(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の無停電電源装置において、例えばモータを備えるノンインバータ冷蔵庫等、突入電流の大きい負荷が電源出力部に接続された場合、この負荷を起動する際に過電流が電源入力部に入力されることがある。しかしながら、一般に、サーキットブレーカーの電流閾値は電流が流れた時間に関わらず一定に設定されているため、電流閾値を超える過電流が電源入力部に入力されると、過電流検出部は電源入力部と切替部との接続を即時に遮断してしまう。
【0006】
このように、特許文献1の無停電電源装置では、例えば突入電流の大きい負荷を起動する場合等、交流電流の異常でない場合に電源入力部と切替部との接続が遮断されるという誤作動が生じることがある。
【0007】
そこで、本発明は、誤作動の発生を低減することが可能な蓄電装置及びその制御プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、負荷に対して電力を供給する蓄電装置であって、リチウムイオン蓄電池と、外部電源からの電力を負荷に供給する外部電力供給モードと、リチウムイオン蓄電池からの電力を負荷に供給する電池電力供給モードとを切り替える切替部と、外部電源と切替部とを電気的に接続する接続経路に設けられるとともに、過電流が接続経路に所定時間流れた場合、外部電源と切替部との接続を遮断する遮断手段と、電流閾値以上の大きさの電流が接続経路に流れ、且つ電流閾値以上の大きさの電流を許容する許容時間が経過した場合に、外部電源と切替部との接続を遮断するよう遮断手段を制御する制御部と、を備える。電流閾値は、許容時間が長くなると電流閾値が小さくなるよう、許容時間に応じて変化する。
【0009】
上記蓄電装置の制御部は、電流閾値以上の大きさの電流が外部電源から切替部に流れた場合、許容時間が経過する前までは、外部電源と切替部との接続を遮断しないよう遮断手段を制御する。しかも、外部電源と切替部との接続を遮断するか否かの判断に用いられる電流閾値は、許容時間が長くなると電流閾値が小さくなるよう、許容時間に応じて変化する。このような構成によれば、例えばモータを備える負荷等、突入電流の大きい負荷が蓄電装置に接続され、この負荷の起動時において大きな電流が流れた場合であっても、ある程度の時間であれば当該電流が許容される。すなわち、このような場合であっても、外部電源と切替部との接続が即時に遮断されるのを抑制することができ、その結果、蓄電装置における誤作動の発生を低減することができる。
【0010】
上記蓄電装置は、さらに、接続経路に設けられるとともに、過電流が流れた場合、遮断手段よりも後に外部電源と切替部との接続を遮断する別の遮断手段、を備えていてもよい。このように複数の遮断手段を設けることにより、切替部等を過電流から確実に保護することができる。
【0011】
上記蓄電装置において、電流閾値は、予め設定され、別の遮断手段の定格電流値以下の大きさの非過電流閾値と、予め設定され、別の遮断手段の定格電流値よりも大きい過電流閾値と、を含んでいてもよい。このような過電流閾値を設定することにより、突入電流等に起因する外部電源と切替部との接続の遮断をより確実に抑制することができる。
【0012】
上記蓄電装置において、電流閾値は、複数の過電流閾値を含んでいてもよい。このように複数の過電流閾値を段階的に設定することで、外部電源から蓄電装置に入力される電流の大きさに応じて、適切な許容時間で外部電源と切替部との接続を遮断することができる。
【0013】
上記蓄電装置において、複数の過電流閾値は、電流Iを縦軸にとり時間tを横軸にとった座標系において、次の式(1)で表される曲線に沿って設定されてもよい。ここで、kは、上記座標系において次の式(1)で表される曲線が別の遮断手段の動作特性曲線よりも下方に位置するよう定められる定数である。
【数1】
【0014】
上記構成によれば、過電流閾値が規則的に設定されるため、蓄電装置が許容可能な入力電流の大きさ及び時間を容易に把握することができる。
【0015】
上記蓄電装置において、制御部は、蓄電装置の状態を検出し、蓄電装置の状態に応じて電流閾値を設定してもよい。この構成によれば、蓄電装置の状態に応じた適切な電流閾値を用いて、遮断手段の動作を制御することができる。
【0016】
上記蓄電装置の状態は、接続経路を流れる電流値を含んでいてもよい。また、制御部は、検出された電流値よりも電流閾値が大きくなるように電流閾値を設定することができる。この構成によれば、外部電源から入力される電流に応じた適切な電流閾値によって、遮断手段の動作を制御することができる。
【0017】
上記蓄電装置の状態は、当該蓄電装置内の温度を含んでいてもよい。また、制御部は、検出された温度が上昇すると電流閾値の値を小さくすることができる。この構成によれば、蓄電池内の温度が高温になった場合には、外部電源と切替部との接続を素早く遮断することができる。
【0018】
本発明は、負荷に対して電力を供給する蓄電装置の制御プログラムであって、蓄電装置は、リチウムイオン蓄電池と、外部電源からの電力を負荷に供給する外部電力供給モードと、リチウムイオン蓄電池からの電力を負荷に供給する電池電力供給モードとを切り替える切替部と、外部電源と切替部とを電気的に接続する接続経路に設けられるとともに、過電流が接続経路に所定時間流れた場合、外部電源と切替部との接続を遮断する遮断手段と、を備える。制御プログラムは、電流閾値以上の大きさの電流が接続経路に流れ、且つ電流閾値以上の大きさの電流を許容する許容時間が経過した場合に、外部電源と切替部との接続を遮断するよう遮断手段を制御する機能、をコンピュータに実行させる。電流閾値は、許容時間が長くなると電流閾値が小さくなるよう、許容時間に応じて変化する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蓄電装置の誤作動の発生を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図中同一又は相当する構成については同一の符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
【0022】
[蓄電装置の構成]
図1に示すように、本実施形態に係る蓄電装置1は、リチウムイオン蓄電池11と、切替部12と、遮断手段13と、別の遮断手段14と、制御部15と、を備えている。蓄電装置1は、
図2に示すように、電池管理部16と、電力供給部17と、変換部18と、通信部19と、電流検出器Dと、整流器Rと、をさらに備えていてもよい。リチウムイオン蓄電池11、切替部12、遮断手段13及び14、制御部15、電池管理部16、電力供給部17、変換部18、通信部19、電流検出器D、並びに整流器Rは、筐体としてのフレーム4内に収容されている。蓄電装置1は、外部電源としての電力系統からの交流電力が交流入力端子2を介して入力されるとともに、交流出力端子3を介して交流電力を負荷20に出力する。以下、蓄電装置1の構成例について具体的に説明する。
【0023】
(リチウムイオン蓄電池)
蓄電装置1は、1以上のリチウムイオン蓄電池11を含む。蓄電装置1が複数のリチウムイオン蓄電池11を含む場合、例えば
図2に示すように、複数のリチウムイオン蓄電池11によって、電池パック110a,110bが構成されていてもよい。各電池パック110a、110bには監視部111a,111bを設けることができる。
【0024】
各監視部111a,111b及び後述する電池管理部16は、交流入力端子2に対して絶縁されずに接続される。そのため、各監視部111a,111b及び電池管理部16は、交流入力端子2に対する非絶縁部、すなわち、交流電力が入力される一次側で動作する。
【0025】
各監視部111a,111bは、電池パック110a、110bに含まれる各リチウムイオン蓄電池11の状態を監視する。各監視部111a,111bは、例えば、リチウムイオン蓄電池11の電池温度、電池電流、電池電圧、残量等を検出する。各監視部111a,111bは、検出したリチウムイオン蓄電池11の状態を示す信号又はデータを電池管理部16に送信する。
【0026】
監視部111a,111bは、それぞれ、スイッチ112a,112bを備えていてもよい。監視部111a,111bは、リチウムイオン蓄電池11の異常を検出した場合、スイッチ112a,112bをOFFにし、後述する変換部18とリチウムイオン蓄電池11との接続を遮断する。
【0027】
なお、
図2の例では、蓄電装置1に2つの電池パック110a,110bが設けられているが、蓄電装置1には、電池パックを1つだけ設けてもよいし、3以上の電池パックを設けることもできる。また、リチウムイオン蓄電池11は、必ずしも電池パックの形態で蓄電装置1に設けられる必要はなく、要求される電力や使用環境等を考慮した適当な形態で蓄電装置1に組み込まれていればよい。
【0028】
(切替部)
切替部12は、電力系統からの電力を負荷20に供給する外部電力供給モードと、リチウムイオン蓄電池11からの電力を負荷20に供給する電池電力供給モードとを切り替える。切替部12は、例えば、電力系統からの交流電力の低下又は停止を検出した場合等、外部電力供給モードから電池電力供給モードに切り替える際、電力系統と負荷20との接続をリチウムイオン蓄電池11と負荷20との接続に切り替える。また、切替部12は、例えば、電力系統が異常から回復した場合等、電池電力供給モードから外部電力供給モードに切り替える際、リチウムイオン蓄電池11と負荷20との接続を電力系統と負荷20との接続に切り替える。
【0029】
切替部12は、特に限定されるものではないが、例えばリレー等、公知の切替スイッチによって構成することができる。例えば、外部電力供給モードでは、電力系統と負荷20との接続を確保する一方、電池電力供給モードでは、リレーを切り替えることにより、電力系統と負荷20との接続を遮断するとともにリチウムイオン蓄電池11と負荷20とを接続することができる。
【0030】
本実施形態において、切替部12における外部電力供給モードと電池電力供給モードとの切替制御は、制御部15によって行われる。ただし、制御部15とは別に専用回路を設け、この専用回路によって切替部12における切替制御を行ってもよい。
【0031】
(遮断手段)
遮断手段13は、接続経路Pに設けられる。本実施形態では、遮断手段13は、別の遮断手段14と切替部12との間に設けられている。ただし、遮断手段13は、遮断手段14と電力系統との間に設けられていてもよい。遮断手段13は、過電流が接続経路Pに流れた際、遮断手段14よりも先に電力系統と切替部12との接続を遮断する。なお、「過電流」は、例えば、遮断手段14の定格電流を超える電流である。ただし、特にこれに限定されず、予め定めた任意の電流値を超える電流を「過電流」とすることもできる。
【0032】
遮断手段13は、外部からの制御に応じて配線を遮断する遮断器であり、例えばリレー等のスイッチを含む。遮断手段13は、制御部15の制御に応じてスイッチのON/OFFを切り替える。
【0033】
(別の遮断手段)
遮断手段14は、電力系統と切替部12とを電気的に接続する接続経路Pに設けられる。遮断手段14は、過電流が接続経路Pに所定時間流れた際、電力系統と切替部12との接続を遮断する。ただし、遮断手段14は、遮断手段13よりも後に電力系統と切替部12との接続を遮断するよう構成されている。すなわち、遮断手段13によって電力系統と切替部12との接続が遮断された場合、遮断手段14は、電力系統と切替部12との接続を遮断するための動作を行わない。
【0034】
遮断手段14は、配線を遮断するための仕組みを自身で有し、外部からの制御を特に要しない配線用遮断器である。遮断手段14としては、特に限定されるものではないが、例えば、ブレーカーや、スローブローヒューズ等の各種ヒューズ等を使用することができる。遮断手段14は、配線に流れる電流値と、配線を遮断するまでの遮断時間とで規定される動作特性を有する。遮断手段14の動作特性は、通常、電流を縦軸、時間を横軸にとった座標系において、反比例的に変化する動作特性曲線によって表される。すなわち、接続経路Pに過電流が流れた後、電力系統と切替部12との接続を遮断手段14が遮断するまでの時間は、過電流の大きさが大きくなるほど短く、過電流の大きさが小さくなるほど長い。
【0035】
(制御部)
制御部15は、蓄電装置1の動作を制御する。制御部15は、例えば、リチウムイオン蓄電池11の充放電制御や、切替部12における外部電力供給モードと電池電力供給モードとを切替制御を行う。制御部15は、遮断手段13の動作も制御する。制御部15による遮断手段13の制御の詳細については後述する。
【0036】
制御部15は、例えば、専用又は汎用プロセッサ、及びメモリを有していてもよい。制御部15において、メモリに記憶された制御プログラムをプロセッサが実行することにより、リチウムイオン11、切替部12、及び遮断手段13等を制御することができる。
【0037】
(電池管理部)
上述したように、電池管理部16は、監視部111a,111bからリチウムイオン蓄電池11の状態を示す信号又はデータを受信することができる。電池管理部16が受信したリチウムイオン蓄電池11の状態を示す信号又はデータは、例えば、制御部15及び/又は通信部19を通じて外部へ発信される。
【0038】
(電力供給部)
電力供給部17は、交流入力端子2から入力された電力を電源として、蓄電装置1の各部に電力を供給する。電力供給部17は、例えば、交流入力端子2、制御部15、電池管理部16、及び変換部18に接続される。電力供給部17は、さらに、電池パック110a、110bの各監視部111a,111bや通信部19に接続されていてもよい。電力供給部17は、交流入力端子2から入力された電力を適当な電圧に変換し、蓄電装置1の各部に出力する。
【0039】
このような構成により、蓄電装置1内で消費される電力を、リチウムイオン蓄電池11の電力ではなく外部からの電力でまかなうことができる。そのため、リチウムイオン蓄電池11からより多くの電力を負荷20へ供給することができる。ただし、蓄電装置1は、交流入力端子2から入力される電力と、リチウムイオン蓄電池4から供給される電力とを併用する構成又はこれらを切り替えて用いる構成とすることもできる。
【0040】
(変換部)
変換部18は、交流入力端子2から入力された交流電力を直流電力に変換してリチウムイオン蓄電池11へ出力する。また、変換部18は、リチウムイオン蓄電池11から出力された直流電力を交流電力に変換する。
【0041】
変換部18は、例えば、インバータ181と及びDC/DCコンバータ182を備えることができる。インバータ181は、交流入力端子2、交流出力端子3、及びDC/DCコンバータ182に接続されている。インバータ181は、整流器Rを介して交流入力端子2から入力された交流電力を直流電力に変換し、DC/DCコンバータ182に出力する。また、インバータ181は、DC/DCコンバータ182から入力された直流電力を交流電力に変換し、交流出力端子3を介して負荷20に供給する。
【0042】
なお、交流出力端子3は、例えば、負荷20を接続可能なコンセントであってもよい。交流入力端子2及び交流出力端子3の形態は、特定のものに限定されない。
【0043】
DC/DCコンバータ182は、インバータ181が出力した直流電力の電圧をリチウムイオン蓄電池11に適合する電圧に変え、その直流電力をリチウムイオン蓄電池11に出力する。また、DC/DCコンバータ182は、リチウムイオン蓄電池11が出力した直流電力の電圧を負荷20に適合する電圧に変え、その直流電力をインバータ181へ出力する。
【0044】
このように変換部18をトランスレス方式に構成することで、変換部18の小型化を図ることができる。トランスレス方式の変換部18におけるインバータ181及びDC/DCコンバータ182の回路構成は、適宜決定すればよい。
【0045】
なお、変換部18の構成は上述のものに限定されない。例えば、変換部18は、交流電力を直流電力に変換する整流器と直流電力を交流電力へ変換するインバータとの組み合わせや、双方向インバータ等によって構成することもできる。
【0046】
(通信部)
通信部19は、蓄電装置1が外部とデータ通信を行うための通信インタフェースである。通信部19と外部との通信は、無線通信によって行われてもよい。また、通信部19は、例えば、外部のルータを介して、インターネット等のネットワークに接続された外部機器と通信することができる。
【0047】
上述したように、通信部19は、電池管理部16から受信したリチウムイオン蓄電池11の状態を示す信号又はデータを、例えば外部の管理装置(図示略)等に送信する。通信部19は、さらに、蓄電装置1の識別情報、位置を示す情報、他の機器との接続状態の情報等の外部の管理装置に送信してもよい。
【0048】
また、通信部19は、リチウムイオン蓄電池11の状態を示す信号又はデータに基づいて外部の管理装置が生成した制御データを受信してもよい。通信部19は、この制御データを制御部15に送信することができる。制御部15は、受信した制御データに基づいてリチウムイオン蓄電池11の動作の制御を行ってもよい。
【0049】
[蓄電装置の動作]
次に、上述のように構成された蓄電装置1の動作について説明する。本実施形態では、特に、制御部15による遮断手段13の制御について詳細に説明する。
【0050】
図3は、制御部15による遮断手段13の制御処理を示すフロー図である。制御部15は、電流検出器Dを用いて接続経路Pに流れる電流を検出する(ステップS1)。より詳細には、電力系統と切替部12との接続経路Pに流れる電流、すなわち、電力系統から交流入力端子2を介して蓄電装置1に入力される電流を電流検出器Dが常時又は定期的に検出し、検出された電流値が電流検出器Dから制御部15に入力される。なお、電流検出器Dの構成は特に限定されるものではなく、例えば抵抗器等、公知の機器を用いて電流検出器Dを構成することができる。
【0051】
制御部15は、検出電流の大きさが電流閾値以上であるか否かを判断する(ステップS2)。制御部15は、予め設定された複数の電流閾値を記憶している。各電流閾値は、許容時間と対応づけられている。より詳細には、制御部15がステップS2の処理で用いる電流閾値は、許容時間が長くなると電流閾値が小さくなるよう、許容時間に応じて定められている。許容時間は、各電流閾値以上の大きさの電流が接続経路Pに流れるのを許容することができる時間である。
【0052】
複数の電流閾値は、例えば、遮断手段14の定格電流値以下の大きさの非過電流閾値と、遮断手段14の定格電流値よりも大きい過電流閾値と、を含んでいてもよい。制御部15は、少なくとも1つの過電流閾値を記憶していればよいが、好ましくは複数の過電流閾値を記憶する。また、制御部15は、1以上の非過電流閾値を記憶していればよい。1つの非過電流閾値が制御部15に記憶されている場合、この非過電流閾値は、遮断手段14の定格電流より小さい値であることが好ましい。
【0053】
制御部15は、検出電流の大きさが複数の電流閾値のいずれか以上であった場合(ステップS2でYESの場合)、検出電流の大きさ以下の電流閾値のうち最大の電流閾値に対応する許容時間が経過したかどうか判断する(ステップS3)。以下、検出電流の大きさ以下の電流閾値のうち最大の電流閾値を最大電流閾値と称する。
【0054】
接続経路Pにおいて最大電流閾値以上の電流が検出され、且つ最大電流閾値に対応する許容時間が経過した場合、すなわち、最大電流閾値以上の電流がこれに対応する許容時間だけ流れた場合(ステップS3でYESの場合)、制御部15は、遮断手段13を動作させて電力系統と切替部12との接続を遮断する(ステップS4)。具体的には、制御部15は、電力系統と切替部12との接続を遮断するための電磁信号を遮断手段13に送り、この電磁信号によって遮断手段13のスイッチをONからOFFに切り替える。
【0055】
一方、接続経路Pにおいて最大電流閾値以上の電流が検出されたが、最大電流閾値に対応する許容時間が経過する前に、接続経路Pに流れる電流が最大電流閾値よりも低下したことが検出された場合(ステップS2でYES且つステップS3でNOの場合)、制御部15は、電力系統と切替部12との接続を遮断するための電磁信号を遮断手段13に送信しない。制御部15は、電力系統と切替部12との接続の遮断を行わず、ステップS1に戻って接続経路Pにおける電流検出を継続する。その後の処理(ステップS2〜ステップS4)は既に説明した通りである。
【0056】
なお、制御部15が専用又は汎用プロセッサ、及びメモリによって構成される場合、メモリに記憶された制御プログラムをプロセッサが実行することにより、ステップS1〜ステップS4の処理が行われてもよい。
【0057】
ここで、ステップS2〜ステップS4の処理について、
図4も参照しつつより具体的に説明する。
【0058】
図4において符号OC
13が示す線は、電流Iを縦軸、時間tを横軸にとった座標系において、制御部15によって制御される遮断手段13の動作特性線を表している。OC
14は、遮断手段14の動作特性曲線である。OC
psは、電力系統に含まれる分電盤(図示略)の配線用遮断器(ブレーカー)の動作特性曲線である。
【0059】
図4の座標系において、遮断手段13の動作特性線OC
13は、遮断手段14の動作特性曲線OC
14よりも下方に位置している。すなわち、
図4は、遮断手段14の定格電流を超える過電流が接続経路Pに流れた場合に、遮断手段14が動作するよりも先に遮断手段13が動作し、遮断手段13によって電力系統と切替部12との接続が遮断されることを示している。なお、
図4の座標系において、分電盤の配線用遮断器の動作特性曲線OC
psも、遮断手段13の動作特性線OC
13より上方に位置している。
【0060】
遮断手段13の動作特性線OC
13には、3つの電流閾値Th
ex1,Th
ex2,Th
Nexが存在する。電流閾値Th
ex1,Th
ex2は、遮断手段14の定格電流値よりも大きい過電流閾値である。電流閾値Th
Nexは、遮断手段14の定格電流値以下の大きさである非過電流閾値である。電流閾値Th
Nexは、遮断手段14の定格電流と同じ値に設定されていてもよいし、遮断手段14の定格電流よりも小さい値に設定されていてもよい。
【0061】
過電流閾値Th
ex1,Th
ex2及び非過電流閾値Th
Nexは、それぞれ、許容時間t
ex1,t
ex2,t
Nexと対応づけられている。過電流閾値Th
ex1,Th
ex2及び非過電流閾値Th
Nexの関係は、Th
ex1>Th
ex2>Th
Nexで表される。許容時間t
ex1,t
ex2,t
Nexの関係は、t
ex1<t
ex2<t
Nexで表される。すなわち、
図4の例において、許容時間が短くなると電流閾値が大きくなるように、電流閾値が許容時間に応じて変化している。
【0062】
例えば、過電流閾値Th
ex1以上の大きさの電流が検出された場合、許容時間t
ex1が経過するまでは、制御部15は当該電流が流れるのを許容する。過電流閾値Th
ex1以上の大きさの電流が許容時間t
ex1だけ流れると、制御部15から遮断手段13に電磁信号が送信される。遮断手段13は、この電磁信号を受けてスイッチをOFFにし、電力系統と切替部12との接続を遮断する。
【0063】
上記の場合、検出電流の大きさは、過電流閾値Th
ex1以上であるため、過電流閾値Th
ex2及び非過電流閾値Th
Nexも当然超えている。しかしながら、ステップS2における判断には、検出電流の大きさ以下の電流閾値Th
ex1,Th
ex2,Th
Nexのうち最大の電流閾値Th
ex1が使用される。つまり、制御部15は、電流閾値Th
ex1に対応する許容時間t
ex1が経過したか否かを判断し、許容時間t
ex1が経過した場合に、遮断手段13を制御して電力系統と切替部12との接続を遮断する。
【0064】
許容時間t
ex1が経過しないうちに接続経路Pにおける電流が過電流閾値Th
ex1よりも低下したことが検出された場合、制御部15は、遮断手段13を動作させず、電力系統と切替部12との接続を遮断しない。ただし、検出電流が過電流閾値Th
ex1よりも低下した場合であっても、過電流閾値Th
ex2以上又は非過電流閾値Th
Nex以上であれば、以下で説明するように、電力系統と切替部12との接続が遮断されることがある。
【0065】
過電流閾値Th
ex1よりも小さく過電流閾値Th
ex2以上の大きさの電流が検出された場合、許容時間t
ex2が経過するまでは、制御部15は当該電流が流れるのを許容する。過電流閾値Th
ex1より小さく過電流閾値Th
ex2以上の大きさの電流が許容時間t
ex2だけ流れると、制御部15から遮断手段13に電磁信号が送信される。遮断手段13は、この電磁信号を受けてスイッチをOFFにし、電力系統と切替部12との接続を遮断する。
【0066】
許容時間t
ex2が経過しないうちに接続経路Pにおける電流が過電流閾値Th
ex2よりも低下したことが検出された場合、制御部15は、遮断手段13を動作させず、電力系統と切替部12との接続を遮断しない。ただし、検出電流が過電流閾値Th
ex2よりも低下したとしても、非過電流閾値Th
Nex以上であれば、以下で説明するように、電力系統と切替部12との接続が遮断されることがある。
【0067】
過電流閾値Th
ex2よりも小さく非過電流閾値Th
Nex以上の大きさの電流が検出された場合、許容時間t
Nexが経過するまでは、制御部15は当該電流が流れるのを許容する。過電流閾値Th
ex2よりも小さく非過電流閾値Th
Nex以上の大きさの電流が許容時間t
Nexだけ流れると、制御部15から遮断手段13に電磁信号が送信される。遮断手段13は、この電磁信号を受けてスイッチをOFFにし、電力系統と切替部12との接続を遮断する。
【0068】
[実施形態の効果]
以上のように、本実施形態の蓄電装置1では、電流閾値以上の電流が接続経路Pに流れた場合であっても、電流閾値に対応する許容時間が経過するまでは、電力系統と切替部12との接続が遮断されない。しかも、電力系統と切替部12との接続を遮断するか否かの判断に用いる電流閾値は、許容時間が長くなると電流閾値が小さくなるよう、許容時間に応じて変化する。このため、例えばモータを備えるノンインバータ冷蔵庫等、突入電流の大きい負荷が蓄電装置1に接続され、この負荷を起動する際に電力系統から大きな電流が入力された場合であっても、ある程度の時間であればこの電流を許容することが可能となる。よって、蓄電装置1によれば、突入電流の大きい負荷を起動する場合等であっても、電力系統と切替部12との接続が即時に遮断されるのを抑制することができ、誤作動の発生を低減させることができる。
【0069】
ところで、鉛蓄電池等を備える蓄電装置の場合、一般に、ノンインバータ冷蔵庫等の重い負荷が接続されることはない。このため、鉛蓄電池等を備える蓄電装置では、負荷の起動等のために電力系統から大きな電流が入力され、電力系統と切替部との接続が即時に遮断されてしまうという問題は生じない。一方、上記蓄電装置1は、鉛蓄電池等と比較して高出力が可能なリチウムイオン蓄電池11を備えているため、電力系統からの交流電力が低下又は停止したとき等に、リチウムイオン蓄電池11によって重い負荷を動作させることが可能である。すなわち、上記蓄電装置1には、重い負荷を接続することができる。このため、上記蓄電装置1では、重い負荷を起動する際等、電力系統から大きな電流が入力された場合、電力系統と切替部12との接続が即時に遮断されるのを防止する必要性が高い。
【0070】
一般的に、サーキットブレーカーは、ジュール積分を応用したバイメタルを使用したものが多い。このようなサーキットブレーカーは、突入での誤作動は少ないが、短絡を瞬時に遮断する能力に欠ける。熱電磁サーキットブレーカーといった高価な製品も存在するが、このような製品は安価な蓄電装置には適さない。
【0071】
また、通常、蓄電装置に対して不適合な負荷(例えば、突入電力の大きい負荷、又は定格を超える負荷等)を接続した場合、ヒューズの交換やブレーカーの復旧操作等の作業を行う必要がある。このような作業は専門知識を要し、多くの使用者にとっては困難である。しかしながら、本実施形態に係る蓄電装置1であれば、使用者は、簡単なボタン操作又は遠隔操作によって切替部12及び/又は遮断手段13の復旧を行うことができる。
【0072】
上記蓄電装置1の切替部12は、電力系統からの交流電力の低下又は停止が検出された場合等に、外部電力供給モードから電池電力供給モードへの切り替えを行い、負荷20をリチウムイオン蓄電池11に接続する。本実施形態では、上述した通り、負荷の起動時等、交流電力の異常が発生していない場合に電力系統と切替部12との接続が遮断されるのを抑制しているため、切替部12において不必要なモード切り替えが発生するのを防止することができる。結果として、切替部12を保護することができる。
【0073】
上記蓄電装置1は、遮断手段13だけでなく、別の遮断手段14も備えている。そのため、切替部12や変換部18、電線等を過電流から確実に保護することができる。ただし、上記蓄電装置1において、遮断手段14は設けられていなくてもよい。
【0074】
上記蓄電装置1では、非過電流閾値及び過電流閾値が予め設定されている。過電流閾値は、遮断手段14の定格電流値よりも大きくなるように設定される。このため、突入電流等による電力系統と切替部12との遮断をより確実に抑制することができる。
【0075】
上記蓄電装置1では、複数の過電流閾値が予め設定されている。このため、電力系統から蓄電装置1に入力される過電流に応じて、適切な許容時間で電力系統と切替部12との接続を遮断することができる。
【0076】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0077】
(1)上記実施形態では、2つの過電流閾値Th
ex1,Th
ex2が設定されている例について説明したが、3以上の過電流閾値が設定されていてもよい。
図5に示す例では、遮断手段13の動作特性線OC
13aにおいて、3つの過電流閾値Th
ex1a,Th
ex2a,Th
ex3aが存在している。
図5に示す例においても、遮断手段13の動作特性線OC
13aは、遮断手段14の動作特性曲線OC
14よりも下方に位置している。
【0078】
過電流閾値の数が増えた場合であっても、制御部15は、上記実施形態と同様に遮断手段13を制御する。すなわち、制御部15は、接続経路Pにおいて、3つの過電流閾値Th
ex1a,Th
ex2a,Th
ex3a及び非過電流閾値Th
Nexのうちいずれか以上の大きさの電流を検出すると、最大電流閾値に対応する許容時間が経過した時点で遮断手段13を動作させ、電力系統と切替部12との接続を遮断する。
【0079】
なお、
図5の例では3つの過電流閾値Th
ex1a,Th
ex2a,Th
ex3aを設定しているが、動作特性線OC
13aがより曲線に近くなるよう、できるだけ多くの過電流閾値を設定することが好ましい。
【0080】
(2)
図6に例示するように、過電流閾値は、電流Iを縦軸にとり時間tを横軸にとった座標系において、下記の式(1)で表される曲線Cに沿って設定することもできる。下記の式(1)におけるkは、曲線Cが遮断手段14の動作特性曲線OC
14よりも下方に位置するよう定められる定数である。kの値は、蓄電装置1に接続される負荷20の消費電流等を考慮して適宜設定すればよい。なお、
図6は、下記の式(1)で表される曲線Cの概略形状を描いたものであり、下記の式(1)に従って曲線Cを厳密に描いたものではない。
【数1】
【0081】
図6における遮断手段13の動作特性線OC
13bでは、曲線Cに沿って、4つの過電流閾値Th
ex1b,Th
ex2b,Th
ex3b,Th
ex4bが設定されている。このように、過電流閾値Th
ex1b,Th
ex2b,Th
ex3b,Th
ex4bを規則的に設定することにより、蓄電装置1が許容可能な電流の大きさ及び時間、すなわち、遮断手段13による電力系統と切替部12との接続の遮断が行われない電流の大きさ及び時間をより容易に把握することができる。
【0082】
(3)上記実施形態において電流閾値は予め設定されていたが、制御部15は、蓄電装置1の状態を検出し、蓄電装置1の状態に応じて電流閾値を設定することもできる。
【0083】
(3−1)例えば、
図7に示すように、制御部15は、接続経路Pを流れる電流I
exを検出した場合、電流閾値をTh
exからTh
ex’に変更することができる。電流閾値Th
ex’は、元の電流閾値Th
ex’よりも小さく、且つ検出電流I
exよりも大きい値である。なお、特に図示しないが、接続経路Pにおいて電流閾値Th
exよりも大きい電流が検出された場合は、電流閾値Th
ex及び検出電流よりも大きい電流閾値を設定することもできる。
【0084】
このような構成により、電力系統から蓄電装置1に入力される電流の大きさに応じた適切な電流閾値を用いて、遮断手段13の動作を制御することができる。すなわち、蓄電装置1に接続される負荷20等に応じて電力系統から蓄電装置1に入力される電流の大きさが変動する場合であっても、その変化に合わせて遮断手段13の動作を制御することが可能となる。
【0085】
(3−2)また、例えば、制御部15は蓄電装置1内の温度を検出してもよい。制御部15は、蓄電装置1内の温度が上昇したときに、電流閾値Th
exをより小さい電流閾値Th
ex’に変更することもできる。このような構成によれば、蓄電装置1内の温度が高温になった場合に、遮断手段13を早く動作させ、電力系統と切替部12との接続を素早く遮断することができる。
【0086】
(4)上記実施形態では、リチウムイオン蓄電池11の充放電制御や、切替部12の切替制御を行う制御部15が遮断手段13の制御も行っているが、特にこれに限定されるものではない。蓄電装置1は、充放電制御や切替制御を行う制御部とは別に、遮断手段13の制御を行う制御部を備えていてもよい。
【0087】
(5)上記実施形態では、遮断手段13の制御は、蓄電装置1に設けられた制御部15によって行われていたが、蓄電装置1とは別のコンピュータが制御プログラムを実行することにより、遮断手段13の制御が行われてもよい。当該コンピュータは、専用又は汎用のプロセッサ及びメモリを備えていてもよい。この場合、メモリに記憶された制御プログラムをプロセッサが実行することにより、遮断手段13の制御が行われる。
【0088】
(6)上記実施形態では、遮断手段13はスイッチを用いて構成されていたが、遮断手段13の構成は特にこれに限定されるものではない。例えば、インバータ181を、電力系統と切替部12との接続を遮断するための遮断手段とすることもできる。すなわち、電流閾値以上の大きさの電流が接続経路Pに流れ、且つ電流閾値以上の大きさの電流を許容する許容時間が経過した場合に、制御部15によってインバータ181をOFFにすることで、電力系統と切替部12との接続を遮断することもできる。