【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示日:平成25年12月15日 展示会名:平成25年度南部総合防災訓練の実施 開催場所:徳島県海部郡美波町奥河内字弁才天23−1 旧徳島県立水産高等学校
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
東日本大震災以降、災害時に対する対策が日本各地で実施されており、特に、災害弱者と言われる高齢者の非常時の高台への移動手段が重要な課題となっている。中でも、高台への移動の際に、最も難所となるのは、階段の昇りである。
【0003】
階段を昇る手段として、高齢者を担架に乗せて運んだり、背負って運ぶ手段が一般的であるが、前者は一人の高齢者に対して複数人で運ぶ必要があり、いざという時に複数人が集まらず運べなかったり、後者は背負って運ぶには体力が必要となるため負担であった。そこで、介助者一人で、高齢者を高台に楽に移動させる技術が必要となる。
【0004】
このような技術として、特許文献1に開示された技術が知られている。特許文献1に開示された技術は、階段側壁下に添って登攀(とうはん)のために固定的に設けた梯段と、梯段から登攀用の歯車が外れないようにするための車輪誘導溝及び片方の車輪を段に触れたり衝突しないように少し浮かせて通過させるための手摺状の姿勢保持誘導管を備えた階段昇降支援設備を側壁に設け、この誘導管を車椅子後面から伸展させた姿勢保持腕で慴動的に掴んで、梯段に対してしっかり噛み合わせる登攀(又は下降)用歯車の駆動回転(又は電磁ブレーキ的制動回転)によって、電動車椅子が低速ながら強力に階段傾斜を昇降するというものである。
【0005】
この特許文献1に開示された技術によれば、車椅子の昇降設備として、設置するためには高額であるエレベータを新たに設置する必要がなく、通常昇降手段として既存の階段を利用した昇降機能設備を提供できる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された車椅子の階段昇降機能と設備は、先ず、階段側壁下に梯段等の昇降設備を取り付ける必要があるため、設置可能な場所の確保が必要であった。
【0007】
また、梯段等の昇降設備に適した電動車椅子に限られてしまうため、既に電動車椅子を持っている場合でも、梯段等の昇降設備に適した電動車椅子を新たに購入する必要があるため、費用の負担がかかる。
【0008】
さらに、重い電動車椅子を梯段等の昇降設備に取り付けるには、多くの人の助けが必要となるうえ、その取り付け作業が複雑であるため取り付けに時間を要し、災害避難時等の緊急事態には適さないという問題があった。
【0009】
この問題を解決する技術として、例えば、特許文献2に開示された技術が知られている。この特許文献2に開示された動力付き車椅子は、
図9に示すように、使用者102が座るシート110と、シート110を所定姿勢に制御するシート制御手段108と、シート110を移動させる走行手段120と、先端部に設けられた回転自在な補助輪132と、左右水平軸の回りに回動して車椅子100の後部を持ち上げることが可能な姿勢制御アーム130とを備えている。
【0010】
この特許文献2に開示された動力源付き車椅子によれば、階段昇降時に、安定した低姿勢状態及び高姿勢状態を実現できるので、大がかりな昇降設備を要さずとも、車椅子での階段昇降が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2に開示された動力源付き車椅子100は、階段昇降時に使用者102が座るシート110を所定姿勢に制御し、使用者102の姿勢の安定を図ることを目的としており、ガタつきによるスムースな階段昇降の実現には至っていない。
【0013】
また、階段昇降時に、姿勢制御アーム130の操作等が必要となり、そのような複雑な操作は、高齢者や、緊急時といった場合には適さないという問題があった。
【0014】
また、階段昇降の必要がない通常の平坦な道での走行等の場合は、第2車軸124aを廃止し、前方の第1車軸122aにタイヤを装着する必要があるため、手軽に使い分けることができないという問題があった。
【0015】
さらに、車椅子自体、基本的に歩行困難者が使用するものであり、限定された家庭にしか普及しておらず、高価であるという問題があった。
【0016】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、災害時及び日常生活時に、介護車を安全で効率よく階段及び坂道等を昇降させると共に、低コストで簡単に設置可能な補助装置部を備えた介護車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、第1発明に係る介護車では、一対の前輪と一対の後輪により支持され移動可能な台車上に、収納部と、該収納部の蓋を兼ねる腰掛け部と、把手部とを備える介護車において、一対のクローラを有する補助装置部と、所定の伸縮位置で、前記補助装置部を固定可能に傾動させ、前記台車と前記補助装置部とを連結するように設けられたガススプリングとを備え
、前記補助装置部は、駆動源と、前記駆動源によって駆動するモータとを備え、前記モータでもって、前記一対の後輪と一対のクローラを駆動させることができる。
【0018】
第1発明に係る介護車によれば、補助装置部を設けたので、階段や坂道等を昇降する際に、被介助者や介助者は、多くの人に助けを借りることなく、一人で介護車を昇降させることができる。
【0019】
また、第1発明に係る介護車によれば、一対のクローラがガススプリングの伸縮によって傾動操作されるので、一対のクローラが階段の傾斜角度に対応して引き出され、クローラが階段に接地された状態で介護車が引き上げられるので、介護車をガタつくことなく安定した状態で引き上げることができる。
【0020】
また、第1発明に係る介護車によれば、一対のクローラがガススプリングの伸縮によって傾動操作されるので、クローラを必要としない平坦な場所においては、クローラが角度を略垂直にして固定されるので、邪魔にならないように収納することができる。
【0021】
また、第1発明に係る介護車によれば、クローラの傾動操作がガススプリングの伸縮によってなされるので、クローラ傾動操作時に、ガススプリングの伸び方向あるいは縮み方向の速度を制御したり、衝撃を緩和することができる。
【0022】
さらに、第1発明に係る介護車によれば、クローラとガススプリングという簡単な機構の補助装置部であるため、市販されている介護車に取り付け可能であるので、低コストで簡単に製造することができる。
【0023】
第2発明に係る介護車では、第1発明において、
さらに、前記一対の後輪を回転させる後輪用シャフトを備え、前記補助装置部は、
さらに、前記後輪用シャフトと平行に配置されたクローラ用シャフトと、前記モータからの動力を
前記クローラ用シャフトに伝達する
第一のタイミングベルト
と、前記クローラ用シャフトの回転を一方向にのみ前記クローラに伝達可能な第一の一方向クラッチと
を備え、前記後輪用シャフト
に、前記クローラ用シャフトから
第二のタイミングベルトと
第二の一方向クラッチと
で、前記モータを正回転し
た動力を伝達し
て後輪を前進させる
一方、前記モータを逆回転させて、前記第一のタイミングベルトで前記モータの動力を前記クローラ用シャフトに伝達して逆回転させて、前記第一の一方向クラッチで回転力を前記クローラに伝達して逆回転させる機能を備えることができる。
【0024】
第2発明に係る介護車によれば、第1発明の効果に加えて、補助装置部の一対のクローラ
又は介護車の一対の後輪がモータにより駆動されるので、介護車を動作させる際の補助力となり、ユーザは、介護車をさほど力を必要とせずに、楽にスムースに動作させることができる。
【0025】
第3発明に係る介護車では、第2発明において、前記収納部背面に設けられ、前記一対のクローラ
又は前記一対の後輪の動作を選択するセレクトスイッチと、前記把手部に設けられ、前記一対のクローラ
又は前記一対の後輪の動作を制御するレバー式手元スイッチとを備えることができる。
【0026】
第3発明に係る介護車によれば、第2発明の効果に加えて、一対のクローラ
又は一対の後輪の動作が、介護車の収納部背面に設けられたセレクトスイッチで選択され、把手部に設けられたレバー式手元スイッチによって操作されるという簡略な操作手順であるので、誰でも容易に操作することができる。
【0027】
第4発明に係る介護車では、第3発明において、
前記セレクトスイッチで、前記一対のクローラの後退
又は前記一対の後輪の前進と停止
を選択できる。
【0028】
第4発明に係る介護車によれば、第3発明の効果に加えて、補助装置部の一対のクローラの後退
又は介護車の一対の後輪の前進と停止であるので、後退又は前進の際に、セレクトスイッチを後退又は前進にすることで、介護車を補助力が加わった状態で、楽に坂道や階段等を昇れるように動作させることができる。
【0029】
また、第4発明に係る介護車によれば、第3発明の効果に加えて、補助装置部の一対のクローラの後退
又は介護車の一対の後輪の前進と停止であるので、介護車を本来の杖代わりとして使用する際には、セレクトスイッチを停止にすることで、通常の介護車として使用することができる。
【0030】
第5発明に係る介護車では、第1発明〜第4発明のうち何れか一つにおいて、
さらに、伸長使用位置と収縮保管位置との間を伸縮自在のハンドルを備えることができる。
【0031】
第
5発明に係る介護車によれば、第1発明〜第
4発明の効果に加えて、把手部背面側に介護車の台車と連結されるように補助装置部を所定の角度で支持する伸縮ハンドルを備えたので、ユーザの身長の高低に合ったハンドルの高さに調整することができるので、誰でも介護車を楽な姿勢で動作することができる。
【0032】
また、第
6発明に係る介護車によれば、第1発明〜第
5発明の効果に加えて、把手部背面側に介護車の台車と連結されるように補助装置部を所定の角度で支持する伸縮ハンドルを備えたので、クローラを傾動させた際に、より強固にクローラを支持することができるので、傾動姿勢の介護車がクローラの重みで後ろに倒れることもなく安全である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、災害時及び日常生活時に、介護車を安全で効率よく階段及び坂道等を昇降させると共に、低コストで簡単に設置可能な補助装置部を備えた介護車を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための介護車を例示するものであって、本発明は介護車を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0036】
実施形態に係る介護車では、一対のクローラの後退
又は前記一対の後輪の動作を、前進と停止とできる。該構成によれば、第3発明の効果に加えて、前記一対のクローラの後退
又は前記一対の後輪の動作が前進と停止であるので、介護車を後ろ向きに引いて階段を昇る際には、駆動源を動作させて補助力が加わった状態で楽に昇ることができ、前進する際には駆動源を停止させた状態で、一般の介護車と同様に杖代わりとしてユーザのペースで使用できる。
【0037】
また他の実施形態に係る介護車では、一対のクローラの後退
又は前記一対の後輪の動作を、前進と停止とできる。上記構成によれば、第3発明の効果に加えて、介護車を押して坂道を登る際には、駆動源からのモータを正方向に動作させて補助力が加わった状態で楽に昇ることができ、後退する際には階段等において、駆動源からのモータの回転方向を逆に動作させて、クローラを傾動させた状態で、補助力が加わった状態で介護車を引き上げることができる。
【0038】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は、例えば、
図1〜
図3に示すような構成の補助動力装置付き介護車1に適用される。
【0039】
先ず、
図1〜
図3を参照して、補助動力装置付き介護車1の構成の概略について説明する。この補助動力装置付き介護車1は、
図1に示すように、車体前後方向の略中央に配設された左右一対の本体フレーム11,11’と、左右一対の本体フレーム11,11’の上端間を連結する背もたれフレーム12と、左右一対の前輪13,13’を支持する前輪フレーム14,14’と、左右一対の後輪15,15’を支持する後輪フレーム16,16’と、左右一対の本体フレーム11,11’に支持される収納部17からなる本体部10と、本体部10と左右一対のガススプリング21,21’を介して連設される左右一対のクローラ22,22’と、本体部10と連接されるハンドル23と、駆動源によって駆動するモータ25からなる補助装置部20とを主要部として備えている。
【0040】
具体的に、本体部10についての構成は以下の通りである。本体フレーム11,11’は、円筒状の金属部材で構成され、全体が上方から下方に向けて補助動力装置付き介護車1の進行方向前方へ傾斜している。また、本体フレーム11,11’は、下側部分がより前方へと向かうように縦方向の途中位置にて屈曲部18が形成されている。
【0041】
背もたれフレーム12は、円筒状の金属部材で構成され、本体フレーム11,11’の上端間を懸架している。また、背もたれフレーム12は、クッション性素材で円筒状の金属部材を覆うようにしてもよい。
【0042】
前輪フレーム14,14’は、円筒状の金属部材で構成され、本体フレーム11,11’の屈曲部18,18’に組み付けられており、その前方斜め下方へと向かって延伸されており、下端に、例えば片側2輪で構成されている前輪13,13’が回転自在にかつ左右首振り回動可能に設けられている。
【0043】
後輪フレーム16,16’は、円筒状の金属部材で構成され、本体フレーム11,11’の屈曲部18,18’に連結されており、補助動力装置付き介護車1の後へと向かって延伸されており、下端に、例えば片側1輪で前輪13,13’より大きな直径を有する後輪15,15’が回転自在に設けられている。また、後輪フレーム16,16’は前輪フレーム14,14’と連結フレーム19,19’を介して連結されている。また、後輪フレーム16,16’は、後述する補助装置部20を本体部10に連接する際の連接部となる。さらに、後輪フレーム16,16’は、先端を屈曲して肘掛け部を設けてもよい。
【0044】
後輪15,15’の回転動作は、後述する補助装置部20の収納部17の背面に設けられたセレクトスイッチ31によって決定される。
【0045】
連結フレーム19,19’は、円筒状の金属部材で直線形状に形成されており、前輪フレーム14,14’と後輪フレーム16,16’の下部で、前輪13,13’及び後輪15,15’に接しない高さ位置で略水平に、前輪フレーム14,14’と後輪フレーム16,16’との間を、補助動力装置付介護車1の前後方向に懸架している。また、連結フレーム19,19’は、後述する補助装置部20を本体部10に連接する際の連接部となる。
【0046】
収納部17は、上部に設けられた円筒状の金属部材で略ロの字形に形成されたフレームを屈曲部18,18’の間に懸架され、上面が略水平に配設されている。また、収納部17の上面は、開閉可能な蓋が設けられており、蓋を閉めた状態の場合には、蓋が座部を兼用するように構成されている。
【0047】
以上が本体部10の具体的な構成であるが、本体部10は、次に述べる補助装置部20を支持して連設できる構造を備えておれば市販品の介護車でもよい。ここで、介護車とは、足腰の衰えた高齢者が買い物等に杖代わりとして日常的に使用している手押し車である。
【0048】
続いて、具体的に、補助装置部20についての構成は以下の通りである。ガススプリング21,21’は、密閉されたシリンダー内に高圧ガス(窒素ガス:不燃性)が封入されており、このガスの反力をバネとして使用するように構成されている。
【0049】
また、ガススプリング21,21’は、先端が連結フレーム19,19’に連結され、他端がクローラ22,22’に連結されることで、本体部10と補助装置部20との連結部となり、収縮することでクローラ22,22’を傾動させる。
【0050】
さらに、ガススプリング21,21’は、伸び方向の反発力を様々な階段の傾斜角度に合せて、何段階かに調節できるようにしてもよい。
【0051】
クローラ22,22’は、外周面には山形状のラグが所定のピッチで形成され、内周面には一対の駆動輪と噛み合う凹凸面が形成されており、ゴムベルト内には所要本数の金属線がベルト長手方向に内挿されていて所定のテンション力に耐え得る剛性を有している。
【0052】
また、クローラ22,22’は、一対の駆動輪に跨って巻装される無端のタイミングベルトを有しており、階段昇降走行時に、少なくとも階段の2段以上に跨る長さを有するように構成されている。
【0053】
また、クローラ22,22’は、後輪15,15’の内側
でクローラ22,22’との間を左右方向に繋がれ、回転力の伝達と遮断に関わる
第一の一方向クラッチから伝わる動力で回転する
クローラ用シャフト28によって後輪15,15’に、略垂直状態から所定の角度に傾動自在になるように軸支されており、クローラ22,22’の長手方向略中央部にクローラ22,22’との間を左右方向に繋ぐ、円筒状の金属部材で直線形状に形成された補強材29を設けている。
【0054】
この構成のクローラ22,22’は、モータ25の駆動力が一対のクローラ22,22’を繋ぐクローラ
用シャフト
28に
第一のタイミングベルトを介して伝達され、そのクローラ
用シャフト
28と一対のクローラ22,22’に
それぞれ設けられた
ホイールの間に
第一の一方向クラッチが組み込まれて、一対のクローラ
22,22’の後退方向の駆動のみが伝達される構成となっている。
【0055】
また、このクローラ
用シャフト
28と平行に一定の距離をもって設けられ、両端に後輪15,15’が取り付けられて回転自在に支持されている後輪
用シャフトも備えている。モータ25の駆動力は、このクローラ
用シャフトから後輪
用シャフトに、
第二のタイミングベルトを介して動力伝達され、後輪
用シャフトに取り付けられたタイミングプーリと後輪
用シャフトとの間に
第二の一方向クラッチが組み込まれていて、一対の後輪の前進のみが動力伝達される構成になっている。
【0056】
したがって、一対のクロ―ラによる後退方向への駆動の時は、一対の後輪15,15’、及び後輪
用シャフトは自由回転となり、また、後輪15,15’による前進の駆動の時は、一対のクローラ22,22’及びクローラ
用シャフトは自由回転となり、双方がそれぞれ干渉し合わない構成になっている。
【0057】
さらに、クローラ22,22’の回転動作は、収納部17の背面に設けられたセレクトスイッチ31によって決定される。
【0058】
ハンドル23は、円筒状の金属部材で直線形状に形成されたハンドルフレーム26,26’と、ハンドルフレーム26,26’の間を懸架する把手部27から構成されている。ハンドルフレーム26,26’は、上下方向にスライドするように構成されており、ハンドル23は、上下方向に伸縮自在であり、スライド内に設けられたストッパー部において固定されるので、任意の高さに調節できるようになっている。
【0059】
さらに、ハンドル23は、所定の角度を保って、下部が連結フレーム19,19’と後輪フレーム16,16’とに連接されている。
【0060】
把手部27は、円筒状の金属部材で直線形状に形成されており、その外周をクッション性素材で覆うようにしてもよい。
【0061】
把手部27の下部には、一対のレバー式手元スイッチ30,30’が設けられており、後述するモータ25のオンとオフとを制御する。
【0062】
駆動源は、充電を行うことにより電気を蓄えて電池として使用できるようになり、繰り返し使用することができるリチウムイオン二次電池であり、収納部17に納められている。
【0063】
モータ25は、速度制御が容易である直流モータが好ましく、速度は、200mm/s程度に制御される。また、モータ25は、速度を200mm/s程度に制御できればよく、インバータを備えた交流モータでもよい。さらに、モータ25は、駆動源を電源としており、クローラ22,22’の内側のどちらか一方側に寄せて設けられている。
【0064】
セレクトスイッチ31は、後輪15,15の前進’及びクローラ22,22’の後退,及び停止の何れかの回転動作を三段階で決定する。また、セレクトスイッチ31は、前進及び停止又は後退及び停止の二段階としてもよい。
【0065】
続いて、前述のような構成をした補助動力装置付き介護車1の動作について、フローチャート及び図面を参照して説明する。
【0066】
先ず、補助動力装置付き介護車1を後退させて階段を昇る場合について、
図4のフローチャート及び
図5を参照して説明する。
図4のフローチャートに示すように、補助動力装置付き介護車1は、ハンドル23をユーザの身長に合わせて高さ調整するステップST1、クローラ22,22’を傾動させて、クローラ22,22’に巻装されるタイミングベルトを2段以上の階段ステップ稜線部に接地した状態で引き上げられるようにするステップST2、セレクトスイッチ31を後退位置に設定するステップST3、モータ25を駆動させ、クローラ22,22’を回転させるためにレバー式手元スイッチ30,30’を握るステップST4の順に動作する。
【0067】
図4に示すように、ステップST1では、ユーザが、ハンドル23を上方向に伸ばすと、ハンドル23が使用位置に固定される。
【0068】
ステップST2では、
図5に示すように、ユーザが、クローラ22,22’を傾動させて、クローラ22,22’に巻装されるタイミングベルトを2段以上の階段ステップ稜線部に接地させると、補助動力装置付き介護車1は、後ろ向きで階段を引き上げられる状態になる。階段の傾斜角度に合わせて傾動させることができるクローラ22,22’が設けられているので、ユーザは、補助動力装置付き介護車1を一人で引き上げることができる。
【0069】
ステップST3では、ユーザが、セレクトスイッチ31を後退位置にすると、補助動力装置付き介護車1は、後退方向に進行方向が決定する。
【0070】
ステップST4では、ユーザが、レバー式手元スイッチ30,30’を握ると、モータ25が駆動して、クローラ22,22’が後回転する。モータ25は、レバー30,30’を握っている間のみの駆動し、レバー式手元スイッチ30,30’から手を離すことによって、直ちに停止するので、操作が簡単であり、誰でも容易に操作することができる。
【0071】
また、モータ25が駆動し、介護車1を動かす際に補助力が加わるので、さほど力を必要とせず、補助動力装置付き介護車1を引き上げられるので、非常時に、被介助者を収納部17に乗せて階段を昇る際に、介助者は、楽に引き上げることができる。
【0072】
また、クローラ22,22’に巻装されるタイミングベルトが常に2段以上の階段ステップ稜線部に接地した状態であるので、介助者は、補助動力装置付き介護車1をガタつかせることなくスムースに引き上げることができる。
【0073】
続いて、補助動力装置付き介護車1を前進させて坂道を昇る場合について、
図6のフローチャート及び
図7を参照して説明する。
図6のフローチャートに示すように、補助動力装置付き介護車1は、ハンドル23をユーザの身長に合わせて高さ調整するステップST11と、クローラ22,22’を傾動させて、クローラ22,22’を略垂直状態にするステップST12と、セレクトスイッチ31を前進位置に設定するステップST13と、モータ25を駆動させ、後輪15,15’を回転させるためにレバー式手元スイッチ30,30’を握るステップST14の順に動作する。
【0074】
図6に示すように、ステップST11では、ユーザが、ハンドル23を上方向に伸ばすと、ハンドル23が使用位置に固定される。
【0075】
ステップST12では、
図7に示すように、ユーザが、クローラ22,22’を傾動させると、クローラ22,22’は、略垂直に収納された状態になる。
【0076】
ステップST13では、ユーザが、セレクトスイッチ31を前進位置にすると、補助動力装置付き介護車1は、前進方向に進行方向が決定する。
【0077】
ステップST14では、ユーザが、レバー式手元スイッチ30,30’を握ると、モータ25が駆動して、後輪15,15’が前回転する。モータ25は、レバー式手元スイッチ30,30’を握っている間のみの駆動し、レバー式手元スイッチ30,30’から手を離すことによって、直ちに停止するので、操作が簡単であり、誰でも容易に操作することができる。
【0078】
また、モータ25が駆動し、介護車1を動かす際に補助力が加わるので、さほど力を必要とせず、補助動力装置付き介護車1を前進させることができるので、収納部17に荷物をたくさん積載しても、楽に坂道を登ることができる。
【0079】
最後に、補助動力装置付き介護車1の補助動力装置を停止させて、通常の介護車として使用する場合について、
図8のフローチャートを参照して説明する。
図8のフローチャートに示すように、補助動力装置付き介護車1は、ハンドル23をユーザの身長に合わせて高さ調整するステップST21と、クローラ22,22’を傾動させて、クローラ22,22’を略垂直状態にするステップST22と、セレクトスイッチ31を停止位置に設定するステップST23の順に動作する。
【0080】
図8に示すように、ステップST21では、ユーザが、ハンドル23を上方向に伸ばすと、ハンドル23が使用位置に固定される。
【0081】
ステップST22では、ユーザが、クローラ22,22’を傾動させると、クローラ22,22’は、略垂直に収納された状態になる。
【0082】
ステップST23では、ユーザが、セレクトスイッチ31を停止位置にすると、モータ25が駆動しないようになる。セレクトスイッチ31が停止位置にあるので、誤ってレバー式手元スイッチ30,30’を握ったとしても、モータ25が駆動することがないので安全である。
【0083】
また、クローラ22,22’は、略垂直に収納された状態であるので、邪魔になることなく通常の介護車として杖代わりに使用できる。
【0084】
なお、本発明は前述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。