特許第6301074号(P6301074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ株式会社の特許一覧 ▶ NTN株式会社の特許一覧

特許6301074アコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造
<>
  • 特許6301074-アコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造 図000002
  • 特許6301074-アコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造 図000003
  • 特許6301074-アコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造 図000004
  • 特許6301074-アコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造 図000005
  • 特許6301074-アコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造 図000006
  • 特許6301074-アコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造 図000007
  • 特許6301074-アコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造 図000008
  • 特許6301074-アコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造 図000009
  • 特許6301074-アコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6301074
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】アコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造
(51)【国際特許分類】
   G10C 3/18 20060101AFI20180319BHJP
   G10C 3/16 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   G10C3/18 120
   G10C3/16 120
   G10C3/16 110
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-133609(P2013-133609)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-44405(P2014-44405A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2016年4月20日
(31)【優先権主張番号】特願2012-169491(P2012-169491)
(32)【優先日】2012年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】門林 映美
(72)【発明者】
【氏名】大橋 靖史
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 和夫
(72)【発明者】
【氏名】福澤 覚
【審査官】 上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−129226(JP,U)
【文献】 特開昭61−115625(JP,A)
【文献】 特開平04−191527(JP,A)
【文献】 特開2008−102253(JP,A)
【文献】 実開昭60−041992(JP,U)
【文献】 実開昭57−000795(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10C 1/00−3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動部品を回動自在に軸支するアコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造において、
各々が嵌合穴を有し、互いに対向する一対の支持部と、
前記各支持部に対応して設けられ、軸部、ツバ部及び軸受け穴を有して樹脂で一体に形成され、摩擦係数が前記支持部よりも小さい軸受け部材とを有し、
前記各軸受け部材の前記ツバ部が前記各支持部の互いに対向する内側に位置するように、前記各軸受け部材の前記軸部が、対応する支持部の前記嵌合穴にそれぞれ挿入嵌合され、
前記回動部品の回動軸を前記軸受け穴に挿入して軸支させると、両側の前記ツバ部に対して前記回動部品が摺動しつつ回動自在になるように構成され
前記各支持部は、第1の肉部と、前記回動部品の前記回動軸の軸方向において前記第1の肉部より薄い第2の肉部とを有してこれらで段差部を形成し、前記嵌合穴は前記第2の肉部に形成され、前記ツバ部には、前記軸部が前記嵌合穴に挿入嵌合された状態で前記段差部に係合する、前記回動軸の軸方向視で直線状の係合部が形成され、前記段差部と前記係合部とを対向させた係合により、前記各支持部の前記嵌合穴に対する前記各軸受け部材の回動が規制され、
前記各支持部のツバ部の互いに対向する面は、対応する前記第1の肉部の内側の面に対して突出し、前記回動部品は、回動時には前記第1の肉部に対して摺動することなく前記ツバ部に対して摺動することを特徴とするアコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アコースティック鍵盤楽器においては、多数の箇所において回動部品が支持部に軸支され、演奏等の操作に伴い回動部品が回動する。特に、一対で構成される支持部の間に回動部品が介在し、回動部品のピン等の回動軸が2つの支持部に軸支される形態がある。
【0003】
回動部品としては、例えば、ハンマアクション機構において、サポート本体とジャックとの関係、レペティションレバーフレンジとレペティションレバーとの関係、ハンマシャンクフレンジとハンマシャンクとの関係において、一方が支持部で他方が回動部品として把握できる。ハンマアクション機構に限られず、ダンパレバーフレンジとダンパレバー等においても同様の関係が成立する。
【0004】
下記特許文献1の鍵盤楽器では、軸支部において、羊毛等でなるブッシングクロスが軸受け部に採用される。支持部としてのフレンジの孔にブッシングクロスが嵌入され、ブッシングクロスの中央孔にセンターピンが嵌入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3349008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように羊毛やフェルト等を採用した軸受け機構においては、回動部品の回動軸の軸方向において、回動部品が支持部の壁面に対して摺動する。その摺動時の摩擦力は安定しないため、回動動作が安定せず、動作不良を起こすおそれがある。特にピアノにおいて乾燥や湿気により摩擦力が変動すると、その傾向が強くなる。また、摩擦によって回動部品につぶれや摩耗が生じ、寸法変化により回動部品の傾きやガタツキの原因になる場合があった。
【0007】
また、羊毛の軸受け部を採用する場合は、素材バラツキを見込んで回動部品と支持部との間に相当の隙間を設けることから、軸受け穴と回動軸との間に隙間がある場合や、軸受け部が変形した場合等には、回動部品の傾きにつながる。しかも、各所の隙間の程度によって回動時の摩擦力がばらついたり変化したりする。複数個所の軸支部同士間のトルクのばらつきにもつながる。これらは製品間の押鍵感触等のばらつきにも影響してくる。
【0008】
また、一般に、滑り性の良い樹脂を接着するのは困難であり、特に、鍵盤装置における軸受け機構に、軸受として滑り性の良い樹脂を適用する場合、軸径の小さいものを用いなければならないため、接着作業は非常に困難である。
【0009】
さらに、軸受の取付方法として締まり嵌めを選択する場合、以下の理由により、回動トルク、摩耗性のばらつきを抑える事は困難である。まず、軸受け内径、外径ともに、射出成形によるばらつき(キャビティ、成形条件の影響による)が生じ得る。締まり嵌めの場合、軸受外径のばらつきが内径に影響するから、その結果、回動トルク・摩耗性のばらつきに繋がる。また、軸受け保持側の下孔においても、材料を樹脂として射出成形とする場合には、同様にばらつきが生じ得るし、木材として下孔加工をする場合でも、加工ばらつきが生じ得る。
【0010】
これらの問題を解決するためには、軸受をすきま嵌めで取り付けることが好ましく、それを適切に実施するためには、「すきま嵌めでの取り付け」の状態において、軸受が保持部から抜け落ちないこと、及び、軸受が保持部に対して回転しないこと、という条件を満たす必要がある。
【0011】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、回動時の安定した摩擦力を得て動作を安定させることができるアコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明のアコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造は、回動部品を回動自在に軸支するアコースティック鍵盤楽器の回動部品の軸支構造において、各々が嵌合穴(140a、40a)を有し、互いに対向する一対の支持部(140、40)と、前記各支持部に対応して設けられ、軸部(131、31)、ツバ部(132、32)及び軸受け穴(133、33)を有して樹脂で一体に形成され、摩擦係数が前記支持部よりも小さい軸受け部材(130、30)とを有し、前記各軸受け部材の前記ツバ部が前記各支持部の互いに対向する内側に位置するように、前記各軸受け部材の前記軸部が、対応する支持部の前記嵌合穴にそれぞれ挿入嵌合され、前記回動部品(241、15)の回動軸(141、41)を前記軸受け穴に挿入して軸支させると、両側の前記ツバ部に対して前記回動部品が摺動しつつ回動自在になるように構成され、前記各支持部は、第1の肉部と、前記回動部品の前記回動軸の軸方向において前記第1の肉部より薄い第2の肉部とを有してこれらで段差部を形成し、前記嵌合穴は前記第2の肉部に形成され、前記ツバ部には、前記軸部が前記嵌合穴に挿入嵌合された状態で前記段差部に係合する、前記回動軸の軸方向視で直線状の係合部が形成され、前記段差部と前記係合部とを対向させた係合により、前記各支持部の前記嵌合穴に対する前記各軸受け部材の回動が規制され、前記各支持部のツバ部の互いに対向する面は、対応する前記第1の肉部の内側の面に対して突出し、前記回動部品は、回動時には前記第1の肉部に対して摺動することなく前記ツバ部に対して摺動することを特徴とする。
【0016】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回動部品の傾きを抑えると共に、回動時の安定した摩擦力を得て動作を安定させることができる。その結果、例えば、ピアニッシモ演奏時の演奏性向上に繋がる。また、支持部に対して軸受け部材が回動することなく回動部品が軸受け部材に対して回動するので、回動トルクを均一にすることができる。また、回動規制機構の製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る回動部品の軸支構造が適用されるアコースティック鍵盤楽器の後部の縦断面図である。
図2】バットフレンジに回動部品としてのバットが支持された状態を示す斜視図(図(a))、バットフレンジの斜視図(図(b))である。
図3】1つの軸受け部材の斜視図(図(a))バットの回動軸の軸中心に沿った軸支部の断面図(図(b))である。
図4】第2の実施の形態における軸支部の斜視図(図(a))、バットの回動軸の軸中心に沿った軸支部の断面図(図(b))、変形例の軸受け部材の斜視図(図(c))である。
図5】本発明の第3の実施の形態に係る回動部品の軸支構造が適用されるアコースティック鍵盤楽器の後部の縦断面図である。
図6】サポート本体と回動部品としてのジャックとを示す斜視図(図(a))、サポート本体の斜視図(図(b))である。
図7】1つの軸受け部材の斜視図(図(a))、ジャックの回動軸の軸中心に沿った軸支部の断面図(図(b))である。
図8】第4の実施の形態における軸支部の斜視図(図(a))、ジャックの回動軸の軸中心に沿った軸支部の断面図(図(b))である。
図9】軸部の第1の変形例の斜視図、側面図(図(a)、(b))第2の変形例の斜視図、側面図(図(c)、(d))である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る回動部品の軸支構造が適用されるアコースティック鍵盤楽器の後部の縦断面図である。図1では特に、1つの鍵11とそれに対応するアクション機構ACT1等の機構を示している。
【0024】
本鍵盤楽器は、いわゆるアコースティックのアップライトピアノとして構成され、白鍵及び黒鍵である鍵11が複数並列に配列される。各鍵11は各々、不図示の鍵支点を中心に図1の時計及び反時計方向に回動自在に配設される。図1の左側が奏者側であって前方、右側が後方である。鍵11の前部が押離操作される。鍵11の後端部の上方に、各鍵11に対応してアクション機構ACT1が設けられる。
【0025】
アクション機構ACT1は、主に、鍵11の動作により駆動されるウイペン223と、ウイペン223に設けられるジャック226により駆動されて不図示の弦を打撃するハンマアセンブリ240と、ウイペン223の動作により駆動されるダンパアセンブリ250とを備えている。押鍵により鍵11の後端部が上昇し、該後端部に固定されたキャプスタン212がウイペン223を押し上げるようになっている。アクション機構ACT1、ハンマアセンブリ240及びダンパアセンブリ250は、センターレール216により支持されている。
【0026】
センターレール216の下端部には、各鍵11について1個ずつウイペンフレンジ222が固定されている。ウイペンフレンジ222の下端部には、ウイペン223の後端部よりやや前方部分が回動自在に支持されている。ウイペン223は長手方向をアップライトピアノの前後方向に向けて延在させられており、その前端部の下面にはウイペンヒール224が固定されている。非押鍵状態において、ウイペンヒール224の下面は、キャプスタン212に当接し、これによって、ウイペン223の回動初期位置が規制される。
【0027】
また、ウイペン223には、上方へ向けて突出するジャックフレンジ225が固定され、ジャックフレンジ225の上端部には、ほぼL字状をなすジャック226の屈曲部が回動自在に支持されている。ジャック226とウイペン223との間には、ジャックスプリング227が介装されている。ウイペン223に、ジャック226の他、バックチェック238等が取り付けられてウイペンアセンブリが構成されている。
【0028】
ハンマアセンブリ240の基部を構成するバット241は、センターレール216に固定されたバットフレンジ213に回転自在に取り付けられている。バット241にはハンマシャンク243が固定される。ダンパアセンブリ250において、センターレール216には、ダンパフレンジ251が取り付けられる。ダンパフレンジ251にはダンパレバー252が回動自在に支持される。
【0029】
このように、アクション機構ACT1の構成、外観形状、動作は、従来の一般的なアップライトピアノと基本的に同様である。
【0030】
この鍵盤楽器には、各種の回動部品と、該回動部品を回動自在に軸支する支持部との組が複数組設けられる。支持部が回動部品を軸支するための軸支機構である軸支部Aとして、図1では軸支部A101〜A104が例示されている。
【0031】
例えばアクション機構ACT1においては、軸支部A101において、支持部としてのバットフレンジ213にバット241が回動部品として軸支される。同様に、軸支部A103においてジャックフレンジ225にジャック226が軸支され、軸支部A104においてウイペンフレンジ222にウイペン223が軸支されている。また、軸支部Aが構成される場所はアクション機構ACT1に限定されるものでなく、例えば、軸支部A102においてダンパフレンジ251にダンパレバー252が軸支される。
【0032】
これらは例示であり、軸支部Aにおいて、例えば二股の支持片を有する側が支持部で、他方が回動部品と把握できる。しかし、両者の関係は相対的なものであるので、関係が逆となる構成であってもよい。
【0033】
各軸支部Aの構成は同様であるので、以下では、代表して軸支部A101について詳細に説明する。
【0034】
図2(a)は、バットフレンジ213に回動部品としてのバット241が支持された状態を示す斜視図である。図2(b)はバットフレンジ213の斜視図である。
【0035】
軸支部A101に関しては、バットフレンジ213の一部として2枚で一対の支持片140(140A、140B)が延設され、これらの支持片140が支持部となる。各支持片140A、140Bに、後述する軸受け部材130(図3)がそれぞれ装着され、軸受け部材130間においてバット241が、その回動軸141を中心に回動自在となっている。
【0036】
図3(a)は、1つの軸受け部材130の斜視図である。図3(b)は、バット241の回動軸141の軸中心に沿った軸支部A101の断面図である。
【0037】
バットフレンジ213は、例えば木質材で構成されるが、軸受け部材130は、合成樹脂で形成される。軸受け部材130の合成樹脂は、摺動特性に優れ且つ硬質なものであれば使用可能であるが、特に射出成形可能な合成樹脂であれば、ツバ部132と軸部131とを一体に形成できるため望ましい。バットフレンジ213が樹脂製であってもよいが、軸受け部材130には、バットフレンジ213よりも摩擦係数が小さく滑りがよく、好ましくは非吸水性の樹脂を選定する。非吸水性としては、ASTM D785の試験条件における吸水率が0.5%を超える場合、寸法変化によって摩擦特性が低下するため好ましくない。そのため、好ましい合成樹脂としては、吸水率が0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下であるとする。摩擦係数としては、動摩擦係数及び静止摩擦係数のいずれも、軸受け部材130のものはバットフレンジ213のものより小さいとする。
【0038】
またさらに、硬度としては、ロックウェル硬度がRスケールで30以上、より好ましくは50以上であることが望ましい。Rスケールロックウェル硬度が30未満である場合は、相手部材(嵌合穴、回動軸)との接触部が変形、摩耗することで摩耗特性が低下する恐れがあるので好ましくない。
【0039】
これらを兼ね備えた合成樹脂としては、例えば、高分子ポリエチレン樹脂やポリアセタール樹脂等が例示できる。高分子ポリエチレン樹脂やポリアセタール樹脂は、配合剤を含まなくても低摩擦特性であるが、固体潤滑剤や潤滑油あるいはワックス等の潤滑性向上剤を適量配合してもよい。そのような合成樹脂としては、NTN精密樹脂社製のベアリーUH5043(高分子量ポリエチレン樹脂組成物)、同社製のベアリーDM5030(ポリアセタール樹脂組成物)(ベアリーは登録商標)が挙げられる。
【0040】
図3(a)に示すように、軸受け部材130は、板状のツバ部132から軸部131が片側に突設されてなり、ツバ部132から軸部131の全体にかけて軸受け穴133が貫通して形成されている。ブッシュ部としての軸部131は円筒状であるが、滑り板としてのツバ部132は、円盤型の縁部の一部が切り欠き(切り欠き部132b)により欠円形状となっている。切り欠き部132bは、軸受け穴133の軸心に対し、その法線が垂直な平坦面である。なお切り欠き部132bは後述する第2の実施の形態で用いるが、第1の実施の形態では必須でない。
【0041】
図3(b)に示すように、支持片140A、140Bは二股状に延設されて互いに対向し、各々には同心の嵌合穴140aが形成されている。支持片140A、140Bの各嵌合穴140aに、軸受け部材130の軸部131が内側から挿入嵌合され、各ツバ部132が支持片140A、140Bの互いに対向する内側に位置している。ここで軸受け部材130は支持片140A、140Bに対して接着等で保持固定してもよいが、固定することは必須でない。
【0042】
そして、バット241の回動軸141を、軸受け部材130の軸受け穴133に挿入して軸支させる。軸受け部材130を支持片140A、140Bに装着してから回動軸141を軸受け穴133に挿入してもよい。
【0043】
このようにしてバット241が支持片140に組み付けられたとき、各ツバ部132は支持片140A、140Bの各内側壁面に対向し、バット241の側面241aは各ツバ部132の軸部131の反対側の面である対向面132aに対向することとなる。支持片140A、140Bの間隔と、バット241の厚み及び各ツバ部132の厚みの設定によって、側面241aと対向面132aとの間隙がほとんど生じないようになっている。
【0044】
このような組み付け状態において、主として軸受け穴133に対して回動軸141が回動することで、バット241がバットフレンジ213に対して回動自在となる(図2(a)参照)。軸部131と嵌合穴140aとの関係においては、両者は回動可能である必要はなく、むしろしっかりと嵌合されて回動しない状態となっていてもよい。
【0045】
軸受け部材130は滑り性の良い部材であるから、軸受け穴133と回動軸141との摺動だけでなく、バット241とツバ部132との間の摺動においても摩擦が小さく、円滑な回動が実現される。これにより、バット241の回動動作が安定し、動作不良が生じにくくなる。また、例えば、ピアニッシモ演奏時の演奏性向上に繋がる。バット241と支持片140A、140Bとは当接しない。また、軸受け部材130は、ASTM D785の試験条件における吸水率が0.5%以下であり、ロックウェル硬度がRスケールで30以上の合成樹脂でなるので、吸湿せず、長期間の使用によって摩耗も少なく、安定的な回動トルクが得られる。
【0046】
本実施の形態によれば、回動部品の傾きを抑えると共に、回動時の安定した摩擦力を得ることができる。
【0047】
すなわち、バット241と支持片140A、140Bとの間に滑り性の良いツバ部132が介在するので、回動により摺動しても、バット241につぶれや摩耗が生じにくく、寸法変化による傾きやガタツキが生じにくい。
【0048】
また、軸受け部材130が羊毛等の寸法バラツキや経年変化の大きい部材でなく樹脂製であるので、各所の隙間を小さく設定することが可能となり、高い精度で組み付けが可能となるので、バット241の傾き抑制に寄与する。それだけでなく、各所の隙間のバラツキが小さいことから、回動時の摩擦力がばらついたり変化したりすることもほとんどない。このことは、複数個所の軸支部A同士間のトルクのばらつきの抑制にもなり、ひいては鍵盤楽器としての製品間の押鍵感触等のばらつきの抑制にも寄与する。
【0049】
特に、バット241と支持片140A、140Bとの間に滑り板であるツバ部132が介在するので、簡単な構成で、回動時の衝撃等によるバット241の変形や摩耗を抑制することができる。
【0050】
また、軸受け部材130は、ツバ部132及び軸部131を含んで一体に形成されるので、支持片140への組み付け工程が簡素化されるだけでなく、部品点数削減により部品管理も容易となる。また、バット241の傾き抑制に有利であるだけでなく、ブッシュ部である軸部131の抜け防止にも有利である。
【0051】
また、軸受け部材130は、ASTM D785の試験条件における吸水率が0.5%以下であり、ロックウェル硬度がRスケールで30以上の合成樹脂でなるので、吸湿せず、長期間の使用によって摩耗も少なく、安定的な回動トルクが得られる。
【0052】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、ツバ部132の切り欠き部132bを用いて、支持片140の嵌合穴140aに対する軸受け部材130の回動を規制する回動規制手段を構成する。
【0053】
図4(a)は、第2の実施の形態における軸支部A101の斜視図である。図4(b)は、バット241の回動軸141の軸中心に沿った軸支部A101の断面図である。
【0054】
支持片140A、140Bの各々は、根元側の第1の肉部143と、先端側で回動軸141の軸方向において第1の肉部143より薄い第2の肉部144とを有している。第1の肉部143と第2の肉部144との間に段差部142が形成される。嵌合穴140aは第2の肉部144に形成されている。軸受け部材130を支持片140に装着する際、ツバ部132の切り欠き部132bと段差部142とを対向させないと嵌合できないようになっている。
【0055】
すなわち、切り欠き部132bと段差部142との係合によって、装着時の軸受け部材130の回転方向の位置は自動的に定まり、それと同時に、軸受け部材130は回転が規制されることになる。
【0056】
ところで、支持片140に装着状態となったツバ部132の各対向面132aは、第1の肉部143の内側の壁面に対して面一かやや突出している。従って、バット241は、回動時には第1の肉部143に摺動することなく、ツバ部132に対して摺動する。
【0057】
本実施の形態によれば、回動部品の傾きを抑えると共に、回動時の安定した摩擦力を得ることに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0058】
また、軸受け部材130が支持片140に対して回動規制されることから、軸受け部材130を支持片140に接着等で固定しなくても、バット241が専ら軸受け部材130に対して回動することになる。これにより、簡単な構成で、回動トルクを設計上の狙いの均一な値にすることができる。
【0059】
特に、仮に支持片140を樹脂で構成した場合には、素材の選定によっては、樹脂製の軸受け部材130を支持片140に接着することが樹脂同士のため困難な場合がある。しかし、回動規制機構を設け、軸受け部材130の接着を考慮しなくてもよいので、軸受け部材130の樹脂選定の自由度が高い。接着工程や接着の養生のための時間も不要である。
【0060】
しかも、切り欠き部132bと段差部142との係合によって、回動規制手段の機能が果たされ、切り欠き部132b及び段差部142の加工形成が容易であるので、回動規制機構の製造が容易である。
【0061】
なお、回動規制機構を設ける観点からは、他の構成を採用してもよい。例えば、図4(c)に変形例を示すように、軸受け部材130のツバ部132の基本形状を円盤でなく矩形とし、矩形の一片を切り欠き部132bと同じ機能を果たす係合部としてもよい。
【0062】
あるいは、図示はしないが、軸受け部材130及び支持片140のいずれか一方にピンや突部、他方に穴や凹部を設け、両者の係合によって回動規制手段の機能が果たされるようにしてもよい。
【0063】
(第3の実施の形態)
第1、第2の実施の形態では、アップライトピアノ型のアコースティック鍵盤楽器を例示したが、以下の実施の形態で説明するように、本発明をグランドピアノ型のアコースティック鍵盤楽器に適用してもよい。
【0064】
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る回動部品の軸支構造が適用されるアコースティック鍵盤楽器の後部の縦断面図である。図5では特に、1つの鍵11とそれに対応するアクション機構ACT2等の機構を示している。
【0065】
この鍵盤楽器はアコースティックグランドピアノとして構成され、白鍵及び黒鍵である鍵11が複数並列に配列される。各鍵11は各々、不図示の鍵支点を中心に図5の時計及び反時計方向に回動自在に配設される。図5の右側が奏者側であって前方、左側が後方である。鍵11の前部が押離操作される。鍵11の後端部の上方に、各鍵11に対応してアクション機構ACT2が設けられる。
【0066】
この鍵盤楽器には、各種の回動部品と回動部品を回動自在に軸支する支持部との組が複数組設けられる。支持部が回動部品を軸支するための軸支機構である軸支部Aとして、図5では軸支部A1〜A7が例示されている。
【0067】
例えばアクション機構ACT2においては、軸支部A1において、支持部としてのサポートフレンジ12にサポート本体13が回動部品として軸支される。同様に、軸支部A2においてサポート本体13にジャック15が軸支され、軸支部A3においてレペティションレバーフレンジ14にレペティションレバー16が軸支され、軸支部A4においてハンマシャンクフレンジ17にハンマHMのハンマシャンク18が軸支される。ハンマHMは不図示の弦を打撃する。
【0068】
また、軸支部Aが構成される場所はアクション機構ACT2に限定されるものでなく、例えば、軸支部A5においてダンパレバーフレンジ19にダンパレバー20が軸支される。また、軸支部A6においてダンパブロック21にダンパレバー20が軸支され、軸支部A7においてタブリップ22にダンパブロック21が軸支される。
【0069】
これらは例示であり、軸支部Aにおいて、例えば二股の支持片を有する側が支持部で、他方が回動部品と把握できる。しかし、両者の関係は相対的なものであるので、関係が逆となる構成であってもよい。また、サポート本体13のように、相手部品との関係で1つの部品が支持部にもなり回動部品にもなる場合もある。
【0070】
各軸支部Aの構成は同様であるので、以下では、代表して軸支部A2について詳細に説明する。
【0071】
図6(a)は、サポート本体13と回動部品としてのジャック15とを示す斜視図である。図6(b)はサポート本体13の斜視図である。
【0072】
軸支部A2に関しては、サポート本体13の一部として2枚で一対の支持片40(40A、40B)が延設され、これらの支持片40が支持部となる。各支持片40A、40Bに、後述する軸受け部材30(図7)がそれぞれ装着され、軸受け部材30間においてジャック15が、その回動軸41を中心に回動自在となっている。
【0073】
図7(a)は、1つの軸受け部材30の斜視図である。図7(b)は、ジャック15の回動軸41の軸中心に沿った軸支部A2の断面図である。
【0074】
サポート本体13は、木質材で構成されるが、軸受け部材30は、合成樹脂で形成される。軸受け部材30の合成樹脂は、摺動特性に優れ且つ硬質なものであれば使用可能であるが、特に射出成形可能な合成樹脂であれば、ツバ部32と軸部31とを一体に形成できるため望ましい。サポート本体13が樹脂製であってもよいが、軸受け部材30には、サポート本体13よりも摩擦係数が小さく滑りがよく、好ましくは非吸水性の樹脂を選定する。非吸水性としては、ASTM D785の試験条件における吸水率が0.5%を超える場合、寸法変化によって摩擦特性が低下するため好ましくない。そのため、好ましい合成樹脂としては、吸水率が0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下であるとする。摩擦係数としては、動摩擦係数及び静止摩擦係数のいずれも、軸受け部材30のものはサポート本体13のものより小さいとする。
【0075】
またさらに、硬度としては、ロックウェル硬度がRスケールで30以上、より好ましくは50以上であることが望ましい。Rスケールロックウェル硬度が30未満である場合は、相手部材(嵌合穴、回動軸)との接触部が変形、摩耗することで摩耗特性が低下する恐れがあるので好ましくない。
【0076】
これらを兼ね備えた合成樹脂としては、例えば、高分子ポリエチレン樹脂やポリアセタール樹脂等が例示できる。高分子ポリエチレン樹脂やポリアセタール樹脂は、配合剤を含まなくても低摩擦特性であるが、固体潤滑剤や潤滑油あるいはワックス等の潤滑性向上剤を適量配合してもよい。そのような合成樹脂としては、NTN精密樹脂社製のベアリーUH5043(高分子量ポリエチレン樹脂組成物)、同社製のベアリーDM5030(ポリアセタール樹脂組成物)(ベアリーは登録商標)が挙げられる。
【0077】
図7(a)に示すように、軸受け部材30は、板状のツバ部32から軸部31が片側に突設されてなり、ツバ部32から軸部31の全体にかけて軸受け穴33が貫通して形成されている。ブッシュ部としての軸部31は円筒状であるが、滑り板としてのツバ部32は、円盤型の縁部の一部が切り欠き(切り欠き部32b)により欠円形状となっている。切り欠き部32bは、軸受け穴33の軸心に対し、その法線が垂直な平坦面である。なお切り欠き部32bは後述する第4の実施の形態で用いるが、第3の実施の形態では必須でない。
【0078】
図7(b)に示すように、支持片40A、40Bは二股状に延設されて互いに対向し、各々には同心の嵌合穴40aが形成されている。支持片40A、40Bの各嵌合穴40aに、軸受け部材30の軸部31が内側から挿入嵌合され、各ツバ部32が支持片40A、40Bの互いに対向する内側に位置している。ここで軸受け部材30は支持片40A、40Bに対して接着等で保持固定してもよいが、固定することは必須でない。
【0079】
そして、ジャック15の回動軸41を、軸受け部材30の軸受け穴33に挿入して軸支させる。軸受け部材30を支持片40A、40Bに装着してから回動軸41を軸受け穴33に挿入してもよい。
【0080】
このようにしてジャック15が支持片40に組み付けられたとき、各ツバ部32は支持片40A、40Bの各内側壁面に対向し、ジャック15の側面15aは各ツバ部32の軸部31の反対側の面である対向面32aに対向することとなる。支持片40A、40Bの間隔と、ジャック15の厚み及び各ツバ部32の厚みの設定によって、側面15aと対向面32aとの間隙がほとんど生じないようになっている。
【0081】
このような組み付け状態において、主として軸受け穴33に対して回動軸41が回動することで、ジャック15がサポート本体13に対して回動自在となる(図6(a)参照)。軸部31と嵌合穴40aとの関係においては、両者は回動可能である必要はなく、むしろしっかりと嵌合されて回動しない状態となっていてもよい。
【0082】
軸受け部材30は滑り性の良い部材であるから、軸受け穴33と回動軸41との摺動だけでなく、ジャック15とツバ部32との間の摺動においても摩擦が小さく、円滑な回動が実現される。これにより、ジャック15の回動動作が安定し、動作不良が生じにくくなる。ジャック15と支持片40A、40Bとは当接しない。また、軸受け部材30は、ASTM D785の試験条件における吸水率が0.5%以下であり、ロックウェル硬度がRスケールで30以上の合成樹脂でなるので、吸湿せず、長期間の使用によって摩耗も少なく、安定的な回動トルクが得られる。
【0083】
本実施の形態によれば、回動部品の傾きを抑えると共に、回動時の安定した摩擦力を得ることに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0084】
すなわち、ジャック15と支持片40A、40Bとの間に滑り性の良いツバ部32が介在するので、回動により摺動しても、ジャック15につぶれや摩耗が生じにくく、寸法変化による傾きやガタツキが生じにくい。
【0085】
また、軸受け部材30が羊毛等の寸法バラツキや経年変化の大きい部材でなく樹脂製であるので、各所の隙間を小さく設定することが可能となり、高い精度で組み付けが可能となるので、ジャック15の傾き抑制に寄与する。それだけでなく、各所の隙間のバラツキが小さいことから、回動時の摩擦力がばらついたり変化したりすることもほとんどない。
このことは、複数個所の軸支部A同士間のトルクのばらつきの抑制にもなり、ひいては鍵盤楽器としての製品間の押鍵感触等のばらつきの抑制にも寄与する。
【0086】
特に、ジャック15と支持片40A、40Bとの間に滑り板であるツバ部32が介在するので、簡単な構成で、回動時の衝撃等によるジャック15の変形や摩耗を抑制することができる。
【0087】
また、軸受け部材30は、ツバ部32及び軸部31を含んで一体に形成されるので、支持片40への組み付け工程が簡素化されるだけでなく、部品点数削減により部品管理も容易となる。また、ジャック15の傾き抑制に有利であるだけでなく、ブッシュ部である軸部31の抜け防止にも有利である。
【0088】
また、軸受け部材30は、ASTM D785の試験条件における吸水率が0.5%以下であり、ロックウェル硬度がRスケールで30以上の合成樹脂でなるので、吸湿せず、長期間の使用によって摩耗も少なく、安定的な回動トルクが得られる。
【0089】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、ツバ部32の切り欠き部32bを用いて、支持片40の嵌合穴40aに対する軸受け部材30の回動を規制する回動規制手段を構成する。
【0090】
図8(a)は、第4の実施の形態における軸支部A2の斜視図である。図8(b)は、ジャック15の回動軸41の軸中心に沿った軸支部A2の断面図である。
【0091】
支持片40A、40Bの各々は、根元側の第1の肉部43と、先端側で回動軸41の軸方向において第1の肉部43より薄い第2の肉部44とを有している。第1の肉部43と第2の肉部44との間に段差部42が形成される。嵌合穴40aは第2の肉部44に形成されている。軸受け部材30を支持片40に装着する際、ツバ部32の切り欠き部32bと段差部42とを対向させないと嵌合できないようになっている。
【0092】
すなわち、切り欠き部32bと段差部42との係合によって、装着時の軸受け部材30の回転方向の位置は自動的に定まり、それと同時に、軸受け部材30は回転が規制されることになる。
【0093】
ところで、支持片40に装着状態となったツバ部32の各対向面32aは、第1の肉部43の内側の壁面に対して面一かやや突出している。従って、ジャック15は、回動時には第1の肉部43に摺動することなく、ツバ部32に対して摺動する。
【0094】
本実施の形態によれば、回動部品の傾きを抑えると共に、回動時の安定した摩擦力を得ることに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0095】
また、軸受け部材30が支持片40に対して回動規制されることから、軸受け部材30を支持片40に接着等で固定しなくても、ジャック15が専ら軸受け部材30に対して回動することになる。これにより、簡単な構成で、回動トルクを設計上の狙いの均一な値にすることができる。
【0096】
特に、仮に支持片40を樹脂で構成した場合には、素材の選定によっては、樹脂製の軸受け部材30を支持片40に接着することが樹脂同士のため困難な場合がある。しかし、回動規制機構を設け、軸受け部材30の接着を考慮しなくてもよいので、軸受け部材30の樹脂選定の自由度が高い。接着工程や接着の養生のための時間も不要である。
【0097】
しかも、切り欠き部32bと段差部42との係合によって、回動規制手段の機能が果たされ、切り欠き部32b及び段差部42の加工形成が容易であるので、回動規制機構の製造が容易である。
【0098】
なお、回動規制機構を設ける観点からは、図4(c)で説明した変形例と同様に、軸受け部材30のツバ部32の基本形状を円盤でなく矩形とし、矩形の一片を切り欠き部32bと同じ機能を果たす係合部としてもよい。
【0099】
あるいは、図示はしないが、軸受け部材30及び支持片40のいずれか一方にピンや突部、他方に穴や凹部を設け、両者の係合によって回動規制手段の機能が果たされるようにしてもよい。
【0100】
なお、上記各実施の形態において、回動部品の回動動作を安定させる観点からは、回動部品を、回動軸を中心に回動自在に支持する軸支構造において、ツバ部132、32に相当する合成樹脂製の滑り板を、回動部品と支持部との間に介装する構成としてもよい。従って、軸部131、31は必須でなく、滑り板を何等かの手段で回動部品と支持部との間に介在させてもよい。その際、上記した回動規制手段に準じた機構によって、回動部品または支持部のいずれかに対して滑り板の回動が規制されるようにするのがよい。
【0101】
ところで、上記各実施の形態において、ツバ部132、32と軸部131、31とを別体とした場合、これらの軸部131、31に相当する軸部については、円筒状の形状に限られず、図9に変形例を示すように、外周が曲面であってもよい。
【0102】
図9(a)、(b)は、軸部の第1の変形例の斜視図、側面図である。図9(c)、(d)は、軸部の第2の変形例の斜視図、側面図である。図9(a)、(b)に示すように、軸部は球体に穴を貫通形成した形状としてもよい。あるいは図9(c)、(d)に示すように、軸部は球体にツバを付けたものに穴を貫通形成した形状としてもよい。これらの変形例では、軸部の素材弾性を利用して外側から嵌めることが可能であり、また、ツバ部がなくても抜け落ちにくい。
【0103】
このように、鍵盤楽器において、回動部品を回動自在に軸支する支持部との組み合わせであれば、例示したもの以外にも本発明を適用可能である。例えば、チェレスタ、パイプオルガン、アコーディオン等の他のアコースティック鍵盤楽器に適用可能である。
【0104】
本発明はこれら特定の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施の形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0105】
A 軸支部、 13 サポート本体、 15 ジャック(回動部品)、 130、30 軸受け部材、 132、32 ツバ部(滑り板)、 131、31 軸部(ブッシュ部)、 132b、32b 切り欠き部、 133、33 軸受け穴、 140、40 支持片(支持部)、 140、40a 嵌合穴、 141、41 回動軸、 142、42 段差部、 143、43 第1の肉部、 144、44 第2の肉部、 213 バットフレンジ、 241 バット(回動部品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9