特許第6299962号(P6299962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299962
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20180319BHJP
【FI】
   B25J19/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-39038(P2014-39038)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-160305(P2015-160305A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2017年2月8日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 特許法第30条第2項適用、平成25年9月2日株式会社不二越のウェブサイトでの公表等(平成26年3月28日付け新規性の喪失の例外証明書提出書で提出された全件について特許法第30条第2項の適用を認める。)
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(72)【発明者】
【氏名】坂井 隆史
(72)【発明者】
【氏名】小坂 俊介
(72)【発明者】
【氏名】国崎 晃
【審査官】 永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−326491(JP,A)
【文献】 特開平04−105888(JP,A)
【文献】 特開2014−030893(JP,A)
【文献】 特開2009−125846(JP,A)
【文献】 特開昭59−097888(JP,A)
【文献】 特開2015−104764(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/035337(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/157169(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット本体に対して回動自在に取り付けられるアームと、前記アームに対して回動自在に取り付けられるリストと、を備えた産業用ロボットであって、
前記アームには、前記ロボット本体から引き回されるケーブルを内装して収容するケーブル収容部と、前記リストを配置するリスト配置部とが設けられているとともに、前記ケーブル収容部と前記アームの外側空間部を連通する第1孔部と、前記リスト配置部と前記アームの外側空間部を連通する第2孔部とが設けられ、
前記アームは、前記ロボット本体に回動自在に取り付けられる第1アーム部と、
前記第1アーム部から延設され、前記リスト配置部が設けられるとともに、前記第1アーム部に対して回動自在に取り付けられる第2アーム部と、を備え、
前記第1孔部は、前記第2アーム部に設けられており、
前記第2孔部は、前記第2アーム部の前記第1アーム部と連結される側と反対側の端部に延設されているリスト支持部の付け根の部分に設けられており、
前記ロボット本体から前記ケーブル収容部に引き回されたケーブルは、前記第1孔部を通って前記アームの外側空間部に引き出され、さらに前記アームの外側空間部から前記第2孔部を通って前記リスト配置部に引き入れられて、前記リストに引き回されることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記第1孔部と前記第2孔部の少なくとも一方が、前記アームの複数個所に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記ケーブルにおいて、前記第1孔部の出口部から前記第2孔部の入口部に配置される部分が前記アームに固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記リストには、作業用の工具が取り付けられるとともに、リストを貫通する貫通孔が設けられ、
前記リスト配置部に引き入れられたケーブルは前記貫通孔を通って前記工具に引き回されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記ケーブルは、前記第2孔部と前記リストとの間において一定のたるみを有して引き回され、そのたるみ長さは、前記リストが前記アームに対して最大に回動したときに引っ張られる長さよりも長いことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の産業用ロボット。
【請求項6】
前記アームに一対のリスト支持部が設けられ、前記リストは前記一対のリスト支持部に
挟み込まれて回動自在に支持されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に
記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット本体に対して回動自在に取り付けられるアームと、前記アームに対して回動自在に取り付けられるリストと、を備えた産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な産業用ロボット(以下、単に「ロボット」と記載する。)は、ロボット本体と、ロボット本体に対して回動自在に取り付けられるアームと、アームに対して回動自在に取り付けられるとともに、作業用の工具(エンドエフェクタ)が取り付けられるリストとを備える。アームやリストを回動させるための駆動手段(例えば、サーボモータ)に電源を供給する電源線や、工具に設けられたエアシリンダにエアを供給するためのエアチューブ等は1本の束にまとめられて(以下、この状態のものを「ケーブル」と記載する。)、ロボット本体の内部に収容されたり、外部に固定されたりして引き回される。
【0003】
ロボットのアームやリストは、所定の角度だけ回動自在に設けられている。アームやリストが回動したときにケーブルが極度に引っ張られると、断線等の損傷が引き起こされるおそれがある。このため、ケーブルは、アームやリストが最大に回動したときであっても損傷しないように、たるみ(余裕長さ)をもって引き回されている。しかし、このたるみが大きいと、アームやリストが回動するときの抵抗となったり、周辺の部材と干渉したりするおそれがある。また、アームやリストが高速で動作したときにケーブルが「あばれる」という現象が生じてしまう。さらに、ロボットの外観も悪くなる。
【0004】
この不具合を解消するため、多数の出願がなされている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−49135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した不具合に鑑み、たるみを多くしたり、外観を悪化させたりすることなく、ケーブルの引き回し作業が容易になり、ロボットの動作時にケーブルがあばれないロボットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のロボットは、
ロボット本体に対して回動自在に取り付けられるアームと、前記アームに対して回動自在に取り付けられるリストと、を備えた産業用ロボットであって、
前記アームには、前記ロボット本体から引き回されるケーブルを内装して収容するケーブル収容部と、前記リストを配置するリスト配置部とが設けられているとともに、前記ケーブル収容部と前記アームの外側空間部を連通する第1孔部と、前記リスト配置部と前記アームの外側空間部を連通する第2孔部とが設けられ、
前記アームは、前記ロボット本体に回動自在に取り付けられる第1アーム部と、
前記第1アーム部から延設され、前記リスト配置部が設けられるとともに、前記第1アーム部に対して回動自在に取り付けられる第2アーム部と、を備え、
前記第1孔部は、前記第2アーム部に設けられており、
前記第2孔部は、前記第2アーム部の前記第1アーム部と連結される側と反対側の端部に延設されているリスト支持部の付け根の部分に設けられており、
前記ロボット本体から前記ケーブル収容部に引き回されたケーブルは、前記第1孔部を通って前記アームの外側空間部に引き出され、さらに前記アームの外側空間部から前記第2孔部を通って前記リスト配置部に引き入れられて、前記リストに引き回されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
ロボット本体から引き回されたケーブルは、アームのケーブル収容部に収容される。このケーブルは、ケーブル収容部から第1孔部を通って、アームの外側空間部に引き出されてアームの外側に配置され、外側空間部からアームの第2孔部に引き入れられて、アームのリスト配置部に引き回される。このとき、アームの外側空間部に配置されたケーブル(即ち、第1孔部から出て、第2孔部に入るまでのケーブル)をたるみがない(もしくは少ない)状態で配置し、アームのリスト配置部に配置されたケーブル(即ち、第2孔部から出てリストに引き回されるまでのケーブル)をたるみを有する状態で配置することができる。これにより、リストが回動したときに、リストが引っ張ったケーブルの引張り長さは、たるみによって吸収され、ケーブルが過度に引っ張られることはない。また、アームの外側空間部に配置されたケーブルにはたるみがない(もしくは少ない)ため、ケーブルの長さを長くさせないまま、アームやリストが高速で回動したときにケーブルがあばれることが防止される。さらに、ケーブルが外側空間部を通って引き回されるため、アームのリスト配置部にケーブルが配置されるスペースが小さくて済み、リスト配置部の省スペース化、ひいてはロボットの小型化が図られる。
【0009】
前記第1孔部と前記第2孔部の少なくとも一方を、前記アームの複数個所に設けることができる。
【0010】
ケーブルを構成する電源線やエアチューブ等の本数が多くなったり、それらの外径が大きくなったりするとケーブルの外径も大きくなり、ケーブルの引き回しの作業が困難になる。しかし、この発明の場合では、第1孔部と第2孔部の少なくとも一方が複数箇所に設けられているため、ケーブルを途中で分岐させることにより、それらの外径を小さくして引き回すことができる。ケーブルの分岐位置は、第1孔部を出る前であっても、第1孔部を出た後であってもよい。
【0011】
前記ケーブルにおいて、前記第1孔部の出口部から前記第2孔部の入口部に配置される部分が前記アームに固定されていることが望ましい。
【0012】
これにより、ケーブルがアームと一体に動作するため、アームが高速で回動してもケーブルがあばれることを確実に防止できる。
【0013】
前記リストには、作業用の工具が取り付けられるとともに、リストを貫通する貫通孔が設けられ、
前記リスト配置部に引き入れられたケーブルは前記貫通孔を通って前記工具に引き回すことができる。
【0014】
前記アームは、前記ロボット本体に回動自在に取り付けられる第1アーム部と、
前記第1アーム部から延設され、前記リスト配置部が設けられるとともに、前記第1アーム部に対して回動自在に取り付けられる第2アーム部と、を備え、
前記第1孔部と前記第2孔部は、前記第2アーム部に設けられている。
【0015】
前記ケーブルは、前記第2孔部と前記リストとの間において一定のたるみを有して引き回され、そのたるみ長さは、前記リストが前記アームに対して最大に回動したときに引っ張られる長さよりも長い。
【0016】
リストが最大に回動したとき、リストが引っ張ったケーブルの長さ分は、予め設定されたたるみによって吸収される。このため、リストが過度にケーブルを引っ張ることはなく、ケーブルが損傷しにくい。
【0017】
前記アームに一対のリスト支持部が設けられ、前記リストは前記一対のリスト支持部に挟み込まれて回動自在に支持されることが望ましい。
【0018】
これにより、リストの剛性が高くなる。しかし、リストが1つのリスト支持部に片持ち構造で支持されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施例のロボット101の斜視図である。
図2図1に示したロボットの上アーム11の平面断面図である。
図3図1に示したロボットのケーブル9の断面図である。
図4】第1実施例のケーブル9のたるみ部35の作用説明図である。
図5】第2実施例のロボット102の斜視図である。
図6】第3実施例のロボット103の上アーム11の平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
最初に、第1実施例のロボット101の全体構成について説明する。図1に示されるように、例えば床面等の設置面に設置されるベース1にフレーム2が載置されている。このフレーム2は、ベース1の上面に配置される基板部3と、基板部3の周縁部から斜め上方に向かって起立する一対の起立板部4とを備える。また、基板部3の上面には、フレーム2の全体を水平面内(床面と平行な面内)で回動させるためのモータ(図示せず)が取り付けられている。モータのモータ軸を所定方向に回転させることにより、フレーム2は設置面に垂直に設けられた第1回動軸線5を中心に回動する。
【0022】
フレーム2における一対の起立板部4の間に、下アーム6の下半部が取り付けられている。下アーム6の下半部は略円筒形状をなし、円筒部7を形成しているとともに、下アーム6の上半部は円筒部7の軸方向に二股に分かれていて、一対の挟込み部8となっている。一対の挟込み部8の少なくとも一方側の内部は、ケーブル9(図3参照)を引き込ませることができるように空洞となっている。下アーム6は、円筒部7がフレーム2の一対の起立板部4に挟み込まれて支持され、円筒部7の軸線上に設けられた第2回動軸線10を中心に回動自在である。
【0023】
下アーム6における一対の挟込み部8の間には、上アーム11が取り付けられている。上アーム11は、下アーム6の一対の挟込み部8によって挟み込まれる第1上アーム部12と、第1上アーム部12の一端部から延設される第2上アーム部13とを備える。第1上アーム部12は、下アーム6に連結された状態で第3回動軸線14を中心に回動する。そして、第2上アーム部13は、第1上アーム部12に対して、第4回動軸線15を中心に回動自在である。
【0024】
第2上アーム部13の先端部(第1上アーム部12と連結される側と反対側の端部)には、一対のリスト支持部16が延設されていて、それらの間に形成されたリスト配置部17にリスト18が取り付けられている。リスト18は、円板状で、第2上アーム部13の一対のリスト支持部16に対向して配置される一対の第1リスト部19と、一対の第1リスト部19に対してほぼ直角に固定される円板状の第2リスト部21とを備える。第2リスト部21の中心線の部分には、貫通孔21aが設けられている。第1リスト部19は、第2上アーム部13の一対のリスト支持部16に支持され、第5回動軸線22を中心に回動自在である。また、リスト18の第2リスト部21は、第1リスト部19に対し、第6回動軸線23を中心に回動自在である。第2上アーム部13におけるリスト配置部17の部分には、リスト18が回動したときに干渉を避けるための逃げ部20が設けられている。上記したように、本実施例のロボット101は、第1ないし第6の回動軸線5,10,14,15,22,23が設けられた6軸の多関節ロボットである。そして、図2に示されるように、ロボット101の各部を動作(回動)させるためのケーブル9は、ロボット101の外部からベース1内に引き込まれ、フレーム2、下アーム6、上アーム11及びリスト18を通って、工具24(エンドエフェクタ)に引き回される。
【0025】
次に、第1実施例のロボット101における本発明に係る特徴的部分について詳細に説明する。なお、本明細書では、ロボット101においてケーブル9を引き回すための構成についてのみ詳細に説明する。このため、各アーム6,11やリスト18を動作(回動)させるための部材(モータ、減速機、軸受、歯車等)の構成については、説明及び図示を省略する。図2に示されるように、上アーム11の第1上アーム部12における第3回動軸線14の周辺部には、ケーブル9を収容するための空間部(第1ケーブル収容部25)が設けられている。第1ケーブル収容部25は、連通孔26によって下アーム6を構成する少なくとも一方側の挟込み部8と連通している。ケーブル9は、下アーム6の挟込み部8から連通孔26を通って、第1ケーブル収容部25に引き込まれる。
【0026】
上アーム11の第1上アーム部12と第2上アーム部13との連結部で、第4回動軸線15の軸線上には、両者に跨ってパイプ材27が取り付けられている。第2上アーム部13にも、第1上アーム部12と同様に第2ケーブル収容部28が設けられている。第1上アーム部12の第1ケーブル収容部25に引き込まれたケーブル9は、このパイプ材26を通って第2上アーム部13の第2ケーブル収容部28に引き込まれる。パイプ材26の中心線は第4回動軸線15と一致しているため、第2上アーム部13が第4回動軸線15を中心に回動したときに、ケーブル9はねじられるだけで済み、ケーブル9の耐久性が良好である。
【0027】
ここで、本実施例のロボット101について使用されるケーブル9について説明する。このケーブル9は、図3に示されるように、多数本の素線が束ねられた状態で外周を絶縁体で被覆された電源線29と、樹脂材よりなる複数本のエアチューブ31,32が束ねられたものである。なお、ケーブル9における電源線29及びエアチューブの外径や本数は、ロボット101に取り付けられる工具24によって各種のものが存在する。
【0028】
図1及び図2に示されるように、第2上アーム部13における一方側(図2の図面視における下側)の側壁部13aには、上アーム11の長手方向に所定の間隔をおいて2つの孔部(第1孔部33と第2孔部34)が設けられている。第1孔部33は、第1上アーム部12との連結部の近傍に設けられ、第2孔部34は、リスト支持部16の付け根の部分に設けられている。第1孔部33により、第2ケーブル収容部28とロボット101の外側空間部Qとが連通される。また、第2孔部34によって、リスト配置部17と外側空間部Qとが連通される。
【0029】
パイプ材27を通って第2上アーム部13の第2ケーブル収容部28に収容されたケーブル9は、第1孔部33を通って外側空間部Qに引き出され、外側空間部Qに露出したまま第2上アーム部13の側壁部13aの壁面にほぼ当接するように、かつケーブル9の軸方向に移動が困難となるように配置され、第2孔部34を通ってリスト配置部17に引き込まれる。そして、リスト18を構成する一対の第1リスト部19の間から第2リスト部21の貫通孔21aに入り込み、リスト18を抜けて工具24に引き回される。外側空間部Qに露出したケーブル9が軸方向に移動しないように、またケーブル9と側壁部13aとの隙間が大きくならないように、ケーブル9をサドル(図示せず)等の部品で第2上アーム部13の側壁部13aに固定させることが望ましい。
【0030】
図2及び図4に示されるように、リスト18が第5回動軸線22を中心に回動すると、リスト18に引き回されたケーブル9が引っ張られる。このときの引っ張りにより、ケーブル9が損傷することを防止するため、第2孔部34の出口部分からリスト18の貫通孔21aの入口部分までの間に配置されるケーブル9は、一定のたるみを有して配置されている(たるみ部35)。この結果、リスト18が回動したときにリスト18が引っ張るケーブル9の長さ分は、リスト配置部17においてたるませたケーブル9のたるみ長さによって吸収される。
【0031】
ここで、図4に示されるように、第2孔部34の中心線34aは、リスト18の第6回動軸線23と直角に配置される。リスト18が原点位置(図1に示される位置)に配置されているとき、平面視においてリスト配置部17に配置されるケーブル9のたるみ部35は、所定長さのたるみを有した屈曲状態(略U字状態)で配置されている。リスト18が回動するとそれに伴い、ケーブル9のたるみ部35は自身のたるみ(余裕長さ)を徐々に短くしながらリスト18に連れ回りする。図4において、リスト18が最大に回動したときのたるみ部35の状態を二点鎖線で示す。
【0032】
本実施例のロボット101の作用について、上アーム11とリスト18が回動したときのケーブル9の挙動を説明する。上アーム11が第3回動軸線14を中心に回動すると、第2上アーム部13の側壁部13aに配置されたケーブル9が上アーム11と一体に回動される。第2上アーム部13の側壁部13aから露出したケーブル9は側壁部13aにほぼ密着状態で、かつケーブル9の軸方向への移動が困難なように取り付けられていて、上アーム11と一体に回動する。このため、上アーム11が高速で回動しても、ケーブル9があばれることはない。なお、第2上アーム部13が、第1上アーム部12に対して第4回動軸線15を中心に回動したときも全く同様である。
【0033】
リスト18が第5回動軸線22を中心に回動すると、リスト配置部17に配置されたケーブル9は、徐々にたるみを短くしながらリスト18の回動に連れ回りする。回動するリスト18が引っ張るケーブル9の引っ張り長さは、予め設定されていたたるみ部35によって吸収されるため、ケーブル9が過度に引っ張られて損傷することはない。また、ケーブル9は、リスト18の一対の第1リスト部19によって挟まれているため、ここでもケーブル9があばれることはない。
【0034】
リスト18の第2リスト部21においては、リスト18の第6回動軸線23とケーブル9の軸心線が同一線上に配置されているため、第2リスト部21が回動したときのねじれ量も少なくて済む。
【0035】
上記したように、ケーブル9において第2上アーム部13から露出した部分は、第2上アーム部13の側壁部13aに略固定状態となっている。このため、上アーム11が回動したときに、ケーブル9の露出部分は上アーム11と一体に回動し、ケーブル9があばれることはない。また、ケーブル9を上アーム11に略固定状態に取り付けるため(換言すれば、本実施例のロボット101では、上アーム11が回動したときのケーブル9のたるみを考慮する必要がない。)、ケーブル9の引き回し作業、取付け作業も容易である。
【0036】
そして、当該ケーブル9において自由な状態(即ち、ケーブル9が全方向に移動可能な状態)となっている部分は、上アーム11の第2孔部34の出口部分からリスト18の貫通孔21aの入口部分までの極めて短い部分(リスト配置部17に配置されている部分)である。しかも、リスト配置部17の周囲は、第2上アーム部13とリスト18によって囲まれている。これにより、何らかの原因でケーブル9があばれても、周辺部材によって規制される。上記の通り、本実施例のロボット101は、ケーブル9の引き回し作業を困難にすることなくケーブル9の「あばれ」を抑止したため、ケーブル9の耐久性が良好になり、その結果ロボット101の高速動作が可能になる。
【0037】
しかも、外側空間部Qに露出したケーブル9は、ロボット101の上アーム11と一体化したような状態を呈するため、ケーブル9を露出することによってロボット101の外観が損なわれることはない。
【実施例2】
【0038】
第1実施例のロボット101の場合、第1孔部33と第2孔部34は、第2上アーム部13の一方側の側壁部13aに、それぞれ1つずつ設けられている。これに対し、図5に示される第2実施例のロボット102では、第2上アーム部13の上壁部13bに1つの第1孔部33が設けられ、一対の側壁部13aのそれぞれに第2孔部34が設けられている。このロボット102の場合、第2上アーム部13の第1孔部33から引き出されたケーブル9は、2方向に分岐して、それぞれのケーブル9が対応する第2孔部34を通ってリスト配置部17に配置され、再び一体となってリスト18の貫通孔21aに通される。第2実施例のロボット102の場合、ケーブル9の外径が大きくなっても、リスト18へのケーブル9の引き回し作業は容易であり、ロボット102の外観を損なうこともない。
【実施例3】
【0039】
図6に示される第3実施例のロボット103では、第2上アーム部13の一対の側壁部13aの両方に、第1孔部33と第2孔部34が設けられている。第2実施例のロボット102では、第1孔部33を通過した後でケーブル9が分岐されている。これに対し、第3実施例のロボット103は、第1孔部33を通過する前に(第2上アーム部13の第2収容部28内で)分岐された形態である。第3実施例のロボット103は、第2実施例のロボット102と同様な効果を奏する。
【0040】
本明細書の各実施例のロボット101〜103では、上アーム11の周囲にケーブル9が引き回される場合について説明した。しかし、上アーム11だけでなく、下アーム6においても同様な構成でケーブル9を引き回してもよい。
【0041】
本明細書の各実施例のロボット101〜103では、リスト18が、一対のリスト支持部16に挟まれ、かつそれらに支持されて回動する形態である。このため、リスト18の剛性が高くなる。しかし、リスト18が1つのリスト支持部16に支持される片持ち構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、特に小型で、アームが高速で回動する産業用ロボットとして利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
101〜103 産業用ロボット
1 ベース(ロボット本体)
2 フレーム(ロボット本体)
6 下アーム(ロボット本体)
9 ケーブル
11 上アーム(アーム)
12 第1上アーム部(第1アーム部)
13 第2上アーム部(第2アーム部)
16 リスト支持部
17 リスト配置部
18 リスト
21a 貫通孔
24 工具
25 第1ケーブル収容部(ケーブル収容部)
28 第2ケーブル収容部(ケーブル収容部)
33 第1孔部
34 第2孔部
35 たるみ部(たるみ)
Q 外側空間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6