(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記FM検波部において生成した検波信号からキャリアを検出する手段を備え、キャリアを検出している場合に、前記第1制御信号を選択させ、キャリアを検出していない場合に、前記変調信号を選択させるための選択信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のFM受信装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例1は、ダイレクト・コンバージョン型のFM受信装置に関する。FM受信装置では、DCオフセット成分による受信特性の悪化を抑制するために、定包絡な変調方式のベースバンドリサージュ波形の特徴を利用してDCオフセットを検出する。前述のごとく、受信信号が無変調の状態で、かつその周波数とローカル発振信号の周波数が同一になると、受信信号とDCオフセットとの区別ができなくなり、補正後のI相のベースバンド信号とQ相のベースバンド信号が「0」になる。このような誤動作の発生を抑制するために、本実施例に係るFM受信装置は、次の処理を実行する。
【0012】
FM受信装置は、補正後のI相のベースバンド信号とQ相のベースバンド信号をFM検波して検波信号を出力するが、検波信号にオフセットを加えてから、ローカル発振信号の周波数を制御する。そのため、受信信号の周波数とローカル発振信号の周波数とには、オフセットに相当する周波数誤差が残留するので、位相信号が一定の値に停止される状況の発生が抑制される。
【0013】
図1は、本発明の実施例1に係る受信装置100の構成を示す。受信装置100は、アンテナ10、直交検波部12、第1ADC部14、第2ADC部16、第1補正部18、第2補正部20、DCオフセット検出部22、FM検波部24、制御部26、ローカル発振器28を含む。直交検波部12は、第1増幅部40、分配部42、移相部44、第1ミキサ46、第1LPF部48、第2増幅部50、第2ミキサ52、第2LPF部54、第3増幅部56を含む。制御部26は、平均化部60、加算部62、オフセット記憶部64、AFC部66、DAC部68を含み、AFC部66は、第3LPF部70、第4増幅部72を含む。
【0014】
アンテナ10は、図示しない送信装置からのRF(Radio Frequency)信号を受信する。RF信号には、FM変調がなされている。アンテナ10は、受信したRF信号(以下、「受信信号」ということもある)を第1増幅部40へ出力する。第1増幅部40は、LNA(Low Noise Amplifier)であり、アンテナ10からのRF信号を増幅する。第1増幅部40は、増幅したRF信号を分配部42へ出力する。分配部42は、第1増幅部40からのRF信号を2系統に分離する。分配部42は、分離したRF信号を第1ミキサ46、第2ミキサ52へ出力する。
【0015】
ローカル発振器28は、DAC部68からの制御信号に応じてローカル発振信号の周波数を調節し、周波数が調節されたローカル発振信号を移相部44、第1ミキサ46へ出力する。ここで、ローカル発振器28は、制御信号の電圧が高くなるほど、ローカル発振信号の周波数を高くする。移相部44は、ローカル発振器28からのローカル発振信号を90度位相シフトする。移相部44は、位相シフトしたローカル発振信号を第2ミキサ52へ出力する。
【0016】
第1ミキサ46は、分配部42からのRF信号とローカル発振器28からのローカル発振信号とを乗算することによって、I相のベースバンド信号(以下、「I信号」という)を生成する。第1ミキサ46は、I信号を第1LPF部48へ出力する。第2ミキサ52は、分配部42からのRF信号と移相部44からのローカル発振信号とを乗算することによって、Q相のベースバンド信号(以下、「Q信号」という)を生成する。第2ミキサ52は、Q信号を第2LPF部54へ出力する。
【0017】
第1LPF部48は、第1ミキサ46からのI信号のうち遮断周波数以上の周波数の信号を除去することによって帯域制限を実行する。第1LPF部48は、低域成分のI信号(以下、これもまた「I信号」という)を第2増幅部50へ出力する。第2LPF部54は、第2ミキサ52からのQ信号のうち遮断周波数以上の周波数の信号を除去することによって帯域制限を実行する。第2LPF部54は、低域成分のQ信号(以下、これもまた「Q信号」という)を第3増幅部56へ出力する。
【0018】
第2増幅部50は、第1LPF部48からのI信号を増幅し、第3増幅部56は、第2LPF部54からのQ信号を増幅する。第2増幅部50から出力されるI信号には、不要な直流成分が含まれ、第3増幅部56から出力されるQ信号にも、不要な直流成分が含まれる。その結果、これらの信号には、DCオフセット電圧が加算される。以上のように、直交検波部12は、RF信号を直交検波している。また、直交検波部12は、アナログのデバイスで構成され、例えば1チップで構成される。
【0019】
第1ADC部14は、第2増幅部50からのI信号に対してアナログ/デジタル変換を実行する。第1ADC部14は、デジタル信号に変換したI信号(以下、これもまた「I信号」という)を第1補正部18へ出力する。第2ADC部16は、第3増幅部56からのQ信号に対してアナログ/デジタル変換を実行する。第2ADC部16は、デジタル信号に変換したQ信号(以下、これもまた「Q信号」という)を第2補正部20へ出力する。
【0020】
第1補正部18は、第1ADC部14から出力されたI信号を入力するとともに、DCオフセット検出部22からのI相オフセット補正値200も入力する。第1補正部18は、I信号とI相オフセット補正値200とを加算することによって、I信号に対してI相オフセット補正値200による補正を実行する。第1補正部18は、補正したI信号を補正後I信号204としてDCオフセット検出部22、FM検波部24に出力する。
【0021】
第2補正部20は、第2ADC部16から出力されたQ信号を入力するとともに、DCオフセット検出部22からのQ相オフセット補正値202も入力する。第2補正部20は、Q信号とQ相オフセット補正値202とを加算することによって、Q信号に対してQ相オフセット補正値202による補正を実行する。第2補正部20は、補正したQ信号を補正後Q信号206としてDCオフセット検出部22、FM検波部24に出力する。
【0022】
DCオフセット検出部22は、第1補正部18からの補正後I信号204と、第2補正部20からの補正後Q信号206とを入力し、これらに加算されているDCオフセット電圧を推定し、DCオフセット電圧を低減するためのI相オフセット補正値200、Q相オフセット補正値202を生成する。DCオフセット検出部22は、I相オフセット補正値200を第1補正部18に出力し、Q相オフセット補正値202を第2補正部20に出力する。ここでは、
図2を使用しながら、DCオフセット検出部22の構成を説明する。
【0023】
図2は、DCオフセット検出部22の構成を示す。DCオフセット検出部22は、第1二乗化部110、第2二乗化部112、位相判定部114、第1加算部116、DEMUX118、第1平均化部120、第2平均化部122、第3平均化部124、第4平均化部126、第2加算部128、第3加算部130を含む。
【0024】
第1二乗化部110は、補正後I信号204を入力し、これの二乗値を導出する。第1二乗化部110は、補正後I信号204の二乗値を位相判定部114、第1加算部116に出力する。第2二乗化部112は、補正後Q信号206を入力し、これの二乗値を導出する。第2二乗化部112は、補正後Q信号206の二乗値を位相判定部114、第1加算部116に出力する。
【0025】
第1加算部116は、第1二乗化部110から、補正後I信号204の二乗値を入力するとともに、第2二乗化部112から、補正後Q信号206の二乗値を入力する。第1加算部116は、補正後I信号204の二乗値と補正後Q信号206の二乗値を加算する。加算した結果が、補正後I信号204と補正後Q信号206との電力値Pである。電力値Pは、補正後I信号204、補正後Q信号206を極座標変換したときの振幅信号の二乗値である。そのため、第1二乗化部110、第2二乗化部112、第1加算部116による処理は、振幅信号を導出する処理に相当する。第1加算部116は、電力値PをDEMUX118に出力する。
【0026】
位相判定部114は、補正後I信号204、補正後Q信号206を入力するとともに、第1二乗化部110から、補正後I信号204の二乗値を入力し、第2二乗化部112から、補正後Q信号206の二乗値を入力する。位相判定部114は、これらの値をもとに、位相領域の特定を実行する。これを説明するために、
図3を使用する。
図3は、位相判定部114において規定される複数の領域を示す。これは、IQ平面であり、横軸がI軸に相当し、縦軸がQ軸に相当する。図示のごとく、A1からA4の4つの位相領域が、互いに重ならないように規定される。ここで、位相領域A1は、7π/4からπ/4までのπ/2の範囲であり、位相領域A2は、π/4から3π/4までのπ/2の範囲であり、位相領域A3は、3π/4から5π/4までのπ/2の範囲であり、位相領域A4は、5π/4から7π/4までのπ/2の範囲である。
【0027】
以下では、表記を明確にするために、補正後I信号204を「I」と示し、補正後Q信号206を「Q」と示し、補正後I信号204の二乗値を「I
2」と示し、補正後Q信号206の二乗値を「Q
2」と示す。位相判定部114は、以下の判定条件をもとに、4つの位相領域A1、A2、A3、A4への分類を実行する。
A1 : I
2≧Q
2、I≧0
A2 : I
2<Q
2、Q≧0
A3 : I
2≧Q
2、I<0
A4 : I
2<Q
2、Q<0
位相判定部114は、特定した位相領域を位相領域信号208として出力する。特定された位相領域が、時間の経過とともに、例えば、A1、A2、A3、A4、A1、A2、・・と順次変化する場合、位相領域信号208も、A1、A2、A3、A4、A1、A2、・・と順次変化する。このような位相判定部114による処理は、補正後I信号204、補正後Q信号206を極座標変換したときの位相信号を導出する処理に相当する。
図2に戻る。
【0028】
DEMUX118は、第1加算部116からの電力値Pと、位相判定部114の位相領域信号208とを順次入力する。なお、電力値Pと位相領域信号208は同期されている。DEMUX118は、位相領域信号208に示された位相領域に応じて、電力値Pを電力値P1からP4のいずれかとして出力する。具体的に説明すると、DEMUX118は、位相領域A1であれば電力値P1を出力し、位相領域A2であれば電力値P2を出力し、位相領域A3であれば電力値P3を出力し、位相領域A4であれば電力値P3を出力する。
【0029】
第1平均化部120は、入力される電力値P1の一定期間における平均電力P1を計算し、平均電力P1を第2加算部128に出力する。平均には、例えば、移動平均が使用される。第2平均化部122は、入力される電力値P2の一定期間における平均電力P2を計算し、平均電力P2を第3加算部130に出力する。第3平均化部124は、入力される電力値P3の一定期間における平均電力P3を計算し、平均電力P3を第2加算部128に出力する。第4平均化部126は、入力される電力値P4の一定期間における平均電力P4を計算し、平均電力P4を第3加算部130に出力する。第1平均化部120から第4平均化部126の処理は、位相領域別に振幅信号の平均値を導出することに相当する。
【0030】
第2加算部128は、第1平均化部120からの平均電力P1を入力するとともに、第3平均化部124からの平均電力P3を入力する。第2加算部128は、平均電力P3から平均電力P1を減算する。第2加算部128は、減算結果をI相オフセット補正値200として出力する。第3加算部130は、第2平均化部122からの平均電力P2を入力するとともに、第4平均化部126からの平均電力P4を入力する。第3加算部130は、平均電力P4から平均電力P2を減算する。第2加算部128は、減算結果をQ相オフセット補正値202として出力する。このように、DCオフセット検出部22は、位相領域毎の電力値、つまり振幅信号に相当した値の平均値から、補正後I信号204、補正後Q信号206の原点からのずれを求め、これをI相オフセット補正値200、Q相オフセット補正値202として出力する。これは、IQ平面に規定された複数の位相領域のそれぞれにおける振幅が近くなるようにI相オフセット補正値200、Q相オフセット補正値202を導出することに相当する。
図1に戻る。
【0031】
FM検波部24は、補正後I信号204と補正後Q信号206、つまりDCオフセットが補正されたベースバンド信号をFM検波する。FM検波として、例えば、Arctan検波が実行される。Arctan検波では、補正後I信号204および補正後Q信号206のそれぞれを三角形の2辺として、その角度が導出される。単位時間あたりの角度の変化が角速度、つまり周波数になるので、FM変調の復調が可能になる。FM検波部24は、FM検波の結果である検波信号を出力する。出力される検波信号は、音声信号に相当する。
【0032】
平均化部60は、FM検波部24からの検波信号を入力する。平均化部60は、検波信号を一定期間にわたって平均化することによって、平均電圧を加算部62に出力する。なお、平均には、例えば、移動平均が使用される。平均電圧は、受信信号の中心周波数とローカル発振信号の出力周波数との差の周波数に比例する。そのため、例えば、平均電圧が「0」であれば、これらの周波数が一致している。前述のごとく、受信信号が無変調で、かつこれらの周波数が一致している場合、補正後I信号204、補正後Q信号206が一定の値になり続けるので、信号成分とDCオフセット電圧との区別ができなくなってしまう。その結果、DCオフセット検出部22では、補正後I信号204、補正後Q信号206が「0」になるようなI相オフセット補正値200、Q相オフセット補正値202を出力してしまう。これに対応するために、下記の処理が実行される。
【0033】
オフセット記憶部64は、予め定められたオフセット値を記憶する。加算部62は、オフセット記憶部64からのオフセット値を入力するとともに、平均化部60からの平均電圧を入力する。加算部62は、平均電圧にオフセット値を加え、その結果を第3LPF部70に出力する。加算部62におけるオフセット値の加算がない場合、AFC部66によって、受信信号の中心周波数とローカル発振信号の周波数が同じになるように制御されるが、加算部62が一定のオフセット値を加えるので、ローカル発振信号は、オフセット値に応じた周波数オフセットを有する。この周波数オフセットによって、補正後I信号204、補正後Q信号206が回転するので、これらが一定の値になり続ける状況の発生が抑制される。
【0034】
第3LPF部70は、加算部62から、オフセット値が加えられた平均電圧(以下、これも「平均電圧」という)を入力する。第3LPF部70は、平均電圧に対して、低域通過処理を実行する。第3LPF部70は、低域通過処理を実行した平均電圧(以下、これもまた「平均電圧」という)を第4増幅部72に出力する。第4増幅部72は、第3LPF部70からの平均電圧を増幅することによって、制御信号を生成する。第4増幅部72における増幅によって、AFCループのゲインが決められる。
【0035】
DAC部68は、第4増幅部72からの制御信号をデジタル/アナログ変換して、アナログ信号の制御信号(以下、これもまた「制御信号」という)をローカル発振器28へ出力する。このように、AFC部66は、加算部62においてオフセットを加えた平均電圧をもとに、ローカル発振信号の周波数を制御するための制御信号を生成し、ローカル発振器28へ制御信号をフィードバックする。オフセットが加えられていることは、DCオフセット検出部22において極座標変換した位相成分が回転するように、ローカル発振器28から出力されるローカル発振信号の周波数を制御することに相当する。
【0036】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0037】
本実施例によれば、受信信号が無変調で、かつその周波数がローカル発振信号の周波数と一致した場合でも、DCオフセット検出部に入力される信号の位相成分が回転するように、ローカル発振信号の周波数を制御するので、DCオフセット検出部に入力される信号の位相成分を変動させることができる。また、DCオフセット検出部に入力される信号の位相成分を変動させるので、DCオフセット検出部がDCオフセット電圧のみを補正できる。また、受信信号が無変調で、かつその周波数がローカル発振信号の周波数と一致した場合でも、DCオフセット検出部がDCオフセット電圧のみを補正するので、ベースバンド信号に重畳される不要なDCオフセット成分を補正する際に誤動作が発生することを抑制できる。また、受信信号が無変調で、かつその周波数がローカル発振信号の周波数と一致した場合でも、それらの周波数が一致しないようにAFCを制御されるので、DCオフセット検出部がDCオフセット電圧のみを補正できる。また、オフセット値を検出信号に加えるだけなので、処理を簡易にできる。また、DCオフセット電圧が補正されるので、受信特性の悪化を抑制できる。
【0038】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。本発明の実施例2は、実施例1と同様に、ダイレクト・コンバージョン型のFM受信装置に関する。実施例1では、DCオフセットを検出する際の誤動作の発生を抑制するために、検波信号にオフセットを加えてから、ローカル発振信号の周波数を制御している。一方、実施例2では、DCオフセットを検出する際の誤動作の発生を抑制するために、補正後のI相のベースバンド信号とQ相のベースバンド信号が各位相領域に出現する分布を監視する。分布が不均一な場合、ローカル発振信号の周波数を変化させる。その結果、位相信号が一定の値に停止される状況の発生が抑制される。
【0039】
図4は、本発明の実施例2に係る受信装置100の構成を示す。受信装置100は、アンテナ10、直交検波部12、第1ADC部14、第2ADC部16、第1補正部18、第2補正部20、DCオフセット検出部22、FM検波部24、制御部26、ローカル発振器28を含む。直交検波部12は、
図1と同様である。制御部26は、位相分布検出部80、第1電源部82、第2電源部84、出力部86、第4LPF部88を含む。ここでは、
図1との差異、特に制御部26を中心に説明する。
【0040】
位相分布検出部80は、DCオフセット検出部22からの位相領域信号208を入力する。位相領域信号208は、前述のごとく、位相判定部114において特定された位相領域を示す。補正後I信号204、補正後Q信号206が、一定の値で固定されない場合、それらの位相成分も変化するので、位相領域信号208において、一定期間中に各位相領域が均一的に出現する。一方、受信信号が無変調であり、受信信号の周波数とローカル発振信号の周波数とが一致している場合、補正後I信号204、補正後Q信号206が一定の値になるので、位相領域信号208において、同じ位相領域が連続する。つまり、位相領域信号208において、一定期間中に位相領域が不均一的に出現する。
【0041】
そのため、位相分布検出部80は、一定期間にわたって、位相領域信号208によって示される各位相領域の出現回数をカウントする。位相分布検出部80は、一定期間経過後、各位相領域のカウント値を比較し、複数の位相領域のそれぞれに、極座標変換した位相成分が出現するときの均一性を導出する。例えば、位相分布検出部80は、最大のカウント値と最小のカウント値との差がしきい値より小さければ、均一であると判定し、差がしきい値以上であれば、不均一であると判定する。その際、すべてのカウント値の総和で差を除算することによって、規格がなされてもよい。また、位相分布検出部80は、各カウント値をもとに、分散、標準偏差などのばらつきが示された統計値を導出し、統計値がしきい値より小さければ、均一であると判定し、統計値がしきい値以上であれば、不均一であると判定してもよい。位相分布検出部80は、均一であると判定すれば、維持信号を出力部86に出力し、不均一であると判定すれば、切替信号を出力部86に出力する。
【0042】
第1電源部82は、所定の第1電圧を出力部86に供給する。第2電源部84は、第1電源部から供給される第1電圧の値とは異なった値の第2電圧を供給する。第2電圧は、第1電圧よりも高くてもよく、低くてもよい。
【0043】
出力部86は、第1電源部82からの第1電圧を入力するとともに、第2電源部84からの第2電圧を入力する。また、出力部86は、位相分布検出部80からの維持信号あるいは切替信号も入力する。出力部86は、スイッチの構成を有しており、維持信号あるいは切替信号において、第1電圧と第2電圧のうちの一方を選択して出力する。まず、出力部86は、第1電圧と第2電圧のうちの任意の一方、例えば、第1電圧を選択する。この状態において、維持信号を受けつければ、出力部86は、第1電圧を選択し続けるので、第1電圧が継続して第4LPF部88に出力される。つまり、維持信号は、出力部86での選択を維持させるための信号である。
【0044】
一方、切替信号を受けつければ、出力部86は、第1電圧の選択を第2電圧の選択に切りかえるので、第2電圧が第4LPF部88に出力される。つまり、切替信号は、出力部86での選択を切りかえさせるための信号である。そのため、第2電圧を選択している場合に切替信号を受けつけると、出力部86は、第2電圧の選択を第1電圧の選択に切りかえる。これらによって、出力部86は、位相分布検出部80において導出した均一性がしきい値よりも低く、不均一である場合に、第1電源部82から供給される第1電圧と、第2電源部84から供給される第2電圧値とのいずれか一方の選択を切りかえる。出力部86は、第1電圧あるいは第2電圧を第4LPF部88に出力する。
【0045】
第4LPF部88は、出力部86から、第1電圧あるいは第2電圧を入力する。第4LPF部88は、第1電圧あるいは第2電圧に対して、低域通過処理を実行する。第4LPF部88は、低域通過処理の結果である制御信号をローカル発振器28に出力する。前述のごとく、制御信号によって、ローカル発振器28から出力されるローカル発振信号の周波数が制御される。その結果、第1電圧と第2電圧とが切りかわることによって、制御信号の電圧が変化するので、ローカル発振信号の発振周波数が変化する。これによって、DCオフセット検出部22に入力される補正後I信号204と補正後Q信号206が一定の値に固定しなくなり、DCオフセット検出部22において、DCオフセット電圧のみを補正することが可能になる。
【0046】
このように、出力部86、第4LPF部88は、位相分布検出部80において導出した均一性がしきい値よりも低い場合に、ローカル発振信号の周波数を制御するための制御信号の値を変更し、ローカル発振器28へ制御信号をフィードバックする。そのため、実施例2に係る制御部26においても、DCオフセット検出部22において極座標変換した位相成分が回転するように、ローカル発振器28から出力されるローカル発振信号の周波数が制御される。
【0047】
なお、アンテナ10がRF信号を受信していない状態では、第1ADC部14から出力されるI信号と第2ADC部16から出力されるQ信号は、DCオフセット電圧のみになる。そのため、DCオフセット検出部22において極座標変換した位相成分では、同じ値が連続する。この場合であっても、ローカル発振器28から出力されるローカル発振信号の発振周波数が定期的に変化するが、DCオフセット電圧は変化しないので、DCオフセット検出部22は、DCオフセット電圧をキャンセルするように動作可能である。
【0048】
本実施例によれば、位相の分布が不均一になると、制御信号の値を変更するので、ローカル発振信号の周波数を変化させることができる。また、ローカル発振信号の周波数が変化するので、それまでその周波数が受信信号の周波数と一致していた場合であっても、両者を異ならせることができる。また、ローカル発振信号の周波数と受信信号の周波数とが異なるので、DCオフセット検出部がDCオフセット電圧のみを補正できる。また、受信信号が無変調で、かつその周波数がローカル発振信号の周波数と一致した場合でも、DCオフセット検出部がDCオフセット電圧のみを補正するので、ベースバンド信号に重畳される不要なDCオフセット成分を補正する際に誤動作が発生することを抑制できる。また、位相成分の均一性がしきい値よりも低い場合に、第1電圧と第2電圧とのいずれか一方の選択を切りかえるだけなので、処理を簡易にできる。
【0049】
(実施例3)
次に、実施例3を説明する。本発明の実施例3は、実施例1と同様に、ダイレクト・コンバージョン型のFM受信装置に関する。実施例1では、DCオフセットを検出する際の誤動作の発生を抑制するために、検波信号にオフセットを加えてから、ローカル発振信号の周波数を制御している。AFC制御は、受信信号をFM検波してからでないと動作できない。一方、ローカル発振信号をFM変調させる場合、AFC制御と異なって、受信信号をFM検波するまでも動作可能であるが、ローカル発振信号のC/Nを悪化させているので、受信特性としてのレシプロカルミキシングやS/Nが悪化する傾向にある。実施例3では、これらを組み合わせ、信号検出段階とその後で処理が切りかえられる。信号を検出する前は、ローカル発振信号をFM変調し、信号を検出した後は、AFC制御を実行する。
【0050】
図5は、本発明の実施例3に係る受信装置100の構成を示す。受信装置100は、
図1に、第1ローカル発振器90、第2ローカル発振器92、制御部94、選択部96が追加されている。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0051】
第1ローカル発振器90は、所定の周波数の変調信号を生成する変調周波数生成部であり、ここでは、所定の周波数の変調信号を第1ローカル信号という。選択部96は、DAC部68からの第1制御信号と、第1ローカル発振器90からの第1ローカル発振信号とを入力する。ここで、第1制御信号は、実施例1における制御信号に相当する。また、選択部96は、制御部94からの選択信号も入力する。選択部96は、選択信号にしたがって、第1制御信号と第1ローカル発振信号とのうちの1つを第2制御信号として選択する。選択部96は、選択した第2制御信号を第2ローカル発振器92に出力する。第2ローカル発振器92は、実施例1のローカル発振器28に相当する。第2ローカル発振器92は、選択部96からの第2制御信号に応じて第2ローカル発振信号の周波数を調節し、周波数が調節された第2ローカル発振信号を第1ミキサ46、移相部44へ出力する。
【0052】
制御部94は、FM検波部24からの検波信号を入力する。制御部94は、検波信号をもとに、選択信号を生成する。選択信号には、制御部94において選択すべき信号、つまり第1制御信号あるいは第1ローカル発振信号が示されている。ここで、制御部94は、アンテナ10においてRF信号が受信されているか否かを監視していること、つまりキャリアを検出しているか否かを監視していることに相当する。例えば、ノイズスケルチ回路である。ノイズスケルチ回路は、FM検波部24からの出力である検波信号の復調帯域以上の一部の帯域のノイズ成分の検出し、ノイズが所定のレベル未満であればキャリアによりノイズが抑圧されRF信号が受信されていると判定し、ノイズが所定のレベル以上であればノイズが抑圧されていないためRF信号が受信されていないと判定する。
【0053】
制御部94は、RF信号が受信されていない場合に、第1ローカル発振信号を選択させるための選択信号を生成し、その選択信号を選択部96に出力する。選択部96は、この選択信号をもとに第1ローカル発振信号を選択して、それに応じた第2制御信号を第2ローカル発振器92に入力する。その結果、第2ローカル発振器92は、FM変調された第2ローカル発振信号を出力する。この状態では、第2ローカル発振信号の周波数と同じ周波数の無変調信号が受信されても、I信号およびQ信号が一定の値になることを抑制できる。
【0054】
このような状況下において、RF信号が受信されると、制御部94はこれを検出する。ここで、FM検波部24から出力される検波信号には、第1ローカル発振信号の発振周波数が多重される。第1ローカル発振信号の発振周波数を復調帯域内に設定した場合、第1ローカル発振信号が検波信号として出力され復調されてしまう。
【0055】
そのため、制御部94は、RF信号が受信されたことを検出した場合に、第1制御信号を選択させるための選択信号を生成し、その選択信号を選択部96に出力する。選択部96は、この選択信号をもとに第1制御信号を選択して、それに応じた第2制御信号を第2ローカル発振器92に入力する。その結果、第2ローカル発振器92は、AFC制御された第2ローカル発振信号を出力する。これにより、第2ローカル発振信号の発振周波数が復調帯域内の場合でも、検波信号に不要な信号が含まれなくなる。
【0056】
つまり、制御部94は、キャリアを検出していない場合に、第1ローカル発振信号を選択させるための選択信号を生成することによって、第2ローカル発振信号の周波数を変動させる。一方、制御部94は、キャリアを検出すると、第1制御信号を選択させるための選択信号に切りかえることによって、第2ローカル発振信号の周波数の変調を停止する。
【0057】
以上の構成による受信装置100の動作を説明する。
図6は、受信装置100による制御手順を示すフローチャートである。選択部96は、第1ローカル発振信号を選択する(S10)。制御部94がキャリアを検出しなければ(S12のN)、待機する。制御部94がキャリアを検出すれば(S12のY)、選択部96は、第1制御信号を選択するとともに、DCオフセット検出部22がオンされる(S14)。受信信号の中心周波数がプラスであれば(S16のY)、AFC部66は、+ΔfにAFC制御する(S18)。一方、受信信号の中心周波数がプラスでなければ(S16のN)、AFC部66は、−ΔfにAFC制御する(S20)。
【0058】
本実施例によれば、RF信号が受信されていない場合に、FM変調された第2ローカル発振信号を出力するので、第2ローカル発振信号の周波数と同じ周波数の無変調信号が受信されても、I信号およびQ信号が一定の値になることを抑制できる。また、I信号およびQ信号が一定の値にならないので、完全に抑圧されることを抑制できる。また、RF信号が受信された場合に、第1制御信号を出力するので、第2ローカル発振信号の発振周波数が復調帯域内の場合でも、復調信号に不要な信号が含まれなくすることができる。
【0059】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。