特許第6301561号(P6301561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6301561
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/329 20060101AFI20180319BHJP
   H01L 29/866 20060101ALI20180319BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20180319BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180319BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20180319BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20180319BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20180319BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   H01L29/90 D
   H01L29/78 657C
   H01L29/78 658A
   H01L29/78 655C
   H01L27/06 311B
   H01L27/04 H
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-532198(P2017-532198)
(86)(22)【出願日】2016年9月13日
(86)【国際出願番号】JP2016076989
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】小谷 涼平
(72)【発明者】
【氏名】松原 寿樹
(72)【発明者】
【氏名】石塚 信隆
(72)【発明者】
【氏名】三川 雅人
(72)【発明者】
【氏名】押野 浩
【審査官】 早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−088354(JP,A)
【文献】 特開昭60−092675(JP,A)
【文献】 特開平06−005885(JP,A)
【文献】 特開2004−296819(JP,A)
【文献】 特開平02−023673(JP,A)
【文献】 特開平06−151896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/866
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 21/329
H01L 21/331
H01L 21/336
H01L 21/822
H01L 27/04−27/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に形成され、N型半導体層とP型半導体層とが隣接配置されたツェナーダイオードと、
前記ツェナーダイオードを被覆する第2の絶縁膜と、を備え、
前記P型半導体層におけるP型不純物の濃度は、前記N型半導体層におけるN型不純物の濃度より低く、
前記P型不純物の濃度ピークは、前記P型半導体層の前記第1の絶縁膜との境界領域である第1の境界領域と、前記P型半導体層の前記第2の絶縁膜との境界領域である第2の境界領域との間の非境界領域に位置しており、
前記P型半導体層における前記第1の境界領域には、N型不純物が導入されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記濃度ピークは、前記P型半導体層の全厚のうち内側80%の領域に位置することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記濃度ピークは、前記P型半導体層と前記第1の絶縁膜との境界および前記P型半導体層と前記第2の絶縁膜との境界からそれぞれ20nm以上離れた位置にあることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記P型半導体層における前記第2の境界領域には、N型不純物が導入されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記P型半導体層および前記N型半導体層はポリシリコンからなり、前記第1の絶縁膜および/または前記第2の絶縁膜はシリコン酸化膜からなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記P型不純物はボロンであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
MOS構造をさらに備え、
前記半導体基板の一方の主面と他方の主面との間に主電流が流れ、
前記半導体基板の前記一方の主面には、前記主電流が流れる活性領域と、前記活性領域を取り囲み、前記半導体基板の周縁部を含む耐圧領域とが設けられ、
前記第1の絶縁膜は、前記耐圧領域上に形成され、
前記ツェナーダイオードは、前記N型半導体層と前記P型半導体層とが交互に隣接配置されたものとして構成された過電圧保護ダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体基板は、第1導電型であり、
前記半導体装置は、
前記耐圧領域の前記一方の主面に選択的に形成され、前記活性領域を取り囲む第2導電型の拡散層と、
前記拡散層中に形成された第1導電型の拡散領域と、
前記拡散領域上に形成されたエミッタ電極と、
前記過電圧保護ダイオード上に形成されたゲート電極と、
前記半導体基板の前記他方の主面に形成された第2導電型のコレクタ領域と、
前記コレクタ領域上に形成されたコレクタ電極と、
をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体基板は、第1導電型であり、
前記半導体装置は、
前記耐圧領域の前記一方の主面に選択的に形成され、前記活性領域を取り囲む第2導電型の拡散層と、
前記拡散層中に形成された第1導電型の拡散領域と、
前記拡散領域上に形成されたエミッタ電極と、
前記過電圧保護ダイオード上に形成されたゲート電極と、
前記半導体基板の前記他方の主面に形成された第1導電型のドレイン領域と、
前記ドレイン領域上に形成され、前記ドレイン領域とショットキー障壁を形成するコレクタ電極と、
をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体基板は、第1導電型であり、
前記半導体装置は、
前記耐圧領域の前記一方の主面に選択的に形成され、前記活性領域を取り囲む第2導電型の拡散層と、
前記拡散層中に形成された第1導電型の拡散領域と、
前記拡散領域上に形成されたソース電極と、
前記過電圧保護ダイオード上に形成されたゲート電極と、
前記半導体基板の前記他方の主面に形成された第1導電型のドレイン領域と、
前記ドレイン領域上に形成されたドレイン電極と、
をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項11】
半導体基板上に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜の上に半導体層を形成する工程と、
前記半導体層をエッチングする工程と、
前記エッチングされた半導体層の上に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
前記酸化膜を介して前記半導体層にP型不純物を導入するP型不純物導入工程と、
前記半導体層にN型不純物を選択的に導入する第1のN型不純物導入工程と、
前記半導体層の上に第2の絶縁膜を形成する工程と、
を備え、
前記P型不純物導入工程において、前記導入されたP型不純物の濃度ピークが、前記半導体層の前記第1の絶縁膜との境界領域である第1の境界領域と、前記半導体層の前記第2の絶縁膜との境界領域である第2の境界領域との間の非境界領域に位置するようにP型不純物を導入し、
前記P型不純物の濃度よりも低い濃度のN型不純物を、少なくとも前記半導体層の前記第1の境界領域に導入する第2のN型不純物導入工程をさらに備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2のN型不純物導入工程は前記P型不純物導入工程の前に行われ、前記第2のN型不純物導入工程では、前記P型不純物導入工程において導入される予定のP型不純物の濃度よりも低い濃度のN型不純物を前記半導体層の前記第1の境界領域に導入することを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1の絶縁膜を形成した後であり且つ前記半導体層を形成する前の工程であって、MOS構造形成領域における前記半導体基板にN型不純物を導入する工程において、前記第1の絶縁膜にもN型不純物を導入し、
その後、前記MOS構造形成領域における前記半導体基板に導入されたN型不純物を活性化させるアニール処理によって、前記第1の絶縁膜に導入されたN型不純物を前記半導体層の前記第1の境界領域に拡散させることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記半導体層を形成する前の工程であって、MOS構造形成予定領域に表面高濃度層を形成するためのN型不純物を前記半導体基板に導入する工程をさらに備え、当該工程において前記第1の絶縁膜にもN型不純物を導入することを特徴とする請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第2のN型不純物導入工程は前記P型不純物導入工程の後に行われ、前記第2のN型不純物導入工程では、少なくとも、前記半導体層のうち前記第1のN型不純物導入工程でN型不純物が導入されなかった部分に、前記P型不純物導入工程において導入されたP型不純物の濃度よりも低い濃度のN型不純物を導入することを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記P型不純物導入工程において、前記濃度ピークが前記半導体層の全厚のうち内側80%の領域に位置するようにP型不純物を導入することを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記P型不純物導入工程において、前記濃度ピークが、前記半導体層と前記第1の絶縁膜との境界および前記半導体層と前記第2の絶縁膜との境界からそれぞれ20nm以上離れて位置するようにP型不純物を導入することを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、より詳しくは、MOS(Metal−Oxide−Semiconductor)構造を有し、過電圧保護ダイオードが設けられた半導体装置、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(MOS Field Effect Transistor)など、いわゆるMOS構造を有する半導体装置が知られている。このようなMOS型半導体装置では、過電圧保護対策として、直列接続されたツェナーダイオードにより構成された過電圧保護ダイオードが用いられる。具体的には、この過電圧保護ダイオードは、N型半導体層とP型半導体層とが交互に隣接配置されたものとして構成される(例えば特許文献1参照)。なお、IGBTの場合は、コレクタ端子とゲート端子との間や、ゲート端子とエミッタ端子との間に過電圧保護ダイオードが設けられる。
【0003】
図11に示すように、過電圧保護ダイオードのP型半導体層50b(およびN型半導体層)は、半導体基板120上に形成された絶縁膜140の上に配置されるとともに、絶縁膜150により被覆される。すなわち、過電圧保護ダイオードは、2つの絶縁膜140および150により挟まれている。
【0004】
通常、過電圧保護ダイオードでは、N型半導体層中のN型不純物濃度よりもP型半導体層中のP型不純物濃度の方が低い。このため、過電圧保護ダイオードの耐圧(ツェナー電圧)は、P型不純物濃度の高濃度領域(濃度ピーク)の位置により決まる。従来の過電圧保護ダイオードでは、図11に示すように、P型不純物の濃度は、P型半導体層50bと絶縁膜150との境界領域F10において最大となっている。このため、過電圧保護ダイオードは、境界領域F10でツェナー降伏(ブレークダウン)する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−111304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、MOS型半導体装置の製造プロセス(加熱工程等)において、絶縁膜150中に含まれるナトリウムなどの可動イオンやボロンなどの不純物がP型半導体層50bに移動したり、反対に、P型半導体層50bの境界領域F10におけるボロンなどの不純物が絶縁膜150に移動することがある。このように可動イオンおよび不純物が移動すると、境界領域F10の電位が変化し、P型半導体層50b中のキャリア濃度(正孔濃度等)の分布が変化する。これにより、P型不純物濃度の高濃度領域の位置が変動したのと同様の状態になる。その結果、過電圧保護ダイオードの耐圧が大きく変動する。従来、可動イオンや不純物の移動を制御することは困難であることから、過電圧保護ダイオードの耐圧を安定させることが困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、過電圧保護ダイオードの耐圧変動を抑制することが可能な半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体装置は、
導電性の半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に形成され、N型半導体層とP型半導体層とが隣接配置されたツェナーダイオードと、
前記ツェナーダイオードを被覆する第2の絶縁膜と、を備え、
前記P型半導体層におけるP型不純物の濃度は、前記N型半導体層におけるN型不純物の濃度より低く、
前記P型不純物の濃度ピークは、前記P型半導体層の前記第1の絶縁膜との境界領域である第1の境界領域と、前記P型半導体層の前記第2の絶縁膜との境界領域である第2の境界領域との間の非境界領域に位置することを特徴とする。
【0009】
また、前記半導体装置において、
前記濃度ピークは、前記P型半導体層の全厚のうち内側80%の領域に位置するようにしてもよい。
【0010】
また、前記半導体装置において、
前記濃度ピークは、前記P型半導体層と前記第1の絶縁膜との境界および前記P型半導体層と前記第2の絶縁膜との境界からそれぞれ20nm以上離れた位置にあるようにしてもよい。
【0011】
また、前記半導体装置において、
前記P型半導体層における前記第1の境界領域および/または前記第2の境界領域には、N型不純物が導入されていてもよい。
【0012】
また、前記半導体装置において、
前記P型半導体層および前記N型半導体層はポリシリコンからなり、前記第1の絶縁膜および/または前記第2の絶縁膜はシリコン酸化膜からなるようにしてもよい。
【0013】
また、前記半導体装置において、
前記P型不純物はボロンであるようにしてもよい。
【0014】
また、前記半導体装置において、
MOS構造をさらに備え、
前記半導体基板の一方の主面と他方の主面との間に主電流が流れ、
前記半導体基板の前記一方の主面には、前記主電流が流れる活性領域と、前記活性領域を取り囲み、前記半導体基板の周縁部を含む耐圧領域とが設けられ、
前記第1の絶縁膜は、前記耐圧領域上に形成され、
前記ツェナーダイオードは、前記N型半導体層と前記P型半導体層とが交互に隣接配置されたものとして構成された過電圧保護ダイオードであるようにしてもよい。
【0015】
また、前記半導体装置において、
前記半導体基板は、第1導電型であり、
前記半導体装置は、
前記耐圧領域の前記一方の主面に選択的に形成され、前記活性領域を取り囲む第2導電型の拡散層と、
前記拡散層中に形成された第1導電型の拡散領域と、
前記拡散領域上に形成されたエミッタ電極と、
前記過電圧保護ダイオード上に形成されたゲート電極と、
前記半導体基板の前記他方の主面に形成された第2導電型のコレクタ領域と、
前記コレクタ領域上に形成されたコレクタ電極と、
をさらに備えてもよい。
【0016】
また、前記半導体装置において、
前記半導体基板は、第1導電型であり、
前記半導体装置は、
前記耐圧領域の前記一方の主面に選択的に形成され、前記活性領域を取り囲む第2導電型の拡散層と、
前記拡散層中に形成された第1導電型の拡散領域と、
前記拡散領域上に形成されたエミッタ電極と、
前記過電圧保護ダイオード上に形成されたゲート電極と、
前記半導体基板の前記他方の主面に形成された第1導電型のドレイン領域と、
前記ドレイン領域上に形成され、前記ドレイン領域とショットキー障壁を形成するコレクタ電極と、
をさらに備えてよい。
【0017】
また、前記半導体装置において、
前記半導体基板は、第1導電型であり、
前記半導体装置は、
前記耐圧領域の前記一方の主面に選択的に形成され、前記活性領域を取り囲む第2導電型の拡散層と、
前記拡散層中に形成された第1導電型の拡散領域と、
前記拡散領域上に形成されたソース電極と、
前記過電圧保護ダイオード上に形成されたゲート電極と、
前記半導体基板の前記他方の主面に形成された第1導電型のドレイン領域と、
前記ドレイン領域上に形成されたドレイン電極と、
をさらに備えてもよい。
【0018】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、
半導体基板上に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜の上に半導体層を形成する工程と、
前記半導体層をエッチングする工程と、
前記エッチングされた半導体層の上に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
前記酸化膜を介して前記半導体層にP型不純物を導入するP型不純物導入工程と、
前記半導体層にN型不純物を選択的に導入するN型不純物導入工程と、
前記半導体層の上に第2の絶縁膜を形成する工程と、
を備え、
前記P型不純物導入工程において、前記導入されたP型不純物の濃度ピークが、前記半導体層の前記第1の絶縁膜との境界領域である第1の境界領域と、前記半導体層の前記第2の絶縁膜との境界領域である第2の境界領域との間の非境界領域に位置するようにP型不純物を導入することを特徴とする。
【0019】
また、前記半導体装置の製造方法において、
前記P型不純物導入工程の前において、前記P型不純物導入工程において導入される予定のP型不純物の濃度よりも低い濃度のN型不純物を前記半導体層に導入する工程をさらに備えてもよい。
【0020】
また、前記半導体装置の製造方法において、
前記第1の絶縁膜を形成した後であり且つ前記半導体層を形成する前の工程であって、MOS構造形成領域における前記半導体基板にN型不純物を導入する工程において、前記第1の絶縁膜にもN型不純物を導入し、
その後、前記MOS構造形成領域における前記半導体基板に導入されたN型不純物を活性化させるアニール処理によって、前記第1の絶縁膜に導入されたN型不純物を前記半導体層の前記第1の境界領域に拡散させるようにしてもよい。
【0021】
また、前記半導体装置の製造方法において、
前記半導体層を形成する前の工程であって、MOS構造形成予定領域に表面高濃度層を形成するためのN型不純物を前記半導体基板に導入する工程をさらに備え、当該工程において前記第1の絶縁膜にもN型不純物を導入するようにしてもよい。
【0022】
また、前記半導体装置の製造方法において、
前記P型不純物導入工程の後において、少なくとも、前記半導体層のうち前記N型不純物導入工程でN型不純物が導入されなかった部分に、前記P型不純物導入工程において導入されたP型不純物の濃度よりも低い濃度のN型不純物を導入する工程をさらに備えてもよい。
【0023】
また、前記半導体装置の製造方法において、
前記P型不純物導入工程において、前記濃度ピークが前記半導体層の全厚のうち内側80%の領域に位置するようにP型不純物を導入してもよい。
【0024】
また、前記半導体装置の製造方法において、
前記P型不純物導入工程において、前記濃度ピークが、前記半導体層と前記第1の絶縁膜との境界および前記半導体層と前記第2の絶縁膜との境界からそれぞれ20nm以上離れて位置するようにP型不純物を導入してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、P型半導体層におけるP型不純物の濃度ピークが、P型半導体層の第1の絶縁膜との境界領域である第1の境界領域と、P型半導体層の第2の絶縁膜との境界領域である第2の境界領域との間の非境界領域に位置する。これにより過電圧保護ダイオードは非境界領域でツェナー降伏するようになるため、可動イオンおよび不純物の移動が過電圧保護ダイオードの耐圧に与える影響を抑制することができる。
【0026】
よって、本発明によれば、過電圧保護ダイオードの耐圧変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の実施形態に係る半導体装置1(IGBT)の平面図である。
図2図1のI−I線に沿う断面図である。
図3図1のII−II線に沿う断面図である。
図4】過電圧保護ダイオード5の一部を拡大した斜視図である。
図5】実施形態に係るP型半導体層5bにおけるP型不純物濃度のプロファイルを示す図である。
図6A】実施形態に係る半導体装置1の製造方法を説明するための工程断面図である。
図6B図6Aに続く、実施形態に係る半導体装置1の製造方法を説明するための工程断面図である。
図6C図6Bに続く、実施形態に係る半導体装置1の製造方法を説明するための工程断面図である。
図7】実施形態に係るP型半導体層5bにおける不純物濃度のプロファイルを示す図である。
図8】実施形態に係るP型半導体層5bにおける不純物濃度のプロファイルを示す図である。
図9】第1の実施形態の変形例に係る半導体装置1A(IGBT)の断面図である。
図10】第2の実施形態に係る半導体装置1B(縦型MOSFET)の断面図である。
図11】従来のP型半導体層50bにおけるP型不純物濃度のプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付す。
【0029】
(第1の実施形態)
図1図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置1について説明する。なお、図1に示す半導体装置1の平面図では、絶縁膜15、表面保護膜16、エミッタ電極21、ゲート電極22、ストッパ電極24は図示していない。
【0030】
第1の実施形態に係る半導体装置1は、MOS構造を有するIGBTであり、導電性の半導体基板2の上面2a(一方の主面)と下面2b(他方の主面)との間に主電流が流れる。なお、半導体基板2は、本実施形態ではシリコン基板である。ただし、本発明はこれに限るものではなく、その他の半導体基板(例えばSiC基板、GaN基板等)であってもよい。また、半導体基板2の導電型は、本実施形態ではN型であるが、これに限定されない。
【0031】
図1に示すように、半導体基板2の上面2aには、主電流が流れる活性領域Aと、この活性領域Aを取り囲む耐圧領域Bとが設けられている。耐圧領域Bは、半導体基板2の周縁部を含む。ここで、「周縁部」とは、半導体基板2の側面を含む、半導体基板2の周縁部分のことである。
【0032】
図1図3に示すように、半導体装置1は、P型の拡散層3と、絶縁膜4(第1の絶縁膜)と、絶縁膜15(第2の絶縁膜)と、過電圧保護ダイオード5と、導体部6,7,8,9と、P型のコレクタ領域12と、N型の拡散領域13と、N型のストッパ領域14と、表面保護膜16と、エミッタ電極21と、ゲート電極22と、コレクタ電極23と、ストッパ電極24とを備えている。なお、半導体基板2の上面2aには、ゲートパット(図示せず)が設けられる。
【0033】
拡散層3は、耐圧領域Bの上面2aに選択的に形成されており、活性領域Aを取り囲んでいる。この拡散層3は、P型ベース領域とも呼ばれる。なお、図1の境界P1とP2で囲まれた領域がP型ベース領域である。ここで、境界P1は拡散層3と周辺半導体領域10間のpn接合の境界であり、境界P2は活性領域Aと耐圧領域Bの境界である。周辺半導体領域10は、拡散層3の外側に位置するN型の半導体領域である。
【0034】
なお、半導体装置1には、高耐圧化のために、拡散層3を取り囲むように設けられたP型の拡散層(ガードリング)をさらに備えてもよい。このガードリングは、耐圧領域Bの上面2aに選択的に形成される。また、ガードリングの本数は、1本に限らず、2本以上であってもよい。
【0035】
拡散層3およびガードリングの不純物濃度は、例えば1×1014cm−3〜1×1019cm−3である。拡散層3およびガードリングの深さは、例えば2μm〜10μmである 。また、周辺半導体領域10の不純物濃度は、例えば1×1013cm−3〜1×1015cm−3である。
【0036】
絶縁膜4は、半導体基板2の耐圧領域B上に形成されている。本実施形態では、絶縁膜4は、図2に示すように、拡散層3上、および周辺半導体領域10上に形成されている。この絶縁膜4は、例えばシリコン酸化膜(SiO膜)であり、より具体的にはフィールド酸化膜である。絶縁膜4の厚さは、例えば200nm〜2000nmである。
【0037】
過電圧保護ダイオード5は、複数のツェナーダイオードが直列接続されたものである。本実施形態では、過電圧保護ダイオード5は、半導体装置1のコレクタ電極23とゲート電極22との間に設けられた過電圧保護ダイオードである。ただし、本発明に係る過電圧保護ダイオードの構成を、ゲート電極22とエミッタ電極21との間に設けられた過電圧保護ダイオードに適用してもよい。
【0038】
過電圧保護ダイオード5は、図2および図4に示すように、絶縁膜4の上に形成されており、N型半導体層5aとP型半導体層5bとが交互に隣接配置されたものとして構成されている。N型半導体層5aおよびP型半導体層5bは、耐圧領域Bの絶縁膜4上に形成されている。詳細は半導体装置1の製造方法において述べるが、過電圧保護ダイオード5は、例えば、絶縁膜4上にP型半導体層を形成し、その後、P型半導体層の所定領域にN型不純物を導入することにより形成される。
【0039】
N型半導体層5aおよびP型半導体層5bは、導電性の半導体(本実施形態では不純物が導入されたポリシリコン)からなる。より詳しくは、N型半導体層5aは、N型不純物(リン等)が導入されたポリシリコン層である。P型半導体層5bは、P型不純物(ボロン等)が導入されたポリシリコン層である。P型半導体層5bのP型不純物の濃度は、例えば1×1017cm−3〜1×1019cm−3である。N型半導体層5aのN型不純物の濃度は、例えば1×1019cm−3〜1×1021cm−3である。このようにP型半導体層5bにおけるP型不純物の濃度は、N型半導体層5aにおけるN型不純物の濃度より低い。なお、ポリシリコン層の厚さは、例えば、100nm〜1000nmである。
【0040】
図5に示すように、P型半導体層5bにおけるP型不純物の濃度ピークは、非境界領域Gに位置する。ここで、非境界領域Gとは、P型半導体層5bの絶縁膜15との境界領域F1と、P型半導体層5bの絶縁膜4との境界領域F2との間の領域のことである。
【0041】
導体部6,7,8,9は、図1に示すように、絶縁膜4上に耐圧領域Bに沿って活性領域Aを取り囲むように形成され、過電圧保護ダイオード5の所定の部位にそれぞれ電気的に接続されている。すなわち、導体部6,7,8,9は各々の所要の電圧に基づいて過電圧保護ダイオード5の半導体層(N型半導体層5aまたはP型半導体層5b)に電気的に接続されている。なお、接続先の半導体層は、導体部と同じ導電型の半導体層である。導体部は、連続する2つ以上の半導体層に跨がって接続されてもよい。
【0042】
導体部6,7,8,9は、例えばポリシリコンまたはアルミニウム等の導電性材料からなる。図3に示すように、導体部6,7は、絶縁膜4を介して拡散層3の上方に配置されており、導体部8,9は、絶縁膜4を介して周辺半導体領域10の上方に配置されている。なお、導体部の本数は4本に限るものではなく、任意の本数でよい。
【0043】
拡散領域13は、図2に示すように、拡散層3中に形成されたN型の半導体領域である。この拡散領域13上にエミッタ電極21が形成されている。なお、拡散領域13の不純物濃度は、例えば1×1019cm−3〜1×1021cm−3である。
【0044】
ストッパ領域14は、図2および図3に示すように、半導体基板2の側端における上面2aに形成されたN型の半導体領域である。このストッパ領域14の不純物濃度は、周辺半導体領域10よりも高い。ストッパ電極24は、過電圧保護ダイオード5の他端(図2では右端)に電気的に接続されている。ストッパ領域14上には、ストッパ電極24が形成されている。なお、ストッパ領域14の不純物濃度は、例えば1×1019cm−3〜1×1021cm−3である。
【0045】
ゲート電極22は、絶縁膜4を介して拡散層3の上方に設けられている。このゲート電極22は、本実施形態では、過電圧保護ダイオード5上に形成されている。より詳しくは、図2に示すように、ゲート電極22は過電圧保護ダイオード5の活性領域A側の一端(図2では左端)に電気的に接続されている。
【0046】
P型のコレクタ領域12は、半導体基板2の下面2bに形成されている。このコレクタ領域12の不純物濃度は、例えば1×1017cm−3〜1×1019cm−3である。図2に示すように、コレクタ領域12上にコレクタ電極23が形成されている。なお、コレクタ領域12に隣接してN型のバッファ領域11が設けられてもよい。このバッファ領域11の不純物濃度は、例えば1×1016cm−3〜1×1018cm−3である。
【0047】
絶縁膜15は、図2に示すように、過電圧保護ダイオード5を被覆するように設けられている。この絶縁膜15の厚さは、例えば200nm〜2000nmである。絶縁膜15は、例えばシリコン酸化膜であり、本実施形態ではBPSG(Boron Phosphorous Silicate Glass)膜である。
【0048】
表面保護膜16は、図2に示すように、半導体装置1の上面2a側を被覆する。この表面保護膜16は、例えばポリイミド膜またはシリコン窒化膜である。
【0049】
上記のように、本実施形態に係る半導体装置1では、P型半導体層5bにおけるP型不純物の濃度ピークが境界領域F1と境界領域F2との間の非境界領域Gに位置する。これにより、過電圧保護ダイオード5は非境界領域Gでツェナー降伏するようになる。このため、可動イオンまたは不純物の移動、より具体的には、可動イオンまたは不純物が、境界領域F1およびP型半導体層5b間、または、境界領域F2およびP型半導体層5b間を跨ぐように移動した場合であっても、過電圧保護ダイオード5の耐圧変動を抑制することができる。このように、本実施形態によれば、過電圧保護ダイオード5の耐圧変動を抑制することができる。すなわち、過電圧保護ダイオード5の耐圧を安定化することができる。
【0050】
なお、好ましくは、境界領域F1およびF2はそれぞれ、P型半導体層5bの全厚のうち外側10%の領域である。換言すれば、非境界領域Gは、好ましくは、P型半導体層5bの全厚のうち内側80%の領域である。この場合、P型半導体層5bにおけるP型不純物の濃度ピークは、P型半導体層5bの全厚のうち内側80%の領域に位置する。これにより、P型半導体層5bと絶縁膜4間、および/または、P型半導体層5bと絶縁膜15間の可動イオン(ナトリウムイオン等)および不純物(ボロン等)の移動が過電圧保護ダイオード5の耐圧に与える影響を十分に抑制することができる。その結果、過電圧保護ダイオード5の耐圧をより安定化させることができる。
【0051】
また、好ましくは、P型半導体層5bにおけるP型不純物の濃度ピークは、P型半導体層5bと絶縁膜4との境界、およびP型半導体層5bと絶縁膜15との境界からそれぞれ20nm以上(より好ましくは50nm以上)離れた位置にある。これにより、P型半導体層5bと絶縁膜4間、および/または、P型半導体層5bと絶縁膜15間における、ナトリウムなどの可動イオンやボロンなどの不純物の移動が過電圧保護ダイオード5の耐圧に与える影響を十分に抑制することができる。その結果、過電圧保護ダイオード5の耐圧をより安定化させることができる。
【0052】
また、境界領域F1および/または境界領域F2には、N型不純物が導入されていてもよい。これにより、N型不純物により境界領域中のキャリア濃度(正孔濃度等)を低下させることができ、過電圧保護ダイオード5の耐圧(ツェナー電圧)のばらつきを、さらに小さくすることができる。なお、N型不純物の濃度は、P型不純物の濃度よりも低く、例えば1×1015cm−3〜1×1017cm−3程度である。
【0053】
<半導体装置1の製造方法>
次に、上記の半導体装置1の製造方法について、図6A図6Bおよび図6Cの工程断面図を参照して説明する。なお、図6A図6Bおよび図6Cでは、左側の図がMOS構造形成領域を示し、右側の図が過電圧保護ダイオード形成領域を示す。
【0054】
まず、導電性の半導体基板を用意する。本実施形態では、比較的低濃度のN型(N−)の半導体基板2を用意する。そして、図6A(1)に示すように、P型の拡散層3を半導体基板2の上面2aに選択的に形成する。その後、半導体基板2の上面2a全面に絶縁膜4を形成する。本実施形態では、絶縁膜4としてフィールド酸化膜を形成する。
【0055】
次に、絶縁膜4の所定領域(MOS構造形成領域)における絶縁膜4をエッチングにより除去する。その後、図6A(1)に示すように、選択的イオン注入法によりMOS構造形成領域に選択的にN型不純物(リン等)を導入する。導入されるN型不純物の濃度は、例えば1×1015cm−3〜1×1017cm−3である。
【0056】
次に、図6A(2)に示すように、MOS構造形成領域にゲート酸化膜61を形成し、その後、ゲート酸化膜61および絶縁膜4の上にポリシリコン層(半導体層)50を形成する。そして、MOS構造形成領域におけるゲート酸化膜61およびポリシリコン層50をエッチングにより所定のゲート形状に加工する。なお、ポリシリコン層50のエッチングにより、過電圧保護ダイオード5および導体部6,7,8,9(ポリシリコンの場合)の外形が形成される。
【0057】
次に、図6A(3)に示すように、半導体基板2を加熱処理(アニーリング)する。これにより、MOS構造形成領域に導入されたN型不純物を拡散および活性化させてN型領域(Nウェル、表面高濃度層)63を形成するとともに、半導体基板2の上面2a側の全面に酸化膜62を形成する(酸化膜形成工程)。その結果、エッチングされたポリシリコン層50の上に酸化膜62が形成される。なお、酸化膜62は、半導体基板2の加熱により形成される熱酸化膜である。
【0058】
次に、図6A(4)に示すように、酸化膜62を介してP型不純物(ボロン等)をポリシリコン層50およびN型領域63に導入する(P型不純物導入工程)。本工程では、ポリシリコン層50に導入されたP型不純物の濃度ピークが、境界領域F1と境界領域F2との間の非境界領域Gに位置するようにP型不純物を深く導入する。導入されるP型不純物の濃度は、例えば1×1016cm−3〜1×1018cm−3である。
【0059】
なお、P型不純物導入工程においては、P型不純物の濃度ピークがポリシリコン層50の全厚のうち内側80%の領域に位置するようにP型不純物を導入することが好ましい。
【0060】
また、P型不純物導入工程においては、P型不純物の濃度ピークが、ポリシリコン層50と絶縁膜4との境界、およびポリシリコン層50と絶縁膜15との境界からそれぞれ20nm以上(より好ましくは50nm以上)離れて位置するようにP型不純物を導入することが好ましい。
【0061】
イオン注入法によりP型不純物を導入する場合には、通常(例えば50eV)よりも高い加速エネルギー(例えば、100keV)によりP型不純物をイオン注入する。P型不純物導入工程においては、P型不純物が、ポリシリコン層50に導入されるとともに、MOS形成予定領域の半導体基板2にも導入されてMOS構造の一部を構成する。このため、製造方法を効率化することができる。
【0062】
次に、図6B(1)に示すように、所定形状のボディ領域を形成するために、選択的イオン注入法により、P型不純物(ボロン等)をMOS構造形成領域に深く導入する。導入されるP型不純物の濃度は、例えば1×1016cm−3〜1×1018cm−3である。
【0063】
次に、図6B(2)に示すように、半導体基板2を加熱処理(アニーリング)することにより、導入されたP型不純物を拡散および活性化させてポリシリコン層50をP型半導体層とするとともに、N型領域63中にP型領域(ボディ領域)64を形成する。
【0064】
次に、図6B(3)に示すように、半導体基板2の周縁部における絶縁膜4をエッチングにより除去する。
【0065】
次に、図6B(4)に示すように、選択的イオン注入法により、ポリシリコン層50の所定領域、P型領域64の所定領域、および半導体基板2の周縁部にN型不純物(リン等)を選択的に導入する(N型不純物導入工程)。より詳しくは、ポリシリコン層50のうちN型半導体層5aを形成する部分、およびP型領域64のうちソース・ドレイン領域を形成する部分にN型不純物を導入する。なお、導入されるN型不純物の濃度は、例えば1×1019cm−3〜1×1021cm−3である。また、本工程において、導体部6,7,8,9の元となるポリシリコン層50にN型不純物を導入してもよい。
【0066】
次に、図6C(1)に示すように、半導体基板2を加熱処理(アニーリング)することにより、導入されたN型不純物を拡散および活性化させて、ポリシリコン層50およびP型領域64の所定領域、ならびに半導体基板2の周縁部をN型半導体層とする。すなわち、ポリシリコン層50の所定領域をN型半導体層5aとし、P型領域64の所定領域をN+領域(ソース・ドレイン領域)65とする。これにより、N型半導体層5aとP型半導体層5bが隣接配置されてなる過電圧保護ダイオード5が形成される。また、半導体基板2の周縁部に導入されたN型不純物が加熱処理により拡散および活性化することによりストッパ領域14が形成される。
【0067】
その後、図6C(2)に示すように、ポリシリコン層50(過電圧保護ダイオード5)と、MOS構造のゲートとを被覆する絶縁膜15を形成する。そして、エミッタ電極21およびストッパ電極24をスパッタリングまたは真空蒸着等により形成する。
【0068】
上記製造方法の説明では、P型不純物またはN型不純物を導入した直後にアニール処理を行ったが、複数の不純物導入工程が終了した後にまとめてアニール処理を行ってもよい。また、上記のように酸化膜62を最後まで残す場合は、酸化膜62と絶縁膜15が本願請求項の第2の絶縁膜に相当する。
【0069】
なお、上記半導体装置の製造方法は、P型不純物導入工程の前において、ポリシリコン層50(半導体層)にN型不純物を導入する工程を有してもよい。導入されるN型不純物の濃度は、P型不純物導入工程において導入される予定のP型不純物の濃度よりも低い(例えば1×1015cm−3〜1×1017cm−3)。このようにすることで、境界領域F1およびF2のキャリア濃度(正孔濃度等)が低下するため、可動イオンや不純物の影響をさらに抑制することができる。よって、過電圧保護ダイオード5の耐圧変動をさらに抑制できる。なお、N型不純物は、ポリシリコン層50の全面にわたって導入されてもよいし、あるいは、P型半導体層5bとなる部分にのみ選択的に導入されてもよい。なお、N型不純物の濃度ピークがP型不純物の濃度ピークと異なるように(好ましくは、濃度ピークが境界領域F1またはF2に位置するように)N型不純物を導入してもよい。
【0070】
なお、図6A(1)を参照して説明したN型領域63(表面高濃度層)を形成するための不純物導入工程において、MOS構造形成予定領域の半導体基板2だけでなく、絶縁膜4にN型不純物を導入してもよい。すなわち、ポリシリコン層50(半導体層)を形成する前の工程であって、MOS構造形成予定領域に表面高濃度層を形成するためのN型不純物を半導体基板2に導入する工程において、絶縁膜4にもN型不純物を導入してもよい。このようにして絶縁膜4に導入されたN型不純物は、半導体基板2を加熱処理してMOS構造形成領域にN型領域63を形成する際に、ポリシリコン層50の境界領域F2に拡散する。これにより、P型半導体層5bの境界領域F2におけるキャリア濃度(正孔濃度等)が低下するため、可動イオンや不純物の影響をさらに抑制することができる。
【0071】
図7は、P型不純物導入工程を行った後の、P型半導体層5bにおけるP型不純物およびN型不純物の濃度分布(アニール処理後)を示している。PはP型不純物の濃度分布を示し、NはN型不純物の濃度分布を示し、P−Nは実質的なP型不純物の濃度を示している。図7に示すように、境界領域F1およびF2において実質的なP型不純物濃度が低下している。すなわち、N型不純物導入により、境界領域F1およびF2のキャリア濃度(正孔濃度等)が低下する。
【0072】
上記説明ではMOS構造形成領域にプレーナゲート型のゲートを作製したが、これに限られずトレンチゲート型のゲートを作製してもよい。トレンチゲート型のゲートを作製する場合も、上記と同様にしてゲートおよび過電圧保護ダイオードを作製することができる。
【0073】
なお、P型不純物導入工程の前にポリシリコン層50にN型不純物を導入する方法の一つとして以下の方法がある。すなわち、図6A(1)を参照して説明した工程(MOS構造形成領域における半導体基板2にN型不純物を選択的に導入する工程)において、MOS構造形成領域だけでなく、絶縁膜4にもN型不純物を導入する。その後、図6A(3)を参照して説明した加熱処理(アニール処理)によって、絶縁膜4中のN型不純物をポリシリコン層50の境界領域F2に拡散させる。これにより、境界領域F2のキャリア濃度(正孔濃度等)を低下させることができる。
【0074】
上記半導体装置の製造方法は、P型不純物導入工程の後において、ポリシリコン層50(半導体層)のうち、N型不純物導入工程でN型不純物が導入されなかった部分にN型不純物を導入する工程(N型不純物導入工程)を有してもよい。このN型不純物導入工程は、前述のN型不純物導入工程の前に行ってもよいし、あるいは、N型不純物導入工程の後に行ってもよい。
【0075】
型不純物導入工程で導入されるN型不純物の濃度は、P型不純物導入工程において導入されたP型不純物の濃度よりも低い(例えば1×1015cm−3〜1×1017cm−3)。このようにすることで、境界領域F1のキャリア濃度(正孔濃度等)が低下するため、可動イオンや不純物の影響をさらに抑制することができる。よって、過電圧保護ダイオード5の耐圧変動をさらに抑制できる。なお、N型不純物の濃度ピークは、境界領域F1内に位置するようにイオン注入を行うことが好ましい。N型不純物はポリシリコン層50の全面にわたって(すなわち、N型不純物導入工程においてN型不純物が導入された領域にも)導入されてよい。
【0076】
図8は、N型不純物導入工程を行った後の、P型半導体層5bにおけるP型不純物およびN型不純物の濃度分布(アニール処理後)を示している。PはP型不純物の濃度分布を示し、NはN型不純物の濃度分布を示し、P−Nは実質的なP型不純物の濃度を示している。図8に示すように、少なくとも境界領域F1において実質的なP型不純物濃度が低下している。すなわち、N型不純物導入により、少なくとも境界領域F1のキャリア濃度(正孔濃度等)が低下する。
【0077】
<半導体装置1の変形例>
IGBTの構成は上記の半導体装置1に限らない。図9は、第1の実施形態の変形例に係る半導体装置1Aの断面図である。なお、図9において、図2と同じ構成要素には同じ符号を付している。
【0078】
変形例に係る半導体装置1Aは、図9に示すように、P型のコレクタ領域12に代えてN型のドレイン領域12Aを有し、かつ、このドレイン領域12Aとショットキー障壁を形成するコレクタ電極23を有する。この場合、コレクタ電極23は、白金、モリブデン等からなるバリアメタルを有する。
【0079】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置1Bについて説明する。この半導体装置1Bは、縦型MOSFETである。半導体装置1Bの平面図は、図1と同様である。図10は、半導体装置1Bの断面図であり、第1の実施形態で説明した図2に対応する。なお、図10において、第1の実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付している。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0080】
半導体装置1Bは、P型の拡散層3と、絶縁膜4と、過電圧保護ダイオード5と、導体部6,7,8,9と、N型のドレイン領域12Bと、N型の拡散領域13と、N型のストッパ領域14と、ソース電極21Aと、ゲート電極22と、ドレイン電極23Aと、ストッパ電極24とを備えている。ドレイン領域12Bは、半導体基板2の下面2bに形成されており、このドレイン領域12B上にドレイン電極23Aが形成されている。また、ソース電極21Aは、拡散領域13上に形成されている。
【0081】
過電圧保護ダイオード5は、縦型MOSFETのドレイン電極23Aとゲート電極22との間、またはソース電極21Aとゲート電極22との間に設けられる過電圧保護ダイオードである。
【0082】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態で説明した半導体装置1の場合と同様の作用が得られるため、過電圧保護ダイオード5の耐圧変動を抑制することができる半導体装置1Bを提供することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態に係る半導体装置における過電圧保護ダイオード5について説明した。上記過電圧保護ダイオード5の特徴的な構成、すなわち、P型半導体層におけるP型不純物の濃度ピークが非境界領域Gに位置するという構成を、過電圧保護用途に限らず、基準電圧の生成回路など他の用途に用いられる一般のツェナーダイオードに適用してもよい。例えば、一つのN型半導体層および一つのP型半導体層からなるツェナーダイオードに上記構成を適用してもよい。また、本発明に係るツェナーダイオードは、過電圧保護ダイオードとして、IGBTやMOSFET等の半導体装置に設けられる場合に限らず、他の一般的な集積回路(IC)に設けられてもよい。
【0084】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1,1A,1B 半導体装置
2,120 半導体基板
2a 上面
2b 下面
3 拡散層
4,140 絶縁膜
5 過電圧保護ダイオード
5a N型半導体層
5b,50b P型半導体層
6,7,8,9 導体部
10 周辺半導体領域
11 バッファ領域
12 コレクタ領域
12A,12B ドレイン領域
13 拡散領域
14 ストッパ領域
15,150 絶縁膜
16 表面保護膜
21 エミッタ電極
21A ソース電極
22 ゲート電極
23 コレクタ電極
23A ドレイン電極
24 ストッパ電極
50 ポリシリコン層
61 ゲート酸化膜
62 酸化膜
63 N型領域(表面高濃度層)
64 P型領域(ボディ領域)
65 N+領域
A 活性領域
B 耐圧領域
F1,F2,F10 境界領域
G 非境界領域
P1,P2 (拡散層3の)境界
【要約】
【課題】過電圧保護ダイオードの耐圧変動を抑制することが可能な半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態の半導体装置1は、導電性の半導体基板2と、半導体基板2上に形成された絶縁膜4と、絶縁膜4上に形成され、N型半導体層5aとP型半導体層5bとが交互に隣接配置されたものとして構成された過電圧保護ダイオード5と、過電圧保護ダイオード5を被覆する絶縁膜15と、を備え、P型半導体層5bにおけるP型不純物の濃度は、N型半導体層5aにおけるN型不純物の濃度より低く、P型不純物の濃度ピークは、境界領域F1と境界領域F2との間の非境界領域Gに位置する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11