特許第6299973号(P6299973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6299973ガラス牽引装置、ガラス成形装置及びガラス成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299973
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】ガラス牽引装置、ガラス成形装置及びガラス成形方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/04 20060101AFI20180319BHJP
   C03B 7/22 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   C03B17/04 A
   C03B7/22
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-168412(P2014-168412)
(22)【出願日】2014年8月21日
(65)【公開番号】特開2016-44090(P2016-44090A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】加賀井 翼
(72)【発明者】
【氏名】北川 良弘
【審査官】 山田 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭51−038917(JP,Y1)
【文献】 特開平01−131030(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/070672(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 7/00
C03B 9/00−17/06
C03B 19/00
C03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状ガラスを連続的に成形する成形手段と、前記成形手段によって連続的に成形された前記状ガラスを、その下流側で、その軸線の方向に沿って牽引しながら前記軸線の周りに回転させる牽引回転手段を備え
前記成形手段は、回転する成形体で構成され、前記成形体は、その外表面に沿って溶融ガラスを流下させて前記管状ガラスを連続的に成形し、
前記牽引回転手段が、前記管状ガラスを前記軸線の方向に沿って牽引する牽引手段と、前記軸線の周りに前記牽引手段を回転させる回転駆動手段とで構成され、
前記回転駆動手段が、前記成形体の回転方向と同一方向に前記牽引手段を回転させると共に、前記成形体の回転速度より速い速度で前記牽引手段を回転させることを特徴とするガラス成形装置。
【請求項2】
前記牽引手段が、前記軸線の方向の定位置で、前記管状ガラスを挟持して回転することによって牽引する一対の回転部材で構成されたことを特徴とする請求項に記載のガラス成形装置。
【請求項3】
前記回転部材が、前記管状ガラスを所定の長さに亘り連続して接触保持するベルトで構成されたことを特徴とする請求項に記載のガラス成形装置。
【請求項4】
前記成形体の回転中心が上下方向であり、前記成形体の回転中心に対して、前記牽引手段の回転中心が、同一直線上に位置することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のガラス成形装置。
【請求項5】
成形手段によって連続的に成形された管状ガラスを、その下流側で、牽引回転手段により、前記管状ガラスの軸線の方向に沿って牽引しながら前記軸線の周りに回転させ
前記成形手段を、回転する成形体で構成し、前記成形体の外表面に沿って溶融ガラスを流下させて前記管状ガラスを連続的に成形し、
前記牽引回転手段を、前記管状ガラスを前記軸線の方向に沿って牽引する牽引手段と、前記軸線の周りに前記牽引手段を回転させる回転駆動手段とで構成し、
前記回転駆動手段により、前記成形体の回転方向と同一方向に前記牽引手段を回転させると共に、前記成形体の回転速度より速い速度で前記牽引手段を回転させることを特徴とするガラス成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に成形された管状又は円柱状ガラスをその下流側で牽引するガラス牽引装置、該ガラス牽引装置を備えるガラス成形装置、及び、管状又は円柱状ガラスを成形するガラス成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、管状又は円柱状ガラスを連続的に成形する場合には、連続的に成形された管状又は円柱状ガラスを、その下流側で、その軸線の方向に沿って牽引する装置が使用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、管状ガラスを成形する場合に使用されるガラス牽引装置が開示されている。このガラス牽引装置は、連続的に成形された管状ガラスを挟持して横方向に牽引する一対のコンベアベルトで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−54742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなガラス牽引装置を使用して管状又は円柱状ガラスを連続的に成形していると、例えば成形時の振動等の影響を受けて形状の不具合が生じる場合があった。このような問題は、管状又は円柱状ガラスを横方向に牽引する場合に限らず、管状又は円柱状ガラスを下方向に牽引する場合にも生じ得る。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、管状又は円柱状ガラスを連続的に成形する場合に、形状の不具合が生じることを抑制することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために創案された本発明に係るガラス成形装置は、管状ガラスを連続的に成形する成形手段と、前記成形手段によって連続的に成形された前記状ガラスを、その下流側で、その軸線の方向に沿って牽引しながら前記軸線の周りに回転させる牽引回転手段を備え、前記成形手段は、回転する成形体で構成され、前記成形体は、その外表面に沿って溶融ガラスを流下させて前記管状ガラスを連続的に成形し、前記牽引回転手段が、前記管状ガラスを前記軸線の方向に沿って牽引する牽引手段と、前記軸線の周りに前記牽引手段を回転させる回転駆動手段とで構成され、前記回転駆動手段が、前記成形体の回転方向と同一方向に前記牽引手段を回転させると共に、前記成形体の回転速度より速い速度で前記牽引手段を回転させることに特徴づけられる。
【0008】
この構成であれば、管状又は円柱状ガラスに、その軸線周りに所定の回転力が付与される。これにより、固化中のガラスが少し捻じれることによって構造的に剛性が向上する。このため、振動等を受けてもガラスの形状が維持されやすく、ガラスの形状が歪むということが抑制されるので、管状又は円柱状ガラスの形状に不具合が生じることを抑制できる。このように、本発明のガラス牽引装置によれば、管状又は円柱状ガラスを連続的に成形する場合に、形状の不具合が生じることを抑制することができる。また、牽引手段に牽引される管状ガラスが、成形体の回転につられて回転する。これに対して、牽引手段が成形体と同一方向に回転し、成形体の回転速度より牽引手段の回転速度が速くなるので、管状ガラスに適切な回転力を付与することが可能である。これにより、管状ガラスの形状に不具合が生じることを抑制可能になる。
【0011】
上記の構成において、前記牽引手段が、前記軸線の方向の定位置で、前記管状又は円柱状ガラスを挟持して回転することによって牽引する一対の回転部材で構成されたことが好ましい。
【0012】
例えば、ガラスの下流側先端を把持して牽引するチャック等の牽引手段であれば、牽引手段を牽引開始位置と終了位置の間を往復移動させる必要がある。これに対し、上記の構成であれば、ガラスの牽引を軸線方向の定位置で行なうので、牽引手段の往復移動を不要にすることができる。
【0013】
上記の構成において、前記回転部材が、前記管状又は円柱状ガラスを所定の長さに亘り連続して接触保持するベルトで構成されたことが好ましい。
【0014】
この構成であれば、ガラスを所定の長さに亘り連続して接触するので、ガラスに対する回転部材の接触面積が大きくなり、局部的に接触圧がガラスに掛かることが抑制される。これにより、回転部材のガラスへの接触がガラスの形状に悪影響を与えることを抑制できる。
【0017】
上記の構成において、前記成形体の回転中心が上下方向であり、前記成形体の回転中心に対して、前記牽引手段の回転中心が、同一直線上に位置することが好ましい。
【0018】
この構成であれば、管状ガラスが成形体と牽引手段の間で屈曲することが抑制されるので、管状ガラスに屈曲による複雑な力が掛かることが抑制される。これにより、管状ガラスの形状に不具合が生じることを抑制できる。
【0023】
また、上記課題を解決するために創案された本発明に係るガラス成形方法は、成形手段によって連続的に成形された管状ガラスを、その下流側で、牽引回転手段により、前記管状ガラスの軸線の方向に沿って牽引しながら前記軸線の周りに回転させ、前記成形手段を、回転する成形体で構成し、前記成形体の外表面に沿って溶融ガラスを流下させて前記管状ガラスを連続的に成形し、前記牽引回転手段を、前記管状ガラスを前記軸線の方向に沿って牽引する牽引手段と、前記軸線の周りに前記牽引手段を回転させる回転駆動手段とで構成し、前記回転駆動手段により、前記成形体の回転方向と同一方向に前記牽引手段を回転させると共に、前記成形体の回転速度より速い速度で前記牽引手段を回転させることに特徴づけられる。
【0024】
この構成であれば、冒頭のガラス牽引装置と実質的に同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明によれば、管状又は円柱状ガラスを連続的に成形する場合に、形状の不具合が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係るガラス成形装置を示す概略正面図である。
図2】(A)が成形炉の縦断面図、(B)が成形炉の横断面図である。
図3】成形体の縦断面図である。
図4】成形体の変形例を示す縦断面図である。
図5】成形体の平面図である。
図6】(A)が供給管の供給口周辺の正面図、(B)が供給管の供給口周辺の側面図である。
図7】(A)が管引き装置の正面図、(B)が管引き装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係るガラス成形装置を示す概略正面図である。このガラス成形装置1は、例えば蛍光灯等に使用される管状ガラスGtを成形する。本実施形態で、成形される管状ガラスGtは、例えば、直径が15〜150mmで、ガラスの厚さが1.0mm〜3.0mmである。
【0029】
ガラス成形装置1は、溶解槽2と、供給管3と、成形炉4と、管引き装置5を主要な構成要素とする。溶解槽2は、溶融ガラスGmを生成及び貯留する。供給管3は、溶解槽2から溶融ガラスGmを成形炉4内に供給する。成形炉4は、その内部に、供給管3から溶融ガラスGmを供給されながら上下方向の軸線周りに回転する成形体6を有する。ここで、本実施形態では、成形体6の軸線は鉛直方向であり、この鉛直方向という文言には、鉛直方向に対する傾斜角度が±5°までの方向を含む。
【0030】
そして、成形体6は、管状ガラスGtを連続的に成形する成形手段であり、成形体6は、その外表面に沿って溶融ガラスGmを流下させて管状ガラスGtを連続的に成形する。成形体6は、不図示の駆動装置によって回転駆動される。管引き装置5は、回転中の成形体6から流下する溶融ガラスGmを下方に引く。つまり、管引き装置5は、管状ガラスGtをその下流側で牽引するガラス牽引装置である。
【0031】
また、ガラス成形装置1は、供給管3を加熱する第1加熱手段7を備えている。そして、供給管3は、溶解槽2から下方に延びる縦方向部3aと、縦方向部3aの下端の屈曲部から横方向に延びる横方向部3bと、横方向部3bの先端の絞り部から成形体6近傍まで横方向に延びる小径部3cとを有する。横方向部3bは、縦方向部3aと同径であり、小径部3cは、横方向部3bより小径である。
【0032】
本実施形態では、供給管3は、白金等の導電性金属で形成されており、この第1加熱手段7は、供給管3の横方向部3bに接続された電極であり、供給管3の横方向部3bを通電加熱する。第1加熱手段7による供給管3の横方向部3bの加熱を調整することによって、供給管3の横方向部3b内を流れる溶融ガラスGmの温度を調整し、これにより、この溶融ガラスGmの粘度を調整する。
【0033】
勿論、第1加熱手段7は、これに限定されず、例えば、供給管3の周囲に配置したヒータ等であってもよい。また、第1加熱手段7による加熱箇所は、横方向部3bに限定されず、縦方向部3aや小径部3cでもよい。
【0034】
供給管3から成形体6に供給される溶融ガラスGmの温度は、溶融ガラスGmの組成にもよるが、例えば1000℃〜1300℃である。1000℃未満の場合には、粘度が高すぎてスムーズに溶融ガラスGmが流れない可能性がある。1300℃を超える場合には、粘度が低すぎて溶融ガラスGmに十分な厚みが得られない可能性がある。
【0035】
供給管3から成形体6に供給される溶融ガラスGmの粘度は、例えば103P〜104Pである。103P未満の場合には、粘度が低すぎて溶融ガラスGmに十分な厚みが得られない可能性がある。104Pを超える場合には、粘度が高すぎてスムーズに溶融ガラスGmが流れない可能性がある。
【0036】
また、ガラス成形装置1は、成形炉4内を加熱する第2加熱手段8を有する。第2加熱手段8は、成形体6の外周側に配置され、成形炉4内を加熱することにより、成形体6を流下する溶融ガラスGmを加熱する。第2加熱手段8による成形炉4内の加熱を調整することによって、成形体6を流下する溶融ガラスGmの温度を調整し、これにより、この溶融ガラスGmの粘度を調整する。
【0037】
図2に示すように、本実施形態では、第2加熱手段8は、均熱板8a(耐火物)と、均熱板8aを外周側から加熱するヒータ8bとで構成されている。均熱板8aは、成形炉4の周壁を構成する。また、均熱板8aは、成形体6の周方向に沿って複数配設されており、成形体6の周方向では、同一の温度となるように構成されている。
【0038】
図3に示すように、成形体6は、スリーブ部9と、スリーブ部9を下側から支持するメタルチップ10を主要な構成要素とする。スリーブ部9は、例えば耐火物で構成され、本体部9aと、本体部9aの上端から上方に延びる軸部9bとを有する。スリーブ部9は、その内部に軸線方向に沿って延びる孔を有し、孔内には、例えば白金等の金属管11が配設されている。金属管11の上端は、不図示のエアコンプレッサに接続されている。金属管11の下端には、メタルチップ10が連結されている。メタルチップ10は、例えば白金等の金属で構成されている。メタルチップ10には、軸線方向に沿った貫通孔10aが形成されており、貫通孔10aは、金属管11の内部に連通している。
【0039】
スリーブ部9の軸部9bと、スリーブ部9内の金属管11は、上方で、不図示の駆動装置から回転駆動力を付与され、これによって、スリーブ部9とメタルチップ10は、同期して回転する。なお、本実施形態では、平面視で、成形体6は時計回りに回転する。
【0040】
図3に示すように、成形体6は、スリーブ部9の本体部9aの上側に、回転中に供給管3の小径部3cから供給された溶融ガラスGmを受ける上面12を有する。上面12は、受けた溶融ガラスGmを流下させる外周縁12aを有する。そして、成形体6は、スリーブ部9の本体部9a及びメタルチップ10の外周面で構成される筒状の側面13を有する。側面13には、回転中に外周縁12aから流下した溶融ガラスGmが流下する。なお、本実施形態では、成形体6の上面12及び側面13は、その横断面の輪郭線が何れの軸方向位置でも真円形状である。
【0041】
上面12は、外周縁12aから内周側に移行するに従って漸次高くなる形状であり、本実施形態ではテーパ面である。上面12の水平面に対する傾斜角度は、例えば10°〜20°である。上面12の傾斜角度が、10°未満の場合、溶融ガラスGmが外周縁12aから流下する速度が遅くなり、上面12で溶融ガラスGmが失透する可能性がある。上面12の傾斜角度が、20°を超える場合、溶融ガラスGmが外周縁12aから流下する速度が速くなり、溶融ガラスGmが上面12で周方向につながらない可能性がある。
【0042】
本実施形態では、側面13は、外周縁12aに接続する上側均一径部13aと、上側均一径部13aの下端に接続する絞り部13bと、絞り部13bの下端に接続する下側均一径部13cとを有する。上側及び下側均一径部13a,13cは、軸方向で径が均一な部位である。下側均一径部13cは、上側均一径部13aに比較して、径が小さく、また、軸線方向の長さが非常に短い。絞り部13bは、下方に向かって漸次縮径する部位であり、本実施形態ではテーパ面である。本実施形態では、絞り部13bと下側均一径部13cは、メタルチップ10の外周面で構成されている。本実施形態では、上面12の水平面に対する傾斜角度に比較して、絞り部13bの水平面に対する傾斜角度は大きい。
【0043】
勿論、成形体6の形状は、図3で説明した形状に限定されるものでは無い。例えば、側面13の上側均一径部13aを軸方向の途中で下方に向かって漸次縮径させてもよい。つまり、側面13に、絞り部を複数設けてもよい。更に、例えば、図4(A)に示すように、成形体6は、その側面13が絞り部を有さずに、側面13が均一径部だけで構成されてもよい。また、成形体6は、図4(B)に示すように、その上面12に環状の凹部12bが設けられ、凹部12bに溶融ガラスGmが溜まるようにしてもよい。更には、成形体6は、図4(C)に示すように、その側面13に環状の凸部13dが設けられてもよい。更には、成形体6は、図4(D)に示すように、側面13を有さなくてもよい。
【0044】
なお、成形体6の回転速度は、例えば、3rpm〜15rpmである。成形体6の回転速度が3rpm未満の場合、溶融ガラスGmが上面12上で広がる前に側面13に流下するため、側面13に螺旋状の厚み分布が生じる可能性がある。15rpmを超えると、遠心力に起因して上面12から側面13に溶融ガラスGmがスムーズに流下しなくなる可能性がある。
【0045】
次に、図5図6を参照して、本実施形態の供給管3の小径部3cについて説明する。なお、図3図4では、供給管3の小径部3cを模式的に図示している。
【0046】
図5に示すように、供給管3の小径部3cは、上面12の上方に位置する供給口3dを有する。そして、本実施形態では、溶解槽2側から延びてきた供給管3の小径部3cは、平面視で上面12の上方で成形体6の回転方向下流側に屈曲し、その先端に供給口3dを有する。つまり、供給口3dは、成形体6の回転方向下流側に開口している。この供給口3dの開口方向により、供給管3は、白矢印Aで示すように、供給口3dから回転方向下流側の上面12に向かって溶融ガラスGmを供給する。
【0047】
供給管3の小径部3cは、径が均一であると共に、図6(A)に示すように、その横断面形状が丸(円)形状である。そして、図6(B)に示すように、供給口3dは、側面視で、下側が突出するように供給管3を斜めに直線状に切断した形状である。
【0048】
図7に示すように、管引き装置5は、成形炉4によって連続的に成形された管状ガラスGtを、管状ガラスGtの下流側で、管状ガラスGtの軸線Jの方向に沿って牽引する牽引手段14と、管状ガラスGtの軸線Jの周りに前記牽引手段14を回転させる回転駆動手段15とを備える。牽引手段14と回転駆動手段15は、連続的に成形された管状ガラスGtを、管状ガラスGtの下流側で、管状ガラスGtの軸線Jの方向に沿って牽引しながら管状ガラスGtの軸線Jの周りに回転させる牽引回転手段である。
【0049】
本実施形態では、牽引手段14は、管状ガラスGtの軸線J方向の定位置で、管状ガラスGtを挟持して回転する一対の回転部材で構成され、この回転部材は、管状ガラスGtを所定の長さに亘り連続して接触保持するベルト14aで構成されている。勿論、回転部材は、これに限定されず、例えば、管状ガラスGtを挟持して回転する複数対のローラを、管状ガラスGtの軸線J方向に沿って配設してもよい。
【0050】
本実施形態では、各ベルト14aは、無端環状で、上下方向に配置された一対の大径プーリ14bと、一対の大径プーリ14bの間に配置された一対の小径プーリ14cに掛け渡されている。小径プーリ14cによって、所定の接触圧でベルト14aが管状ガラスGtに接触する。大径及び小径プーリ14b,14cは、回転自在に取り付け板14dに取り付けられている。取り付け板14dは、回転テーブル14eに固定されている。プーリ駆動手段14fが、大径プーリ14bを回転させ、この回転がベルト14aを介して小径プーリ14cに伝搬され、小径プーリ14cが回転する。プーリ駆動手段14fも回転テーブル14eに固定されている。
【0051】
回転テーブル14eは、不図示の回転支持部材を介して、回転自在に支持されている。そして、回転テーブル14eは、回転駆動手段15によって回転駆動され、これにより、ベルト14aは管状ガラスGtの軸線Jの周りに回転(旋回)する。
【0052】
ベルト14aの旋回の中心線は、成形体6の回転の中心線に対し、同一直線上に位置する。ここで、同一直線上に位置するという文言には、成形体6の回転の中心線に対するベルト14aの旋回の中心線の傾斜角度が±5°までの状態を含む。
【0053】
また、本実施形態では、回転駆動手段15が、成形体6の回転方向と同一方向にベルト14aを回転(旋回)させる。つまり、ベルト14aは、平面視で、時計回りに旋回する。そして、回転駆動手段15が、成形体6の回転速度より速い速度でベルト14aを旋回させる。ベルト14aの旋回速度は、例えば3rpm〜20rpmである。
【0054】
次に、図1及び図3に基づいてガラス成形装置1による管状ガラスGtの成形方法について説明する。
【0055】
あらかじめ、溶解槽2で、ガラス原料を溶融して、溶融ガラスGmを生成し貯留しておく。そして、第1加熱手段7で供給管3を所定の温度に加熱しておく。また、第2加熱手段で、成形炉4内を所定の温度に加熱しておく。そして、エアコンプレッサを起動して、金属管11内にエアを供給する。金属管11内に供給されたエアは、貫通孔10aを経由して、メタルチップ10の下端から下方へ噴出する。また、管引き装置5を起動し、ベルト14aを、プーリ駆動手段14fによって回転させながら、回転駆動手段15によって旋回させる。
【0056】
次に、不図示の駆動装置によって、成形体6を上下方向の軸線周りに回転させる。そして、溶解槽2から供給管3に溶融ガラスGmを供給し、供給管3の供給口3dから成形体6の上面12に溶融ガラスGmを供給する。すると、溶融ガラスGmは、成形体6の上面12に受けられ、上面12の外周縁12aから流下する。そして、溶融ガラスGmは、成形体6の側面13を流下する。側面13の下側均一径部13cの下端における溶融ガラスGmの厚さは、上面12における溶融ガラスGmの厚さより厚くなる。
【0057】
そして、成形体6の側面13の下端から流下した溶融ガラスGmは管状となり、溶融状態の管状ガラスGtとなる。この際、成形体6のメタルチップ10の下端から噴出するエアにより溶融ガラスGmは安定して管状となる。この溶融状態の管状ガラスGtが、徐々に固化しつつ、その下流側で、管引き装置5のベルト14aによって、その軸線Jの方向に沿って下方向に牽引されると同時に、その軸線Jの回りに回転させられる。これによって、管状ガラスGtの成形が完了する。
【0058】
所定長さの管状ガラスGtの成形が完了した時点で、管状ガラスGtを切断する。この切断方法は、特に限定されるものでは無いが、例えば、カッター等で切り欠きを形成し、折り割り切断して良い。以降、管状ガラスGtの成形と切断を繰り返す。そして、所望の量の管状ガラスGtが得られたら、成形体6への溶融ガラスGmの供給を停止し、成形体6の回転と、管引き装置5を停止する。そして、エアコンプレッサ、第1及び第2加熱手段7,8も停止する。
【0059】
以上のように構成されたガラス成形装置1の管引き装置5では、管状ガラスGtに、その軸線J周りに所定の回転力が付与される。これにより、固化中のガラスに適度な捻じれ方向の力が作用することによって構造的に剛性が向上する。このため、振動等を受けてもガラスの形状が維持されやすく、ガラスの形状が歪むということが抑制されるので、管状ガラスGtの形状に不具合が生じることを抑制できる。このように、本実施形態の管引き装置5によれば、管状ガラスGtを連続的に成形する場合に、形状の不具合が生じることを抑制することができる。
【0060】
なお、上記実施形態では、成形体6によって、溶融ガラスから管状ガラスGtを成形し、これをベルト14aで牽引したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、リドロー法によって円柱状ガラスを成形し、管引き装置5で牽引するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、連続的に成形された管状又は円柱状ガラスを、その下流側で、その軸線の方向に沿って牽引しながら前記軸線の周りに回転させる牽引回転手段が、牽引手段14と回転駆動手段15で構成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、牽引回転手段が、管状又は円柱状ガラスの軸線方向の定位置で、前記ガラスを挟持して回転することによって牽引する一対の回転部材で構成されており、前記軸線方向に直角の方向に対して、これら一対の回転部材の回転中心線が相互に反対側に傾斜したものであってもよい。また、例えば、牽引回転手段が、管状又は円柱状ガラスの端部を把持するチャック等の把持手段であり、この把持手段が、前記ガラスをその軸線の方向に沿って牽引しながらこの軸線の周りに回転させる動作をしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 ガラス成形装置
2 溶解槽
3 供給管
4 成形炉
5 管引き装置(ガラス牽引装置)
6 成形体
14 牽引手段
14a ベルト(回転部材)
15 回転駆動手段
Gm 溶融ガラス
Gt 管状ガラス
J 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7