(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、ダイヤフラムは受圧だけでなく予荷重のための支持の機能も担っているので、ダイヤフラムが予荷重に耐えられるようにダイヤフラムを高強度及び高バネ定数とする必要がある。ここで、ダイヤフラムを高感度にするためにはダイヤフラムのバネ定数を小さくする必要がある。このため、圧力検出装置において荷重検出素子に印加する予荷重を保持するための高強度な構成とダイヤフラムの高感度とを両立することができないという問題があった。
【0007】
また、燃焼室で異常燃焼が発生した場合、想定外の衝撃波がダイヤフラムに作用する。そして、ダイヤフラムが破れてしまう場合がある。これにより、荷重検出素子や電極部等が燃焼室に脱落するという可能性があった。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、荷重検出素子に予め予荷重を印加した構成を有する圧力検出装置において、荷重検出素子に印加する予荷重を保持するための高強度な構成とダイヤフラムの高感度な構成とを両立し、さらに燃焼室への荷重検出素子の脱落を防止することができる構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、燃焼室を構成する燃焼機構に取り付けられると共に、燃焼室の燃焼圧を検出する圧力検出装置であって、以下の点を特徴としている。
【0010】
印加される荷重を検出する荷重検出素子(41)と、荷重検出素子(41)を挟み込むと共に荷重検出素子(41)に所定の予荷重を印加することで荷重検出素子(41)に圧接された予荷重印加部(42)と、を有する予荷重保持部(40)を備えている。
【0011】
また、燃焼室に配置されると共に予荷重印加部(42)に当接しており、燃焼室の燃焼圧に基づく荷重を予荷重印加部(42)を介して荷重検出素子(41)に伝達させるダイヤフラム(60)を備えている。
【0012】
また、第1中空部(31)を有する中空筒状であり、第1中空部(31)に予荷重保持部(40)を収容し、一方の開口端(34)にダイヤフラム(60)が固定された胴体部(30)を備えている。
【0013】
そして、胴体部(30)は、一方の開口端(34)とは反対側の他方の開口端(36)のうちの内壁面(37)側が一方の開口端(34)側に凹んだ段差部(33)を有している。
【0014】
さらに、予荷重保持部(40)は、胴体部(30)の内壁面(37)に対向する外壁面(43e、48c、50e)に、当該外壁面(43e、48c、50e)の一部が突出すると共に段差部(33)に配置されることで段差部(33)に接触するつば部(43d、48d、50f)を有していることを特徴とする。
そして、予荷重印加部(42)は、第2中空部(43a)を有する有底筒状であると共に荷重検出素子(41)の一方の電極として機能し、第2中空部(43a)を構成する内壁面(43b)から離間するように荷重検出素子(41)が第2中空部(43a)の底面(43c)に配置された有底筒部(43)と、第2中空部(43a)に内壁面(43b)から離間して配置されると共に、荷重検出素子(41)のうち底面(43c)側とは反対側に当接し、さらに荷重検出素子(41)の他方の電極として機能する電極部(44)と、第2中空部(43a)に配置されると共に、電極部(44)のうち荷重検出素子(41)側とは反対側に当接した絶縁材(45)と、絶縁材(45)のうち電極部(44)とは反対側に当接すると共に、底面(43c)との間に位置する荷重検出素子(41)、電極部(44)、及び絶縁材(45)に所定の予荷重を印加した状態で有底筒部(43)の開口部(43f)に固定された荷重部(47)と、を有して構成されており、つば部(43d)は、有底筒部(43)の外壁面(43e)に設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、予荷重印加部(42)は、第2中空部(48a)を有する中空筒状であり、第2中空部(48a)を構成する内壁面(48b)から離間するように荷重検出素子(41)が第2中空部(48a)に配置された筒部(48)と、荷重検出素子(41)に当接すると共に荷重検出素子(41)の一方の電極として機能し、筒部(48)のうちの一方の開口部(48e)に固定された台座(49)と、第2中空部(48a)に内壁面(48b)から離間して配置されると共に、荷重検出素子(41)のうち台座(49)とは反対側に当接し、さらに荷重検出素子(41)の他方の電極として機能する電極部(44)と、第2中空部(48a)に配置されると共に、電極部(44)のうち荷重検出素子(41)とは反対側に当接した絶縁材(45)と、絶縁材(45)のうち電極部(44)とは反対側に当接すると共に、台座(49)との間に位置する荷重検出素子(41)、電極部(44)、及び絶縁材(45)に所定の予荷重を印加した状態で筒部(48)のうちの他方の開口部(48f)に固定された荷重部(47)と、を有して構成されており、つば部(48d)は、筒部(48)の外壁面(48c)に設けられていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明では、予荷重印加部(42)は、荷重検出素子(41)に当接すると共に荷重検出素子(41)の一方の電極として機能する台座(49)と、荷重検出素子(41)のうち台座(49)とは反対側に当接し、さらに荷重検出素子(41)の他方の電極として機能する電極部(44)と、電極部(44)のうち荷重検出素子(41)とは反対側に当接した絶縁材(45)と、第2中空部(50a)を有する有底筒状であり、絶縁材(45)が第2中空部(50a)の底面(50b)に当接すると共に荷重検出素子(41)及び電極部(44)が第2中空部(50a)を構成する内壁面(50c)から離間して配置され、さらに、台座(49)との間に位置する荷重検出素子(41)、電極部(44)、及び絶縁材(45)に所定の予荷重を印加した状態で開口部(50d)が台座(49)に固定された荷重部(50)と、を有して構成されており、つば部(50f)は、荷重部(50)の外壁面(50e)に設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明では、予荷重印加部(42)は、第2中空部(48a)を有する中空筒状であり、第2中空部(48a)を構成する内壁面(48b)から離間するように荷重検出素子(41)が第2中空部(48a)に配置された筒部(48)と、荷重検出素子(41)に当接すると共に荷重検出素子(41)の一方の電極として機能し、筒部(48)のうちの一方の開口部(48e)に固定された台座(49)と、第2中空部(48a)に内壁面(48b)から離間して配置されると共に、荷重検出素子(41)のうち台座(49)とは反対側に当接し、さらに荷重検出素子(41)の他方の電極として機能する電極部(44)と、電極部(44)のうち荷重検出素子(41)とは反対側に当接すると共に、台座(49)との間に位置する荷重検出素子(41)及び電極部(44)に所定の予荷重を印加した状態で筒部(48)のうちの他方の開口部(48f)に固定された絶縁材(51)と、を有して構成されており、つば部(48d)は、筒部(48)の外壁面(48c)に設けられていることを特徴とする。
【0015】
これによると、荷重検出素子(41)に予荷重を印加する予荷重保持部(40)と、圧力を受圧するダイヤフラム(60)と、が分離されているので、ダイヤフラム(60)に荷重検出素子(41)に予荷重を与えるための性能を持たせる必要がない。すなわち、ダイヤフラム(60)を高強度にするためにダイヤフラム(60)のバネ定数を大きくする必要がない。このため、荷重検出素子(41)に印加する予荷重を保持するために予荷重印加部(42)を高強度な構成とすることができる。一方、ダイヤフラム(60)のバネ定数を小さくすることができるので、ダイヤフラム(60)を高感度に構成することができる。したがって、荷重検出素子(41)に印加する予荷重を保持するための高強度な構成とダイヤフラム(60)の高感度な構成とを両立することができる。
【0016】
また、予荷重保持部(40)に設けられたつば部(43d、48d、50f)が胴体部(30)の段差部(33)に引っ掛かるので、ダイヤフラム(60)が破れたとしても予荷重保持部(40)が燃焼室に脱落することを防止することができる。
【0017】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態に係る圧力検出装置は、燃焼室を構成する燃焼機構に取り付けられると共に、燃焼室の燃焼圧を検出する装置である。燃焼機構は、例えば車両に搭載されたエンジンである。そして、
図1に示されるように、圧力検出装置10は、ハウジング20、胴体部30、予荷重保持部40、及びダイヤフラム60を備えて構成されている。
【0021】
ハウジング20は、圧力検出装置10の外観をなす棒状の部品である。ハウジング20は例えば金属材料で形成されている。ハウジング20は、燃焼室側に設けられた凹部21と、この凹部21の繋がる貫通孔22と、を有している。さらに、ハウジング20は側壁に形成されたネジ部23を有しており、このネジ部23を介してエンジンブロックにネジ止めされる。なお、ハウジング20のうち凹部21とは反対側に図示しない回路基板やコネクタ等の部品が設けられている。
【0022】
胴体部30は、予荷重保持部40を収容する中空筒状の部品である。胴体部30は中空部31を有し、この中空部31に予荷重保持部40を収容している。
【0023】
また、胴体部30は、第1段差部32及び第2段差部33を有している。第1段差部32は、胴体部30の一方の開口端34のうちの外壁面35側が他方の開口端36側に凹んだ部分である。この第1段差部32にはダイヤフラム60が溶接等で接合されている。
【0024】
第2段差部33は、一方の開口端34とは反対側の他方の開口端36のうちの内壁面37側が一方の開口端34側に凹んだ部分である。言い換えると、胴体部30の内壁面37のうちの他方の開口端36側が胴体部30の外壁面35側に凹んだ部分である。また、第2段差部33は胴体部30のうち第2段差部33の内径が、内壁面37による内径よりも大きくなった部分であると言える。
【0025】
さらに、胴体部30は、外壁面35に当該外壁面35の一部が突出した突出部38を有している。突出部38は、ハウジング20の開口端24に溶接等で接合された部分である。これにより、胴体部30のうちの他方の開口端36側がハウジング20の凹部21に配置されていると共に、一方の開口端34側がハウジング20から突出している。
【0026】
予荷重保持部40は、ダイヤフラム60から分離された部品であると共に、ダイヤフラム60から伝わる荷重の大きさを検出するように構成されている。このような予荷重保持部40は、荷重検出素子41及び予荷重印加部42を有している。
【0027】
荷重検出素子41は、印加される荷重を検出するための板状の素子である。具体的に、荷重検出素子41は、荷重が印加されることで荷重の大きさに応じた電荷を発生させるものであり、例えば圧電体で構成されている。したがって、荷重検出素子41は、印加された荷重の大きさを例えば電圧に変換して出力する。
【0028】
なお、荷重検出素子41は、ハウジング20の中心軸方向に電荷を発生させるように構成されていても良い。一方、荷重検出素子41は、ハウジング20の中心軸方向に垂直な方向に電荷を発生させるように構成されていても良い。
【0029】
予荷重印加部42は、荷重検出素子41を挟み込むと共に荷重検出素子41に所定の予荷重を印加することで荷重検出素子41に圧接された構造を有する。具体的に、予荷重印加部42は、有底筒部43、電極部44、絶縁材45、埋込部材46、及び荷重部47を有している。
【0030】
有底筒部43は、中空部43aを有する有底筒状の部品である。また、有底筒部43は、荷重検出素子41の一方の電極として機能する。有底筒部43は、中空部43aを構成する内壁面43bから離間するように荷重検出素子41を中空部43aの底面43cに配置させている。有底筒部43は、例えばSUS630やSUH660等の金属材料によって形成されている。
【0031】
さらに、有底筒部43は、つば部43dを有している。つば部43dは、有底筒部43において胴体部30の内壁面37に対向する外壁面43eの一部が突出した部分である。すなわち、つば部43dは、予荷重保持部40の外壁面に設けられていると言える。これにより、有底筒部43の最大外径部が胴体部30の最小内径部よりも大きくなっている。
【0032】
また、つば部43dは、有底筒部43の開口部43f側に設けられていると共に、第2段差部33に配置されることで第2段差部33に接触している。つば部43dは、溶接やネジ等の方法によって第2段差部33に接触している。
【0033】
さらに、本実施形態では、つば部43dは有底筒部43の外壁面43eを一周するように連続して設けられている。なお、つば部43dは有底筒部43の外壁面43eに断続的に設けられていても良い。
【0034】
電極部44は、有底筒部43の中空部43aに壁面43bから離間して配置されていると共に、荷重検出素子41の他方の電極として機能する部品である。また、電極部44は、荷重検出素子41のうち有底筒部43の底面43c側とは反対側に当接している。これにより、電極部44は有底筒部43の一部と共に荷重検出素子41を挟んでいる。さらに、電極部44は、荷重検出素子41側とは反対側に荷重検出素子41の信号を外部に出力するためのターミナル44aを有している。
【0035】
絶縁材45は、有底筒部43の中空部43aに配置されていると共に、電極部44と荷重部47とを絶縁するためのリング状の部品である。絶縁材45は、電極部44のうち荷重検出素子41側とは反対側に当接している。絶縁材45は、例えばアルミナ等のセラミックスで形成されている。絶縁材45の中空部分には電極部44のターミナル44aが通されている。
【0036】
埋込部材46は、荷重検出素子41、電極部44、及び絶縁材45と有底筒部43の壁面43bとを絶縁するための部品である。埋込部材46は、有底筒部43の中空部43aの隙間43gに埋め込まれている。ここで、隙間43gは、中空部43aのうち有底筒部43の壁面43bと荷重検出素子41、電極部44、及び絶縁材45との間の空間である。埋込部材46として、樹脂等の絶縁材料が採用される。これにより、埋込部材46によって荷重検出素子41や電極部44と壁面43bとの絶縁性を確保することができる。
【0037】
荷重部47は、絶縁材45のうち電極部44とは反対側に当接した部品である。荷重部47は有底筒部43の中心軸に平行な方向の断面が凸形状をなしている。そして、荷重部47は、有底筒部43の中心軸に垂直な方向において幅が狭い凸部分が絶縁材45に接触している。また、荷重部47は有底筒部43の中心軸に沿って設けられた貫通孔47aを有している。この貫通孔47aに電極部44のターミナル44aの先端部が位置する。
【0038】
さらに、荷重部47は、有底筒部43の底面43cとの間に位置する荷重検出素子41、電極部44、及び絶縁材45に所定の予荷重を印加した状態で有底筒部43の開口部43fに溶接によって固定されている。所定の予荷重は、例えば150N以上である。このように所定の予荷重を印加する目的の1つは、燃焼室は正圧だけでなく負圧も発生するため、予荷重印加部42に負圧が作用しても荷重検出素子41が有底筒部43または電極部44から浮き上がって計測不能になることを避けるためである。もう1つの目的は、エンジンで異常燃焼が生じると衝撃波が発生するので、この衝撃波によって荷重検出素子41が浮き上がって有底筒部43の底部分や電極部44に衝突することにより破損してしまうことを防止するためである。
【0039】
ここで、予荷重印加部42のうち、有底筒部43、電極部44、及び荷重部47は、例えば同じ金属材料で形成されている。圧力検出装置10は高温に晒されることになるため、各部品の熱膨張率に差を生じさせないようにするべく、各部品が同じ金属材料で形成されていることが好ましい。また、予荷重印加部42は高耐圧性や高ヤング率(硬い)であることも要求される。このようなことから、有底筒部43、電極部44、及び荷重部47は、例えばSUS630で形成されている。なお、SUH660等の他の金属材料が用いられても良い。
【0040】
そして、予荷重印加部42は、胴体部30の内壁面37に対してクリアランスを持って胴体部30の中空部31に配置されている。つまり、予荷重印加部42は胴体部30に対して圧入されていない。
【0041】
ダイヤフラム60は、燃焼室の燃焼圧に基づく荷重を予荷重印加部42を介して荷重検出素子41に伝達させる部品である。ダイヤフラム60は中央部が予荷重印加部42の有底筒部43に当接していると共に、外縁部が胴体部30の第1段差部32に接合されている。
【0042】
上記の構成において、ハウジング20の貫通孔22に信号線70が通されている。信号線70の一端は荷重部47の貫通孔47aに配置されると共に電極部44のターミナル44aと電気的に接続されている。また、信号線70の一部は荷重部47の貫通孔47aに設けられた絶縁部47bによって荷重部47に固定されている。信号線70の他端はハウジング20に設けられた図示しないコネクタ部に電気的に接続されている。
【0043】
そして、予荷重保持部40が胴体部30の中空部31に収容されると、有底筒部43のつば部43dが胴体部30の第2段差部33に接触する。これにより、有底筒部43は胴体部30及びハウジング20を介してエンジンブロックと同じ電位に固定される。エンジンブロックの電位は例えば接地電位である。
【0044】
以上が、本実施形態に係る圧力検出装置10の全体構成である。上記の構成によると、燃焼室で発生した衝撃がダイヤフラム60に印加される。これにより、ダイヤフラム60の衝撃が有底筒部43を介して荷重検出素子41に伝わる。荷重検出素子41は印加された荷重の大きさに応じて電荷を発生させる。これにより、有底筒部43と電極部44との間の電圧が変化する。したがって、当該電圧の変化が信号線70を介して外部に出力される。
【0045】
次に、圧力検出装置10の製造方法について説明する。まず、エージング工程を行う。具体的には、
図2に示されるように、荷重検出素子41、有底筒部43、電極部44、絶縁材45、及び荷重部47を用意する。そして、固定治具80に有底筒部43を乗せると共に、有底筒部43の中空部43aに荷重検出素子41、電極部44、絶縁材45を順に収容する。
【0046】
続いて、荷重部47の上に荷重治具81を乗せて荷重を掛ける。これにより、荷重治具81を固定治具80側に押し込む。具体的には、燃焼室に発生するであろう衝撃に基づく荷重よりも高い荷重を予荷重印加部42に印加した状態で予荷重印加部42を荷重検出素子41に圧接する。
【0047】
ここで、荷重部47と有底筒部43の底部分との間に位置する荷重検出素子41、電極部44、及び絶縁材45に印加される所定の予荷重が150N以上となるように、予荷重印加部42に荷重を印加した状態で、荷重検出素子41と予荷重印加部42とを一体化する。すなわち、バネ定数比によるスプリングバックを考慮して有底筒部43の開口部43fと荷重部47とを溶接で固定する。
【0048】
これにより、実使用時よりも高い荷重が予荷重保持部40に予め印加されるので、充分なエージングを行うことができる。さらに、予荷重保持部40とダイヤフラム60とが分離された構成であるので、予荷重保持部40を製造する際に予荷重保持部40に高い荷重を印加できるという利点もある。
【0049】
この後、電極部44のターミナル44aに信号線70を接続して絶縁部47bを設ける。また、予荷重保持部40を胴体部30の中空部31に収容し、つば部43dと第2段差部33とを固定する。そして、胴体部30の第1段差部32にダイヤフラム60を溶接する。さらに、信号線70をハウジング20の貫通孔22に通しつつ、ハウジング20に胴体部30の突出部38を接合する。また、信号線70をハウジング20のコネクタ部に接続する。こうして、圧力検出装置10が完成する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態では、圧力検出装置10は、荷重検出素子41に予荷重を印加する予荷重保持部40と、圧力を受圧するダイヤフラム60と、が分離された構造を備えていることが特徴となっている。このように、予荷重が印加される部分と圧力が印加される部分とが分離されているので、ダイヤフラム60を高強度にするためにダイヤフラム60のバネ定数を大きくしなくても良いという利点がある。すなわち、ダイヤフラム60のバネ定数を小さくすることができるので、ダイヤフラム60を高感度に構成することができる。これに対し、荷重検出素子41に印加する予荷重を保持するために予荷重印加部42を高強度な構成とすることができる。本実施形態では、有底筒部43の電極部分と筒部分とが予め一体化されているので予荷重保持部40を高強度に構成することができる。したがって、圧力検出装置10において高強度と高感度との両立を図ることができる。
【0051】
特に、ダイヤフラム60に負圧が作用して荷重検出素子41が有底筒部43や電極部44から浮き上がって計測不能になることを避けることができる。もちろん、正圧だけでなく負圧も計測可能となる。また、エンジンでプレイグニッションのような異常燃焼が生じた際のノッキングで発生する衝撃波によって荷重検出素子41が浮き上がって電極部44等に衝突すると破損に至ることがある。しかしながら、予荷重保持部40は高い予荷重を保持しているので、この衝撃波による荷重検出素子41の浮き上がりを防止できる。
【0052】
また、予荷重保持部40に設けられたつば部43dが胴体部30の第2段差部33に引っ掛かる構造になっている。このため、異常燃焼時に、想定外の衝撃波がダイヤフラム60に作用して、万が一、ダイヤフラム60が破れたとしても、予荷重保持部40が燃焼室に脱落することを防止することができる。
【0053】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、胴体部30の中空部31が特許請求の範囲の「第1中空部」に対応し、胴体部30の第2段差部33が特許請求の範囲の「段差部」に対応する。また、有底筒部43の中空部43aが特許請求の範囲の「第2中空部」に対応し、有底筒部43の外壁面43eが特許請求の範囲の「予荷重保持部の外壁面」に対応する。
【0054】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について説明する。
図3に示されるように、予荷重印加部42は、筒部48、台座49、電極部44、絶縁材45、埋込部材46、及び荷重部47を有して構成されている。このうち、電極部44、絶縁材45、埋込部材46、及び荷重部47は第1実施形態で示されたものと同じである。
【0055】
筒部48は、中空部48aを有する中空筒状の部品である。筒部48は、中空部48aを構成する内壁面48bから離間するように荷重検出素子41を中空部48aに収容している。また、筒部48は当該筒部48の外壁面48cにつば部48dを有している。つば部48dは、胴体部30の第2段差部33に配置されている。
【0056】
台座49は、筒部48のうちの一方の開口部48eに固定された板状の部品である。また、台座49は、荷重検出素子41に当接すると共に荷重検出素子41の一方の電極として機能する。すなわち、台座49は、荷重検出素子41の保持と電極との両方を兼ねている。そして、台座49は筒部48の内径と同じサイズであり、筒部48の一方の開口部48eのうちの開口端付近で溶接によって筒部48に固定されている。
【0057】
電極部44は、筒部48の中空部48aに内壁面48bから離間して配置されている。また、電極部44は、荷重検出素子41のうち台座49とは反対側に当接している。絶縁材45は、筒部48の中空部48aに配置されている。また、絶縁材45は電極部44のうち荷重検出素子41とは反対側に当接している。
【0058】
荷重部47は、絶縁材45のうち電極部44とは反対側に当接している。また、荷重部47は、台座49との間に位置する荷重検出素子41、電極部44、及び絶縁材45に所定の予荷重を印加した状態で筒部48のうちの他方の開口部48fに固定されている。
【0059】
以上のように、筒部48と台座49とを分離した構造とすることもできる。このような構造によると、予荷重保持部40を製造しやすいというメリットがある。また、予荷重保持部40の構成が筒部48と台座49とに分離しているので、台座49の端面の加工精度(面粗度、平面度)の確保が容易になる。
【0060】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、筒部48の中空部48aが特許請求の範囲の「第2中空部」に対応し、筒部48の外壁面48cが特許請求の範囲の「予荷重保持部の外壁面」に対応する。
【0061】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1、第2実施形態と異なる部分について説明する。
図4に示されるように、予荷重印加部42は、台座49、電極部44、絶縁材45、及び荷重部50を有して構成されている。このうち、電極部44及び絶縁材45は第1実施形態で示されたものと同じであり、台座49は第2実施形態で示されたものと同じである。
【0062】
荷重部50は、中空部50aを有する有底筒状の部品である。また、荷重部50は、絶縁材45が中空部50aの底面50bに当接すると共に荷重検出素子41及び電極部44が中空部50aを構成する内壁面50cから離間して配置されている。さらに、荷重部50は、台座49との間に位置する荷重検出素子41、電極部44、及び絶縁材45に所定の予荷重を印加した状態で開口部50dが台座49に溶接で固定されている。そして、本実施形態では、荷重部50が当該荷重部50の外壁面50eにつば部50fを有している。
【0063】
以上のように、荷重部50に荷重検出素子41等を収容する容器としての機能を持たせることができる。このような構造によると、荷重印加部分と筒部分とが予め一体化されているので予荷重保持部40を高強度に構成することができる。なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、荷重部50の中空部50aが特許請求の範囲の「第2中空部」に対応し、荷重部50の外壁面50eが特許請求の範囲の「予荷重保持部の外壁面」に対応する。
【0064】
(第4実施形態)
本実施形態では、第1〜第3実施形態と異なる部分について説明する。
図5に示されるように、予荷重印加部42は、筒部48、台座49、電極部44、及び絶縁材51を有して構成されている。
【0065】
本実施形態では、絶縁材51は、電極部44のうち荷重検出素子41とは反対側に当接すると共に、台座49との間に位置する荷重検出素子41及び電極部44に所定の予荷重を印加した状態で筒部48のうちの他方の開口部48fに接着剤等で固定されている。なお、絶縁材51が溶接可能な材料で形成されている場合、絶縁材51は筒部48に溶接で固定されていても良い。
【0066】
さらに、絶縁材51は、筒部48の中心軸に沿って設けられた貫通孔51aを有している。信号線70はこの貫通孔51aにおいて電極部44のターミナル44aに電気的に接続される。
【0067】
以上のように、予荷重印加部42は、台座49と絶縁材51とによって荷重検出素子41に所定の予荷重を印加する構造とすることもできる。
【0068】
(第5実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について説明する。
図6に示されるように、本実施形態では、胴体部30とダイヤフラム60とは別体ではなく1つの有底筒状の部材から構成されている。したがって、有底筒状の部材の筒部分が胴体部30として構成されていると共に、当該有底筒状の部材の底部分がダイヤフラム60として構成されている。このように、胴体部30とダイヤフラム60とが一体的に繋がった部品として構成されていても良い。
【0069】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された圧力検出装置10の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、ハウジング20の構成は一例であり、他の構成としても良い。また、予荷重印加部42を構成する材料は、全て同じ材料で構成されていなくても良い。
【0070】
また、上記各実施形態で示された埋込部材46は必須のものではなく、設けられていなくても良い。さらに、第5実施形態で示された構造を、第2〜第4実施形態で示された構造に適用しても良い。