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20180319BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20180319BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   H02J7/00 S
   H02J7/00 P
   H02H7/18
   H02M3/28 C
   H02M7/12 H
   B60L11/18 C
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-523088(P2016-523088)
(86)(22)【出願日】2014年5月30日
(86)【国際出願番号】JP2014064542
(87)【国際公開番号】WO2015181988
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2016年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】武井 修
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 章夫
(72)【発明者】
【氏名】八須 康明
(72)【発明者】
【氏名】鷁頭 政和
(72)【発明者】
【氏名】西田 廣治
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−158240(JP,A)
【文献】 特開平10−313546(JP,A)
【文献】 特開2014−027854(JP,A)
【文献】 特開2008−269860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
B60L 11/18
H02H 7/18
H02M 3/28
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して出力するAC/DCコンバータと、
前記AC/DCコンバータの出力する直流電力を変圧して車載バッテリに供給するDC/DCコンバータと、
前記AC/DCコンバータおよび前記DC/DCコンバータの各々を駆動するための駆動信号を前記車載バッテリの充電状況に応じて出力するコンバータ制御部と、
前記コンバータ制御部から前記AC/DCコンバータと前記DC/DCコンバータのうちの予め定められた方へ出力された駆動信号を、非アクティブレベルの強制停止指示信号を受け取っている間は通過させ、アクティブレベルの強制停止指示信号を受け取ったことを契機として遮断するマスク回路と、
前記車載バッテリの充電中に異常が発生したことを通知する異常検知信号の受信を契機として前記マスク回路に与える強制停止指示信号を非アクティブレベルからアクティブレベルに切り替え、その切り替え後に、駆動信号の出力停止を指示する停止指示を前記コンバータ制御部に与えて、前記AC/DCコンバータと前記DC/DCコンバータのうちの予め定められた方を優先的に停止させる安全制御部と、
を有することを特徴とする充電器。
【請求項2】
前記マスク回路は、
前記強制停止指示信号に応じてオン/オフが切り替えられるスイッチング素子と、
一次巻線の一端が前記スイッチング素子を介して電源に接続され、前記コンバータ制御部から出力される駆動信号が前記一次巻線の他端に与えられるパルストランスと、
前記AC/DCコンバータと前記DC/DCコンバータのうちの予め定められた方へ出力する駆動信号を、前記パルストランスの二次巻線に誘起される交流電力を整流して生成する整流器と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の充電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バッテリを充電する充電器に関し、特に、電動機を動力源として走行する車両のバッテリを充電する充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両の具体例としては電気自動車やハイブリッド自動車が挙げられる。この種の車両には、人体にとって危険な高電圧のバッテリが電動機の電源として搭載されており、この車載バッテリを充電するための車載充電器も高電圧を扱うため、安全性に充分に配慮する必要がある。自動車用機能安全規格の一つとして、2011年正式発行のISO26262が挙げられる(非特許文献1参照)。ISO26262の目的は、安心して受け入れられる程度までリスクを抑制することである。ISO26262では、異常検出時に、車載充電器の全機能を強制停止させる機能を持たせることが定められている。この種の車載充電器はAC/DCコンバータとDC/DCコンバータを直列接続してなる構成が一般的であり、異常発生時にAC/DCコンバータとDC/DCコンバータの両方を強制停止させる機能を当該充電器に設けることが考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】インターネット、<URL:http://www.jari.or.jp/tabid/112/Default.aspx>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ISO26262では、目標安全水準に対応したレベルでのリスク低減策を講じれば良いとされている。これに対して、異常検出時にAC/DCコンバータとDC/DCコンバータの両方を強制停止させる構成では、リスク低減効果は高いものの、高コスト化を招き、また、目標安全水準に比較してオーバースペックとなり兼ねない。
【0005】
本発明は以上に説明した課題に鑑みて為されたものであり、車載バッテリを充電する充電器において、要求される目標安全水準に応じたレベルでのリスク低減を実現することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、AC/DCコンバータと、このAC/DCコンバータに直列接続されたDC/DCコンバータと、異常発生時に安全確保のための制御を行う安全制御部とを有する充電器の安全制御部に以下の処理を実行させる。すなわち、安全制御部は、車載バッテリの充電中に異常が発生したことを通知する異常検知信号の受信を契機としてAC/DCコンバータとDC/DCコンバータのうちの予め定められた方を優先的に停止させる。
【0007】
例えば、充電器に対して要求される目標安全水準が「車載バッテリの充電中に何らかの異常が発生したとしても、少なくとも車載バッテリの破損を回避すること」である場合には、DC/DCコンバータを優先的に停止させるようにすれば良い。これに対して、「車載バッテリの充電中に何らかの異常が発生したとしても、少なくとも充電器の破損(具体的には、AC/DCコンバータに含まれる平滑化コンデンサの破損)を回避すること」が目標安全水準として要求される場合には、AC/DCコンバータを優先的に停止させるようにすれば良い。
【0008】
AC/DCコンバータとDC/DCコンバータとを直列接続してなる車載バッテリ用充電器では、充電器全体の作動制御を行う安全制御部とは別個に、車載バッテリの充電状況に応じてAC/DCコンバータおよびDC/DCコンバータの作動制御を行うコントローラ(以下、コンバータ制御部)が設けられていることが一般的である。このような構成の充電器においては、AC/DCコンバータとDC/DCコンバータのうちの予め定められた方に向けてコンバータ制御部から出力された駆動信号を、アクティブレベルの強制停止指示信号を安全制御部から受け取ったことを契機として遮断するマスク回路を設け、安全制御部には、異常検知信号の受信を契機としてマスク回路にアクティブレベルの強制停止指示信号を与え、駆動信号の出力停止を指示する停止指示をコンバータ制御部に与える処理を実行させるようにすれば良い。このような態様によれば、AC/DCコンバータおよびDC/DCコンバータの各々に対してマスク回路を設ける態様に比較して要求される安全水準を低コストで実現することが可能になる。
【0009】
一般に、安全制御部とコンバータ制御部との通信はシリアルバスを介して行われる。このため、アクティブレベルの強制停止指示信号の出力と上記停止指示の出力とを同時に安全制御部に行わせたとしても上記予め定められた方のコンバータを先に停止させる(すなわち、時間的に優先させて停止させる)ことができる。なお、予め定められた方のコンバータの停止が確実に先になるように、強制停止指示信号を出力した後に、上記停止指示を出力する処理を安全制御部に実行させても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車載バッテリを充電する充電器において、要求される目標安全水準に応じたレベルでのリスク低減を効率的に実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態の充電器1Aの構成例を示す図である。
図2】充電器1Aが有するマスク回路60の構成例を示す図である。
図3】充電器1Aの動作例を示すタイミングチャートである。
図4】本発明の第2実施形態の充電器1Bの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(A:第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の充電器1Aの構成例を示す図である。
充電器1Aは、電気自動車やハイブリッド自動車など動力源として電動機を有する車両に搭載される車載充電器であり、上記電動機に電力を供給する車載バッテリ3を充電する装置である。より詳細に説明すると、充電器1Aは、一般家庭用の交流電源(すなわち、単相100Vの交流電源)である外部交流電源2に電源ケーブル等を介して接続され、外部交流電源2から供給される交流電力を直流電力に変換して車載バッテリ3を充電する。図1には、充電器1Aの他に、充電器1Aによる充電対象の車載バッテリ3と、車載バッテリ3の充電状況を監視する充電監視部4と、外部交流電源2とが図示されている。
【0013】
充電監視部4は、例えばBCU(Battery Control Unit)である。充電監視部4は、車載バッテリ3の充電状態(例えば電池残量等)を監視し、その監視結果を表すデータをCAN−BUS経由で充電器1Aに与える。また、充電監視部4は、車載バッテリ3の充電中に何らかの異常(車載バッテリ3に含まれるコンデンサの極板間電圧の異常な上昇や、天絡、地絡など)の発生の有無の監視も行う。そして、充電監視部4は、車載バッテリ3の充電が正常に行われている間は非アクティブレベル(例えば、Lowレベル)の異常検知信号ARを充電器1Aに与え、何らかの異常の発生(過剰に高い電圧の印加など)を検知したことを契機として異常検知信号ARの信号レベルをアクティブレベル(Highレベル)に切り替える。つまり、本実施形態の充電監視部4は、車載バッテリ3の充電中に異常の発生の有無を監視し、異常の発生を検知した場合には充電器1A(より正確には、後述する安全制御部50)への通知を行う異常検知手段の役割を果たす。なお、車載バッテリ3の充電状態の監視および充電中の異常監視については、既存の周知技術を適宜用いるようにすればよい。
【0014】
本実施形態の充電器1Aについての目標安全水準は「車載バッテリの充電中に何らかの異常が発生したとしても、少なくとも車載バッテリの破損を回避すること」である。本実施形態の充電器1Aは、この目標安全水準に応じたレベルでのリスク低減を、できるだけ低コストで実現できるように構成されている。図1に示すように、充電器1Aは、AC/DCコンバータ10、DC/DCコンバータ20、AC/DC制御部30、DC/DC制御部40、安全制御部50、およびマスク回路60を含んでいる。
【0015】
AC/DCコンバータ10は、外部交流電源2から供給される交流電力を直流電力に変換して出力する。AC/DCコンバータ10は、ダイオード110_1〜110_2、フライホイールダイオード110_3〜110_4、FET110_5〜110_6、平滑化コンデンサ110_7およびリアクトル110_8〜110_9により構成される。リアクトル110_8〜110_9は高調波を減衰させるために設けられている。ダイオード110_1〜110_2およびFET110_5〜110_6は、外部交流電源2から供給される交流電圧を整流して直流電圧を平滑化コンデンサ110_7に供給するPFC回路を構成している。FET110_5〜110_6の各々は、アクティブレベルの駆動信号をゲートに与えられるとオンとなり、非アクティブレベルの駆動信号をゲートに与えられるとオフとなる。
【0016】
平滑化コンデンサ110_7は、このPFC回路から出力された直流電圧を平滑化するために設けられた電解コンデンサである。フライホイールダイオード110_3〜110_4は、FET110_5〜110_6に逆並列接続されており、FET110_5〜110_6のオン/オフ切り替え時にリアクトル110_8〜110_9に蓄積された電磁エネルギーにより発生する電流を、入力電源(本実施形態では、外部交流電源2)側に還流させる。
【0017】
AC/DC制御部30は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、車載バッテリ3の充電状態に応じてAC/DCコンバータ10の作動制御を行う。より詳細に説明すると、AC/DC制御部30は、車載バッテリ3の充電状態に応じた好適な電圧または電流がAC/DCコンバータ10から出力されるように、FET110_5〜110_6の各々のゲートに与える駆動信号ga1〜ga2の信号レベルをアクティブレベル(例えば、Highレベル)から非アクティブレベル(例えば、Lowレベル)に、或いはその逆に切り替える。これにより、AC/DCコンバータ10の作動制御が実現される。
【0018】
DC/DCコンバータ20は、AC/DCコンバータ10に直列接続されている。DC/DCコンバータ20は、インバータ121および整流器122により構成される。インバータ121は、FET121_5〜121_8、フライホイールダイオード121_1〜121_4およびトランス121_9により構成される。インバータ121は、AC/DCコンバータ10の平滑化コンデンサ110_7に充電された直流電圧を電源電圧とし、この電源電圧をFET121_5〜121_8によってスイッチングすることにより、トランス121_9の1次巻線に交流電圧を出力する回路である。FET121_5〜121_8の各々も、アクティブレベルの駆動信号をゲートに与えられるとオンとなり、非アクティブレベルの駆動信号をゲートに与えられるとオフとなる。
【0019】
トランス121_9は、1次巻線に与えられた交流電圧に応じた交流電圧を2次巻線から整流器122に出力する。整流器122は、ダイオード122_1〜122_4により、トランス121_9の2次巻線から出力された交流電圧を整流して直流電圧を車載バッテリ3に供給する。
【0020】
DC/DC制御部40は、AC/DC制御部30と同様にCPUである。なお、以下では、AC/DC制御部30とDC/DC制御部40の両者を「コンバータ制御部」と総称する場合がある。DC/DC制御部40は、インバータ121に含まれるスイッチング素子(本実施形態では、FET121_5〜121_8)のオン/オフを切り替えるための駆動信号gb1〜gb4を出力する。これらスイッチング素子のスイッチング周期を車載バッテリ3の充電状態に応じて調整することで、DC/DCコンバータ20から車載バッテリ3へその充電状態に応じた好適な電圧または電流が供給される。図1に示すように、駆動信号gb1〜gb4の各々はマスク回路60を介して駆動信号Gb1〜Gb4として上記各スイッチング素子に与えられる。
【0021】
安全制御部50は、AC/DC制御部30と同様にCPUであり、シリアルバス(図1では図示略)を介してAC/DC制御部30とDC/DC制御部40とに接続されている。 安全制御部50は、充電監視部4からアクティブレベルの異常検知信号ARを受け取ったことを契機として安全確保のための制御を行う。より詳細に説明すると、安全制御部50は、非アクティブレベルの異常検知信号ARを充電監視部4から受け取っている間、非アクティブレベルの強制停止指示信号SSをマスク回路60に出力する。そして、安全制御部50は、アクティブレベルの異常検知信号ARを受け取ったことを契機として強制停止指示信号SSの信号レベルをアクティブレベルに切り替え、その後、AC/DC制御部30に対してシリアルバス経由でAC/DCコンバータ10の停止を指示するとともに、DC/DC制御部40に対してシリアルバス経由でDC/DCコンバータ20の停止を指示する。
【0022】
このような安全制御を安全制御部50に行わせる理由は、前述した目標安全水準(すなわち、車載バッテリの充電中に何らかの異常が発生したとしても、少なくとも車載バッテリの破損を回避すること)に応じたレベルのリスク低減をできるだけ低コストで実現するためである。このような安全制御を安全制御部50に実行させることで、上記目標安全水準に応じたレベルのリスク低減を実現できる理由については後に詳細に説明する。
【0023】
マスク回路60は、非アクティブレベルの強制停止指示信号SSを受け取っている間はDC/DC制御部40の出力する駆動信号gb1〜gb4をそのまま駆動信号Gb1〜Gb4として通過させ、強制停止指示信号SSがアクティブレベルとなったことを契機として駆動信号Gb1〜Gb4を遮断(すなわち、駆動信号Gb1〜Gb4を非アクティブレベルに維持)し、インバータ121を強制停止させる回路である。つまり、本実施形態では、車載バッテリ3の充電中に何らかの異常が発生すると、まず、DC/DCコンバータ20の停止を時間的に優先させ、その後、AC/DCコンバータ10を停止させる。
【0024】
マスク回路60の具体的な回路構成としては種々の構成が考えられる。例えば、図2(a)に示すように、インバータ121に含まれる複数のスイッチング素子の各々に対して1つずつ設けられたANDゲートによりマスク回路60を構成する態様が考えられる。なお、図2(a)では、インバータ121に含まれる4つのFETのうちのFET121_5に対応する構成のみが図示されている。図2(a)に示すように、ANDゲートの一方の入力端子には、強制停止指示信号SSを反転器により論理反転させた信号が与えられ、他方の入力端子には当該ANDゲートに対応するスイッチング素子のオン/オフ制御のためにDC/DC制御部40から出力された駆動信号が与えられる。このため、安全制御部50から非アクティブレベルの強制停止指示信号SSが出力されている間は、DC/DC制御部40から出力された駆動信号gb1は上記ANDゲートを通過し、駆動信号Gb1としてFET121_5のゲートに与えられる。そして、強制停止指示信号SSが非アクティブレベルからアクティブレベルに切り替わると、DC/DC制御部40から出力された駆動信号gb1はマスク回路60において遮断され、駆動信号Gb1はLowレベルに維持される。このため、FET121_5はオフ状態に維持される。FET121_6〜121_8についても同様である。FET121_5〜121_8が全てオフ状態に維持されると、インバータ121は停止する。
【0025】
マスク回路60の他の構成例としては、インバータ121に含まれるスイッチング素子に各々対応するパルストランス62、整流器64およびスイッチング素子66と、スイッチング素子66を介してパルストランス62の一次側へ給電する電源68によりマスク回路60を構成する態様が考えられる。なお、図2(b)には、図2(a)と同様に、FET121_5に対応する構成のみが図示されている。パルストランス62の一次巻線の一端にはDC/DC制御部40の出力する駆動信号gb1が与えられ、他端はスイッチング素子66を介して電源68に接続されている。スイッチング素子66のオン/オフは強制停止指示信号SSを論理反転させた信号(図2(b)にて符号/SSで示す信号)によって切り換えられる。すなわち、強制停止指示信号SSが非アクティブレベルであればスイッチング素子66はオンとなり、逆にアクティブレベルであればスイッチング素子66はオフとなる。
【0026】
スイッチング素子66がオンとなっていれば、DC/DC制御部40の出力する駆動信号gb1に応じてパルストランス62の二次巻線に発生する電圧が整流器64によって整流され、FET121−5にそのオン/オフを切り替える駆動信号Gb1として与えられる。これに対して、スイッチング素子66がオフであれば、パルストランス62の一次側への給電が遮断され、駆動信号Gb1も遮断される。図2(a)に示すようにANDゲートを用いた構成のマスク回路60では、ANDゲートが破損した場合にインバータ121への駆動信号Gb1〜Gb4の供給を遮断できない虞がある。これに対して、図2(b)に示すようにパルストランスを用いた構成のマスク回路60を採用すれば、インバータ121への駆動信号Gb1〜Gb4の供給を確実に遮断し、DC/DCコンバータ20を確実に強制停止させることができる。
【0027】
図3は、充電器1Aの動作例を示すタイミングチャートである。図3に示すように、車載バッテリ3の充電中に、ある時刻t0において何らかの異常が発生すると、充電監視部4により異常の発生が検知され、充電監視部4は異常検知信号ARを非アクティブレベルからアクティブレベルへ切り替える。異常検知信号ARが非アクティブレベルからアクティブレベルに切り替わると、安全制御部50は、まず、強制停止指示信号SSを非アクティブレベルからアクティブレベルに切り替え、その後(例えば、Δtだけ遅れて)、AC/DC制御部30およびDC/DC制御部40に停止指示を与える。図3に示すように、時刻t0から時間Δtが経過するまでは、AC/DC制御部30およびDC/DC制御部40は駆動信号の出力を継続するのであるが、強制停止指示信号SSが非アクティブレベルからアクティブレベルに切り替わると、駆動信号gb1〜gb4はマスク回路60によって遮断されるため、DC/DCコンバータ20は即座に停止し、AC/DCコンバータ10は時間Δtだけ遅れて停止する。
【0028】
このように、安全制御部50は、車載バッテリ3の充電中に何らかの異常が発生すると、DC/DCコンバータ20を優先的に停止させるため、車載バッテリ3の過充電等を確実に回避し、車載バッテリ3の破損を確実に回避することができる。もっとも、このような制御を行うとAC/DCコンバータ10に含まれる平滑化コンデンサ110_7に過剰に高い電圧がかかり、平滑化コンデンサ110_7の破損を免れない場合がある。そこで、仮に平滑化コンデンサ110_7の破損が発生したとしても、その影響が周囲に及ばないようにするために、充電器1Aの筐体を堅牢に構成しておくことが好ましい。
【0029】
AC/DCコンバータ用とDC/DCコンバータ用の各マスク回路を設けるようにすれば(すなわち、異常発生時にAC/DCコンバータとDC/DCコンバータの両方を同時に強制停止させる構成とすれば)、平滑化コンデンサ110_7の破損を回避しつつ、車載バッテリ3の破損を回避できることは言うまでもない。しかし、このような構成では、充電器1Aに対して要求される目標安全水準に対してオーバースペックとなってしまい、充電器1Aと比較してAC/DCコンバータ用のマスク回路を設ける分だけコストも上昇する。つまり、本実施形態の充電器1Aによれば、「充電中に何らかの異常が発生した場合であっても、少なくとも車載バッテリの破損を回避する」という目標安全水準に応じたレベルでのリスク低減を低コストで実現することが可能になる。
【0030】
(B:第2実施形態)
第1実施形態では、「充電中に何らかの異常が発生した場合であっても、少なくとも車載バッテリの破損を回避する」という目標安全水準に応じたリスク低減を低コストで実現するために、車載バッテリ3の充電中に異常が発生した場合には、DC/DCコンバータ20の停止をAC/DCコンバータ10の停止よりも優先させた。しかし、車載バッテリ3の保護よりもAC/DCコンバータ10の平滑化コンデンサ110_7の保護が優先される場合、すなわち、要求される目標安全水準が「充電中に何らかの異常が発生した場合であっても、少なくとも充電器の破損(より正確には、AC/DCコンバータに含まれる平滑化コンデンサの破損)を回避すること」である場合には、AC/DCコンバータ10の停止をDC/DCコンバータ20の停止よりも優先させれば良い。具体的には、図1に示す充電器1Aに代えて図4に示す充電器1Bを用いるようにすれば良い。
【0031】
充電器1Bの構成は、電圧監視部70を有する点と、AC/DC制御部30の出力する駆動信号ga1〜ga2をマスク回路60を介して駆動信号Ga1〜Ga2としてAC/DCコンバータ10に与えるようにした点と、電圧監視部70の出力する異常検知信号ARがアクティブレベルに切り替わったことを契機として安全制御部50にアクティブレベルの強制停止指示信号SSを出力させる点が充電器1Aの構成と異なる。なお、図4におけるマスク回路60の構成として、図2(a)或いは図2(b)における駆動信号gb1を駆動信号ga1と読み替え、駆動信号Gb1を駆動信号Ga1と読み替えた構成が考えられる。
【0032】
電圧監視部70は、平滑化コンデンサ110_7の極板間電圧を計測する電圧センサと、この電圧センサの出力電圧を所定の閾値電圧と比較するコンパレータと、この閾値電圧を発生させて上記コンパレータに与える定電圧発生回路とを含んでいる(図4では、何れも図示略)。例えば、上記コンパレータは、電圧センサの出力電圧が上記閾値電圧未満であればLowレベルの信号を出力し、逆に電圧センサの出力電圧が上記閾値電圧以上であればHighレベルの信号を出力する、といった具合である。このコンパレータの出力信号が異常検知信号ARとして安全制御部50に与えられる。つまり、電圧監視部70は、車載バッテリ3の充電中に異常の発生の有無を監視し、異常の発生を検知した場合には安全制御部50への通知を行う異常検知手段の役割を果たす。なお、上記閾値電圧については、平滑化コンデンサ110_7の耐圧に応じて定めておけば良い。
【0033】
本実施形態によれば、車載バッテリ3の充電中に平滑化コンデンサ110_7の極板間電圧が上記閾値電圧に達するといった異常が発生した場合に、AC/DCコンバータ10を優先的に停止させ、平滑化コンデンサ110_7の破損を確実に回避することができる。この場合、AC/DCコンバータ10の平滑化コンデンサ110_7を確実に保護することができる一方、DC/DCコンバータ20の停止が遅れるため、車載バッテリ3の破損を招く虞がある。しかし、車載バッテリ3の交換は充電器全体の交換に比較して容易かつ低コストで行えると考えられる。したがって、コスト面などから車載バッテリ3の保護よりも充電器全体の保護が優先される場合には、本実施形態を採用する方が好ましい。本実施形態によっても、AC/DCコンバータとDC/DCコンバータの両方を強制停止させる態様に比較して、要求される目標安全水準に応じたレベルでのリスク低減を低コストで実現することが可能になる。
【0034】
(C:変形)
以上本発明の第1および第2実施形態について説明したが、これら実施形態を以下のように変形しても良い。
(1)上記各実施形態では、AC/DCコンバータ10とDC/DCコンバータ20のうちの一方を強制停止させるためのマスク回路60を設け、マスク回路60により当該一方を強制停止させた後に、AC/DC制御部30(或いはDC/DC制御部40)経由で他方を停止させた。すなわち、上記各実施形態では、AC/DCコンバータ10とDC/DCコンバータ20のうちの一方を、ハードウェア構成的および時間的の両面で優先的に停止させた。しかし、安全制御部50とAC/DC制御部30(或いはDC/DC制御部40)の間のデータの授受はシリアルバスを介して行われるため、強制停止指示信号の非アクティブレベルからアクティブレベルへの切り替えと同時にAC/DC制御部30(或いはDC/DC制御部40)に対する停止指示を与えたとしても、前者による強制停止処理の方が先行して実行される。このため、強制停止指示信号の非アクティブレベルからアクティブレベルへの切り替えとAC/DC制御部30(或いはDC/DC制御部40)に対して停止指示を与えることとを同時に安全制御部50に実行させても良い。
【0035】
また、マスク回路60を省略し、AC/DCコンバータ10とDC/DCコンバータ20のうち優先的に停止させるものとして定められた方についても、AC/DC制御部30(或いはDC/DC制御部40)経由で停止させるようにしても良い。この様な態様であってもAC/DC制御部30とDC/DC制御部40のうちの一方(すなわち、AC/DCコンバータ10とDC/DCコンバータ20のうち優先的に停止させる方の作動制御を行うコンバータ制御部)に停止指示を与えた後、他方の作動制御を行うコンバータ制御部に停止指示を与えることで、AC/DCコンバータ10とDC/DCコンバータ20のうちの予め定められた方を時間的に優先させて停止させることができるからである。
【0036】
(2)上記第1および第2実施形態では、AC/DCコンバータ10の作動制御を行うAC/DC制御部30とは別個に、DC/DCコンバータ20の作動制御を行うDC/DC制御部40を設けた。しかし、AC/DCコンバータ10の作動制御役割とDC/DCコンバータ20の作動制御を行う役割とを兼ね備えた1つのCPUをコンバータ制御部として、AC/DC制御部30およびDC/DC制御部40の代わりに設けても良い。また、上記コンバータ制御部の役割を安全制御部に兼ねさせても良い。要は、外部交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して出力するAC/DCコンバータと、AC/DCコンバータの出力する直流電力を変圧して車載バッテリ3に供給するDC/DCコンバータと、AC/DCコンバータおよびDC/DCコンバータの作動制御を車載バッテリの充電状況に応じて行う安全制御部であって、車載バッテリ3の充電中に異常が発生したことを通知する異常検知信号ARの受信を契機としてAC/DCコンバータとDC/DCコンバータのうちの予め定められた方を先に停止させ、その後、他方を停止させる(すなわち、予め定められた方のコンバータを優先的に停止させる)安全制御部と、を組み合わせた車載充電器であれば良い。
【0037】
(3)上記各実施形態では、車載充電器への本発明の適用例を説明したが、充電スタンドに設置される充電器に本発明を適用しても勿論良い。充電スタンドに設置される充電器であっても、充電中の異常発生時に車載バッテリや平滑化コンデンサの保護が要請されることに変わりはなく、目標安全水準に応じたレベルでのリスク低減を低コストで実現できることが好ましいことに変わりはないからである。
【符号の説明】
【0038】
1A、1B…充電器、2…外部交流電源、3…車載バッテリ、4…充電監視部、10…AC/DCコンバータ、20…DC/DCコンバータ、30…AC/DC制御部、40…DC/DC制御部、50…安全制御部、60…マスク回路、70…電圧監視部。
図1
図2
図3
図4