(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の一面側に設けられる空冷式の熱交換器と、前記ペルチェ素子の他面側に設けられる水冷式の熱交換器とで構成されるペルチェ素子ユニットと、
前記空冷式の熱交換器に送風するファンと、
前記空冷式の熱交換器と前記ファンと内蔵し小型空調機周囲の空気を通過させる風路と、
水ポンプと、
前記水冷式の熱交換器に接続する冷却水往路と、
前記水冷式の熱交換器に接続する冷却水還路と、
交流又は直流電源に接続する電源装置と、
前記ペルチェ素子と前記電源装置とを接続する直流電流供給回路と、
前記直流電流供給回路に設けられる冷房運転用スイッチと、
前記直流電流供給回路に設けられる暖房運転用スイッチと
を備え、
前記冷却水往路は、前記小型空調機の外部にある冷却水往配管の接続口に接続され、前記冷却水還路は、外部に設置される冷却水往配管の接続口に接続され、前記水ポンプは前記冷却水往配管から前記冷却水往路を介して冷却水を吸い出し、前記水冷式の熱交換器を通した後、前記冷却水往配管に再び冷却水を戻すように働く
ことを特徴とする小型空調機。
【背景技術】
【0002】
従来、省エネルギーの観点から、全体空調を夏場は高めの設定温度、冬場は低めの設定温度として、居室の居住者それぞれの感受性に応じて居住者個別に空調空気を供給するパーソナル空調が存在する。
古くからのパーソナル空調は、居室の天井等に敷設されている全体空調の空調システムとは別に、例えば上げ床にして床下を夏場低め、冬場高めの温調空気を供給し、居住者の机位置に床吹出口を設置し、その風向を調整して居住者個別に空調するシステムや、机やパーティションに吹出口を設け、床下等のダクトにそれらを接続する居住者個別に空調するシステムが存在していた。
【0003】
しかし、これらは当初の設置コストの膨大さや、レイアウト変更への対応能力の低さから、なかなか普及しなかった。このような空調システムの例としては、例えば、床面に冷風の吹出口を設置し居住者の位置に合わせて吹出位置や気流方向を調整する方式(例えば、特許文献1の
図4参照)やパーティションに吹出口を設置する方式(例えば、特許文献1参照)がある。
ところが、近年温暖化ガス削減の社会要請等から、国の施策により、クールビズとして事務室等の居室の空調設定を夏場は28℃設定、冬場は20℃設定として空調するように推奨されている。
【0004】
しかし、夏場の室内温度を28℃に設定すると居住者の快適性は損なわれ、労働環境としては劣悪となり作業効率が大幅に落ちることとなる。上着を脱ぐことはもちろん、ネクタイを取って半袖になるというビジネス上礼節を欠く服装での対応を行ってもあまり作業効率が向上しない、という状況に陥る。
そこで、全体空調はクールビズの夏場28℃設定としても、居住者の快適性を向上するため、居室の居住者個別に局所的に冷風が供給できるパーソナル空調システムの要請が高まってきた。
【0005】
古くからのパーソナル空調システムに代わる新しいパーソナル空調システムとして、車載空調等から徐々にペルチェ素子を用いた局所空調が提案され始めている。ペルチェ素子を用いた局所空調としては、例えば、居住者各自の卓上等に個別に小型の空調機を設置する方式(例えば、特許文献2参照)が知られている。
特許文献2には、夜間電力を利用して、空調機内風路に居室の空気を通すことで、夜間電力で動作するペルチェ素子が設置された熱交換器を介して居室空気より低温の冷熱を蓄熱材に蓄冷し、昼間のピーク時には、その蓄冷した蓄熱材から、ペルチェ素子が設置された熱交換器とは別な熱交換器を介して単に水を冷媒として冷熱を取り出す、風路で2つの熱交換器がシリーズに並んだ技術が開示されている。
【0006】
また、空気の冷房暖房を行う携帯用空調機としてパッケージされ、放熱蓄熱する蓄熱用媒体をパッケージ内の密閉容器に封入し、ペルチェ素子を熱源として、空気より冷温の冷熱や空気より高温の温熱を蓄熱用媒体に溜める技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3には、ペルチェ素子やファンを駆動するのに電池又は2次電池で駆動されることも開示されている。
【0007】
また、ペルチェ素子を熱源とする、トラックのキャビン空調機の小型空調機が開示されている(例えば、特許文献4参照)。特許文献4には、水等の熱輸送媒体を、ペルチェ素子冷却側、同加熱側、(外)空気との熱交換コイルの3つのうち二つを接続して循環するように切り替える技術が開示されている。
特許文献4は、例えば、昼間は、ペルチェ素子冷却側とペルチェ素子加熱側とを結び循環し、夜間は、ペルチエ素子加熱側と外空気との熱交換コイルとを結び、蓄熱した熱を放熱する技術が開示されている。潜熱蓄熱材としてパラフィン系が用いられていることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、室側備付け空調機として、パーソナル空調機を設備しようとすると、局所のパーソナル域(各卓位置)へ、単一ダクト式中央空調機からのダク卜設備を多足に設置しなければならない。
これでは、居住者の事務机引越しに伴うレイアウト変更に追従できず、コンパクトに薄くした風路による給気圧力損失の大きさに伴って中央空調機からの給気搬送動力が大きく省エネルギーにならない。
しかも、吹出口は、パーテイションに設置されているので、各個人の作業空間を圧迫するばかりか、快適性を損なう虞がある。
【0010】
また、吹出口にダクトが接続されるため、パーテイシヨンの移動に手間がかかり、レイアウト変更等への対応ができない。
個別ではあるが、大型の空調機から分岐して各個別吹出口まで冷風を供給するので、搬送間のロスや搬送エネルギー等が必要で、必ずしも省エネルギー性に優れてはいない。
また、利用者が少なくても、大型の空調機を運転する必要があり、部分負荷時の効率低下にも無駄が生じる。
また、設備費が高価である等の問題点がある。
【0011】
また、特許文献2では、独立して機能するオールインワンのパーソナル蓄熱空調装置であるため、冷温熱を発生するペルチェ素子とヒートパイプである熱源手段と、この熱源手段が発生した冷温熱を蓄積する蓄熱手段と、この蓄熱手段に蓄熱された冷温熱を取り出す水熱媒を循環する熱交換手段と、熱源手段、蓄熱手段及び熱交換手段の動作を制御する制御手段とをそれぞれのパーソナル空調装置に備えなければならない。
その結果、特許文献2の構成では、電力ピーク(例えば、夏の14時〜16時)での使用は各空調装置の制御手段設定で可能であるが、就業時間中の冷房のための排熱蓄熱を考慮すると、蓄熱手段の容量を大きくする必要があるため、居住者各々のパーソナル域の卓上に設置でき且つ持ち運び可能な小型空調機とするのには無理がある。
また、特許文献2の構成では、熱の搬送にペルチェ素子と蓄熱手段との間にヒートパイプ、熱交換器と蓄熱手段との間に冷却水循環系をそれぞれ設けるので、システム構成が複雑で大きくなりさらに卓上設置に無理がある。
【0012】
また、特許文献3では、放熱・蓄熱媒体を密閉容器に封入するため、特許文献2と同様に、電力ピーク時での使用は可能であるが、就業時間中の使用を考慮すると、密閉容器の容量を大きくする必要があるため、居住者各々のパーソナル域の卓上に設置できかつ持ち運び可能な小型空調機とするには無理がある。
また、特許文献4では、トラックのキャビン空調機の小型空調機であるため、卓上用に転用するには、特許文献1と同様に、局所のパーソナル域(各卓位置)へ、単一ダクト式中央空調機からのダクト設備を多足に設置しなければならない等の問題点がある。
【0013】
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、空調分野においてクールビズ等で雰囲気温度が高く設定されていても、居住者の快適性を向上させるための小型空調機及びこの小型空調機を用いるパーソナル空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る小型空調機は、ペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の一面側に設けられる空冷式の熱交換器と、前記ペルチェ素子の他面側に設けられる水冷式の熱交換器とで構成されるペルチェ素子ユニットと、前記空冷式の熱交換器に送風するファンと、前記空冷式の熱交換器と前記ファンと内蔵し小型空調機周囲の空気を通過させる風路と、水ポンプと、前記水冷式の熱交換器に接続する冷却水往路と、前記水冷式の熱交換器に接続する冷却水還路と、交流又は直流電源に接続する電源装置と、前記ペルチェ素子と前記電源装置とを接続する直流電流供給回路と、前記直流電流供給回路に設けられる冷房運転用スイッチと、前記直流電流供給回路に設けられる暖房運転用スイッチとを備え、前記冷却水往路は、前記小型空調機の外部にある冷却水往配管の接続口に接続され、前記冷却水還路は、外部に設置される冷却水往配管の接続口に接続され、前記水ポンプは前記冷却水往配管から前記冷却水往路を介して冷却水を吸い出し、前記水冷式の熱交換器を通した後、前記冷却水往配管に再び冷却水を戻すように働くことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る小型空調機は、前記冷却水往路の末端部及び前記冷却水還路の末端部に、それぞれ外部にある2つの前記冷却水往配管の接続口とカップリングするカプラを備えていることを特徴とする。
本発明に係る小型空調機は、前記風路の対向する面それぞれに空冷式の熱交換器を設置し、各々の空冷式の熱交換器に前記ペルチェ素子を1つずつ合計2個配置していることを特徴とする。
本発明に係る小型空調機は、前記風路が断面矩形をしており、各内面4面それぞれに空冷式の熱交換器を設置し、各々の空冷式の熱交換器に前記ペルチェ素子を1つずつ合計4個配置していることを特徴とする。
本発明に係る小型空調機は、前記電源装置が、充電池(2次電池)で構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るパーソナル空調システムは、全体を空調する中央空気調和装置によって空調される居室と、前記居室に設置される居住者用机の各卓上に個別に設置される本発明に係る小型空調機と、前記居室の上げ床内に配設され循環する冷却水搬送路を形成する冷却水往配管及び冷却水還配管と、前記冷却水搬送路に接続される冷却水管のコイルを内蔵し且つ該コイルの周りに潜熱蓄熱材を充填した蓄熱槽と、前記冷却水搬送路に接続され冷却水を搬送する冷却水ポンプとで構成され、前記小型空調機の設置場所に対応して前記冷却水往配管にカプラを先端に設けた2つずつのタッピングを備えることを特徴とする。
本発明に係るパーソナル空調システムは、夏期においては、前記蓄熱槽が、居住者が居室に居る時間帯には前記ペルチェ素子の他面側からの排熱を冷却水にて搬送されて蓄え、居住者が居ない夜間には前記直流電流供給回路にあるスイッチが切り替わって前記ペルチェ素子の他面側が吸熱し前記排熱が居室に排出され、前記風路から排出された排熱を帯びた空気は夜間の換気により建物外へ排出され、冬期においては、前記蓄熱槽が、居住者が居室に居る時間帯には前記ペルチェ素子の他面側からの冷熱を冷却水にて搬送されて蓄え、居住者が居ない夜間には前記直流電流供給回路にあるスイッチが切り替わって前記ペルチェ素子の他面側が排熱し前記冷熱が居室に排出され、前記風路から排出された冷熱を帯びた空気は夜間の換気により建物外へ排出されることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るパーソナル空調システムは、前記居室に隣接する機械室内に、前記冷却水ポンプを内蔵する小型冷却塔を有し、前記冷却水搬送路と前記小型冷却塔内の冷却水路とが接続されていることを特徴とする。
本発明に係るパーソナル空調システムは、夏期においては、前記蓄熱槽が、居住者が居室に居る時間帯には前記ペルチェ素子の他面側からの排熱を冷却水にて搬送されて蓄え、前記蓄熱槽が排熱蓄熱容量が一杯となった際には、前記小型冷却塔を介して排熱を前記機械室に放出し、居住者が居ない夜間には前記直流電流供給回路にあるスイッチが切り替わって前記ペルチェ素子の他面側が吸熱し前記排熱が居室に排出され、前記風路から排出された排熱を帯びた空気は夜間の換気により建物外へ排出され、冬期においては、前記蓄熱槽が、居住者が居室に居る時間帯には前記ペルチェ素子の他面側からの冷熱を冷却水にて搬送されて蓄え、前記蓄熱槽が冷熱蓄熱容量が一杯となった際には、前記小型冷却塔を介して冷熱を前記機械室に放出し、居住者が居ない夜間には前記直流電流供給回路にあるスイッチが切り替わって前記ペルチェ素子の他面側が排熱し前記冷熱が居室に排出され、前記風路から排出された冷熱を帯びた空気は夜間の換気により建物外へ排出されることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るパーソナル空調システムは、前記蓄熱槽に充填される潜熱蓄熱材を30℃融点のパラフィンとすることで、前記小型空調機の前記風路から夏期においては18℃〜20℃の吹き出し冷風が、冬期においては38℃〜43℃の吹出し温風が得られることを特徴とする。
本発明に係るパーソナル空調システムは、居住者が居ない夜間の前記直流電流供給回路にあるスイッチが切り替わる代わりに、電源装置に送られる電源を直流として、昼間と夜間との直流電流の正負を入れ替えて、夏期においては、前記ペルチェ素子の他面側が吸熱し前記排熱が居室に排出され、前記風路から排出された排熱を帯びた空気は夜間の換気により建物外へ排出され、冬期においては、前記ペルチェ素子の他面側が排熱し前記冷熱が居室に排出され、前記風路から排出された冷熱を帯びた空気は夜間の換気により建物外へ排出されることを特徴とする。
本発明に係るパーソナル空調システムは、前記蓄熱槽は、前記ペルチェ素子の他面側からの排熱を冷却水を介して蓄え、一定時間利用後には、取り外して新たな前記蓄熱槽と取り替えられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る小型空調機は、冷房暖房のためのペルチェ素子ユニットと、小型のファンと、水ポンプと、電源装置と直流電流供給回路と正逆切り替え可能な2つのスイッチと、外部の冷却水往配管のタッピングに接続可能なカプラ端部の冷却水往路と冷却水還路とで構成するので、従来の蓄熱槽を各々内蔵する小型空調機に比して軽量小型化となり、持ち運びが容易で、外部の冷却水往配管のタッピングをレイアウト変更で机が移動する箇所にも備えておくことで、つなぎかえが容易で、居住者各々のパーソナル域の卓上に移動可能に簡単に設置できる。
本発明に係る小型空調機は、電源として充電可能な充電池(2次電池)を構成として追加すれば、電源線が不要となりさらに簡単に設置できる。
また、本発明に係るパーソナル空調システムでは、本発明に係る小型空調機からの排熱を、冷却水を熱搬送媒体として室単位で搬送循環し、複数の小型空調機から排熱を上流から下流にかけて熱搬送媒体で集めて搬送し、冷却水循環系の途中に蓄熱槽を設けることで、排熱を温度上昇として扱うことができ、小型空調機が内蔵する水ポンプと、中央設置の循環する冷却水ポンプとの直列運転に神経質にならずに複数の小型空調機を接続してよいシステムとなっている。排熱を上流から下流へのわずかずつ温度上昇して回収できるので、蓄熱槽内蔵の配管コイルによる熱回収も、冷却水側の温度差が取れるので熱交換効率が高い。
【0020】
本発明に係るパーソナル空調システムでは、夏期において蓄熱槽に蓄えた排熱は、居住者の居ない夜間等に居室に排気されることで、一時的に温度が上昇しても快適性を問われる状況にはなく、又夏期においても夜間は昼間よりも気温が低下し、建屋の冷却負荷によりうまく処理される。また、夜間の換気がある建物の場合、排熱を帯びた小型空調機から排出される空気は、夜間の居室換気に同伴されて建物外へ排出されることとなり、さらに熱処理が順調にされる。
また、本発明に係るパーソナル空調システムでは、全体空調側がクールビズ等で設定温度が例えば夏場28℃等と高く設定されていても、居住者の快適性を向上させるための小型空調機を設置することで、必要な人が必要なときだけ利用することができ無駄なく快適な空間を提供できる。
【0021】
また、本発明に係るパーソナル空調システムでは、装置稼働のためのエネルギー源として充電池(2次電池)を用いるために、電源に太陽光等のグリーン電力を利用することができ、炭酸ガスの増加を抑えることができる。
また、本発明に係るパーソナル空調システムでは、充電池(2次電池)を介して利用するので、太陽光発電偉力の変動や、各自が必要とする電力量の変動との整合をとるのにも対応しやすいシステムとなる。
【0022】
また、本発明に係るパーソナル空調システムでは、排熱は小型の蓄熱槽を用いてその場に溜め込み、居住者のいない時間に外部に排出できる。
また、本発明に係るパーソナル空調システムでは、排熱に関して、設備配管等の恒久設備を必要とせず、設備レイアウト変更にも柔軟に対応できる。
また、本発明に係るパーソナル空調システムでは、潜熱蓄熱材を用いることにより排熱温度が一定となり冷却能力が安定する。
【0023】
また、本発明に係るパーソナル空調システムでは、空気冷却の際に発生する排熱を、日中の暑いピーク負荷時(2〜3時間)に溜め込み、それ以外の就業時間内は小型冷却塔で排熱し、居住者が退社した時間帯に、室内へ放熱することができる。
また、本発明に係るパーソナル空調システムでは、充電池(2次電池)を利用するので電力ピークカットが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図8は、本発明に係る小型空調機1の一実施形態を示す。
本実施形態に係る小型空調機1は、一対のペルチェ素子ユニット(電子冷暖部)10A,10Bを備えている。
【0026】
ペルチェ素子ユニット(電子冷暖部)10Aは、例えば、
図1〜
図5に示すように、複数のp型の熱電半導体とn型の熱電半導体とを交互に電極を介して繋ぎ、一面13側と他面15側とが放熱面と熱伝導面とに切り替え可能なペルチェ素子(電熱変換半導体素子)11Aと、このペルチェ素子11Aの一面13側に熱的に接合される(接触している)空冷式の熱交換器(以下、第一熱交換器と称する)17Aと、ペルチェ素子11Aの他面15側に熱的に接合される(接触している)水冷式の熱交換器(以下、第二熱交換器と称する)25Aとで構成されている。
【0027】
ペルチエ素子ユニット(電子冷暖部)10Bは、例えば、
図2〜
図5に示すように、複数のp型の熱電半導体とn型の熱電半導体とを交互に電極を介して繋ぎ、一面13側と他面15側とが放熱面と熱伝導面とに切り替え可能なペルチェ素子(電熱変換半導体素子)11Bと、このペルチェ素子11Bの一面13側に熱的に接合される(接触している)第一熱交換器17Bと、ペルチェ素子11Bの他面15側に熱的に接合される(接触している)第二熱交換器25Bとで構成されている。
【0028】
本実施形態では、例えば、
図2に示すように、一対のペルチェ素子ユニット10A,10Bは、第一熱交換器17A,17B同士が所定の間隔を隔てて小型空調機1の高さ方向(
図2の紙面の上下方向)に位置するように、小型空調機1の外郭を構成する枠体に設けた支持体5上にそれぞれ固定され、第一熱交換器17A,17Bのベース部21が風路9の壁を形成するようになっている。
ペルチェ素子11A,11Bは、n型の熱電半導体から直流電流を流すと、n型の熱電半導体とp型の熱電半導体との接合部で温度低下を招く、ペルチェ冷却と、逆に、p型の熱電半導体から直流電流を流すと、p型の熱電半導体とn型の熱電半導体との接合部で温度が上昇するペルチェ加熱とを発現する。
【0029】
第一熱交換器17A,17Bは、例えば、
図3に示すように、複数のフィン部23をベース部21に設けたプレートフィン19で構成されている。プレートフィン19は、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金、高機能グラファイト等の比較的軽量で熱伝達効率が高い材料を用いて形成されている。ベース部21は、例えば、ねじや接着剤等を用いてペルチェ素子11A,11Bの一面13側に固定されている。ベース部21を、例えば、ねじを用いてペルチェ素子11A,11Bの一面13側に固定する場合には、シリコングリスのような熱伝導性のよいグリスを組み込むことも可能である。
【0030】
第二熱交換器25A,25Bは、
図1、
図4に示すように、ペルチェ素子11A,11Bの他面15側と、ペルチェ素子11A,11Bの他面15側を覆い熱的に接合される(接触している)冷却用ジャケット27とで構成されている。
冷却用ジャケット27は、ペルチェ素子11A,11Bの他面15側との間に冷却水の通路27dを形成するように、例えば、一端側が開口する矩形状のジャケット本体27aと、ジャケット本体27aの周囲に形成される側壁部27bと、ジャケット本体27aの中央部に設けられる仕切り部27cとを備えている。側壁部27b及び仕切り部27cは、ペルチェ素子11A,11Bの他面15側に接着剤27eで固定されている。仕切り部27cは、一端が側壁部27bとの間に隙間を形成し、冷却水導入管29から流入する冷却水が仕切り板27cに沿って流れを反転(Uターン)して冷却水導出管31から流出するように構成されている。
【0031】
冷却用ジャケット27は、例えば、ABS樹脂、メラミン樹脂等の比較的軽量で熱伝達効率の低い材料を用いて形成されている。冷却用ジャケット27は、接着剤27eに代えてねじを用いてペルチェ素子11A,11Bの他面15側に固定することもできる。その場合には、シリコンシーラントのような封水性のある材料を用いて密閉する。
冷却用ジャケット27には、例えば、
図1、
図4に示すように、冷却水導入管29と冷却水導出管31とが接続されている。
例えば、
図2に示すように、上段側のペルチェ素子ユニット10Aに用いられる冷却用ジャケット27の冷却水導入管29(以下、上段側の冷却水導入管29と称する)と、下段側のペルチェ素子ユニット10Bに用いられる冷却用ジャケット27の冷却水導入管29(以下、下段側の冷却水導入管29と称する)とは、下段側の冷却水導入管29に結合した分岐管33を介して水ポンプ39に連結する冷却水供給管37に接続している。
【0032】
上段側のペルチェ素子ユニット10Aに用いられる冷却用ジャケット27の冷却水導出管31(以下、上段側の冷却水導出管31と称する)と、下段側のペルチェ素子ユニット10Bに用いられる冷却用ジャケット27の冷却水導出管31(以下、下段側の冷却水導出管31と称する)とは、下段側の冷却水導出管31に結合した分岐管35を介して冷却水還管路41に接続している。
なお、
図3において、冷却水供給管37と冷却水還管路41とは紙面の垂直方向に重なっているので、冷却水還管路41しか表示されていない。
【0033】
水ポンプ39は、前段の小型空調機1又は冷却水供給側から送られてくる冷却水を第二熱交換器25A,25Bへ圧送するために、冷却水往管路43に接続されている。冷却水往管路43の端部には、雄型カプラ45を設け、前段の小型空調機1又は冷却水供給側との接続口としている。
冷却水還管路41は、第二熱交換器25A,25Bから排出された冷却水を次段の小型空調機1又は蓄熱槽又は小型冷却塔へ供給する。冷却水還管路41の端部には、雌型カプラ47を設け、次段の小型空調機1又は蓄熱槽又は小型冷却塔との接続口としている。
【0034】
なお、雄型カプラ45及び雌型カプラ47は、例えば、流体継ぎ手装置として知られており、プラグがソケットに対し、係合、離脱可能にプラグイン接続されている。
本実施形態では、カプラを雄型カプラ45及び雌型カプラ47に区別することで、冷却水の入、出を明確にしている。
各第一熱交換器17A,17Bの背面側には、周囲の空気を吸い込み、各第一熱交換器17A,17Bに供給するモータファン(軸流ファン)49が枠体3に組付部材3aを介して固定されている。モータファン49は、モータMを格納する軸部49aに複数の羽根49bを固着している。
【0035】
モータファン49を固定する枠体3には、例えば、
図2、
図3に示すように、各第一熱交換器17A,17Bの背面側から正面側に向かって、各第一熱交換器17A,17Bのベース部21間を塞ぐように封鎖板7が配置されている。両封鎖板7と上下のベース部21とで風路9が構成されている。風路9の正面側には、各第一熱交換器17A,17Bを通過する空気を排出する吹出口51を形成するための正面パネル3bが配置されている。正面パネル3bには、多数の開口が設けられている。
【0036】
小型空調機1には、例えば、
図5に示すように、交流電源に接続する主電源入力ボタン54、整流器53を設け、整流器53を介して12Vの直流電流が供給されている。なお、
図5は、本実施形態に係る小型空調機1が簡略化されているので、
図1〜
図3に示す形状構造とは異なって示されている。本実施形態では、電力供給として交流電源に充電可能な充電池(2次電池)を採用した。充電池(2次電池)の充電に太陽光発電を利用し、モータファン49や水ポンプ39を直流対応とすれば、電源コンセントも不要となる。
整流器53は、例えば、
図7、
図8に示すように、3端子レギュレータ65に接続されている。3端子レギュレータ65では、整流器53から入力される12Vの直流電流を5Vで空調機用制御装置55に出力し、空調機用制御装置55のIC駆動電源としている。
【0037】
空調機用制御装置55は、例えば、
図5、
図6に示すように、冷房運転用スイッチ61のOn/Off切換信号入力部67と、暖房運転用スイッチ63のOn/Off切換信号入力部69と、スイッチ回路71と、冷房時温度センサ(T1)57の温度計測値入力部73と、暖房時温度センサ(T2)59の温度計測値入力部75と、温度監視部77と、ペルチェ素子11A,11BのOn/Off信号を出力するペルチェ素子制御部79と、ペルチェ素子11AのOn/Off信号及び冷房暖房切換信号出力部81と、ペルチエ素子11BのOn/Off信号及び冷房暖房切換信号出力部83と、モータファン49のOn/Off信号出力部85と、水ポンプ39のOn/Off信号出力部87と、CPU89と、演算部91と、CPU89と演算部91、ペルチェ素子制御部79、温度監視部77,スイッチ回路71、モータファン49のOn/Off信号出力部85及び水ポンプ39のOn/Off信号出力部87を結ぶバス90と、LED出力部103とを備えている。
【0038】
ペルチェ素子11A,11Bの冷房暖房切換は、例えば、
図7、
図8に示すように、4つのMOSFET93,95,97,99によって構成されるHブリッジ回路の切り替えで行う。即ち、冷房時には、冷房運転用スイッチ61の投入により、
図7において矢印で示すように、MOSFET93からMOSFET99へ電流が流れ、暖房時には、暖房運転用スイッチ63の投入により、
図8において矢印で示すように、MOSFET95からMOSFET97へ電流が流れる。
なお、ペルチエ素子11A,11B及び4つのMOSFET93,95,97,99によって構成されるHブリッジ回路は、
図7、
図8の紙面の垂直方向で同じ位置に設けられるため、ペルチエ素子11Aとこのペルチェ素子11Aに連なるHブリッジ回路を示し、ペルチエ素子11Bとこのペルチェ素子11Bに連なるHブリッジ回路は省略してある。
【0039】
モータファン49及び水ポンプ39は、冷房運転用スイッチ61又は暖房運転用スイッチ63が投入されると、それぞれMOSFET101,103に電流が流れ電力が供給される。過昇温時には空調機制御装置55からの指令に基づいて電力の供給が停止される
冷房運転用スイッチ61及び暖房運転用スイッチ63は、押しボタンを押している間だけ動作状態を維持する自動復帰形のスイッチ方式を採用している。冷房運転用スイッチ61及び暖房運転用スイッチ63は、冷房運転用スイッチ61のOn/Off切換信号入力部67と、暖房運転用スイッチ63のOn/Off切換信号入力部69とを介してそれぞれスイッチ回路71に接続されている。
【0040】
冷房運転用スイッチ61を押すと、冷房運転用スイッチ61のOn/Off切換信号入力部67を介してスイッチ回路71に入力される。スイッチ回路71は、CPU89に冷房運転用スイッチ61からの入力信号を送信する。CPU89は、ペルチェ素子制御部79に冷房運転用スイッチ61の入力信号を送り、
図7に示すように、冷房回路をOnし、暖房回路をOffにする信号を送る。
そして、この状態で、再度同じ冷房運転用スイッチ61を押すと、スイッチ回路71では、既に押された冷房運転用スイッチ61の解除信号として感知し、CPU89に冷房運転用スイッチ61からの解除信号を送信する。CPU89は、ペルチェ素子制御部79に冷房運転用スイッチ61の解除信号を送り、冷房回路をOffし、暖房回路をOffのままに維持する信号を送ると共に、モータファン49及び水ポンプ39をOffとする信号を送る。
【0041】
また、先に押された冷房運転用スイッチ61とは異なる暖房運転用スイッチ63を押すと、スイッチ回路71は、後で押した暖房運転用スイッチ63が押されたことを感知し、CPU89に暖房運転用スイッチ63からの入力信号を送信する。即ち、先に押された冷房運転用スイッチ61とは異なるボタンを押すと、後に押した暖房運転用スイッチ63の入力信号に切り替わる。
【0042】
暖房運転用スイッチ63を押すと、暖房運転用スイッチ63のOn/Off切換信号入力部69を介してスイッチ回路71に入力される。スイッチ回路71は、CPU89に暖房運転用スイッチ63からの入力信号を送信する。CPU89は、ペルチェ素子制御部79に暖房運転用スイッチ63の入力信号を送り、
図8に示すように、暖房回路をOnし、冷房回路をOffにする信号を送る。
【0043】
そして、この状態で、再度同じ暖房運転用スイッチ63を押すと、スイッチ回路71では、既に押された暖房運転用スイッチ63の解除信号として感知し、CPU89に暖房運転用スイッチ63からの解除信号を送信する。CPU89は、ペルチェ素子制御部79に暖房運転用スイッチ63の解除信号を送り、暖房回路をOffし、冷房回路をOffのままに維持する信号を送ると共に、モータファン49及び水ポンプ39をOffとする信号を送る。
【0044】
また、先に押された暖房運転用スイッチ63とは異なる冷房運転用スイッチ61を押すと、スイッチ回路71は、後で押した冷房運転用スイッチ61が押されたことを感知し、CPU89に冷房運転用スイッチ61からの入力信号を送信する。即ち、先に押された暖房運転用スイッチ63とは異なるボタンを押すと、後に押した冷房運転用スイッチ61の入力信号に切り替わる。
冷房時温度センサ(T1)57及び暖房時温度センサ(T2)59は、温度監視部77に逐次測定値を送信し、CPU89が受信した測定値に基づいて演算処理を行っている。
【0045】
温度監視部77は、冷房時温度センサ(T1)57の測定温度が40℃以上、暖房時温度センサ(T2)59の測定温度が40℃以上になると、ペルチェ素子11A,11B、モータファン49及び水ポンプ39への通電を停止する信号をCPU89に送出する。CPU89は、過昇温異常と判断し、ペルチェ素子11A,11B、モータファン49及び水ポンプ39への電力の供給を停止する信号を出力する。
また、温度監視部77は、冷房時温度センサ(T1)57の測定温度が15℃以下になると、結露を防止するため、ペルチエ素子A,11Bへの電力の通電を停止する信号をCPU89に送出する。CPU89は、ペルチェ素子11A,11Bへの電力の供給を停止する信号を出力する。
【0046】
また、温度監視部77は、冷房時温度センサ(Tl)57の測定温度が17℃以上になると、ペルチェ素子11A,11Bへの通電を復帰する信号をCPU89に送出する。CPU89は、ペルチェ素子11A,11Bへの通電を復帰する信号を出力する。
スイッチ回路71には、バス90及びLED出力部103を介してLED105が接続されている。冷房時はLED105が青に点灯し、暖房時はLED105が赤に点灯し、停止時はLED105が消灯する。また、異常時にはLED105は青と赤とを同時に通電して紫を表示する。
【0047】
次に、
図9に基づいて、本実施形態に係る小型空調機1を用いるパーソナル空調システム100について説明する。なお、小型空調機1を配置する机は省略してある。
複数の小型空調機1は、機械室から居室へ冷却水が流れる冷却水往配管と、居室から機械室へ冷却水が流れる冷却水還配管とからなる一筆書きの管路である冷却水循環管路101のうち、冷却水往配管に対して、冷却水流れ方向上流側から下流側へ向けて同じ冷却水往配管から枝分かれさせる2つのタッピング毎に順次接続されている。冷却水循環管路101は、居室側配管(冷却水搬送路)101Aと機械室側配管(冷却水路)101Bとで構成されている。
【0048】
居室側配管101Aは、上げ床であるアクセスフロア内に配置され、居室内の机が配置される可能性のある任意の場所で各小型空調機1との接続ができるように、冷却水往配管の側面に所定の間隔で並べて2つのタッピングを配しそれぞれ雌型カプラ107及び雄型カプラ111を取り出せるように配置されている。
具体的には、居室内で机のレイアウトが変更になった際にも、冷却水循環管路101の冷却水往配管から各机の配置想定箇所に予め設けてある雌型カプラ107及び雄型カプラ111に、接続し直すだけで、小型空調機は容易に位置変更が可能である。冷却水循環管路101には、蓄熱槽141と小型冷却塔115とが直列に接続されている。ここで、蓄熱槽141が大きな容量を有する場合には、小型冷却塔115が内蔵する冷却水ポンプ129を外に出して、小型冷却塔115を省略したシステムも考えられる。
【0049】
本実施形態では、小型空調機1の雄型カプラ45及び雌型カプラ47に接続するために、カプラに雄型カプラ107及び雌型カプラ111を用いる場合について説明したが、小型空調機1の雄型カプラ107を雌型カプラに代え、雌型カプラ111を雄型カプラに代えても良い。
居室側配管101Aは、各小型空調機1に対する接続位置において、冷却水流れ方向上流側から先端部に雌型カプラ107を設けた冷却水往枝管109が分岐し、冷却水往枝管109は、小型空調機1の冷却水往管路43の端部に設けた雌型カプラ47に雄カプラ107を接続することによって連結されている。
【0050】
また、冷却水流れ方向下流側から先端部に雌型カプラ111を設けた冷却水還枝管113が分岐し、冷却水還枝管113は、小型空調機1の冷却水還管路41の端部に設けた雄型カプラ45に雌型カプラ111を接続することによって連結されている。
また、居室側配管101Aは、機械室に設けた小型冷却塔115内の水循環管路121で構成される機械室側配管101Bに接続されている。居室側配管101Aと機械室側配管101Bとは、居室側配管101Aの冷却水流れ方向上流側接続口に設けた雌型カプラ117に小型冷却塔115の水循環管路121の冷却水流れ方向下流側接続口に設けた雄型カプラ123を接続し、冷却水循環管路101の冷却水流れ方向下流側接続口に設けた雌型カプラ119に小型冷却塔115の水循環管路121の冷却水流れ方向上流側接続口に設けた雄型カプラ125を接続することによって連結されている。
【0051】
小型冷却塔115は、例えば、
図10に示すように、冷却水路121に雄型カプラ125から雄型カプラ123に向けて、冷却水の熱膨張を吸収する水タンク127と、冷却水循環管路101に冷却水を送る水ポンプ129と、フィン13lb,133bをそれぞれ備えた2つのラジエータ131,133とを直列に配置している。
水タンク127は、側部に水循環管路121を流れる冷却水の水位を確認する窓127aを設け、上部に注水口127bを設けている。また、水タンク127は、水循環管路121を流れる冷却水の温度を直接計測する水温センサ127cを内部に設けている。水温センサ127cは、2つのラジエータ131,133に配置したモータファン131a,131bの発停を制御するファン制御部を備える冷却塔用制御装置135に接続されている。
【0052】
冷却塔用制御装置135は、水温センサ127cが出力する温度計測値を常時監視し、水温センサ127cからの測定温度が30℃以下になったら、モータファン131a,131bを停止させる信号を出力し、モータファン131a,131bを停止させる。また、水温センサ127cからの測定温度が32℃以上になったら、モータファン131a,131bを再起動させる信号を出力し、モータファン131a,131bを再起動させる。
また、小型冷却塔115には、複数の空気取込口137が設けられている。
また、小型冷却塔115は、交流電源に接続する整流器139が設けられている。
【0053】
蓄熱槽141は、例えば、
図9に示すように、設備レイアウト変更にも柔軟に対応できるように、例えば、卓の袖又は居室の壁等に配置するなどの手段を講じて居室側配管101Aの途中に設けられている。蓄熱槽141は、内部にコイル状の冷却水伝熱管145を設け、例えば、融点約30℃のパラフィン等の潜熱蓄熱材143を充填している。
蓄熱槽141は、上部に潜熱蓄熱材143を充填するためのプラグ147が設けてある。冷却水伝熱管145は、両端部に冷却水導入口145aと冷却水導出口145bとをそれぞれ設けている。冷却水導入口145aは、雄カプラ149を設け、居室側配管101Aの冷却水下流側接続口に設けた雌型カプラ107と接続されている。冷却水導出口145bは、雌型カプラ151を設け、居室側配管101Aの冷却水流れ方向下流側接続口に設けた雄型カプラ153と接続されている。
【0054】
蓄熱槽141は、複数の小型空調機1のペルチェ素子11A,11Bの発熱側からの排熱を集めて冷却水ポンプ129の圧送で流れてくる冷却水を冷却水伝熱管145を介して潜熱蓄熱材143と間接熱交換して蓄える。また、蓄熱槽115の排熱は居住者のいない夜間等に居室に排気され、その排気は夜間に換気用のモータファン155により建物外部に排出される。
蓄熱槽141は、一定時間利用した後に簡単に取り外して新たな蓄熱槽141に取り替えることができるようにしても良い。その際は、分断された冷却水循環管路101を、雌型カプラ107と雄型カプラ153とを接続して連結する。
【0055】
このように、本実施形態に係るパーソナル空調システム100は、居住者各々のパーソナル域の卓上に設置でき、卓移動時にも持ち運び可能な小型空調機1と、その室内空気との熱交換により生じた排熱を冷却水に与えて熱搬送媒体として居室側配管101A及び小型冷却塔115の水循環管路121で構成される機械室側配管101Bを介して搬送循環し、居室側配管101Aの途中に小型の蓄熱槽141を介して循環するように構成されている。
【0056】
次に、
図11〜
図17に基づいて、本実施形態に係る小型空調機1を用いるパーソナル空調システム100の作用を説明する。なお、居室内は空気調和装置によって28℃に設定された空調が施されている。
先ず、冷房使用勝手で説明する。
図11は、就業時間の通常状態を示す。
本実施形態に係るパーソナル空調システム100では、先ず、小型冷却塔115の水ポンプ129を駆動し、冷却水循環管路101内に冷却水を循環させる。
【0057】
次に、使用される各小型空調機1では、冷房運転用スイッチ61が投入されると、水ポンプ39が駆動され、居室側配管101Aの冷却水往枝管109から冷却水を導入して第二熱交換器25A,25Bへ圧送し、冷却水を冷却水還枝管113へ排出し、再び居室側配管101Aへ戻す。
同時に、各ペルチェ素子11A,11Bには12Vの直流電流が供給され、モータファン49が駆動される。
【0058】
また、小型冷却塔115では、モータファン131a,133aを停止し、熱交換を行っていない。
また、機械室の換気用のモータファン155は、自己温度制御により室内を30℃程度を目標に運転している。
この状態で、各小型空調機1のモータファン49により導入される室内空気は、第一熱交換器17A,17Bのプレートフィン19部分と接触して熱交換されて冷却され、小型空調機1の吹出口51から冷風として吹き出される。
【0059】
この際、第一熱交換器17A,17Bのベース部21は、ペルチェ素子11A,11Bの一面(冷却面)13側を熱接触させ、ペルチェ素子11A,11Bの他面(放熱面)15側を、第二熱交換器25A,25Bを介して冷却水に接触させる。
具体的には、冷房勝手時に、第二熱交換器25A,25Bにおいて、水ポンプ39によって導入された30℃の冷却水と熱交換することで、小型空調機1から導入された27℃の室内空気を、18℃まで冷却して吹出口51から吹出し、30℃の冷却水を還り温度34℃(△t=4℃)にして冷却水還枝管113から居室側配管101Aへ戻す系が成り立つ。
【0060】
そして、各小型空調機1の冷房運転による空気からの排熱(温熱)は、冷却水循環管路101を介して蓄熱槽141へ送られ、就業時間内は蓄えられる。
具体的には、7時間程度の潜熱蓄熱ができるように蓄熱槽141内に潜熱蓄熱材143を充填して、冷却水導入口145aから入ってきた34℃の冷却水から温熱を奪って、冷却水導出口145bから30℃の冷却水にして7時間継続して冷却できる。ここで、潜熱蓄熱材143は、固相から液相へ変化する。
一方、蓄熱槽141で吸収し切れなかった室内空気の排熱(温熱)は、冷却水循環管路101を介して機械室内の小型冷却塔115へ送られ、小型冷却塔115から機械室内に放出される。機械室内の空気に排出した熱は、機械室の換気用のモータファン155によって外気へ放出される。ここで、潜熱蓄熱材143は、約90%が液相へ変化している。
【0061】
例えば、
図12に示すように冷却水循環管路101内の冷却水温度は、小型冷却塔115内の水循環管路121に設けた水タンク127内の水温センサ127cで常時計測され、計測値が逐次冷却塔用制御装置135へ送信されている。そして、冷房使用勝手側で蓄熱槽141出口側から導入される冷却水温度が32℃以上になると、冷却塔用制御装置135は、モータファン131a,133aをOnする指令を出力し、ラジエータ131,133での放熱を開始する。冷却水温度が30℃まで下がってくると、水温センサ127cからの計測値に基づいて冷却塔用制御装置135は、モータファン131a,133aをOffする指令を出力する。
【0062】
例えば、
図13に示すように、就業時間外の夜間、冷房運転状態で暖房ボタン63を押して、冷房運転から冷房運転に切り替える。これによって、各小型空調機1のペルチェ素子11A,11Bの電流向きが反対に切り替わり、室内に蓄熱を放出する。
夏でも、夜間の室内冷却により、次の日の冷房には響かない。
なお、個別の冷房ボタン63による切替操作に代えて、例えば、
図14に示すように、中央制御盤160にて交流直流変換して各小型空調機1にDC12Vを供給できる構成とし、中央制御盤160にてデイリータイマ161により、就業時間外と就業時間とを正負逆転させることで、放熱運転に移行するようにしても良い。
【0063】
中央制御盤160は、就業時間と就業時間外とをカウントするデイリータイマ161と、5V電源に接続する線165aと冷房入力部67に接続する線165bとに設けた冷房開閉部165と、5V電源に接続する線165aと暖房入力部69に接続する線167aとに設けた暖房開閉部167と、冷房開閉部165又は暖房開閉部167を開閉する信号を出力する開閉切替部169と、冷却塔用制御装置135から送られる冷房運転か暖房運転かの判定信号を入力する就業時間内運転確認部171とで構成されている。
【0064】
本実施形態では、冷却水循環管路101内の冷却水温度は、小型冷却塔115内の水循環管路121に設けた水タンク127内の水温センサ127cで常時計測され、計測値が逐次冷却塔用制御装置135へ送信されている。そこで、就業時間外の夜間になると、冷却塔用制御装置135は、中央制御盤160に内蔵するデイリータイマ161からの指令で、水温センサ127cからの計測値に基づいて就業時間内の運転状態が冷房運転であったのか暖房運転であったのかを判定する。この判定結果を就業時間内運転確認部171へ出力する。
就業時間内運転確認部171は、判定結果に基づいて就業時間内の運転状態(冷房運転又は暖房運転)を入力し、就業時間内の運転が冷房運転であれば、暖房運転に切り替え、就業時間内の運転が暖房運転であれば、冷房運転に切り替える信号を開閉切替部169へ出力する。開閉切替部169は、デイリータイマ161がタイムアップすると、就業時間外と就業時間とを正負逆転させる。
【0065】
次に、暖房使用勝手で説明する。
図15は、就業時間の通常状態を示す。
本実施形態に係るパーソナル空調システム100では、先ず、小型冷却塔115の水ポンプ129を駆動し、冷却水循環管路101内に冷却水を循環させる。
次に、使用される各小型空調機1では、暖房運転用スイッチ63が投入されると、水ポンプ39が駆動され、居室側配管101Aの冷却水往枝管109から冷却水を導入して第二熱交換器25A,25Bへ圧送し、冷却水を冷却水還枝管113へ排出し、再び居室側配管101Aへ戻す。
【0066】
同時に、各ペルチェ素子11A,11Bには12Vの直流電流が供給され、モータファン49が駆動される。
また、小型冷却塔115では、モータファン131a,133aを停止し、熱交換を行っていない。
また、機械室の換気用のモータファン155は、自己温度制御により室内を30℃程度を目標に運転している。
この状態で、各小型空調機1のモータファン49により導入される室内空気は、第一熱交換器17A,17Bのプレートフィン19部分と接触して熱交換されて加熱され、小型空調機1の吹出口51から温風として吹き出される。
【0067】
この際、第一熱交換器17A,17Bのベース部21は、ペルチェ素子11A,11Bの一面(冷却面)13側を熱接触させ、ペルチェ素子11A,11Bの他面(放熱面)15側を、第二熱交換器25A,25Bを介して冷却水に接触させる。
具体的には、暖房勝手時に、第二熱交換器25A,25Bにおいて、水ポンプ39によって導入された26℃の冷却水と熱交換することで、小型空調機1から導入された22℃の室内空気を、38℃まで加熱して吹出口51から吹出し、26℃の冷却水を還り温度24℃(△t=2℃)にして冷却水還枝管113から居室側配管101Aへ戻す系が成り立つ。
【0068】
そして、各小型空調機1の暖房運転による空気からの排熱(冷熱)は、冷却水循環管路101を介して蓄熱槽141へ送られ、就業時間内に蓄えられる。
具体的には、7時間程度の潜熱蓄熱ができるように蓄熱槽141内に潜熱蓄熱材143を充填して、冷却水導入口145aから入ってきた24℃の冷却水に相変化で温熱を与え、冷却水導出口145bから26℃の冷却水にして7時間継続して加熱できる。
【0069】
一方、蓄熱槽141で吸収し切れなかった室内空気の排熱(冷熱)は、機械室内に放出する。機械室内では、他の空調器やモータ等の発熱で冷え過ぎることはない。ここで、潜熱蓄熱材143は、約90%が固相へ変化している。
【0070】
例えば、
図16に示すように、冷却水循環管路101内の冷却水温度は、小型冷却塔115内の水循環管路121に設けた水タンク127内の水温センサ127cで常時計測され、計測値が逐次冷却塔用制御装置135へ送信されている。そして、冷房使用勝手側で蓄熱槽141出口側から導入される冷却水温度が24℃以下になると、冷却塔用制御装置135は、モータファン131a,133aをOnする指令を出力し、ラジエータ131,133での吸熱を開始する。冷却水温度が25℃まで上がってくると、水温センサ127cからの計測値に基づいて冷却塔用制御装置135は、モータファン131a,133aをOffする指令を出力する。
【0071】
例えば、
図17に示すように、就業時間外の夜間、冷房運転状態で冷房ボタン61を押して、暖房運転から冷房運転に切り替える。これによって、各小型空調機1のペルチェ素子11A,11Bの電流向きが反対に切り替わり、室内に冷熱を放出する。
冬でも、夜間の室内残留熱により、次の日の暖房には響かない。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、暖房時において、各小型空調機1では、モータファン49により導入される室内空気と、第一熱交換器17A,17Bのプレートフィン19とを接触させて熱交換して室内空気を冷却し冷風を各小型空調機1の吹出口51から吹き出すことができる。第一熱交換器17A,17Bのベース部21はペルチエ素子11A,11Bの一端面(冷却面)13側を熱接触させ、ペルチェ素子11A,11Bの他端面(放熱面)15側は、冷却水に接触させる。ペルチェ素子11A,11Bへ電力供給することで、冷却水温度よりはるかに低い温度に空気を冷却できる。
【0073】
また、本実施形態によれば、暖房時において、各小型空調機1では、モータファン49により導入される室内空気と、第一熱交換器17A,17Bのプレートフィン19とを接触させて熱交換して室内空気を加熱し温風を各小型空調機1の吹出口51から吹き出すことができる。冷房使用勝手とはペルチェ素子11A,11Bへの直流電流方向を反対にして、第一熱交換器17A,17Bのベース部21はペルチェ素子11A,11Bの他端面(放熱面)15側を熱接触させ、ペルチェ素子11A,11Bの一端面(冷却面)13側は、冷却水に接触させる。ペルチェ素子11A,11Bへ電力供給することで、モータファン49により導入される室内空気温度よりはるかに高い温度に空気を暖房できる。同時に、モータファン49により導入される冷却水温度を、導入時の冷却水温度よりはるかに低い温度に空気を冷却できる。
【0074】
また、本実施形態によれば、冷房運転において、潜熱蓄熱材143を充填した小型の蓄熱槽141に、複数の小型空調機1からの排熱を集めて水ポンプ129で流れてくる冷却水と、潜熱蓄熱材143とを間接熱交換して、冷房による空気からの排熱を、就業時間内は蓄えることができる。
また、本実施形態によれば、暖房運転において、潜熱蓄熱材143を充填した小型の蓄熱槽141に、複数の小型空調機1からの排熱(冷熱)を集めて水ポンプ129で流れてくる冷却水と、潜熱蓄熱材143とを間接熱交換して、暖房による空気からの排熱を、就業時間内は蓄えることができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、蓄熱槽141と居室側配管101Aで直列に小型冷却塔115を設置し、蓄熱槽141で吸収し切れなかった室内空気の排熱を、居室外の、例えば、機械室内に放出することができる。機械室内の空気に排出した熱は、機械室排気で外気へ放出される。
また、本実施形態によれば、就業時間外の夜間において、小型空調機1のペルチエ素子11A,11Bの電流向きを反対に切り替えて、室内に蓄熱を放出することができる。夏でも、夜間の室内冷却により、次の日の冷房には響かない。
【0076】
また、本実施形態によれば、室内の卓のレイアウト変更にも、冷却水循環管路101から各卓の配置想定箇所に予め設けてある冷却水往枝管109に設けた雌型カプラ107と、冷却水還枝管113に設けた雄型カプラ111とに、接続し直すだけで、容易に変更可能である。
また、本実施形態によれば、電力供給として交流電源に充電可能な充電池(2次電池)を採用したので、充電に太陽光発電を利用すれば、電源コンセントも不要となる。
【0077】
また、本実施形態によれば、冷房運転において、潜熱蓄熱材143を充填した小型の蓄熱槽141に、複数の小型空調機1からの排熱を集めて水ポンプ129で流れてくる冷却水と、潜熱蓄熱材143とを間接熱交換して、冷房による空気からの排熱を、日中の暑いピーク負荷時(2〜3時間)に溜め込み、それ以外の就業時間内は小型冷却塔115で排熱し、居住者が退社した時間帯に、室内へ放熱することができる。
本実施形態によれば、暖房運転において、潜熱蓄熱材143を充填した小型の蓄熱槽141に、複数の小型空調機1からの排熱を集めて水ポンプ129で流れてくる冷却水と、潜熱蓄熱材143とを間接熱交換して、暖房による空気からの排熱を、日中の暑いピーク負荷時(2〜3時間)に溜め込み、それ以外の就業時間内は冷却塔で吸熱し、居住者が退社した時間帯に、室内へ放冷することができる。
【0078】
また、本実施形態では、例えば、2〜3時間程度の潜熱蓄熱ができるように潜熱蓄熱材143を蓄熱槽141へ充填して、タイマーで水ポンプ129及び小型空調機1のオンオフを行うことができる。
例えば、冷房使用勝手では、潜熱蓄熱材143を充填して、内部にコイル状の冷却水伝熱管145を設けた小型の蓄熱槽141を冷却水メイン管に直列に接続することで、複数の小型空調機1からの排熱を集めて水ポンプ39で圧送で流れてくる冷却水と、潜熱蓄熱材143とを間接熱交換する。
【0079】
この構成で冷房による空気からの排熱を、就業時間内のピーク時間2〜3時間の所定時間分蓄える。
具体的には、34℃で入ってきた冷却水から温熱を奪って、冷却水出口温度を30℃にして2〜3時間継続して冷却できる。
以上のように、本実施形態によれば、電力供給として交流電源に充電可能な充電池(2次電池)を採用して、冷房又は暖房による空気からの排熱を、日中の暑いピーク負荷時(2〜3時間)に溜め込むので、商用電力を利用する従来の小型空調機を用いるパーソナル空調システムと比べて、電力需要のピークにあたる時間帯の電力消費を低く抑えることができる。
【0080】
なお、上記実施形態では、一対のペルチェ素子ユニット(電子冷暖部)10A,10Bをそれぞれの第一熱交換器17A,17Bを上下方向で対峙させる構造の小型空調機1について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、それぞれの第一熱交換器17A,17Bを左右方向で対峙させる構造の小型空調機1とすることも可能である。また、例えば、2組の一対のペルチェ素子ユニット(電子冷暖部)10A,10Bをそれぞれの第一熱交換器17A,17Bを上下方向で対峙させる構造の小型空調機としても良い。この場合には、それぞれの第一熱交換器17A,17Bは逆三角形状の構造を呈している。
また、上記実施形態では、1本の冷却水循環管路で冷却水の冷却水往路と冷却水還管路とを接続する場合について説明したが,本発明はこれに限らず、冷却水往路と冷却水還管路とをそれぞれ平行に配置しても良い。