(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6301300
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】セラミック構造の付加的な製造方法、セラミックの樹脂ベースの付加的な製造のためのシステムおよびセラミックの付加的な製造のための樹脂
(51)【国際特許分類】
C04B 35/565 20060101AFI20180319BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20180319BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20180319BHJP
B33Y 70/00 20150101ALI20180319BHJP
C04B 35/64 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
C04B35/565
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y70/00
C04B35/64
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-204828(P2015-204828)
(22)【出願日】2015年10月16日
(65)【公開番号】特開2016-79091(P2016-79091A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2015年10月16日
(31)【優先権主張番号】62/065,324
(32)【優先日】2014年10月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ウェイド アール.シュミット
【審査官】
小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−182836(JP,A)
【文献】
特開平07−053572(JP,A)
【文献】
特表2004−538184(JP,A)
【文献】
特表2006−521264(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/043425(WO,A1)
【文献】
特開2010−189265(JP,A)
【文献】
特表2006−517174(JP,A)
【文献】
特開2012−017327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B35/565
C04B35/64
B28B 1/30
B29C67/00
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック相に転化するように構成されたプレセラミックポリマーと、反応基で官能化され、前記セラミック相に転化するように構成された、前記プレセラミックポリマー中に分散された無機セラミックフィラー粒子と、を含む樹脂を提供するステップと、
前記樹脂から前記セラミック相の少なくとも1つの層を生成するように、前記樹脂にエネルギー源を印加するステップと、
を含む、セラミック構造の付加製造方法。
【請求項2】
前記プレセラミックポリマーがポリカルボシランであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記セラミック相が炭化ケイ素であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記エネルギー源が、前記プレセラミックポリマー及びセラミックフィラー粒子の少なくとも一方を硬化するレーザー光源であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂が付加製造のために溶液器内に提供されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記無機セラミックフィラー粒子が、分解するように構成された官能基、及び製作中に残存するセラミック相を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂へのエネルギー源の印加が、炭化ケイ素から形成される三次元物体のフリーフォーム製作を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記層及び1つまたは複数の追加の層によって形成された物体を処理するステップをさらに含み、その処理が、熱、プラズマ、マイクロ波及び電磁放射線の少なくとも1つを層に照射することを含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
セラミック相に転化するように構成されたプレセラミックポリマーと、反応基で官能化され、前記セラミック相に転化するように構成された、前記プレセラミックポリマー中に分散された無機セラミックフィラー粒子と、を含む樹脂を収容するように構成された溶液器と、
前記溶液器に近接するエネルギー源と、
前記エネルギー源に連結され、前記樹脂に前記エネルギー源を印加して、前記樹脂から前記セラミック相の少なくとも1つの層を生成するように構成されたコントローラと、
を備えた、セラミックの樹脂ベースの付加製造のためのシステム。
【請求項10】
前記プレセラミックポリマーがポリカルボシランであることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記セラミック相が炭化ケイ素であることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記エネルギー源が、前記プレセラミックポリマー及びセラミックフィラー粒子の少なくとも一方を硬化するレーザー光源であることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記樹脂が付加製造のために溶液器内に提供されることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記無機セラミックフィラー粒子が、分解するように構成された官能基、及び製作中に残存するセラミック相を含むことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記樹脂へのエネルギー源の印加が、炭化ケイ素から形成される三次元物体のフリーフォーム製作を含むことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記層及び1つまたは複数の追加の層によって形成された物体を処理することをさらに含み、その処理が、熱、プラズマ、マイクロ波及び電磁放射線の少なくとも1つを層に照射することを含むことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
セラミック相に転化するように構成されたプレセラミックポリマーと、
反応基で官能化され、前記セラミック相に転化するように構成された、前記プレセラミックポリマー中に分散された無機セラミックフィラー粒子と、
を備えた、セラミックの付加製造のための樹脂。
【請求項18】
前記セラミック相が炭化ケイ素であることを特徴とする請求項17に記載の樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加的な製造、より具体的には、セラミック相構造の付加的な製造のためのシステム、方法及び樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の方法を使用しての高温用途用のセラミック部品の製作は、困難である。例として、一部の材料は、硬度の故に機械加工が困難かつ高価である。高密度材料の機械加工には、長い期間が必要となる場合がある。さらに、特に、従来の方法を使用しての複雑な形状寸法(geometry)の提供、同様に特定の形状の生成は、難題となることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高密度材料から構成要素を製造し、同様に高温用途用の構成要素を生成するためのシステム及び方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
セラミック構造の付加的な製造のためのシステム、方法及び樹脂を本明細書において開示及び主張する。一実施例は、セラミック構造の付加的な製造方法に関する。方法は、プレセラミックポリマーと、このプレセラミックポリマー中に分散された無機セラミックフィラー粒子と、を含む樹脂を提供することを含む。プレセラミックポリマーは、セラミック相に転化するように構成される。無機セラミックフィラー粒子は、反応基で官能化され、セラミック相に転化するように構成される。また、方法は、樹脂にエネルギー源を印加して、樹脂からセラミック相の少なくとも1つの層を生成することも含む。
【0005】
一実施例では、プレセラミックポリマーは、ポリカルボシランである。
【0006】
一実施例では、セラミック相は、炭化ケイ素である。
【0007】
一実施例では、無機セラミックフィラー粒子は、反応基で官能化される。
【0008】
一実施例では、エネルギー源は、プレセラミックポリマー及びセラミックフィラー粒子の少なくとも一方を硬化するレーザー光源である。
【0009】
一実施例では、樹脂は、付加的な製造のために溶液器内に提供される。
【0010】
一実施例では、無機セラミックフィラー粒子は、分解するように構成された官能基、及び製作中に残存するセラミック相を含む。
【0011】
一実施例では、樹脂へのエネルギー源の印加は、炭化ケイ素から形成される三次元物体のフリーフォーム製作を含む。
【0012】
方法は、熱、プラズマ、マイクロ波及び放射線硬化、並びに一般の硬化方法の少なくとも1つによって、層及び1つまたは複数の追加の層によって形成された物体を処理することをさらに含む。
【0013】
別の実施例は、セラミックの付加的な製造のためのシステムに関する。システムは、プレセラミックポリマーと、このプレセラミックポリマー中に分散された無機セラミックフィラー粒子と、を含む樹脂を収容するように構成された溶液器を含む。プレセラミックポリマーは、セラミック相に転化するように構成される。無機セラミックフィラー粒子は、反応基で官能化され、セラミック相に転化するように構成される。システムは、溶液器に近接するエネルギー源と、このエネルギー源に連結され、樹脂にエネルギー源を印加して、樹脂からセラミック相の少なくとも1つの層を生成するように構成されたコントローラと、を含む。
【0014】
別の実施例は、セラミックの付加的な製造のため樹脂に関する。この樹脂は、セラミック相に転化するように構成されたプレセラミックポリマーと、プレセラミックポリマー中に分散された無機セラミックフィラー粒子と、を含む。無機セラミックフィラー粒子は、反応基で官能化され、セラミック相に転化するように構成される。
【0015】
一実施例では、セラミック相は、炭化ケイ素である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】1つまたは複数の実施例に従う簡略化されたシステム図である。
【
図2】1つまたは複数の実施例に従う粒子官能化を示す図である。
【
図3】1つまたは複数の実施例に従う付加的な製造のプロセス示す図である。
【
図4】1つまたは複数の実施例に従う官能化粒子を提供するプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の一態様は、付加的な製造、特に、官能化粒子(functionalized particles)を使用した付加的な製造に関する。一実施例は、プレセラミックポリマー及び官能化粒子を含む樹脂に関する。他の実施例は、官能化無機粒子などの官能化粒子を用いた付加的な製造のためのシステム及び方法に関する。例示の実施例では、炭化ケイ素(SiC)粉末は、炭化ケイ素粉末粒子の表面が、一般に好まれる非酸化物セラミックに転化し、そしてエネルギー源と選択的に相互作用する能力を有する化学基で官能化されるように、官能化(例えば、変性)される。その方法では、粒子の官能化表面をレーザー光によって反応するように硬化または活性化し、熱的な後処理によって炭化ケイ素含有構造を有することができる。官能化は、結合剤を粉末に加えることも含む。一実施例に従い、粉末の官能化は、構造を積層及び硬化するのとは異なる工程である。
【0018】
別の態様は、官能化粒子に加えて、一般に好まれるセラミック相に転化する樹脂を提供することができる。
【0019】
本明細書に使用されるようなセラミック相は、同質の物理的及び化学的特性を有する固体(solid state)及び構造に関する。
【0020】
プレセラミックポリマーは、シリコン基セラミックの製作のための前駆体に関する。
【0021】
無機セラミックフィラー粒子は、粒子または粉末である。無機セラミックフィラー粒子は、乾燥させてもよいし、樹脂で懸濁してもよい。
【0022】
反応基要素は、シリコン基セラミック粒子の結合をもたらすように構成された表面成分に関する。
【0023】
感光性基要素は、シリコン基セラミック粒子の結合をもたらすように構成され、光源によって硬化される表面成分に関する。
【0024】
本明細書に使用されるような「a」または「an」という用語は、1つまたは2つ以上を意味する。「複数」という用語は、2つまたは3つ以上を意味する。「別の」という用語は、第2またはそれ以上のものとして定義される。「含んでいる」及び/または「有している」という用語は、制限のない用語である(例えば、備えている)。本明細書に使用されるような「または」という用語は、包含的なものとして、または任意の1つもしくは任意の組み合わせを意味するものとして解釈されるべきである。それ故に、「A、BまたはC」は、「A、B、C、A及びB、A及びC、B及びC、A、B及びC」のいずれかを意味する。この定義の例外は、要素、機能、工程または行為の組み合わせが、ある意味において本質的に相互排他的である場合にのみ発生する。
【0025】
本文書全体を通して「一実施例」、「特定の実施例」、「ある実施例」または類似の用語の言及は、実施例に関連して記述した特定の特徴、構造または特性が、少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。故に、本明細書の至るところのさまざまな箇所におけるそのような語句の出現は、必ずしもすべてが同一の実施例を参照するわけではない。さらに、特定の特徴、構造または特性は、無制限に、1つ以上の実施例において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0026】
ここで、図面を参照する。
図1は、1つまたは複数の実施例に従うシステム100の簡略化されたシステム図である。システム100は、硬化性樹脂を使用してセラミックの付加的な製造のために構成される。例として、システム100は、機能性無機物を用い、ステレオリソグラフィー(SLA)などのレーザー走査プロセス、代替的に、発光ダイオード(LED)もしくはデジタル光処理(DLP)におけるレーザーを使用して、セラミックを生成することができる。システム100は、コントローラ105、エネルギー源110、プラットフォーム120及び溶液器125を含む。
【0027】
コントローラ105は、エネルギー源110に連結されており、樹脂からセラミック相の少なくとも1つの層を生成するための、樹脂130へのエネルギー源110の印加を制御するように構成される。エネルギー源110の印加は、エネルギー源ビーム115として示すレーザーの生成を含み、エネルギー源ビーム115は、三次元構造を生成するために、セラミック相の層を形成するように用いられる。エネルギー源110は、プレセラミックポリマー及びセラミックフィラー粒子の少なくとも一方を硬化または反応的に結合するレーザー光源であってもよい。エネルギー源110は、光(例えば、フォト)、紫外線(UV)、赤外線(IR)、電子ビーム源、または電磁スペクトルの他の利用可能な領域の1つまたは複数に対応するものであってもよい。システム100は、複数のビームまたは2つ以上のエネルギー源の使用を含むことができる。例えば、特定の実施例では、システム100は、樹脂と相互作用する種々のエネルギーを与える1つまたは複数のエネルギー源を含むことができる。エネルギー源110は、ビーム及びエネルギー源の少なくとも一方を樹脂130に印加するために、樹脂130の上方及び/またはその付近などの、溶液器125及び樹脂130に近接した箇所に位置決めされ得る。
【0028】
プラットフォーム120は、エネルギー源110に対して1つまたは複数の形成された層を位置決めするように昇降機140によって調節される。プラットフォーム120の位置は、コントローラ105によって制御される。
【0029】
溶液器125は、プレセラミックポリマーと、このプレセラミックポリマー中に分散された無機セラミックフィラー粒子と、を含む硬化性樹脂などの樹脂130を収容及び/または保持するように構成される。一実施例では、セラミックフィラー粒子は、感光性基で官能化される。別の実施例では、プレセラミック樹脂は、反応基で官能化される。別の実施例に従い、官能基の硬化性または反応性を高めるために触媒を使用することができる。樹脂130は、付加的な製造のために溶液器125内に提供される。一実施例では、樹脂130は、液体懸濁液である。別の実施例に従い、樹脂130は、無機スラリーである。樹脂130は、無機セラミックフィラー粒子を含み、この無機セラミックフィラー粒子は、分解するように構成された官能基、及び三次元構造の製作中に残存するセラミック相を含む。別の実施例に従い、樹脂130は、ナノ流体である。
【0030】
一実施例では、システム100は、炭化ケイ素構造などの三次元セラミック構造を構築するように構成される。そのようなものとして、プレセラミック及びセラミック相は、炭化ケイ素を生成するように選択される。そのために、一実施例では、プレセラミックポリマーは、ポリカルボシランであり、セラミック相は、炭化ケイ素である。樹脂130は、セラミック相、または高温用途に適したセラミック相などの一般に好まれる他の相に転化するように、分子レベルにおいて構成される。例えば、炭化ケイ素部分を生成するために、システム100は、ポリカルボシランまたは変性ポリカルボシランなどの炭化ケイ素に熱的に転化するプレセラミックポリマーを用いることができる。一実施例では、樹脂130は、樹脂130内に均一に分散されたセラミックフィラー粒子が充填されたスラリーである。例として、炭化ケイ素粒子は、SiCなどの所望のセラミック相にも転化できる感光性基などの反応基で化学的に官能化される。官能化SiC粒子は、スラリー形態において生成され、そしてレーザーベースのSLAタイプシステムであってもよいエネルギー源110は、スラリーを層ごとに硬化することによって三次元固体を構築するように構成される。硬化されていない樹脂またはスラリーの除去では、「未焼結セラミック体」を、熱、プラズマ、マイクロ波及び他の放射方法の1つまたは複数によって照射することにより、さらに後処理され得る。
【0031】
エネルギー源110及びエネルギー源ビーム115によって励起されると、樹脂130などの樹脂のポリカルボシラン成分は、炭化ケイ素のアモルファス、部分的結晶または結晶構造を形成することができる。樹脂130へのエネルギー源110の印加は、炭化ケイ素から形成される三次元物体のフリーフォーム製作(free form fabrication)を含む。一実施例では、樹脂130、特に樹脂表面135へのレーザービーム115の印加によって、プレセラミックポリマー及びセラミックフィラー粒子を、炭化ケイ素などのセラミック相に少なくとも部分的に転化する。
【0032】
一実施例に従い、システム100によって形成された構造は、熱、プラズマ、マイクロ波及び放射線の照射、並びに一般の硬化方法の少なくとも1つによってさらに処理される。
【0033】
システム100の説明は炭化ケイ素に言及するが、付加的な製造のためのシステムに他の無機物及びセラミックポリマーを用いることができることが認識されるべきである。
【0034】
システム100は、高温タービン用途のための高密度のモノリシックセラミック部品を構築及び製作するように構成される。また、システム100は、付加的な製造によって、硬質及び脆性材料から複雑な形状寸法を製作することができる。さらに、システム100により、タービン構成要素に有用なエンジニアリングセラミックの直接製作を含む、樹脂ベースの付加的な製造方法を使用したエンジニアリングセラミックの直接製作が可能である。
【0035】
図2は、1つまたは複数の実施例に従う粒子官能化を示す図である。一実施例に従い、無機粒子は、樹脂(例えば、樹脂130)に加える前に官能化される。
図2は、炭化ケイ素とされ得る無機粒子205を示している。粒子205及び追加の無機粒子は、符号211として示す感光性基要素などの反応基要素で、符号210として示すように官能化される。官能化粒子215は、粒子205及び複数の感光性基要素211を含んで示される。官能化粒子は、ポリカルボシラン溶液などのプレセラミックポリマー内に分配及び分散され得る。官能化粒子215は、官能化無機粒子であってもよい。一実施例に従い、官能化の程度及び組成を調整することができる。特定の実施例では、官能化粒子215は、炭化ケイ素などの所望のセラミック相を意図的に残すように分解する官能基から形成され得る。
【0036】
1つまたは複数の実施例に従い、官能化のための例示の反応基要素は、シリル、ハロゲン、ハロホルミル、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボキシアミド、カルボニル、オキソ、アミノ、アゾ、ベンジル、アミド、カルボキシル、シアナト、イミノ、ケトン、ニトロ、ペルオキシ、フェニル、リン酸、ホスホノ、スルホニル及びスルホに加えて、1つまたは複数のそのような官能基を含有する短鎖構造の1つまたは複数を含むことができる。1つまたは複数の実施例に従い、例示の感光性基要素は、アリールアジド、ハロゲン化アリールアジド、アゾキノン、シンナモイル基、ベンゾフェノン、及びアントラキノンを含む。1つまたは複数の他の実施例に従い、粒子205などの粒子の平均直径は、100ナノメートル〜250ミクロンであってもよい。他の実施例では、粒子205などの粒子の平均直径は、200ナノメートル〜100ミクロンであってもよい。さらに別の実施例では、粒子205などの粒子の平均直径は、500ナノメートル〜50ミクロンであってもよい。粒径分布粒子205は、mono−、bi−またはmulti−modalであってもよい。一実施例に従い、粒子205などの粒子官能化によって、比較的非反応性の開始粒子の良性表面を、反応性の転化可能な表面を有した表面に転化する。一実施例に従い、官能化粒子215は、符号225に示すように共に硬化または反応して層230を形成することができる。層230は、三次元容積形成の単一形成層に見られるような、官能化炭化ケイ素セラミック粒子の硬化されたネットワーク層であってもよい。官能基は、他の官能基または粒子に結合され、セラミック相に部分的に転化される。
【0037】
1つまたは複数の追加の層が、符号235に示すように付加的な製造または積層のために層230に形成され、これにより、三次元オブジェクト240が形成される。積層235は、ステレオリソグラフィーまたはデジタル光処理を通じた、層の繰り返しの積み重ねであってもよい。三次元オブジェクト240は、官能化粒子215及び樹脂(例えば、樹脂130)から形成された炭化ケイ素セラミック構造を示す。三次元オブジェクト240は、構築プロセスに続いて、後処理及び/または機械加工され得る。
【0038】
一実施例に従い、無機粒子は、付加的な製造のために、官能化及び樹脂内に分散されてもよい。
図2は、例示の無機粒子として炭化ケイ素を示している。しかしながら、これらに限定されないが、酸化物、非酸化物、炭化物、窒化物、オキシ炭化物、オキシ窒化物、ホウ化物、リン化物などを含む1つまたは複数の他のタイプの粒子を使用できることが認識されるべきである。
図2の記述は炭化ケイ素に関するが、本明細書に記述したシステム及び方法は、例えば、SiC、Si
3N
4、B
4C、SiCN、SiOC、HfC、AlN、BN、ZrO
2、SiO
2、HfO
2、Al
2O
3、B
2O
3、一ケイ酸イットリウム及び二ケイ酸イットリウムなどの1つまたは複数の例示の無機物を用いることができ、これらの混合体に関わることができる。
【0039】
図3は、1つまたは複数の実施例に従う付加的な製造のためのプロセスを示している。プロセス300は、樹脂(例えば、樹脂130)を官能化粒子(例えば、官能化粒子215)に提供するブロック305において開始される。樹脂は、プレセラミックポリマーと、このプレセラミックポリマー中に分散された無機セラミックフィラー粒子を含むように提供される。プレセラミックポリマーは、炭化ケイ素などのセラミック相に転化するように構成される。一実施例では、
図3のプレセラミックポリマーは、ポリカルボシランである。ポリカルボシラン及び変性ポリカルボシランは、ケイ素炭素を含む構造バックボーンを有するものとして特徴づけられてもよく、熱分解または制御された分解において炭化ケイ素を生成することができる。同様に、ポリシロキサンは、ケイ素酸素バックボーンによって特徴づけられてもよく、熱分解においてオキシ炭化ケイ素を生成する。
【0040】
無機セラミックフィラー粒子は、無機セラミックフィラー粒子215などの反応基で官能化され、セラミック相に転化するように構成される。無機セラミックフィラー粒子は、分解するように構成された官能基、及び製作中に残存するセラミック相を含む。一実施例では、官能化粒子は、樹脂内に均一に分散される。樹脂は、付加的な製造のために溶液器内に提供される。
【0041】
ブロック310において、樹脂にエネルギー源を印加することによって1つまたは複数の層を形成して構築し、樹脂からセラミック相の少なくとも1つの層を生成する。樹脂へのエネルギー源の印加は、炭化ケイ素から形成される三次元物体のフリーフォーム製作を含む。エネルギー源は、プレセラミックポリマー及びセラミックフィラー粒子の少なくとも一方を硬化するレーザー光源であってもよい。例として、ブロック310において「未焼結体」を形成することができる。
【0042】
例えば、炭化ケイ素が所望のセラミック相である場合には、プレセラミックポリマーとしてポリカルボシランを用いることができる。ポリカルボシランは、ケイ素炭素結合を有した液体ポリマーであり、熱の印加によって、ポリマーが、広範囲に及んで縮小された炭化ケイ素に転化されるが、最終的には、アモルファス、部分的結晶または完全に結晶性の炭化ケイ素を生成することができる。一実施例に従い、プレセラミックポリマーと炭化ケイ素粉末の官能化とを組み合わせることによって、樹脂または樹脂スラリーを提供することができる。樹脂または樹脂スラリーの1つの層は、一般に好まれる構造を選出するようにエネルギー源のレーザーまたはエネルギービームを用いて提供される。その後、樹脂の別の層がもたらされ、それに続いてエネルギー源に繰り返し照射される。このように、セラミックに部分的に転化できる、樹脂を含有する三次元構造、及び官能化炭化ケイ素フィラーが構築される。その結果、この構造は、後に熱処理することによって、より多いケイ素炭素構造を生成することができる能力を有する。故に、炭化ケイ素のマトリックスにおける炭化ケイ素粉末が、ポリマーによって生成される。ポリマーは、硬化樹脂に炭化ケイ素フィラーを加えてもよく、積層の一部となる。
【0043】
ブロック315において、形成された構造を硬化または反応させることができる。硬化または反応は、形成された物体を加熱及び/またはそれに圧力を印加することを含むことができる。硬化または反応は、形成された物体を特定の雰囲気組成にさらすことを含むことができる。硬化の結果、物体は、固まる及び/または縮小することができる。
【0044】
プロセス300は、形成された構造の後処理であるブロック320を任意選択的に含むことができる。ブロック320における処理は、層及び1つまたは複数の追加の層によって形成された物体の1つまたは複数を、熱、プラズマ、マイクロ波、別の電磁エネルギー源の照射及び放射線硬化、並びに一般の硬化方法の少なくとも1つによって処理することを含むことができる。硬化していない部分はすべて除去することができる。さらに、熱による物体の後処理によって、構造からより多くの炭化ケイ素が生成される。熱処理後、より多くの樹脂を三次元構造における任意の空洞内に入れることによって、物体を後処理することができる。
【0045】
図4は、1つまたは複数の実施例に従う官能化粒子を提供するプロセスを示している。一実施例に従い、樹脂は、硬化性プレセラミックポリマーに基づいており、光(例えば、フォト)、UV、IR、電子ビームまたは他のエネルギー源の1つまたは複数によって硬化することができる。プロセス400は、樹脂を提供するプロセスを示している。一実施例では、プロセス400は、無機粉末などの無機粒子を受け入れるブロック405において開始される。プロセス400は、反応基要素を無機粒子に結合するブロック410を含む。例えば、無機セラミックフィラー粒子は、ブロック410において感光性基で官能化される。反応基要素及び/または無機セラミックフィラー粒子は、炭化ケイ素などのセラミック相に転化するように構成される。
【0046】
官能化によって結合剤を無機粒子に導き入れることができる。炭化ケイ素粉末に関して、粒子は、ケイ素炭素結合を有する。一実施例に従い、シラン基結合剤などの別のシリコン含有種が、炭化ケイ素粉末に化学的に結合することができる。結合は、反応性または光活性官能基を含む粒子の表面を官能化し、これにより、変性粉末が生成される。粉末を、反応性の光化学的に敏感な流体、または炭化ケイ素に転化する能力も含有する流体内に分散させることができる。本明細書の説明は炭化ケイ素に言及し得るが、他のプレセラミックポリマー材料を用いることもできる。樹脂及び他のプレセラミックポリマーは、主要な樹脂として炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化窒化ケイ素、及び酸炭化ケイ素を形成するように選択され得る。特定の実施例では、ポリマーの誘導体は、ホウ素またはアルミニウムで変性して、追加の性質をもたらすことができる。粉末の官能化は、積層及び硬化するのとは異なる工程である。さらに、材料の官能化に加えて、樹脂は、一般に好まれるセラミックに転化するために選択される。
【0047】
プロセス400は、樹脂内の官能化無機粒子を懸濁するブロック415を任意選択的に含むことができる。ブロック415における官能化粒子の懸濁は、ポリカルボシランなどのセラミック相に転化するように構成されたプレセラミックポリマー内への粒子の均一な分配を含むことができる。
【0048】
本開示を、その例示の実施例を参照して具体的に示し、記述したが、主張された実施例の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細のさまざまな変化を本開示に為せることが当業者に理解されるであろう。