(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プレキャスト壁部の部位のうち、前記芯材が配置されている部位の厚さは、前記芯材が配置されていない部位の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプレキャスト堤体本体部。
高さ方向の寸法が6.50m以下であり、法線方向の寸法が3.50m以下であり、重量が60トン以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のプレキャスト堤体本体部。
前記プレキャスト壁部の下端面よりも下方に突出している前記芯材の前記一端は、管杭に挿入可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のプレキャスト堤体本体部。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、現場での施工量を従来よりも少なくすることができるプレキャスト堤体本体部および杭式堤体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のプレキャスト堤体本体部および杭式堤体により、前記課題を解決したものである。
【0008】
即ち、本発明に係るプレキャスト堤体本体部は、プレキャスト壁部と、前記プレキャスト壁部の高さ方向に延びるように前記プレキャスト壁部に埋め込まれた芯材と、を現場搬入前に一体的に有し、前記芯材の一端は前記プレキャスト壁部の下端面よりも下方に突出して
おり、かつ、前記芯材の部位のうち、前記プレキャスト壁部の下端面よりも上方の部位は、その外面が全面にわたって前記プレキャスト壁部に埋め込まれていることを特徴とするプレキャスト堤体本体部である。
【0009】
ここで、「前記プレキャスト壁部の下端面よりも下方に突出」における上下方向は、前記プレキャスト堤体本体部が堤体の構成部材として使用されている状態を基準として、上下の方向を判断するものとする。
【0010】
また、プレキャスト壁部と芯材とを一体的に有するとは、プレキャスト壁部と芯材との間で、軸力、せん断力および曲げモーメントが伝達可能な状態であることを意味する。
【0011】
前記芯材の数は1つであるように前記プレキャスト堤体本体部を構成してもよい。
【0012】
前記芯材の数は複数であるように前記プレキャスト堤体本体部を構成してもよい。
【0013】
前記プレキャスト壁部の部位のうち、前記芯材が配置されている部位の厚さは、前記芯材が配置されていない部位の厚さよりも厚くなるように前記プレキャスト堤体本体部を構成してもよい。
【0014】
前記プレキャスト壁部の壁面のうち、少なくとも一方の壁面は、平坦な平面であるように前記プレキャスト堤体本体部を構成してもよい。
【0015】
前記芯材としては、例えば、円筒状又は角筒状の鋼管を用いることができる。また、前記鋼管の内部領域にコンクリートが充填されていてもよい。
【0016】
前記芯材としては、例えば、長手方向と直交する平面で切断した断面形状がH形の鋼材を用いることができる。
【0017】
前記プレキャスト壁部には、横目地がないように構成することが好ましい。
【0018】
プレキャスト堤体本体部を、高さ方向の寸法が6.50m以下であり、法線方向の寸法が3.50m以下であり、重量が60トン以下であるように構成することが好ましい。
【0019】
ここで、「法線方向」とは、前記プレキャスト壁部の幅方向のことである。また、通常の場合、前記プレキャスト堤体本体部を現場に据え付けた状態において前記プレキャスト壁部が延びる水平方向が「法線方向」となる。
【0020】
前記プレキャスト壁部の下端面よりも下方に突出している前記芯材の前記一端は、管杭に挿入可能であるように構成することが好ましい。
【0021】
ここで、管杭とは、内部空間を有する管状の杭のことである。
【0022】
本発明に係る杭式堤体は、前記プレキャスト堤体本体部と、前記管杭と、を有してなり、前記プレキャスト壁部の前記芯材の前記一端は、前記管杭に挿入されており、前記プレキャスト堤体本体部は、軸力、せん断力および曲げモーメントが伝達可能なように前記管杭に連結されていることを特徴とする杭式堤体である。
【0023】
前記芯材と前記管杭との間隙にはグラウト材が充填されて一体化されているように構成してもよい。
【0024】
前記管杭は、例えば鋼管杭である。
【0025】
地表面に設けられた台座をさらに有し、前記プレキャスト壁部は、その下端面が前記台座の上面に接するように前記台座に載置されているように前記杭式堤体を構成してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るプレキャスト堤体本体部および杭式堤体によれば、現場での施工量を少なくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0029】
(1)第1実施形態
(1−1)第1実施形態の構成
図1および
図2は、本発明の第1実施形態に係る杭式堤体10およびプレキャスト堤体本体部12を示す斜視図である。
図1では、本第1実施形態に係る杭式堤体10(プレキャスト堤体本体部12)を法線方向に並ぶように2つ描いているが、説明の都合上、手前側の杭式堤体10(プレキャスト堤体本体部12)については、プレキャスト堤体本体部12を鋼管杭90に連結する前の状態を描いている。
図2では、本第1実施形態に係る杭式堤体10(プレキャスト堤体本体部12)を法線方向に並ぶように2つ描いているが、説明の都合上、手前側の杭式堤体10(プレキャスト堤体本体部12)の一部の部位については、内部の鉄筋の配置状況を示すためコンクリート14Xを描いていない。
【0030】
本第1実施形態に係る杭式堤体10は、プレキャスト堤体本体部12と鋼管杭90とを有してなり、プレキャスト堤体本体部12の芯材16の一端16A(プレキャスト堤体本体部12の下端面よりも下方に突出している芯材16の一端16A)が、鋼管杭90の内部空間90Aに挿入されて一体化されている。具体的には、後述するように、鋼管杭90の内部空間90Aに差し込まれた芯材16の一端16Aは、グラウト材22(
図3参照)によって、鋼管杭90と一体化している。
図1および
図2に示すように、1つの杭式堤体10は、1つのプレキャスト堤体本体部12と1本の鋼管杭90を備えている。プレキャスト堤体本体部12のプレキャスト壁部14は、その下端面が、地表面100に設けられた台座18の上面に接するように、台座18に載置されている。台座18の役割はレベル出しと墨出しであり、台座18に用いるコンクリートは、設計基準強度18N/mm
2以上のコンクリートであれば使用可能である。
【0031】
本第1実施形態に係るプレキャスト堤体本体部12は、プレキャスト壁部14と、芯材16とを現場搬入前に一体的に有してなる。1つのプレキャスト堤体本体部12は、1つのプレキャスト壁部14と1本の芯材16を備えている。本第1実施形態に係るプレキャスト堤体本体部12のプレキャスト壁部14の海側壁面14Aと陸側壁面14Bとは、同一の形状になっている。
【0032】
芯材16は円筒状の鋼管であり、芯材16の一端16Aがプレキャスト壁部14の下端面よりも下方に突出するように、プレキャスト壁部14の法線方向中央部に、芯材16がプレキャスト壁部14の高さ方向に延びるように埋め込まれて現場搬入前に一体化されている。
図2において、コンクリート14Xを描いていないプレキャスト壁部14の部位に示すように、芯材16の上端部は、プレキャスト壁部14の上端部近傍に達している。また、芯材16の内部領域にも、プレキャスト壁部14のコンクリート14Xと同じコンクリート14Xが、芯材16の下端まで工場において充填されている。
【0033】
図2において、コンクリート14Xを描いていないプレキャスト壁部14の部位に示すように、プレキャスト壁部14は、通常の堤体の壁部と同様に、壁部の面内方向に縦横に鉄筋が配置されているとともに壁部の厚さ方向にも鉄筋が配置されており、プレキャスト壁部14は、プレキャスト壁部14の高さ方向に延びる鉄筋14Cと、プレキャスト壁部14の法線方向に延びる鉄筋14Dと、プレキャスト壁部14の厚さ方向に延びる鉄筋14Eとを、コンクリート14Xの内部に有してなる。
【0034】
芯材16が埋め込まれているプレキャスト壁部14の法線方向中央部の厚さ(壁厚)は、他の部位よりも厚くなっている。プレキャスト壁部14に加わる津波流等による外力(プレキャスト壁部14の壁面に対して直交する方向に加わる外力)に対するプレキャスト堤体本体部12の設計では、芯材16と一体化している部位(プレキャスト壁部14の法線方向中央部の部位)を固定端とみなして設計を行うので、芯材16が埋め込まれているプレキャスト壁部14の法線方向中央部の厚さ(壁厚)が厚くなっていることは、設計を行う上で有利である。
【0035】
プレキャスト堤体本体部12は、プレキャスト壁部14と、芯材16とが現場搬入前に一体的に形成されて作製されており、現場には、プレキャスト壁部14と芯材16とが一体化された状態で搬入される。そのため、現場において、プレキャスト壁部14と芯材16との連結作業を行う必要がなく、現場での施工量を少なくすることができる。
【0036】
プレキャスト堤体本体部12を作製する際には、プレキャスト壁部14と芯材16とが一体化されるようにコンクリートの打設を現場搬入前にいちどきに行って一体的に作製を行うことが標準的な作製方法であり、プレキャスト壁部14と芯材16とはコンクリートの打設によって現場搬入前に一体的に連結され、かつ、プレキャスト壁部14には横目地は生じない。プレキャスト壁部14と芯材16とを別々に作製して、現場搬入前に連結して一体化するようにしてもよいが、この場合でも、プレキャスト壁部14の高さ方向については一体的に作製し、プレキャスト壁部14には横目地を設けない方が、耐久性の観点および景観の観点から好ましい。
【0037】
なお、
図1および
図2に示すように、プレキャスト堤体本体部12のプレキャスト壁部14は、その下端面が、地表面100に設けられた台座18の上面に接するように、台座18に載置するが、台座18の役割は、レベル出しと墨出しであるので、他の手段によりレベル出しと墨出しの機能を果たすことができるのであれば、台座18は省略してもよい。
【0038】
(1−2)プレキャスト堤体本体部12と鋼管杭90との連結態様の詳細
次に、
図3〜
図5を用いて、本第1実施形態の杭式堤体10における、プレキャスト堤体本体部12と鋼管杭90との連結態様についてさらに説明する。
【0039】
図3は、プレキャスト壁部14の面内方向と平行な鉛直面で芯材16および鋼管杭90の中心軸を通るように、杭式堤体10を切断して得られた断面を、プレキャスト壁部14の面内方向と直交する方向から見た断面図であり、
図4は
図3のIV−IV線断面図であり、
図5は
図3のV−V線断面図である。
図3はグラウト材22を注入した後の状態を示しているが、
図5においてはグラウト材22の記載は省略している。また、
図3においては、説明の都合上、芯材16、グラウト注入口14F、16B、およびグラウト配管20は、プレキャスト壁部14の壁面と直交する方向から見た側面図として記載している。
【0040】
芯材16には、貫通孔(芯材16の外周面から内周面に貫通する貫通孔)であるグラウト注入口16Bがプレキャスト壁部14の壁面に向かう位置に設けられており、グラウト注入口16Bにはグラウト配管20の一端が連結されている。グラウト配管20は、グラウト注入口16Bに連結する一端の近傍で約90°屈曲していて、芯材16の中心位置を下向きに延びており、グラウト配管20の他端(下端)は、芯材16の下端よりもわずかに下方まで延びている。グラウト注入口16Bに対応するプレキャスト壁部14の部位にもグラウト注入口14Fが設けられていて、グラウト注入口14F、16Bから、鋼管杭90の内部空間90Aにグラウト材22を注入できるようになっている。
【0041】
鋼管杭90の内部空間90Aには、芯材16の下端よりも50cm程度下の位置に、吊り型枠24が配置されている。吊り型枠24は、鋼管杭90の内部空間90Aの水平断面に対応する形状の鋼板である。吊り型枠24は、鋼管杭90の内面に溶接されて取り付けられたブラケット28に取り付けられた吊り型枠用吊り鉄筋26(以下、吊り鉄筋26と記す。)によって吊られて支持されている。詳細には、吊り型枠24の上面に、吊り鉄筋26の下端部26Aが溶接で取り付けられていて、吊り型枠24は、鋼管杭90の内面に溶接されて取り付けられたブラケット28に取り付けられた吊り鉄筋26によって吊られて支持されている。吊り鉄筋26の下端部26Aは、90°屈曲して水平方向に延びている。
【0042】
プレキャスト堤体本体部12を鋼管杭90に連結して一体化する際には、まず、プレキャスト堤体本体部12の芯材16の一端16Aを、鋼管杭90の内部空間90Aに挿入する。そして、グラウト注入口14F、16Bからグラウト材22を注入して、芯材16の一端16Aの外面と鋼管杭90の内面との間を含めて、吊り型枠24よりも上方に位置する鋼管杭90の内部空間90Aにグラウト材22を充填する。グラウト材22が十分に充填されたことは、鋼管杭90の上端部とプレキャスト壁部14の下端面との隙間からグラウト材22があふれたことを確認して行う。充填したグラウト材22が固化することにより、グラウト材22を介して、芯材16と鋼管杭90とが一体化する。芯材16と鋼管杭90とが、グラウト材22を介して一体化されることにより、軸力、せん断力および曲げモーメントが伝達可能なように芯材16と鋼管杭90とが連結されることになる。
【0043】
芯材16と鋼管杭90との間の応力伝達は、グラウト材22を介してなされるので、芯材16の一端16Aの外面および鋼管杭90の内面(グラウト材22が充填される部位の内面)にはずれ止め(シアキー)を設けることが好ましい。ずれ止め(シアキー)としては、例えば丸鋼、溶接ビード、角鋼等を用いることができる。
【0044】
芯材16と鋼管杭90との間の応力伝達を十分になすための所定の性能を有していれば、グラウト材22として用いるグラウト材の種類は特には限定されない。具体的には、例えば、所定の性能を有する無収縮モルタル等を用いることができる。
【0045】
なお、芯材16の外径は、挿入する鋼管杭90の外径よりも200mm程度小さくすることが標準的である。用いる鋼管杭90の外径としては、φ600〜1200mmが一般的に想定されるので、用いる芯材16の外径としては、φ400〜1000mmが一般的に想定される。
【0046】
また、芯材16を鋼管杭90に挿入する長さは、芯材16の外径の1.5倍以上を原則とする。
【0047】
(1−3)陸送可能な大きさおよび重量
ここで、陸送可能な大きさおよび重量について説明しておく。本発明は、現場での施工量を少なくすることを目的とするが、現場での施工量を少なくすることに加えて、陸送可能という要件も満たせば、より迅速な施工をスムーズに進めることが可能となる。したがって、本第1実施形態に係るプレキャスト堤体本体部12は、陸送可能という要件も満たすことが好ましい。
【0048】
図6は、陸送可能な大きさについて説明するための図で、プレキャスト堤体本体部12の寸法の方向(高さ方向の寸法H、法線方向の寸法B、厚さ方向の寸法T)を明示した図である。高さ方向の寸法Hは、芯材16の下端から、プレキャスト壁部14の上端までの長さである。法線方向の寸法Bは、プレキャスト堤体本体部12(プレキャスト壁部14)の法線方向の長さである。厚さ方向の寸法Tは、プレキャスト堤体本体部12(プレキャスト壁部14)の最厚部の厚さ方向の長さである。
【0049】
プレキャスト堤体本体部12を陸送する際には、車両(トラック、トレーラー等)の荷台上に、プレキャスト堤体本体部12を寝かせた状態に載置して運搬するので、プレキャスト堤体本体部12の高さ方向の寸法Hは、用いる車両に積載できる最大積載長さ以下にする必要があり、プレキャスト堤体本体部12の法線方向の寸法Bは、用いる車両に積載できる最大積載幅以下にする必要があり、プレキャスト堤体本体部12の厚さ方向の寸法Tは、用いる車両に積載できる最大積載高さ以下にする必要がある。
【0050】
ただし、プレキャスト堤体本体部12の厚さ方向の寸法Tが陸送に際してのネックになる(用いる車両に積載できる最大積載高さを超える)ことは通常考えられない。したがって、最大積載高さが高床トレーラーの最大積載高さよりも大きい一方、最大積載長さが高床トレーラーの最大積載長さよりも短い低床トレーラーを使用することは除外し、高床トレーラーを使用することを前提として以下検討する。
【0051】
現時点において手配可能な高床トレーラーにおいて、最大積載長さは14.00mであり、最大積載幅は3.50mであるので、プレキャスト堤体本体部12の高さ方向の寸法Hは14.00m以下にすることが好ましく、法線方向の寸法Bは3.50m以下にすることが好ましい。手配の容易な高床トレーラーを用いるという観点も考慮すれば、プレキャスト堤体本体部12の高さ方向の寸法Hは12.00m以下にすることがより好ましく、法線方向の寸法Bは2.50m以下にすることがより好ましい。
【0052】
また、高床トレーラーの最大積載重量は30トンであるので、プレキャスト堤体本体部12の重量は30トン以下にすることが好ましい。手配の容易な高床トレーラーを用いるという観点も考慮すれば、プレキャスト堤体本体部12の重量は20トン以下にすることがより好ましい。
【0053】
なお、低床トレーラーの最大積載重量は60トンであり、高床トレーラーの最大積載重量30トンの2倍であるので、プレキャスト堤体本体部12の重量の大きさが問題となる場合は、低床トレーラーの使用を検討してもよい。ただし、低床トレーラーの最大積載長さは6.50mであるので、プレキャスト堤体本体部12の高さ方向の寸法Hを6.50m以下にすることが必要である。
【0054】
また、高床トレーラーでプレキャスト堤体本体部12を運搬するためには、原則として、特殊車両通行許可を取ることに加えて、制限外積載許可を取ることが必要である。また、低床トレーラーでプレキャスト堤体本体部12を運搬するためには、原則として、特殊車両通行許可を取ることが必要である。
【0055】
当然のことであるが、プレキャスト堤体本体部12の重量は、プレキャスト堤体本体部12の大きさが大きくなればなるほど大きくなるので、陸送可能という要件を満たすためには、重量の制限についても考慮した上で、プレキャスト堤体本体部12の各寸法を調整する必要がある。
【0056】
プレキャスト堤体本体部12の各寸法および重量が、それぞれ前記最大値以下で、かつ、必要なトレーラーが確保でき、さらに必要な許可が取れれば、我が国の交通法規に違反せず、かつ、安全に、プレキャスト堤体本体部12を陸送することができる。
【0057】
(1−4)第1実施形態の作用効果
以上説明したように、本第1実施形態に係るプレキャスト堤体本体部12は、プレキャスト壁部14と、芯材16とが現場搬入前に一体的に形成されて作製されており、現場には、プレキャスト壁部14と芯材16とが一体化された状態で搬入される。そのため、現場において、プレキャスト壁部14と芯材16との連結作業を行う必要がなく、本第1実施形態に係るプレキャスト堤体本体部12を用いることにより、現場での施工量を少なくすることができる。
【0058】
また、第1実施形態の杭式堤体10における、プレキャスト堤体本体部12と鋼管杭90との一体化は、プレキャスト堤体本体部12の芯材16の一端16Aを鋼管杭90の内部空間90Aに挿入して、鋼管杭90の内部空間90Aの所定の領域にグラウト材22を注入するだけでよいので、本第1実施形態に係るプレキャスト堤体本体部12を用いることにより、現場での施工量を少なくすることができる。
【0059】
また、プレキャスト堤体本体部12の各寸法および重量が、陸送可能な要件を満たす場合には、より迅速な施工をスムーズに進めることが可能となる。
【0060】
(2)第2実施形態
図7は、本発明の第2実施形態に係る杭式堤体40およびプレキャスト堤体本体部42を示す斜視図である。
図7では、本第2実施形態に係る杭式堤体40(プレキャスト堤体本体部42)を法線方向に並ぶように2つ描いているが、説明の都合上、手前側の杭式堤体40(プレキャスト堤体本体部42)については、プレキャスト堤体本体部42を鋼管杭90に連結する前の状態を描いている。
【0061】
第1実施形態に係るプレキャスト堤体本体部12のプレキャスト壁部14の海側壁面14Aと陸側壁面14Bとは、
図1および
図2に示すように同一の形状になっていたが、本第2実施形態に係るプレキャスト堤体本体部42のプレキャスト壁部44においては、海側壁面44Aが平坦な平面になっている一方、陸側壁面44Bは法線方向中央部が陸側に突出した形状になっており、海側壁面44Aの形状と陸側壁面44Bの形状とが異なっている。この相違点以外は、本第2実施形態に係る杭式堤体40およびプレキャスト堤体本体部42は、第1実施形態に係る杭式堤体10およびプレキャスト堤体本体部12と同様であるので、同一の部材および部位には同一の符号を付して、説明は原則として省略する。また、異なる符号を付した部材および部位も、前記相違点以外は、第1実施形態に係る杭式堤体10およびプレキャスト堤体本体部12の対応する部材および部位と同様であるので、説明は大幅に簡略化し、本第2実施形態についての説明の中で説明していない事項は、第1実施形態について説明した対応する内容を参照するものとする。
【0062】
本発明の第2実施形態に係る杭式堤体40は、本第2実施形態に係るプレキャスト堤体本体部42の芯材16が鋼管杭90の内部空間90Aに挿入されて一体化されて構成されている。
図7に示すように、1つの杭式堤体40は、1つのプレキャスト堤体本体部42と1本の鋼管杭90を備えている。プレキャスト堤体本体部42のプレキャスト壁部44は、その下端面が、地表面100に設けられた台座46の上面に接するように、台座46に載置されている。
【0063】
本第2実施形態に係るプレキャスト堤体本体部42は、プレキャスト壁部44と、芯材16とを現場搬入前に一体的に有してなる。1つのプレキャスト堤体本体部42は、1つのプレキャスト壁部44と1本の芯材16を備えている。前述したように、本第2実施形態に係るプレキャスト堤体本体部42のプレキャスト壁部44においては、海側壁面44Aが平坦な平面になっている一方、陸側壁面44Bは法線方向中央部が陸側に突出した形状になっており、海側壁面44Aの形状と陸側壁面44Bの形状とが異なっている。
【0064】
本第2実施形態に係る杭式堤体40およびプレキャスト堤体本体部42は、景観上の理由や周辺環境の条件等によって、平坦な平面が要請される場合に、好適に用いることができる。
【0065】
なお、海側壁面44Aと陸側壁面44Bとの位置関係を逆にして、陸側壁面44Bを平坦な平面にして、海側壁面44Aを法線方向中央部が海側に突出した形状になるようにしてもよい。また、海側壁面44Aと陸側壁面44Bの両方を平坦な平面にしてもよい。
【0066】
(3)第3実施形態
図8は、本発明の第3実施形態に係る杭式堤体60およびプレキャスト堤体本体部62を示す斜視図である。
図8では、説明の都合上、杭式堤体60(プレキャスト堤体本体部62)について、プレキャスト堤体本体部62を鋼管杭90に連結する前の状態を描いている。
【0067】
第1実施形態に係るプレキャスト堤体本体部12は、1つのプレキャスト堤体本体部12について、1つのプレキャスト壁部14と1本の芯材16を備えていたが、本第3実施形態に係るプレキャスト堤体本体部62は、1つのプレキャスト堤体本体部62について、1つのプレキャスト壁部64と2本の芯材16を備えている。この相違点以外は、本第3実施形態に係る杭式堤体60およびプレキャスト堤体本体部62は、第1実施形態に係る杭式堤体10およびプレキャスト堤体本体部12と同様であるので、同一の部材および部位には同一の符号を付して、説明は原則として省略する。また、異なる符号を付した部材および部位も、前記相違点以外は第1実施形態に係る杭式堤体10およびプレキャスト堤体本体部12の対応する部材および部位と同様であるので、説明は大幅に簡略化し、本第3実施形態についての説明の中で説明していない事項は、第1実施形態について説明した対応する内容を参照するものとする。
【0068】
本発明の第3実施形態に係る杭式堤体60は、本第3実施形態に係るプレキャスト堤体本体部62の2本の芯材16が2本の鋼管杭90の内部空間90Aにそれぞれ挿入されて一体化されて構成されている。
図8に示すように、1つの杭式堤体60は、1つのプレキャスト堤体本体部62と2本の鋼管杭90を備えている。プレキャスト堤体本体部62のプレキャスト壁部64は、その下端面が、地表面100に設けられた台座66の上面に接するように、台座66に載置される。
【0069】
本第3実施形態に係るプレキャスト堤体本体部62は、プレキャスト壁部64と、2本の芯材16とを現場搬入前に一体的に有してなる。プレキャスト堤体本体部62のプレキャスト壁部64は、第1実施形態に係るプレキャスト堤体本体部12のプレキャスト壁部14の2つを法線方向に並べて連結してなる壁部と同様の形状である。
【0070】
このため、本第3実施形態に係るプレキャスト堤体本体部62の法線方向の長さは、第1実施形態に係るプレキャスト堤体本体部12の法線方向の長さの2倍になっている。このため、本第3実施形態に係る杭式堤体60およびプレキャスト堤体本体部62を用いることにより、第1実施形態に係る杭式堤体10およびプレキャスト堤体本体部12を用いる場合よりも、現場での施工量をさらに少なくすることができる。
【0071】
ただし、本第3実施形態に係る杭式堤体60およびプレキャスト堤体本体部62の採用の可否を決める際には、プレキャスト堤体本体部62の大きさおよび重量が、第1実施形態に係るプレキャスト堤体本体部12よりも大きくなっている点に留意する。
【0072】
(4)補足
第1〜第3実施形態に係るプレキャスト堤体本体部12、42、62で用いた芯材16は円筒状の鋼管であったが、芯材16に用いる部材はこれに限定されず、例えば角筒状の鋼管を用いてもよい。
【0073】
また、芯材16と鋼管杭90との一体化が可能であるのであれば、内部領域を有しない長尺部材を芯材16に用いてもよい。内部領域を有しない長尺部材としては、例えば、長手方向と直交する平面で切断した断面形状がH形の鋼材(以下、断面H形の鋼材と記す。)を挙げることができる。断面H形の鋼材を芯材16として用いる場合には、
図3および
図4に示すグラウト配管20を、当該断面H形の鋼材の長手方向に適宜に沿わせて配置するとともに、プレキャスト壁部14、44、64の壁面に、グラウト配管20の一端部が連結するグラウト注入口を適宜に設ける。
【0074】
また、必要な性能を満たすのであれば、芯材16に用いる素材を鋼以外の素材にしてもよい。
【0075】
また、第1〜第3実施形態に係る杭式堤体10、40、60で用いた杭は鋼管杭90であったが、本発明に係る杭式堤体に使用可能な杭は鋼管杭に限定されるわけではない。例えば、上端部(頭部)が鋼管で、それよりも下方の部位がコンクリートで形成されているような杭も、本発明に係る杭式堤体に使用可能である。
【0076】
また、第1および第2実施形態に係る杭式堤体10、40で用いた杭の本数は1本であり、第3実施形態に係る杭式堤体60で用いた杭の本数は2本であったが、本発明に係る杭式堤体に使用可能な杭の本数は2本以下というわけではなく、杭の本数は3本以上にしてもよい。ただし、1つの杭式堤体あたりの杭の本数が多くなると、杭式堤体およびプレキャスト堤体本体部の大きさおよび重量も大きくなるので、この点にも留意して、1つの杭式堤体あたりの杭の本数を決めることが必要である。
【0077】
また、第1〜第3実施形態に係るプレキャスト堤体本体部12、42、62のプレキャスト壁部14、44、64の水平断面形状は高さ位置に関わらず一定であるが、下方にいくほど、プレキャスト壁部14、44、64の厚さ(壁厚)を厚くするような形状にしてもよい。想定される外力によって生じる断面力は、プレキャスト壁部14、44、64の下方にいくほど大きくなるので、これに対応しやすくするためである。
【0078】
また、第1〜第3実施形態に係る杭式堤体10、40、60は、フーチングを備えていないが、フーチングを備えさせてもよい。フーチングを備えさせる場合は、該フーチングの上面近傍まで鋼管杭を延ばして配置する。
【0079】
また、本発明に係る杭式堤体は、通常の場合、法線方向に隣り合うように配置するが、法線方向に隣り合うように配置した杭式堤体同士は構造的に連結することは不要である。ただし、法線方向に隣り合うように配置することで生じる隙間は、シーリング材やコーキング材等の目地材で塞ぐことが一般的である。
【0080】
また、第1〜第3実施形態に係る杭式堤体10、40、60は、杭式構造物であるので、地盤条件が悪い場所への適用も可能である。
【解決手段】プレキャスト壁部14と、プレキャスト壁部14の高さ方向に延びるようにプレキャスト壁部14に埋め込まれた芯材16と、を現場搬入前に一体的に有し、芯材16の一端16Aはプレキャスト壁部14の下端面よりも下方に突出しているプレキャスト堤体本体部である。
また、プレキャスト堤体本体部12と、管杭90と、を有してなり、プレキャスト壁部14の芯材16の一端16Aは、管杭90に挿入されており、プレキャスト堤体本体部12は、軸力、せん断力および曲げモーメントが伝達可能なように管杭90に連結されている杭式堤体である。