特許第6301636号(P6301636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6301636
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】酸性水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/60 20160101AFI20180319BHJP
【FI】
   A23L27/60 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-238215(P2013-238215)
(22)【出願日】2013年11月18日
(65)【公開番号】特開2015-97486(P2015-97486A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】森脇 淳也
(72)【発明者】
【氏名】椎葉 大介
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−227030(JP,A)
【文献】 特開2013−226124(JP,A)
【文献】 特開平05−140584(JP,A)
【文献】 特開平02−055785(JP,A)
【文献】 特開平02−004899(JP,A)
【文献】 特開平06−298642(JP,A)
【文献】 特開2001−226693(JP,A)
【文献】 特開2012−039907(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0118351(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)油脂由来のα−リノレン酸 1540質量%、
(B)アスコルビン酸脂肪酸エステル 0.001〜0.014質量%、
(C)卵黄、
を含有し、成分(A)と成分(B)との含有質量比[(B)/(A)]が0.5×10-4以上である酸性水中油型乳化組成物。
【請求項2】
成分(B)アスコルビン酸脂肪酸エステルがアスコルビン酸パルミテートである請求項1記載の酸性水中油型乳化組成物。
【請求項3】
更に、天然抗酸化剤、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)及びリン脂質から選ばれる1種又は2種以上の抗酸化剤を含有する請求項1又は2記載の酸性水中油型乳化組成物。
【請求項4】
油脂がアマニ油、シソ油及びエゴマ油から選ばれる1種又は2種以上の油脂を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の酸性水中油型乳化組成物。
【請求項5】
油脂中のトリアシルグリセロールの含有量が78〜100質量%である請求項1〜4のいずれか1項記載の酸性水中油型乳化組成物。
【請求項6】
油相/水相の質量比が10/90〜80/20である請求項1〜5のいずれか1項記載の酸性水中油型乳化組成物。
【請求項7】
酸性水中油型乳化組成物がマヨネーズ類である請求項1〜6のいずれか1項記載の酸性水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康指向の高まりを受けて、油脂中の脂肪酸の機能について多数の研究がなされている。例えば、α−リノレン酸には、動脈硬化の予防、アレルギーの予防、免疫機能の改善等の生理機能があることが報告されている。α−リノレン酸は生体内で合成・蓄積できず、食事から摂取する必要のある必須脂肪酸の一つであることから、これを含む油脂の利用が望まれ、例えば、α−リノレン酸を豊富に含む油脂を用いたマヨネーズやマーガリン等が提案されている(特許文献1及び2)。
α−リノレン酸を豊富に含む油脂は、非常に酸化安定性、熱安定性が低い。そのため、通常油脂には、トコフェロールやL−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸エステル、レシチン、茶抽出物等の抗酸化剤が多く配合されている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−227030号公報
【特許文献2】特開平4−58847号公報
【特許文献3】特開平5−140584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マヨネーズ類等の酸性水中油型乳化組成物は、卵黄が乳化剤として使用され、良好な卵風味が特徴である。
しかしながら、α−リノレン酸を豊富に含む油脂を酸性水中油型乳化組成物に使用すると、卵風味の発現が弱く、十分な卵風味が感じられないという問題があった。
したがって、本発明は、α−リノレン酸を多く含みながらも、卵風味の良好な酸性水中油型乳化組成物を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、α−リノレン酸を豊富に含む油脂を配合した酸性水中油型乳化組成物を製造し、卵風味の発現について検討したところ、アスコルビン酸脂肪酸エステルを一定範囲で含有させれば、卵風味が感じられる酸性水中油型乳化組成物とすることができることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)油脂由来のα−リノレン酸 10〜45質量%、
(B)アスコルビン酸脂肪酸エステル 0.0005〜0.014質量%、
(C)卵黄、
を含有し、成分(A)と成分(B)との含有質量比[(B)/(A)]が0.5×10-4以上である酸性水中油型乳化組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、α−リノレン酸を多く含みながらも、卵風味が感じられる酸性水中油型乳化組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の酸性水中油型乳化組成物には、成分(A)油脂由来のα−リノレン酸(C18:3)が含有される。成分(A)油脂由来のα−リノレン酸の含有量は、酸性水中油型乳化組成物中に10〜45質量%(以下、単に「%」とする)であるが、15%以上、更に25%以上であるのが生理効果の点から好ましい。また、40%以下、更に35%以下であるのが、酸化安定性の点から好ましい。成分(A)油脂由来のα−リノレン酸の含有量は、生理効果と酸化安定性の両方の点から、酸性水中油型乳化組成物中に15〜40%であるのが好ましく、25〜35%であるのがより好ましい。なお、本明細書における脂肪酸量は遊離脂肪酸換算量である。
【0009】
本発明において、成分(A)油脂由来のα−リノレン酸は、油脂を構成する脂肪酸として含有されるのが好ましい。油脂の含有量は、α−リノレン酸の生理効果を考慮して、酸性水中油型乳化組成物中に8%以上、更に15%以上、更に30%以上、更に60%以上であることが好ましく、食品としての風味を考慮して、酸性水中油型乳化組成物中に80%以下、更に75%以下、更に70%以下であることが好ましい。また、8〜80%、更に15〜75%、更に30〜75%、更に60〜70%であることが好ましい。かかる油脂は、酸性水中油型乳化組成物の油相成分として用いられるものである。
【0010】
本発明において、油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の割合は、20%以上、更に24%以上であるのが生理効果の点から好ましい。また、60%以下、更に50%以下であるのが、酸化安定性の点から好ましい。油脂を構成する脂肪酸中、α−リノレン酸の含有量は、生理効果と酸化安定性の両方の点から、20〜60%であるのが好ましく、24〜50%であるのがより好ましい。
【0011】
油脂を構成するα−リノレン酸以外の構成脂肪酸としては、特に限定されず、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよいが、油脂を構成するα−リノレン酸以外の構成脂肪酸のうち60〜100%が不飽和脂肪酸であるのが好ましく、より好ましくは70〜100%、更に75〜100%、更に80〜98%が不飽和脂肪酸であるのが外観、油脂の工業的生産性の点で好ましい。不飽和脂肪酸の炭素数は、14〜24、更に16〜22であるのが生理効果の点から好ましい。
【0012】
また、油脂を構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸の含有量は、外観、生理効果の点から40%以下であるのが好ましく、30%以下、更に25%以下、更に20%以下であるのがより好ましい。また、0.5%以上であるのが、油脂の工業的生産性の点で好ましい。飽和脂肪酸としては、炭素数14〜24、更に16〜22のものが好ましい。
【0013】
本発明において油脂を構成する物質にはトリアシルグリセロールのみならずモノアシルグリセロールやジアシルグリセロールも含まれる。すなわち本発明において油脂は、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール及びトリアシルグリセロールのいずれか1種以上を含むものである。
油脂中、トリアシルグリセロールの含有量は、78〜100%、更に88〜100%、更に90〜99.5%、更に92〜99%であるのが油脂の工業的生産性の点から好ましい。
また、油脂中、ジアシルグリセロールの含有量は、19%以下が好ましく、更に9%以下、更に0.1〜7%、更に0.2〜5%であるのが油脂の工業的生産性の点から好ましい。また、油脂中、モノアシルグリセロールの含有量は、風味を良好とする点から、3%以下が好ましく、更に0〜2%が好ましい。
【0014】
また、油脂に含まれる遊離脂肪酸又はその塩の含有量は、5%以下が好ましく、更に0〜2%、更に0〜1%であるのが風味、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0015】
本発明の油脂の起源として使用できる食用油脂に特に制限はなく、例えば、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、米油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ハトムギ油、小麦胚芽油、シソ油、アマニ油、エゴマ油、サチャインチ油、クルミ油、キウイ種子油、サルビア種子油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、ボラージ油、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、やし油、パーム核油、カカオ脂、サル脂、シア脂、藻油等の植物性油脂;魚油、ラード、牛脂、バター脂等の動物性油脂;あるいはそれらのエステル交換油、水素添加油、分別油等の油脂類を挙げることができる。これらの油は、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは適宜混合して用いてもよい。なかでも、使用性の点から、植物性油脂を用いるのが好ましく、更に低温耐性に優れた液状油脂を用いるのが好ましく、更にシソ油、アマニ油及びエゴマ油からなる群より選ばれる1種又は2種以上を用いるのが、α−リノレン酸を豊富に含むため好ましい。なお、液状油脂とは、基準油脂分析試験法2.3.8−27による冷却試験を実施した場合、20℃で液状である油脂をいう。また、食用油脂は、精製工程を経た精製油脂であるのが好ましい。
【0016】
本発明で用いられる成分(B)アスコルビン酸脂肪酸エステルは、その構成脂肪酸が炭素数12〜18のものであることが好ましい。なかでも、油脂への溶解性の点から、炭素数14〜18の飽和脂肪酸であることが好ましく、更にパルミチン酸、ステアリン酸であることが好ましく、更にパルミチン酸であることが好ましい。アスコルビン酸脂肪酸エステルは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
酸性水中油型乳化組成物中の成分(B)アスコルビン酸脂肪酸エステルの含有量は、0.0005〜0.014%であるが、0.001%以上、更に0.002%以上、更に0.003%以上であるのが卵風味を増強する点から好ましい。また、0.013%以下、更に0.011%以下であるのが、発酵風味の抑制の点から好ましい。また、酸性水中油型乳化組成物中の成分(B)アスコルビン酸脂肪酸エステルの含有量は、0.001〜0.014%、更に0.002〜0.013%、更に0.003〜0.011%であるのが好ましい。
【0018】
本発明の酸性水中油型乳化組成物において、成分(A)油脂由来のα−リノレン酸の含有量と、成分(B)アコルビン酸脂肪酸エステルの含有量の質量比[(B)/(A)]は0.5×10-4以上であるが、更に0.65×10-4以上、更に1.2×10-4以上、更に2×10-4以上であることが、卵風味を増強する点から好ましい。
【0019】
本発明で用いられる成分(C)卵黄は、生、凍結、粉末、加塩、加糖等任意の形態でよく、卵白を含んだ全卵の形態で配合してもよい。また、酵素処理されたものを用いてもよい。
卵黄の酵素処理に用いる酵素としては、エステラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼが好ましく、リパーゼ、ホスホリパーゼがより好ましく、ホスホリパーゼが更に好ましい。ホスホリパーゼの中でも、ホスホリパーゼA、すなわちホスホリパーゼA1及びA2が好ましく、更にホスホリパーゼA2が好ましい。
【0020】
酸性水中油型乳化組成物中の成分(C)卵黄の含有量は、風味向上の観点から、液状卵黄換算で5〜20%であるのが好ましく、更に7〜17%、更に8〜15%、更に10〜15%であるのが好ましい。
【0021】
本発明の酸性水中油型乳化組成物は、油脂の酸化安定性の点より、アスコルビン酸脂肪酸エステル以外の抗酸化剤を含有するのが好ましい。このような抗酸化剤としては、ローズマリー抽出物等の天然抗酸化剤、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、リン脂質等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
酸性水中油型乳化組成物中、アスコルビン酸脂肪酸エステル以外の抗酸化剤の含有量は、油脂の酸化安定性の点より、0.01〜0.1%が好ましい。
【0022】
本発明の酸性水中油型乳化組成物の水相には特に制限はなく、水;米酢、酒粕酢、リンゴ酢、ブドウ酢、穀物酢、合成酢等の食酢;食塩等の塩類;グルタミン酸ナトリウム等の調味料;砂糖、水飴等の糖類;酒、みりん等の呈味料;各種ビタミン;クエン酸等の有機酸及びその塩;香辛料;レモン果汁等の各種野菜又は果実の搾汁液;各種野菜類;各種果実類;キサンタンガム、ジェランガム、グァーガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、トラガントガム等の増粘多糖類;馬鈴薯澱粉等の澱粉類、それらの分解物及びそれらを化工処理した澱粉類;ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート等の合成乳化剤;レシチン又はその酵素分解物等の天然系乳化剤;牛乳等の乳製品;大豆タンパク質、乳タンパク質、小麦タンパク質等のタンパク質類、あるいはこれらタンパク質の分離物や分解物等のタンパク質系乳化剤;各種リン酸塩等を含有させることができる。本発明においては、目的とする組成物の粘度、物性等に応じて、これらを適宜配合できる。
【0023】
また、水相部のpHは5.5以下であることが保存性の点から好ましく、更に2.5〜5.5、更に3〜5、更に3.2〜4.5の範囲が好ましい。この範囲にpHを低下させるためには、食酢、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸、リン酸等の無機酸、レモン果汁等の酸味料を使用することができるが、保存性を良くする点、液体調味料製造直後の具材の風味を維持する点から前記の食酢を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の酸性水中油型乳化組成物における油相と水相の配合比(質量比)は、10/90〜80/20であるのが好ましく、更に20/80〜75/25、更に35/65〜72/28、更に60/40〜70/30であるのが好ましい。
【0025】
本発明の酸性水中油型乳化組成物の製品形態としては、例えば日本農林規格(JAS)で定義されるドレッシング、半固体状ドレッシング、乳化液状ドレッシング、マヨネーズ、サラダクリーミードレッシング等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではなく、広くマヨネーズ類、マヨネーズ様食品、ドレッシング類、ドレッシング様食品といわれるものが該当する。
【0026】
本発明の酸性水中油型乳化組成物は、例えば以下の方法により製造することができる。まず、油脂、すなわち成分(A)油脂由来のα−リノレン酸、成分(B)アスコルビン酸脂肪酸エステルを混合して油相を調製する。油相には、必要に応じて、L−アスコルビン酸脂肪酸エステル以外の抗酸化剤を混合してもよい。他方、成分(C)卵黄、その他の水溶性原料を混合して水相を調製する。該水相に該油相を添加し、必要により予備乳化を行い、均質化することにより、酸性水中油型乳化組成物を得ることができる。均質機としては、例えばマウンテンゴウリン、マイクロフルイダイザーなどの高圧ホモジナイザー、超音波式乳化機、コロイドミル、アジホモミキサー、マイルダー等が挙げられる。
【0027】
このようにして製造された酸性水中油型乳化組成物は容器に充填され、容器入り乳化食品として、通常のマヨネーズ、ドレッシング等と同様に使用することができる。例えば、タルタルソース等のソース、サンドイッチ、サラダの他、焼き物、炒め物、和え物といった調理に使用できる。
【0028】
容器としては通常、マヨネーズ、ドレッシング等の酸性水中油型乳化組成物に用いられるものであれば、いずれでも良い。なかでも、瓶に比べて使い勝手の良い可撓性容器、例えばプラスチック製のチューブ式容器が好ましい。プラスチック製容器の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン性酢酸ビニル、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性プラスチックの一種又は二種以上を混合して中空成型したものや、これらの熱可塑性プラスチックからなる層を二層以上に積層して中空成形したもの等を用いることができる。
【0029】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の酸性水中油型乳化組成物、或いは使用を開示する。
<1>次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)油脂由来のα−リノレン酸 10〜45質量%、
(B)アスコルビン酸脂肪酸エステル 0.0005〜0.014質量%、
(C)卵黄、
を含有し、成分(A)と成分(B)との含有質量比[(B)/(A)]が0.5×10-4以上である酸性水中油型乳化組成物。
【0030】
<2>成分(A)油脂由来α−リノレン酸の含有量が、好ましくは15質量%以上、より好ましくは25質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下であり、また、好ましくは15〜40質量%、より好ましくは25〜35質量%である<1>に記載の酸性水中油型乳化組成物。
<3>油脂、好ましくは構成脂肪酸中にα−リノレン酸を含む油脂の含有量が、好ましくは8質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下であり、また、好ましくは8〜80質量%、より好ましくは15〜75質量%、更に好ましくは30〜75質量%、更に好ましくは60〜70質量%である<1>又は<2>に記載の酸性水中油型乳化組成物。
<4>構成脂肪酸中にα−リノレン酸を含む油脂中のα−リノレン酸の含有量が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは24質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下であり、また、好ましくは20〜60質量%、より好ましくは24〜50質量%である<1>〜<3>のいずれか1に記載の酸性水中油型乳化組成物。
<5>油脂を構成するα−リノレン酸以外の構成脂肪酸のうち好ましくは60〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に75〜100質量%、更に80〜98質量%が不飽和脂肪酸である<1>〜<4>のいずれか1に記載の酸性水中油型乳化組成物。
<6>油脂を構成する脂肪酸中の飽和脂肪酸の含有量が、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下であり、また、好ましくは0.5質量%以上である<1>〜<5>のいずれか1に記載の酸性水中油型乳化組成物。
<7>油脂中のトリアシルグリセロールの含有量が、好ましくは78〜100質量%、より好ましくは88〜100質量%、更に好ましくは90〜99.5質量%、更に好ましくは92〜99質量%である<1>〜<6>のいずれか1に記載の酸性水中油型乳化組成物。
<8>油脂中のジアシルグリセロールの含有量が、好ましくは19質量%以下、より好ましくは9質量%以下であり、また、好ましくは0.1〜7質量%、より好ましくは0.2〜5質量%である<1>〜<7>のいずれか1に記載の酸性水中油型乳化組成物。
<9>油脂が、好ましくは植物性油脂又は動物性油脂、より好ましくは植物性油脂、更に好ましくはシソ油、アマニ油及びエゴマ油からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有する<1>〜<8>のいずれか1に記載の酸性水中油型乳化組成物。
<10>成分(B)アスコルビン酸脂肪酸エステルが、好ましくは炭素数12〜18の脂肪酸のアスコルビン酸脂肪酸エステル、より好ましくは炭素数14〜18の飽和脂肪酸のアスコルビン酸脂肪酸エステル、更に好ましくはアスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ステアレート又はこれらの組み合わせであり、更に好ましくはアスコルビン酸パルミテートである<1>〜<9>のいずれか1に記載の酸性水中油型乳化組成物。
<11>成分(B)アスコルビン酸脂肪酸エステルの含有量が、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上、更に好ましくは0.003質量%以上であり、また、好ましくは0.013質量%以下、より好ましくは0.011質量%以下であり、また、好ましくは0.001〜0.014質量%、より好ましくは0.002〜0.013質量%、更に好ましくは0.003〜0.011質量%である<1>〜<10>のいずれか1に記載の酸性水中油型乳化組成物。
<12>酸性水中油型乳化組成物中の成分(A)油脂由来のα−リノレン酸の含有量と、成分(B)アコルビン酸脂肪酸エステルの含有量の質量比[(B)/(A)]が、好ましくは0.65×10-4以上、より好ましくは1.2×10-4以上、更に好ましくは2×10-4以上である<1>〜<11>のいずれか1に記載の酸性水中油型乳化組成物。
<13>成分(C)卵黄の含有量が、状卵黄換算で、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは7〜17質量%、更に好ましくは8〜15質量%、更に好ましくは10〜15質量%である<1>〜<12>のいずれか1に記載の酸性水中油型乳化組成物。
<14>更に、天然抗酸化剤及びトコフェロールから選ばれる1種又は2種以上の抗酸化剤を含有する<1>〜<13>のいずれか1に記載の酸性水中油型乳化組成物。
<15>酸性水中油型乳化組成物における油相と水相の配合比(質量比)が、好ましくは10/90〜80/20、より好ましくは20/80〜75/25、更に好ましくは35/65〜72/28、更に好ましくは60/40〜70/30である<1>〜<14>のいずれか1に記載の酸性水中油型乳化組成物。
<16>酸性水中油型乳化組成物が、好ましくはマヨネーズ類、マヨネーズ様食品、ドレッシング類、ドレッシング様食品であり、より好ましくはマヨネーズ類である<1>〜<15>のいずれか1に記載の酸性水中油型乳化組成物。
【実施例】
【0031】
〔分析方法〕
(1)油脂のグリセリド組成
ガラス製サンプル瓶に、油脂サンプル約10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLを加え、密栓し、70℃で15分間加熱した。これに水1.0mLとヘキサン1.5mLを加え、振とうした。静置後、上層をガスクロマトグラフィー(GLC)に供して分析した。
<GLC分析条件>
(条件)
装置:アジレント6890シリーズ(アジレントテクノジー社製)
インテグレーター:ケミステーションB 02.01 SR2(アジレントテクノジー社製)
カラム:DB−1ht(Agilent J&W社製)
キャリアガス:1.0mL He/min
インジェクター:Split(1:50)、T=320℃
ディテクター:FID、T=350℃
オーブン温度:80℃から10℃/分で340℃まで昇温、15分間保持
【0032】
(2)油脂の構成脂肪酸組成
日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「脂肪酸メチルエステルの調製法(2.4.1.−1996)」に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、得られた油脂サンプルを、American Oil Chemists. Society Official Method Ce 1f−96(GLC法)により測定した。
<GLC分析条件>
カラム:CP−SIL88 100m×0.25mm×0.2μm (VARIAN)
キャリアガス:1.0mL He/min
インジェクター:Split(1:200)、T=250℃
ディテクター:FID、T=250℃
オーブン温度:174℃で50分保持後、5℃/分で220℃まで昇温、25分間保持
【0033】
〔原料〕
表1の組成を持つ油脂(油脂(1):亜麻仁油(サミット製油社製)、油脂(2):菜種サラダ油(日清オイリオグループ社製))を用いた。
油脂(1):油脂(2)=3:7(質量比)の割合で混合した油脂a、油脂(1):油脂(2)=7:3(質量比)の割合で混合した油脂bを調製した。また、油脂(1)を油脂cとした。
【0034】
【表1】
【0035】
〔マヨネーズの製造〕
油脂a〜cに対し、マヨネーズ全配合量中の割合が表2〜4に示す配合組成となるように、L−アスコルビン酸パルミテート(DSM社製)及びミックストコフェロール(ADM社製)をそれぞれ混合し、70℃にて加熱溶解して油相を調製した。他方、常法に従い、表2〜4に示す配合組成により水相を調製した。
水相33質量部に対し、あらかじめ調製した油相67質量部を添加して、予備乳化したのち、コロイドミル(3,000r/min、クリアランス0.08mm)で均質化し、平均粒子径2.0〜3.5μmのマヨネーズを製造した。マヨネーズ中の成分(A)油脂由来のα−リノレン酸の含有量、成分(A)油脂由来のα−リノレン酸と成分(B)L−アスコルビン酸パルミテートとの含有質量比[(B)/(A)]は表2〜4に示したとおりである。また、マネヨーズ中の油脂を構成する脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量を表2〜4に示した。
得られたマヨネーズを、100gプラスチック製のチューブ式容器に充填し、サンプルとした。
【0036】
〔風味評価〕
サンプルを40℃で2週間保存した後、約4時間室温に放置し、その風味を5名のパネラーにより、以下の評価基準に従って評価した。その平均値をそれぞれの評価の評点とした。
(卵風味)
4:卵の良好な風味を強く感じる
3:卵の良好な風味を感じる
2:卵の風味を感じる
1:卵の風味を感じない
(発酵風味)
3:発酵風味を感じない
2:チーズ様の発酵風味を僅かに感じる
1:チーズ様の発酵風味を感じる
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
表2〜4から明らかなように、本発明品は、比較品と比べ、卵風味が強く感じられ、且つチーズ様の発酵風味は抑えられていて風味良好であった。