【実施例1】
【0021】
最初に、第1実施例のロボット101の全体構成について説明する。
図1に示されるように、例えば床面等の設置面に設置されるベース1にフレーム2が載置されている。このフレーム2は、ベース1の上面に配置される基板部3と、基板部3の周縁部から斜め上方に向かって起立する一対の起立板部4とを備える。また、基板部3の上面には、フレーム2の全体を水平面内(床面と平行な面内)で回動させるためのモータ(図示せず)が取り付けられている。モータのモータ軸を所定方向に回転させることにより、フレーム2は設置面に垂直に設けられた第1回動軸線5を中心に回動する。
【0022】
フレーム2における一対の起立板部4の間に、下アーム6の下半部が取り付けられている。下アーム6の下半部は略円筒形状をなし、円筒部7を形成しているとともに、下アーム6の上半部は円筒部7の軸方向に二股に分かれていて、一対の挟込み部8となっている。一対の挟込み部8の少なくとも一方側の内部は、ケーブル9(
図3参照)を引き込ませることができるように空洞となっている。下アーム6は、円筒部7がフレーム2の一対の起立板部4に挟み込まれて支持され、円筒部7の軸線上に設けられた第2回動軸線10を中心に回動自在である。
【0023】
下アーム6における一対の挟込み部8の間には、上アーム11が取り付けられている。上アーム11は、下アーム6の一対の挟込み部8によって挟み込まれる第1上アーム部12と、第1上アーム部12の一端部から延設される第2上アーム部13とを備える。第1上アーム部12は、下アーム6に連結された状態で第3回動軸線14を中心に回動する。そして、第2上アーム部13は、第1上アーム部12に対して、第4回動軸線15を中心に回動自在である。
【0024】
第2上アーム部13の先端部(第1上アーム部12と連結される側と反対側の端部)には、一対のリスト支持部16が延設されていて、それらの間に形成されたリスト配置部17にリスト18が取り付けられている。リスト18は、円板状で、第2上アーム部13の一対のリスト支持部16に対向して配置される一対の第1リスト部19と、一対の第1リスト部19に対してほぼ直角に固定される円板状の第2リスト部21とを備える。第2リスト部21の中心線の部分には、貫通孔21aが設けられている。第1リスト部19は、第2上アーム部13の一対のリスト支持部16に支持され、第5回動軸線22を中心に回動自在である。また、リスト18の第2リスト部21は、第1リスト部19に対し、第6回動軸線23を中心に回動自在である。第2上アーム部13におけるリスト配置部17の部分には、リスト18が回動したときに干渉を避けるための逃げ部20が設けられている。上記したように、本実施例のロボット101は、第1ないし第6の回動軸線5,10,14,15,22,23が設けられた6軸の多関節ロボットである。そして、
図2に示されるように、ロボット101の各部を動作(回動)させるためのケーブル9は、ロボット101の外部からベース1内に引き込まれ、フレーム2、下アーム6、上アーム11及びリスト18を通って、工具24(エンドエフェクタ)に引き回される。
【0025】
次に、第1実施例のロボット101における本発明に係る特徴的部分について詳細に説明する。なお、本明細書では、ロボット101においてケーブル9を引き回すための構成についてのみ詳細に説明する。このため、各アーム6,11やリスト18を動作(回動)させるための部材(モータ、減速機、軸受、歯車等)の構成については、説明及び図示を省略する。
図2に示されるように、上アーム11の第1上アーム部12における第3回動軸線14の周辺部には、ケーブル9を収容するための空間部(第1ケーブル収容部25)が設けられている。第1ケーブル収容部25は、連通孔26によって下アーム6を構成する少なくとも一方側の挟込み部8と連通している。ケーブル9は、下アーム6の挟込み部8から連通孔26を通って、第1ケーブル収容部25に引き込まれる。
【0026】
上アーム11の第1上アーム部12と第2上アーム部13との連結部で、第4回動軸線15の軸線上には、両者に跨ってパイプ材27が取り付けられている。第2上アーム部13にも、第1上アーム部12と同様に第2ケーブル収容部28が設けられている。第1上アーム部12の第1ケーブル収容部25に引き込まれたケーブル9は、このパイプ材26を通って第2上アーム部13の第2ケーブル収容部28に引き込まれる。パイプ材26の中心線は第4回動軸線15と一致しているため、第2上アーム部13が第4回動軸線15を中心に回動したときに、ケーブル9はねじられるだけで済み、ケーブル9の耐久性が良好である。
【0027】
ここで、本実施例のロボット101について使用されるケーブル9について説明する。このケーブル9は、
図3に示されるように、多数本の素線が束ねられた状態で外周を絶縁体で被覆された電源線29と、樹脂材よりなる複数本のエアチューブ31,32が束ねられたものである。なお、ケーブル9における電源線29及びエアチューブの外径や本数は、ロボット101に取り付けられる工具24によって各種のものが存在する。
【0028】
図1及び
図2に示されるように、第2上アーム部13における一方側(
図2の図面視における下側)の側壁部13aには、上アーム11の長手方向に所定の間隔をおいて2つの孔部(第1孔部33と第2孔部34)が設けられている。第1孔部33は、第1上アーム部12との連結部の近傍に設けられ、第2孔部34は、リスト支持部16の付け根の部分に設けられている。第1孔部33により、第2ケーブル収容部28とロボット101の外側空間部Qとが連通される。また、第2孔部34によって、リスト配置部17と外側空間部Qとが連通される。
【0029】
パイプ材27を通って第2上アーム部13の第2ケーブル収容部28に収容されたケーブル9は、第1孔部33を通って外側空間部Qに引き出され、外側空間部Qに露出したまま第2上アーム部13の側壁部13aの壁面にほぼ当接するように、かつケーブル9の軸方向に移動が困難となるように配置され、第2孔部34を通ってリスト配置部17に引き込まれる。そして、リスト18を構成する一対の第1リスト部19の間から第2リスト部21の貫通孔21aに入り込み、リスト18を抜けて工具24に引き回される。外側空間部Qに露出したケーブル9が軸方向に移動しないように、またケーブル9と側壁部13aとの隙間が大きくならないように、ケーブル9をサドル(図示せず)等の部品で第2上アーム部13の側壁部13aに固定させることが望ましい。
【0030】
図2及び
図4に示されるように、リスト18が第5回動軸線22を中心に回動すると、リスト18に引き回されたケーブル9が引っ張られる。このときの引っ張りにより、ケーブル9が損傷することを防止するため、第2孔部34の出口部分からリスト18の貫通孔21aの入口部分までの間に配置されるケーブル9は、一定のたるみを有して配置されている(たるみ部35)。この結果、リスト18が回動したときにリスト18が引っ張るケーブル9の長さ分は、リスト配置部17においてたるませたケーブル9のたるみ長さによって吸収される。
【0031】
ここで、
図4に示されるように、第2孔部34の中心線34aは、リスト18の第6回動軸線23と直角に配置される。リスト18が原点位置(
図1に示される位置)に配置されているとき、平面視においてリスト配置部17に配置されるケーブル9のたるみ部35は、所定長さのたるみを有した屈曲状態(略U字状態)で配置されている。リスト18が回動するとそれに伴い、ケーブル9のたるみ部35は自身のたるみ(余裕長さ)を徐々に短くしながらリスト18に連れ回りする。
図4において、リスト18が最大に回動したときのたるみ部35の状態を二点鎖線で示す。
【0032】
本実施例のロボット101の作用について、上アーム11とリスト18が回動したときのケーブル9の挙動を説明する。上アーム11が第3回動軸線14を中心に回動すると、第2上アーム部13の側壁部13aに配置されたケーブル9が上アーム11と一体に回動される。第2上アーム部13の側壁部13aから露出したケーブル9は側壁部13aにほぼ密着状態で、かつケーブル9の軸方向への移動が困難なように取り付けられていて、上アーム11と一体に回動する。このため、上アーム11が高速で回動しても、ケーブル9があばれることはない。なお、第2上アーム部13が、第1上アーム部12に対して第4回動軸線15を中心に回動したときも全く同様である。
【0033】
リスト18が第5回動軸線22を中心に回動すると、リスト配置部17に配置されたケーブル9は、徐々にたるみを短くしながらリスト18の回動に連れ回りする。回動するリスト18が引っ張るケーブル9の引っ張り長さは、予め設定されていたたるみ部35によって吸収されるため、ケーブル9が過度に引っ張られて損傷することはない。また、ケーブル9は、リスト18の一対の第1リスト部19によって挟まれているため、ここでもケーブル9があばれることはない。
【0034】
リスト18の第2リスト部21においては、リスト18の第6回動軸線23とケーブル9の軸心線が同一線上に配置されているため、第2リスト部21が回動したときのねじれ量も少なくて済む。
【0035】
上記したように、ケーブル9において第2上アーム部13から露出した部分は、第2上アーム部13の側壁部13aに略固定状態となっている。このため、上アーム11が回動したときに、ケーブル9の露出部分は上アーム11と一体に回動し、ケーブル9があばれることはない。また、ケーブル9を上アーム11に略固定状態に取り付けるため(換言すれば、本実施例のロボット101では、上アーム11が回動したときのケーブル9のたるみを考慮する必要がない。)、ケーブル9の引き回し作業、取付け作業も容易である。
【0036】
そして、当該ケーブル9において自由な状態(即ち、ケーブル9が全方向に移動可能な状態)となっている部分は、上アーム11の第2孔部34の出口部分からリスト18の貫通孔21aの入口部分までの極めて短い部分(リスト配置部17に配置されている部分)である。しかも、リスト配置部17の周囲は、第2上アーム部13とリスト18によって囲まれている。これにより、何らかの原因でケーブル9があばれても、周辺部材によって規制される。上記の通り、本実施例のロボット101は、ケーブル9の引き回し作業を困難にすることなくケーブル9の「あばれ」を抑止したため、ケーブル9の耐久性が良好になり、その結果ロボット101の高速動作が可能になる。
【0037】
しかも、外側空間部Qに露出したケーブル9は、ロボット101の上アーム11と一体化したような状態を呈するため、ケーブル9を露出することによってロボット101の外観が損なわれることはない。