(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送受信部は、前記第1のスキャンにおいて、前記第1の超音波および前記第1の超音波の前記振幅を変調した前記超音波として、それぞれ超音波造影ボリューム画像データの生成に適した周波数特性を有する超音波を前記超音波プローブから送信させる一方、前記第2のスキャンにおいて、前記第2の超音波として、超音波形態画像データの生成に適した周波数特性を有する超音波を前記超音波プローブから送信させるように構成される請求項1記載の超音波診断装置。
前記送受信部は、前記第1のスキャンにおいて、前記第1の超音波および前記第1の超音波の前記位相を変調した前記超音波として、それぞれ超音波造影ボリューム画像データの生成に適した周波数特性を有する超音波を前記超音波プローブから送信させる一方、前記第2のスキャンにおいて、前記第2の超音波として、超音波形態画像データの生成に適した周波数特性を有する超音波を前記超音波プローブから送信させるように構成される請求項2記載の超音波診断装置。
前記送受信部は、複数の超音波振動子を用いて互いに異なる方向から同時に超音波を受信する並列同時受信によって前記第1のスキャン及び前記第2のスキャンの少なくとも一方を前記超音波プローブに実行させるように構成される請求項1乃至10のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る超音波診断装置及び超音波診断装置用のプログラムについて添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1は本発明の実施形態に係る超音波診断装置の機能ブロック図である。
【0011】
超音波診断装置1は、装置本体2に超音波プローブ3を接続して構成される。超音波プローブ3には被検体Pに向けて超音波を送受信するための複数の超音波振動子が内蔵される。各超音波振動子は、電気信号として印加された送信信号を超音波信号に変換して被検体P内部に送信する一方、被検体P内部において生じた超音波反射波を受信し、電気信号としての受信信号に変換して出力する機能を有している。
【0012】
複数の超音波振動子が2次元状に配列された超音波プローブ3は、2Dアレイプローブと呼ばれる。また、複数の超音波振動子を1列に配列し、各超音波振動子を機械的に揺動できるようにした超音波プローブ3は、メカニカル4次元(4D: four dimensional)プローブと呼ばれる。
【0013】
装置本体2には、制御系4、データ処理系5及び記憶部6が設けられ、表示装置7及び入力装置8が接続される。制御系4は、送受信ユニット9及びスキャン制御部10を有する。また、データ処理系5は、Bモード処理部11、ドプラ処理部12及び画像生成部13を有する。
【0014】
送受信ユニット9は、スキャン制御部10による制御下において、超音波プローブ3に備えられる複数の超音波振動子にそれぞれ送信信号として駆動パルスを印加することによって超音波を送信させる機能と、スキャン制御部10による制御下において、超音波プローブ3に備えられる複数の超音波振動子からそれぞれ出力される受信信号を受信して必要な信号処理を実行することによって超音波受信データを生成する機能を有する。
【0015】
送受信ユニット9から複数の超音波振動子に印加される各送信信号には、所定の遅延時間が付与される。これにより、各超音波振動子から送信される超音波信号によって指向性を有する超音波送信ビームが形成される。この送信信号への遅延時間の付与によって超音波送信ビームを形成させる処理は、送信ビームフォーミングとも称される。そして、送信信号に付与される遅延時間の制御によって複数の走査位置に向けて順次超音波送信ビームを送信することができる。
【0016】
同様に、複数の超音波振動子から送受信ユニット9に出力される各受信信号にも、所定の遅延時間が付与される。これにより、各超音波振動子で受信される超音波反射エコー信号によって指向性を有する超音波受信ビームが形成される。この受信信号への遅延時間の付与によって超音波受信ビームを形成させる処理は、受信ビームフォーミングとも称される。そして、受信信号に付与される遅延時間の制御によって複数の走査位置から順次超音波受信ビームを受信することができる。
【0017】
続いて、送受信ユニット9では、遅延時間が付与された各受信信号に対して、A/D(analog to digital)変換処理及び整相加算処理を含む必要な信号処理が施される。これにより、各走査位置に対応する超音波受信データが生成される。また、送受信ユニット9では、遅延時間の付与に先立って、アンプによる受信信号の増幅も実行される。尚、送受信ユニット9において実行される信号処理の一部が超音波プローブ3側において実行される場合もある。
【0018】
このような遅延時間の付与により超音波ビームを形成する電子走査を行えば、2Dアレイプローブを用いて3D領域内の各走査位置から超音波受信データを収集する3Dスキャンを実行することができる。また、メカニカル4Dプローブを用いて電子走査と揺動による機械的な走査を行うことによっても、3Dスキャンを実行することができる。
【0019】
更に、被検体Pの血管内にマイクロバブル等の超音波造影剤を投与してPM法等によって変調された複数レートの超音波を送受信すれば、3D走査領域内に存在する造影剤で反射した超音波造影エコー信号を受信する3D造影スキャンを実行することができる。また、被検体P内において移動している血流、血流内の造影剤又は心筋等の動体で反射した超音波エコー信号を、動体の速度に依存して周波数偏移を受けた超音波ドプラ信号として収集することができる。特に、超音波造影エコー信号を超音波ドプラ信号として用いれば、血流動態を表す超音波ドプラ画像を生成することができる。血流動態をカラーで表示させる超音波ドプラ画像は、カラードプラ画像とも呼ばれる。
【0020】
一方、被検体P内における臓器や器官等の構造物で反射した超音波反射信号を収集すれば、被検体P内における構造物の形態が描出された超音波形態画像を、Bモード像として生成することができる。
【0021】
スキャン制御部10は、超音波スキャン条件として超音波の送受信条件を定めたスキャンシーケンスを設定する機能と、設定したスキャンシーケンスに従って送受信ユニット9を制御することにより、スキャンを実行する機能を有する。特に、スキャン制御部10では、超音波プローブ3を用いて超音波ドプラボリューム画像データを生成するための3D造影スキャン及びBモード像データを生成するためのBモードスキャンが交互に実行されるように送受信ユニット9を制御することができる。
【0022】
但し、スキャン制御部10は、Bモードスキャンを3D造影スキャンの途中に実行するスキャン条件で送受信ユニット9を制御できるように構成されている。すなわち、スキャン制御部10による制御下において実行される交互スキャンは、3D造影スキャンの途中にBモードスキャンを実行するスキャンである。従って、スキャン制御部10による制御下において実行される交互スキャンは、3D造影スキャンの完了後にBモードスキャンを開始する従来の交互スキャンとは異なるスキャンとなる。
【0023】
具体的には、3D造影スキャンは、造影剤が投与された被検体Pの3D領域から、造影剤が描出された超音波造影ボリューム画像データを生成するための第1の超音波として超音波造影エコー信号を超音波プローブ3を用いて受信し、第1の超音波に対応する電気信号としての第1の受信信号を取得する第1のスキャンとなる。一方、Bモードスキャンは、被検体Pの形態が描出された超音波形態画像データを生成するための第2の超音波として超音波反射エコー信号を被検体Pから超音波プローブ3を用いて第1のスキャンとしての3D造影スキャンの途中に受信し、第2の超音波に対応する電気信号としての第2の受信信号を取得する第2のスキャンとなる。
【0024】
このように、送受信ユニット9及びスキャン制御部10で構成される制御系4は、超音波プローブ3を用いて、第1のスキャンとしての3D造影スキャンと、第2のスキャンとしてのBモードスキャンとを所定期間に亘って繰返し実行する機能を有している。このような交互スキャンを実行すれば、時系列の超音波形態画像データ及び超音波造影ボリューム画像データをリアルタイムに順次生成して表示させることが可能となる。
【0025】
加えて、Bモードスキャンを3D造影スキャンの途中に実行することにより、超音波形態画像データと超音波造影ボリューム画像データとの間における時相差を低減させることができる。すなわち、3D造影スキャンの完了後にBモードスキャンを実行する従来の交互スキャンにおいて問題となっていた、超音波形態画像データと超音波造影ボリューム画像データとの間における時相差の増加を回避することができる。
【0026】
ボリュームデータとして生成される超音波造影画像データは、腫瘍等における血流動態の観察用に用いられる他、時間強度曲線(TIC: Time Intensity Curve)の生成用に用いられる。すなわち、超音波造影ボリューム画像データは、TICの生成を含む血流動態解析の対象とされる。
【0027】
超音波造影ボリューム画像データのTICを生成する場合には、TICの生成対象となる関心ボリューム(VOI: volume of interest)の設定が必要となる。すなわち、腫瘍等の観察対象を含むVOIがTICの生成領域として設定される。更に、拍動又は呼吸によって観察対象が動く場合には、観察対象を含むVOIの3Dトラッキングが必要となる場合がある。
【0028】
しかしながら、超音波造影ボリューム画像データでは、造影剤以外の部分が殆ど描出されない。従って、造影剤が走査領域に到達するまでは、走査領域が被検体Pのどの部分に位置しているのか分かり難い。また、超音波造影ボリューム画像データは、2D断面画像データではないため、腫瘍等のターゲットが小さい場合にターゲットが走査領域から逸脱する恐れがある。
【0029】
そこで、超音波形態画像を、3D造影スキャン用の3D走査位置の位置確認(オリエンテーション)を行うためのモニタ画像として利用することができる。従って、第2のスキャンであるBモードスキャンは、モニタスキャンとして実行されることになる。
【0030】
また、造影剤以外の部分が殆ど描出されず、信号値の時間変化が大きい超音波造影ボリューム画像データは、超音波造影ボリューム画像データのTICを生成するためのVOIの設定やVOIのトラッキング用の画像データとしては不適である。このため、VOIの設定やVOIのトラッキングを行う場合には、超音波形態ボリューム画像データを参照することが容易なVOIの設定及びVOIのトラッキング性能の確保に繋がる。つまり、VOIの設定及びVOIのトラッキングを行う場合には、超音波形態ボリューム画像データを生成することが望ましい。
【0031】
図2は、超音波形態画像データの収集目的に応じて要求される条件を示す表である。
【0032】
時系列の超音波造影ボリューム画像データをリアルタイム収集する4D造影検査における走査位置のオリエンテーション用に超音波形態画像データを用いる場合には、組織の断層像として表示される超音波形態画像を参照して腫瘍等の撮影対象を確実に超音波造影ボリューム画像データの3D走査領域となるボリューム内に捕捉することが必要となる。
【0033】
このため、
図2に示すように、走査位置のオリエンテーション用の超音波形態画像データには、表示対象となる2D断面を高画質で表示させることが求められる反面、ボリュームデータは不要である。つまり、オリエンテーション用の2D組織断面像さえ良好な画質で表示できればよい。
【0034】
一方、超音波造影ボリューム画像データのTIC解析のためのVOIの設定及びVOIのトラッキング用に超音波形態画像データを用いる場合には、上述のように超音波形態画像データとしてボリュームデータを取得することが望ましい。但し、超音波形態画像データの画質は、VOIのトラッキング性能が確保できる程度で十分である。
【0035】
しかしながら、超音波形態ボリューム画像データを取得するために、3D造影スキャンの3D走査領域と同一の3D領域をBモードスキャンの3D走査領域に設定すると、超音波造影ボリューム画像データの時間分解能及びリアルタイム性が低下する。
【0036】
そこで、Bモードスキャンにおいて、3D造影スキャンの走査領域となる超音波造影ボリューム画像データを生成するための3D領域よりも狭い単一又は複数の領域から第2の超音波としての超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号が受信されるようにスキャン条件が設定される。この場合、Bモードスキャンにおいて、方位角(azimuth)方向又は仰角(elevation)方向を法線方向とする単一又は複数の領域から超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号を受信することが実用的である。
【0037】
エレベーション方向は、走査面の移動方向である。一方、アジマス方向は、走査面と平行な方向における超音波振動子の配列方向である。また、エレベーション方向の中心位置における走査面に平行な面はA面とも呼ばれる。一方、A面に直交し、かつエレベーション方向に平行な面は、B面とも呼ばれる。更に、A面及びB面の双方に直交する面はC面と呼ばれる。
【0038】
従って、超音波振動子が1D配列されたメカニカル4Dプローブであれば、複数の超音波振動子の配列方向がアジマス方向となり、メカニカル4Dプローブの機械的な揺動方向がエレベーション方向となる。一方、超音波振動子が2D配列された2Dアレイプローブであれば、超音波振動子の配列方向のうち、走査面と平行な方向における超音波振動子の配列方向がアジマス方向となり、2Dアレイプローブの電子的な走査面の揺動方向がエレベーション方向となる。
【0039】
尚、超音波プローブ3は、走査面が2本の円弧と2本の直線で囲まれた扇形となるコンベックス型、走査面が1本の円弧と2本の直線で囲まれた扇形となるセクタ型及び走査面が長方形となるリニア型に分類することができる。従って、エレベーション方向は、超音波プローブ3のタイプに応じて直線又は円弧となる。すなわち、リニア型の場合には、エレベーション方向が直線となり、コンベックス型及びセクタ型の場合には、エレベーション方向が円弧となる。また、コンベックス型の超音波プローブ3では、複数の超音波振動子が走査面と平行な方向に円弧状に配列される。このため、コンベックス型の場合には、アジマス方向が円弧となり、リニア型及びセクタ型の場合には、アジマス方向が直線となる。
【0040】
超音波造影ボリューム画像データの時間分解能及びリアルタイム性を維持しつつ、超音波形態画像データのフレームレートも維持するためには、3D造影スキャンの対象となる3D領域を時間的に等間隔に分割するタイミングで超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号を複数回受信することが好適である。すなわち、3D造影スキャンの途中にN(Nは自然数)回超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号を受信する場合には、超音波造影ボリューム画像データの収集対象となる3D領域をN+1個の3D領域に等間隔に分割するタイミングでN回超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号を受信することが好適である。これにより、超音波形態画像データのフレームレートを、超音波造影ボリューム画像データのフレームレートのN倍にすることができる。
【0041】
また、3D造影スキャンの対象となる3D領域を時間的かつ空間的に等間隔に分割する領域から超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号を受信することによって、超音波形態画像データと超音波造影ボリューム画像データとの間における時相差を最小にすることができる。
【0042】
従って、超音波造影ボリューム画像データの時間分解能及びリアルタイム性を良好にしつつ、超音波形態画像データと超音波造影ボリューム画像データとの間における時相差を最小にするためには、3D造影スキャンの対象となる3D領域をアジマス方向又はエレベーション方向に2等分する中心領域から超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号を受信することが好適である。
【0043】
超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号は、3D造影スキャンの走査領域よりも狭い2D領域又は3D領域から収集することができる。但し、
図2に示すように、走査位置のオリエンテーション用に必要なのは、2D超音波形態画像である。従って、超音波造影ボリューム画像データの時間分解能及びリアルタイム性を向上させる観点からは、2D領域から超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号を収集し、組織の2D断面画像としてモニタ用の超音波形態画像を生成することが有効である。
【0044】
しかし、
図2に示すように、超音波造影画像データのTIC生成のためのVOIの設定及びVOIのトラッキングには、超音波形態ボリューム画像データを生成することが望ましい。但し、生成すべき超音波形態ボリューム画像データに要求される画質は、VOIの設定及びVOIのトラッキングを行うことが可能な程度の画質である。
【0045】
そこで、3D領域から収集した超音波造影ボリューム画像データ用の超音波反射エコー信号の一部を用いて、超音波形態ボリューム画像データを生成することができる。これにより、超音波造影ボリューム画像データの時間分解能及びリアルタイム性を向上させるために超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号を2D領域から収集しても、VOIの設定及びVOIのトラッキング用に超音波形態ボリューム画像データを生成することが可能となる。つまり、超音波造影ボリューム画像データの時間分解能及びリアルタイム性の向上、高画質のモニタ用の超音波形態画像の生成並びにVOIの設定及びVOIのトラッキング用の超音波造影ボリューム画像データの生成を両立させることができる。
【0046】
従って、超音波造影ボリューム画像データの時間分解能及びリアルタイム性を最も良好にするためには、3D造影スキャンの対象となる3D領域を2分割し、かつアジマス方向又はエレベーション方向を法線方向とする2D領域から超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号を受信するスキャンシーケンスが実用的かつ好適な条件となる。
【0047】
この場合、超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号の収集対象となる2D領域は、エレベーション方向の中心位置におけるA面又はアジマス方向の中心位置におけるB面上の領域となる。従って、モニタ用に表示される超音波形態画像も、A面方向又はB面方向の画像となる。
【0048】
図3は3D造影スキャンの途中にBモードスキャンを実行するためのスキャンシーケンスの第1の例を示す図である。
【0049】
図3において紙面に平行な円弧方向は超音波プローブ3のエレベーション方向を示している。また、
図3において実線は3D造影スキャンにおける走査面の位置を示し、点線はBモードスキャンにおける走査面の位置を示す。但し、説明簡易化のため、実際には重なる実線と点線とを重ねずに表示している。
【0050】
図3に示すように、エレベーション方向における複数の走査面から超音波造影ボリューム画像データ用の超音波反射エコー信号が順次収集されるようにスキャンシーケンスを決定することができる。更に、3D造影スキャンの対象となる3D領域をエレベーション方向に2等分する2D領域、つまり3D領域の中心位置におけるA面から超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号が収集されるように、スキャンシーケンスを決定することができる。
【0051】
従って、3D造影スキャンの対象となる走査面の数が奇数であれば、Bモードスキャン用の走査面は、3D造影スキャンの対象となる中心の走査面と重なる。また、時間的にも、Bモードスキャンは、3D造影スキャンの中心時刻において実行される。これにより、3D造影スキャンによって収集される超音波造影ボリューム画像データ用の超音波反射エコー信号と、Bモードスキャンによって収集される超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号との間における時相差を最小限にすることができる。
【0052】
また、Bモードスキャンを2Dスキャンとすることによって、超音波造影ボリューム画像データの時間分解能及びリアルタイム性を向上させることができる。
【0053】
図4は
図3に示す3D造影スキャン及びBモードスキャンにおいてそれぞれ送信される送信信号の波形の一例を示す模式図である。
【0054】
図4(A)は3D造影スキャンにおいて送信される送信信号の波形の一例を示し、
図4(B)はBモードスキャンにおいて送信される送信信号の波形の一例を示す。
図4(A)に示すように、例えば、振幅を変調して低周波の送信信号を3回送信する3レート振幅変調(AM: Amplitude Modulation)法によって、中心の走査面及び中心以外の走査面を含む全走査面の3D造影スキャンを実行することができる。一方、
図4(B)に示すように、Bモードスキャンは、中心の走査面のみを対象として、振幅及び周波数が変調されない基本波帯域の送信信号を1回送信する1レート基本波モードで実行することができる。
【0055】
このように走査面単位で、3D造影スキャンとBモードスキャンとを交互に実行する交互スキャン用のスキャンシーケンスをスキャン制御部10において設定し、設定したスキャンシーケンスに従って3D造影スキャンの途中にBモードスキャンを実行することができる。
【0056】
尚、造影スキャンの手法としては、AM法の他、位相を変調するPM法、振幅及び位相の双方を変調する振幅位相変調(AMPM)法が知られている。このように、造影スキャンの手法及び送信レート等の条件は、任意に選択することができる。
【0057】
図5は3D造影スキャンの途中にBモードスキャンを実行するためのスキャンシーケンスの第2の例を示す図である。
【0058】
図5において紙面に平行な円弧方向は超音波プローブ3のアジマス方向を示している。また、
図5において実線は3D造影スキャンにおける送信ビームの位置を示し、点線はBモードスキャンにおける送信ビームの位置を示す。但し、説明簡易化のため、実際には重なる実線と点線とを重ねずに表示している。
【0059】
図5に示すように、アジマス方向における複数のB面から超音波造影ボリューム画像データ用の超音波反射エコー信号が順次収集されるようにスキャンシーケンスを決定することができる。更に、3D造影スキャンの対象となる3D領域をアジマス方向に2等分する2D領域、つまり3D領域の中心位置におけるB面から超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号が収集されるように、スキャンシーケンスを決定することができる。
【0060】
この場合、3D造影スキャンにより、各走査面においてアジマス方向に異なる複数の走査位置に向かって複数の送信ビームが送信される。一方、Bモードスキャンにより、各走査面においてアジマス方向の中心位置のみに送信ビームが送信される。
【0061】
従って、3D造影スキャンの対象となるB面の数が奇数であれば、Bモードスキャン用のB面は、3D造影スキャンの対象となる中心のB面と重なる。また、時間的には、3D造影スキャン用の送信ビームが順次送信される場合には、各走査面上において、Bモードスキャン用の送信ビームが、3D造影スキャン用の送信ビームの送信期間における中心時刻において送信される。これにより、3D造影スキャンによって収集される超音波造影ボリューム画像データ用の超音波反射エコー信号と、Bモードスキャンによって収集される超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号との間における時相差を最小限にすることができる。
【0062】
また、Bモードスキャンを2D領域から超音波反射エコー信号を収集するスキャンとすることによって、超音波造影ボリューム画像データの時間分解能及びリアルタイム性を向上させることができる。
【0063】
図6は
図5に示す3D造影スキャン及びBモードスキャンにおいてそれぞれ送信される送信信号の波形の一例を示す模式図である。
【0064】
図6(A)は3D造影スキャンにおいて送信される送信信号の波形の一例を示し、
図6(B)はBモードスキャンにおいて送信される送信信号の波形の一例を示す。
図6(A)に示すように、例えば、3レートAM法によりアジマス方向の対象範囲全域に亘って超音波送信ビームを送信することによって3D造影スキャンを実行することができる。一方、
図6(B)に示すように、Bモードスキャンは、振幅及び周波数が変調されない基本帯域の送信信号で構成される超音波送信ビームをアジマス方向の中心位置に対してのみ1回送信する1レート基本波モードで実行することができる。
【0065】
このように送信ビーム単位で、3D造影スキャンとBモードスキャンとを交互に実行する交互スキャン用のスキャンシーケンスをスキャン制御部10において設定し、設定したスキャンシーケンスに従って3D造影スキャンの途中にBモードスキャンを実行することができる。
【0066】
もちろん、A面及びB面の双方から直交する2断面における超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号が収集されるようにスキャンシーケンスを設定することもできる。その場合には、
図3に例示されるスキャンシーケンスと、
図5に例示されるスキャンシーケンスとを組合せればよい。また、A面又はB面と平行でない単一又は複数の面から超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号が収集されるようにスキャンシーケンスを設定することもできる。
【0067】
すなわち、3D領域から超音波造影ボリューム画像データ用の超音波反射エコー信号を収集する3D造影スキャンを実行する一方、エレベーション方向における特定の走査面及びアジマス方向における特定の走査位置から超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号を収集するBモードスキャンを実行するスキャンシーケンスを設定することができる。
【0068】
図7は、3D造影スキャンの途中にBモードスキャンを実行するためのスキャンシーケンスの第3の例を示す図である。
【0069】
図7において紙面に平行な円弧方向は超音波プローブ3のエレベーション方向を示している。また、
図7において点線は、Bモードスキャンにおける走査面の位置を示し、実線で囲まれた領域はBモードスキャンを複数回繰返すことによって時間的に分割される3D造影スキャンの対象となる複数の3D領域を示す。
【0070】
図7に示すように、エレベーション方向における複数の走査面から超音波造影ボリューム画像データ用の超音波反射エコー信号が順次収集されるようにスキャンシーケンスを決定することができる。更に、3D造影スキャンの対象となる3D領域をエレベーション方向に2分割する2D領域から超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号が3D造影スキャン中において複数回収集されるように、スキャンシーケンスを決定することができる。
図7に示す例では、3D造影スキャンの対象となる3D造影ボリューム領域が、3D造影ボリューム領域の中心位置に対する2回のBモードスキャンによってエレベーション方向に空間的に3等分されている。
【0071】
つまり、超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号が3D造影スキャン中において複数回収集されるようにスキャンシーケンスを決定することもできる。3D造影スキャン中において複数回超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号を収集するようにすれば、超音波形態画像のフレームレートを向上させることができる。
【0072】
図8は、
図7に示す3D造影スキャンによって取得される超音波造影ボリューム画像データ及びBモードスキャンによって取得される超音波形態画像データの各更新レートを示す図である。
【0073】
図8において横軸は時間を示し、縦軸方向は走査面に平行な方向を示す。
図7に示す3D造影スキャンの対象となるセグメント化された複数の3D領域に対する走査タイミング及び3D造影ボリュームの中心位置に対するBモードスキャンの走査タイミングを時間方向に表示させると
図8のようになる。すなわち、3D造影スキャン中においてBモードスキャンを複数回実行すると、超音波形態画像データの更新レートが超音波造影ボリューム画像データの更新レートよりも高くなる。
【0074】
具体的には、3D造影ボリュームの中心位置における2D領域から超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号が3D造影スキャン中においてN回収集されるように、3D造影スキャンの対象となるボリューム領域を時間的かつ空間的に(N+1)分割すると、超音波形態画像データのフレームレートは、超音波造影ボリューム画像データの更新レートのN倍となる。
【0075】
図7及び
図8に示す例では、3D造影スキャンの対象となるボリューム領域が2回のBモードスキャンによって時間的かつ空間的に3分割されている。この場合、超音波形態画像データのフレームレートが、超音波造影ボリューム画像データの更新レートの2倍となる。すなわち、超音波造影ボリューム画像データが1回更新される間において、超音波形態画像データが2回更新される。
【0076】
このように、走査位置のオリエンテーションを効果的に行えるように、超音波形態画像データのフレームレートを、超音波造影ボリューム画像データの更新レートよりも高いレートに設定することができる。その場合、3D造影スキャンの対象となるボリューム領域を空間的かつ時間的に等間隔に分割するタイミングでBモードスキャンを複数回繰返すことによって、超音波造影ボリューム画像データと超音波形態画像データとの間における時相差を最小限にすることができる。
【0077】
従って、Bモードスキャンの実行条件を、
図8に例示されるように超音波造影ボリューム画像データに対する超音波形態画像データの更新レート比として設定することもできる。具体的には、超音波造影ボリューム画像データに対する超音波形態画像データの更新レート比、すなわち超音波形態画像データのフレームレートを超音波造影ボリューム画像データの更新レートで除算した値がNであれば、3D造影スキャンの対象となるボリューム領域を時間的かつエレベーション方向に空間的に(N+1)等分するタイミングでN回Bモードスキャンが繰返されるスキャン条件を設定することができる。
【0078】
この場合、N=1に設定すれば、超音波形態画像データのフレームレートが超音波造影ボリューム画像データの更新レートと一致する。従って、
図3に例示される交互スキャンの条件が設定されることになる。すなわち、3D造影スキャンの対象となるボリューム領域内に設定された単一の領域から超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号を収集するスキャンシーケンスが設定される。
【0079】
このように、スキャン制御部10では、Bモードスキャンの対象となる走査面、Bモードスキャンの対象となる走査位置又は超音波形態画像データのフレームレートとして超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号の受信条件を設定することができる。すなわち、3D造影スキャンとBモードスキャンとを走査面を単位として交互に実行するスキャンシーケンス、3D造影スキャンとBモードスキャンとを送信ビームを単位として交互に実行するスキャンシーケンス又は3D造影スキャンとBモードスキャンとを更新レートに従って交互に実行するスキャンシーケンスをスキャン制御部10において設定することができる。
【0080】
そのために、スキャン制御部10は表示装置7にスキャン条件の設定画面を表示させる機能を有している。そして、スキャン条件の設定画面を参照した入力装置8の操作によってスキャン条件を設定することができる。すなわち、スキャン制御部10はスキャン条件を設定するためのユーザインタフェース(U/I: user interface)としての機能を有している。
【0081】
スキャン条件の設定画面では、Bモードスキャンの対象領域をエレベーション方向に垂直な2D領域のみ、アジマス方向に垂直な2D領域のみ又はエレベーション方向に垂直な2D領域とアジマス方向に垂直な2D領域の双方のいずれにするかといった条件や、超音波造影ボリューム画像データに対する超音波形態画像データの更新レート比を設定できるようにすることができる。
【0082】
また、スキャン制御部10では、入力装置8から入力される指示情報に従って超音波形態画像データのフレームレートを調整できるようにすることができる。すなわち、ボリューム領域に対する1回の3D造影スキャン中における超音波形態画像データ用の超音波反射エコー信号の受信回数をマニュアルで調整することができる。この場合、超音波造影ボリューム画像データに対する超音波形態画像データの更新レート比を入力装置8の操作によってマニュアル調整できるようにしてもよい。
【0083】
スキャン制御部10では、このような3D造影スキャンの対象となるボリューム領域及びBモードスキャンの対象領域の他、超音波プローブ3に印加される送信信号の周波数帯域も設定される。送信信号の周波数帯域は、造影剤で反射する超音波反射信号の感度が良好となり、かつ超音波形態画像が高画質で得られるように、広帯域に設定することができる。但し、送信信号の周波数帯域を、3D造影スキャンによって収集された受信信号の一部を超音波形態ボリューム画像データの生成に用いるか否かに応じてより適切な帯域に設定することがエネルギの有効利用に繋がる。
【0084】
図9は、3D造影スキャンによって収集される受信信号を超音波造影ボリューム画像データの生成のみに用いる場合に適切な送信信号の周波数特性を示す図である。
【0085】
図9において横軸は周波数fを示し、縦軸は送信信号の振幅A [dB]を示す。3D造影スキャン及びBモードスキャン用の各送信信号の周波数帯域は、
図9の一点鎖線で示すような超音波プローブ3に印加することが可能な送信信号の周波数帯域の範囲内でそれぞれ個別に設定することができる。
【0086】
3D造影スキャン用の送信信号の周波数帯域は、
図9の実線で示すように、超音波造影剤で反射する超音波反射信号の感度が良好となる低周波領域に設定することができる。一方、モニタ用の超音波形態画像データを収集するためのBモードスキャン用の送信信号の周波数帯域は、画質が良好となるように
図9の点線で示すように、超音波プローブ3に印加することが可能な送信信号の周波数帯域の中心付近における広帯域に設定することができる。
【0087】
つまり、3D造影スキャンによって収集される受信信号を超音波造影ボリューム画像データの生成のみに用いる場合には、3D造影スキャンにおいて超音波造影画像データの生成に適した周波数特性を有する超音波を超音波プローブ3から送信させる一方、Bモードスキャンにおいて超音波形態画像データの生成に適した周波数特性を有する超音波を超音波プローブ3から送信させることができる。このように、送信信号の周波数特性をスキャンごとに適切な特性に設定することにより、送信信号を生成するためのエネルギ効率を向上させることができる。
【0088】
一方、3D造影スキャンによって収集される受信信号を超音波造影ボリューム画像データ及び超音波形態ボリューム画像データの双方の生成に用いる場合には、3D造影スキャンにおいて超音波形態ボリュームデータ及び超音波造影画像データの双方の生成に適した周波数特性を有する超音波を超音波プローブ3から送信させることが効果的である。
【0089】
図10は、3D造影スキャンによって収集される受信信号の一部を超音波形態ボリューム画像データの生成に用いる場合に適切な送信信号の周波数特性を示す図である。
【0090】
図10において横軸は周波数fを示し、縦軸は送信信号の振幅A [dB]を示す。
図9に示す例と同様に、3D造影スキャン及びBモードスキャン用の各送信信号の周波数帯域は、
図10の一点鎖線で示すような超音波プローブ3に印加することが可能な送信信号の周波数帯域の範囲内でそれぞれ個別に設定することができる。
【0091】
Bモードスキャン用の送信信号の周波数帯域は、
図9に示す例と同様に、画質が良好となるように
図10の点線で示すように超音波プローブ3に印加することが可能な送信信号の周波数帯域の中心付近における広帯域に設定することができる。
【0092】
一方、3D造影スキャン用の送信信号の周波数帯域は、
図10の実線で示すように、造影剤で反射する超音波反射信号の感度が良好となる低周波領域を含み、かつ組織の超音波形態画像が高画質で得られるように超音波プローブ3に印加することが可能な送信信号の周波数帯域の中心付近も含む、より広い帯域に設定することができる。つまり、3D造影スキャン用の送信信号は、造影剤と組織の双方の画像化に好適な広帯域信号とすることができる。
【0093】
スキャン制御部10において設定されるその他のスキャン条件としては、並列同時受信法によりスキャンを実行するための条件が挙げられる。並列同時受信法は、超音波プローブ3に備えられる複数の超音波振動子を複数の超音波振動子群に分割し、超音波振動子群ごとに独立して制御することによって異なるラスタ方向から同時に超音波エコー信号を受信する技術である。並列同時受信法によりスキャンを実行する場合には、超音波の送信パターンとして平面波又は拡散波が被検体Pに向けて送信される。
【0094】
複数の超音波振動子を用いて互いに異なる方向から同時に超音波を受信する並列同時受信によって3D造影スキャン及びBモードスキャンの少なくとも一方が実行されるようにスキャン条件を設定すれば、超音波造影ボリューム画像データの時間分解能及びリアルタイム性を一層向上させ、かつ超音波形態画像データと超音波造影ボリューム画像データとの間における時相差も低減させることができる。
【0095】
特に、同一の走査面上の走査位置からであれば超音波形態画像データ用の超音波反射信号と超音波造影ボリューム画像データ用の超音波反射信号をほぼ同時に受信することも可能となる。つまり、並列同時受信法によって、3D造影スキャンによる超音波信号の送受信中にBモードスキャンによる超音波信号の送受信を行うことも可能となる。
【0096】
次に、データ処理系5の機能について説明する。
【0097】
データ処理系5は、第1のスキャンとして実行される3D造影スキャンによってボリュームデータとして取得される第1の受信信号に基づいて超音波造影ボリューム画像データを生成する一方、第2のスキャンとして実行されるBモードスキャンよって取得される第2の受信信号に基づいてモニタ用の超音波形態画像データを生成する機能を有している。加えて、データ処理系5では、超音波造影ボリューム画像データの生成用に取得される第1の受信信号の一部に基づいて被検体Pの形態が描出された超音波形態ボリュームデータを生成することができるように構成されている。
【0098】
データ処理系5のドプラ処理部12は、3D造影スキャンによってボリューム領域から超音波ドプラ信号として収集された第1の受信信号を送受信ユニット9から取得して、周波数解析を含むドプラ処理を実行することにより、血流の速度、分散、パワー等の動態情報をカラー等によって表示する超音波造影ボリューム画像データを生成する機能を有する。
【0099】
尚、超音波造影ボリューム画像データに2D化する表示処理を施して表示させると、3D造影スキャンの対象となるボリューム領域の分割位置に対応する位置に不連続な線が描出される可能性がある。そこで、表示される造影画像の不連続性を低減するために、ドプラ処理部12において超音波造影ボリューム画像データにスムージングフィルタを適用するようにしてもよい。その場合、ボリューム領域の分割位置は、スキャン条件として設定される既知の情報であるから、ボリューム領域の分割位置に対応する位置に対してのみ局所的にスムージングフィルタをかけることが好適である。
【0100】
Bモード処理部11は、Bモードスキャンよって収集された第2の受信信号を送受信ユニット9から取得して、対数変換処理及び包絡線検波処理を含むBモード画像データの生成処理を実行することにより、第2の受信信号の強度が輝度で表示されるBモード画像データとして超音波形態画像データを生成する機能を有する。
【0101】
また、Bモード処理部11は、3D造影スキャンによってボリューム領域から収集された第1の受信信号を送受信ユニット9から取得して、造影剤の分布をグレースケールで表示させるための超音波造影ボリューム画像データを生成する機能を有する。この場合においても、3D造影スキャンの対象となるボリューム領域の分割位置における不連続性を低減するために、スムージングフィルタを適用することができる。
【0102】
更に、Bモード処理部11は、3D造影スキャンによって収集された第1の受信信号の一部に基づいて、超音波形態ボリュームデータを生成する機能を有している。
【0103】
3D造影スキャンによって収集される受信信号には、造影剤に反射して生じた非線形成分と、組織に反射して生じた線形成分が含まれる。従って、
図4及び
図6に例示されるような3レートAM法やその他の変調法によって変調された複数の超音波を順次送信して得られる複数の受信信号間で線形演算を行えば、組織に反射して生じた線形成分を除去して造影剤に反射して生じた非線形成分を抽出することができる。そして、抽出された非線形成分を用いて超音波造影ボリューム画像データを生成することが可能となる。
【0104】
但し、3D造影スキャンによって収集される線形演算前の受信信号には、組織に反射して生じた線形成分が含まれている。そこで、3D造影スキャンによって3Dボリューム領域から収集された線形演算前の受信信号に含まれる線形成分を用いれば、超音波形態ボリューム画像データを生成することができる。
【0105】
図11は3レートAM法による3D造影スキャンによって超音波造影ボリューム画像データ及び超音波形態ボリュームデータを生成する方法を説明する図である。
【0106】
単純な3レートAM法の場合には、3D造影スキャンにおいて
図11に示すように振幅が2倍に変調された超音波と振幅が変調されていない2つの超音波が順次送信される。従って、振幅が変調されていない2つの超音波の送信によって収集された2つの受信信号から振幅が2倍に変調された超音波の送信によって収集された受信信号を減算する線形演算によって組織からの線形成分をキャンセルし、造影剤からの非線形成分を抽出することができる。そして、抽出した非線形成分のドプラ解析を含むデータ処理によって血流の速度、パワー、分散等の血流動態情報を表す超音波造影ボリューム画像データを生成することができる。或いは、簡易な処理によって造影剤の分布をグレースケールで表す超音波造影ボリューム画像データを生成することもできる。
【0107】
一方、線形演算前における3つの受信信号には、それぞれ線形成分と非線形成分が含まれている。そこで、周波数方向のフィルタ処理等によって1つの受信信号から線形成分を抽出することができる。受信信号は3D造影スキャンに3Dボリューム領域から収集されるため、3D領域から収集された受信信号の線形成分に基づいて超音波形態ボリューム画像データを生成することができる。
【0108】
図12はPM法による3D造影スキャンによって超音波造影ボリューム画像データ及び超音波形態ボリューム画像データを生成する方法を説明する図である。
【0109】
単純なPM法の場合には、3D造影スキャンにおいて
図12に示すように位相を反転させた2つの超音波が順次送信される。従って、2つの送信超音波に対応する2つの受信信号を加算する線形演算によって組織からの線形成分をキャンセルし、造影剤からの非線形成分を抽出することができる。そして、抽出した非線形成分のデータ処理によって超音波造影ボリューム画像データを生成することができる。
【0110】
一方、線形演算前における2つの受信信号には、それぞれ線形成分と非線形成分が含まれている。そこで、周波数方向のフィルタ処理等によって1つの受信信号から線形成分を抽出することができる。受信信号は3D造影スキャンに3Dボリューム領域から収集されるため、3D領域から収集された受信信号の線形成分に基づいて超音波形態ボリューム画像データを生成することができる。
【0111】
Bモード処理部11には、このように、3D造影スキャンによって収集された受信信号の一部を送受信ユニット9から取得し、取得した受信信号の一部から線形成分を抽出してBモード画像データとして超音波形態ボリューム画像データを生成する機能が備えられる。
【0112】
画像生成部13は、Bモード処理部11から取得した超音波形態画像データ及びドプラ処理部12から取得した超音波造影ボリューム画像データに必要な表示処理を施して表示装置7に2D形態画像及び2D造影画像として表示させる機能を有する。表示処理としては、画質を決定するためのフィルタ処理、走査線フォーマットの画像信号をビデオフォーマットの画像信号に変換するスキャンコンバート及び超音波ボリューム画像データの2D化処理が挙げられる。3Dのボリューム画像データから表示用の2D画像データを生成するための2D化処理としては、ボリュームレンダリング(VR: Volume Rendering)処理、最大値投影(MIP :Maximum Intensity Projection)処理及び多断面再構成(MPR: Multi Planer Reconstruction)処理が挙げられる。
【0113】
図13は、モニタ用の超音波形態画像及び造影画像の表示方法のバリエーションを示す図である。
【0114】
画像生成部13では、モニタ用の2D形態画像と2D造影画像が様々なレイアウトで表示装置7に表示されるように、表示処理を実行することができる。
図13の(A)から(F)は、モニタ用の2D形態画像と2D造影画像のレイアウトの例を示している。
【0115】
具体的には、(A)は、A面方向の造影画像、B面方向の造影画像、C面方向の造影画像及びA面方向のモニタ用の形態画像を並列表示させるレイアウトである。(B)は、A面方向の造影画像、B面方向の造影画像、A面方向のモニタ用の形態画像及び3D造影画像を並列表示させるレイアウトである。(C)は、A面方向の造影画像及びA面方向のモニタ用の形態画像を並列表示させるレイアウトである。これらのA面方向のみのモニタ画像を表示させる(A)から(C)までのレイアウトは、A面方向のみの2D領域を走査領域としてBモードスキャンを実行した場合に適している。
【0116】
尚、3D画像としては、VR画像やMIP画像を表示させることができる。また、超音波ボリューム画像データに基づくMPR処理によってA面方向、B面方向及びC面方向等の所望の断面における2D造影画像を表示用に生成することができる。
【0117】
(D)は、A面方向の造影画像、B面方向の造影画像、A面方向のモニタ用の形態画像及びB面方向のモニタ用の形態画像を並列表示させるレイアウトである。(E)は、A面方向における造影画像とモニタ用の形態画像とを重畳表示させたA面画像と、B面方向における造影画像とモニタ用の形態画像とを重畳表示させたB面画像とを並列表示させるレイアウトである。(F)は、A面方向における造影画像とモニタ用の形態画像とを重畳表示させたA面画像、B面方向における造影画像とモニタ用の形態画像とを重畳表示させたB面画像、C面方向の造影画像及び3D造影画像を並列表示させるレイアウトである。
【0118】
これらのA面方向及びB面方向の双方のモニタ画像を表示させる(D)から(F)までのレイアウトは、A面方向及びB面方向の双方の2D領域を走査領域としてBモードスキャンを実行した場合に採用し得る。特に形態画像上に造影画像を重畳表示させれば、表示される画像のサイズを大きくすることができる。これにより、表示させる情報量を確保しつつ視認性の低下を回避することができる。
【0119】
図13に例示されるような表示画像のレイアウトは、入力装置8から画像生成部13に表示対象となる画像の指示情報を入力することにより任意に設定することができる。すなわち、画像生成部13は、表示画像のレイアウトを設定するためのU/Iとしての機能も有している。
【0120】
また、同一の検査であっても、画像の観察状況に応じてレイアウトを変更することができる。すなわち、表示対象となる画像を変更することができる。例えば、スキャン中においてリアルタイムに造影画像を観察する場合には、(E)に示すようなA面方向における重畳画像と、B面方向における重畳画像の並列表示を行う一方、フリーズ後における観察であれば、(F)に示すようにC面方向における造影画像と3D造影画像を更に表示させることができる。
【0121】
画像生成部13には、このような画像データの表示処理の他、超音波造影ボリューム画像データのTIC解析を実行する機能が備えられる。TICを生成する場合には、TICの生成対象となるVOIが設定される。TICの生成対象となるVOIの設定には、Bモード処理部11において生成された超音波形態ボリューム画像データを参照画像として用いることが好都合である。また、着目部位に呼吸性又は拍動性の動きや移動が存在する場合には、VOIの位置が補正される。すなわち、VOIのトラッキングが行われる。その場合には、超音波形態ボリューム画像データを参照することがトラッキング精度を維持する観点から現実的である。
【0122】
記憶部6には、画像生成部13において生成された超音波形態画像データ及び超音波造影ボリューム画像データを保存することができる。特に、画像生成部13において超音波形態ボリューム画像データが生成された場合には、超音波形態ボリューム画像データを、対応する超音波造影ボリューム画像データに関連付けて記憶部6に保存することができる。そして、画像生成部13は、記憶部6に保存された超音波形態ボリューム画像データ等の任意の超音波画像データを読み込んで、表示処理やTIC解析の対象として用いることができるように構成される。
【0123】
以上のような装置本体2の構成要素のうち、デジタル情報を処理する構成要素は、コンピュータに超音波診断装置1用のプログラムを読込ませることによって構築することができる。但し、装置本体2の任意の構成要素を構成するために回路を用いてもよい。
【0124】
具体的には、コンピュータに超音波診断装置1の制御プログラムを読込ませることによって、コンピュータを、制御系4として機能させることができる。また、コンピュータに超音波診断装置1のデータ処理プログラムを読込ませることによって、コンピュータを、データ処理系5として機能させることができる。
【0125】
超音波診断装置1の制御プログラム及びデータ処理プログラムを含むプログラムは、情報記録媒体に記録してプログラムプロダクトとして流通させることができる。従って、既存の超音波診断装置に必要なプログラムをインストールすることによって、既存の超音波診断装置を
図1に示す超音波診断装置1として機能させることができる。
【0126】
次に超音波診断装置1の動作および作用について説明する。
【0127】
まず、スキャン制御部10から表示装置7に表示されたスキャン条件の設定画面を通じた入力装置8の操作によって、時系列の超音波造影ボリューム画像データをリアルタイム収集するための3D造影スキャンの実行中においてモニタ用の超音波形態画像データを収集するためのBモードスキャンを実行するスキャンモードが選択される。
【0128】
続いて、Bモードスキャンの対象となる領域が3D造影スキャンの対象となるボリューム領域よりも狭い領域として設定される。好適には、2D領域が設定される。その場合には、Bモードスキャンの対象となる2D領域の数、位置及び向きが設定される。具体的には、Bモードスキャンの対象となる2D領域の位置又は超音波造影ボリューム画像データに対する超音波形態画像の更新レート比を設定することができる。この結果、
図3、
図5又は
図7に例示されるような3D造影スキャン及びBモードスキャンの対象となる走査領域が設定される。
【0129】
また、3D造影スキャンによって収集される受信信号の一部を用いて超音波形態ボリューム画像データを生成するか否かが決定される。超音波形態ボリューム画像データを生成しない場合には、
図9に例示されるような送信信号の周波数特性をスキャン条件として設定することができる。すなわち、3D造影スキャンでは造影剤からの超音波反射信号が良好な感度で受信できるように低周波帯域の超音波が送信される一方、Bモードスキャンでは高画質の組織断層画像が取得できるように超音波プローブ3に印加することが可能な送信信号の周波数帯域の中心付近における広帯域の超音波が送信されるようにスキャン条件を設定することができる。
【0130】
一方、超音波形態ボリューム画像データを生成する場合には、
図10に例示されるような送信信号の周波数特性をスキャン条件として設定することができる。すなわち、3D造影スキャンでは造影剤からの超音波反射信号が良好な感度で受信でき、かつ組織断層画像を必要な画質で生成できるように、超音波プローブ3に印加することが可能な送信信号の周波数帯域の中心付近及び低周波領域の双方を含む、広い周波数帯域を送信信号の周波数帯域として設定することができる。他方、Bモードスキャンでは高画質の組織断層画像が取得できるように超音波プローブ3に印加することが可能な送信信号の周波数帯域の中心付近における帯域を送信信号の周波数帯域として設定することができる。
【0131】
但し、超音波形態ボリューム画像データを生成するか否かを問わず、超音波プローブ3に印加することが可能な送信信号の周波数帯域の中心付近及び低周波領域の双方を含む、より広い周波数帯域を、3D造影スキャン及びBモードスキャン用の各送信信号に共通の周波数帯域として設定するようにしてもよい。
【0132】
この他のスキャン条件としては、3D造影スキャンにおける送信信号の変調方法等のデータ収集法や並列同時受信を行うか否か等の条件を設定することができる。例えば、3レートAM法により3D造影スキャンを実行する場合には、
図4又は
図6に例示されるような送信信号がスキャン条件として設定される。
【0133】
次に、3D造影スキャン及びBモードスキャンによって収集される超音波画像の表示レイアウトが設定される。超音波画像の表示レイアウトは、
図13に例示されるような様々な選択肢から選択することができる。すなわち、入力装置8の操作によって表示レイアウトの指定情報が画像生成部13に入力されると、画像生成部13は指定情報に従って表示レイアウトを設定する。
【0134】
次に、被検体Pの血管内にマイクロバブル等の超音波造影剤が投与される。そして、設定されたスキャン条件に従って3D造影スキャン及びBモードスキャンが実行される。具体的には、スキャン制御部10による制御下において送受信ユニット9から超音波プローブ3の各超音波振動子に送信信号として所定の遅延時間を伴う電気信号が印加される。この結果、各超音波振動子から送信される超音波信号により、被検体P内の走査位置に向かう超音波ビームが形成される。
【0135】
そうすると、走査位置における超音波の反射によって超音波反射信号が生じる。走査位置において生じた超音波反射信号は、所定の遅延時間を伴って超音波プローブ3の各超音波振動子により受信される。各超音波振動子において受信された超音波反射信号は電気信号の受信信号に変換され、送受信ユニット9に出力される。送受信ユニット9では、A/D変換処理及び整相加算処理を含む必要な信号処理が施される。これにより、各走査位置に対応する超音波受信データが生成される。
【0136】
このような走査位置に対応する超音波受信データの収集が、スキャン条件に従って3D造影スキャン及びBモードスキャンにより順次行われる。その結果、ボリューム領域内の各走査位置に対応する超音波受信データが3D造影スキャンによって順次収集される。加えて、3D造影スキャンの実行中において、Bモードスキャンにより対象となる領域内の各走査位置に対応する超音波受信データが順次収集される。
【0137】
3D造影スキャン用の画像処理条件としてドプラモードが選択されている場合には、3D造影スキャンによって収集された超音波受信データが、送受信ユニット9から超音波ドプラ信号としてドプラ処理部12に順次出力される。そうすると、ドプラ処理部12は、超音波ドプラ信号に基づくドプラ処理によってボリューム領域内における血流の速度、分散、パワー等の血流動態を示す超音波ドプラ画像データを生成する。生成された超音波ドプラ画像データは、超音波造影ボリューム画像データとして画像生成部13に与えられる。
【0138】
また、3D造影スキャン用の画像処理条件としてBモードが選択されている場合には、3D造影スキャンによって収集された超音波受信データがBモード処理部11に順次出力される。そうすると、Bモード処理部11は、3D造影スキャンによって収集された超音波受信データに基づくBモード処理によってボリューム領域内における造影剤の分布が描出された超音波造影ボリューム画像データを生成する。生成された超音波造影ボリューム画像データは画像生成部13に与えられる。
【0139】
一方、Bモードスキャンによって収集された超音波受信データは、送受信ユニット9からBモード処理部11に出力される。そうすると、Bモード処理部11は、超音波受信データに基づくBモード処理によって走査領域内における組織の形態が描出された超音波形態画像データを生成する。生成された超音波形態画像データは、画像生成部13に与えられる。
【0140】
また、超音波形態ボリューム画像データを生成するようにスキャン条件が設定されている場合には、Bモード処理部11は、3D造影スキャンによって収集された超音波受信データの一部に基づくBモード処理によって所定のボリューム領域に対応する超音波形態ボリューム画像データを生成する。生成された超音波形態ボリューム画像データは、画像生成部13に与えられる。
【0141】
このため、3D造影スキャン及びBモードスキャンが繰返されると、画像生成部13では時系列の超音波形態画像データ及び時系列の超音波造影ボリューム画像データが取得される。画像生成部13は、指定された表示レイアウトで超音波画像が表示されるように、時系列の超音波形態画像データ及び超音波造影ボリューム画像データに基づく表示処理を順次実行する。そして、表示処理の結果、生成された時系列の2D画像データが表示装置7に順次出力される。
【0142】
この結果、
図13に例示されるような表示レイアウトで、モニタ用の超音波形態画像とともに血流の速度、分散、パワー等の血流動態がカラー等で表示される超音波造影画像或いはグレースケールで造影剤の分布が描出される超音波造影画像が動画として表示装置7にリアルタイム表示される。このため、組織の形態が描出された超音波形態画像を参照してスキャン位置を確認しつつ3D造影スキャンを続行することができる。
【0143】
特に、超音波形態画像の生成用の超音波信号は、3D造影スキャンの実行中に収集されているため、モニタ用の超音波形態画像と超音波造影画像との間における時相差が少ない。このため、スキャン位置の確認を容易に行うことができる。また、超音波形態画像の生成用の超音波信号は、3D造影スキャンの対象となるボリューム領域よりも狭い領域から収集されている。このため、超音波造影画像のリアルタイム性を良好に維持することができる。
【0144】
また、超音波形態ボリューム画像データが生成された場合には、超音波造影ボリューム画像データのTICの生成のためのVOIの設定及び設定されたVOIの位置補正によるトラッキング用の参照画像データとして超音波形態ボリューム画像データを用いることができる。これにより、高精度なVOIの設定及びVOIのトラッキングが可能となる。
【0145】
つまり、以上のような超音波診断装置1は、3D造影スキャンの途中にBモードスキャンを実行するようにしたものである。更に、超音波診断装置1は、Bモードスキャンの走査領域を、A面方向やB面方向の中心位置における2D領域等の3D造影スキャンの走査領域よりも狭い領域に設定するようにしたものである。
【0146】
このため、超音波診断装置1によれば、超音波造影ボリューム画像データの更新レートを維持しつつモニタ用の形態画像データと超音波造影ボリューム画像データとの間における時相差を低減することができる。これにより、走査位置のオリエンテーションを正確に行うことができる。
【0147】
更に、超音波診断装置1では、3D造影スキャンによって収集された受信信号の一部を用いて超音波形態ボリューム画像データを生成することができる。このため、超音波造影ボリューム画像データのTICの生成のためのVOIの設定及び設定したVOIのトラッキングを高精度に行うことが可能となる。その結果、超音波造影ボリューム画像データのTICについても、適切なVOIについて取得することができる。
【0148】
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。