【実施例1】
【0024】
図1は実施例1の発光演出具の制御システムのブロック図で、(a)に示す外部制御装置10と、(b)に示す発光演出具20より構成される。
【0025】
外部制御装置10は、発光演出を必要とするイベントなどが行われる会場や場所に固定的または半固定的に設置されるものである。主として主催者側(即ち演出者側)で操作されることを想定した装置で、発光演出具20が行う発光の態様、即ち発光の有無や点滅、強度、色、それらの時間的変化のパターンのうちの少なくとも1つを主催者側が意図する所定のものとなるように制御するため、電波を搬送波とする外部送信信号を無線で発信する動作を行う。
【0026】
操作装置11は、操作者(演出者)が、自らのリアルタイムの操作によって、あるいは事前のプログラミングによって、あるいは事前に準備した部分的なプログラムをリアルタイムに選択し作動させることによって、外部制御信号を作成する装置で、そのために必要なスイッチ類やキーボードやパソコン等の機器を含む。その信号出力を受けた外部制御信号作成装置12は、所定の信号を搬送波として作成した電波に乗せて、外部制御信号として出力する。
【0027】
外部制御信号が重畳された電波信号は、送信アンテナ13から発光演出具20の集団に向けて発信される。搬送波として用いられる電波は、到達距離、指向性、受信の容易性、近隣機器への影響等を考慮してその周波数や強度が選ばれる。その周波数は例えば、300MHz帯、400MHz帯、900MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯のいずれかから選択される。
【0028】
発光演出具20は、個々の使用者(例えばイベントの観客や主催者の一部等の参加者)によって携帯されることを想定した、携帯可能な発光器具で、例えばほぼ棒状をなしてその一端から発光するペンライト型のものや、その発光部を例えば円盤型に広げて面発光(点発光の集合を含む)させるものや、例えばペンダントのような身につけるアクセサリーに組み込むこともできる。
【0029】
その内部構成は、制御送信信号が含まれる電波を受信する受信アンテナ21、受信信号を復調して制御出力信号を抽出する受信回路22、その出力である発光制御信号によって発光体24の発光態様を制御する発光制御回路23、例えば単数又は複数のLED又は任意の発光素子より成る発光体24を含む。絶対圧センサ25は発光演出具20の一部に組み込まれた小型のセンサ及びそれにより絶対圧を検出するための付属回路(後述するホイートストンブリッジ回路等)を含む。26は電源で例えば軽量の電池であり、必要な全ての回路および発光体に電力を供給する。
【0030】
絶対圧センサ25は、既に小型で低消費電力の半導体圧力センサが多く市販されている。従って特に図示はしないが、その一例について構造と作用の概要を述べておく。適度な厚さの例えば正方形のシリコン基板の中央部を、片側からのエッチングにより薄く加工し、厚い外壁の内側にダイヤフラムを形成する。
【0031】
このシリコン基板を、ダイヤフラムの下の中空な凹部が真空に保たれるように他の基板に対して外壁で接着する。ダイヤフラム部の上面には拡散やイオン打ち込みでピエゾ抵抗効果を与えた4個のゲージ抵抗があってそれらはホイートストンブリッジを形成している。この構造体の周囲の環境圧力に比例してダイヤフラムが変形し、そのため各ゲージ抵抗の抵抗値が変化し、それはブリッジの電位差出力として表れ、絶対圧力値が検出される。なお、ダイヤフラムの変形を、容量変化として検出するタイプのセンサもある。
【0032】
このような構成の絶対圧センサで一般の気圧計や高度計が形成される場合も多く、特に常温、常圧(本発明の目的では例えば15〜30°C、1013±30hPaの範囲内となるであろう)で使用するのに適している。感度も高く、温度や地表の気圧がイベント中ほぼ一様ならば、かなり狭い高度差(センサの高さ位置の差)、例えば30cm、50cm、1m、3m、5m、8m、10m、15m、20m(いずれも概略値の例示である)のような高さの差を気圧の差として十分シャープに検出することが可能である。また高い位置の観客席にある発光演出具を操作することができる。
【0033】
発光制御回路23は、発光演出具20を携帯する者の操作による指示、あるいは受信回路22が受信した外部制御信号による指示に基づいて、あらかじめ決められている複数種類の発光態様の一つによって発光体24を発光させるための発光制御信号を作成する機能を有する。
【0034】
複数種類の発光態様とは、発光体24の消灯(不点灯)、複数の発光色からの選択、連続点燈、点滅発光(変化させると効果があると考えられる、例えば1秒以下、2秒程度、又はそれ以上の複数の点滅周期を準備する)、発光色の時間的変化など各種のパターンからなるものである。これらの発光パターンは、発光制御回路23の内部メモリーに記憶されているとよい。あるいは、外部制御装置10が作成し送信したものを、発光演出具20がイベントの現場で一時的に取り込んで用いるようにしてもよい。また、発光態様は、その初期値などを人為的に選択することもできる。
【0035】
また発光制御回路23は、図示しないが、絶対圧設定装置と、それにより設定された圧力値を絶対圧センサ25が検知した圧力値
と比較し、両者の大小関係に応じて異なる発光態様を選択する機能も有する。絶対圧設定装置は、操作を
容易にするため発光演出具20の表面かカバーの下などに配置したセレクト用のプッシュスイッチ群(メンブレンスイッチが適する)を用いるとよい。
【0036】
例えば、会場の床上3mを境界高さとし、その上下で発光態様を異ならせようとするとき、まず床面に近い所定の高さの気圧を絶対圧センサ25に読み取らせて発光制御回路に記憶させ、次いで標高3mとマークされたスイッチを押して高さ3mに相当する気圧差も記憶させる。このようにすれば2つの記憶値から境界高さである3mにおける絶対圧を発光制御回路23がその内部で演算し、演算結果を用いて境界高さの上下で発光態様を変化させることが可能となる。
【0037】
このように、実際の高度(イベント会場の床面からの高さ)による光演出の差を問題とするときは、気象上の低気圧や高気圧の臨時の補正が必要になろうが、その会場の範囲内では気象条件は同じであるし、同じ高さにおける気圧は一様と考えられるから、上記のように、その補正は容易である。(例えばイベント会場の1階入口の床からの高さ1mで、標高を0mにセットした〔このような操作を会場における初期化とみなすことができる〕発光演出具を観客に配布するなど。)
【0038】
次に、本発明の実施例1の動作について説明する。
図2は実施例1のある1個の発光演出具20の動作(中でも主に発光制御回路23の動作)に関するフローチャートである。
【0039】
ステップ51で、発光演出具20の電源26をONすることによって動作が開始する。次にステップ52で受信回路22の出力に外部制御信号が含まれているかどうかが判定される。NOであれば(即ち外部制御装置10からの信号がないとき)、続くステップ53において、その発光演出具20の環境圧力値が、絶対圧センサ25によって検知される。
【0040】
次のステップ54において、発光制御信号の選択(1)が行われる。即ち前のステップ53で検出した圧力値と、発光制御回路23が記憶保持している境界圧力値との大小が比較されて、前者<後者である場合と、前者>後者である場合とで異なる発光態様が選択される。両者が等しい場合はいずれかの態様に含める。その態様に従ってステップ55にて発光体24が発光する。
【0041】
その結果として、記憶されている境界圧力値(全ての発光演出具20において等しいものとする)が例えば5mであり、多数の観客席が5mの高さの上にも下にも設けてあるものとすると、5m以上の高さ位置にある全ての発光演出具20は例えば赤色に発光し、5m未満の高さ位置にある全ての発光演出具20は例えば青色に発光するといったように、観客席の高さに応じた2色の縞状に発光点群が見える状態が現出する。
【0042】
ステップ52に戻り、そこで外部制御信号の受信の検出がYESであったなら、その受信信号はステップ58において、発光制御回路23のメモリーに一時的に保持される。更に次のステップ59で、外部制御信号が、制御圧力指示信号を含んでいるかどうかがチェックされる。その結果NOであれば、ステップ60で発光制御信号選択(2)が行われ、その結果に応じてステップ55にて発光器24の発光が行われる。
【0043】
発光制御信号選択(2)では、発光演出具20の絶対圧センサ25の検出圧力の如何にかかわらず、外部制御信号が指示するとおりの発光態様を発光制御回路23に強制的に適用して発光体24を発光させる。その結果、全発光演出具20が同じ色や同じ時間的パターンの点滅で一斉に発光が行われることになる。この発光態様も場合によってはもちろん迫力のある光演出となる。
【0044】
ステップ59に戻り、その判定がYES、即ち外部制御信号が共通の制御圧力指示信号を含んでいる場合には、ステップ61にてその発光演出具20の環境圧力値が絶対圧センサ25により検出される。その上でステップ62では発光制御信号選択(3)の選択動作がなされる。
【0045】
発光制御信号選択(3)では、外部制御信号に含まれた制御指示信号の指示する圧力値と、ステップ61で検出された発光演出具の環境圧力値との大小関係が比較され、前者<後者である場合と、前者>後者である場合とで異なる発光態様が選択される。両者が等しい場合はいずれかの態様に含める。選択された態様に従ってステップ55にて発光体24が発光する。
【0046】
ステップ55で、所定時間発光が行われたのち、ステップ56では発光演出具20の電源がOFFにされたか否かが判定される。YESであれば、その発光演出具20はステップ57で動作終了となる。NOであれば、状態はステップ52の前に戻って動作は継続される。
【0047】
その結果、発光制御信号選択(3)においては外部から得た制御圧力指示信号により指示された圧力値に相当する高さ(例えば床面より3m)より高い位置にある発光演出具20と低い位置にある発光演出具20が異なる態様(例えば発光色黄色と消灯)で発光する。即ち発光態様を分ける境界高さ位置を、外部制御装置10から自由に指定することができることになる。これが、発光演出具20が記憶していた境界高さで発光態様が切り替わる発光制御選択(1)における動作との違いとなる。
【0048】
従って、発光演出具20が外部制御信号を受けていない場合(外部制御装置10が信号を発信していない場合)、ステップ54の発光制御選択(1)によって例えば既述のように高さ5m以上では赤、5m未満では青の発光が行われていても、ある時点から外部制御装置10が制御圧力指示信号を受取ると、ステップ62の発光制御信号選択(3)によって、次の瞬間から高さ3m以上の席にある発光演出具20は黄色発光、その下の席のものは消灯に変化する。
【0049】
いずれの高さ(圧力値)で如何なる発光態様を選択するかは、発光演出具20の内部に、圧力値の関数としてあらかじめ記憶させておいてもよいし、外部制御装置10が送信する外部制御信号の一部に含めて強制的に選択させてもよいことはもちろんである。
【0050】
また制御圧力指示信号が指示する圧力値は、例えば絶対圧力値であってもよいし、またその会場の床面からの圧力差を高さに換算した値でもよい。これら又はその他の如何なる値を採用するかは、演出者の使い勝手を考慮して決める。
【0051】
<実施例1の変形例1>
発光演出具20の発光態様を変化させる高さ位置を複数化することもできる。即ち外部制御装置10が送信する外部制御信号に、圧力値の異なる複数種類の制御圧力指示信号を含ませる(必要に応じて、高さと発光態様の対応を指示する信号も含ませる)ようにすればよい。その結果、高低差のある観客席上に複数の縞状をなす発光態様の変化が見られることになる。
【0052】
<実施例1の変形例2>
発光演出具20を携帯する観客が、自身の座席の高さ位置の差のみによって受動的に発光態様を規定され、そのような発光演出具20を単に打ち振るだけでは、ある種の不満を持つことも考えられる。
【0053】
各観客が自席に着いた状態で、それぞれの発光演出具20を既述のように「初期化」する。即ち、全ての発光演出具20は、それを所持する観客の自席の高さが標高0mであると認識し記憶する。一方、外部制御装置10は、制御圧力指示信号を、指示する圧力値を例えば数10cm(≦1m〜1.5m)のような比較的低い高さ位置に相当する圧力値に設定して送信する。そしてその状態で全部の発光演出具20は消灯状態であるとする。
【0054】
そこで任意の観客が、発光演出具20を手で持ち上げたり、自分自身も立ち上がったりすると、それまで消灯していたどの発光演出具も、
図2のステップ62、発光制御信号選択(3)の結果として発光を始める。これは、例えば多数の観客がイベントに感動してスタンディングオペレーションのような動作を行うと、今まで暗かった観客席が、急に光点で満たされる光演出効果が得られる。
【0055】
またこのような観客の運動が、例えば低い席から始まって高い席に向かって僅かな時間遅れを伴って持続する場合、これは光点群が下から上へウェーヴ的に観客席を移動する現象として見られるであろう。即ち、これらのようにして、観客の意思を光で表明することができる。
【0056】
同じ効果は、外部制御装置10が送信する制御圧力指示信号のやや異なる与え方によっても得られる。即ち、制御圧力指示信号は、既述のような絶対圧力値や観客席の高さ位置を指示するかわりに、受信する発光演出具20の絶対圧センサ25が現在検知している圧力値よりも例えば50cm高い高さに相当する圧力値を検出したら発光態様を変えよという指示命令にすればよい。こうすれば、発光演出具20の初期化の仕方を変える必要がなくなる利点がある。
【0057】
<実施例1の変形例3>
なお、実施例1の変形例においては、外部制御信号を送信する媒体として、電波に替わり、光(例えば赤外線)や音波(超音波又は可聴周波数帯の音波)を用いてもよい。いずれの媒体を選択するかは、送信や受信の容易性(コストを含む)、他の物体による信号の遮蔽のされ易さ、周囲の機器への影響、人体への無害性、指向性、イベント自体への影響の程度等を考慮して決める。
図1における送信アンテナ13や受信アンテナ21は、信号の媒体が例えば赤外線であれば、それぞれ赤外線の投・受光器に、音波であれば音響トランスデユーサの送・受信器に置換される。
【0058】
<実施例1の変形例4>
本発明の発光演出具20、又は外部制御装置10は、少なくともその一部を水中において使用することができる。この場合は観客よりもむしろシンクロナイズドスイミング等の演者に発光演出具を持たせ、演ずる水深に応じて発光態様を変化させる使い方となる。また水中での電波の使用は適さない。
【0059】
以上、本発明の実施例およびその変形例について述べたが、本発明の実施の形態は、もとよりこれら既述の例示のみに限定されるものではない。例えば、実施例と実質的に等価な結果を得ることができる外部制御信号の与え方や、発光演出具における初期化の方法などにおいては種々考慮の余地があり得る。