特許第6299986号(P6299986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6299986多層インフレートフィルムを製造するプロセス、およびそのプロセスによって得られるフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299986
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】多層インフレートフィルムを製造するプロセス、およびそのプロセスによって得られるフィルム
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/28 20060101AFI20180319BHJP
   B29C 47/06 20060101ALI20180319BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20180319BHJP
   B29C 47/20 20060101ALI20180319BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20180319BHJP
   B29K 77/00 20060101ALN20180319BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20180319BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20180319BHJP
【FI】
   B29C55/28
   B29C47/06
   B32B27/32 D
   B29C47/20
   B29K23:00
   B29K77:00
   B29L7:00
   B29L9:00
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-548588(P2015-548588)
(86)(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公表番号】特表2016-508081(P2016-508081A)
(43)【公表日】2016年3月17日
(86)【国際出願番号】EP2013077468
(87)【国際公開番号】WO2014096241
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】12198591.5
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ブリンク, テッド
(72)【発明者】
【氏名】ストロークス, アレクサンダー アントニウス マリー
(72)【発明者】
【氏名】トミック, カタリーナ
【審査官】 一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−117580(JP,A)
【文献】 特開昭55−009874(JP,A)
【文献】 特表2000−512574(JP,A)
【文献】 特表2005−522355(JP,A)
【文献】 特表2001−507394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/28
B29C 47/00−47/96
B32B 27/00−27/42
C08G 69/00−69/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのコポリアミド層および少なくとも1つのポリオレフィン層を含有する多層フィルムをインフレートフィルムプロセスによって製造するプロセスにおいて、
・脂肪族非環状ジアミンXおよび脂肪族非環状ジカルボン酸Y、または脂肪族非環状α,ω−アミノ酸Z;および
・コポリアミドの総量に対して0.1重量%以上1.8重量%未満の合計量のジアミンMおよび二酸N(MおよびNは環状である);
のモノマー単位を含む、コポリアミドが使用されることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
少なくとも1つのポリオレフィン層が、LLDPE、LDPEまたはポリプロピレンまたはその混合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
少なくとも1つのポリオレフィン層が、LLDPEとLDPEの混合物である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
少なくとも1つのポリオレフィン層が、ポリプロピレンから本質的になる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
結合層が、少なくとも1つのコポリアミド層と少なくとも1つのポリオレフィン層の間に存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
Nが、イソフタル酸(I)、テレフタル酸(T)、4−メチルイソフタル酸、4−t−ブチルイソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸の群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
Mが、イソホロンジアミン(IPD)、ビス−(p−アミノシクロヘキサン)メタン(PACM)、2,2−ジ−(4−アミノシクロヘキシル)−プロパン、3,3’−ジメチル−4−4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、および3,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナンの群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
・Mが、イソホロンジアミン(IPD)、ビス−(p−アミノシクロヘキサン)メタン(PACM)、2,2−ジ−(4−アミノシクロヘキシル)−プロパン、3,3’−ジメチル−4−4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、および3,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナンの群から選択され、
・Nが、イソフタル酸(I)、テレフタル酸(T)、4−メチルイソフタル酸、4−t−ブチルイソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シス−1,3−シクロヘキサンジカルボン酸およびトランス−1,3−シクロヘキサンジカルボン酸の群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
Zが、ε−カプロラクタム、アミノデカン酸、アミノウンデカン酸およびアミノドデカン酸の群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
Xが、1,4−ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミンの群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
Yが、1,6−ヘキサン二酸、1,8−オクタン二酸、1,9−ノナン二酸、1,11−デカン二酸、ウンデカン二酸,1,12−ドデカン二酸の群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記環状ジアミンMおよび環状二酸Nが、コポリアミドの総量に対して0.2〜1.5重量%の合計量で存在する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
Mの環状ジアミンの前記モノマー単位がイソホロンジアミンであり、かつNの環状二酸の前記モノマー単位がテレフタル酸である、請求項1〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
少なくとも1つのコポリアミド層および少なくとも1つのポリオレフィン層を含有する多層インフレートフィルムにおいて、
・脂肪族非環状ジアミンXおよび脂肪族非環状ジカルボン酸Y、または脂肪族非環状α,ω−アミノ酸Z;および
・コポリアミドの総量に対して0.1重量%以上1.8重量%未満の合計量のジアミンMおよび二酸N(MおよびNは環状である);
のモノマー単位を含む、コポリアミドが使用されることを特徴とする、多層インフレートフィルム。
【請求項15】
Xが、1,4−ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミンの群から選択され、Yが、1,6−ヘキサン二酸、1,8−オクタン二酸、1,9−ノナン二酸、1,11−デカン二酸、ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸の群から選択され、または
Zが、ε−カプロラクタム、アミノデカン酸、アミノウンデカン酸およびアミノドデカン酸の群から選択され、
Mが、イソホロンジアミン(IPD)、ビス−(p−アミノシクロヘキサン)メタン(PACM)、2,2−ジ−(4−アミノシクロヘキシル)−プロパン、3,3’−ジメチル−4−4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、および3,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナンの群から選択され、かつ
Nが、イソフタル酸(I)、テレフタル酸(T)、4−メチルイソフタル酸、4−t−ブチルイソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シス−1,3−シクロヘキサンジカルボン酸およびトランス−1,3−シクロヘキサンジカルボン酸の群から選択される、請求項14に記載の多層インフレートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、インフレートフィルムプロセスによって、少なくとも1つのコポリアミド(coPA)層および少なくとも1つのポリオレフィン層を含有する多層フィルムを製造するプロセスに関する。本発明は、少なくとも1つのコポリアミド層を含有する多層インフレートフィルムにも関する。かかるプロセスは、例えば農業用フィルムおよび例えば食料用の包装フィルムを製造するために使用される場合が多い。ポリオレフィン層は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)がポリオレフィンとして使用された場合に高い引裂き強度、またはポリプロピレンがポリオレフィンとして使用された場合に良好な表面光沢など特定の特性をフィルムに付与し、一方では、原則としてポリアミド層はフィルムにバリヤ性を付与することが意図される。
【0002】
既知のプロセスの問題は、フィルムに特性の所望の組み合わせを付与するのにそれら自体は十分である、ポリアミド層とポリオレフィン層の組み合わせが、インフレートフィルムプロセスによって加工するのが難しいことが多いことである。インフレートフィルム装置の適切な設定は見つけ出すのが難しいことが判明しており、さらにかかる設定は、狭い制限範囲内で維持しなければならない。これによって、プロセスが難しくなり、特に生産速度およびブローアップ比に関して融通性がほとんどなくなる。ポリアミドの代わりにコポリアミドを使用することによって、加工を改善することができる。しかしながら、フィルムのバリヤ性が、特に高湿度にて損なわれる。これによって、この多層フィルムは、例えば食品包装または医療用包装における用途にあまり適さなくなる。
【0003】
本発明は、より高い生産速度を示すだけでなく、十分なバリヤ性を有する多層インフレートフィルムを提供する、インフレートフィルムプロセスによってインフレートフィルムを製造するプロセスを提供することを目的とする。
【0004】
この目的は、インフレートフィルムプロセスを用いて、少なくとも1つのコポリアミド層および少なくとも1つのポリオレフィン層を含有する多層フィルムを製造するプロセスによる、本発明によるプロセスによって達成され、そのコポリアミドは、
・脂肪族非環状ジアミンXおよび脂肪族非環状ジカルボン酸Yまたは脂肪族非環状α,ω−アミノ酸Z、および
・コポリアミドの総量に対して0.1〜2重量%の量のジアミンMおよび二酸N(MおよびNは環状である)
のモノマー単位を含む。
【0005】
記載の層を含有するフィルムバブル(film bubble)は、より良い安定性を保持し、コポリアミドを使用してより高い処理量でブロー成形することができることが判明した。コポリアミドが存在するために、例えば、バブル安定性が乏しいことが知られているLLDPEおよびポリプロピレン(PP)と組み合わせた場合でさえ、ポリアミド−6と低密度ポリエチレン(LDPE)とを組み合わせた場合よりもバブル安定性が高い。意外なことに、そのバリヤ性は、特により高湿度においても高いままである。多層フィルムのインフレートフィルムプロセスなどのインフレートフィルムプロセスは、本発明によるプロセスにおいてその既知の実施形態において適用され得る、それ自体既知のプロセスであり、したがってそのプロセスは、特別な必要条件を何ら課さない。
【0006】
コポリアミドは一般に、Nylon Plastics Handbook,Melvin I.Kohan編,Hanser Publishers,1995,365頁で知られており、記述されている。
【0007】
命名法は、Nylon Plastics Handbook,Melvin I.Kohan編,Hanser Publishers,1995で使用される方法に準拠し;例えば、PA−612は、構成単位ヘキサン−1,6−ジアミンと1,12−ドデカン酸を有するホモポリマーを意味し、PA−6/12は、ε−カプロラクタムおよびラウロラクタムから製造されるコポリマーを意味し、PA−6とPA−12のブレンドはPA−6/PA−12と記載される。
【0008】
ポリアミドホモポリマーは、例えばジアミン(X)および二酸(Y)から製造することができ、AABB型ポリアミドとして一般に知られ、例えばPA−612は、構成単位ヘキサン−1,6−ジアミン(HMDA)および1,12−ドデカン酸を有するホモポリマーを意味する。ポリアミドホモポリマーは、アミノ酸(Z)からも製造することができ、AB型ポリアミドとして一般に知られ、例えばPA−6は、ε−カプロラクタムからのホモポリマーを意味する。
【0009】
コポリアミドは通常、PA−XY/MN(PA−XYはAABB型ポリアミドである)、またはPA−Z/MN(PA−ZはAB型ポリアミドである)のいずれかとして記載され、MおよびNは、最初に記載のモノマー単位よりも少ない量で存在する。この表記では、コポリアミドのタイプについて言及していない。したがって、コポリアミドは、ランダム、ブロックまたは交互でさえあり得る。
【0010】
インフレートフィルムプロセスはそれ自体公知であり、例えば、Nylon Plastics Handbook,Melvin I.Kohan編,Hanser Publishers,1995,228,229頁に記述されている。本発明によるプロセスを実施するのに適している具体的なインフレートフィルムプロセスとしては、例えばダブルバブル、トリプルバブルおよびバブルが水によって冷却されるインフレートフィルムプロセスが挙げられる。
【0011】
[脂肪族非環状モノマー単位X、YおよびZ]
本発明によるプロセスにおけるコポリアミドは、脂肪族非環状ジアミンXおよび脂肪族非環状ジカルボン酸Yまたは脂肪族非環状α,ω−アミノ酸Zを含む。
【0012】
好ましくは、X+Yの合計が、コポリアミドの総量に対して少なくとも70重量%であるか、またはZが少なくとも70重量%であり、さらに好ましくは、X+Yの合計またはZが少なくとも80重量%であり、またさらに好ましくは少なくとも90重量%である。非環状という用語は、原子の環が存在しない構造を意味する。重量パーセントは、別段の指定がない限り、コポリアミドの総量に対して示される。
【0013】
脂肪族非環状モノマー単位は、AB型のいずれかであることができ、したがって少なくとも1つのアミン基と、アミノ酸とも示される少なくとも1つの酸基とを有し、本明細書においてZと呼ばれる。AB型脂肪族非環状モノマー単位の例は、ε−カプロラクタム、アミノデカン酸、アミノウンデカン酸およびアミノドデカン酸である。
【0014】
脂肪族非環状モノマー単位は、ジアミンおよび二酸であることもでき、したがってAA型およびBB型の単位であり、本明細書においてXおよびYと示される。脂肪族非環状ジアミンXの例としては、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサンが挙げられる。脂肪族非環状二酸Yの例としては、1,6−ヘキサン二酸、1,8−オクタン二酸、1,9−ノナン二酸、1,11−デカン二酸、ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、1,13−トリデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,15−ヘプタデカン二酸、1,16−ヘキサデカン二酸、1,17−セプタデカン二酸および1,18−オクタデカン二酸が挙げられる。
【0015】
好ましくは、モル比X:Yは、1.1:1〜1:1.1である。好ましくは、脂肪族非環状モノマー単位は、
i.Zについてはε−カプロラクタムまたは
ii.Xについては1,6−ジアミノヘキサンおよびYについては1,6−ヘキサン二酸であり、それは、これらの脂肪族非環状モノマー単位は容易に入手可能であるからである。
【0016】
脂肪族非環状モノマー単位は、AB型およびAA型およびBB型モノマーの混合であることもできる。ε−カプロラクタム自体は環状であるが、コポリアミドに組み込むと、モノマー単位はもはや環状ではない。
【0017】
本発明は、上述のコポリアミドの少なくとも1つの層と少なくとも1つのポリオレフィン層とを含有する多層インフレートフィルムにも関する。
【0018】
[Xが1,4−ジアミノブタンである、実施形態]
他の実施形態において、本発明によるプロセスにおけるコポリアミドは、1,4−ジアミノブタンであるXのモノマー単位と、少なくとも8個の炭素原子を有する脂肪族非環状ジカルボン酸であるYのモノマー単位と、を含む。好ましくは、脂肪族非環状ジカルボン酸Yのモノマー単位は最大で18個の炭素原子を有する。さらに好ましくは、脂肪族非環状ジカルボン酸Yのモノマー単位は、1,8−オクタン二酸、1,9−ノナン二酸、1,10−デカン二酸、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、1,13−トリデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,15−ペンタデカン二酸、1,16−ヘキサデカン二酸、1,17−ヘプタデカン二酸および1,18−オクタデカン二酸の群から選択される。またさらに好ましくは、脂肪族非環状ジカルボン酸のモノマー単位は、偶数個の炭素原子を有し、この結果、コポリアミドの融点が比較的高くなる。最も好ましくは、脂肪族直鎖状ジカルボン酸のモノマー単位は1,10−デカン二酸である。本発明は、コポリアミドの少なくとも1つの層と少なくとも1つのポリオレフィン層とを含有する多層インフレートフィルムにも関し、XおよびYは上述のように選択される。
【0019】
[ジアミンMおよび二酸Nのモノマー単位]
本発明によるプロセスにおけるコポリアミドは、コポリアミドの総量に対して合計量0.1〜2重量%でジアミンMおよび二酸Nを含み、MおよびNは環状である。
【0020】
意外なことに、既にこれらの量はより高いブローアップ比を示し、バリヤ性を維持しながら、より高い生産速度が可能となることが分かっている。好ましくは、M+Nの合計量は、1.9重量%未満、さらに好ましくは1.8重量%未満、またさらに好ましくは1.5重量%未満である。M+Nの合計量は、少なくとも0.1重量%、さらに好ましくは少なくとも0.2重量%、またさらに好ましくは少なくとも0.5重量%である。最も好ましくは、その合計は0.2〜1.5重量%である。好ましくは、モル比M:Nは2:1〜1:2、さらに好ましくは1.2:1〜1:1.2である。
【0021】
環状ジアミンMとしては、芳香族および非芳香族ジアミン、例えばジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン(IPD)、ビス−(p−アミノシクロヘキサン)メタン(PACM)、2,2−ジ−(4−アミノシクロヘキシル)−プロパン、3,3’−ジメチル−4−4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、3,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナンなどが挙げられる。
【0022】
環状二酸Nとしては、芳香族二酸、例えばイソフタル酸(I)、テレフタル酸(T)、4−メチルイソフタル酸、4−t−ブチルイソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。環状二酸Nとしては、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シス−1,3−シクロヘキサンジカルボン酸およびトランス−1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などの非芳香族環状二酸も挙げられる。
【0023】
好ましくは、環状二酸Nは芳香族二酸である。さらに好ましくは、環状二酸Nはイソフタル酸および/またはテレフタル酸である。
【0024】
最も好ましくは、環状ジアミンMはイソホロンジアミンであり、環状二酸Nはテレフタル酸である。
【0025】
最も好ましくは、脂肪族非環状モノマー単位は、
i.Zについてはε−カプロラクタムまたは
ii.Xについては1,6−ジアミノヘキサン、およびYについては1,6−ヘキサン二酸であり、かつMはイソホロンジアミン(IPD)であり、Nはテレフタル酸(T)であり、コポリアミドの総量に対して0.1〜2重量%の量である。
【0026】
コポリアミドは、分岐剤、分岐状モノマー単位、エンドキャップ剤(end capper)などの通常の添加剤、ならびにX、YまたはZと異なる他のモノマー単位を含み得る。
【0027】
本発明によるプロセスは、少なくとも1つのコポリアミド層を有する多層フィルムを形成するが、複数のコポリアミド層も存在し得る。
【0028】
ポリオレフィン層における材料として、既知のポリオレフィン、特にエチレンのホモポリマーおよびそれと1種または複数種のαオレフィンとのコポリマー、プロピレンのホモポリマー、それと1種または複数種のαオレフィン、特にエチレンとのコポリマーが利用される。適切なポリオレフィンとしては、LDPE、LLDPE、ポリプロピレンおよびそのブレンドが挙げられる。特に、LLDPEとLDPEのブレンドは、LLDPE70重量%およびLDPE30重量%の量で使用される。
【0029】
本発明によるプロセスは、複数のポリオレフィン層が存在する多層フィルムを製造するのにも適している。任意選択で、内部層は、メタロセンPEまたはイオノマーを含み、フィルムの溶接を促進することができる。
【0030】
原則的に、本発明によるプロセスにおいて、コポリアミド層は好ましくは、ポリオレフィン層に隣接する。互いに直接連結される、または結合層によって連結される、隣接機能性層としてのコポリアミド層およびポリオレフィン層の適用によって、最も高いバブル安定性が得られることが判明している。したがって、その層は互いに直接的に隣接してもよいが、結合層が、その層の間に存在してもよい。これらの結合層に適した材料の例は、いわゆる結合樹脂(tie resin)である。結合樹脂としては、修飾ポリオレフィン、例えばLDPE、LLDPE、メタロセンPE、ポリエチレン−ビニルアルコール、ポリエチレン−アクリル酸、ポリエチレン−メタクリル酸およびポリプロピレンが挙げられ、α,β−不飽和ジカルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸およびイタコン酸およびその無水物、酸性エステル、酸性イミドおよび酸性イミンの群から選択される少なくとも1つの化合物でグラフト化されている。エチレンと前述のジカルボン酸との修飾コポリマーも結合樹脂として適用され得る。
【0031】
その層が互いに直接的に隣接する場合、ポリオレフィン層は好ましくは、ポリオレフィンと結合樹脂との混合物からなる。
【0032】
コポリアミド層も2つの面でポリオレフィン層、例えばLLDPE層に、およびそれと逆に隣接し得る。形成されたフィルムは、例えばcoPA−LLDPE−coPAまたはLLDPE−coPA−LLDPEサンドイッチ構造を含有する。
【0033】
記載の層の他に、1つまたは複数の他の機能性層も適用され得る。多層フィルムで使用されることが多い層は、例えばエチレン−ビニルアルコールおよびイオノマーからなる層である。
【0034】
インフレートフィルムプロセスによって、かつ本発明によるプロセスによっても、実際に製造される多層フィルムの総厚は、20〜300μmである。本発明によるプロセスにおいて、多層フィルムにおけるポリオレフィン層は好ましくは、少なくとも10μmの厚さを有する。厚さの上限は、意図する用途およびそれに必要な特性によって与えられ、実際にはおよそ200μmに及ぶ。コポリアミド層は通常、少なくとも2μmの厚さ、好ましくはポリオレフィン層の厚さの少なくとも20%の厚さを有し、最大150μm、好ましくは100μmの厚さを有する。存在するいずれかの他の層は、製造プロセス中に、または形成される多層フィルムにおいて、その意図する機能を果たすことができるような厚さを有する。例えば、結合層は、コポリアミド層と同様な厚さを有し得る。
【0035】
本発明によるプロセスにおいて適用されるブローアップ比は、従来のポリアミド−6が適用される場合よりも高く選択されることができると判明している。
【0036】
本発明によるプロセスによって、食品および医療品の包装または高い湿度が存在する他の用途に並外れて適している多層フィルムの製造が可能となる。
【0037】
本発明は、以下の実施例および比較実験を参照して説明される。
【0038】
本発明は、少なくとも1つのコポリアミド層と少なくとも1つのポリオレフィン層とを含有する多層インフレートフィルムであって、
・脂肪族非環状ジアミンXおよび脂肪族非環状ジカルボン酸Yまたは脂肪族非環状α,ω−アミノ酸Z;
・コポリアミドの総量に対して0.1〜2重量%の合計量のジアミンMおよび二酸N(MおよびNは環状である);
のモノマー単位を含むコポリアミドが使用されることを特徴とする、多層インフレートフィルムにも関する。
【0039】
好ましくは、多層インフレートフィルムは、LLDPE、LDPEまたはポリプロピレンまたはその混合物を含む少なくとも1つのポリオレフィン層を含有し、さらに好ましくは、少なくとも1つのポリオレフィン層は、ポリプロピレンから本質的になる。他の実施形態では、多層インフレートフィルムにおいてNは、イソフタル酸(I)、テレフタル酸(T)、4−メチルイソフタル酸、4−t−ブチルイソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸の群から選択される。
【0040】
さらに他の実施形態では、多層インフレートフィルムにおいて、Mは、イソホロンジアミン(IPD)、ビス−(p−アミノシクロヘキサン)メタン(PACM)、2,2−ジ−(4−アミノシクロヘキシル)−プロパン、3,3’−ジメチル−4−4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、および3,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナンの群から選択される。
【0041】
好ましい実施形態において、多層インフレートフィルムは、少なくとも1つのコポリアミド層および少なくとも1つのポリオレフィン層を含有し、そのコポリアミドは、
・脂肪族非環状ジアミンXおよび脂肪族非環状ジカルボン酸Yまたは脂肪族非環状α,ω−アミノ酸Z(Xは、1,4−ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミンの群から選択され、Yは、1,6−ヘキサン二酸、1,8−オクタン二酸、1,9−ノナン二酸、1,11−デカン二酸、ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸の群から選択され、またはZは、ε−カプロラクタム、アミノデカン酸、アミノウンデカン酸およびアミノドデカン酸の群から選択される);
・コポリアミドの総量に対して0.1〜2重量%の合計量のジアミンMおよび二酸N(MおよびNは環状であり、Mは、イソホロンジアミン(IPD)、ビス−(p−アミノシクロヘキサン)メタン(PACM)、2,2−ジ−(4−アミノシクロヘキシル)−プロパン、3,3’−ジメチル−4−4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、および3,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナンの群から選択され、Nは、イソフタル酸(I)、テレフタル酸(T)、4−メチルイソフタル酸、4−t−ブチルイソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シス−1,3−シクロヘキサンジカルボン酸およびトランス−1,3−シクロヘキサンジカルボン酸の群から選択される);
のモノマー単位から構成される。
【0042】
本発明による多層インフレートフィルムは適切には、蓋材(lidding)、熱成形、収縮バッグおよび真空バッグなどの用途において、かつパウチとして使用されることができる。好ましくは、ホモポリアミドの少なくとも1つの層を含有する多層フィルムと比較して、それを超える延伸比が達成されることから、多層インフレートフィルムは、蓋材および熱成形フィルムとして用いられる。
【0043】
[実施例]
7層フィルムで実験を行った。
7層Varex machineを使用して、総厚100ミクロンを有するフィルムを製造した。フィルムの構造は以下のとおりであった:
− 27ミクロンのLDPE(エクソン・モービル社(Exxon Mobil)のLD150BW)MFI0.75
− 8ミクロンのYparex 9601結合樹脂、MFI 1.3
− 12ミクロンの(コ)ポリアミド
− 6ミクロンのYparex 9601、結合樹脂
− 12ミクロンの(コ)ポリアミド
− 8ミクロンのYparex 9601、結合樹脂
− 27ミクロンのLDPE(LD150BW)
【0044】
機械の総生産量は、約400kg/時となった。引取速度は約25m/分であったが、ブローアップ比の変化を補うように合わせた。ダイのダイギャップは内側で1.25mmであり、外側で2.25mmであった。
【0045】
[温度設定:]
PE押出機:170−180−180−180−180℃;溝付きセクション50℃
結合樹脂押出機:200−210−210−210−210℃;溝付きセクション50℃
(コ)PA押出機:250−255−255−255−255℃;溝付きセクション170℃
ダイ:250℃ Monolip冷却環
【0046】
しわが生じるレベルまで、ブローアップ比(BUR)を増加した。しわは望ましくないが、BURは有利には、しわが現れることなく最大生産量を有するように、できる限り高い。
【0047】
[比較例A:]
(コ)ポリアミドがポリアミド−6(Akulon F136−E2)であるフィルムを製造した。初期BURは2.5であった。これを段階的に2.55および2.60/2.65に増加した。2.5まで、しわは目に見えなかった。BUR2.6で、いくらかのしわを確認することができ、それはBUR2.65で許容できなくなった。
【0048】
結論:このプロセスは、折り径(lay flat width)1400mmを有しながらBUR2.55まで安定である。
【0049】
[本発明による実施例1:]
上記の説明に従ってフィルムを製造し、その(コ)ポリアミドはコポリアミドPA6/IPDT(IPDTの量は1重量%)(Akulon XS136−E2)であり、したがってZはε−カプロラクタムであり、Mはイソホロンジアミンであり、Nはテレフタル酸であった。M+Nは1重量%であった。比較例Aのフィルムと比較して、フィルムの透明性の差は確認できなかった。
【0050】
BUR2.65でしわは目に見えなかった。続いて、BURを2.73に増加し、後に2.8に増加した。BUR2.8にて、不意にしわが目に見えた。折り径1400mmを有し、さらに折り径1550mmも有する安定なフィルムを得ることができた。
【0051】
プロセスは、折り径1550mmを有しながらBUR2.73まで安定である。
【0052】
実施例1から、かなり高いブローアップ比が得られるだけでなく(2.55の代わりに2.73)、かなり高い折り径(1400mmに対して1500mm)も得られることが、はっきりと分かる。したがって、本発明によるプロセスによって、特定のコポリアミドを用いることにより、フィルムを約7%多く製造することが可能となる。
【0053】
ASTM D3985に準拠してMocon Ox−tran 2/21装置で、温度23℃にて試験ガスO100%および試料領域50cmを用いて相対湿度0%および85%にて、上記で得られたフィルムの透過データを測定し、以下に説明する。一部のフィルムに関しては、湿度50%でも測定された。その結果を表1および表2に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1の結果から、本発明によるプロセスを用いて、ポリアミド−6と同じ順で透過結果が得られることがはっきりと分かる。特に、高い相対湿度での透過は、これらがむしろ低いままであることから良い結果を示し、それは、フィルムを透過することができる気体の量が低いことを示す。
【0056】
したがって実施例から、本発明によるプロセスを用いて、ポリアミド−6と同レベルのバリヤ性を維持しながら、より高い折り径を有する、多くのフィルムを製造することができることが示されている。
【0057】
2枚の7層インフレートフィルムを製造する、他の実験を行った。
フィルム構造は以下のとおりであった:
A.メタロセン、LDPEおよびブロッキング防止(AB)マスターバッチのブレンドからなるシール層
B.結合層
C.− テキスト参照
D.− テキスト参照
E.結合層
F.PPランダムコポリマー
G.PPランダムコポリマー+AB−マスターバッチ
【0058】
一フィルム、実施例2において、層CおよびDにコポリアミドを使用した。コポリアミドは、コポリアミドの総量に対してIPDTを1重量%含有するPA6/IPDTであった。このフィルムは、層CおよびDが、PA6 90重量%と非晶質ポリアミド(Selar3426)10重量%のブレンドからなるフィルム:比較例Bと比較された。フィルムの総厚は60ミクロンであり、CおよびDは合計18ミクロンであった。層CおよびDの押出機の温度は、ダイ温度と同様に240℃であった。ブローアップ比(BUR)は2.8であった。
【0059】
プロセス安定化後、プロセスがスムーズに行われていることが確認された;本発明によるプロセス、実施例2では、バブル安定性は比較例Bと同程度に良好であった。このことは、実施例2において、比較例Bにおける非晶質材料10重量%と比べて、存在する環状ジアミンおよび環状二酸の量がかなり少ないことから、意外であった。驚くべきことに、実施例2は、比較例Bと比較して完成フィルムのしわが少なかった。
【0060】
【表2】
【0061】
表2の結果から、本発明によるフィルムおよび本発明によるプロセスを用いて、特により低い湿度レベルにて、同様な透過結果が得られることがはっきりと示されている。対照は非晶質ポリアミド10重量%のブレンドを含有するが、実施例2ではIPDT1重量%のみがコポリアミド中に存在したことから、これは驚くべきことである。