【実施例】
【0010】
本発明の一実施例について説明する。
【0011】
図2は、本発明の一実施例を説明するためのブロック図である。
図2において、1はレーザパルスL及び後述する追加のレーザパルスDLを発生するレーザ発振器、2はレーザ発振器1から出力されたレーザパルスL及び追加レーザパルスDLを特定の方向へ分岐させるAOM、3はAOM2の動作を制御するAOM制御部、4はAOM2から加工物方向に分岐されたレーザパルスL1をプリント基板の如き加工物5に照射する光学系である。6はAOM2から非加工物方向に分岐されたレーザパルスL2を吸収するダンパである。
【0012】
7は装置全体の動作を制御する、例えばプログラム制御の処理装置によって実現される全体制御部で、加工に用いるためのレーザパルスLの発振をレーザ発振器1に指令するレーザ発振指令信号B、レーザ発振器1に追加レーザパルスDLの出力を指令するダミー指令信号D、AOM制御部3の動作を制御するAOM制御信号Mを出力する。
AOM駆動部3は、全体制御部7からのAOM制御信号Mに基づき、AOM2を制御するAOM駆動信号Nを出力する。AOM駆動信号Nは、それがオンの時間帯でのみAOM2に入力されたレーザパルスLを加工方向の光学系4に分岐させ、それ以外の時間帯ではダンパ6の方向に分岐させる。すなわち、追加レーザパルスDLもダンパ6の方向に分岐させる。
【0013】
図3は、レーザ発振指令信号Bとダミー指令信号Dを出力するレーザ発振制御部8の構成を示す図である。光学系4の動きに同期してレーザパルスLの発振を指令するレーザ発振指令信号Bが、全体制御部7の内部で生成され、レーザ発振制御部8はレーザ発振指令信号Bをそのままレーザ発振器1に出力する。ダミー指令制御部9は、レーザ発振指令信号Bの生成状況を監視し、AOM2に熱レンズ作用の影響が出るほどの期間、レーザパルスLが発振されない場合、熱レンズ作用を低減するための追加レーザパルスDLの発振を指令するダミー指令信号Dを出力する。
【0014】
ここで、追加レーザパルスDLのエネルギーであるが、これはレーザパルスLよりも低く設定しておく。その理由は、追加レーザパルスDLを発振させた直後でもレーザパルスLを発振させやすくするためである。追加レーザパルスDLの低エネルギー化は、追加レーザパルスのパルス幅を短くする、ないしはレーザ発振器1がダミー指令信号Dを受けた時、RF電源のパワーを下げることにより実現する。
【0015】
AOM2を通過するレーザエネルギーが変動した際に発生する熱レンズ作用の変化時定数は約0.8秒程度であり、熱レンズ作用の変化はパワー変動後0.01秒で約1%発生し、パワー変動後2秒で約92%に達する。このことから、熱レンズ作用に対して過去2秒より前のレーザエネルギーの影響は約8%残るに留まる。
従って、過去約2秒分のレーザエネルギー値の総和を求め、それが所定のレベルに達していない場合、AOM2に熱レンズ作用の影響が出ると看做し、追加レーザパルスDLを発振させるようにする。なお、レーザエネルギー値の総和を求めるために、あらかじめレーザパルスLと追加レーザパルスDLのレーザエネルギー値をそれぞれ把握しておく。
【0016】
図3におけるダミー指令制御部9は、以下のようにソフト的に実現する。
図4はダミー指令制御部9の構成と動作を説明するための図である。
ここでは、複数のレジスタが用いられ、このようなレジスタは、ICメモリ内の一つのアドレス位置を一つのレジスタとして用いるものであり、このようなレジスタは良く知られている。各レジスタは初期状態でリセットされているものとする。
【0017】
連続する加工に用いるためのレーザパルスLの最小間隔は100μS、そのパルス幅は20μS、追加レーザパルスDLのパルス幅は7μSとする。そして、レーザエネルギー値の総和をとらえる2秒間を、レーザパルスLや追加レーザパルスDLのパルス幅よりも長い時間である例えば25μSの時間帯の8,000個に分割する。
【0018】
最初の2秒間での、それぞれの時間帯t1、t2、t3・・・tm(m=8,000)において、レーザ発振指令信号Bあるいはダミー指令信号Dが発生したら、それぞれレーザパルスL、追加レーザパルスDLのエネルギー値をレジスタR1、R2、R3・・・Rmに累積していく。各時間帯t1、t2、t3・・・tmが経過すると、レジスタR1、R2、R3・・・Rmには、それぞれ各時間帯t1、t2、t3・・・tmでのレーザエネルギー値の累積値S1、S2、S3・・・Smが格納される。最初の2秒間の最後の時間帯tmが経過すると、各レジスタR1、R2、R3・・・Rmに格納された累積値S1、S2、S3・・・Smの総和F1(=S1+S2+S3+・・・+Sm)が計算され、レジスタR0に格納される。ここでF1が所定のレベルにあるかどうかを判定し、所定のレベルに達していない場合、ダミー指令信号Dを出力し、追加レーザパルスDLを発振させる。
【0019】
最初の2秒間の次の時間帯tm+1においては、レーザパルスLあるいは追加レーザパルスDLが発生したら、前と同様にして、そのエネルギー値をレジスタRm+1に累積していく。この結果、時間帯tm+1が経過すると、レジスタRm+1には時間帯tm+1でのレーザエネルギーの累積値Sm+1が格納される。
そこで、レジスタR0の内容からレジスタR1に記憶している時間帯t1でのレーザエネルギー値の累積値S1を減算するとともに、レジスタRm+1に記憶している時間帯tm+1において発生したレーザパルスLあるいは追加レーザパルスDLのエネルギー値Sm+1を加算する。
こうして、時間帯tm+1が経過すると、レジスタR0には、最初の2秒間から一定時間25μSが経過した新たな2秒間におけるレーザエネルギー値の総和F2(=S2+S3+・・・Sm+Sm+1)が格納される。ここで、F2が所定のレベルにあるかどうかを判定し、所定のレベルに達していない場合、ダミー指令信号Dを出力し、追加レーザパルスDLを発振させる。
なお、F2の計算が完了したら、レジスタR1に記憶している時間帯t1でのレーザエネルギー値の累積値S1をクリアし、新たな時間帯tm+3用のレジスタとして使用できるようにしておく。
【0020】
最初の2秒間の次の次の時間帯tm+2においては、レーザパルスLあるいは追加レーザパルスDLが発生したら、前と同様にして、そのレーザエネルギー値をレジスタRm+2に累積していく。この結果、時間帯tm+2が経過すると、レジスタRm+2には時間帯tm+2におけるレーザエネルギー値の累積値Sm+2が格納される。
そこで、レジスタR0の内容からレジスタR2に記憶している時間帯t2でのレーザエネルギー値の累積値S2を減算するとともに、レジスタRm+2に記憶している時間帯tm+2において発生したレーザパルスLあるいは追加レーザパルスDLのエネルギー値Sm+2を加算する。
こうして、時間帯tm+2が経過すると、レジスタR0には、最初の2秒間から一定時間25μSの2倍が経過した新たな2秒間におけるレーザエネルギー値の総和F3(=S3+・・・Sm+Sm+1+Sm+2)が格納される。ここで、F3が所定のレベルにあるかどうかを判定し、所定のレベルに達していない場合、ダミー指令信号Dを出力し、追加レーザパルスDLを発振させる。
なお、F3の計算が完了したら、レジスタR2に記憶している時間帯t2でのレーザエネルギー値の累積値S2をクリアし、新たな時間帯tm+4用のレジスタとして使用できるようにしておく。
【0021】
以後、上記と同様にして、一定時間25μS毎に、過去からの2秒間、AOM2への入力レーザパルスのレーザエネルギー値の総和を判定し、所定値に達していない場合、追加レーザパルスDLをAOM2へ入力させる。
【0022】
図1は、
図2のレーザ加工装置の部分タイミング図である。最初の2秒間において、レジスタR0に格納されたレーザエネルギー値の総和F1が所定のレベルになく、追加レーザパルスDLを発振させた場合を示している。
【0023】
以上において、レジスタは約8,000個必要となるが、このために必要なメモリ容量は、レジスタ1個あたり2バイトとしてもわずか16Kバイトである。また、レジスタのアクセス処理であるが、同時に全てのレジスタへアクセスする訳でなく、一時には少数にしかアクセスしないので、データ処理するうえでの問題点はない。
【0024】
以上の実施例においては、ダミー指令制御部9は、レーザパルスLと追加レーザパルスDLの発生をそれぞれレーザ発振指令信号B、ダミー指令信号Dで把握しているが、レーザパルスL、追加レーザパルスDLを直接検知する検出器を設け、これらの検出器の出力でレーザパルスLと追加レーザパルスDLの発生を把握するようにしても良い。