(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6301101
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】2段圧縮サイクル
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20180319BHJP
F25B 43/02 20060101ALI20180319BHJP
F25B 1/10 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
F25B1/00 387L
F25B1/00 387K
F25B43/02 A
F25B1/10 B
F25B1/00 331Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-216944(P2013-216944)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-78804(P2015-78804A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮本 善彰
(72)【発明者】
【氏名】木全 央幸
(72)【発明者】
【氏名】堀田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 創
【審査官】
小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−014349(JP,A)
【文献】
特開昭63−087556(JP,A)
【文献】
特開平04−080555(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0071407(US,A1)
【文献】
特開平07−190520(JP,A)
【文献】
特開昭50−064809(JP,A)
【文献】
特開昭49−047954(JP,A)
【文献】
特開2000−346478(JP,A)
【文献】
特開平07−260263(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0023978(US,A1)
【文献】
特開平02−264168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00 − 1/10
F25B 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低段側圧縮機と高段側圧縮機とが直列に配置され、前記高段側圧縮機の吐出側にオイルセパレータが設けられている2段圧縮サイクルにおいて、
前記オイルセパレータから前記低段側圧縮機および前記高段側圧縮機に対して各々独立した第1油戻し回路および第2油戻し回路が設けられ、
前記低段側圧縮機への前記第1油戻し回路の油戻し量をV1、前記高段側圧縮機への前記第2油戻し回路の油戻し量をV2としたとき、V1>V2とされていることを特徴とする2段圧縮サイクル。
【請求項2】
前記低段側圧縮機の吐出配管に切替え手段が設けられ、該切替え手段を介して前記低段側圧縮機で圧縮された冷媒ガスを、吐出バイパス回路により前記高段側圧縮機をバイパスして前記オイルセパレータに導くことにより、前記低段側圧縮機の単独運転による単段圧縮運転と、2段圧縮運転とに切替え可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の2段圧縮サイクル。
【請求項3】
前記低段側圧縮機の吐出配管に切替え手段が設けられ、該切替え手段を介して前記低段側圧縮機の吸入側から低圧冷媒ガスを、吸入バイパス回路により前記低段側圧縮機をバイパスして前記高段側圧縮機に吸入させることにより、前記高段側圧縮機の単独運転による単段圧縮運転と、2段圧縮運転とに切替え可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の2段圧縮サイクル。
【請求項4】
前記第1油戻し回路および前記第2油戻し回路に、それぞれ第1電磁弁および第2電磁弁が設けられ、前記低段側圧縮機または前記高段側圧縮機の単独運転時、停止側圧縮機への油戻し回路が閉鎖可能とされていることを特徴とする請求項2または3に記載の2段圧縮サイクル。
【請求項5】
前記低段側圧縮機で圧縮された冷媒ガスを前記高段側圧縮機に導く前記低段側圧縮機の吐出配管中に、インタークーラが設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の2段圧縮サイクル。
【請求項6】
前記インタークーラが、エバポレータに対して熱交換可能に配設されていることを特徴とする請求項5に記載の2段圧縮サイクル。
【請求項7】
前記第1油戻し回路には、油戻し量を調整するための第1キャピラリチューブが設けられ、
前記第2油戻し回路には、油戻し量を調整するための第2キャピラリチューブが設けられ、
前記第1キャピラリチューブの絞り量≦前記第2キャピラリチューブの絞り量とすることにより、V1>V2となるよう構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の2段圧縮サイクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低段側圧縮機と高段側圧縮機とが直列に配置されている2段圧縮サイクルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
2台の圧縮機を直列に接続し、低段側圧縮機で圧縮された冷媒ガスを高段側圧縮機によって吸込み、2段圧縮する2段圧縮サイクルにおいては、一方の圧縮機に油が溜り込むのを防止するため、各圧縮機の吐出側にそれぞれオイルセパレータを設置し、該オイルセパレータで分離された油を各々の圧縮機に戻すように構成したり、あるいは各圧縮機間に均油配管を設けたりしている。
【0003】
一方、特許文献1には、高段側圧縮機の吐出配管に単一のオイルセパレータを設置し、該オイルセパレータから低段側圧縮機および高段側圧縮機に対して各々油戻し回路を設けることにより、圧力差に影響されずに各々の圧縮機に油を戻し、各圧縮機におけるオイルレベルのアンバランスを解消するとともに、高段側圧縮機と低段側圧縮機との間に第2油戻し回路を設けることにより、低段側圧縮機と高段側圧縮機との間のオイルレベルのアンバランスをより小さくするようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−260263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の如く、各圧縮機の吐出側にそれぞれオイルセパレータを設けたもの、あるいは各圧縮機間に均油配管を設けたものでは、複数のオイルセパレータが必要であり、構成や均油制御が複雑となり、コストアップとなる等の課題を有する。一方、特許文献1に示すものでは、単一のオイルセパレータを設置するだけでよく、構成の簡素化を図ることができるが、各圧縮機でのオイルレベルのアンバランスを解消するには、各油戻し回路の油戻し量の微妙な調整が不可欠であり、アンバランスをより小さくするため、両圧縮機間に第2油戻し回路を設けなければならない等の課題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、低段側圧縮機と高段側圧縮機との間での均油の必要が一切なく、構成を簡素化することができるとともに、低段側圧縮機および高段側圧縮機の双方において、共に油面を確実に確保することができる2段圧縮サイクルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明の2段圧縮サイクルは以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる2段圧縮サイクルは、低段側圧縮機と高段側圧縮機とが直列に配置され、前記高段側圧縮機の吐出側にオイルセパレータが設けられている2段圧縮サイクルにおいて、前記オイルセパレータから前記低段側圧縮機および前記高段側圧縮機に対して各々独立した第1油戻し回路および第2油戻し回路が設けられ、前記低段側圧縮機への前記第1油戻し回路の油戻し量をV1、前記高段側圧縮機への前記第2油戻し回路の油戻し量をV2としたとき、V1>V2とされていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、低段側圧縮機と高段側圧縮機とが直列に配置された2段圧縮サイクルにあって、高段側圧縮機の吐出側にオイルセパレータを設け、そのオイルセパレータから低段側圧縮機および高段側圧縮機に対して各々独立した第1油戻し回路および第2油戻し回路を設けるとともに、低段側圧縮機への第1油戻し回路の油戻し量をV1、高段側圧縮機への第2油戻し回路の油戻し量をV2としたとき、V1>V2としているため、高段側圧縮機の吐出側に設けられているオイルセパレータで分離された油を、第1油戻し回路を介して低段側圧縮機に、また第2油戻し回路を介して高段側圧縮機に戻すことにより、低段側圧縮機および高段側圧縮機でそれぞれ一定量の油面を確保することができ、しかも高段側圧縮機への油戻し量V2よりも低段側圧縮機への油戻し量V1を多く(V1>V2)することにより、低段側圧縮機から高段側圧縮機を経てオイルセパレータに循環する油の量を多くすることができ、これによって、高段側圧縮機での油面の確保を容易化することができる。また、低段側圧縮機、高段側圧縮機およびオイルセパレータ間において、その「差圧ΔP1=HP(高圧)−LP(低圧)」が、「差圧ΔP2=HP(高圧)−MP(中間圧)」よりも必ず大きくなることから、例えば油戻し量を調整するキャピラリチューブを同一チューブとしても、油戻し量を必ず「V1>V2」にできる等、第1油戻し回路および第2油戻し回路間の油戻し量の調整を容易化することができる。従って、低段側圧縮機と高段側圧縮機との間での均油の必要が一切なく、油戻し回路の構成を簡素化することができるとともに、低段側圧縮機、高段側圧縮機の双方共に必要な油面を確実に確保することができる。
【0009】
さらに、本発明の2段圧縮サイクルは、上記の2段圧縮サイクルにおいて、前記低段側圧縮機の吐出配管に切替え手段が設けられ、該切替え手段を介して前記低段側圧縮機で圧縮された冷媒ガスを、吐出バイパス回路により前記高段側圧縮機をバイパスして前記オイルセパレータに導くことにより、前記低段側圧縮機の単独運転による単段圧縮運転と、2段圧縮運転とに切替え可能とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、低段側圧縮機の吐出配管に切替え手段が設けられ、その切替え手段を介して低段側圧縮機で圧縮された冷媒ガスを、吐出バイパス回路により高段側圧縮機をバイパスしてオイルセパレータに導くことにより、低段側圧縮機の単独運転による単段圧縮運転と、2段圧縮運転とに切替え可能とされているため、低段側圧縮機の吐出配管に設けられている切替え手段を切替え、低段側圧縮機によって圧縮された冷媒ガスを、吐出バイパス回路により高段側圧縮機をバイパスしてオイルセパレータに導くことにより、2段圧縮サイクルを低段側圧縮機の単独運転による単段圧縮サイクルに切替えて運転することができる。従って、運転状況により2段圧縮サイクルによる高差圧運転が不要となり、単段圧縮で運転した方が効率の良い運転ができる場合、負荷に対応させて低段側圧縮機による単段圧縮運転に簡易に切替え運転することが可能となる。
【0011】
さらに、本発明の2段圧縮サイクルは、上記の2段圧縮サイクルにおいて、前記低段側圧縮機の吐出配管に切替え手段が設けられ、該切替え手段を介して前記低段側圧縮機の吸入側から低圧冷媒ガスを、吸入バイパス回路により前記低段側圧縮機をバイパスして前記高段側圧縮機に吸入させることにより、前記高段側圧縮機の単独運転による単段圧縮運転と、2段圧縮運転とに切替え可能とされていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、低段側圧縮機の吐出配管に切替え手段が設けられ、その切替え手段を介して低段側圧縮機の吸入側から低圧冷媒ガスを、吸入バイパス回路により低段側圧縮機をバイパスして高段側圧縮機に吸入させることにより、高段側圧縮機の単独運転による単段圧縮運転と、2段圧縮運転とに切替え可能とされているため、低段側圧縮機の吐出配管に設けられている切替え手段を切替え、低段側圧縮機の吸入側から低圧冷媒ガスを、吸入バイパス回路により低段側圧縮機をバイパスして高段側圧縮機に吸入させて圧縮することにより、2段圧縮サイクルを高段側圧縮機の単独運転による単段圧縮サイクルに切替えて運転することができる。従って、運転状況により2段圧縮サイクルによる高差圧運転が不要となり、単段圧縮で運転した方が効率の良い運転ができる場合、負荷に対応させて高段側圧縮機による単段圧縮運転に簡易に切替え運転することが可能となる。
【0013】
さらに、本発明の2段圧縮サイクルは、上述のいずれかの2段圧縮サイクルにおいて、前記第1油戻し回路および前記第2油戻し回路に、それぞれ第1電磁弁および第2電磁弁が設けられ、前記低段側圧縮機または前記高段側圧縮機の単独運転時、停止側圧縮機への油戻し回路が閉鎖可能とされていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、第1油戻し回路および前記第2油戻し回路に、それぞれ第1電磁弁および第2電磁弁が設けられ、低段側圧縮機または高段側圧縮機の単独運転時、停止側圧縮機への油戻し回路が閉鎖可能とされているため、低段側圧縮機または高段側圧縮機の単独運転時、停止側圧縮機への油戻し回路に設けられている電磁弁を閉じることにより、停止側圧縮機に対する油の溜まり込みを防止することができる。従って、低段側圧縮機または高段側圧縮機を単独運転した場合でも、運転側圧縮機において確実に油面を確保することができる。
【0015】
さらに、本発明の2段圧縮サイクルは、上述のいずれかの2段圧縮サイクルにおいて、前記低段側圧縮機で圧縮された冷媒ガスを前記高段側圧縮機に導く前記低段側圧縮機の吐出配管中に、インタークーラが設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、低段側圧縮機で圧縮された冷媒ガスを高段側圧縮機に導く低段側圧縮機の吐出配管中に、インタークーラが設けられているため、2段圧縮する際、低段側圧縮機で圧縮された冷媒ガスを、インタークーラにより冷却して高段側圧縮機に吸入させることができる。従って、高段側圧縮機での圧縮効率を高め、2段圧縮サイクルのCOPを向上することができる。
【0017】
さらに、本発明の2段圧縮サイクルは、上記の2段圧縮サイクルにおいて、前記インタークーラが、エバポレータに対して熱交換可能に配設されていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、インタークーラが、エバポレータに対して熱交換可能に配設されているため、低段側圧縮機からの吐出冷媒ガスをインタークーラによりエバポレータの蒸発熱を熱源として必要かつ十分に冷却することができる。従って、低段側圧縮機からの吐出冷媒ガスを確実に冷却し、高段側圧縮機での圧縮効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、高段側圧縮機の吐出側に設けられているオイルセパレータで分離された油を、第1油戻し回路を介して低段側圧縮機に、また第2油戻し回路を介して高段側圧縮機に戻すことにより、低段側圧縮機および高段側圧縮機でそれぞれ一定量の油面を確保することができ、しかも高段側圧縮機への油戻し量V2よりも低段側圧縮機への油戻し量V1を多く(V1>V2)することにより、低段側圧縮機から高段側圧縮機を経てオイルセパレータに循環する油の量を多くすることができ、これによって、高段側圧縮機での油面の確保を容易化することができる。また、低段側圧縮機、高段側圧縮機およびオイルセパレータ間において、その「差圧ΔP1=HP(高圧)−LP(低圧)」が、「差圧ΔP2=HP(高圧)−MP(中間圧)」よりも必ず大きくなることから、例えば油戻し量を調整するキャピラリチューブを同一チューブとしても、油戻し量を必ず「V1>V2」にできる等、第1油戻し回路および第2油戻し回路間の油戻し量の調整を容易化することができるため、低段側圧縮機と高段側圧縮機との間での均油の必要が一切なく、油戻し回路の構成を簡素化することができるとともに、低段側圧縮機、高段側圧縮機の双方共に必要な油面を確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る2段圧縮サイクルの構成図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る2段圧縮サイクルの構成図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る2段圧縮サイクルの構成図である。
【
図4】
図3に示す2段圧縮サイクルのP−h線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、
図1を用いて説明する。
図1には、本実施形態に係る2段圧縮サイクルの圧縮機周りの構成図が示されている。
本実施形態に係る2段圧縮サイクル1は、CO2冷媒を用いた冷凍サイクル中に低段側圧縮機2と高段側圧縮機3とが直列に接続された構成とされている。この低段側圧縮機2および高段側圧縮機3は、その密閉ハウジング内に油溜りを有する如何なる構成あるいは形式の圧縮機であってもよい。
【0022】
低段側圧縮機2には、エバポレータ(図示省略)の出口冷媒配管4Aに設けられているアキュームレータ5を経て低圧ガス冷媒を吸入する吸入配管4Bが接続されている。この低段側圧縮機2は、吐出配管4Cを介して高段側圧縮機3に接続されており、高段側圧縮機3は、低段側圧縮機2で圧縮された中間圧の冷媒ガスを吸入して2段圧縮する構成とされている。高段側圧縮機3で圧縮された高圧冷媒ガスは、高段側吐出配管4D、逆止弁6を経てオイルセパレータ7に導かれ、冷媒ガス中の油を分離した後、高圧ガス配管4Eを介して図示省略されたコンデンサに導かれるようになっている。
【0023】
また、低段側圧縮機2の吐出配管4Cには、三方弁等からなる切替え手段8が設けられており、この切替え手段8の切替えにより、低段側圧縮機2で圧縮された冷媒ガスをそのまま高段側圧縮機3に吸入させて2段圧縮サイクルにより高差圧運転を行うか、もしくは低段側圧縮機2で圧縮された冷媒ガスを、高段側圧縮機3をバイパスして吐出バイパス回路9および逆止弁10を経てオイルセパレータ7に導くことにより、低段側圧縮機2のみによる単段圧縮運転を行うかの切替えが可能な構成とされている。
【0024】
オイルセパレータ7は、高段側圧縮機3からの高段側吐出配管4Dと吐出バイパス回路9との合流点より下流側に設置されており、高段側圧縮機3または低段側圧縮機2から吐出される冷媒ガス中に含まれている油を分離し、その油を低段側圧縮機2および高段側圧縮機3に戻す機能を有するものである。なお、このオイルセパレータ7としては、遠心分離方式等の公知のオイルセパレータ7を用いることができる。
【0025】
オイルセパレータ7の底部には、低段側圧縮機2および高段側圧縮機3に対して油を戻すための独立した第1油戻し回路11および第2油戻し回路12が接続されている。この第1油戻し回路11および第2油戻し回路12は、低段側圧縮機2および高段側圧縮機3内の油溜めに接続してもよいし、低段側圧縮機2および高段側圧縮機3の吸入配管、すなわち低段側圧縮機2の吸入配管となる吸入配管4Bおよび高段側圧縮機3の吸入配管となる低段側圧縮機2からの吐出配管4Cに接続するようにしてもよい。
【0026】
さらに、第1および第2油戻し回路11,12中には、
低段側圧縮機2および高段側圧縮機3の運転・停止に対応して開閉される第1電磁弁13および第2電磁弁14と、油戻し量を調整する流量調整用第1キャピラリチューブ15および第2キャピラリチューブ16とが設けられている。この第1および第2油戻し回路11,12の油戻し量は、低段側圧縮機2への第1油戻し回路11の油戻し量をV1、高段側圧縮機3への第2油戻し回路12の油戻し量をV2としたとき、「V1>V2」
となるように設定されている。
【0027】
第1および第2油戻し回路11,12の油戻し量を「V1>V2」とするには、低段側圧縮機2、高段側圧縮機3およびオイルセパレータ7間において、その「差圧ΔP1=HP(高圧)−LP(低圧)」が、「差圧ΔP2=HP(高圧)−MP(中間圧)」よりも必ず大きくなることから、油戻し量を調整する第1および第2キャピラリチューブ15,16を同一のチューブとしても、油戻し量を必ず「V1>V2」とすることができる等、第1および第2キャピラリチューブ15,16による絞り量を、「第1キャピラリチューブ15の絞り量≦第2キャピラリチューブ16の絞り量」とすれば、必ず「V1>V2」とすることができる。
【0028】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上記2段圧縮サイクル1を2段圧縮運転する場合、吐出配管4C中の切替え手段(三方弁)8を高段側圧縮機3側に切替えておけばよく、これによって、アキュームレータ5を介して低段側圧縮機2に吸入された低圧ガス冷媒は、低段側圧縮機2により中間圧に圧縮されて吐出配管4Cに吐出され、切替え手段(三方弁)8を介して高段側圧縮機3に導かれる。この中間圧の冷媒ガスは、高段側圧縮機3によって2段圧縮され、高圧ガスとして高段側吐出配管4Dに吐出された後、逆止弁6を経てオイルセパレータ7に送り込まれることになる。
【0029】
オイルセパレータ7に送り込まれた高圧冷媒ガスは、オイルセパレータ7内でガス中に含まれる油が遠心分離された後、高圧ガス配管4Eを介して図示省略されたコンデンサに導かれることによって、冷凍サイクル内を循環する。一方、
オイルセパレータ7で冷媒ガス中から分離された油は、第1電磁弁13および第2電磁弁14が共に開とされていることから、第1油戻し回路11および第2油戻し回路12を介して
低段側圧縮機2および高段側圧縮機3に戻される。
【0030】
この第1油戻し回路11および第2油戻し回路12を介して
低段側圧縮機2および高段側圧縮機3に戻される油の量V1,V2は、流量調整用の第1キャピラリチューブ15および第2キャピラリチューブ16を同一のキャピラリチューブとする等により、その絞り量を「第1キャピラリチューブ15の絞り量≦第2キャピラリチューブ16の絞り量」としているため、必ず「V1>V2」となる。
【0031】
つまり、低段側圧縮機2、高段側圧縮機3およびオイルセパレータ7間において、その「差圧ΔP1=HP(高圧)−LP(低圧)」が、「差圧ΔP2=HP(高圧)−MP(中間圧)」よりも必ず大きくなることから、流量調整用の第1キャピラリチューブ15および第2キャピラリチューブ16の絞り量を上記の如く設定しておくことによって、第1油戻し回路11および第2油戻し回路12による
低段側圧縮機2および高段側圧縮機3への油戻し量を必ず「V1>V2」とすることができる。
【0032】
然して、本実施形態によると、高段側圧縮機3の吐出側に設けられているオイルセパレータ7で分離された油を、第1油戻し回路11を介して低段側圧縮機2に、また第2油戻し回路12を介して高段側圧縮機3に戻すことにより、低段側圧縮機2および高段側圧縮機3でそれぞれ一定量の油面を確保することができ、しかも高段側圧縮機3への油戻し量V2よりも低段側圧縮機2への油戻し量V1を多く(V1>V2)することにより、低段側圧縮機2から高段側圧縮機3に吐出される油の量を多くすることができる。
【0033】
このため、高段側圧縮機3での油面の確保を容易化することができる一方、第1油戻し回路11および第2油戻し回路12間の油戻し量の調整を容易化することができる。これにより、低段側圧縮機2と高段側圧縮機3との間での均油の必要が一切なく、油戻し回路11,12の構成を簡素化することができるとともに、低段側圧縮機2、高段側圧縮機3の双方共に必要な油面を確実に確保することができる。
【0034】
また、本実施形態においては、2段圧縮サイクル1の低段側圧縮機2の吐出配管4Cに切替え手段(三方弁)8が設けられ、その切替え手段8を介して低段側圧縮機2で圧縮された冷媒ガスを、吐出バイパス回路9により高段側圧縮機3をバイパスしてオイルセパレータ7に導くことにより、低段側圧縮機2の単独運転による単段圧縮運転と、2段圧縮運転とに切替え可能とされているため、低段側圧縮機2の吐出配管4Cに設けられている切替え手段8を切替え、低段側圧縮機2によって圧縮された冷媒ガスを、吐出バイパス回路9により高段側圧縮機3をバイパスしてオイルセパレータ7に導くことにより、2段圧縮サイクル1を低段側圧縮機2の単独運転による単段圧縮サイクルに切替えて運転することができる。
【0035】
従って、運転状況により2段圧縮サイクル1による高差圧運転が不要となり、単段圧縮で運転した方が効率の良い運転ができる場合、負荷に対応させて低段側圧縮機2による単段圧縮運転に簡易に切替え運転することが可能となる。例えば、この2段圧縮サイクル1を給湯用のヒートポンプに適用した場合、沸く上げ運転時には、2段圧縮サイクルにより運転し、沸く上げ完了後の保温運転時には、単段圧縮サイクルに切替えて運転する。あるいは、ヒートポンプ式の冷暖房機等に適用した場合、低外気温時等により高差圧運転が求められる冬期においては、2段圧縮サイクルにより運転し、中間期(春、秋)には、単段圧縮サイクルに切替えて運転する。
【0036】
さらに、本実施形態では、第1油戻し回路11および第2油戻し回路12に、それぞれ第1電磁弁13および第2電磁弁14が設けられ、低段側圧縮機2の単独運転時、停止側圧縮機(高段側圧縮機3)への油戻し回路12が閉鎖可能とされているため、低段側圧縮機2の単独運転時、高段側圧縮機3への油戻し回路12に設けられている電磁弁14を閉じることにより、高段側圧縮機3に対する油の溜まり込みを防止することができる。これによって、低段側圧縮機2を単独運転した場合でも、運転側の圧縮機において確実に油面を確保することができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、
図2を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、単段圧縮運転時、高段側圧縮機3が単独運転可能とされている点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態においては、2段圧縮サイクル1を単段圧縮運転する際、高段側圧縮機3による単独運転に切替えられるようにするため、第1実施形態での吐出バイパス回路9に代えて、
図2に示されるように、低段側圧縮機2の吐出配管4Cに設けられている切替え手段(三方弁)8Aに、吸入配管4Bから分岐された吸入バイパス回路17を接続し、高段側圧縮機3の単独運転時、吸入配管4Bからの低圧冷媒ガスを吸入バイパス回路17により低段側圧縮機2をバイパスして直接高段側圧縮機3に吸入させることができる構成としている。
【0038】
上記のように、低段側圧縮機2と高段側圧縮機3とを直列に接続した2段圧縮サイクル1において、低段側圧縮機2の吐出配管4Cに切替え手段(三方弁)8Aを設け、その切替え手段8を介して低段側圧縮機2の吸入配管4B側から低圧冷媒ガスを、吸入バイパス回路17により低段側圧縮機2をバイパスして直接高段側圧縮機3に吸入させることができる構成とすることにより、2段圧縮サイクル1を高段側圧縮機3の単独運転による単段圧縮サイクルに切替えて運転することができる。
【0039】
従って、運転状況により2段圧縮サイクル1による高能力運転が不要となり、単段圧縮で運転した方が効率の良い運転ができる場合、負荷に対応させて高段側圧縮機3による単段圧縮運転に簡易に切替え運転することが可能となる。
【0040】
また、第1油戻し回路11および第2油戻し回路12に、第1電磁弁13および第2電磁弁14が設けられ、高段側圧縮機3の単独運転時、停止側圧縮機(低段側圧縮機2)への油戻し回路11が閉鎖可能とされているため、高段側圧縮機3の単独運転時、低段側圧縮機2への油戻し回路11に設けられている電磁弁13を閉じることにより、低段側圧縮機2に対する油の溜まり込みを防止することができる。これによって、高段側圧縮機3を単独運転した場合でも、運転側の圧縮機において確実に油面を確保することができる。
【0041】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、
図3および
図4を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、2段圧縮サイクル時、低段側圧縮機2により圧縮された中間圧の冷媒ガスを、インタークーラ18で冷却して高段側圧縮機3に吸入させる構成としている点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態においては、
図3に示されるように、低段側圧縮機2により圧縮され、切替え手段(三方弁)8および吐出配管4Cを介して高段側圧縮機3に導かれる中間圧の冷媒ガスを、エバポレータ19と熱交換可能に配設されているインタークーラ18を経て高段側圧縮機3に吸入させる構成としている。
【0042】
上記の如く、低段側圧縮機2で圧縮された冷媒ガスを高段側圧縮機3に導く低段側圧縮機2の吐出配管4C中に、インタークーラ18を設けた構成とすることにより、低圧の冷媒ガスを2段圧縮する際、
図4に示されるように、低段側圧縮機2により圧縮された中間圧の冷媒ガスを、インタークーラ18により冷却して高段側圧縮機3に吸入させることができる。従って、高段側圧縮機3での圧縮効率を高め、2段圧縮サイクル1のCOPを向上することができる。
【0043】
特に、インタークーラ18をエバポレータ19と熱交換可能に配設しているため、低段側圧縮機2からの吐出冷媒ガスをインタークーラ18によりエバポレータ19の蒸発熱を熱源として必要かつ十分に冷却することができ、これによって、低段側圧縮機2からの吐出冷媒ガスを確実に冷却し、高段側圧縮機3での圧縮効率を高めることができる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、
図1に示すサイクル構成により、低段側圧縮機2を単段圧縮運転可能とし、
図2に示すサイクル構成により、高段側圧縮機3を単段圧縮運転可能としているが、1つのサイクル構成中で低段側圧縮機2または高段側圧縮機3の何れかを選択的に単段圧縮運転可能な構成としてもよいことはもちろんである。
【0045】
また、2段圧縮サイクルと単段圧縮サイクルとの切替え手段に三方弁を用いた例について説明したが、切替え手段8は、三方弁に限らず、2個の電磁弁の組み合わせ等による切替え手段によって代替することができる。
さらに、インタークーラ18は、エバポレータ19と熱交換されるものに限らず、低圧冷媒配管4A等と熱交換されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 2段圧縮サイクル
2 低段側圧縮機
3 高段側圧縮機
4B 吸入配管
4C 吐出配管
4D 高段側吐出配管
7 オイルセパレータ
8,8A 切替え手段(三方弁)
9 吐出バイパス回路
11 第1油戻し回路
12 第2油戻し回路
13 第1電磁弁
14 第2電磁弁
15 第1キャピラリチューブ
16 第2キャピラリチューブ
17 吸入バイパス回路
18 インタークーラ
19 エバポレータ