(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0016】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、複数の類似の部材(部位)が存在する場合には、総称の符号に記号を追加し個別または特定の部位を示す場合がある。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0017】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。
【0018】
また、断面図において、各部位の大きさは実デバイスと対応するものではなく、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。
【0019】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら本実施の形態の半導体装置の構造について説明する。
【0020】
[構造説明]
図1は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。本実施の形態の半導体装置は、nチャネル型MISFET(NT)およびpチャネル型MISFET(PT)を有する。
【0021】
nチャネル型MISFET(NT)は、基板S(p型ウエルPW)上にゲート絶縁膜GIを介して配置されたゲート電極GEと、このゲート電極GEの両側の半導体基板S(p型ウエルPW)中に配置されたソース、ドレイン領域とを有する。ゲート電極GEの側壁部には、絶縁膜からなる側壁絶縁膜SWが形成されている。絶縁膜としては、酸化シリコン膜SWaと窒化シリコン膜SWbとの積層膜が用いられる。また、ソース、ドレイン領域は、LDD構造を有し、n
+型半導体領域NPとn
−型半導体領域NMよりなる。n
−型半導体領域NMは、ゲート電極GEの側壁に対して自己整合的に形成されている。また、n
+型半導体領域NPは、側壁絶縁膜SWの側面に対して自己整合的に形成され、n
−型半導体領域NMよりも接合深さが深くかつ不純物濃度が高い。nチャネル型MISFET(NT)のゲート長は、例えば、150nm以下の微細なものである。
【0022】
pチャネル型MISFET(PT)は、半導体基板S(n型ウエルNW)上にゲート絶縁膜GIを介して配置されたゲート電極GEと、このゲート電極GEの両側の半導体基板S(n型ウエルNW)中に配置されたソース、ドレイン領域とを有する。ゲート電極GEの側壁部には、絶縁膜からなる側壁絶縁膜SWが形成されている。絶縁膜としては、酸化シリコン膜SWaと窒化シリコン膜SWbとの積層膜が用いられる。また、ソース、ドレイン領域は、LDD構造を有し、p
+型半導体領域PPとp
−型半導体領域PMよりなる。p
−型半導体領域PMは、ゲート電極GEの側壁に対して自己整合的に形成されている。また、p
+型半導体領域PPは、側壁絶縁膜SWの側面に対して自己整合的に形成され、p
−型半導体領域PMよりも接合深さが深くかつ不純物濃度が高い。pチャネル型MISFET(PT)のゲート長は、例えば、150nm以下の微細なものである。
【0023】
また、MISFET(NT、PT)上には、層間絶縁膜IL1が形成され、この層間絶縁膜IL1上には、配線M1が形成されている。MISFET(NT、PT)のソース、ドレイン領域と配線M1とは、プラグP1を介して接続されている。このプラグP1は、層間絶縁膜IL1中に形成されている。この層間絶縁膜IL1は、例えば、下層に位置する窒化シリコン膜IL1aと、この窒化シリコン膜IL1a上に位置する酸化シリコン膜IL1bの積層膜よりなる。
【0024】
また、配線M1上には、層間絶縁膜IL2が形成され、この層間絶縁膜IL2上には、配線M2が形成されている。この配線M1と配線M2とは、層間絶縁膜IL2中に形成されたプラグP2を介して接続されている。また、配線M2上には、層間絶縁膜IL3が形成され、この層間絶縁膜IL3上には、配線M3が形成されている。この配線M2と配線M3とは、層間絶縁膜IL3中に形成されたプラグP3を介して接続されている。また、配線M3上には、層間絶縁膜IL4が形成され、この層間絶縁膜IL4上には、配線M4が形成されている。この配線M3と配線M4とは、層間絶縁膜IL4中に形成されたプラグP4を介して接続されている。
【0025】
配線M4上には、保護膜PROが形成されている。この保護膜PROには、開口部OA1が設けられ、開口部OA1の底部から配線M4の一部が露出している。この配線M4の露出部をパッド領域PD1という。配線M4は、アルミニウムを含有する配線である。別の言い方をすれば、配線M4は、アルミニウム膜を有する。ここで言うアルミニウム膜は、純アルミニウム膜に限定されず、アルミニウムを主成分とする導電材料膜(但し金属伝導を示す導電材料膜)である。よって、例えば、Al(アルミニウム)とSi(シリコン)との化合物膜または合金膜なども含むものである。また、このアルミニウム膜におけるAl(アルミニウム)の組成比は50原子%より大きい(すなわちAlリッチである)ことが望ましい。
【0026】
本実施の形態の半導体装置においては、配線M4が、最上層配線であり、配線(M1〜M4)により、半導体素子(例えば、上記MISFET)の所望の結線がなされており、所望の動作をなし得る。よって、配線(最上層配線)M4の露出部であるパッド領域PD1を利用して、半導体装置が所望の動作を行うか否かのテスト(テスト工程)を行うことができる。
【0027】
また、後述するように、パッド領域PD1上には、導電性部材よりなる突起電極(バンプ電極)BPが形成される。また、パッド領域PD1上に、導電性部材よりなるボンディングワイヤを接続してもよい(
図26参照)。
【0028】
ここで、本実施の形態においては、アルミニウムを含有する配線(最上層配線)M4のパッド領域PD1(露出表面)に、窒化アルミニウム膜M4eを形成し、配線M4の腐食を防止している。以下に詳細に説明する。
【0029】
図2は、本実施の形態および比較例の半導体装置のパッド領域および半導体基板の裏面の様子を模式的に示す図である。(A)は、本実施の形態の半導体装置の場合を示し、(B)は、比較例の半導体装置の場合を示す。
【0030】
図2(B)に示すように、プラグP4上の配線M4は、チタン/窒化チタン膜M4a、アルミニウム膜M4bおよびチタン膜M4cを有する。チタン/窒化チタン膜M4aは、チタン膜とその上に形成された窒化チタン膜の積層膜である。配線M4上には、保護膜PROが形成され、この保護膜PRO中の開口部OA1(パッド領域PD1)の底部からアルミニウム膜M4bの主面が露出している。別の言い方をすれば、配線M4上のパッド領域PD1上の保護膜PROおよびチタン膜M4cは除去され、アルミニウム膜M4bが露出している。比較例においては、このアルミニウム膜M4bの露出部上に異物PAが生じている。
【0031】
ここで、半導体基板Sの裏面には、窒化シリコン膜(SiN)および酸化シリコン膜(SiO
2)が形成されている。なお、
図2(B)において、層間絶縁膜IL中に形成されている、プラグP4より下層の配線、プラグおよびMISFET(NT、PT)の記載は、省略されている。
【0032】
図2(A)に示すように、本実施の形態において、プラグP4上の配線M4は、チタン/窒化チタン膜M4a、アルミニウム膜M4bおよびチタン膜M4cを有する。配線M4上には、保護膜PROが形成され、この保護膜PRO中の開口部OA1(パッド領域PD1)の底部からアルミニウム膜M4bの主面が露出している。別の言い方をすれば、配線M4上のパッド領域PD1上の保護膜PROおよびチタン膜M4cは除去され、アルミニウム膜M4bが露出している。ここでは、このアルミニウム膜M4b上に、窒化アルミニウム膜M4eが形成されている。ここでも、半導体基板Sの裏面には、窒化シリコン膜(SiN)および酸化シリコン膜(SiO
2)が形成されている。これらの絶縁膜は、後述するように、半導体装置の製造工程において、バッチ式の成膜装置を用いることにより形成される。なお、
図2(A)において、層間絶縁膜IL中に形成されている、プラグP4より下層の配線、プラグおよびMISFET(NT、PT)の記載は、省略されている。
【0033】
本発明者らの検討に拠れば、比較例の半導体装置のように、パッド領域PD1からアルミニウム膜M4bが露出している場合、パッド領域PD1から露出しているアルミニウム膜M4bが腐食する。より具体的には、パッド領域PD1から露出しているアルミニウム膜M4bの表面に不所望な反応物(異物PA)が発生する(
図2(B)参照)。
【0034】
そして、このような反応物は、半導体基板Sの裏面に膜が形成されていない半導体装置よりも、裏面に膜が形成されている半導体装置において多く発生していることが判明した。さらに、半導体基板Sの裏面に膜が形成されていない半導体装置と比較し、裏面に膜が形成されている半導体装置においては、NH
4+の発生量が多いことが判明した。
【0035】
これらのことから、アルミニウム膜M4bの表面に形成される不所望な反応物(異物PA)には、半導体基板の裏面に形成されている窒化シリコン膜が関与していると考えられる。
【0036】
即ち、半導体基板Sの裏面の窒化シリコン膜(SiN)が形成されている場合、この窒化シリコン膜(SiN)に起因して、NH
4+の発生量が増加することが分かった。このNH
4+と、Al(Alイオン)の反応により、Al(OH)
3が異物として沈着する。以下に、Al(OH)
3の生成反応を示す。
2Al=2Al
3++6e
− …(化学式1)
6NH
3+6H
2O=6NH
4++6OH
− …(化学式2)
2Al
3++6HO
−=2Al(OH)
3↓ …(化学式3)
6NH
4++6e
−=6NH
3+3H
2↑ …(化学式4)
このような、異物(Al(OH)
3)が生じた場合は、パッド領域PD1上に導電性部材(バンプ電極、ボンディングワイヤ)を精度よく形成することができず、不良となってしまう。
【0037】
さらに、本発明者らの検討に拠れば、半導体基板の裏面に形成されている窒化シリコン膜が酸化シリコン膜などで覆われている場合においても、酸化シリコン膜中を通過してNH
4+の発生することが分かった。
【0038】
よって、半導体装置の製造工程において、半導体基板の裏面に一度でも窒化シリコン膜が形成されれば、この窒化シリコン膜に起因して、異物(Al(OH)
3)が生じることが分かった。
【0039】
また、パッド領域PD1の形成工程の後には、検査工程やボンディング工程などの後工程が控えている。半導体装置の製造工程において、検査工程やボンディング工程までに時間を要する場合がある。例えば、1週間以上、フープ(FOUP、基板収納容器、基板収容容器ともいう)内で保管される場合がある。このように保管期間が長い場合において、上記Al(OH)
3の生成反応が進行する。また、検査工程やボンディング工程を、それまでの製造ラインとは異なる場所で行う場合があり、その様な場合には、フープの輸送工程を含めて、保管期間が長くなる場合がある。この場合も、上記Al(OH)
3の生成反応が進行する。
【0040】
これに対し、本実施の形態によれば、パッド領域PD1上に窒化アルミニウム膜M4eが設けられているため、パッド領域PD1において異物の生成反応を防止することができる。特に、パッド領域PD1の形成工程の後において、検査工程やボンディング工程までに時間を要する場合があっても、パッド領域PD1において異物の生成反応を防止することができる。
【0041】
さらに、パッド領域PD1上の窒化アルミニウム膜M4eは、薄膜(10nm以下)であるため、パッド領域PD1上への導電性部材(バンプ電極、ボンディングワイヤ)の圧着工程の際に、容易に砕け、導電性部材とパッド領域PD1(配線M4)との電気的導通を図ることができる。
【0042】
[製法説明]
次いで、
図3〜
図26を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する。
図3〜
図26(
図5、
図6除く)は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0043】
図3に示すように、半導体基板(ウエハ)Sとして、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンからなるシリコン基板を準備する。なお、シリコン基板以外の半導体基板Sを用いてもよい。
【0044】
次いで、半導体基板Sの主面に素子分離領域STIを形成する。例えば、半導体基板S中に素子分離溝を形成し、この素子分離溝の内部に酸化シリコン膜などの絶縁膜を埋め込むことにより、素子分離領域STIを形成する。なお、LOCOS(local Oxidation of silicon)法を用いて、素子分離領域を形成してもよい。
【0045】
次いで、半導体基板Sのnチャネル型MISFET(NT)の形成領域にp型ウエルPWを、pチャネル型MISFET(PT)の形成領域にn型ウエルNWを形成する。
【0046】
例えば、
図4に示すように、pチャネル型MISFET(PT)の形成領域を、マスク膜MNで覆い、p型不純物(ホウ素(B)など)をイオン注入することによってp型ウエルPWを形成する(
図7)。マスク膜MNは、例えば、酸化シリコン膜からなり、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法により形成することができる。半導体基板Sの全面上に、マスク膜MNとして、酸化シリコン膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して、パターニングすることにより、pチャネル型MISFET(PT)の形成領域以外のマスク膜MNを除去する。
【0047】
ここで、複数枚の半導体基板Sについて、マスク膜MN(酸化シリコン膜)を、同時に成膜することが可能である。
図5は、本実施の形態で用いられるCVD装置の模式的な断面図である。
図5に示すCVD装置100においては、チャンバー(処理室、炉)100aの内部に、複数枚の半導体基板(ウエハ)Sが収納され、ガス導入孔100bから導入される原料ガスに晒され、半導体基板Sの全面上に、マスク膜MN(酸化シリコン膜)が形成される。この際、半導体基板Sの裏面の外周部が支持部により支持(保持)され、裏面の大部分は支持部から露出しているため、マスク膜MN(酸化シリコン膜)は、半導体基板Sの表面側(
図5においては、上側)のみならず、裏面側(
図5においては、下側)にも形成される(
図4参照)。このように複数枚の半導体基板Sを同時に処理する装置を、バッチ式の装置と呼ぶことがある。
【0048】
これに対し、
図6に示す装置は、半導体基板Sを1枚ずつ処理する装置である。
図6は、本実施の形態で用いられる装置の模式的な断面図である。このような装置を、枚葉式の装置と呼ぶことがある。例えば、このような枚葉式のCVD装置で膜を形成する場合には、チャンバー(処理室)100a内のステージ(基板搭載台)100cに、半導体基板(ウエハ)Sが搭載され、ガス導入孔(図示せず)から導入される原料ガスにより半導体基板Sの全面上に膜が形成される。このような枚葉式のCVD装置を用いた処理の場合、半導体基板Sの裏面がステージ100cと接しているため、半導体基板Sの裏面側に膜は形成されない。また、
図6に示す“枚葉式”の装置は、CVD装置などの成膜装置のみならず、ドライエッチング装置などの処理装置にも用いられる。
【0049】
よって、前述したように、バッチ式の装置でマスク膜MN(酸化シリコン膜)を形成した場合には、半導体基板Sの裏面側にもマスク膜MNが形成される(
図4参照)。そして、このマスク膜MNについて、枚葉式のエッチング装置でエッチングを行った場合には、半導体基板Sの裏面側のマスク膜MNは、除去されず残存した状態となる(
図4参照)。なお、後述する処理工程において、明示しない場合には、枚葉式の装置で処理を行ったものとする。
【0050】
マスク膜MNをマスクとしてp型ウエルPWを形成した後、
図8に示すように、nチャネル型MISFET(NT)の形成領域を、酸化シリコン膜よりなるマスク膜MPで覆い、n型不純物(ヒ素(As)またはリン(P)など)をイオン注入することによってn型ウエルNWを形成する。この際に形成されるマスク膜MPも、マスク膜MNと同様に、半導体基板Sの裏面側にも形成される。よって、半導体基板Sの裏面には、基板側からマスク膜MNおよびマスク膜MPの積層膜が形成される。次いで、注入された不純物を活性化するための熱処理を行い、マスク膜MP(酸化シリコン膜)をドライエッチングにより除去する。
【0051】
次いで、
図9に示すように、半導体基板Sの主面(p型ウエルPW、n型ウエルNWの主面)に、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEを形成する。例えば、半導体基板Sの主面(p型ウエルPW、n型ウエルNWの主面)を熱酸化することにより、酸化シリコン膜よりなるゲート絶縁膜GIを形成する。ゲート絶縁膜GIとしては、酸化シリコン膜の他、窒化シリコン膜や酸窒化シリコン膜を用いてもよい。また、高誘電率膜(いわゆる、high-k膜)をゲート絶縁膜GIとして用いてもよい。また、熱酸化法の他、CVD法などの他の成膜方法を用いてゲート絶縁膜GIを形成してもよい。
【0052】
次いで、導電性膜(導電体膜)としてシリコン膜を形成する。このシリコン膜として、例えば、多結晶シリコン膜をCVD法などを用いて形成する。この多結晶シリコン膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して、パターニングすることにより、ゲート電極GEを形成する。なお、各MISFET(NT、PT)の特性に応じて、ゲート電極GEを構成する材料(ここでは、多結晶シリコン膜)中に不純物を注入してもよい。
【0053】
次いで、各ゲート電極GEの両側の半導体基板S(p型ウエルPW、n型ウエルNW)中に、ソース・ドレイン領域を形成する。
【0054】
まず、ゲート電極GEの両側のp型ウエルPW中に、ヒ素(As)またはリン(P)などのn型不純物を注入し、n
−型半導体領域NMを形成する(
図9)。n
−型半導体領域NMは、ゲート電極GEの側壁に自己整合して形成される。また、ゲート電極GEの両側のn型ウエルNW中に、ホウ素(B)などのp型不純物を注入し、p
−型半導体領域PMを形成する(
図9)。p
−型半導体領域PMは、ゲート電極GEの側壁に自己整合して形成される。
【0055】
次いで、ゲート電極GEの側壁部に、側壁絶縁膜(サイドウォール膜)SWを形成する。例えば、
図10に示すように、半導体基板Sの主面の全面上に、側壁絶縁膜SWを構成する絶縁膜を形成する。ここでは、酸化シリコン膜SWaと窒化シリコン膜SWbとの積層膜を用いる。半導体基板Sの主面の全面上に、酸化シリコン膜SWaを、例えば、バッチ式のCVD装置を用いて形成する。次いで、酸化シリコン膜SWa上に、窒化シリコン膜SWbを、例えば、バッチ式の低圧CVD装置を用いて形成する。これにより、半導体基板Sの主面の全面上に、酸化シリコン膜SWaと窒化シリコン膜SWbとの積層膜が形成される。この際、前述したマスク膜MP、MNの場合と同様に、半導体基板Sの裏面にも、酸化シリコン膜SWaと窒化シリコン膜SWbとの積層膜が形成される。よって、半導体基板Sの裏面には、基板側からマスク膜MN、マスク膜MP、酸化シリコン膜SWaおよび窒化シリコン膜SWbの積層膜が形成される。なお、側壁絶縁膜SWとしては、酸化シリコン膜SWaと窒化シリコン膜SWbの積層膜の他、単層の酸化シリコン膜や単層の窒化シリコン膜などの絶縁膜を用いてもよい。
【0056】
次いで、
図11に示すように、酸化シリコン膜SWaと窒化シリコン膜SWbとの積層膜をエッチバックすることによって、ゲート電極GEの側壁部に側壁絶縁膜SWを形成する。この積層膜のエッチバックは、枚葉式のエッチング装置で行われる。よって、半導体基板Sの裏面側の酸化シリコン膜SWaと窒化シリコン膜SWbとの積層膜は、除去されず残存した状態となる。
【0057】
次いで、
図12に示すように、ゲート電極GEと側壁絶縁膜SWとの合成体の両側のp型ウエルPW中に、ヒ素(As)またはリン(P)などのn型不純物を注入し、n
+型半導体領域NPを形成する。n
+型半導体領域NPは、側壁絶縁膜SWの側壁に自己整合して形成される。n
+型半導体領域NPは、n
−型半導体領域NMよりも不純物濃度が高く、接合の深さが深い半導体領域として形成される。また、ゲート電極GEと側壁絶縁膜SWとの合成体の両側のn型ウエルNW中に、ホウ素(B)などのp型不純物を注入し、p
+型半導体領域PPを形成する。p
+型半導体領域PPは、側壁絶縁膜SWの側壁に自己整合して形成される。p
+型半導体領域PPは、p
−型半導体領域PMよりも不純物濃度が高く、接合の深さが深い半導体領域として形成される。次いで、注入された不純物を活性化するための熱処理を行う。これにより、ゲート電極GEの両側のp型ウエルPW中に、n
−型半導体領域NMとn
+型半導体領域NPとからなるLDD構造のソース、ドレイン領域が形成され、ゲート電極GEの両側のn型ウエルNW中に、p
−型半導体領域PMとp
+型半導体領域PPとからなるLDD構造のソース、ドレイン領域が形成される。
【0058】
以上の工程により、p型ウエルPWの主表面に、nチャネル型MISFET(NT)が形成され、n型ウエルNWの主表面に、pチャネル型MISFET(PT)が形成される。
【0059】
次いで、サリサイド技術を用いて、ゲート電極GE、n
+型半導体領域NPおよびp
+型半導体領域PPの上部に、それぞれ金属シリサイド膜SILを形成する。
【0060】
まず、金属シリサイド膜SILを形成しない領域(図示せず)に、シリサイドマスクSMとして、酸化シリコン膜を、例えば、バッチ式のCVD装置を用いて形成する(
図13参照)。この際、前述したマスク膜MP、MN、および酸化シリコン膜SWaと窒化シリコン膜SWbとの積層膜の場合と同様に、半導体基板Sの裏面にも、シリサイドマスクSM(酸化シリコン膜)が形成される。よって、半導体基板Sの裏面には、基板側からマスク膜MN、マスク膜MP、酸化シリコン膜SWaおよび窒化シリコン膜SWbの積層膜、およびシリサイドマスクSMが形成される。
【0061】
次いで、nチャネル型MISFET(NT)およびpチャネル型MISFET(PT)上のシリサイドマスクSM(酸化シリコン膜)を、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して除去する(
図13参照)。
【0062】
次いで、
図13に示すように、半導体基板Sの全面上に、金属膜Mを形成し、熱処理を施すことによって、ゲート電極GE、n
+型半導体領域NPおよびp
+型半導体領域PPと金属膜Mとを反応させる。これにより、ゲート電極GE、n
+型半導体領域NPおよびp
+型半導体領域PPの上部に、それぞれ金属シリサイド膜SILが形成される。上記金属膜は、例えばコバルト(Co)膜またはニッケル(Ni)膜などからなり、スパッタリング法などを用いて形成することができる。次いで、未反応の金属膜Mを除去する(
図14参照)。なお、金属シリサイド膜SILの形成工程は、省略してもよい。
【0063】
次いで、nチャネル型MISFET(NT)およびpチャネル型MISFET(PT)上に、絶縁膜(層間絶縁膜)IL1を形成する。まず、
図15に示すように、MISFET(NT、PT)のソース、ドレイン領域およびゲート電極GEの上方を覆うように、窒化シリコン膜IL1aを形成する。この窒化シリコン膜IL1aは、バッチ式のCVD装置を用いて形成する。この際、前述したマスク膜MP、MN等と同様に、半導体基板Sの裏面にも、窒化シリコン膜IL1aが形成される。よって、半導体基板Sの裏面には、基板側からマスク膜MN、マスク膜MP、酸化シリコン膜SWaおよび窒化シリコン膜SWbの積層膜、シリサイドマスクSMおよび窒化シリコン膜IL1aが形成される。
【0064】
次いで、
図16に示すように、窒化シリコン膜IL1a上にこの窒化シリコン膜IL1aよりも厚く形成された酸化シリコン膜IL1bをCVD法などを用いて形成する。これにより、窒化シリコン膜IL1aおよび酸化シリコン膜IL1bの積層膜よりなる層間絶縁膜IL1を形成することができる。この層間絶縁膜IL1の形成後、必要に応じてCMP法などを用いて層間絶縁膜IL1の上面を平坦化する。
【0065】
次いで、
図17に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して、層間絶縁膜IL1を選択的に除去することにより、層間絶縁膜IL1中にコンタクトホールを形成する。この際、窒化シリコン膜IL1aと酸化シリコン膜IL1bとのエッチングの選択比を利用して、まず、酸化シリコン膜IL1bをエッチングし、露出した窒化シリコン膜IL1aを、さらにエッチングすることで、精度良くコンタクトホールを形成することができる。
【0066】
次いで、コンタクトホール内を含む層間絶縁膜IL1上に、バリア導体膜(図示せず)および主導体膜の積層膜を形成する。次いで、層間絶縁膜IL1上の不要な主導体膜およびバリア導体膜をCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより、プラグP1を形成する。このプラグP1は、例えば、n
+型半導体領域NPおよびp
+型半導体領域PPの上部に金属シリサイド膜SILを介して形成される。また、プラグP1をゲート電極GEの上部に形成してもよい。なお、バリア導体膜としては、例えば、チタン膜、窒化チタン膜、あるいはこれらの積層膜を用いることができる。また、主導体膜としては、タングステン膜などを用いることができる。
【0067】
次いで、プラグP1が埋め込まれた層間絶縁膜IL1上に導電性膜よりなる配線M1を形成する。例えば、層間絶縁膜IL1およびプラグP1上に、導電性膜として、チタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜、およびチタン/窒化チタン膜よりなる積層膜を、スパッタリング法などを用いて順次堆積する。チタン/窒化チタン膜の積層膜は、バリア導体膜とも呼ばれる。次いで、上記積層膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用してパターニングすることによりプラグP1上に配線M1を形成する。
【0068】
配線M1を形成するための上記アルミニウム膜は、純アルミニウム膜に限定されず、アルミニウムを主成分とする導電材料膜(但し金属伝導を示す導電材料膜)を用いることができる。例えば、Al(アルミニウム)とSi(シリコン)との化合物膜または合金膜を用いることができる。また、このアルミニウム膜におけるAl(アルミニウム)の組成比は50原子%より大きい(すなわちAlリッチである)ことが望ましい。このことは、配線M1を形成するための上記アルミニウム膜だけでなく、配線M2〜M3を形成するためのアルミニウム膜についても同様である。
【0069】
次いで、
図18に示すように、配線M1上に、層間絶縁膜IL2を形成する。例えば、配線M1上に、CVD法などにより酸化シリコン膜を堆積する。
【0070】
次いで、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して、層間絶縁膜IL2を選択的に除去することにより、層間絶縁膜IL2中にコンタクトホールを形成する。次いで、コンタクトホールの内部に導電性膜を埋め込むことにより層間絶縁膜IL2中にプラグP2を形成する。このプラグP2は、プラグP1と同様に形成することができる。次いで、プラグP2上に、導電性膜よりなる配線M2を形成する。例えば、層間絶縁膜IL2およびプラグP2上に、導電性膜として、チタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜、およびチタン/窒化チタン膜よりなる積層膜を、スパッタリング法などを用いて順次堆積する。次いで、上記積層膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用してパターニングすることにより上記プラグP2上に配線M2を形成する。
【0071】
次いで、
図19に示すように、配線M2上に、層間絶縁膜IL3を形成する。例えば、配線M2上に、CVD法などにより酸化シリコン膜を堆積する。次いで、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して、層間絶縁膜IL3を選択的に除去することにより、層間絶縁膜IL3中にコンタクトホールを形成する。次いで、コンタクトホールの内部に導電性膜を埋め込むことにより層間絶縁膜IL3中にプラグP3を形成する。このプラグP3は、プラグP1と同様に形成することができる。次いで、プラグP3上に、導電性膜よりなる配線M3を形成する。例えば、層間絶縁膜IL3およびプラグP3上に、導電性膜として、チタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜、およびチタン/窒化チタン膜よりなる積層膜を、スパッタリング法などを用いて順次堆積する。次いで、上記積層膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用してパターニングすることにより上記プラグP3上に配線M3を形成する。
【0072】
次いで、
図20に示すように、配線M2上に、層間絶縁膜IL4を形成する。例えば、配線M3上に、CVD法などにより酸化シリコン膜を堆積する。次いで、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して、層間絶縁膜IL4を選択的に除去することにより、層間絶縁膜IL4中にコンタクトホールを形成する。次いで、コンタクトホールの内部に導電性膜を埋め込むことにより層間絶縁膜IL4中にプラグP4を形成する。このプラグP4は、プラグP1と同様に形成することができる。
【0073】
次いで、
図21に示すように、プラグP4上に、導電性膜よりなる配線M4を形成する。例えば、層間絶縁膜IL4およびプラグP4上に、導電性膜として、チタン/窒化チタン膜M4a、アルミニウム膜M4bおよびチタン膜M4cよりなる積層膜を、スパッタリング法などを用いて順次堆積する。次いで、上記積層膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用してパターニングすることにより上記プラグP4上に配線M4を形成する。なお、配線M4のパターニングの際、配線M4上に反射防止膜として、例えば、酸窒化シリコン膜を形成してもよい。この酸窒化シリコン膜は、配線M4のパターニング後、除去してもよいし、配線M4上に残存させたままとしてもよい。
【0074】
次いで、
図22に示すように、配線M4の側面(アルミニウム膜M4bの側面)の不動態化処理(酸化処理)を行う。例えば、配線M4を酸素プラズマ処理することにより、配線M4の側面(アルミニウム膜M4bの側面)に酸化アルミニウム膜(Al
2O
3膜)M4dを形成する。例えば、ステージ温度:250℃、高周波パワー:2000W、処理室内圧力;100Pa、O
2ガス流量;7000mL/min(sccm)の条件下において、120秒間、処理を行う。かかる処理によれば、配線M4の側面に、1nm〜5nm程度の膜厚の酸化アルミニウム膜を形成することができる。なお、不動態化処理(酸化処理)には、酸素を用いる他、オゾン(O
3)を用いた処理を行うことも可能である。
【0075】
次いで、
図23に示すように、配線M4上に、保護膜PROを形成する。例えば、配線M4上を含む層間絶縁膜IL4上に、CVD法などにより窒化シリコン膜PROaを堆積し、さらに、この窒化シリコン膜PROa上に、CVD法などにより酸化シリコン膜PRObを堆積する。
【0076】
次いで、
図24に示すように、配線M4(アルミニウム膜M4b)のパッド領域PD1上の保護膜PROを除去することにより、開口部OA1を形成する。例えば、開口部OA1の形成領域に開口部を有するフォトレジスト膜を保護膜PRO上に形成し、このフォトレジスト膜をマスクとして保護膜PROをエッチングする。反射防止膜が残存している場合には、この膜もエッチングする。次いで、露出したチタン膜M4cをさらにエッチングする。これにより、パッド領域PD1のアルミニウム膜M4bが露出する。言い換えれば、アルミニウム膜M4bのパッド領域PD1が開口部OA1の底面に露出する。
【0077】
次いで、
図25に示すように、アルミニウム膜M4bのパッド領域PD1を窒化することにより、窒化アルミニウム膜(AlN膜)M4eを形成する。例えば、アンモニア(NH
3)プラズマ処理を行う。例えば、ステージ温度:400℃、高周波パワー:270W、処理室内圧力;660Pa、NH
3ガス流量;145mL/min(sccm)の条件下において、20秒間、処理を行う。なお、窒化処理では、窒素(N
2)やアンモニア(NH
3)などの窒素化合物ガスを用いたプラズマ処理を行う。
【0078】
かかる処理によれば、パッド領域PD1の表面に、3nm〜6nm程度の膜厚の窒化アルミニウム膜(AlN膜)を形成することができる。この窒化アルミニウム膜(AlN膜)の膜厚は、10nm未満とすることが好ましい。
【0079】
次いで、パッド領域PD1を利用して、半導体装置が所望の動作を行うか否かのテスト(試験)を行う。例えば、プローブ針をパッド領域PD1に突き立てて、所定の電気信号を印加し、所望の動作を行うか否かの試験を行う。この際、窒化アルミニウム膜(AlN膜)の膜厚は、数nmであるため、プローブ針で容易に突き破ることができ、プローブ針とパッド領域PD1との電気的導通に支障をきたすことはない。このテスト工程により、パッド領域PD1にプローブ痕が形成される。
【0080】
その後、半導体基板Sの裏面研削を行い、半導体基板Sを薄膜化し、半導体基板Sを切断(ダイシング)して複数の半導体チップに分割(個片化)する。これにより、半導体基板S(半導体ウエハ)の各チップ領域から半導体チップが取得される。
【0081】
次いで、
図26に示すように、パッド領域PD1上に、導電性部材よりなる突起電極(バンプ電極)BPを形成する(ボンディング工程)。導電性部材は、例えば、金または金を含む合金よりなる。例えば、電気トーチにより、金よりなるワイヤの先端に金ボールを形成し、金ボールをパッド領域PD1に圧着しつつ、金ボールに接続するワイヤを切断する。この後、金バンプを、配線基板などに形成された外部端子(配線、リード)の上に搭載し、電気的に接続することにより、半導体装置(チップ)を実装することができる。また、パッド領域PD1と配線(リード)との電気的接続をボンディングワイヤにより行ってもよい。この場合、例えば、電気トーチにより、金よりなるワイヤの一端に金ボールを形成し、金ボールをパッド領域PD1に圧着し、金ボールに接続するワイヤの多端を配線(リード)に圧着する。
【0082】
このように、パッド領域PD1上に、外部端子と電気的に接続される導電性部材(バンプ電極、ボンディングワイヤ)を圧着することにより、窒化アルミニウム膜M4eが割れ(砕け)、窒化アルミニウム膜M4eの割れ目を介して、配線M4と導電性部材(BP)との電気的接続を図ることができる。
【0083】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、パッド領域PD1上に窒化アルミニウム膜M4eを設けたので、半導体基板の裏面に窒化シリコン膜(SWb、IL1a)が形成される場合においても、パッド領域PD1における異物の生成反応を防止することができる。特に、パッド領域PD1の形成工程の後において、検査工程やボンディング工程までに時間を要し、半導体基板の裏面に窒化シリコン膜が形成され、かつ、パッド領域PD1が露出した状態が長期間となる場合においても、異物の生成反応を効果的に防止することができる。
【0084】
特に、半導体基板(ウエハ)の大口径化に伴い、裏面に形成される膜の影響が大きくなるため、例えば、直径300mm以上の半導体基板(ウエハ)を用いる場合には、本実施の形態を適用して効果的である。
【0085】
なお、上記製造工程においては、半導体基板の裏面に窒化シリコン膜が形成される工程として、酸化シリコン膜SWaの形成工程および窒化シリコン膜IL1aの形成工程を例示したが、これらに限定されるものではない。半導体装置の他の構成部に窒化シリコン膜を用いてもよく、その形成工程において、半導体基板の裏面に窒化シリコン膜が形成され得る場合があることは言うまでもない。また、各種処理工程(例えば、イオン注入工程など)において形成されるマスク膜として窒化シリコン膜を用いてもよく、その形成工程において、半導体基板の裏面に窒化シリコン膜が形成され得る場合があることは言うまでもない。
【0086】
(応用例)
上記製造工程においては、開口部OA1を形成した後、アルミニウム膜M4bのパッド領域PD1の窒化処理を行ったが、アルミニウム膜M4bのパッド領域PD1に不動態化処理(酸化処理)を行った後、窒化処理を行ってもよい。なお、アルミニウム膜M4bのパッド領域PD1上の構成以外は実施の形態1と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0087】
図27は、本実施の形態の応用例の半導体装置のパッド領域の構成を示す断面図である。
図27に示すように、本応用例において、配線M4は、チタン/窒化チタン膜M4a、アルミニウム膜M4bおよびチタン膜M4cを有する。配線M4の側壁には、酸化アルミニウム膜(Al
2O
3膜)M4dが形成されている。
【0088】
また、配線M4上には、保護膜PROが形成され、この保護膜PRO中の開口部OA1(パッド領域PD1)において、酸化アルミニウム膜M4fと窒化アルミニウム膜M4eの積層膜が設けられている。言い換えれば、保護膜PRO中の開口部OA1(パッド領域PD1)において、アルミニウム膜M4b上に、酸化アルミニウム膜M4fが形成され、さらに、この酸化アルミニウム膜M4f上に、窒化アルミニウム膜M4eが形成されている。
【0089】
このように、パッド領域PD1上に、酸化アルミニウム膜M4fと窒化アルミニウム膜M4eの積層膜を設けた場合も、パッド領域PD1において異物の生成反応を防止することができる。
【0090】
次いで、パッド領域PD1上に、酸化アルミニウム膜M4fと窒化アルミニウム膜M4eの積層膜を形成する工程について説明する。
【0091】
まず、
図24を参照しながら説明したように、配線M4(アルミニウム膜M4b)のパッド領域PD1上の保護膜PROを除去することにより、開口部OA1を形成し、さらに、露出したチタン膜M4cをエッチングする。これにより、パッド領域PD1のアルミニウム膜M4bが露出する。
【0092】
次いで、アルミニウム膜M4bのパッド領域PD1を、酸化することにより、酸化アルミニウム膜(Al
2O
3膜)M4fを形成する(
図27参照)。例えば、ステージ温度:250℃、高周波パワー:2000W、処理室内圧力;100Pa、O
2ガス流量;7000mL/min(sccm)の条件下において、120秒間、酸素プラズマ処理を行う。
【0093】
次いで、アルミニウム膜M4bのパッド領域PD1を、窒化することにより、窒化アルミニウム膜(AlN膜)を形成する。例えば、ステージ温度:400℃、高周波パワー:270W、処理室内圧力;660Pa、NH
3ガス流量;145mL/min(sccm)の条件下において、20秒間、NH
3プラズマ処理を行う。
【0094】
このNH
3プラズマ処理においては、酸化アルミニウム膜(Al
2O
3膜)M4fを還元し、酸化アルミニウム膜をアルミニウムに変換した後、窒化アルミニウム膜を形成することができる。これにより、パッド領域PD1上に、酸化アルミニウム膜M4fと窒化アルミニウム膜M4eの積層膜を形成することができる。
【0095】
なお、酸化アルミニウム膜M4fの膜厚によっては、そのすべてが窒化アルミニウム膜M4eとなる場合がある。
【0096】
また、酸化アルミニウム膜M4fは、均一な膜として形成し難く、ピンホールを有する不連続な膜となる場合がある。
図28は、パッド領域の積層膜の他の構成を示す断面図である。
図28に示すように、酸化アルミニウム膜M4fの形成されていない領域(ピンホール)PINを埋めるように窒化アルミニウム膜M4eが形成されていてもよい。この場合、例えば、N
2プラズマ処理を行う。N
2プラズマ処理では、還元作用がないため、酸化アルミニウム膜M4fの形成されていない領域(ピンホール)PINに、窒化アルミニウム膜M4eが形成される。
【0097】
このような場合も、パッド領域PD1が、酸化アルミニウム膜M4fまたは窒化アルミニウム膜M4eで覆われることとなり、パッド領域PD1において異物の生成反応を防止することができる。もちろん、NH
3プラズマ処理を行い、酸化アルミニウム膜M4fの形成されていない領域(ピンホール)PINを含むパッド領域PD1全面に、窒化アルミニウム膜M4eを形成していてもよい。
【0098】
このように、パッド領域PD1に酸化処理と窒化処理の双方を施してもよい。但し、形成される酸化アルミニウム膜M4fや窒化アルミニウム膜M4eは、それぞれ、5nm以下の厚さ、10nm未満の厚さの薄膜であるため、膜の積層状態は種々の形態をとり得るものと考えられる。
【0099】
図27や
図28に示すような積層状態の膜は、オージェ電子分光分析などにより、酸化アルミニウム膜M4fおよび窒化アルミニウム膜M4eの構成元素を検出することで、その形成を確認することができる。
【0100】
なお、前述したとおり、酸化アルミニウム膜M4fは、ピンホールを有する不連続な膜となりやすいため、酸化アルミニウム膜M4f単層で、パッド領域PD1を覆うことは好ましくない。
図27や
図28に示すように、窒化アルミニウム膜M4eを併せて形成することにより、パッド領域PD1において異物の生成反応を効果的に防止することができる。
【0101】
(実験例)
図29は、NH
3プラズマ処理の有無と腐食発生数との関係を示すグラフである。横軸は、ウエハ番号であり、縦軸は、腐食発生数[個]である。半導体基板の裏面に窒化シリコン膜が形成され、かつ、パッド領域PD1が露出した状態で、8日間放置(保存)した24枚のウエハ(半導体基板)と、12日間放置(保存)した24枚のウエハ(半導体基板)について外観検査試験を行った。
【0102】
NH
3プラズマ処理を行わなかった場合(ひし形マーク)は、放置期間が長くなるにしたがって腐食発生数が、2個から3個に増加している。即ち、放置期間が長くなるにしたがって腐食発生数が、2個から3個に増加した。これに対し、NH
3プラズマ処理を行った場合(正方形マーク)は、放置期間に関わらず、腐食発生数は、0個であった。即ち、NH
3プラズマ処理を行った場合(正方形マーク)は、NH
3プラズマ処理を行わなかった場合(ひし形マーク)より腐食発生数が少なく、放置期間が長くなっても腐食発生数が少ないままであった。
【0103】
このように、パッド領域PD1上の窒化アルミニウム膜M4eによる腐食(異物の生成反応)の防止効果を確認することができた。
【0104】
(実施の形態2)
実施の形態1においては、パッド領域PD1上に、導電性部材よりなる突起電極(バンプ電極)BPを形成したが(
図26参照)、パッド領域PD1上に再配線を設け、この再配線上に、導電性部材よりなる突起電極BPを設けてもよい。
【0105】
図30は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。配線M4より下層の構成は実施の形態1の場合と同様であるためその詳細な説明を省略する。
【0106】
図30に示すように、配線M4は、層間絶縁膜IL4上に形成され、配線M3とプラグP4を介して接続されている。
【0107】
配線M4上には、層間絶縁膜IL5が形成されている。この層間絶縁膜IL5には、開口部OA1が設けられ、開口部OA1の底部から配線M4の一部が露出している。この配線M4の露出部をパッド領域PD1という。配線M4は、アルミニウムを含有する配線である。
【0108】
開口部OA1内および層間絶縁膜IL5上には、再配線RWが形成されている。よって、開口部OA1の底部(パッド領域PD1)において、配線M4と再配線RWが接続される。再配線RWは、アルミニウムを含有する配線である。
【0109】
本実施の形態の半導体装置においては、配線M4が、最上層配線であり、配線(M1〜M4)により、半導体素子(例えば、上記MISFET)の所望の結線がなされており、所望の動作をなし得る。よって、配線(最上層配線)M4の露出部であるパッド領域PD1を利用して、半導体装置が所望の動作を行うか否かのテスト(テスト工程)を行うことができる。
【0110】
そして、再配線RWは、配線(最上層配線)M4の一部であるパッド領域PD1をチップの所望の領域(パッド領域PD2)まで引き出す配線である。
【0111】
再配線RW上には、保護膜PIが形成されている。この保護膜PIには、開口部OA2が設けられ、開口部OA2の底部から再配線RWの主面が露出している。この再配線RWの露出部をパッド領域PD2という。
【0112】
また、パッド領域PD2上には、導電性部材よりなる突起電極(バンプ電極)BPが形成される。また、パッド領域PD2上に、導電性部材よりなるボンディングワイヤを接続してもよい。
【0113】
ここで、本実施の形態においては、アルミニウムを含有する配線(最上層配線)M4のパッド領域PD1(露出表面)に、窒化アルミニウム膜M4eを形成し、配線M4の腐食を防止している。また、アルミニウムを含有する再配線RWのパッド領域PD2(露出表面)に、窒化アルミニウム膜RWbを形成し、再配線RWの腐食を防止している。
【0114】
このように、パッド領域PD1に、窒化アルミニウム膜M4eを形成することで、検査工程までに時間を要し、半導体基板の裏面に窒化シリコン膜が形成され、かつ、パッド領域PD1が露出した状態が長期間となる場合においても、異物の生成反応を効果的に防止することができる。また、パッド領域PD2に、窒化アルミニウム膜RWbを形成することで、ボンディング工程などの後工程までに時間を要し、半導体基板の裏面に窒化シリコン膜が形成され、かつ、パッド領域PD2が露出した状態が長期間となる場合においても、異物の生成反応を効果的に防止することができる。
【0115】
次いで、配線M4および再配線RWの形成工程について説明する。
【0116】
まず、配線M4上に層間絶縁膜IL5を形成する。例えば、実施の形態1の場合と同様にして、配線M4上を含む層間絶縁膜IL3上に、CVD法などにより窒化シリコン膜IL5aを堆積し、さらに、この窒化シリコン膜IL5a上に、CVD法などにより酸化シリコン膜IL5bを堆積する(
図23参照)。
【0117】
次いで、配線M4(アルミニウム膜M4b)のパッド領域PD1上の層間絶縁膜IL5を除去することにより、開口部OA1を形成する。例えば、開口部OA1の形成領域に開口部を有するフォトレジスト膜を層間絶縁膜IL5上に形成し、このフォトレジスト膜をマスクとして層間絶縁膜IL5をエッチングする。次いで、露出したチタン膜M4cをさらにエッチングする。これにより、パッド領域PD1のアルミニウム膜M4bが露出する(
図24参照)。
【0118】
次いで、アルミニウム膜M4bのパッド領域PD1を窒化することにより、窒化アルミニウム膜(AlN膜)を形成する(
図25参照)。例えば、実施の形態1の場合と同様に、アンモニア(NH
3)プラズマ処理を行う。
【0119】
次いで、パッド領域PD1を利用して、半導体装置が所望の動作を行うか否かのテストを行う。例えば、プローブ針をパッド領域PD1に突き立てて導通試験を行う。この際、窒化アルミニウム膜(AlN膜)の膜厚は、数nmであるため、プローブ針で容易に突き破ることができ、導通試験に支障をきたすことはない。
【0120】
次いで、開口部OA1内および層間絶縁膜IL5上に、導電性膜よりなる再配線RWを形成する。例えば、開口部OA1内および層間絶縁膜IL5上に、導電性膜として、アルミニウム膜を、スパッタリング法などを用いて堆積する。導電性膜として、チタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜、および窒化チタン膜よりなる積層膜を用いてもよい。次いで、上記導電性膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用してパターニングすることにより再配線RWを形成する。
【0121】
次いで、再配線RW上に保護膜PIを形成する。例えば、保護膜PIとして、感光性のポリイミド膜を用い、再配線RWおよび層間絶縁膜IL5上に塗布する。
【0122】
次いで、再配線RW(アルミニウム膜RWa)のパッド領域PD2上の保護膜PIを除去することにより、開口部OA2を形成する。例えば、感光性のポリイミド膜を露光・現像することにより開口部OA2を形成する。これにより、パッド領域PD2の再配線(アルミニウム膜)RWが露出する。なお、再配線RWとして、チタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜、および窒化チタン膜よりなる積層膜を用いた場合は、パッド領域PD2の窒化チタン膜も除去し、アルミニウム膜を露出させる。
【0123】
次いで、再配線(アルミニウム膜)RWのパッド領域PD2を窒化することにより、窒化アルミニウム膜(AlN膜)を形成する。例えば、実施の形態1の場合と同様に、アンモニア(NH
3)プラズマ処理を行う。
【0124】
その後、半導体基板Sの裏面研削を行い、半導体基板Sを薄膜化し、半導体基板Sを切断(ダイシング)して複数の半導体チップに分割(個片化)する。これにより、半導体基板S(半導体ウエハ)の各チップ領域から半導体チップが取得される。
【0125】
次いで、パッド領域PD2上に、導電性部材よりなる突起電極(バンプ電極)BPを形成する(ボンディング工程)。突起電極(バンプ電極)BPは、実施の形態1と同様にして形成することができる。また、実施の形態1と同様にしてパッド領域PD2上に、ボンディングワイヤを形成してもよい。
【0126】
なお、配線M4のパッド領域PD1上の窒化アルミニウム膜(AlN膜)は、再配線RWの形成時の膜応力により容易に割れる(砕ける)ため、配線M4と再配線RWとの電気的導通を図ることができる。また、配線M4と再配線RWとの間の接続抵抗が高い場合には、再配線RWの形成工程の前に、配線M4のパッド領域PD1上の窒化アルミニウム膜(AlN膜)の除去を行ってもよい。
【0127】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0128】
例えば、実施の形態1においては、配線M1〜配線M3をパターニングにより形成したが、層間絶縁膜中に設けた配線溝に銅(Cu)などの導電性膜を埋め込む、いわゆる“ダマシン法”を用いて配線M1〜配線M3を形成してもよい。また、層間絶縁膜中の配線溝およびその下のコンタクトホールに、同時に銅(Cu)などの導電性膜を埋め込む、いわゆる“デュアルダマシン法”を用いて配線およびプラグ(M2とP2等)を形成してもよい。