【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により限定されるものではない。
【0088】
各実施例に係る複合生成物及びその前駆体について、以下に示す方法により評価を行った。
(1)前駆体の複合塩化度
前駆体を炭酸ガス流通下で100℃に加熱して反応させることで水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、酸化リチウムを炭酸リチウムに変換し、変換後の試料のC量を元素分析することで炭酸リチウム量を算定した。炭酸リチウム量より、複合塩化されていないLiイオンの対になる対アニオンのモル当量を求め、複合塩化度を算出した。ただし、複合塩化されたLiを含む試料を炭酸ガス流通下で100℃に加熱処理した場合、処理の前後の試料をX線回折法で分析した結果、複合塩化したLiの一部も炭酸ガスと反応して炭酸リチウムになっていることが分かっており、実施例の試料の真の複合塩化度は、本文中及び表に記載する測定値よりも大きいと考えられる。
【0089】
(2)前駆体中のTiに対するLi、Laの含有比率(Li:La:Ti)
ICP−AES法(誘導結合プラズマ発光分光分析法)による金属元素分析の測定結果から算出した。
(3)焼成時の質量変化率
焼成前の前駆体の質量と焼成後に得られた複合生成物の質量とを測定し、以下の式から質量変化率を算出した。
質量変化率(%)=(複合生成物質量−前駆体質量)×100/前駆体質量
なお、質量変化率の絶対値が小さいほど焼成時の質量減少が小さいため好ましく、10%以下を合格とした。
(4)前駆体及び複合生成物の結晶構造解析
CuのKα線を用いた粉末X線回折測定により、試料の結晶構造を同定した。
【0090】
[実施例1]
(1)前駆体の作製
(同時沈殿処理工程)
塩化ランタン7水和物を水に溶解させて得た溶液を四塩化チタン水溶液と混合し、La濃度0.20mmol/g、Ti濃度3.10mmol/g、Cl濃度8.67mmol/gの水溶液を調製した。この水溶液は透明であり、室温で放置しても沈殿を生成しなかった。この水溶液250gを28質量%アンモニア水550g中に噴霧すると沈殿が生成した。沈殿を分離し、水で洗浄し、200℃で乾燥し、機械的に解砕した。該沈殿について粉末X線回折測定を行ったところ、
図1(実施例1沈殿体)に示すように、顕著な回折ピークは認められなかった。
【0091】
[実施例1−1]
(水熱合成処理)
上記沈殿9.82gを耐圧容器に入れ、4N水酸化リチウム水溶液19.95mL(水酸化リチウム79.8mmol相当)を加えた。上記耐圧容器を密封し、150℃に設定した恒温槽で5時間加熱して水熱処理を行った。放冷後、沈殿を分離し、200℃で乾燥させることで固体状の前駆体を得た。
ICP−AES法による金属元素分析の結果、前駆体中にはリチウムが5.0質量%、ランタンが8.6質量%、チタンが44.9質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.77、La/Ti=0.066)。複合塩化度は56%であった。
また、得られた前駆体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図1(実施例1−1前駆体)に示すように、(Li
1.81,H
0.19)Ti
2O
5・2H
2O[ICDD番号00−047−0123]と(Li
2TiO
3)
1.333[ICDD番号01−075−0614]に比定される回折線が検出され、Li
aH
bTi
cO
d(a>0、b≧0、c>0、d>0、a+b+3c≦2d≦a+b+4c)で表される複合塩が含まれていることがわかった。また、複合塩の最強の回折線は2θが43〜44度の付近にあり、この回折線の半値全幅は1.1度(結晶子の大きさは8nm相当)であった。
【0092】
(2)複合生成物の作製
(焼成)
前駆体を空気中で850℃で12時間焼成し、焼成体を得た。一連の作製条件を表1に示す。
焼成による質量変化率は―4.1%であった。金属元素分析の結果、リチウムが5.3質量%、ランタンが9.0質量%、チタンが47.0質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.77、La/Ti=0.066)。
また、該焼成体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図2(実施例1−1焼成体)に示すように、スピネル相のLTO(Li
4Ti
5O
12)とペロブスカイト相のLLTO(Li
3xLa
2/3−xTiO
3)とに相当する回折線が検出された。また、2θ=43〜44度の回折線の半値全幅は0.15度(結晶子の大きさは59nm相当)であった。
実施例1−1における、チタン酸リチウム系複合生成物の製造方法のフローチャートを
図7に示す。
【0093】
[実施例1−2]
(1)前駆体の作製
(水熱合成処理)
実施例1の同時沈殿処理工程で生成した沈殿8.73gを耐圧容器に入れ、4N水酸化リチウム水溶液20.69mL(水酸化リチウム82.8mmol相当)を加えた。上記耐圧容器を密封し、150℃に設定した恒温槽で5時間加熱して水熱処理を行った。放冷後、沈殿を分離し、200℃で乾燥させることで固体状の前駆体を得た。
ICP−AES法による金属元素分析の結果、前駆体中にはリチウムが4.9質量%、ランタンが7.1質量%、チタンが38.5質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.88、La/Ti=0.064)。複合塩化度は47%であった。
また、該前駆体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図1(実施例1−2前駆体)に示すように(Li
1.81,H
0.19)Ti
2O
5・2H
2O[ICDD番号00−047−0123]と(Li
2TiO
3)
1.333[ICDD番号01−075−0614]に比定される回折線が検出され、Li
aH
bTi
cO
d(a>0、b≧0、c>0、d>0、a+b+3c≦2d≦a+b+4c)で表される複合塩が含まれていることがわかった。また、複合塩の最強の回折線は2θが43〜44度の付近にあり、この回折線の半値全幅は1.1度(結晶子の大きさは8nm相当)であった。
【0094】
(2)複合生成物の作製
(焼成)
前駆体を空気中で850℃で12時間焼成し、焼成体を得た。一連の作製条件を表1に示す。
焼成による質量変化率は―5.3%であった。金属元素分析の結果、リチウムが5.8質量%、ランタンが8.3質量%、チタンが45.1質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.89、La/Ti=0.064)。
また、該焼成体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図2(実施例1−2焼成体)に示すように、スピネル相のLTO(Li
4Ti
5O
12)とペロブスカイト相のLLTO(Li
3xLa
2/3−xTiO
3)とに相当する回折線が検出された。また、2θ=43〜44度の回折線の半値全幅は0.13度(結晶子の大きさは67nm相当)であった。
【0095】
[実施例1−3]
(1)前駆体の作製
(水熱合成処理)
実施例1の同時沈殿処理工程で生成した沈殿9.82gを耐圧容器に入れ、4N水酸化リチウム水溶液18.29mL(水酸化リチウム73.2mmol相当)を加えた。上記耐圧容器を密封し、150℃に設定した恒温槽で5時間加熱して水熱処理を行った。放冷後、沈殿を分離し、200℃で乾燥させることで固体状の前駆体を得た。
ICP−AES法による金属元素分析の結果、前駆体中にはリチウムが4.8質量%、ランタンが8.6質量%、チタンが45.5質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.73、La/Ti=0.065)。複合塩化度は54%であった。
また、該前駆体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図1(実施例1−3前駆体)に示すように(Li
1.81,H
0.19)Ti
2O
5・2H
2O[ICDD番号00−047−0123]と(Li
2TiO
3)
1.333[ICDD番号01−075−0614]に比定される回折線が検出され、Li
aH
bTi
cO
d(a>0、b≧0、c>0、d>0、a+b+3c≦2d≦a+b+4c)で表される複合塩が含まれていることがわかった。また、複合塩の最強の回折線は2θが43〜44度の付近にあり、この半値全幅は1.2度(結晶子の大きさは8nm相当)であった。
【0096】
(2)複合生成物の作製
(焼成)
前駆体を空気中で850℃で12時間焼成し、焼成体を得た。一連の作製条件を表1に示す。
焼成による質量変化率は−4.0%であった。金属元素分析の結果、リチウムが5.1質量%、ランタンが9.0質量%、チタンが47.6質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.73、La/Ti=0.065)。
また、該焼成体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図2(実施例1−3焼成体)に示すように、スピネル相のLTO(Li
4Ti
5O
12)とペロブスカイト相のLLTO(Li
3xLa
2/3−xTiO
3)とに相当する回折線が検出された。また、2θ=43〜44度の回折線の半値全幅は0.15度(結晶子の大きさは60nm相当)であった。
【0097】
[実施例2]
(1)前駆体の作製
(同時沈殿処理工程)
塩化ランタン7水和物を水に溶解させて得た溶液を四塩化チタン水溶液と混合し、La濃度0.030mmol/g、Ti濃度3.40mmol/g、Cl濃度8.91mmol/gの水溶液を調製した。この水溶液は透明であり、室温で放置しても沈殿を生成しなかった。この水溶液200gを28質量%アンモニア水540g中に噴霧すると沈殿が生成した。沈殿を分離し、水で洗浄し、機械的に解砕した。該沈殿について粉末X線回折測定を行ったところ、顕著な回折ピークは認められなかった。
【0098】
[実施例2−1]
(水熱合成処理工程)
上記沈殿8.84gを耐圧容器に入れ、4N水酸化リチウム水溶液22.02mL(水酸化リチウム88.1mmol相当)を加えた。上記耐圧容器を密封し、150℃に設定した恒温槽で5時間加熱して水熱処理を行った。放冷後、沈殿を分離し、200℃で乾燥させることで固体状の前駆体を得た。
【0099】
金属元素分析の結果、前駆体中にはリチウムが5.9質量%、ランタンが1.2質量%、チタンが48.0質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.84、La/Ti=0.009)。複合塩化度は56%であった。
また、該前駆体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図3(実施例2−1前駆体)に示すように(Li
1.81,H
0.19)Ti
2O
5・2H
2O[ICDD番号00−047−0123]と(Li
2TiO
3)
1.333[ICDD番号01−075−0614]に比定される回折線が検出され、Li
aH
bTi
cO
d(a>0、b≧0、c>0、d>0、a+b+3c≦2d≦a+b+4c)で表される複合塩が含まれていることがわかった。また、複合塩の最強の回折線は2θが43〜44度の付近にあり、この回折線の半値全幅は1.4度(結晶子の大きさは7nm相当)であった。
【0100】
(2)複合生成物の作製
実施例1と同様の手順で焼成体を得た。一連の作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
焼成による質量変化率は―3.8%であった。金属元素分析の結果、リチウムが6.6質量%、ランタンが1.3質量%、チタンが53.1質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.85、La/Ti=0.009)。また、該焼成体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図4(実施例2−1焼成体)に示すように、スピネル相のLTO(Li
4Ti
5O
12)とペロブスカイト相のLLTO(Li
3xLa
2/3−xTiO
3)とに相当する回折線が検出された。また、2θ=43〜44度の回折線の半値全幅は0.16度(結晶子の大きさは57nm相当)であった。
【0101】
[実施例2−2]
(1)前駆体の作製
(水熱合成処理)
実施例2の同時沈殿処理工程で生成した沈殿8.84gを耐圧容器に入れ、4N水酸化リチウム水溶液21.07mL(水酸化リチウム84.3mmol相当)を加えた。上記耐圧容器を密封し、150℃に設定した恒温槽で5時間加熱して水熱処理を行った。放冷後、沈殿を分離し、200℃で乾燥させることで固体状の前駆体を得た。
ICP−AES法による金属元素分析の結果、前駆体中にはリチウムが5.5質量%、ランタンが1.2質量%、チタンが47.7質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.79、La/Ti=0.009)。複合塩化度は62%であった。
また、該前駆体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図3(実施例2−2前駆体)に示すように(Li
1.81,H
0.19)Ti
2O
5・2H
2O[ICDD番号00−047−0123]と(Li
2TiO
3)
1.333[ICDD番号01−075−0614]に比定される回折線が検出され、Li
aH
bTi
cO
d(a>0、b≧0、c>0、d>0、a+b+3c≦2d≦a+b+4c)で表される複合塩が含まれていることがわかった。また、複合塩の最強の回折線は2θが43〜44度の付近にあり、この回折線の半値全幅は1.2度(結晶子の大きさは8nm相当)であった。
【0102】
(2)複合生成物の作製
(焼成)
前駆体を空気中で850℃で12時間焼成し、焼成体を得た。一連の作製条件を表1に示す。
焼成による質量変化率は―2.2%であった。金属元素分析の結果、リチウムが6.0質量%、ランタンが1.3質量%、チタンが51.0質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.81、La/Ti=0.009)。
また、該焼成体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図4(実施例2−2焼成体)に示すように、スピネル相のLTO(Li
4Ti
5O
12)とペロブスカイト相のLLTO(Li
3xLa
2/3−xTiO
3)とに相当する回折線が検出された。また、2θ=43〜44度の回折線の半値全幅は0.14度(結晶子の大きさは65nm相当)であった。
【0103】
[実施例3]
(1)前駆体の作製
(同時沈殿処理工程)
塩化ランタン7水和物を水に溶解させて得た溶液を四塩化チタン水溶液と混合し、La濃度0.50mmol/g、Ti濃度2.59mmol/g、Cl濃度8.23mmol/gの水溶液を調製した。この水溶液は透明であり、室温で放置しても沈殿を生成しなかった。この水溶液163gを28質量%アンモニア水370g中に噴霧すると沈殿が生成した。沈殿を分離し、水で洗浄し、200℃で乾燥し、機械的に解砕した。該沈殿について粉末X線回折測定を行ったところ、回折ピークは認められなかった。
【0104】
(水熱合成処理工程)
上記沈殿8.49gを耐圧容器に入れ、4N水酸化リチウム水溶液10.74mL(水酸化リチウム43.0mmol相当)と純水12.6gを加えた。上記耐圧容器を密封し、150℃に設定した恒温槽で5時間加熱して水熱処理を行った。放冷後、沈殿を分離し、200℃で乾燥させることで固体状の前駆体を得た。
ICP−AES法による金属元素分析の結果、前駆体中にはリチウムが3.2質量%、ランタンが20.1質量%、チタンが36.7質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.59、La/Ti=0.19)。複合塩化度は32%であった。
また、該前駆体について粉末X線回折測定を行ったところ、(Li
1.81,H
0.19)Ti
2O
5・2H
2O[ICDD番号00−047−0123]と(Li
2TiO
3)
1.333[ICDD番号01−075−0614]に比定される回折線が検出され、Li
aH
bTi
cO
d(a>0、b≧0、c>0、d>0、a+b+3c≦2d≦a+b+4c)で表される複合塩が含まれていることがわかった。また、複合塩の最強の回折線は2θが43〜44度の付近にあり、この回折線の半値全幅は0.93度(結晶子の大きさは10nm相当)であった。
【0105】
(2)複合生成物の作製
(焼成)
前駆体を空気中で850℃で12時間焼成し、焼成体を得た。一連の作製条件を表1に示す。
焼成による質量変化率は−4.6%であった。金属元素分析の結果、リチウムが3.5質量%、ランタンが21.9質量%、チタンが39.9質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.61、La/Ti=0.19)。
また、該焼成体について粉末X線回折測定を行ったところ、スピネル相のLTO(Li
4Ti
5O
12)とペロブスカイト相のLLTO(Li
3xLa
2/3−xTiO
3)とに相当する回折線が検出された。また、2θ=43〜44度の回折線の半値全幅は0.17度(結晶子の大きさは51nm相当)であった。
【0106】
[実施例4](第2の前駆体の製造方法の変形例)
(1)前駆体の作製
(沈殿処理工程)
Ti濃度3.44mmol/g、Cl濃度8.89mmol/gからなる四塩化チタン水溶液300gを28質量%アンモニア水700g中に噴霧すると沈殿が生成した。沈殿を分離し、水で洗浄し、200℃で乾燥し、機械的に解砕した。該沈殿について粉末X線回折測定を行ったところ、顕著な回折ピークは認められなかった。
【0107】
(第1ソルボサーマル処理工程)
上記沈殿8.82gを耐圧容器に入れ、4N水酸化リチウム水溶液50.09mL(水酸化リチウム0.2mol相当)を加えた。上記耐圧容器を密封し、120℃に設定した恒温槽で12時間加熱して水熱処理を行い、放冷した。
【0108】
(第2ソルボサーマル処理工程)
上記第1ソルボサーマル処理を行った耐圧容器の内容物を攪拌し、0.106molの酢酸を添加した。また、La濃度0.38mmol/gからなる酢酸ランタン水溶液を別途調製した。この水溶液は透明であり、室温で放置しても沈殿を生成しなかった。上記耐圧容器の内容物の攪拌を継続し、この水溶液17gを添加した。その後、耐圧容器を密封し、180℃に設定した恒温槽で12時間加熱して水熱処理を行った。自然放冷後、沈殿を分離し、水:2−プロパノール混合溶媒を用いて洗浄し、200℃で乾燥させることで固体状の前駆体を得た。
ICP−AES法による金属元素分析の結果、前駆体中にはリチウムが4.7質量%、ランタンが7.7質量%、チタンが44.6質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.73、La/Ti=0.059)。複合塩化度は54%であった。
また、該前駆体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図5(実施例4前駆体)に示すようにLi
4Ti
5O
12[ICDD番号00−049−0207]と(Li
2TiO
3)
1.333[ICDD番号01−075−0614]に比定される回折線が検出された。また、複合塩の最強の回折線は2θが43〜44度の付近にあり、この回折線の半値全幅は1.2度(結晶子の大きさは8nm相当)であった。
【0109】
(2)複合生成物の作製
(焼成)
実施例1と同様の手順で焼成体を得た。一連の作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
焼成による質量変化率は―5.9%であった。金属元素分析の結果、リチウムが5.2質量%、ランタンが8.3質量%、チタンが47.9質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.75、La/Ti=0.060)。また、該焼成体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図6(実施例4焼成体)に示すように、スピネル相のLTO(Li
4Ti
5O
12)とペロブスカイト相のLLTO(Li
3xLa
2/3−xTiO
3)に相当する回折線が検出された。また、
2θ=43〜44度の回折線の半値全幅は0.17度(結晶子の大きさは51nm相当)であった。
実施例4における、チタン酸リチウム系複合生成物の製造方法のフローチャートを
図8に示す。
【0110】
[実施例5−1](第3の前駆体の製造方法)
(1)前駆体の作製
(第1ソルボサーマル処理工程)
実施例1の同時沈殿処理工程で生成した沈殿9.28gを耐圧容器に入れ、4N水酸化リチウム水溶液43.59mL(水酸化リチウム0.17mol相当)を加えた。上記耐圧容器を密封し、120℃に設定した恒温槽で12時間加熱して水熱処理を行い、放冷した。
【0111】
(第2ソルボサーマル処理工程)
上記第1ソルボサーマル処理を行った耐圧容器の内容物を攪拌し、0.103molの酢酸を添加した。耐圧容器を密封し、180℃に設定した恒温槽で12時間加熱して水熱処理を行った。自然放冷後、沈殿を分離し、水:2−プロパノール混合溶媒を用いて洗浄し、200℃で乾燥させることで固体状の前駆体を得た。
ICP−AES法による金属元素分析の結果、前駆体中にはリチウムが4.8質量%、ランタンが8.3質量%、チタンが43.3質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.76、La/Ti=0.066)。複合塩化度は64%であった。
また、該前駆体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図5(実施例5−1前駆体)に示すようにLi
4Ti
5O
12[ICDD番号00−049−0207]と(Li
2TiO
3)
1.333[ICDD番号01−075−0614]に比定される回折線が検出された。また、複合塩の最強の回折線は2θが43〜44度の付近にあり、この回折線の半値全幅は1.1度(結晶子の大きさは8nm相当)であった。
【0112】
(2)複合生成物の作製
(焼成)
実施例1と同様の手順で焼成体を得た。一連の作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
焼成による質量変化率は―3.1%であった。金属元素分析の結果、リチウムが5.4質量%、ランタンが9.0質量%、チタンが47.5質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.79、La/Ti=0.065)。また、該焼成体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図6(実施例5−1焼成体)に示すように、スピネル相のLTO(Li
4Ti
5O
12)とペロブスカイト相のLLTO(Li
3xLa
2/3−xTiO
3)に相当する回折線が検出された。また、2θ=43〜44度の回折線の半値全幅は0.23度(結晶子の大きさは37nm相当)であった。
実施例5−1、5−2における、チタン酸リチウム系複合生成物の製造方法のフローチャートを
図9に示す。
【0113】
[実施例5−2](第3の前駆体の製造方法)
(1)前駆体の作製
(第1ソルボサーマル処理工程)
実施例3の同時沈殿処理工程で生成した沈殿9.58gを耐圧容器に入れ、4N水酸化リチウム水溶液39.58mL(水酸化リチウム0.16mol相当)を加えた。上記耐圧容器を密封し、120℃に設定した恒温槽で12時間加熱して水熱処理を行い、放冷した。
【0114】
(第2ソルボサーマル処理工程)
上記第1ソルボサーマル処理を行った耐圧容器の内容物を攪拌し、0.108molの酢酸を添加した。耐圧容器を密封し、180℃に設定した恒温槽で12時間加熱して水熱処理を行った。自然放冷後、沈殿を分離し、水:2−プロパノール混合溶媒を用いて洗浄し、200℃で乾燥させることで固体状の前駆体を得た。
ICP−AES法による金属元素分析の結果、前駆体中にはリチウムが3.7質量%、ランタンが19.4質量%、チタンが36.1質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.70、La/Ti=0.185)。複合塩化度は37%であった。
また、該前駆体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図5(実施例5−2前駆体)に示すように(Li
2TiO
3)
1.333[ICDD番号01−075−0614]に比定される回折線が検出された。また、複合塩の最強の回折線は2θが43〜44度の付近にあり、この回折線の半値全幅は1.4度(結晶子の大きさは7nm相当)であった。
【0115】
(2)複合生成物の作製
(焼成)
実施例1と同様の手順で焼成体を得た。一連の作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
焼成による質量変化率は―5.7%であった。金属元素分析の結果、リチウムが4.3質量%、ランタンが21.7質量%、チタンが41.2質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.72、La/Ti=0.182)。また、該焼成体について粉末X線回折測定を行ったところ、
図6(実施例5−2焼成体)に示すように、スピネル相のLTO(Li
4Ti
5O
12)とペロブスカイト相のLLTO(Li
3xLa
2/3−xTiO
3)に相当する回折線が検出された。また、2θ=43〜44度の回折線の半値全幅は0.24度(結晶子の大きさは36nm相当)であった。
【0116】
[実施例6](第4の前駆体の製造方法)
(1)前駆体の作製
(混合工程)
ランタン源に水酸化ランタン0.380g、チタン源に粒径80nmの二酸化チタン微粒子15.973gを用い(モル比でLa:Ti=0.010:1.000)、秤量してジルコニア製のボールミルジャーに入れ、ジルコニアボール及びアセトンを加えて遊星ボールミル処理を400rpmで4時間行った。その後、80℃で12時間乾燥し溶媒を揮発させ、粉末をメノウ乳鉢で粉砕混合し、得られた粉末を200℃で3時間乾燥させた。
【0117】
(水熱処理工程)
上記混合物8.177gを耐圧容器に入れ、4N水酸化リチウム水溶液20.2mL(水酸化リチウム80.8mmol相当)を加えた。上記耐圧容器を密封し、180℃に設定した恒温槽で15時間加熱して水熱処理を行った。100℃まで放冷後、密封容器付属の気相側の弁を徐々に開放して内容物から液相を除き、残った沈殿を回収して200℃で3時間乾燥させることで固体状の前駆体を得た。得られた前駆体の複合塩化度は35%であった。
また、該前駆体について粉末X線回折測定を行ったところ、(Li
2TiO
3)
1.333[ICDD番号01−075−0614]に比定される回折線が検出され、Li
aH
bTi
cO
d(a>0、b≧0、c>0、d>0、a+b+3c≦2d≦a+b+4c)で表される複合塩が含まれていることがわかった。評価結果を表2に示す。また、複合塩の最強の回折線は2θが43〜44度の付近にあり、この回折線の半値全幅は0.25度(結晶子の大きさは36nm相当)であった。
【0118】
(2)複合生成物の作製
実施例1と同様の手順で焼成体を得た。一連の作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
焼成による質量変化率は−5.8%であった。また、該焼成体について粉末X線回折測定を行ったところ、スピネル相のLTO(Li
4Ti
5O
12)とペロブスカイト相のLLTO(Li
3xLa
2/3−xTiO
3)とに相当する回折線が検出された。また、2θ=43〜44度の回折線の半値全幅は0.15度(結晶子の大きさは60nm相当)であった。
実施例6における、チタン酸リチウム系複合生成物の製造方法のフローチャートを
図10に示す。
【0119】
[比較例1]
(1)前駆体の作製
リチウム源に炭酸リチウム5.382g、ランタン源に硝酸ランタン六水和物0.751g、チタン源に二酸化チタン13.716gを用い(モル比でLi:La:Ti=0.808:0.010:1.000)、秤量してジルコニア製のボールミルジャーに入れた。ジルコニアボール及びアセトンを加え、遊星ボールミル処理を400rpmで4時間行った。
その後、80℃で12時間乾燥し溶媒を揮発させ、粉末をメノウ乳鉢で粉砕混合した。得られた粉末を200℃で3時間乾燥させ前駆体を得た。
複合塩化度は定義に従って0%である。また、該前駆体について粉末X線回折測定を行ったところ、Li
aH
bTi
cO
d(a>0、b≧0、c>0、d>0、a+b+3c≦2d≦a+b+4c)で表される複合塩化された酸化物は含まれていなかった。評価結果を表2に示す。
【0120】
(2)焼成体の作製
前駆体を空気中で850℃で12時間熱処理をし、焼成体を得た。
焼成による質量変化率は―17.2%であった。金属元素分析の結果、リチウムが6.2質量%、ランタンが1.5質量%、チタンが50.4質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.85、La/Ti=0.010)。
また、該焼成体について粉末X線回折測定を行ったところ、スピネル相とペロブスカイト相に相当する回折線が検出された。
【0121】
[比較例2]
(1)前駆体の作製
リチウム源に水酸化リチウム一水和物6.161g、ランタン源に硝酸ランタン六水和物0.757g、チタン源に二酸化チタン13.827gを用い(モル比でLi:La:Ti=0.808:0.010:1.000)、秤量してジルコニア製のボールミルジャーに入れた。ジルコニアボール及びアセトンを加え、遊星ボールミル処理を400rpmで4時間行った。
その後、80℃で12時間乾燥し溶媒を揮発させ、粉末をメノウ乳鉢で粉砕混合した。得られた粉末を200℃で3時間乾燥させ前駆体を得た。
複合塩化度は10%未満であった。また、該前駆体について粉末X線回折測定を行ったところ、Li
aH
bTi
cO
d(a>0、b≧0、c>0、d>0、a+b+3c≦2d≦a+b+4c)で表される複合塩化された酸化物は含まれていなかった。評価結果を表2に示す。
【0122】
(2)焼成体の作製
前駆体を空気中で850℃で12時間熱処理をし、焼成体を得た。
焼成による質量変化率は−11.0%であった。金属元素分析の結果、リチウムが6.4質量%、ランタンが1.5質量%、チタンが51.2質量%含まれていた(モル比はLi/Ti=0.86、La/Ti=0.010)。
また、該焼成体について粉末X線回折測定を行ったところ、スピネル相とペロブスカイト相に相当する回折線が検出された。
一連の作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
【0123】
【表1】
※実施例4と5の水熱合成処理工程において、矢印の前が第1水熱処理工程の条件で、矢印の後が第2水熱処理工程の条件である。
【0124】
【表2】
【0125】
同時沈殿処理工程で得られたランタンとチタンとを含む沈殿物に対して、リチウム元素源の化合物を添加して水熱処理を行って前駆体を得た実施例1−1〜1−3、2−1〜2−2、3と、沈殿処理で得られたチタンを含む沈殿物に対して、リチウムを添加した第1水熱処理とランタンを添加した第2水熱処理を行って前駆体を得た実施例4と、同時沈殿処理工程で得られたランタンとチタンとを含む沈殿物に対して、リチウムを添加した第1水熱処理と酸を添加した第2水熱処理を行って前駆体を得た実施例5−1、5−2と、リチウムとランタンとチタンのそれぞれの単塩を混合して水熱処理を行って前駆体を得た実施例6では、前駆体を850℃で焼成することで、スピネル相のLTO(Li
4Ti
5O
12)とペロブスカイト相のLLTO(Li
0.33La
0.56TiO
3)とが得られた。また、得られた複合生成物は、焼成による質量変化率の絶対値が10%以下と小さかった。
【0126】
一方で、比較例1と2では、リチウムとランタンとチタンのそれぞれの単塩を単に混合しただけの、複合塩化度が低い前駆体を850℃で焼成することで、スピネル相のLTO(Li
4Ti
5O
12)とペロブスカイト相のLLTO(Li
0.33La
0.56TiO
3)とが得られたが、焼成による質量変化率の絶対値が大きかった。
【0127】
<焼結密度の評価>
実施例1―1実施例1−3、実施例4、実施例5−1で得られた前駆体を、直径13mmの金型に詰め、740MPaにて加圧成形した。この成形体を空気中で850℃で12時間焼結することで、焼結体を得た。LTOとLLTOの格子定数から理論密度を求め、実密度を理論密度で除することで焼結密度を求めた。
【0128】
実施例1−1は2回行った平均で焼結密度78.5%、実施例1−3は2回行った平均で焼結密度80.4%、実施例2−1は2回行った平均で焼結密度79.0%、実施例2−2は、2回行った平均で焼結密度80.2%、実施例4は5回行った平均で焼結密度84.6%、実施例5−1は5回行った平均で焼結密度85.3%であった。実施例4と5―1は、前駆体の段階で既にLi
4Ti
5O
12が形成されているため、焼結密度が向上したと考えられる。