特許第6301266号(P6301266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6301266シースを伴う植込み用ステントのための装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6301266
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】シースを伴う植込み用ステントのための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/82 20130101AFI20180319BHJP
【FI】
   A61F2/82
【請求項の数】26
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-551558(P2014-551558)
(86)(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公表番号】特表2015-503426(P2015-503426A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2012076406
(87)【国際公開番号】WO2013104509
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2015年7月17日
(31)【優先権主張番号】48/12
(32)【優先日】2012年1月11日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】510325765
【氏名又は名称】クヴァンテック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ツッカー, アリック
(72)【発明者】
【氏名】ブッジ, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】メーデル, アルミン, ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】シュニーバーガー, ローマン
(72)【発明者】
【氏名】ミレー, ヴィンセント
【審査官】 鈴木 崇文
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−526162(JP,A)
【文献】 特表2008−536617(JP,A)
【文献】 特表2010−521264(JP,A)
【文献】 特表2008−529671(JP,A)
【文献】 国際公開第01/021103(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0199239(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0143857(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/82−2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体管腔内植込み用のインプラントの準備のための装置であって、インプラント(7、103)の準備のための少なくとも1つの処理ユニット(1)を備える装置において、
前記処理ユニット(1)の上又は中に少なくとも部分的に配置され、前方開口部(3)と後方開口部(4)とを有する可撓性のシース(2)であって、前記シース(2)の内部にある前記インプラント(7、103)を前記開口部(3、4)間に保管することが可能であり、前記シース(2)が、前記処理ユニット(1)を貫いて延び前記処理ユニット(1)の両側でそこから出る、シース(2)と、
前記前方開口部(3)と前記後方開口部(4)の間で前記シース(2)を通る規定媒体の流れ(P)を生成するための、前記シース(2)の前記開口部(3、4)のうちの少なくとも1つに接続される少なくとも1つの流れユニット(5)であって、前記流れ(P)が、前記シース(2)の内部の前記インプラント(7、103)を通って流れる、流れユニット(5)と
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記シース(2)が、管状及び/又は可撓性に設計されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記インプラントが、前記シース(2)の内部に移動可能に配置されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記シース(2)の中又は上に、前記インプラント(7、103)を前記シースの内部に位置決めするための保持手段が設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記シース(2)が、0.01mmから0.09mmまでの肉厚を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記シース(2)が、PTFE又はPFAから成る、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記処理ユニット(1)が包装ユニットである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
複数の処理ユニット(1、6)が逐次設けられ、前記シースが前記複数の処理ユニット(1、6)を貫いて延びる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記シース(2)は、前記処理ユニット(1)から取り外すことが可能であり、及び/前記処理ユニット(1)の内部で移動可能である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記処理ユニットが、洗浄ユニット(6)、前記インプラントの圧縮のためのユニット(クリンプユニット)(1)、又は包装ユニット若しくは包装体(15、20)を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記流れユニット(5)と前記シース(2)との間に包装体(15)が配置されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
体管腔内への前記インプラント(7、103)の挿入のために、移送デバイス(8)が、前記シース(2)内のその開口部(3、4)間に前記インプラントと共に設けられている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
包装ユニット(15)が、流れ方向において流れユニット(5)の次の最前部に配置され、開口部(17)によって前記流れユニット(5)に接続され、反対側の開口部(16)によって前記シース(2)の開口部に接続される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
媒体として生理食塩水又はWFI水が供給される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
体管腔内植込み用のインプラントの準備のための方法であって、前記インプラント(7、103)が可撓性のシース(2)の内部で処理ユニット(1)に移送され、
前記シース(2)は、0.01mmから0.09mmまでの肉厚を有しており、前記処理ユニット(1)を貫いて延び前記処理ユニット(1)の両側でそこから出るように、前記処理ユニット(1)において配置されており、
前記インプラント(7、103)は前記シース(2)の前方開口部(3)と後方開口部(4)との間に保管され、
規定媒体の流れ(P)が、前記前方開口部(3)と前記後方開口部(4)の間で前記シース(2)を通して導かれ、前記シース(2)の内部の前記インプラント(7、103)の周りを少なくとも部分的に流れ、
前記処理ユニット(1)が、前記シース(2)の外部から前記インプラント(7、103)に作用する、方法。
【請求項16】
前記インプラント(7、103)が洗浄され、準備され、包装体へと送られ、及び/又はユニット間で移送されている間、前記流れ(P)が前記インプラント(7、103)の周りを流れる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記インプラント(7、103)が、前記インプラントの洗浄のための洗浄ユニット(6)から1以上の処理ユニット(1)及び/又は包装体(15、20)への移送の間、前記シースの内部にとどまる、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記インプラント(7、103)が前記シース(2)と共に、処理ユニット(1)、特にクリンプユニットに入れられ、そこから取り出される、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記インプラント(7、103)を体管腔内へ挿入するための移送ユニット(8)が、前記インプラントと共に、前記シース(2)内に保管される、請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記規定媒体の前記流れ(P)が、少なくとも洗浄ユニット(6)並びに処理ユニット(1)及び/又は包装体(15、20)から成る装置内でインプラント(7、103)の移送方向に対して逆行するように生じる、請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記流れ(P)の温度が、前記インプラント(7、103)の準備中に変更される、請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの追加物質が前記流れ(P)に加えられる、請求項15〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記流れ(P)の強さが可変方式で調節可能である、請求項15〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記シース(2)の内部の前記インプラント(7、103)を該シース(2)と一緒に包装体(20)内に包装する包装ユニットが設けられる、請求項15〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
包装ユニット(15)が、流れ方向において流れユニット(5)の次の最前部に配置され、規定媒体が前記包装ユニット(15)の周りを流れ、前記シース(2)が前記包装ユニット(15)に接続される、請求項15〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記流れ(P)は、前記装置内での前記インプラント(7、103)の移送方向に対して逆行するように生じる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラントの植込み及び/又は植込み前の保管のための、インプラント、特にステントの準備、インプラントを取り扱うため及び/又は使用可能にするための装置、並びにインプラント用の包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントなどの小型のインプラントは、様々な医療用途に広く用いられている。ステントは、例えば、血管内病変の治療のため、又は動脈瘤の治療において、又は経皮的経血管的血管形成術の分野における血管拡張のため、特に心臓血管介入のために用いられている。
【0003】
バルーン拡張型ステントと自己拡張型ステントの間には実質的な区別が為される。バルーン拡張型ステントは、留置される前に、膨張していないバルーン上に配置される。この目的で、例えば、ステントは膨張していないバルーン上でより小さい直径まで圧縮され、バルーンと共に移送デバイスを用いて体内に挿入される。処置部位において、例えば病変又は血管弁の場合、バルーンを膨張させてステントを拡張する。その後、バルーンを体内から取り出すことができる。自己拡張型ステントは、記憶効果を有する金属から成るものとすることができる。身体の管腔内に挿入するために、自己拡張型ステントをその拡張力に抗して圧縮することができ、管状カテーテル内に挿入することができる。治療箇所において、自己拡張型ステントはカテーテルから解放され(例えば、管状カテーテルから押し出され)、ばねで反発してその拡張状態に戻る。
【0004】
さらに、ベアメタルステントとコーティング型ステントとの間で区別が為される。Soehnleinら(Neutrophil−Derived Cathelicidin Protects from Neointimal Hyperplasia; Sci Transl Med 3, 2011)は、例えば、タンパク質カテリシジン(LL37)によるタンパク質コーティングを有するステントを示している。このコーティングされたステントの取り込み挙動を動物で検査した。この試験では最小限の再狭窄しか示されなかったので、カテリシジンは、再内皮化を促進及び調節し、それによりステント植込み後の新生内膜肥厚から保護すると考えられる。しかし、ステント上でコーティングを用いることは、一般に一部では様々な不利益を増やし、例えば、ステントの表面摩擦を高める可能性があり、ステントの拡張の際にコーティングが損傷を受ける(裂ける、剥離する、など)可能性があり、又は血液循環に負の副作用を生じる可能性がある。
【0005】
全てのステントに共通することは、体管腔に挿入するために、ステントは、体内でその機能を働かせるときの直径よりも小さい直径を有する必要が有ることである。通例、ステントは、製造者によってカテーテルに予め嵌め合わされて包装されている。しかし、通例、ステントを体管腔内に挿入する直前に初めて該ステントを圧縮すること、即ちクリンピングすることも可能である。ステントを植込みのために準備する従来の方法によれば、通常は拡張又は半拡張状態のステントが、カテーテル上で患者の体内に挿入するのに適したより小さい直径まで圧縮される。この手順は、通常、いわゆる無菌状態で行われる。無菌室は、該無菌室内に持ち込まれるか又はそこで生じる空気中の粒子の濃度が必要に応じた最小限に保たれる室である。無菌室内の粒子濃度は、絶えず監視されている。無菌室は、種々のクラス、いわゆるISOクラスで分類され、例えば、クラスISO−7の無菌室においては、サイズが0.5マイクロメートルの粒子の数が1立方メートル当り352000個を超えて計測されてはならない。1.0マイクロメートルのものについては、その上限は1立方メートル当り83200粒子であり、5.0マイクロメートルのものについては2930粒子である(DIN EN ISO 14644に準拠)。0.5マイクロメートルより小さい粒子は、このクラスでは考慮に入れない。例えばステントのような医療インプラントに対しては、このようなISO−7無菌室が使用される。
【0006】
従って、カテーテル上でのステントの製造及び準備のための無菌室は、100%無粒子ではない。そのうえ、多くの製造ステップは、まさにステント及びカテーテルに対して手作業で行われている。通例、人間は粒子及び他の汚れの最大の源であるので、適切な作業着が、指定された無菌クラスを保つ助けとなる。
【0007】
血管内に植込まれたステントは、患者にある程度のリスクをもたらす。特に、ステントの構造体上での炎症反応及び/又は血栓形成は、血管内に新たな狭窄をもたらす可能性がある。この種の合併症は、特に、ステント、挿入デバイス、又はステントを体管腔内に挿入する際にステントと接触するその他の要素の汚れによって引き起される。従って、ステント及び移送デバイスは、一般に、いかなる汚染も無い状態、即ち、例えばちりも繊維も粒子も無い状態に保たれるべきである。
【0008】
ステントを植込みのために準備するための従来の方法によれば、例えばステントの表面処理及び洗浄の後であっても、そうした汚れは、例えばステントの移送中にも、カテーテル上にクリンピングする際又はカテーテル内に挿入する際にも発生し得る。例えば、例えば作業手袋又は空気からの様々な粒子などの天然の汚染が、無菌室内で行われる作業を通じてステント上に残留し得る。
【0009】
ステントをカテーテルに取り付けた後の光学的検査により、任意の粒子を検出することができ、必要であればノズルから出て流入する清浄ガスによって除去することができる。
【0010】
しかし、装着されたステントとカテーテルとの間に存在する粒子は、条件によっては検出されないことがある。従って、バルーン拡張型ステントでは、特に、装着されたステントとバルーンとの間に粒子が存在する可能性があり、自己拡張型ステントでは挿入されたステントと管状カテーテルの内管との間に粒子が存在する可能性がある。必ずしも光学的に検出できるとは限らず、また適用可能なISO基準に入らない微小粒子も、同様にステント及びカテーテルの表面に残留する。さらに、これらの光学的検査は手動で行われることが多く、そのことは更なる不具合の原因となり得ることを意味する。
【0011】
従来技術から、インプラント又は移送デバイス上では、ある種の非清浄さを避ける必要があることが公知である。例えば、国際公開第2006/086709号には、ニチノールステントを圧縮するためのデバイスが示されている。拡張されたステントは第1の温度から第2の温度まで冷却され、次いで圧縮される。そのため、冷却中に、例えば空気中に検出される水蒸気又は他の昇華物などの気体物質がステントの表面に凝縮し凍結し、それによりステントの圧縮が妨げられ、及び/又はステント表面が損傷されるという問題が生じ、これは特にコーティング型の場合に生じ得ることである。これを防ぐために、ステント及びクリンピングデバイスは密閉チャンバ内に入れられ、冷却プロセス中に凝縮し得る例えば水蒸気及び二酸化炭素などのあらゆる気体物質が可能な限り除去される。そこで初めてステントは圧縮温度まで冷却される。気体物質を除去するために、チャンバに例えば窒素などの気体を充填して、ステント及びクリンピングデバイスが窒素環境内に置かれるようにする。しかし、例えば既に気体交換の前にステント表面又はバルーン表面上に存在しているがクリンピング手順には影響を及ぼさないマイクロメートル領域の小さい汚染粒子が依然として存在する可能性があるので、これでは十分ではない。
【0012】
米国特許出願公開第2006/0183383号には、ステントを圧縮するためのクリンピングデバイスが示されており、これは圧縮中にステントを保護するために、ステントとデバイスのクリンプ要素との間の保護層として用いられる。保護層は、クリンピングデバイス内で巻取り可能材料の形状にされており、ステントとクリンピングデバイスとの間に入ってくる。保護層は、その両端で、その都度ステントとクリンプ要素との間で巻き取られ、ローラ間の張力のかかった領域の間に長手方向の開口部が存在し、この開口部は、例えば要素間を通ってクリンピングデバイスの内部へ向かう圧縮気体流によって一クリンピング要素を除去することによって生じる。ステントの圧縮のためのクリンピングデバイスが閉ざされるとすぐに、気体流を調節してクリンピングデバイスの前方及び後方の開口部を通して気体を逃がすことができるようにする必要があり、その結果ステントは大気中に解放される。圧縮後、ステントはクリンピングデバイスから取り外され、移送中に再び汚染に曝されることになる。
【0013】
さらに、米国特許出願公開第2003/0187493号には、圧縮されたステント及びカテーテルのための包装用シースが示されており、これはステントに装着された状態で示されている。例えばステントを植込み用の移送デバイスに入れて装着するとき、シースは、ステント表面又はコーティングを損傷(例えば、コーティングに関する場合)又は汚さないように、これらに接触しないようになっている。従って、包装の前に既にステント上に存在していた微粒子(又はそれより小さいもの)の形態の不純物は、ステント上に残留することになる。
【0014】
ステントの圧縮又はその保存のためのさらに別のデバイスが、例えば、米国特許第6,968,607号、米国特許出願公開第2008/0072653号、国際公開第2004/066876号又は欧州特許第0910425号から公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ステントなどの小型インプラントの準備及び処理のためのデバイス及び方法において、保持されるインプラントは、デバイス内で又は方法の間、清浄な環境内に保持され、汚れは可能な限り避けられる。しかし、処理後、例えば1つの作業ユニットから次の作業ユニットへの移送の間に、又はインプラントの簡単な検査により、不純物が再び、インプラントの表面に再蓄積する可能性がある。ステントの場合、そのような清浄度の不足は、ステントとその移送カテーテルとの間で生じ得るものであり、ステントと共に体管腔内に持ち込まれ、そこで前述のような問題を引き起すことがある。
【0016】
本発明の目的は、インプラントの表面の品質を保つために実施及び操作が容易な、再度の不純物を防止するための洗浄プロセスによって、植込みのための準備の際の及び包装によるインプラント上の不純物を低減する、インプラントを植込みのために準備するための装置及び方法を開発することである。さらに、本発明の目的は、再汚染の無いコーティングを可能にし、かつ適用が簡単な、インプラント用の包装体を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、本発明によって、請求項1及び29による、植込み用のインプラントの準備のための装置並びに包装体によって達成される。有利な装置及び種々の実施形態は、従属請求項で説明される。
【0018】
本発明は、一般にインプラントに、特に、例えばステントなどの血管修復材のような小型インプラントに適する。ステントは、実質的に近位端と遠位端とを有し、これら両端間に圧縮可能な直径のステント内腔が延びたものであり、通例、個別の桟から構成される。冒頭で説明したように、ステントは、体管腔内に移送するために、移送デバイス、例えばカテーテル上に配置される。本発明は、前述のように、ステント表面とカテーテル表面との間の、例えば微粒子の形態の不純物を防ぐのに適している。
【0019】
体管腔へ植込むためにインプラント、特にステントを準備するための方法によれば、処理ユニット又は包装体のシース内にインプラントが挿入され、好ましくは取り出される。それにより、インプラントは、シースの前方開口部と後方開口部との間に保管され、規定された媒体の流れがシースを通して供給される。この流れはシース内でインプラントの周りを流れ、処理ユニットは、シースの外側でインプラントに効果を及ぼす。
【0020】
ここで、本発明によれば、体管腔内に植込むためのインプラント、特にステントを準備するための装置が用いられ、これは、少なくとも、前方開口部と後方開口部とを有するシースと、シースを通る規定媒体の流れを生成するための少なくとも1つの流れユニットとを備え、この流れはシース内でインプラントの周りをあらゆる側から流れる。流れユニットをシースに直接に接続することができる。あるいは、例えば、包装体を流れユニットとインプラントとの間に配置することができ、その結果、インプラントを、インプラントの周りの流れを遮断せずに包装体内でシースの外に移すことができるようになる。シースは、処理ユニットに若しくはその中に少なくとも部分的に配置され、又は、その中若しくはその上に配置することができ、インプラントがシースの内部にその開口部の間に保管される。シースを通る流れを生成するための流れユニットは、シースの少なくとも1つの開口部に接続される。これにより開口部は流入口及び流出口を形成する。シースは、流れユニットへの取付けのための従来の取付システム、例えば、差し込み式又はねじ込み式の接続部を有することができる。同時に、ステントは、そのあらゆる側を、即ち外側及び内側の円周表面を流れる、及びステントの個々のブリッジ間も巡って流れる流れを有することが好ましい。本発明を、以下、例示として、ステントとしてのインプラントの形態で説明する。しかし、本発明は、例えば、移植片又は歯のインプラントといった、その他のインプラントに対しても有利に実施することができる。
【0021】
本発明によれば、準備されたステントの植込みにおいて再狭窄が少ないことを実験的に示すことができた。このことは、準備され保管されたステントが、従来の方法で準備され保管されたステントと比べて、植込みの時点でより高い清浄度を有するということ、即ち汚染が明らかに減少するという事実によるものと考えることができる。本発明を用いると、ステントの全表面にわたって一貫した清浄度を維持し又は達成することができる。不規則な増殖に関する胚細胞などの粒子は一緒に残留しない。特に親水性ステントを用いると、本発明による手順及び装置により、体管腔内へのステントの挿入のために親水性表面の高い清浄度を保つことが可能である。
【0022】
好ましい実施形態において、以下でより正確に実行されるように、体管腔内へのステントの挿入のために例えばカテーテルなどの移送デバイスが同時にシースの内部のその開口の間に配置され、規定媒体がその周りを流れる。
【0023】
本発明による方法及び装置によれば、ステントを、処理中、保管中、及び体管腔内への挿入までの間、規定媒体の流れに曝すことができ、ここでステントは処置のあらゆるステップでシース内に留まることが好ましい。従って、例えば、処理ユニットへの挿入の間及び処理の間にも、流れは行き渡り、汚染粒子はシースの外部に運び出される。それにより不純物の蓄積が防止される。
【0024】
ステントを、例えばシースの内部に配置して、その中で洗浄ユニットによって浄化することができる。洗浄のために、例えば超音波デバイスが用いられ、これは既知の方式でシースの外側からステントに効果を及ぼす。同時に、ステントをシースの内部で溶液を用いてすすぐことができる。塩基溶液、例えば3%Deconexの蒸留水溶液を用いることができる。また、酸性溶液、例えば濃硫酸(例えば96%)を使用することも可能である。シースの材料は、溶液の種類に基づいて決定される。硫酸及び/又はDeconex溶液の場合には、テフロン(登録商標)(PTFE)チューブを用いることができる。従って、この溶液を本発明の意味において規定媒体とすることができる。基本的に他の従来の方法もまた適用可能である。通常、シースは、プラスチック、例えばPA及びPEで構成することができる。PTFE及びPFAによって良好な結果が得られている。
【0025】
従ってステントは洗浄後にシースの内部にとどまり、周囲の規定媒体の流れがステントをすすぐ。この保護された雰囲気内で、ステントを、その合間に汚染された雰囲気内に置くことなく処理ユニットに入れることができる。
【0026】
それゆえ、準備方法の個々のステップの間に、ステントに対して規定媒体を変更することもできる。例えば、浄化用の溶液から成る流れの前及び/又は後に、別の、例えば窒素流をシースの中に導入することができ、その結果、その後に続く異なる流れを中断することなくステントをすすぐことができる。例えば、浄化用の溶液から成る流れの前及び/又は後に、他の、例えば窒素の流れをシースの中に導入してステントをすすぐようにすることができる。このために、シースの前方開口部に、例えば複数の注入口又は開口部を設けることができ、それらを通して異なる媒体をシース内に導入することができる。シースの前方開口部に2つの注入口を有するY字型要素を取付けることができ、入口毎に特定の媒体用の流れユニットを接続することができる。基本的には、3以上の流れユニットのために3以上の注入口を設けることもできる。異なる媒体をシースの内部で混合することもできる。ここで混合比は、例えば流れユニットの調節によって決定することもできる。
【0027】
一実施形態において、シースは管状の形態であり、可撓性で折曲げ可能に設計される。シースは、インプラント又はステントの両端部でそれを遥かに越えて延びることができるので、シースが複数の処理ユニットを越えて延びるようにすることができる。シースの可撓性により、シースの外側での作用が、ステントに影響を及ぼすことができ、ステントを例えば圧縮することができる。従って、それでもなおステントの表面は保護されたままである。シースの内部にステントを位置決めするための又はステントを外側から把持するための保持手段を設けることができる。これは、例えばクランプ又は手による外側からの圧縮による、シース直径の1以上のテーパ部の形態で設けることができる。ステントは、例えば、テーパ部の箇所で切り離されて保管することができる。従って、ステントが規定媒体の流れに触れることができる状態のままで、ステントをシースの内部に最小限の遊びで緩く保持することができる。ステントはまた、シース外部のその外周表面上に脱着可能に保持することもできる。実質的に、保持手段は、ステントが取り付けられていても、ステントが保持手段の中を可能な限りあらゆる側で流動することができるように設計される。
【0028】
同時に、ステントと共に、体管腔内へのインプラントの挿入のための移送デバイスを準備することができる。移送デバイスとしてのバルーンカテーテルの場合、手順は以下の通りに行われる。ステントをシースの中に挿入し、媒体をその周りに流す。次にバルーンカテーテルを中に入れ、同様に媒体をその周りに流す。しばらくして、媒体がステント及びバルーンの周りを流れている間に、従ってそれらの表面にもはや粒子が存在しなくなると、バルーンをステント内腔に押し込むことができる。次に、バルーンをある程度開いて、即ち膨張させて、ステントが付着性摩擦によってバルーン上に留まるようにすることができる。次に、ステント及びバルーンを一体としてクリンピングデバイスの中に押し込み、直径を縮小させる。
【0029】
シースとして、例えば、PTFE、PFA、PE又はPAのホースを用いることができる。この管は、ステントのためのシースとして用いる前に洗浄される。シース内のステントに関して目視制御を行うために、シースは透明であることが有利である。シースは、0.01mmから0.09mm、特に0.02mmから0.06mmまでの肉厚を有することが好ましい。この範囲において、シースは必要な処理ステップを妨げないような十分な可撓性及び屈曲性を有しているが、しかし、ステントの処理中に裂けることがないように十分に堅牢である。特に適しているのは、例えば、肉厚0.04mmのPTFEチューブである。
【0030】
処理ユニットは、バルーンカテーテル上に取付けるために又は自己拡張型ステントに関してはカテーテルの中に挿入するために、ステントを圧縮するクリンピングユニットによって形成することができる。クリンピングユニットは、軸の周りに配置された互いにその軸に対して半径方向に少なくとも部分的に移動可能な要素を有し、これにより要素によって囲まれる自由空間が狭められる。クリンピングユニットの要素は、シース内に配置されたステントを含み、ステントがクリンプされない又は圧縮されない拡張位置から、ステントの直径が圧縮される閉位置まで半径方向に移動可能である。要素の拡張位置において、自由空間を囲む要素は、少なくとも、拡張状態のステントがこの空間内に収容可能であるような直径を有する。要素の閉位置において、要素は、圧縮されたステント又はクリンプされたステントに対して予測される直径に対応する直径に自由空間が縮小されるまで、内向きに移動する。
【0031】
クリンピングユニットの要素は、ピボット運動可能なジョーとして、又は軸の周りに円形に配置された軸方向に移動可能なセグメントとして設計することができる。クリンピングユニットは、従来技術で公知である。
【0032】
ステントはシース内にある状態で、例えば半径方向又は軸方向でクリンピングユニット内に挿入される。シースは、クリンピングユニットを貫通して延びてクリンピングユニットの他方の側から出ることが好ましい。従って、シースはクリンピングユニットから突き出る。従って、流れユニットはシースに取付けたままにすることができ、ステントは、シースを調節することにより、例えばクリンピングユニットに対して所望の位置まで持ってくるように、クリンピングユニットの内部で移動させることができる。それにより、クリンピング要素は、シースの外側でステント上に位置することになり、規定媒体の流れを妨げずにステントに作用することができる。
【0033】
本発明による装置の一実施形態において、複数の処理ユニットが連続して設けられ、ここでシースは、複数の処理ユニットを通して延びる。従って、インプラント又はステントをシースの内部で1つの処理ユニットから次の処理ユニットへと移動させることができる。あるいは、実質的にシースの内部に静止したステントが1つの処理ユニットから次の処理ユニットに、あるいはまた包装体内に移動するまで、シースを処理ユニットによって移動させることができる。この移送中、規定媒体の流れはステントの周りを絶えず流れることができるので、不純物の付着が防止される。
【0034】
しかし、基本的に、シースを処理ユニットから取り外せるようにして、シース内に配置されたインプラント又はステントを非清浄状態におくことなく1つの処理ユニットから次の処理ユニットへと移送することができるようにすることも可能である。
【0035】
処理ユニットとして、例えば、上述のようなクリンピングユニット、洗浄ユニット、インプラントの温度調整(温度の上昇又は下降)のためのユニット若しくは包装ユニット、又は包装体を装置内に設けることができる。インプラントに関する必要条件に応じて他の処理ユニットを設けることもできる。
【0036】
シースを通る規定媒体の流れを生成するための流れユニットは、簡単な実施形態では、媒体が入れられた容器を用い、生成された圧力/過圧力又は重力により、開口部を通して媒体をシース内へと流すことができるものとすることができる。例えば、窒素などの気体、又は液体を規定媒体として用いることができる。媒体の組成は、インプラントの必要条件に関して選択することができる。ステントの表面に対してシースの内部で反応しない、不活性媒体を用いることが好ましい。例えば、生理学的濃度である0.9%NaClの無菌塩溶液をこの目的で用いることができる。これは、ステントが生理学的に適切な環境に保持されるという利点を有する。水もまた、注入のために用いることができる。さらに、例として前述したように、規定物質を、例えば流れユニット内又はシース内での混合を通じて、例えば流れユニットの内部又はシースの内部で媒体と混合することができる。規定物質により、例えばステントの表面を保護することができる。また、ステントの表面特性に影響を及ぼすための規定物質を用いることができ、例えばステント表面を酸化させるための酸化手段(例えば、過酸化水素H又は硝酸)を用いることができる。流れユニットは、シース内の圧力を調整するための圧力調整部を有することができる。従って、処理中にシースの直径が変化する場合であっても、一定の流れがシース内を流れることを保証することができる。シースの閉鎖により、圧力調整部は流れを遮断することもできる。流れの強さは、例えばステントの包装に先立つ種々の処理ステップと例えば調和するように変更することもできる。
【0037】
本発明によれば、インプラントは、該インプラントを洗浄し、処理し、包装を施し及び/又はユニット間を移送する間、流れに囲まれていることが好ましい。流れユニットは、装置の内部でのインプラントの移送デバイスに対して逆向きの媒体の流れを装置の内部に生成することが好ましい。この流れは、装置の内部で1つの処理ユニットから洗浄ユニットの方向に流れる。従って、洗浄ユニットは流れ方向において処理ユニットの後に設けられる。また、流れは、包装ユニットを通って、又は包装体それ自体の中を若しくはそれを通って、そこから洗浄ユニットの方向に流れることも好ましい。
【0038】
包装体は、最前部に、即ち、例えば規定媒体の流れ開口部の後の最初のユニットとして配置されることが好ましい。流れユニットの開口部により、及び対向する開口部を用いて、包装ユニットを流れ方向でシースの開口部に取付けることができる。それにより規定媒体が包装体の周りを流れる。従って、包装体もまたあらゆる可能性のある不純物/汚染粒子に関して浄化され、その表面は、インプラントの挿入又は移送デバイスへのインプラントの取付けまで清浄のままとなる。流れ方向は、通例、インプラントの、特にステントの長手方向になり、従って処理軸の長手方向、例えばクリンピングデバイスなどの長手方向になる。移送デバイスは、シース内のステントに対して設置される限りにおいて、やはり長手方向に位置合わせされる。それにより、インプラントは、該インプラントの準備中、常に新しい汚染されていない媒体で囲まれることになる。それによりシースの内部には連続流が存在する。流速は一定になるように又は可変に調節することができる。従って、ステントを植込みのために準備する過程において、種々の条件を考えることができる。例えば、種々の処理ユニット間の移送又は包装体への移送の間、汚染を生じ得るあらゆる粒子をステントからの流れにより阻止するために、流速を高めることが有利である。基本的に、流れの流れ方向を逆方向にすることを考えることができ、逆もまた同様である。さらに、種々の媒体又は物質を、シースの中を通して交互に流すこと及び/又は異なる方向から流すことを考えることができる。これは、例えば、同じ流れユニットを用いるか、又は、更なる流れユニットをシースの同じ端部で若しくは両端で用いて行うことができる。
【0039】
ステントの処理中に流れの温度を変えることも可能である。それにより、ステントの処理のために温度の変化を利用することもできる。具体的には、自己拡張型ステントの処理では、ステントの処理のために媒体の温度を下げる。それにより、例えばステント材料に関する記憶効果を消去するためにその材料のオーステナイト形成温度(AF温度)にステントを冷却することができる。ニチノール製ステントの場合、この温度は、例えば室温より低く調節される。そのようなステントの冷却によって、さらなる処理ステップで、圧縮されたステントの周りを流れが流れている間に、ステント上に管状カテーテルを配置することができる。
【0040】
インプラントと共に、バルーン拡張型又は自己拡張型ステント用の挿入カテーテル又は移送カテーテルなどの移送デバイスもまたシースの中に配置することができ、従って流れがそれらの周りにも流れるようにすることができる。それにより、移送デバイスもまた、体管腔内へのステントの挿入のために使用されるまで不純物から同様に保護される。
【0041】
本発明によると、ステントの周りに特にステントの長手軸に沿って規定媒体が流れている間に、ステントを移送デバイスの上又は中に装着することができればとりわけ有利である。それゆえ、ステントと移送デバイスとの間に見出される汚染粒子を流れから除去することができ、例えばクリンピング法で、体管腔内でステントを解放することでのみ除去されるような汚染粒子を移送デバイスとステントの間に締め付けてしまうことはなくなる。それゆえ、全処理の間、流れが絶えず生じているようにできることが有利である。好ましくは、少なくとも移送デバイスの上又は中にステントを配置する前及び/又は間に、ステントの周りを流れて汚染物を近寄せないようにする流れを生成する必要がある。
【0042】
処理過程の後、インプラントを又は移送デバイスを伴うインプラントを、包装ユニット内に又は直接に包装体内に導き入れることができる。それにより、シースの少なくとも一部分が包装体の内部に配置されることが好ましい。従って、インプラントもまた保護シース内にある状態で包装体の内部に留まる。包装体は、シースの開口部が閉じられるように、シースにより閉じられる。流れは、包装体を閉じるまで、シースを通って流れることができる。シースの突出部分を長くすることができる。このように処理され包装されたステントは、それゆえ広範囲に汚染粒子無しの状態にあり、包装体から取り出した後、洗浄又は圧縮といったさらなる処理ステップを必要とせずに、直接に体管腔内に挿入することができる。
【0043】
本発明によれば、前方開口部及び後方開口部を有してそれらの間にインプラントが配置される1つの管状の可撓性シースを有する、体管腔内植込み用のインプラントの包装体が提供され、ここでシースは包装体の内部に設けられ、その開口部は包装体又は包装体の部品によって閉じられる。ここでシースの開口部のうちの少なくとも1つの端部を、シースを通る規定媒体の流れを生成するための流れユニットに接続することができる。
【0044】
あるいは、包装体は、間に包装スペースを囲む2つの開口部を有することができ、ここでシースを包装体の第1の開口部に接続し、流れユニットを第2の開口部に接続することができる。従って、規定媒体の流れは、流れユニットから包装体を通り、さらに包装体からシースを通って流れる。処理及び包装の間、ステントは常に流れによってすすがれており、それによりステントがシースから包装体内へ移送される間保護される。次いで、包装体の開口部が閉じられ、その結果、ステント及びそれに付属する移送デバイスを保護された環境内に保持することができる。
【0045】
本発明はさらに、植込みのために上述の方法で準備されたステントの形態のインプラントに関する。この準備方法により、一様な又は周期的に規則的な表面濡れ特性を有する高度に清浄なステントを準備することができる。従来の方法で準備されたステントと比べると、本発明により準備された一様なステント表面は、内殖中のステントの挙動を改善し、再狭窄を阻止するように作用する。そのための実験的検証は、以下でより詳しく説明するように、本発明によるステントを豚の体内に留置して内殖を監視したインビボ研究で行うことができた。驚くべき結果として、ステントの内殖特性は、今まで想定していたよりもステントの清浄度に本質的により強く依存することを示すことができた。測定結果が示すように、ベアメタルステントを用いたステント処置により、驚くほど良好な結果が得られた。今まで、この種の結果は、ステントの表面の、例えば医用コーティングなどのコーティングによる、特別な準備によってのみ達成されると考えられていた。しかし、本実験は、ステントを用いる体管腔の処置の成功は、主としてステントの清浄度に依存することを示す。
【0046】
有利な実施形態において、ステントの全表面は、単位面積当りの粒子数が従来使用されているISO(国際標準化機構)のクリーンルーム・クラス(例えば7)に相当する粒子数より少ない、一様な清浄度を有する。このことは、提案する方法を用いることで、通常使用される最高の清浄度クラスのクリーンルームにおいて可能な清浄度よりも高い清浄度のステント表面を、そうしたクリーンルーム又はそれより低レベルのクリーンルームでさえ必要とすることなく得ることができることを示す。具体的には、本発明のステントは、0.05マイクロメートル未満のサイズの炭素分子及び粒子を、ISO(国際標準化機構)のクリーンルーム・クラス1に対応するよりも少数で有し得る。
【0047】
ステントの表面特性は、本出願人による「Method und Vorrichtung zur Bestimmung einer Oberflaechencharakteristik an Stents und Stent mit definierter Oberflaechencharakteristik」と題する並行する出願による方法及びデバイスによって有利に検証することができる。この出願の、発明のステントの表面特性及び表面組成の決定に関する開示は、その全体が組み入れられる。
【0048】
本発明の好ましい実施形態を、以下、図面を参照しながら説明するが、これら図面は単に説明の役割を果たすに過ぎず、限定的に解釈されるべきものではない。図面から開示される本発明の特徴は、本発明の開示に属するものとして、個々に及び組み合せて見るべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1a】バルーン拡張型ステントに関する本発明による第1の装置を用いた本発明による方法の第1の変形である。
図1b】バルーン拡張型ステントに関する本発明による第1の装置を用いた本発明による方法の第1の変形である。
図1c】バルーン拡張型ステントに関する本発明による第1の装置を用いた本発明による方法の第1の変形である。
図1d】バルーン拡張型ステントに関する本発明による第1の装置を用いた本発明による方法の第1の変形である。
図2a】自己拡張型ステントに関する本発明による方法の第2の変形である。
図2b】自己拡張型ステントに関する本発明による方法の第2の変形である。
図2c】自己拡張型ステントに関する本発明による方法の第2の変形である。
図3】本発明による第2の装置を用いた本発明による方法の第3の変形である。
図4】本発明によるシースを伴う包装体である。
図5a】本発明による一様な清浄度を有するステントの組織形態計測的分析の図である。
図5b】本発明による一様な清浄度を有するステントの組織形態計測的分析の図である。
図5c】本発明による一様な清浄度を有するステントの組織形態計測的分析の図である。
図6a】通常の清浄度を有する、図5aと同じタイプのステントの組織形態計測的分析の図である。
図6b】通常の清浄度を有する、図5bと同じタイプのステントの組織形態計測的分析の図である。
図6c】通常の清浄度を有する、図5cと同じタイプのステントの組織形態計測的分析の図である。
図7a】本発明による第1のステントのインビボX線解析(血管造影)のグラフ表示である。
図7b】本発明による第2のステントのインビボX線解析(血管造影)のグラフ表示である。
図8】従来のベアメタルステント(上図)及び本発明による高清浄金属ステント(下図)の内殖の概略過程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、ステントの例を用いて、本発明による植込み用のインプラントの準備を示す。一般に、移送デバイスとしてバルーンカテーテルを用いるステントの場合には、以下の手順がある。
1.ステントを管状シースに挿入する。
2.ステントの周りに規定された媒体を流す。
3.バルーンカテーテルを入れ、同様に媒体をその周りに流す。
4.しばらくして、媒体がステント及びバルーンの周りに流れておりそのことでそれらの表面に粒子が無くなったときに、バルーンをステント内腔に押し込むことができる。
5.一例において、バルーンをある程度開いて(膨張させて)、ステントが摩擦付着によってバルーン上に留まるようにする。
6.次いで、バルーンカテーテルをステントと共にシースの内部のクリンプユニットに挿入し、ステント及びバルーンの直径を縮小させる。
7.クリンプされた又は取り付けられたステントと共にバルーンカテーテルを包装体内に押し込み、包装体を密封する。
【0051】
図1aから図1dは、本発明による、バルーン拡張型ステントの準備を意図した方法を実行するための第1の変形を示す。図1aから分かるように、この装置はクリンプユニット1の形態の処理ユニットを備える。クリンプユニット1の2つのクリンプ要素が概略的に示されている。もちろんこのユニットは、2つより多くのクリンプ要素を有する。さらに、この装置は、クリンプユニット1の処理軸に沿ってクリンプユニット1を越えて延びるシース2を有し、このシースは前方開口部3及び後方開口部4を有する。シース2は、細長い管として設けられており、可撓性であると共に、直径を縮小することができるものであるか、又は折り畳むことができるものである。前方開口部3には流れユニット5が取り付けられている。後方開口部4の領域には、例えば超音波要素などの洗浄ユニット6が設けられている。流れユニット5は、シースの中を通る矢印方向の規定媒体の流れを生成する。シース2の内部には、ステント7の形態のインプラントと、膨張バルーン9を伴う拡張型カテーテル8の形態の移送デバイスとが配置されている。ステントは、バルーン上で圧縮される前の拡張状態で示されている。ステント7、並びにバルーン9を伴うカテーテル8は両方とも、既に洗浄ユニットを通ってその中で洗浄されており、これらは、今度はシースの内部で流れユニット5の方向である移送方向に移送される間にその周りに流れユニット5からの規定媒体の流れを流されることになる。従って、ステント及び移送デバイスは、ステント及び移送デバイスに対して逆行する流れ移動方向に対応する、装置の内部の流れ方向に逆らって移動する。流れユニットからの汚染粒子を阻止してさらなる汚染を防ぐために、流れユニットにフィルタを接続することができる。
【0052】
図1bに示すように、次の方法ステップにおいて、カテーテル8のバルーン9がステント7の内部に配置され、これら両方がクリンプユニット1内のクリンプ要素1aと1bとの間に保管される。この間、媒体はステント7及び移送デバイスの周りを流れ続け、その結果、移送デバイスの、例えばバルーンの、シャフト由来の不純物は、ステントとバルーンとの間には残留せず、ステント上に付着することはあり得ない。そのため、逆行する流れゆえに、移送デバイスのシャフトなどからの汚染粒子は、移送デバイス、例えばバルーンと、ステントとの間には残留しない。そのために、流れは、クリンプ1の長手軸に沿って生成され、それにより一方の側でユニットに入り、反対側でユニットから出る。従って、クリンプデバイスの構成要素は、シース2の実装のためにも、流れの搬送のためにも改造する必要はない。
【0053】
図1cによる次の方法ステップにおいて、クリンプユニット1のクリンプ要素1a及び1bがステント7を圧縮し、その結果、ステント7は直径を縮小してバルーン9上に配置される。それによりシース2は、ステント7の外表面とクリンプユニット1のクリンプ要素との間にとどまる。規定媒体は、圧縮中も、ステント7の表面がバルーン9上に載置されるまでステント7の周りを流れ続ける。圧縮中、最小限の流れが例えばステントの桟の間を通って流れることもあり、又は、シースの流路の閉鎖に伴い、流れが短時間中断される。バルーン9とステント7との間の粒子の付着は、その傍らを流れる、おそらくはクリンピング中にカテーテルシャフトから剥離したであろう粒子を運ぶ媒体によって防止される。
【0054】
次に、図1dに示すように、バルーン9上で圧縮されたステント7が、シース2の内部でカテーテル8と共にクリンプユニット1の外へと導かれる。これを、そこから直接に包装体内に入れることができる。シースは、それにより少なくとも部分的に包装体内に突出することもでき、又は包装体の開口部の中に出て行くこともできる。
【0055】
ステントは、この装置において、流れ方向Pに逆らって動かされるので、ステントと移送デバイスの前方(遠位)部分との周りには常に新しい媒体が流れる。
【0056】
図2aから図2cには、本発明による、自己拡張型ステントの準備を意図した方法を実行するための第2の変形が示される。このステントの準備のための装置は、図1aから図1dまでの装置と比較可能である。クリンプ要素1a及び1bを有するクリンプユニット1と、クリンプユニット1を貫通するシース2と、矢印P方向の流れとを再び想定する。流れユニット及び洗浄ユニットは、分かりやすくするために図示されていない。シースの内部にステント7及び移送デバイスが設けられている。移送デバイス、又は管状カテーテルは、内管10と、支持管11と、外管12とを備える。内管10上に、従来の方法で体管腔内のステントの位置をチェックするのに役立つ近位X線マーカ13aが設けられる。内管10の端部には、ステントを体管腔内に挿入する際の最も遠い点を定め、同様に(遠位)X線マーカ13bを有するカテーテルチップ14が配置される。内管10はガイドワイヤを覆って配置され、チップ14への通路を形成する。支持管11は、近位X線マーカ13aに隣接する。外管12は、支持管11及び内管10を覆って配置される。
【0057】
図2aにおいて、ステント及び移送デバイスは既に洗浄され、シース2に入れられている。ステント7は、位置決めされた2つのX線マーカ13aと13bとの間で内ホース10によって拡張状態にある。ステントの外周は、この状態ではまだ外管12の内周よりも大きい。ステント7、並びに外管12及び支持管11の端部は、クリンプユニットのクリンプ要素1a及び1bの手前に保管される。
【0058】
図2bから分かるように、ステント7は、クリンプユニット1によって圧縮される。圧縮された状態でステントはマーカ13aと13bとの間にある。圧縮されたステント7の外径は、このとき支持管11の直径に実質的に一致している。ステントは、圧縮状態でクリンプ要素1a及び1bによって保持され、同時に、圧縮状態を維持するためにそのオーステナイト形成温度より低温に冷却される。ステントの冷却のために、例えば、規定媒体の温度を下げることもでき、又はそれ相応に低温の、規定媒体の流れに追加されるか又はこれを置き換える別媒体をシース2の内部に導入することができる。あるいは、シースの外側に冷却媒体を供給することができる。
【0059】
オーステナイト形成温度より低温ではステントは圧縮状態にとどまり、図2cに示すように、ステントを拡張させることなくクリンプ要素1a及び1bを開くことができる。このときステントの直径は依然として外管12の内径より小さいので、外管12をステントに押しかぶせることができ、従ってステントの望ましくない拡張が防止される。次いでステントを包装体内に移送することができる。
【0060】
ステントの圧縮の前及び圧縮中、並びにさらなる移送中に、規定媒体の流れが、ステントの周り及び移送デバイスの周りにも流れる。これにより、ステントの汚染、並びにステントと外管及び/又は内管との間の付着が防止される。
【0061】
図3は、本発明による植込み用のステントの準備のための更なる装置を示す。この装置は、クリンプユニット1と、シース2と、流れユニット5と、洗浄ユニット6と、包装体15とを示す。シース2の内部には、移送デバイス8及びステント7が圧縮状態で保管されており、これらはシース2の内部で動かすことができる。シース2は、洗浄ユニット6から、又は洗浄ユニット6を通り、クリンプユニット1の中を通って、包装体15の第1の開口部16まで延びており、この開口部に接続される。流れユニット5は、第1の開口部16の反対側の第2の開口部17に取り付けられる。従って、矢印P方向の規定媒体の流れは、流れユニット5から包装体15を通ってシース2に流れ込み、シース2内のステント7及び移送デバイス8の周りを流れる。ステント7及び移送デバイス8をこの流れの中で包装体15内に挿入することができる。次に第1及び第2の開口部16及び17を閉じて、ステント及び移送デバイスが包装体内の保護媒体の内部に保管されるようにする。そのため、しばらくの間、シースが取り付けられた包装体の第1の開口部16を閉じて、その結果、第2の開口部17を通じて新しい媒体が包装体に流れ込むことを可能にし、これが第2の開口部17を閉じることにより流れユニットから切り離されるまでとどまるようにすることが有利である。開口部16及び17を閉じるために、例えばOリングの形の、ガスケット19が用いられ、これがクロージャ(ふた)18によって圧縮され、開口部がステント7の両側で移送ユニットの周りで密封されるようになっている。ふた18は、例えば包装体筐体に対する回転を伴う回転機構によって、ガスケット19を圧縮することができる。包装体は硬質材料で作製される。従って、包装体は、ステント及び移送デバイスを機械的影響から保護する役割を果たし、ステント及び移送デバイスをその内部空間内で、規定媒体内で、例えば一部が液体で一部が気体の媒体内で保持する。従って、植込みのために準備する際のステントの汚染が防止される。ここで、ステントは、その移送デバイスと共に包装体内で植込みの準備が整ったことになる。
【0062】
図4は、シース2が包装体20を貫通して延びる代替的な包装体20を示す。シースは、包装体20の第1の開口部21とその反対側の第2の開口部22とを貫通する。方向Pの流れが、シース2及び包装体20の内部でステント7及び移送デバイス8の周りを流れる。開口部21及び22にクロージャ23がシール24と共に設けられ、これらが包装体及びシースを、例えば図3で説明したような回転機構によって密封する。包装体20は、硬質材料で作製され、ステント及び移送デバイスの保護スリーブとして機能する。シース2は、ステント及び移送デバイスを封入してこれを規定媒体内に保持する。
【0063】
図5から図7に、豚の冠状動脈内へのステントの挿入によって得られた動物実験の結果を示す。図7において、動脈内へのステント挿入直後並びに挿入及び内殖の30日後に、ステントの領域内の最小冠状動脈直径を求めた。ステントの挿入後、ステントの直径は、ステントの領域における細胞の内殖のために小さくなる。それゆえ動脈の直径を血管造影法で、即ちX線解析を用いて捕捉する。この研究は、8つの比較試験の測定系列を含む。
【0064】
図5a、図5b及び図5c並びに図6a、図6b及び図6cに、組織学的検査で通例の通り、Medtronicのステントの挿入後に検査した後の豚の冠状血管の断面を示す。それにより元の血管の縁を識別し、次に、共に増殖した細胞(grown−together cell)の断面積を計算し、そこから、知覚できる増殖成長速度、即ち内皮化又は狭窄の速度を求める。
【0065】
図5a、図5b及び図5cでは、例えば前述の並行する特許出願に従って検証することができるように一様かつ高度に清浄な表面を有する、本発明によるステントが用いられている。Medtronic製の3×18mmサイズの市販のステントを本発明による方法で準備したものを用いた。図5aは、血流の近位領域に内殖したステントを示し、図5bは、分岐がある中間領域におけるもの示し、図5cは血流の遠位領域におけるもの示す。見て分かるように、内殖による動脈直径の減少は最小限しか存在しない。そのうえ、ステントの規則的な内殖が存在する。
【0066】
図6a、図6b及び図6cでは、従来の方法で準備され、上述の特許出願に従う方法によって同様に検証することができたように一様で清浄な表面を有さないステントが用いられている。近位領域(図6a)、中間領域(図6b)並びに遠位領域(図6c)の全てにおいて、直径は、図5a、図5b及び図5cのステントよりも著しく狭まった。特に遠位領域において、強度の再狭窄を見ることができる。
【0067】
このことから分かるように、一様かつ清浄なステント表面により、動脈疾患の処置におけるリスクを著しく減らすことができる。そのうえ、本発明による方法及びデバイスを用いれば、製造方法又は特定の準備プロセスに対応するステントの表面特性を、多大な努力及び経費を要さずに確実に決定することが可能である。従って、良好な表面特性を示さないステントを植込みから除外することができる。
【0068】
図7aでは、体管腔内への植込みの準備が整った、ラセン型格子構造を有するMedtronicのステント(3×18mm)を用いた。左の棒グラフは、本発明による準備により一様な表面濡れ挙動を呈するステントの体管腔内での挙動を示し、右の棒グラフは、従来用いられている通りの、包装体から出した直後のさらなる処理ステップ無しのステントの挙動を示す。本発明による一様な表面を有するステントは、従来の方法で準備されたステントとは対照的に、改善された内殖を示すことが明らかである。望ましくない再狭窄を、この例では、本発明によるステントにより29.1%から16.4%まで、即ち約44%減らすことができ、これは統計的に有意である(p=0.009)。
【0069】
図7bでは、規則的な対称性の、即ち非ラセン型の格子構造を有し、体管腔への植込みの準備が整った、3×18mmサイズのAbbottのステントを用いた。左の棒グラフは、ここでもまた本発明による準備後のステントの体管腔内における挙動を示し、右の棒グラフは、従来用いられている通りの、包装体から出した直後のさらなる処理ステップ無しのステントの挙動を示す。この格子構造を有するステントもまた、本発明による準備後には、動脈内での内殖に際して明らかに改善された挙動を示し、直径の狭窄化が45%から24.7%まで、即ち約45%減少し、これは統計的に有意である(p=0.024)。
【0070】
これらの結果から、一様な、又は周期的に規則的な表面濡れ挙動を呈する本発明によるステントの使用により、従来入手可能なステントと比較して明らかに改善された内殖挙動、及び、より少ない再狭窄が示されることが明らかに理解される。従って、本発明により、一様な又は周期的に規則的な表面濡れ挙動がもたらされたベアメタルステント、即ち高度に清浄なステントが体管腔内への植込みのために提供されることになる。
【0071】
図8aから図8eは、本出願人による試験中に識別することができたステントの内殖中の個別ステップの略図である。従来のベアメタルステント103’(上図)による個別ステップ、並びに、高清浄ベアメタルステント103による、具体的にはその全長にわたって一様な表面濡れ挙動又は周期的に規則的な表面濡れ挙動を呈するステントによる個別ステップを示す。高清浄ステントは、本出願人による並行する特許出願であるスイス国特許出願第00049/12号による挙動及び装置によって得たものである。図8aから図8eによる例において、ステントは、高親水性表面を有するものと考えられる。
【0072】
図8aは、ステント表面上の水滴104の濡れ挙動を示す。従来のステント103’(図8a、上図)では接触角が大きいのに対して、高清浄ステント103(図8a、下図)では親水性の表面特性のために非常に小さい接触角が生じる。図8bにおいて、ステントは植込み部位に配置され、考察されている表面は血液に露出する。従来のステント103’(図8b、上図)では、初めに、好中球の接着並びにその機能も妨げるタンパク質(FGN、A2M、ApoA)、いわゆる好中球阻害因子108の付着が起る。高清浄ステント103(図8b、下図)では、好中球阻害因子108(FGN、A2m、ApoA)は大幅に減少し、同時に血小板の接着を妨げるタンパク質(HMWK)、並びにステント表面への好中球の接着を促進するタンパク質(PGN)、いわゆる好中球促進因子109が付着する。その結果として、従来のステント103’(図8c、上図)では、主として血小板110が好中球阻害因子108に定着し、これは基本的に望ましくない。他方、高清浄ステント103(図8c、下図)では、患者の血液由来の好中球細胞111が好中球促進因子109に定着し、その一方で血小板は拒絶される。活性化された好中球細胞111は、ステント表面でタンパク質カテリシジン(LL37)112を分離する(図8d下図参照)。それにより、コーティング又は薬物送達を用いることなく、内殖のプロセスを積極的に支援することができる。従来のステント103’では、非常に少量のカテリシジンしか見いだされなかった。本研究は、高清浄ステント103が、カテリシジンを従来のステントよりも2〜3倍多く蓄積することを示した。規則的な表面濡れ挙動を呈する高清浄ステント103は、図5aから図5cの内殖挙動に相当する内殖挙動を示す(図8e、下図参照)。しかし、従来のステント103’は、図6aから図6cに従う内殖の再開、即ち流路の再狭窄化を示す(図8e、上図参照)。要約すると、ステント103の高清浄面は、ステント103の健全かつ望ましい内殖をもたらす生物活性プロセスを支援し促進すると結論付けることができる。その一方で、望ましくないプロセスは阻害され又は停止される。
【符号の説明】
【0073】
1…クリンプユニット、2…シース、3…前方開口部、4…後方開口部、5…流れユニット、6…洗浄ユニット、7…インプラント、ステント、8…移送デバイス、9…バルーン、10…内管、11…支持管、12…外管、13a、13b…マーカ、14…カテーテルチップ、15…包装、16…第1の開口部、17…第2の開口部、18…クロージャ、19…ガスケット、20…包装体、21…第1の開口部、22…第2の開口部、23…クロージャ、24…ガスケット、103、103’…ステント、104…水滴、108…好中球阻害因子、109…好中球促進因子、110…血小板、111…好中球細胞、112…カテリシジン、P…流れ方向。
[発明の項目]
[項目1]
体管腔内植込み用のインプラントの準備のための装置であって、
インプラント(7、103)の準備のための少なくとも1つの処理ユニット(1)と、
前記処理ユニット(1)の上又は中に少なくとも部分的に配置され、前方開口部(3)と後方開口部(4)とを有するシース(2)であって、前記シース(2)の内部にある前記インプラント(7、103)を前記開口部(3、4)間に保管することが可能なシース(2)と、
前記シース(2)を通る規定媒体の流れ(P)を生成するための、前記シース(2)の前記開口部(3、4)のうちの少なくとも1つに接続される少なくとも1つの流れユニット(5)であって、前記流れ(P)が、前記シース(2)の内部の前記インプラント(7、103)を通って流れる、流れユニット(5)と
を備える装置。
[項目2]
前記シース(2)が、管状及び/又は可撓性に設計されている、項目1に記載の装置。
[項目3]
前記インプラントが、前記シース(2)の内部に移動可能に配置されている、項目1又は2に記載の装置。
[項目4]
前記シース(2)の中又は上に、前記インプラント(7、103)を前記シースの内部に位置決めするための保持手段が設けられている、項目1〜3のいずれか一項に記載の装置。
[項目5]
前記シース(2)が、0.01mmから0.09mmまで、特に0.02mmから0.06mmまでの肉厚を有する、項目1〜4のいずれか一項に記載の装置。
[項目6]
前記シース(2)が、PTFE又はPFAから成る、項目1〜5のいずれか一項に記載の装置。
[項目7]
前記シース(2)が、前記処理ユニット(1)を通って、特に包装ユニットを通って延び、前記処理ユニット(1)の反対側でそこから出る、項目1〜6のいずれか一項に記載の装置。
[項目8]
複数の処理ユニット(1、6)が逐次設けられ、前記シースが前記複数の処理ユニット(1、6)を通って延びる、項目1〜7のいずれか一項に記載の装置。
[項目9]
前記シース(2)は、前記処理ユニット(1)から取り外すことが可能であり、及び/前記処理ユニット(1)の内部で移動可能である、項目1〜8のいずれか一項に記載の装置。
[項目10]
前記処理ユニットが、洗浄ユニット(6)、前記インプラントの圧縮のためのユニット(クリンプユニット)(1)、又は包装ユニット若しくは包装体(15、20)を含む、項目1〜9のいずれか一項に記載の装置。
[項目11]
前記流れユニット(5)と前記シース(2)との間に包装体(15)が配置されている、項目1〜10のいずれか一項に記載の装置。
[項目12]
体管腔内への前記インプラント(7、103)の挿入のために、移送デバイス(8)が、前記シース(2)内のその開口部(3、4)間に前記インプラントと共に設けられている、項目1〜11のいずれか一項に記載の装置。
[項目13]
包装ユニット(15)が、流れ方向において流れユニット(5)の次の最前部に配置され、開口部(17)によって前記流れユニット(5)に接続され、反対側の開口部(16)によって前記シース(2)の開口部に接続される、項目1〜12のいずれか一項に記載の装置。
[項目14]
媒体として生理食塩水又はWFI水が供給される、項目1〜13のいずれか一項に記載の装置。
[項目15]
体管腔内植込み用のインプラントの準備のための方法であって、前記インプラント(7、103)が処理ユニット(1)のシース(2)の内部に挿入され、前記インプラント(7、103)は前記シース(2)の前方開口部(3)と後方開口部(4)との間に保管され、規定媒体の流れ(P)が、前記シース(2)を通して導かれ、前記シース(2)の内部の前記インプラント(7、103)の周りを少なくとも部分的に流れ、前記処理ユニット(1)が、前記シース(2)の外部から前記インプラント(7、103)に作用する、方法。
[項目16]
前記インプラント(7、103)が洗浄され、準備され、包装体へと送られ、及び/又はユニット間で移送されている間、前記流れ(P)が前記インプラント(7、103)の周りを流れる、項目15に記載の方法。
[項目17]
前記インプラント(7、103)が、前記インプラントの洗浄のための洗浄ユニット(6)から1以上の処理ユニット(1)及び/又は包装体(15、20)への移送の間、前記シースの内部にとどまる、項目15又は16に記載の方法。
[項目18]
前記インプラント(7、103)が前記シース(2)と共に、処理ユニット(1)、特にクリンプユニットに入れられ、そこから取り出される、項目15〜17のいずれか一項に記載の方法。
[項目19]
前記インプラント(7、103)を体管腔内へ挿入するための移送ユニット(8)が、前記インプラントと共に、前記シース(2)内に保管される、項目15〜18のいずれか一項に記載の方法。
[項目20]
前記規定媒体の前記流れ(P)が、少なくとも洗浄ユニット(6)並びに処理ユニット(1)及び/又は包装体(15、20)から成る装置内でインプラント(7、103)の移送方向に対して逆行するように生じる、項目15〜19のいずれか一項に記載の方法。
[項目21]
前記流れ(P)の温度が、前記ステント(7、103)の準備中に変更される、項目15〜20のいずれか一項に記載の方法。
[項目22]
少なくとも1つの追加物質が前記流れ(P)に加えられる、項目15〜21のいずれか一項に記載の方法。
[項目23]
前記流れ(P)の強さが可変方式で調節可能である、項目15〜22のいずれか一項に記載の方法。
[項目24]
前記シース(2)の内部の前記インプラント(7、103)を該シース(2)と一緒に包装体(20)内に包装する包装ユニットが設けられる、項目15〜23のいずれか一項に記載の方法。
[項目25]
包装ユニット(15)が、流れ方向において流れユニット(5)の次の最前部に配置され、規定媒体が前記包装ユニット(15)の周りを流れ、前記シース(2)が前記包装ユニット(15)に接続される、項目15〜24のいずれか一項に記載の方法。
[項目26]
植込みのために項目15〜25のいずれか一項に記載の方法によって準備された、ステントの形態のインプラント。
[項目27]
前記ステントの全表面が、1平方メートル当りの粒子数がISO(国際標準化機構)のクリーンルーム・クラス1に相当する粒子数より少ない、一貫した清浄度を有する、項目26に記載のインプラント。
[項目28]
前記ステントが、0.05マイクロメートル未満のサイズの粒子を、ISO(国際標準化機構)のクリーンルーム・クラス1に相当する粒子数よりも少ない粒子数で有する、項目26に記載のインプラント。
[項目29]
体管腔内植込み用のインプラントの包装体であって、前方開口部(3)と後方開口部(4)とを有する管状の可撓性シース(2)を有し、前記開口部(3、4)間に前記インプラント(7、103)が保管され、前記シース(2)が、前記包装体(20)の内部に設けられ、前記シース(2)の前記開口部(3、4)が、前記包装体(20)又は該包装体の部品によって密封される、包装体。
[項目30]
前記シース(2)の前記開口部(3、4)のうちの少なくとも1つにおいて、前記シース(2)を通る規定媒体の流れ(P)を生成するための流れユニット(5)に対する接続部が設けられる、項目29に記載の包装体。
[項目31]
硬質金属の筐体を有する、項目29又は30に記載の包装体。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図8