【文献】
H.Zhu, et al.,A Weighted Least Squares Reconstruction Method for PET Data Using Nonlinear Anisotropic Diffusion Regularization,Engineering in Medicine and Biology 27th Annual Conference,米国,IEEE,2006年 4月10日,pp.1794-1797
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特性決定部は、前記時刻と前記時刻の直前に前記波高値を検出した時刻との時間間隔と前記複数の波高値とに基づいて、前記減衰特性と前記出力低下特性とを決定する請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記出力低下特性は、前記光検出素子の出力可能な最大値に対する前記複数の波高値各々の割合の低下の程度を示す特性である請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
フォトンカウンティングによるX線コンピュータ断層撮影装置(Computed Tomography)の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0009】
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成の一例を示す構成図である。X線コンピュータ断層撮影装置1は、高電圧発生部10、ガントリ12、データ記憶部14、再構成部16、表示部18、入力部20、制御部22を有する。
【0010】
高電圧発生部10は、図示していない高電圧電源とフィラメント電流発生器とを有する。高電圧電源は、X線管101の陽極ターゲットと陰極フィラメントとの間に高電圧を印加する。フィラメント電流発生器は、X線管101の陰極フィラメントにフィラメント電流を供給する。
【0011】
ガントリ12には、回転支持機構が収容される。回転支持機構は、回転リング102と、回転軸Rを中心として回転自在に回転リング102を支持するリング支持機構と、リングの回転を駆動する駆動部106とを有する。回転リング102には、X線管101と、2次元アレイ型または多列型とも称されるX線検出部103が搭載される。撮影又はスキャンに際しては、ガントリ12におけるX線管101とX線検出部103との間の円筒形の撮影領域105内に、被検体が天板107に載置され挿入される。X線検出部103の出力側には、データ収集部109が接続される。データ収集部109により収集されたデータは、非接触データ伝送部111を介して、データ記憶部14に記憶される。
【0012】
X線管101は、高電圧発生部10からスリップリング113を経由して電圧の印加(以下、管電圧と呼ぶ)およびフィラメント電流の供給を受けて、X線の焦点115からX線を放射する。X線の焦点115から放射されたX線は、X線管101のX線放射窓に取り付けられたコリメータユニット117により、例えばコーンビーム形(角錐形)に整形される。X線の放射範囲119は、
図1において点線で示されている。本実施形態におけるX線管101は、回転陽極型のX線管であるとする。なお、回転陽極型のX線管以外の他の型のX線管でも本実施形態に適用可能である。以下、高電圧発生部10とX線管101とを合わせて、X線発生部と呼ぶ。なお、本実施形態は、フォトンカウンティングによるX線コンピュータ断層撮影装置1であるため、以下、X線発生部で発生されたX線のことをX線フォトンと呼ぶことにする。
【0013】
X線検出部103は、回転軸Rを挟んでX線管101に対峙する位置およびアングルで取り付けられる。X線検出部103は、フォトンカウンティング用の複数のX線検出素子を有する。複数のX線検出素子は、2次元状に配列される。ここでは、単一のX線検出素子が単一のチャンネルを構成しているものとして説明する。X線検出素子の配列方向のうち、回転軸R平行な方向をX軸とし、回転軸RおよびX軸に直角な方向をY軸とする。チャンネルナンバおよびX線検出素子のナンバは、例えば、X軸およびY軸の座標(以下、XY座標と呼ぶ)により規定される。複数のX線検出素子各々は、シンチレータと光検出素子とを有する。光検出素子の前面には、シンチレータが配置される。すなわち、光検出素子は、シンチレータの背面に設けられる。X線管101により発生され、被検体を透過したX線フォトンは、シンチレータに入射する。シンチレータは、X線フォトンの入射によりシンチレーション光を発生する。シンチレーション光は、シンチレータ固有の時間(例えば40×10
−9s)に亘って発光する。より詳細には、シンチレータは、X線フォトンのエネルギーに応じた複数のシンチレーションフォトンを発生する。
【0014】
光検出素子は、シンチレーションフォトンに基づいて電荷を発生する。光検出素子は、図示していない光電変換素子と、読み出し回路と、オペアンプとを有する。光電変換素子は、光を電荷に変換する素子である。具体的には、光電変換素子は、例えば、フォトダイオードまたは光電子増倍管(Photo Multiplyer Tube:以下、PMTと呼ぶ)などである。
【0015】
以下、説明を簡単にするために、光電変換素子は、フォトダイオードであるものとする。なお、光電変換素子がPMTである場合については、後ほど説明する。フォトダイオードは、p型層とn型層と光吸収層とを有する。フォトダイオードの光吸収層にシンチレーションフォトンが入射すると、光吸収層は、電子−正孔対を発生する。フォトダイオードに予めかけられた電圧(内部電圧)により、正孔はp型層側に、電子はn型層側にドリフトする。以下、電子が光吸収層内をドリフトする速度をドリフト速度と呼ぶ。なお、ドリフト速度は、光吸収層内をドリフトする正孔の速度であってもよい。これにより、シンチレーションフォトンにより発生された電荷は、フォトダイオードに接続されたコンデンサに蓄積される。コンデンサには、後述する読み出し回路が接続される。
【0016】
PMTは、光電面と電子増倍部と陽極とを有する。光電面は、入射したシンチレーション光により、光電子を発生する。電子増倍部は、発生した光電子を増倍し、複数の電子を発生する。陽極は、複数の電子を蓄積するコンデンサに接続される。コンデンサは、読み出し回路に接続される。複数の電子が電流として読み出される。なお、PMTは、シリコンを材料としたシリコンPMTであってもよい。
【0017】
読み出し回路は、コンデンサに蓄積された電荷を所定周期(例えば、10
−12秒)で読み出す。読み出し回路は、読み出した電荷を、後述するオペアンプに出力する。オペアンプは、読み出した電荷を電圧信号に変換する。オペアンプは、電圧信号を後述するデータ収集部109の波高値検出部に出力信号として出力する。
【0018】
データ収集部109は、
図2に示すように、波高値検出部120、波高値記憶部122、特性決定部124、波高値補正部126、アナログディジタルコンバータ(Analog to Diital Converter:以下、ADCと呼ぶ)128、カウンタ130を有する。
【0019】
波高値検出部120は、光検出素子104からの出力信号に基づいて、シンチレータへ入射した複数のX線フォトンにそれぞれ対応する複数の波高値を検出する。具体的には、波高値検出部120は、オペアンプから電圧信号が入力されるごとに、入力された電圧信号から直前に入力された電圧信号を差分した差分値を計算する。波高値検出部120は、差分値が正から負に転じたとき(以下、極大時刻と呼ぶ)、入力された電圧信号を後述する波高値記憶部122に出力する。波高値検出部120は、X線フォトンが検出された時刻として、極大時刻を後述する特性決定部124に出力する。波高値検出部120は、差分値が負で、かつ所定の閾値を下回った場合、波高値記憶部122に記憶された波高値をリセットするためのリセット信号を、波高値記憶部122に出力する。なお、波高値検出部120は、差分値が閾値を超えた際の電圧信号を、波高値記憶部122に出力してもよい。
【0020】
波高値記憶部122は、波高値検出部120で検出された複数の波高値を記憶する。波高値記憶部122に記憶された複数の波高値のうち2番目以降の波高値を、後述する波高値補正部126に出力する。なお、波高値検出部120と波高値記憶部122との機能は、複数のピークホールド回路で代用することも可能である。この時、ピークホールド回路各々は、一旦波高値を記憶すると、リセット信号が得られるまで波高値を記憶する。すなわち、ピークホールド回路の数は、記憶される波高値の数に対応する。なお、波高値記憶部122は、差分値が閾値を超えた際の電圧信号を記憶してもよい。
【0021】
以下、説明を簡単にするため、波高値記憶部122は、出力信号における2つの波高値(以下、第1、第2波高値と呼ぶ)を記憶するものとする。第1波高値は、シンチレータに入射した第1X線フォトンに対応する波高値である。第2波高値は、第1X線フォトンによるシンチレーション光が減衰している間に、シンチレータへ入射した第2X線フォトンに対応する波高値である。すなわち、第1波高値と第2波高値とは、パイルアップに関する出力信号に基づいて検出された波高値である。なお、波高値記憶部122は、パイルアップ発生時において、複数の波高値を記憶することも可能である。
【0022】
以下、パイルアップに伴う光検出素子104からの出力信号について詳述する。シンチレーション光の減衰期間にシンチレータに新たにX線フォトンが入射した場合、光電変換素子のコンデンサに蓄積される電荷量は、以前にシンチレータに入射した第1X線フォトンに関する電荷と、シンチレーション光の減衰期間に新たにシンチレータに入射した第2X線フォトンに関する電荷との和となる。これにより、オペアンプから出力される出力信号は、第1X線フォトンと第2X線フォトンとに由来する出力信号の和となる。以下、シンチレーション光の減衰期間による第1、第2X線フォトンによる出力信号の重なりのうち、第1X線フォトンによるシンチレーション光の減衰による出力信号の減衰特性を、シンチレーション光の減衰特性と呼ぶ。
【0023】
具体的には、シンチレーション光の減衰特性は、例えば、第1X線フォトンを検出した時刻(以下、第1検出時刻と呼ぶ)t
1と第2X線フォトンを検出した時刻(以下、第2検出時刻と呼ぶ)t
2との間の時間(t
2−t
1)の関数f(t
2−t
1)として定義される。関数fは、シンチレーション光の減衰を表す関数である。
【0024】
なお、シンチレーション光の減衰期間に複数のX線フォトンがシンチレータに入射する場合、シンチレーション光の減衰特性は、例えば、以下のように定義される。n番目にシンチレータに入射したX線フォトンの検出時刻をt
n、n番目のシンチレーション光の減衰期間に(n+1)番目にシンチレータに入射したX線フォトンの検出時刻をt
n+1とすると、シンチレーション光の減衰特性は、関数f(t
n+1−t
n)となる。
【0025】
シンチレーション光の減衰特性を示す関数fの具体的な形は、例えば以下のように定義される。シンチレータにおいてシンチレーション成分が1成分である場合、関数fは、例えば、
f(t
n+1−t
n)=α×exp{−(t
n+1−t
n)×β}+γ
で定義される。上式において、α、β、γは、シンチレータに固有の定数である。シンチレーション成分は、シンチレーション光の減衰特性を弁別する減衰時定数に対応する。シンチレーション成分すなわち減衰時定数が異なると、異なる減衰特性を示す。上式において、減衰時定数は、1/βである。
【0026】
シンチレーション成分が2成分である場合、関数fは、例えば、
f(t
n+1−t
n)=α
1×exp{−(t
n+1−t
n)×β
1}+γ
1
+α
2×exp{−(t
n+1−t
n)×β
2}+γ
2
で定義される。ここで、α
1、β
1、γ
1、α
2、β
2、γ
2は、シンチレータに固有の定数である。なお、上式における減衰時定数は、1/β
1および1/β
2である。
【0027】
一般的に、シンチレーション成分がm成分である場合、関数fは、例えば、
f(t
n+1−t
n)=Σ[α
i×exp{−(t
n+1−t
n)×β
i}+γ
i]
で定義される。ここで、和記号Σは、i=1からi=mまでの和となる。また、α
i、β
i、γ
iは、シンチレータに固有の定数である。なお、上式における減衰時定数は、1/β
iであり、m個の成分がある。
【0028】
図3は、パイルアップの一例を示す図である。
図3に示すように、シンチレーション光が十分に減衰しない時点aで、次のX線フォトンがシンチレータに入射bしたため、光検出素子からの出力は、出力信号の重なりで増大している。
【0029】
加えて、パイルアップが発生すると、第2X線フォトンに起因する電荷量は、パイルアップが発生していない時に発生される電荷量に比べて減少する。これにより、光検出素子104から出力される出力信号の波高値が減少する。波高値の減少の理由を、光検出素子104における光電変換素子としてフォトダイオードを例にとり説明する。なお、光電変換素子がPMTの場合、パイルアップによる波高値の減少については、後ほど詳述する。
【0030】
フォトダイオードにおけるp型層とn型層との間の距離を電子のドリフト速度で除した値(以下、ドリフト時間と呼ぶ)の間に、第2X線フォトンに由来するシンチレーション光がフォトダイオードに入射すると、新たに電子−正孔対が発生する。ドリフト速度で移動中の電子が新たに発生された正孔と衝突すると、対消滅する。これにより、本来n型層側に移動し蓄積される電荷が減少する。蓄積される電荷の減少により、出力信号の波高値が減少する。
【0031】
光電変換素子がPMTの場合、パイルアップによる波高値の減少は、以下のようにして発生する。PMTに蓄積された電荷の読み出し期間において、コンデンサの電圧は、所定のベースラインより下方に低下する。低下したコンデンサの電圧は、所定時間に亘って再充電されることにより、所定のベースラインまで回復する。所定時間内に第2X線フォトンに起因する電荷がコンデンサに充電されると、低下したコンデンサの電圧はベースラインまで回復していないため、結果として出力信号における波高値は減少する。
【0032】
以下、ドリフト時間と所定時間とをまとめて出力低下期間と呼ぶ。第1X線フォトンのシンチレータへの入射により生じた出力低下期間に、第2X線フォトンがシンチレータに入射することによりパイルアップが生じた場合、光検出素子からの出力信号における第2X線フォトンに関する波高値の低下の程度を示す特性を出力低下特性と呼ぶ。
【0033】
出力低下特性は、具体的には、以下のようにして定義される。第1X線フォトンに対応する波高値をB
1、光検出素子104から出力可能な信号の最大値をB
maxとする。出力低下特性は、第1検出時刻t
1と第2検出時刻t
2との間の時間間隔(t
2−t
1)と、B
maxに対するB
1の割合(B
1/B
max)とを用いた関数g(t
2−t
1、B
1/B
max)により定義される。すなわち、関数gは、光検出素子の出力低下特性(不感特性)を反映する関数である。関数gの具体的な形は、例えば、g(t
2−t
1、B
1/B
max)=(B
1/B
max)×exp((t
2−t
1)/T)である。ここで、Tは、出力低下期間である。光検出素子の出力低下特性を示す上記関数gの形は、一般的に光検出素子104における光電変換素子、読み出し回路、オペアンプに関する回路に依存する。このため、関数gの形は、上記関数形に限定されない。
【0034】
出力低下期間に複数のX線フォトンがシンチレータに入射する場合、出力低下特性は、例えば、以下のように定義される。n番目にシンチレータに入射したX線フォトンの検出時刻および波高値をそれぞれt
n、B
n、n番目の出力低下期間に(n+1)番目にシンチレータに入射したX線フォトンの検出時刻をt
n+1とすると、出力低下特性は、関数g(t
n+1−t
n、B
n/B
max)となる。具体的には、g(t
n+1−t
n、B
n/B
max)=(B
n/B
max)×exp((t
n+1−t
n)/T)である。光検出素子の出力低下特性を示す上記関数gの形は、一般的に光検出素子104における光電変換素子、読み出し回路、オペアンプに関する回路に依存する。このため、関数gの形は、上記関数形に限定されない。
【0035】
特性決定部124は、複数の波高値各々を検出した時刻と波高値記憶部122に記憶された複数の波高値とに基づいて、複数のX線フォトン各々によるシンチレーション光の減衰特性と、光検出素子104の出力低下特性とを決定する。特性決定部124は、決定した減衰特性と出力低下特性とを、後述する波高値補正部126に出力する。
【0036】
具体的には、特性決定部124は、第1、第2時刻に対する減衰特性を示す値(以下、減衰割合と呼ぶ)、すなわち関数fの値の第1対応表を記憶する。減衰割合は、例えば、第1波高値B
1に対する第1検出時刻と第2検出時刻との間の時間に第1X線フォトンに関する出力信号が低減する割合を示す。特性決定部124は、第1、第2時刻と第1対応表とに基づいて、減衰割合を決定する。
【0037】
特性決定部124は、第1、第2時刻および第1波高値に対する出力低下特性を示す値(以下、出力低下割合と呼ぶ)、すなわち関数gの値の第2対応表を記憶する。出力低下割合は、光検出素子104から出力可能な信号の最大値に対する第1波高値の割合が、出力低下期間を基準として第1検出時刻と第2検出時刻との間の時間に低下する割合を示す。特性決定部124は、第1、第2時刻、第1波高値と第2対応表とに基づいて、出力低下割合を決定する。なお、出力低下割合は、光電変換素子の種類に応じて適宜予め設定されてもよい。
【0038】
波高値補正部126は、特性決定部124において決定された減衰特性(減衰割合)f(t
2−t
1)と、出力低下特性(出力低下割合)g(t
2−t
1、B
1/B
max)と第1波高値B
1とを用いて、第2波高値B
2を補正する。補正された第2波高値A
2と減衰割合f(t
2−t
1)、出力低下割合g(t
2−t
1、B
1/B
max)、第1波高値B
1、第2波高値B
2との関係は、例えば、A
2=B
2/(1−g(t
2−t
1、B
1/B
max))−B
1×f(t
2−t
1)として与えられる。
【0039】
補正された第2波高値A
2をより具体的に説明すると、A
2は、(B
2−B
1×f(t
2−t
1))/(1−g(t
2−t
1、B
1/B
max))で与えられてもよい。すなわち、補正された第2波高値A
2は、以下の式で与えられる。
A
2=(B
2−B
1×f(t
2−t
1))/(1−g(t
2−t
1、B
1/B
max))
=B
2/(1−g(t
2−t
1、B
1/B
max))
−B
1×f(t
2−t
1)/(1−g(t
2−t
1、B
1/B
max))
となる。上式第1項は、
図4の(a)において、波高値B
2をパイルアップによる出力低下量aだけ持ち上げることに対応する。また、上式第2項は、
図4の(a)において、波高値B
1に関するシンチレーション光の減衰による出力の増加量bを示している。
【0040】
具体的には、波高値補正部126は、減衰割合f(t
2−t
1)、出力低下割合g(t
2−t
1、B
1/B
max)、第1、第2波高値と補正された第2波高値A
2との第3の対応表を記憶する。波高値補正部126は、減衰割合f(t
2−t
1)、出力低下割合g(t
2−t
1、B
1/B
max)、第1、第2波高値と第3の対応表とを用いて、補正された第2波高値A
2を決定する。波高値補正部126は、補正した第2波高値A
2を後述するADC128に出力する。
【0041】
パイルアップが複数のX線フォトンに起因する場合、波高値補正部126は、特性決定部124において決定された減衰特性(減衰割合)f(t
n+1−t
n)と、出力低下特性(出力低下割合)g(t
n+1−t
n、B
n/B
max)と波高値B
nとを用いて、波高値B
n+1を補正する。補正された波高値A
n+1と減衰割合f(t
n+1−t
n)、出力低下割合g(t
n+1−t
n、B
n/B
max)、波高値B
n、B
n+1との関係は、例えば、A
n+1=B
n+1/(1−g(t
n+1−t
n、B
n/B
max))−B
n×f(t
n+1−t
n)として与えられる。
【0042】
補正された波高値A
n+1をより具体的に説明すると、A
n+1は、(B
n+1−B
n×f(t
n+1−t
n))/(1−g(t
n+1−t
n、B
n/B
max))で与えられてもよい。すなわち、補正された波高値A
n+1は、以下の式で与えられる。
A
n+1=(B
n+1−B
n×f(t
n+1−t
n))/(1−g(t
n+1−t
n、B
n/B
max))
=B
n+1/(1−g(t
n+1−t
n、B
n/B
max))
−B
n×f(t
n+1−t
n)/(1−g(t
n+1−t
n、B
n/B
max))
となる。上式第1項は、波高値B
n+1をパイルアップによる出力低下量だけ持ち上げることに対応する。また、上式第2項は、波高値B
nに関するシンチレーション光の減衰による出力の増加量を示している。なお、B
n+1に関するパイルアップがB
nに影響し、かつB
n−1に関するパイルアップがB
nに影響しない場合、B
nを補正した波高値A
nは、B
n/(1−g(t
n+1−t
n、B
n/B
max))となる。
【0043】
図4は、光検出素子からの出力における第1、第2波高値と、波高値記憶部122に記憶された第1、2波高値と、補正された第2波高値とを示す図である。第1検出時刻t
1で第1波高値B
1が検出され、波高値記憶部122に記憶される。第2検出時刻t
2で第2波高値B
2が検出され、波高値記憶部122に記憶される。
図4のaは、パイルアップによる出力低下量を示している。出力低下量aは、B
2/(1−g(t
2−t
1、B
1/B
max))−B
2である。
図4のbは、t
2におけるB
1に関するシンチレーション光の減衰による波高値の増加量であって、B
1×f(t
2−t
1)を示している。これらにより、補正された第2波高値A
2が決定される。
【0044】
ADC128は、第1波高値、補正された波高値をディジタル信号(パルス)に変換する。カウンタ130は、第1波高値、補正された波高値にそれぞれ対応するX線フォトン数をカウントする。カウンタ130は、カウントしたX線フォトン数を、補正された波高値に対応するX線フォトンのエネルギー、X線検出素子のXY座標、ビュー角と対応付けられて、非接触データ伝送部111を介してデータ記憶部14に出力される。なお、X線フォトンのエネルギーの代わりに、複数のエネルギー領域(energy bin)であってもよい。この時、複数のエネルギー領域各々に含まれる複数のカウント数は加算される。
【0045】
図5は、あるビュー角に位置する一つのX線検出素子において、X線フォトンのエネルギーに対するカウント数の一例を示す図である。
図5の横軸は、第1乃至第4のエネルギー領域に分けられている。例えば、第2のエネルギー領域におけるカウント数は、
図5の斜線内のカウント数の合計となる。すなわち、エネルギー領域が4種類の場合、データ収集部109は、あるビュー角における一つのX線検出素子の出力から、4種類のカウント数によるデータを収集する事ができる。なお、エネルギー領域は、4つに限定されず任意の個数であってもよい。
【0046】
データ記憶部14は、ビュー角、X線検出素子のXY座標、X線フォトンのエネルギー、カウント数からなるリストモードデータを記憶する。なお、データ記憶部14は、X線フォトンのエネルギーごとのビュー角、チャンネル番号、カウント数からなるサイノグラムデータを記憶してもよい。
【0047】
再構成部16は、データ記憶部14に記憶された被検体の周囲一周に亘るリストモードデータセット、またはサイノグラムデータセットに基づいて、医用画像を再構成する。また、再構成部16は、X線フォトンのエネルギーに応じた複数の医用画像を再構成することができる。例えば、エネルギー領域が4種類の場合、再構成部16は、被検体の周囲一周に亘るリストモードデータセット、またはサイノグラムデータセットに基づいて、4枚の医用画像を再構成することができる。
【0048】
表示部18は、再構成部16で再構成された画像、X線コンピュータ断層撮影のために設定される条件などを表示する。
【0049】
入力部20は、操作者が所望するX線コンピュータ断層撮影の撮影条件、および被検体の情報などを入力する。具体的には、入力部20は、操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を本X線コンピュータ断層撮影装置1に取り込む。入力部20は、図示しないが、関心領域の設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等を有する。入力部20は、表示画面上に表示されるカーソルの座標を検出し、検出した座標を制御部22に出力する。なお、入力部20は、表示画面を覆うように設けられたタッチパネルでもよい。この場合、入力部20は、電磁誘導式、電磁歪式、感圧式等の座標読み取り原理でタッチ指示された座標を検出し、検出した座標を制御部22に出力する。
【0050】
制御部22は、本フォトンカウンティングX線コンピュータ断層撮影装置1の中枢として機能する。制御部22は、図示していないCPUとメモリとを備える。制御部22は、図示していないメモリに記憶された検査スケジュールデータと制御プログラムとに基づいて、X線コンピュータ断層撮影のために、図示していない寝台部および架台部と、高電圧発生部10を制御する。具体的には、制御部22は、入力部20から送られてくる操作者の指示や画像処理の条件などの情報を、一時的に図示していないメモリに記憶する。制御部22は、メモリに一時的に記憶されたこれらの情報に基づいて、寝台部及び架台部と、高電圧発生部10を制御する。制御部22は、所定の画像発生・表示等を実行するための制御プログラムを、図示していない記憶部から読み出して自身が有するメモリ上に展開し、各種処理に関する演算・処理等を実行する。
【0051】
(波高値補正機能)
波高値補正機能とは、複数の波高値各々を検出した時刻と複数の波高値とに基づいて決定された減衰特性と出力低下特性とに従って、複数の波高値を補正する機能である。以下、波高値補正機能に従う処理(以下、波高値補正処理と呼ぶ)を説明する。
【0052】
図6は、波高値補正処理の手順の一例を示すフローチャートである。
光検出素子104からの出力信号に基づいて、複数の波高値が検出される(ステップS1)。複数の波高値各々を検出した時刻が、特性決定部124に出力される。複数の波高値各々を検出した時刻と複数の波高値とに基づいて、減衰特性と出力低下特性とが決定される(ステップS2)。決定された減衰特性と出力低下特性とに従って、複数の波高値各々が補正される(ステップS3)。補正された複数の波高値それぞれに対応するX線フォトン数がカウントされる(ステップS4)。
【0053】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態におけるX線コンピュータ断層撮影装置1によれば、複数のX線フォトンにより発生したパイルアップに関する出力信号に対して、X線フォトン各々を区別し、かつX線フォトン各々のエネルギーを算出するために、X線フォトン各々に関する波高値を補正することができる。すなわち、本X線コンピュータ断層撮影装置1によれば、複数の波高値各々を検出した時刻と複数の波高値とに基づいて、シンチレーション光の減衰特性を決定することができる。加えて、本X線コンピュータ断層撮影装置1によれば、複数の波高値各々を検出した時刻と複数の波高値とに基づいて、光検出素子104の出力低下特性を決定することができる。本X線コンピュータ断層撮影装置1によれば、決定された減衰特性と出力低下特性とに従って、パイルアップに寄与した複数の波高値各々を、関連するX線フォトンのエネルギーに対応する波高値に補正することができる。
【0054】
以上のことから、本X線コンピュータ断層撮影装置1によれば、パイルアップに関する出力信号に対して、パイルアップに寄与したX線フォトンに関するカウント数を利用することができる。これにより、シンチレータに光検出素子104を組み合わせた構成においても、高計数率を確保することができる。
【0055】
なお、各実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。