(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転数フィードバック制御部は、前記基準クロック信号を逓倍して前記FLL部に出力するPLL[phase locked loop]部をさらに含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
前記回転数信号に応じて前記フィードバック信号のマスク制御を行うマスク部をさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転数フィードバック制御を行う場合には、モータの低回転時に不可避的なハンチング(回転数変動)が生じる。そのため、従来のモータ駆動装置では、モータの低回転時に、回転数フィードバック制御をマスクしてオープン制御に切り替える方式や、或いは、モータ駆動を停止させる方式のハンチング対策が実施されていた。
【0006】
しかしながら、回転数フィードバック制御をマスクする方式では、回転数フィードバック制御とオープン制御との切替時に回転数の変動を生じるという課題があった。また、ハンチングを生じる回転数はモータの極数により異なるので、従来の方式では適切なハンチング対策を実施することが困難であった。
【0007】
なお、特許文献1には、モータの低速回転時及び高速回転時において、それぞれ適切な制御ゲインを設定するモータ制御回路が開示されている。しかしながら、特許文献1のモータ制御回路は、外部から入力される信号に連動する切替信号に応じて制御ゲインを切り替える構成とされており、自らが主体的に制御ゲインを切り替えるものではなかった。
【0008】
本発明は、本願の発明者らにより見出された上記の課題に鑑み、モータの低回転時にも回転数フィードバック制御を行うことのできるモータ駆動装置、並びに、これを用いた電子機器及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るモータ駆動装置は、モータの通電制御を行うロジック部と、回転数指示信号に応じた基準クロック信号を生成する基準クロック信号生成部と、前記モータの回転数に応じた回転数信号を生成する回転数信号生成部と、前記基準クロック信号と前記回転数信号の入力を受けて前記モータの回転数を目標値と一致させるように前記ロジック部を制御する回転数フィードバック制御部を有し、前記回転数フィードバック制御部は、前記回転数信号に応じてフィードバックゲインを変化させる構成(第1の構成)とされている。
【0010】
なお、上記第1の構成から成るモータ駆動装置において、前記回転数フィードバック制御部は、前記基準クロック信号と前記回転数信号とを比較して周波数誤差信号を生成するFLL[frequency locked loop]部と、前記周波数誤差信号に応じて出力電圧をアップ/ダウンさせるチャージポンプ部と、前記回転数信号に応じたゲインで前記出力電圧を積分増幅することによりフィードバック信号を生成する積分アンプ部と、を含み、前記ロジック部は、前記フィードバック信号に応じたデューティで通電信号のチョッピング駆動を行う構成(第2の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第2の構成から成るモータ駆動装置において、前記積分アンプは、前記回転数信号に応じて前記ゲインを段階的に切り替える構成(第3の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第3の構成から成るモータ駆動装置において、前記積分アンプは、ヒステリシスを持って前記ゲインを切り替える構成(第4の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第2の構成から成るモータ駆動装置において、前記積分アンプは、前記回転数信号に応じて前記ゲインを連続的に変化させる構成(第5の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第1〜第5いずれかの構成から成るモータ駆動装置において、前記回転数フィードバック制御部は、前記基準クロック信号を逓倍して前記FLL部に出力するPLL[phase locked loop]部をさらに含む構成(第6の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第1〜第6いずれかの構成から成るモータ駆動装置は、前記基準クロック信号の急峻な周波数変動を抑制するソフト処理部をさらに有する構成(第7の構成)にするとよい。
【0016】
また、上記第1〜第7いずれかの構成から成るモータ駆動装置は、前記回転数信号に応じて前記フィードバック信号のマスク制御を行うマスク部をさらに有する構成(第8の構成)にするとよい。
【0017】
また、本発明に係る電子機器は、モータと、前記モータの駆動制御を行う上記第1〜第8いずれかの構成から成るモータ駆動装置とを有する構成(第9の構成)とされている。
【0018】
また、本発明に係る車両は、上記第9の構成から成る電子機器を有する構成(第10の構成)とされている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、モータの低回転時にも回転数フィードバック制御を行うことのできるモータ駆動装置、並びに、これを用いた電子機器及び車両を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<電子機器>
図1は、3相ブラシレスDCモータを備えた電子機器の全体構成を示すブロック図である。本構成例の電子機器Xは、半導体装置1と、ドライバ2と、3相ブラシレスDCモータ3(以下ではモータ3と略称する)と、ホールセンサ4と、を有する。
【0022】
半導体装置1は、モータ3の駆動制御を行うモータ駆動装置(いわゆるモータドライバIC)であり、位置信号生成部11と、ホールマトリクス12と、ロジック部13と、プリドライバ14と、チャージポンプ15と、基準クロック信号生成部16と、回転数信号生成部17と、回転数フィードバック制御部18と、三角波発振部19と、を有する。
【0023】
位置信号生成部11は、モータ3のロータ位置に応じた矩形波状の位置信号(HU、HV、HW)を生成する回路であり、モータ3の各相(U相、V相、W相)毎に一つずつ設けられたヒステリシス付きのホールコンパレータ11U、11V、11Wを含む。ホールコンパレータ11U、11V、11Wは、各相のホールセンサ4U、4V、4Wから各々入力される正負極性のホール信号(HU+/HU−、HV+/HV−、HW+/HW−)を各々比較することにより、先に述べた位置信号(HU、HV、HW)を生成する。
【0024】
ホールマトリクス12は、位置信号(HU、HV、HW)に所定の信号処理(正転/逆転切替処理、オフセット調整処理、及び、自動利得制御などを含む)を施すことにより、各相毎のホール電圧(VU、VV、VW)を生成する。なお、ホール電圧(VU、VV、VW)は、駆動波形に応じて三相変調(正弦波状(
図5の破線を参照))や二相変調(ヒップ状)のアナログ電圧信号となる。
【0025】
ロジック部13は、各相のホール電圧(VU、VV、VW)に応じて適切な相切替タイミングで転流(励磁相切替)を行うように各相のプリドライバ駆動信号(uh/ul、vh/vl、wh/wl)を生成してモータ3の通電制御を行う。その際、ロジック部13は、ホール電圧(VU、VV、VW)と三角波電圧Voscを比較することにより、プリドライバ駆動信号(uh/ul、vh/vl、wh/wl)のチョッピング駆動を行う。また、ロジック部13は、フィードバック信号S3に応じてホール電圧(VU、VV、VW)の振幅Vyを変化させることにより、チョッピング駆動のデューティ制御を行う機能も備えている。
【0026】
プリドライバ14は、各相のプリドライバ駆動信号(uh/ul、vh/vl、wh/wl)に所定の信号処理(レベルシフト処理や波形整形処理など)を施すことにより、各相のドライバ駆動信号(UH/UL、VH/VL、WH/WL)を生成する。
【0027】
チャージポンプ15は、電源電圧VCCから昇圧電圧VG(プリドライバ電源電圧)を生成し、これをプリドライバ14に出力する。
【0028】
基準クロック信号生成部16は、半導体装置1の外部から入力される回転数指示信号THに応じた発振周波数f1の基準クロック信号S1を生成する。なお、基準クロック信号生成部16は、回転数指示信号THとして、アナログ電圧信号とパルス幅変調信号のいずれの入力でも受け付けることができる。
【0029】
回転数信号生成部17は、例えば、U相の位置信号HU(V相やW相でも可)から、モータ3の回転数に応じた発振周波数f2のFG[frequency generator]信号(回転数信号)S2を生成する。
【0030】
回転数フィードバック制御部18は、基準クロック信号S1とFG信号S2の入力を受けて、モータ3の回転数を目標値と一致させるように、フィードバック信号S3を生成する。なお、回転数フィードバック制御部18の構成や動作については、後ほど詳述する。
【0031】
三角波発振部19は、振幅Vxと発振周波数fxが固定された三角波電圧Vosc(
図5の実線を参照)を生成してロジック部13に出力する。なお、発振周波数fxは、外付けのキャパシタや抵抗(いずれも不図示)を用いて任意に調整することが可能である。
【0032】
また、半導体装置1には、上記構成要素のほかにも、例えば、内部基準電圧生成部、スタンバイ制御部、進角制御部、及び、各種保護部(過電圧保護部、過電流保護部、温度保護部、ロック保護部など)が集積化されているが、ここでは詳細な説明を割愛する。
【0033】
ドライバ2は、各相のドライバ駆動信号(UH/UL、VH/VL、WH/WL)に応じて、各相の通電信号(U、V、W)を生成するパワー出力段であり、パワートランジスタM1〜M6(MOSFET[metal oxide semiconductor field effect transistor]やIGBT[insulated gate bipolar transistor]など)を含む。上側パワートランジスタM1、M3、M5のドレインは、いずれも、電源電圧VCCの印加端に接続されている。上側パワートランジスタM1、M3、M5のソース及びバックゲートと、下側パワートランジスタM2、M4、M6のドレインは、それぞれモータ3の各相端子に接続されている。下側パワートランジスタM2、M4、M6のソース及びバックゲートは、いずれも接地端に接続されている。なお、本構成例では、全てのパワートランジスタM1〜M6としてNチャネル型を用いているが、上側パワートランジスタM1、M3、M5としてはPチャネル型を用いることも可能である。この場合には、半導体装置1のチャージポンプ15を省略することができる。
【0034】
モータ3は、
図2で示すように、4極の永久磁石を有するロータ31と、各々にコイルが巻き回された3スロットのステータ32U、32V、32Wを含む構造とされている。なお、極数とスロット数との組み合わせは、4極3スロットに限定されるものではなく、他の組み合わせ(2極3スロットや4極6スロットなど)を採用することも可能である。
【0035】
ホールセンサ4は、
図2で示すように、各相のステータ32U、32V、32Wに対して電気角で同位相となる位置に各々設けられた各相のホールセンサ4U、4V、4Wを含み、ロータ31の磁界を検出してロータ31の位置に応じた各相のホール信号(HU+/HU−、HV+/HV−、HW+/HW−)を生成する。なお、ホール信号生成部としては、ホールセンサ4に代えて、矩形波信号を生成するホールICを用いても構わない。この場合、半導体装置1のホールコンパレータ11U、11V、11Wを省略することもできる。ただし、ホールセンサとホールICいずれの外部接続にも対応するためには、半導体装置1にホールコンパレータ11U、11V、11Wを設けておくことが望ましい。
【0036】
<180通電制御>
図3は、180°通電時におけるドライバ駆動信号(UH/UL、VH/VL、WH/WL)と通電信号(U、V、W)の挙動を示すタイムチャートである。また、
図4は、180°通電時におけるホール信号(HU+/HU−、HV+/HV−、HW+/HW−)と位置信号(HU、HV、HW)の挙動を示すタイムチャートである。
【0037】
電気角0°〜60°(フェイズ(1))では、ドライバ駆動信号UH、VL、WHがハイレベルとされ、ドライバ駆動信号UL、VH、WLがローレベルとされるので、パワートランジスタM1、M4、M5がオンとなり、パワートランジスタM2、M3、M6がオフとなる。その結果、通電信号U、Wがハイレベルとなり、通電信号Vがローレベルとなるので、モータ3にはU相とW相からV相端子に向けて駆動電流が流れる。このとき、位置信号HU、HWはハイレベルとなり、位置信号HVはローレベルとなる。
【0038】
電気角60°〜120°(フェイズ(2))では、ドライバ駆動信号UH、VL、WLがハイレベルとされ、ドライバ駆動信号UL、VH、WHがローレベルとされるので、パワートランジスタM1、M4、M6がオンとなり、パワートランジスタM2、M3、M5がオフとなる。その結果、通電信号Uがハイレベルとなり、通電信号V、Wがローレベルとなるので、モータ3にはU相からV相とW相に向けて駆動電流が流れる。このとき、位置信号HUはハイレベルとなり、位置信号HV、HWはローレベルとなる。
【0039】
電気角120°〜180°(フェイズ(3))では、ドライバ駆動信号UH、VH、WLがハイレベルとされ、ドライバ駆動信号UL、VL、WHがローレベルとされるので、パワートランジスタM1、M3、M6がオンとなり、パワートランジスタM2、M4、M5がオフとなる。その結果、通電信号U、Vがハイレベルとなり、通電信号Wがローレベルとなるので、モータ3にはU相とV相からW相に向けて駆動電流が流れる。このとき、位置信号HU、HVはハイレベルとなり、位置信号HWはローレベルとなる。
【0040】
電気角180°〜240°(フェイズ(4))では、ドライバ駆動信号UL、VH、WLがハイレベルとされ、ドライバ駆動信号UH、VL、WHがローレベルとされるので、パワートランジスタM2、M3、M6がオンとなり、パワートランジスタM1、M4、M5がオフとなる。その結果、通電信号Vがハイレベルとなり、通電信号U、Wがローレベルとなるので、モータ3にはV相からU相とW相に向けて駆動電流が流れる。このとき、位置信号HVはハイレベルとなり、位置信号HU、HWはローレベルとなる。
【0041】
電気角240°〜300°(フェイズ(5))では、ドライバ駆動信号UL、VH、WHがハイレベルとされ、ドライバ駆動信号UH、VL、WLがローレベルとされるので、パワートランジスタM2、M3、M5がオンとなり、パワートランジスタM1、M4、M6がオフとなる。その結果、通電信号V、Wがハイレベルとなり、通電信号Uがローレベルとなるので、モータ3にはV相とW相からU相に向けて駆動電流が流れる。このとき、位置信号HV、HWはハイレベルとなり、位置信号HUはローレベルとなる。
【0042】
電気角300°〜360°(フェイズ(6))では、ドライバ駆動信号UL、VL、WHがハイレベルとされ、ドライバ駆動信号UH、VH、WLがローレベルとされるので、パワートランジスタM2、M4、M5がオンとなり、パワートランジスタM1、M3、M6がオフとなる。その結果、通電信号Wがハイレベルとなり、通電信号U、Vがローレベルとなるので、モータ3にはW相からU相とV相に向けて駆動電流が流れる。このとき、位置信号HWはハイレベルとなり、位置信号HU、HVはローレベルとなる。
【0043】
このように、180°通電方式では、互いに120°ずつ位相をずらしながら、通電信号(U、V、W)の論理レベルが180°毎に切り替えられる。なお、
図3ないし
図4では、図示を簡単とすべく、上側ドライバ駆動信号UH、VH、WHと下側ドライバ駆動信号UL、VL、WLが互いの論理反転信号として描写されているが、実際には、貫通電流の防止を目的として、上側ドライバ駆動信号UH、VH、WHがローレベルとなってから下側ドライバ駆動信号UL、VL、WLがハイレベルとなるように、ないしは、下側ドライバ駆動信号UL、VL、WLがローレベルとなってから上側ドライバ駆動信号UH、VH、WHがハイレベルとなるように、所定のデッドタイム(上下パワートランジスタの同時オフ時間)が設けられる。また、
図3ないし
図4では、図示を簡単とすべく、ドライバ駆動信号(UH/UL、VH/VL、WH/WL)のチョッピング駆動については、その描写が省略されている。
【0044】
なお、モータ駆動制御方式は、上記の180°通電方式に限定されるものではなく、120°通電方式や150°通電方式などを採用することも可能である。
【0045】
<チョッピング駆動>
図5は、三角波電圧Voscとホール電圧VU(VV、VW)の各挙動を示す波形図である。ロジック部13は、振幅Vx(固定値)の三角波電圧Voscと、振幅Vy(可変値)のホール電圧(VU、VV、VW)とを比較することにより、プリドライバ駆動信号(uh/ul、vh/vl、wh/wl)のチョッピング駆動を行う。
【0046】
その際、ロジック部13は、フィードバック信号S3に応じて振幅Vyの可変制御を行い、チョッピング駆動のデューティ制御を行う。具体的に述べると、ロジック部13は、フィードバック信号S3の信号レベルが高いほど振幅Vyを大きくしてチョッピング駆動のデューティを引き上げる一方、フィードバック信号S3の信号レベルが低いほど振幅Vyを小さくしてチョッピング駆動のデューティを引き下げる。なお、フィードバック信号S3の信号レベルは、モータ3の回転数が目標値よりも低いときに上昇し、モータの回転数が目標値よりも高いときに低下する。このようなデューティ制御を行うことにより、電源変動や負荷変動によってモータ3の回転数が変化した場合であっても、これを遅滞なく補正してモータ3の回転数を目標値に維持することが可能となる。
【0047】
<回転数フィードバック制御部>
図6は、回転数フィードバック制御部18の一構成例を示すブロック図である。本構成例の回転数フィードバック制御部18は、PLL部181と、FLL部182と、チャージポンプ部183と、積分アンプ部184と、を含む。
【0048】
PLL部181は、位相比較器181aと、ループフィルタ181bと、電圧制御発振器181cと、分周器181dと、を含み、基準クロック信号S1の発振周波数f1をN逓倍した基準クロック信号S1’(発振周波数f1’=N×f1)を生成してFLL部182に出力する。
【0049】
位相比較器(PFC[phase frequency comparator])181aは、基準クロック信号S1と分周クロック信号Saとの位相を比較して位相誤差信号Sbを生成する。
【0050】
ループフィルタ181bは、位相誤差信号Sbの不要な短周期変動成分を遮断して制御電圧信号Scを生成する。
【0051】
電圧制御発振器(VCO[voltage-controlled oscillator])181cは、制御電圧信号Scに応じた発振周波数f1’で基準クロック信号S1’を生成する。
【0052】
分周器181dは、基準クロック信号S1’の発振周波数f1’をN分周した分周クロック信号Saを生成する。
【0053】
FLL部182は、基準クロック信号S1の発振周波数f1’とFG信号S2の発振周波数f2とを比較して周波数誤差信号(加速信号UPと減速信号DN)を生成する。具体的に述べると、FLL部182は、モータ3の回転数が目標値よりも低いとき、すなわちf1’>f2であるときに、加速信号UPを出力する。一方、FLL部182は、モータ3の回転数が目標値よりも高いとき、すなわちf1’<f2であるときに、減速信号DNを出力する。
【0054】
チャージポンプ部183は、電流源183a及び183bを含み、周波数誤差信号(加速信号UPと減速信号DN)に応じて出力電圧CPをアップ/ダウンさせる。電流源183aは、加速信号UPに応じて電源端から出力端に向けたソース電流のオン/オフ制御を行う。電流源183bは、減速信号DNに応じて出力端から接地端に向けたシンク電流のオン/オフ制御を行う。具体的に述べると、モータ3の回転数が目標値よりも低いときには、加速信号UPが入力されてソース電流がオンされるので、出力電圧CPが高くなる。逆に、モータ3の回転数が目標値よりも高いときには、減速信号DNが入力されてシンク電流がオンされるので、出力電圧CPが低くなる。
【0055】
積分アンプ部184は、FG信号S2の発振周波数f2に応じたゲインGで出力電圧CPを積分増幅することにより、フィードバック信号S3を生成する。
【0056】
このように、本構成例の回転数フィードバック制御部18は、FG信号S2の発振周波数f2に応じて積分アンプ部184のゲインGを変化させることにより、フィードバックゲインを変化させる点に特徴を有する。以下では、積分アンプ部184の構成及び動作について詳細な説明を行う。
【0057】
図7は、積分アンプ部184の一構成例を示すブロック図である。本構成例の積分アンプ部184は、オペアンプ184aと、デマルチプレクサ184bと、ゲイン切替制御部184cと、キャパシタ184d及び184eと、抵抗184fと、電圧源184gと、抵抗RH及びRL(各抵抗値はRH<RLとする)と、を含む。なお、抵抗RH及びRL以外の構成要素(184a〜184g)は、いずれも半導体装置1に集積化されている。
【0058】
オペアンプ184aの非反転入力端(+)は、電圧源184gの正極端に接続されている。電圧源184gの負極端は、接地端に接続されている。オペアンプ184aの反転入力端(−)は、外部端子T11に接続されている。オペアンプ184の出力端は、フィードバック信号S3の印加端に接続されている。キャパシタ184d及び184eの第1端は、いずれもオペアンプ184aの反転入力端(−)に接続されている。キャパシタ184eの第2端は、抵抗184fの第1端に接続されている。キャパシタ184dの第2端と抵抗184fの第2端は、いずれもオペアンプ184aの出力端に接続されている。抵抗RHの第1端は、外部端子T12に接続されている。抵抗RLの第1端は、外部端子T13に接続されている。抵抗RH及びRLの第2端は、いずれも外部端子T11に接続されている。
【0059】
デマルチプレクサ184bの入力端は、出力信号CPの印加端に接続されている。デマルチプレクサ184bの第1出力端は、外部端子T12に接続されている。デマルチプレクサ184bの第2出力端は、外部端子T13に接続されている。デマルチプレクサ184bの制御端は、ゲイン切替信号SW1の印加端(ゲイン切替制御部184cの出力端)に接続されている。デマルチプレクサ184bは、ゲイン切替信号SW1が第1論理レベル(例えばハイレベル)であるときに出力信号CPを第1出力端に出力し、ゲイン切替信号SW1が第2論理レベル(例えばローレベル)であるときに出力信号CPを第2出力端に出力する。
【0060】
ゲイン切替制御部184cは、FG信号S2の発振周波数f2に応じてゲイン切替信号SW1の論理レベルを切り替える。
【0061】
図8は、ゲイン調整動作の第1例(2段階切替制御)を示す図である。モータ3の回転数が高くなり、FG信号S2の発振周波数f2が上側閾値f2Hを上回ると、ゲイン切替制御部184cは、ゲイン切替信号SW1を第1論理レベルとする。その結果、デマルチプレクサ184bは、出力信号CPを第1出力端に出力する状態となるので、積分アンプ部184のゲインGは、抵抗RHに応じた高ゲインGHに設定される。
【0062】
一方、モータ3の回転数が低くなり、FG信号S2の発振周波数f2が下側閾値f2L(<f2H)を下回ると、ゲイン切替制御部184cは、ゲイン切替信号SW1を第2論理レベルとする。その結果、デマルチプレクサ184bは、出力信号CPを第2出力端に出力する状態となるので、積分アンプ部184のゲインGは、抵抗RLに応じた低ゲインGLに設定される。
【0063】
このように、モータ3の低回転時にフィードバックゲインを低下させることにより、モータ3のハンチングを招くことなく、回転数フィードバック制御を継続することが可能となる。なお、
図8で示したように、ゲイン切替用の閾値(f2H、f2L)にヒステリシスを持たせておけば、不必要なゲイン切替を防止することが可能となる。
【0064】
また、本構成例の積分アンプ184であれば、ゲインG(高ゲインGH及び低ゲインGL)を外付けの抵抗RH及びRLによって調整することができるので、モータ3の極数に依存することなく、適切なフィードバックゲインを設定することが可能となる。
【0065】
なお、積分アンプ184のゲイン調整動作は、FG信号S2の発振周波数f2に応じてゲインGを段階的に切り替える構成(
図8を参照)に限らず、例えば、FG信号S2の発振周波数f2に応じてゲインGを連続的に変化させる構成(
図9を参照)としてもよい。
【0066】
<第1変形例>
図10は、半導体装置1の第1変形例を示す要部ブロック図である。本変形例の半導体装置1は、基準クロック信号生成部16と回転数フィードバック制御部18との間に、基準クロック信号S1の急峻な周波数変動を抑制するソフト処理部20をさらに有する。
【0067】
このようなソフト処理部20を有する構成であれば、モータ3の起動時ないし停止時において、モータ3の回転数NR[number of revolution]を緩やかに変化させることができるので、意図しないラッシュカレントを防止することが可能となる(
図11を参照)。
【0068】
なお、ソフト処理部20は、外部端子T14に外付けされる抵抗Rsにより、回転数NRの変化率(単位時間当たりの変化量)を調整することが可能である。
【0069】
また、先に説明した回転数フィードバック制御による回転数NRの補正率(単位時間当たりの補正量)は、ソフト処理部20による回転数NRの変化率とは別々に設定されている。従って、
図11の期間T1〜T3で示したように、回転数NRの立上り時(T1)、定常時(T2)、及び、立下り時(T3)のいずれにおいても、同一の補正率で回転数NRを各時点の目標値に合わせ込むことができる。
【0070】
<第2変形例>
図12は、半導体装置1の第2変形例を示す要部ブロック図である。本変形例の半導体装置1は、FG信号S2に応じてフィードバック信号S3のマスク制御を行うマスク部21をさらに有する。マスク部21は、オープン信号生成部21aと、マルチプレクサ21bと、マスク制御部21cと、を含む。
【0071】
オープン信号生成部21aは、FG信号S2(実回転数)に依ることなく、基準クロック信号S1(目標回転数)のみに応じてオープン信号S4を生成する。
【0072】
マルチプレクサ21bは、マスク切替信号SW2に応じてフィードバック信号S3とオープン信号S4のいずれか一方を選択信号S5として出力する。より具体的に述べると、マルチプレクサ21bは、マスク切替信号SW2が第1論理レベル(例えばハイレベル)であるときにフィードバック信号S3を選択信号S5として出力し、マスク切替信号SW2が第2論理レベル(例えばローレベル)であるときにオープン信号S4を選択信号S5として出力する。
【0073】
マスク制御部21cは、FG信号S2の発振周波数f2に応じてマスク切替信号SW2の論理レベルを切り替える。
【0074】
なお、上記構成から成るマスク部21の導入に伴い、ロジック部13は、フィードバック信号S3の直接入力を受ける構成ではなく、選択信号S5の入力を受けてチョッピング駆動のデューティ制御を行う構成に変更されている。
【0075】
図13は、回転数フィードバック制御とオープン制御との切替動作例を示す図である。モータ3の回転数が低くなり、FG信号S2の発振周波数f2が下側閾値f2Lよりもさらに低いマスク閾値f2Xを下回ると、マスク制御部21cは、マスク切替信号SW2を第1論理レベルから第2論理レベルに切り替える。その結果、マルチプレクサ21bは、フィードバック信号S3を選択信号S5として出力していた状態から、オープン信号S4を選択信号S5として出力する状態となるので、回転数フィードバック制御からオープン制御への切替が行われる。
【0076】
このように、回転数フィードバック制御のフィードバックゲインを引き下げてもモータ3のハンチングを生じるおそれがあるほど、モータ3の回転数が低下した場合には、フィードバック信号S3をマスクしてオープン制御に切り替えることにより、モータ3のハンチングを確実に防止することが可能となる。
【0077】
なお、
図13では描写を省略したが、不必要なマスク切替を防止するためには、マスク切替用の閾値f2Xにもヒステリシスを持たせることが望ましい。
【0078】
<車両への適用>
図14は、種々の電子機器を搭載した車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Yは、バッテリ(不図示)から電源電圧VCCの供給を受けて動作する種々の電子機器X11〜X18を搭載している。なお、
図14における電子機器X11〜X18の搭載位置については、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0079】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0080】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0081】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0082】
電子機器X14は、車両Yの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行うボディコントロールユニットである。
【0083】
電子機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0084】
電子機器X16は、エアーコンディショナ、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Yに組み込まれている電子機器である。
【0085】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Yに装着される電子機器である。
【0086】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0087】
上記した電子機器X11〜X18のうち、ブラシレスDCモータを備える電子機器については、適宜、先に説明した電子機器Xの構成を採用することができる。
【0088】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、モータ駆動装置の用途については、車載用以外にも、様々な用途(例えば白物家電用)が考えられる。
【0089】
このように、上記の実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。