(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)第1窒化物半導体層を形成し、前記第1窒化物半導体層上に、前記第1窒化物半導体層よりバンドギャップが広い第2窒化物半導体層を形成することにより積層体を形成する工程、
(b)前記第2窒化物半導体層と接するように第1窒化シリコン膜を形成し、前記第1窒化シリコン膜の上方に、前記第1窒化シリコン膜よりシリコン(Si)の組成比が大きい第2窒化シリコン膜を形成する工程、
(c)前記第2窒化物半導体層の上方に導電性膜を形成し、前記導電性膜を前記第2窒化シリコン膜が露出するまでエッチングすることによりゲート電極を形成する工程、を有し、
前記(b)工程と(c)工程との間に、
(d)前記第1窒化シリコン膜および前記第2窒化シリコン膜の積層膜と、前記第2窒化物半導体層とを貫通し、前記第1窒化物半導体層の途中まで到達する溝を形成する工程、を有し、
前記(c)工程は、前記溝内を含む前記第2窒化シリコン膜上に、絶縁膜および前記導電性膜を順次形成し、前記導電性膜および前記絶縁膜を前記第2窒化シリコン膜が露出するまでエッチングすることによりゲート絶縁膜および前記ゲート電極を形成する工程、であり、
前記第1窒化シリコン膜は、前記第2窒化シリコン膜より、窒素(N)の組成比が大きい、半導体装置の製造方法。
(a)第1窒化物半導体層を形成し、前記第1窒化物半導体層上に、前記第1窒化物半導体層よりバンドギャップが広い第2窒化物半導体層を形成することにより積層体を形成する工程、
(b)前記第2窒化物半導体層と接するように第1窒化シリコン膜を形成し、前記第1窒化シリコン膜の上方に、前記第1窒化シリコン膜よりシリコン(Si)の組成比が大きい第2窒化シリコン膜を形成する工程、
(c)前記第2窒化物半導体層の上方に導電性膜を形成し、前記導電性膜を前記第2窒化シリコン膜が露出するまでエッチングすることによりゲート電極を形成する工程、
(d)前記ゲート電極上および前記第2窒化物半導体層上に、前記第2窒化シリコン膜よりもシリコン(Si)の組成比が小さい第3窒化シリコン膜を形成する工程、
(e)前記ゲート電極の両側の前記第2窒化物半導体層の上方に、第1電極および第2電極を形成する工程、
を有し、
前記第3窒化シリコン膜は、前記第1絶縁膜の端部から前記第1電極までの間の前記第2窒化物半導体層上に設けられる、半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0019】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0020】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、複数の類似の部材(部位)が存在する場合には、総称の符号に記号を追加し個別または特定の部位を示す場合がある。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0021】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。
【0022】
また、断面図において、各部位の大きさは実デバイスと対応するものではなく、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。
【0023】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら本実施の形態の半導体装置について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
図2〜
図17は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0024】
[構造説明]
図1は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
図1に示す半導体装置は、窒化物半導体を用いたMIS(Metal Insulator Semiconductor)型の電界効果トランジスタ(FET;Field Effect Transistor)である。この半導体装置は、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)型のパワートランジスタとして用いることができる。本実施の形態の半導体装置は、いわゆるリセスゲート型の半導体装置である。
【0025】
本実施の形態の半導体装置においては、基板S上に、核生成層NUC、歪緩和層STR、バッファ層BU、チャネル層(電子走行層ともいう)CHおよび障壁層BAが順に形成されている。ゲート電極GEは、絶縁膜(保護膜)IF1、障壁層BAを貫通し、チャネル層CHの途中まで到達する溝Tの内部にゲート絶縁膜GIを介して形成されている。チャネル層CHや障壁層BAは窒化物半導体よりなり、障壁層BAは、チャネル層CHよりバンドギャップが広い窒化物半導体である。
【0026】
チャネル層CHと障壁層BAとの界面近傍のチャネル層CH側に、2次元電子ガス2DEGが生成される。また、ゲート電極GEに正の電位(閾値電位)が印加された場合には、ゲート絶縁膜GIとチャネル層CHとの界面近傍には、チャネルCが形成される。
【0027】
上記2次元電子ガス2DEGは次のメカニズムで形成される。チャネル層CHや障壁層BAを構成する窒化物半導体(ここでは、窒化ガリウム系の半導体)は、それぞれ、禁制帯幅(バンドギャップ)や電子親和力が異なる。このため、これらの半導体の接合面に、井戸型ポテンシャルが生成される。この井戸型ポテンシャル内に電子が蓄積されることにより、チャネル層CHと障壁層BAとの界面近傍に、2次元電子ガス2DEGが生成される。特に、ここでは、チャネル層CHと障壁層BAをガリウム(あるいはアルミ)面成長の窒化物半導体材料でエピ形成するので、チャネル層CHと障壁層BAの界面に正の固定分極電荷が発生し、この正の分極電荷を中和しようとして電子が蓄積されるので、より2次元電子ガス2DEGが形成されやすくなる。
【0028】
ここで、チャネル層CHと障壁層BAとの界面近傍に形成される、2次元電子ガス2DEGは、ゲート電極GEが形成されている溝Tにより分断されている。このため、本実施の形態の半導体装置においては、ゲート電極GEに正の電位(閾値電位)が印加されていない状態においてオフ状態を維持でき、ゲート電極GEに正の電位(閾値電位)を印加した状態においてオン状態を維持できる。このように、ノーマリーオフ動作を行うことができる。
【0029】
本実施の形態の半導体装置の構成について、さらに、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態の半導体装置は、基板S上に、核生成層NUCが形成され、核生成層NUC上に、歪緩和層STRが形成されている。核生成層NUCは、歪緩和層STRなどの上部に形成される層が成長する際の結晶核を生成させるために形成する。また、上部に形成される層から基板Sに、上部に形成される層の構成元素(例えば、Gaなど)が拡散して、基板Sが変質することを防ぐために形成する。また、歪緩和層STRは、基板Sに対する応力を緩和して、基板Sに反りやクラックが発生することを抑制するために形成する。
【0030】
この歪緩和層STR上には、バッファ層BUが形成され、バッファ層BU上に、窒化物半導体からなるチャネル層(電子走行層ともいう)CHが形成され、チャネル層CH上に、窒化物半導体からなる障壁層BAが形成されている。即ち、歪緩和層STRの主面(上面)上に、バッファ層BUとチャネル層CHと障壁層BAとが、下から順に形成(積層)されている。障壁層BA上には、ソース電極SEおよびドレイン電極DEがそれぞれオーミック層を介して形成されている。バッファ層BUは、チャネル層CHと歪緩和層STRとの間に位置する中間層である。
【0031】
ゲート電極GEは、絶縁膜(保護膜)IF1および障壁層BAを貫通し、チャネル層CHの途中まで掘り込まれた溝(トレンチ、リセスともいう)Tの内部にゲート絶縁膜GIを介して形成されている。
【0032】
絶縁膜IF1は、開口領域OA1に開口部を有する。この開口部は、溝Tの形成領域(開口領域OA2)よりドレイン電極DE側に、距離Ldだけ広い領域に設けられる。言い換えれば、絶縁膜IF1は、溝Tのドレイン電極DE側の端部から距離Ldだけ後退している。
【0033】
ゲート絶縁膜GI上には、ゲート電極GEが形成されている。このゲート電極GEは、一の方向(
図1中では右側、ドレイン電極DE側)に張り出した形状である。この張り出し部は、フィールドプレート電極(フィールドプレート電極部、FP電極部ともいう)FPと呼ばれる。このフィールドプレート電極FPは、ドレイン電極DE側の溝Tの端部からドレイン電極DE側へ延在するゲート電極GEの一部の領域である。
【0034】
このゲート電極GEの両側の障壁層BA上には、ソース電極SEおよびドレイン電極DEが形成されている。なお、溝Tの端部からソース電極SEまでの距離より、溝Tの端部からドレイン電極DEまでの距離の方が大きい。このソース電極SEおよびドレイン電極DEと障壁層BAとの接続は、オーミック接続である。
【0035】
ここで、本実施の形態においては、絶縁膜IF1が、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとの積層構造を有する。別の言い方をすれば、絶縁膜IF1は、障壁層BAと接するNリッチな窒化シリコン膜IF1aと、その上部に位置するSiリッチな窒化シリコン膜IF1bとを有する。即ち、窒化シリコン膜IF1bは、窒化シリコン膜IF1aよりシリコン(Si)の組成比が大きい。
【0036】
本明細書において、Nリッチな窒化シリコン膜とは、その組成比[Si]/[N]が、0.85以下の範囲のものをいい、Siリッチな窒化シリコン膜とは、その組成比[Si]/[N]が、0.85より大きいものをいう。
【0037】
絶縁膜IF1は、溝Tの両側の障壁層BA上に配置され、また、絶縁膜IF1上には、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEが配置されている。そして、ゲート絶縁膜GI側に、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bが配置され、障壁層BA側にNリッチな窒化シリコン膜IF1aが配置されている。
【0038】
このように、絶縁膜IF1を積層構造とすることで、半導体装置の特性を向上させることができる。
【0039】
具体的には、絶縁膜IF1の上層をSiリッチな窒化シリコン膜IF1bとすることで、耐圧の向上を図ることができる。また、エッチング耐性の向上を図ることができる。
【0040】
また、絶縁膜IF1の下層をNリッチな窒化シリコン膜IF1aとすることで、コラプス(電流コラプス現象)を抑制することができる。これらについては、追って詳細に説明する。
【0041】
なお、ゲート電極GE、ソース電極SEおよびドレイン電極DE上には、絶縁層IL1が形成されている。また、上記ソース電極SEおよびドレイン電極DEは、それぞれ、配線M1と、絶縁層IL1中に形成されたコンタクトホールC1内のプラグを介して接続されている。また、配線M1および絶縁層IL1には、絶縁層IL2が形成されている。
【0042】
[製法説明]
次いで、
図2〜
図17を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するとともに、当該半導体装置の構成をより明確にする。
図2〜
図17は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0043】
図2に示すように、基板S上に、核生成層NUC、歪緩和層STRおよびバッファ層BUを順次形成する。基板Sとして、例えば、(111)面が露出しているシリコン(Si)からなる半導体基板を用い、その上部に、核生成層NUCとして、例えば、窒化アルミニウム(AlN)層を有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などを用いてヘテロエピタキシャル成長させる。次いで、核生成層NUC上に、歪緩和層STRとして、窒化ガリウム(GaN)層と窒化アルミニウム(AlN)層との積層膜(AlN/GaN膜)を、繰り返し積層した超格子構造体を形成する。例えば、窒化ガリウム(GaN)層および窒化アルミニウム(AlN)層を、有機金属気相成長法などを用いて、それぞれ2〜3nm程度の膜厚で、それぞれ100層(合計200層)程度、繰り返しヘテロエピタキシャル成長させる。なお、基板Sとしては、上記シリコンの他、SiCやサファイアなどからなる基板を用いてもよい。さらに通常、核生成層NUCを含んで核生成層NUC以降のIII族窒化物層は、すべてIII族元素面成長(即ち、本件の場合、ガリウム面成長あるいはアルミ面成長)で形成する。
【0044】
次いで、歪緩和層STR上に、バッファ層BUを形成する。歪緩和層STR上に、バッファ層BUとして、例えば、AlGaN層を、有機金属気相成長法などを用いてヘテロエピタキシャル成長させる。
【0045】
次いで、バッファ層BU上に、チャネル層CHを形成する。例えば、バッファ層BU上に、窒化ガリウム(GaN)層を、有機金属気相成長法などを用いてヘテロエピタキシャル成長させる。このチャネル層CHの膜厚は、例えば、3nm以上である。
【0046】
次いで、チャネル層CH上に、障壁層BAとして、例えば、AlGaN層を、有機金属気相成長法などを用いてヘテロエピタキシャル成長させる。この障壁層BAのAlGaN層のAlの組成比は、前述したバッファ層BUのAlGaN層のAlの組成比より大きくする。
【0047】
このようにして、バッファ層BU、チャネル層CHおよび障壁層BAの積層体が形成される。この積層体は、上記ヘテロエピタキシャル成長、即ち、[0001]結晶軸(C軸)方向に積層するIII族面成長により形成される。言い換えれば、(0001)Ga面成長により上記積層体が形成される。この積層体のうち、チャネル層CHと障壁層BAとの界面近傍には、2次元電子ガス2DEGが生成される。
【0048】
次いで、
図3に示すように、障壁層BA上に、絶縁膜IF1を形成する。まず、Nリッチな窒化シリコン膜IF1aを、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて、例えば、30nm程度の膜厚で堆積する。次いで、Nリッチな窒化シリコン膜IF1a上に、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bを、CVD法などを用いて、例えば、60nm程度の膜厚で堆積する。
【0049】
窒化シリコン膜の組成比、即ち、Nリッチとするか、Siリッチとするかは、後述するように、原料ガス(即ち、シリコンの化合物ガスと窒素の化合物ガスとの混合ガス)のガス流量比を変化させることで調整することができる。次いで、絶縁膜IF1上に、マスク用の絶縁膜IFMとして、例えば、酸化シリコン膜などをCVD法を用いて形成する。
【0050】
次いで、
図4に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、開口領域OA1に開口部を有するフォトレジスト膜PR1をマスク用の絶縁膜IFM上に形成する。次いで、
図5に示すように、フォトレジスト膜PR1をマスクとして、マスク用の絶縁膜IFMをエッチングする。酸化シリコン膜のエッチングガスとしては、例えば、C
4H
8などの炭化水素ガスを用いることができる。これにより、
図5に示すように、絶縁膜IF1上に、開口領域OA1に開口部を有するマスク用の絶縁膜IFMが形成される。次いで、
図6に示すように、プラズマ剥離処理などによりフォトレジスト膜PR1を除去する。
【0051】
次いで、
図7に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、開口領域OA1の内側に位置する開口領域OA2に開口部を有するフォトレジスト膜PR2を形成する。次いで、
図8に示すように、フォトレジスト膜PR2をマスクとして、絶縁膜IF1をエッチングする。窒化シリコン膜のエッチングガスとしては、例えば、SF
6やCF
4などのフッ素系のガスを用いることができる。
【0052】
次いで、プラズマ剥離処理などによりフォトレジスト膜PR2を除去する。これにより、
図9に示すように、障壁層BA上に、開口領域OA2に開口部を有する絶縁膜IF1が形成される。さらに、この絶縁膜IF1上には、開口領域OA2の一端から後退した絶縁膜IFMであって、開口領域OA1に開口部を有するマスク用の絶縁膜IFMが配置される。
【0053】
次いで、
図10に示すように、絶縁膜IF1および絶縁膜IFMの積層膜をマスクとして、障壁層BAおよびチャネル層CH(積層体ともいう)をエッチングすることにより、絶縁膜IF1および障壁層BAを貫通してチャネル層CHの途中まで達する溝Tを形成する。エッチングガスとしては、例えば、塩素系のガス(BCl
3など)を用いる。このエッチングの後、エッチングダメージの回復のために、熱処理(アニール)を行う。
【0054】
次いで、
図11に示すように、マスク用の絶縁膜IFMをマスクとして、絶縁膜IF1をエッチングする。これにより、絶縁膜IF1の溝T側の端部が、一の方向(
図11中では右側)に距離Ldだけ後退する。この方向は、後述するドレイン電極DE側である。次いで、
図12に示すように、マスク用の絶縁膜IFMをエッチングにより除去する。
【0055】
次いで、
図13に示すように、溝T内および障壁層BAの露出部を含む絶縁膜IF1上に、ゲート絶縁膜GIを形成する。例えば、ゲート絶縁膜GIとして、アルミナ(酸化アルミニウム膜、Al
2O
3)をALD(Atomic Layer Deposition)法などを用いて、溝T内および障壁層BAの露出部を含む絶縁膜IF1上に堆積する。アルミナ成膜後、700℃、10分の熱処理を行う。
【0056】
ゲート絶縁膜GIとして、アルミナ(アルミナを含有する膜)の他、酸化シリコン膜や、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜を用いてもよい。高誘電率膜として、酸化ハフニウム膜(HfO
2膜)を用いてもよい。また、高誘電率膜として、ハフニウムアルミネート膜、HfON膜(ハフニウムオキシナイトライド膜)、HfSiO膜(ハフニウムシリケート膜)、HfSiON膜(ハフニウムシリコンオキシナイトライド膜)、HfAlO膜のような他のハフニウム系絶縁膜を用いてもよい。
【0057】
次いで、溝Tの内部のゲート絶縁膜GI上にゲート電極GEを形成する。例えば、ゲート絶縁膜GI上に、導電性膜として、例えば、TiN(窒化チタン)膜を、スパッタリング法などを用いて堆積する。次いで、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、TiN膜およびアルミナをパターニングすることによりゲート電極GEを形成する。
【0058】
このパターニングの際、ゲート電極GEを、一の方向(
図13中では右側、ドレイン電極DE側)に張り出した形状にパターニングする。言い換えれば、ゲート電極GEの一部として、フィールドプレート電極FPを設けるようにパターニングを行う。また、上記パターニングの際、ゲート電極GEの下層に位置するSiリッチな窒化シリコン膜IF1b(絶縁膜IF1)がエッチング緩衝材の役割を果たす。
【0059】
次いで、
図14に示すように、後述のソース電極SEおよびドレイン電極DEの形成領域の絶縁膜IF1を除去する。フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁膜IF1をパターニングすることにより、ソース電極SEおよびドレイン電極DEの形成領域の障壁層BAを露出させる。
【0060】
次いで、
図15に示すように、ゲート電極GEの両側の障壁層BA上に、ソース電極SEおよびドレイン電極DEを形成する。このソース電極SEおよびドレイン電極DEは、例えば、リフトオフ法を用いて形成する。例えば、ソース電極SEおよびドレイン電極DEの形成領域以外の領域にフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。次いで、フォトレジスト膜上に、金属膜を形成する。これにより、ソース電極SEおよびドレイン電極DEの形成領域においては、障壁層BA上に、直接、金属膜が形成される。一方、その他の領域では、フォトレジスト膜上に金属膜が形成される。
【0061】
金属膜は、例えば、Al/Ti膜よりなる。例えば、チタン(Ti)膜と、その上部のアルミニウム(Al)膜からなる積層膜を、蒸着法などを用いて堆積する。次いで、例えば、550℃で30分程度の熱処理を行う。この熱処理により、金属膜とGaN系半導体界面の接触がオーミック接触となる。次いで、前述したように、リフトオフ法を用いて、Al/Ti膜を、ソース電極SEおよびドレイン電極DEの形成領域にのみ残存させる。
【0062】
次いで、
図16に示すように、ゲート電極GE、ソース電極SEおよびドレイン電極DE上に、絶縁層IL1を形成する。ゲート電極GE、絶縁膜IF1および障壁層BA上に、絶縁層IL1として、例えば、酸化シリコン膜をCVD法などを用いて形成する。この後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁層IL1中にコンタクトホールC1を形成する。このコンタクトホールC1は、ソース電極SEおよびドレイン電極DE上に配置される。
【0063】
次いで、
図17に示すように、コンタクトホールC1の内部を含む絶縁層IL1上に、アルミニウム合金膜を、スパッタリング法などを用いて堆積する。次いで、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、アルミニウム合金膜をパターニングすることにより配線M1を形成する。この配線M1は、コンタクトホールC1内のプラグを介してソース電極SEまたはドレイン電極DEと接続される。
【0064】
次いで、配線M1上を含む絶縁層IL1上に、絶縁層(カバー膜、表面保護膜ともいう)IL2を形成する。例えば、絶縁層IL1上に、絶縁層IL2として、例えば、酸窒化シリコン(SiON)膜を、CVD法などを用いて堆積する。
【0065】
以上の工程により、
図1に示す半導体装置を形成することができる。なお、上記工程は、一例であり、上記工程以外の工程により、本実施の形態の半導体装置を製造してもよい。
【0066】
このように、本実施の形態によれば、絶縁膜IF1を、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとの積層構造としたので、半導体装置の特性を向上させることができる。具体的には、
図18に示す半導体装置と比較して、耐圧の向上を図ることができ、また、エッチング耐性の向上を図ることができる。また、コラプスを抑制することができる。
図18は、比較例の半導体装置の構成を示す断面図である。
図18においては、障壁層BA上の絶縁膜(保護膜)IFが単層の窒化シリコン膜よりなる。
【0067】
以下に、窒化シリコン膜の特性を説明しつつ、上記効果についてさらに詳細に説明する。
【0068】
<窒化シリコン膜の組成比>
窒化シリコン膜の特性は、シリコン(Si)に対する窒素(N)の組成比[N]/[Si](または窒素(N)に対するシリコン(Si)の組成比[Si]/[N])で、大まかには特徴づけられる。なお、本欄においては、組成比[N]/[Si]を指標として説明する。この組成比[N]/[Si]によれば、アモルファスSiの場合であっても、組成比[N]/[Si]の値が無限大に発散しない。このため、この逆数(組成比[Si]/[N])より窒化シリコン膜の組成領域を広く定義しやすい。
【0069】
窒化シリコン膜の成膜方法としては、スパッタ法やCVD法がある。スパッタ法としては、ECRスパッタ法などがある。また、CVD法としては、PECVD(Plasma Enhancement CVD)法、熱CVD法、触媒化学気相成長法(Cat-CVD)法、表面波プラズマCVD法などがある。ECRスパッタ法を用いた成膜では、構成が複雑な装置が使用されるため、CVD法を用いた成膜が量産においては多用されている。
【0070】
例えば、上記CVD法においては、原料ガスとして、シリコンの化合物ガスと窒素の化合物ガスとの混合ガスが用いられる。具体的には、SiH
4とNH
3の混合ガスや、SiH
4とN
2の混合ガスや、SiH
4とNH
3とN
2の混合ガスなどが用いられる。また、前述の混合ガスを、水素(H
2)やアルゴン(Ar)で希釈したガスを原料ガスとして用いてもよい。
【0071】
図19(A)は、ガス流量比[NH
3]/[SiH
4]と組成比[N]/[Si]との関係を示すグラフである。縦軸は、組成比[N]/[Si]を、横軸は、ガス流量比[NH
3]/[SiH
4]を示す。
【0072】
このグラフは、SiH
4とNH
3の混合ガスを原料ガスとして用いて窒化シリコン膜を成膜した場合の、堆積膜中のシリコン(Si)に対する窒素(N)の組成比[N]/[Si]とガス流量比[NH
3]/[SiH
4]との関係を示すものである。具体的には、RFパワーが、13.56MHz、195Wで、成膜温度が、285℃の条件下で、原料ガスとして、SiH
4とNH
3の混合ガスをArで希釈したものを用いて、PECVD法により堆積膜を形成した。堆積膜中のN(窒素)やSi(シリコン)の含有量は、直接的にはRBS(Rutherford Backscattering Spectroscopy)法やERD(Elastic Recoil Detection)法で、また、間接的には、XPS法や屈折率測定法で分析することができる。
【0073】
一般に、組成比[N]/[Si]と、ガス流量比[NH
3]/[SiH
4]とは、以下の式(1)に示す関係がある。
【0075】
図19(A)および式(1)から分かるように、原料ガス中のNH
3が多いほど、膜中の窒素(N)の割合が増加する。また、原料ガス中のSiH
4が多いほど、膜中のシリコン(Si)の割合が増加する。
【0076】
このように、CVD法においては、ガス流量比[NH
3]/[SiH
4]をコントロールすることによって、堆積膜の組成比[N]/[Si]を精度よく調整することができる。
【0077】
例えば、所定の組成比[N]/[Si]の窒化シリコン膜を形成する場合には、まず、
図19(A)のグラフからガス流量比[NH
3]/[SiH
4]を決定し、次いで、当該ガス流量比[NH
3]/[SiH
4]で成膜を行う。これにより、所定の組成比[N]/[Si]の窒化シリコン膜を形成することができる。
【0078】
また、所定のガス流量比[NH
3]/[SiH
4]で窒化シリコン膜を堆積した場合、装置による若干の誤差もあるが、組成比[N]/[Si]で評価しても、また、組成比[Si]/[N]で評価しても、ウエハ面内ばらつきやロット間ばらつきが±1%以内の範囲に収まることが分かった。
【0079】
このように、ガス流量比[NH
3]/[SiH
4]で窒化シリコン膜の組成比を精度良く調整することができることが判明した。
【0080】
但し、窒化シリコン膜は、堆積後(成膜後)に、堆積時よりも高い温度の熱履歴を経ると、その組成比が、多少Siリッチ方向へと変化する。このため、製造工程における熱履歴を考慮し、ガス流量比[NH
3]/[SiH
4](堆積時における堆積膜の組成比[N]/[Si])を調整することが好ましい。
【0081】
具体的には、半導体装置の製造工程において、その熱履歴と同じ熱履歴を、ダミーのシリコン基板上の窒化シリコン膜に加え、当該窒化シリコン膜の組成比[N]/[Si]から目的とする窒化シリコン膜の組成比[N]/[Si]が得られるように、ガス流量比[NH
3]/[SiH
4](堆積時における堆積膜の組成比[N]/[Si])を調整する。
【0082】
また、目的とする窒化シリコン膜が、化学量論組成のSi
3N
4(組成比[N]/[Si]=4/3)よりもNリッチの組成比を有する場合には、膜中から窒素が窒素ガス(N
2)となって脱離しやすい。このため、揮発するN量を見越して、ガス流量比[NH
3]/[SiH
4](堆積時における堆積膜の組成比[N]/[Si])を調整する。
【0083】
<窒化シリコン膜の組成中の水素>
次いで、窒化シリコン膜中の水素(H)について説明する。前述したように、CVD法による窒化シリコン膜の成膜では、原料ガスとして水素(H)化合物が含まれるため、膜中に水素(H)が存在する。例えば、論文などにおいては、このHを考慮して、「α−SixNy:H」と記されることがある。このHは、膜の構成元素と共有化学結合したN−H結合やSi−H結合のような形で膜中に含まれている。このHは、少なくとも1atm%以上の割合で膜中に含まれる。
【0084】
膜中のN−H結合やSi−H結合の体積密度は、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)などの方法で定量分析が可能である。
図19(B)は、組成比[N]/[Si]と窒化シリコン膜中のN−H結合とSi−H結合の化学結合比([N−H]/[Si−H])との関係を示すグラフである。縦軸は、化学結合比[N−H]/[Si−H]を、横軸は、組成比[N]/[Si]を示す。
【0085】
図19(B)に示すように、窒化シリコン膜中のSiの組成比が高くなる、即ち、Siリッチ方向へと変化するにつれて、膜中のSi−H結合が増える傾向にある。また、窒化シリコン膜中のN−H結合とSi−H結合の化学結合比([N−H]/[Si−H])は、
図19(B)のグラフより、以下の式(2)で示される。
【0087】
窒化シリコン膜中のSi−H結合は、比較的不安定であり、熱、電界、光などによって解離しやすい。そして、解離後のSi原子の未結合手は、電子のトラップ部位となり得る。よって、窒化シリコン膜中のSiの組成比が高くなる、即ち、膜中のSi−H結合が増加すると、コラプスが生じやすい。よって、絶縁膜(保護膜)IF1の下層をNリッチな窒化シリコン膜IF1aとすることでコラプスを抑制することができる。
【0088】
なお、窒化シリコン膜中には、成膜中にチャンバに混入した酸素が含まれ得るが、膜中への酸素の混入はコラプス抑制効果を阻害するものであるため、本願においては酸素の混入は極力ないものとして説明する。
【0089】
<窒化シリコン膜の組成比の確認>
図20は、ガス流量比[NH
3]/[SiH
4]と屈折率nとの関係を示すグラフである。縦軸は、屈折率nを、横軸は、ガス流量比[NH
3]/[SiH
4]を示す。
図20に示すように、ガス流量比[NH
3]/[SiH
4]の変化に伴い、堆積膜の屈折率nが変化する。この屈折率nは、測定に用いた光の波長によって多少異なった値を得るが、ガス流量比[NH
3]/[SiH
4]の低下に伴い、屈折率nが上昇する。光としては、赤外線(波長λ=4μm)、DC極限(Static Limit)および可視光(λ=633nm)のエリプソメトリを用いて屈折率nを測定した。なお、アモルファスシリコンおよび化学量論組成のSi
3N
4の屈折率(n)は次のとおりである。アモルファスシリコンの赤外線の屈折率は、3.58、DC極限の屈折率は、3.3、可視光エリプソメトリの屈折率は、3.85であった。また、Si
3N
4の赤外線の屈折率は、1.94、DC極限の屈折率は、1.9、可視光エリプソメトリの屈折率は、1.98であった。
【0090】
図20に示すように、ガス流量比[NH
3]/[SiH
4]と屈折率nとは関連している。また、
図19(A)に示すように、ガス流量比[NH
3]/[SiH
4]と窒化シリコン膜の組成比[N]/[Si]とは関連していることから、屈折率nを測定することにより、窒化シリコン膜の組成比[N]/[Si]を知ることができる。
【0091】
屈折率nは、可視光エリプソメトリ(λ=633nm)で測定することが一般的である。
図21は、屈折率n(λ=633nm)と窒化シリコン膜の組成比[N]/[Si]との関係を示すグラフである。縦軸は、屈折率nを、横軸は、組成比[N]/[Si]を示す。
図21に示すように、屈折率nは組成比依存性を有し、屈折率nと組成比とは、以下の式(3)に示す関係がある。
【0093】
このように、屈折率nの値と、
図21または上記式(3)から窒化シリコン膜の組成比[N]/[Si]を得ることができる。また、この関係に着目すれば、例えば、各種文献に記載の屈折率nから組成比を導き出し、その特性と組成比との関係を考察することができる。
【0094】
<窒化シリコン膜の特性−エッチング耐性>
次いで、得られた窒化シリコン膜について、以下の測定を行い、その性質を検討した。ここで、以下の検討においては、組成比[Si]/[N]を指標として説明する。この組成比[Si]/[N]によれば、化学量論組成比[Si]/[N]である3/4を“0.75”と、非循環小数の有理数で表現できるなど、化学量論組成に近い窒化シリコン膜の特性を論じるには都合がよいからである。
【0095】
図22は、窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]とエッチングレートとの関係を示すグラフである。縦軸は、エッチングレート[オングストローム/min]を、横軸は、組成比[Si]/[N]を示す。グラフ(a)は、ウエットエッチングの場合、グラフ(b)は、ドライエッチングの場合を示す。ウエットエッチングには、室温の130バッファードフッ酸(130BHF)を用いた。130BHFは、5%の(NH
4)
+(HF
2)
−塩と、37%のフッ化アンモニウム(NH
4F)と58%の水(H
2O)から成る。また、ドライエッチングにおいては、エッチングガスとして、BCl
3、Cl
2およびArの混合ガス(塩素系のガス)を用い、BCl
3:Cl
2:Ar=40:10:50sccmの割合で用い、0.5Pa、150Wの条件でドライエッチングを行った。
【0096】
図22に示すように、組成比[Si]/[N]が0.75以下の組成比の場合には、ウェットエッチングレートが大きく、また、ドライエッチングレートも大きい。よって、ウエットエッチングおよびドライエッチングのいずれのエッチングにおいても、エッチング耐性が小さいことが分かる。一方、組成比[Si]/[N]が0.85以上であるSiリッチの組成比の場合には、ウェットエッチングレートが小さく、また、ドライエッチングレートも小さい。よって、ウエットエッチングおよびドライエッチングのいずれのエッチングにおいても、エッチング耐性が大きいことが分かる。よって、絶縁膜(保護膜)IF1の上層をSiリッチな窒化シリコン膜IF1bとすることでエッチング耐性の向上を図ることができる。
【0097】
<窒化シリコン膜の特性−導電性および絶縁性>
図23は、窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]と抵抗率との関係を示すグラフである。縦軸は、抵抗率[Ω・cm]を、横軸は、組成比[Si]/[N]を示す。抵抗率は、窒化シリコン膜に対して、2[MV/cm]の電界を印加した場合の抵抗率である。
【0098】
図23に示すように、組成比[Si]/[N]が化学量論組成比である0.75の場合の抵抗率が最大となり、その値は、8.E+16(8×10
16)程度である。これに対し、組成比[Si]/[N]が0.75を外れると、窒化シリコン膜の抵抗率は劇的に低減し、窒化シリコン膜は導電性を帯びてくることが分かる。
【0099】
このことから、窒化シリコン膜をSiリッチにすることで、窒化シリコン膜に導電性をもたせることができることが分かる。
【0100】
図24は、窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]と絶縁破壊電界強度との関係を示すグラフである。縦軸は、絶縁破壊電界強度[MV/cm]を、横軸は、組成比[Si]/[N]を示す。窒化シリコン膜の膜厚を100nmとし、10μA/cm
2の電流が通電してしまう際の電界を絶縁破壊電界と定義する。
【0101】
図24に示すように、組成比[Si]/[N]が化学量論組成比である0.75の場合の絶縁破壊電界強が最大となり、その値は、7[MV/cm]程度である。これに対し、組成比[Si]/[N]が0.75を外れ、組成比[Si]/[N]が0.75より小さい場合でも、組成比[Si]/[N]が0.75より大きい場合でも、絶縁破壊電界強度は低減することが分かった。このように、組成比[Si]/[N]が化学量論組成比である0.75付近で絶縁破壊電界が最大になり、この膜組成で膜の絶縁性が最も高くなることが分かる。また、組成比[Si]/[N]が0.75を外れると絶縁破壊電界強度が低下する。よって、例えば、絶縁膜(保護膜)IF1の下層を化学量論組成比である0.75近傍の膜組成とすることで膜そのものの絶縁破壊電界強度を確保することができる。
【0102】
<窒化シリコン膜の特性−コラプス>
図25は、本実施の形態において検討した半導体装置の構成を示す断面図である。
図25に示す半導体装置は、ゲートリセス構造を有さず、ショットキーゲートを採用したプレーナ型のFETである。
【0103】
図25に示す半導体装置においては、基板S上に、チャネル層CHおよび障壁層BAが順に形成されている。障壁層BA上には、開口領域(Lg)を有する絶縁膜IF1が形成されている。そして、ゲート電極GEは、絶縁膜IF1上および開口領域から露出した障壁層BA上に形成されている。Lgは、開口領域の幅であり、ゲート長と対応する。Lgsは、開口領域(Lg)のソース電極SE側の端部からソース電極SEまでの距離であり、Lgdは、開口領域(Lg)のドレイン電極DE側の端部からドレイン電極DEまでの距離である。Lfpは、フィールドプレート電極FPの長さである。なお、後述のWgは、ゲート幅を示す。
【0104】
図25に示す構造の半導体装置について、
図26に示すType−IとType−IIの2種の半導体装置について検討した。
図26は、Type−IとType−IIの半導体装置の各種パラメータを示す表である。
図26に示すように、Type−Iの半導体装置は、フィールドプレート電極FPを有さない大型の半導体装置である。このようなタイプの半導体装置は、耐圧極限を評価しやすい。また、Type−IIの半導体装置は、フィールドプレート電極FPを有する小型の半導体装置である。このようなタイプの半導体装置は、フィールドプレート電極FPの効果を評価しやすい。
【0105】
具体的に、Type−Iの半導体装置においては、Lgsは3μm、Lgは1μm、Lgdは10μm、Lfpは0、Wgは500μmとした。また、障壁層BAとして、AlGaNを用い、その厚さは、30nm、Alの組成は25%とし、絶縁膜IF1として膜厚300nmの窒化シリコン膜を用いた。また、Type−IIの半導体装置においては、Lgsは1μm、Lgは1μm、Lgdは2.5μm、Lfpは1μmまたは0、Wgは50μmとした。また、障壁層BAとして、AlGaNを用い、その厚さは、30nm、Alの組成は25%とし、絶縁膜IF1として膜厚60nmの窒化シリコン膜を用いた。
【0106】
図27は、Type−Iの半導体装置の窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]とコラプスによる電流変動量との関係を示すグラフである。縦軸は、コラプスによる電流変動量[%]を、横軸は、組成比[Si]/[N]を示す。
【0107】
半導体装置にソース、ドレイン間電圧(Vds)として50Vを印加し、動作させた場合のDCの電流−電圧(I−V)特性を測定する。この測定結果から、ソース、ドレイン間電圧(Vds)が5Vの場合の最大ドレイン電流Imaxが、Vdsが50V、パルス幅が1msec、パルス周期が10msecの条件下で、変化した値ΔImaxを測定する。その変動率(%)=ΔI/I×100をコラプスによる電流変動量と定義し、窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]に対してプロットした。
【0108】
図27に示すように、組成比[Si]/[N]が化学量論組成比である0.75近傍でコラプスによる電流変動量が最小となる。また、組成比[Si]/[N]が1を超えると、コラプスによる電流変動量が−80%となり、電流値が8割以上減少する。
【0109】
このように、窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]は、コラプス特性に影響を与える。そして、コラプスの抑制のためには化学量論組成比である0.75近傍の膜組成とすることがもっとも望ましい。この場合の窒化シリコン膜の屈折率nは、1.98程度である。
【0110】
但し、成膜時のマージンを考慮すれば、窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]を0.75±1%の範囲で調整することが好ましい。また、統計的な評価により、コラプスによる電流変動量として20%程度の変動を許容できる場合には、窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]を0.65以上0.85以下の範囲で調整できることが判明した。この場合、窒化シリコン膜の屈折率nは、1.86以上2.1以下である。
【0111】
以上をまとめると、コラプスの抑制のためには、窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]について、0.65≦[Si]/[N]≦0.85とすることが好ましい。屈折率nで言えば、1.86≦n≦2.1とすることが好ましい。
【0112】
また、コラプスの抑制のためには、窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]について、0.75±1%の範囲とすることがより好ましい。さらに、コラプスの抑制のためには、窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]について、0.75とすることが最も好ましい。
【0113】
上記
図27に示すコラプス特性は、比較的時定数が小さい特性変動である。次いで、比較的長い時間のスケールでの特性変動について検討する。
図28は、1000時間の高温通電試験後におけるType−Iの半導体装置の窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]と出力電力変化量との関係を示すグラフである。縦軸は、出力電力変化量(ΔPsat)[dB]を、横軸は、組成比[Si]/[N]を示す。
【0114】
Type−Iの半導体装置に1000時間の高温通電試験を行った後、800MHz、ドレイン電圧(Vd)50Vにおける飽和出力電力の変動量を測定した。この変化量が出力電力変化量(ΔPsat)である。高温通電試験は、チャネル温度250℃、ドレイン電圧(Vd)50V、ドレイン電流50mA/mmの条件で行った。
【0115】
出力電力変化量(ΔPsat)は、パワー・スランプとも呼ばれ、この変化量が大きいほど、ドレイン電流、閾値、耐圧などの長期的な変動が大きいとされる。このため、この変化量が小さければ、半導体装置の長期的な使用によっても安定的な動作が行える指標となる。
【0116】
図28に示すように、組成比[Si]/[N]が化学量論組成比である0.75では出力電力変化量(ΔPsat)がほぼ0(ゼロ)となる。即ち、組成比[Si]/[N]を0.75とした半導体装置においては、長時間の高温通電試験を経ても出力電力の変動がなく、半導体装置の長期的な使用によってもドレイン電流、閾値、耐圧などのデバイス特性の変動が小さいと言える。
【0117】
一方、組成比[Si]/[N]が化学量論組成比である0.75より大きい領域では出力電力変化量(ΔPsat)がマイナスの値となる。即ち、出力電力が低下したことを意味する。このような出力電力変化量(パワー・スランプ)の増加は、Si−H結合のH(水素)が脱離し、Siの未結合手に半導体中の電子が捕獲されるために生ずると推測されている。
【0118】
また、組成比[Si]/[N]が化学量論組成比である0.75より小さい領域では出力電力変化量(ΔPsat)がプラスの値となる。即ち、出力電力が増加したことを意味する。この出力電力が増加した原因は、ドレイン電流が少々増加したためであるが、この原因の詳細は明確には解析できていない。
【0119】
このように、半導体装置の長期的な使用に際しデバイス特性の変動を抑制するためには化学量論組成比である0.75近傍の膜組成とすることがもっとも望ましい。但し、前述したコラプスの抑制のための窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]の範囲、例えば、0.75±1%の範囲や0.65≦[Si]/[N]≦0.85において、出力電力変化量(ΔPsat)は、−0.5以上を確保できている。
【0120】
このように、絶縁膜IF1の下層を上記範囲の膜組成とすることで、コラプスの抑制および半導体装置のデバイス特性の変動を抑制することができる。
【0121】
<Siリッチな窒化シリコン膜を用いた半導体装置の耐圧特性>
次いで、半導体装置の耐圧について検討する。
図29は、Type−Iの半導体装置の窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]とオフ耐圧との関係を示すグラフである。縦軸は、オフ耐圧[V]を、横軸は、組成比[Si]/[N]を示す。
【0122】
半導体装置にゲート電圧(Vg)として−10Vを印加した状態で、オフ耐圧を測定した。オフ耐圧は、ドレイン電流(Ids)が1mA/mmで通電する際のドレイン電圧(Vd)として定義した。
【0123】
図29に示すように、窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]が大きくなるほど、オフ耐圧が大きくなる。例えば、窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]が、0.85を超えると、650V以上のオフ耐圧を確保することができる。また、実際には成膜時における装置内の放電を安定的に生成する目的から、窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]を1.6以下とすることが好ましい。
【0124】
このように、上記オフ耐圧等の観点からは、窒化シリコン膜の組成比[Si]/[N]について、0.85<[Si]/[N]≦1.6とすることが好ましい。屈折率nで言えば、2.1<n≦2.66とすることが好ましい。
【0125】
よって、絶縁膜(保護膜)IF1の上層をSiリッチな窒化シリコン膜IF1bとすることで半導体装置の耐圧の向上を図ることができる。このように、絶縁膜IF1の上層を擬似フィールドプレート電極として機能させることで、半導体装置の耐圧を向上させる。
【0126】
即ち、絶縁膜IF1の上層の膜であるSiリッチな窒化シリコン膜IF1bは、化学量論組成のSi
3N
4の膜よりアモルファスSiに近いため、ある程度の導電性を有する(
図23参照)。よって、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bは、擬似フィールドプレート電極として機能する。例えば、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bの導電性が増加した場合、ゲートリークは増える恐れがある。しかしながら、電界集中緩和効果からアバランシェが抑制されるため、オフ耐圧が増加すると考察される。
【0127】
よって、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bは、組成比[Si]/[N]が一定の場合、その膜厚が厚くなるほど半導体装置の耐圧が向上することとなる。
【0128】
<半導体装置の特性−総合検証>
Type−IIの半導体装置のコラプス、耐圧およびエッチングレートを測定した。前述したように、Type−IIの半導体装置においては、Lgsは1μm、Lgは1μm、Lgdは2.5μm、Lfpは1μmまたは0、Wgは50μmとした。また、障壁層BAとして、AlGaNを用い、その厚さは、30nm、Alの組成は25%とした。また、絶縁膜IF1としては、膜厚60nmであり、Siリッチな窒化シリコン膜とNリッチな窒化シリコン膜について検討した。Siリッチな窒化シリコン膜は、その組成比[Si]/[N]は0.95であり、Nリッチな窒化シリコン膜は、その組成比[Si]/[N]は0.75である。フィールドプレート電極(FP電極)としては、Lfpが1μm(FP電極あり)と、Lfpが0(FP電極なし)の構造について検討した(
図30の(a)〜(d)参照)。
【0129】
さらに、絶縁膜IF1としては、Siリッチな窒化シリコン膜とNリッチな窒化シリコン膜との積層膜を用いた構造についても検討し、Lfpは1μmまたは0の場合について検討した(
図30の(e)、(f)参照)。
【0130】
図30は、(a)〜(f)の構成の半導体装置の特性を纏めた表である。
図30に示すように、(a)の構成、即ち、Siリッチ単層でFP電極なしの構成においては、コラプスによる電流変動量が22%、オフ耐圧が160V、ドライエッチングレートが210Å/minであった(1Å=10
−10m)。(b)の構成、即ち、(a)の構成にFP電極を追加したものにおいては、コラプスによる電流変動量が20%、オフ耐圧が240V、ドライエッチングレートが210Å/minであった。
【0131】
また、(c)の構成、即ち、Nリッチ単層でFP電極なしの構成においては、コラプスによる電流変動量が8%、オフ耐圧が50V、ドライエッチングレートが800Å/minであった。(d)の構成、即ち、(c)の構成にFP電極を追加したものにおいては、コラプスによる電流変動量が4%、オフ耐圧が190V、ドライエッチングレートが800Å/minであった。
【0132】
そして、(e)の構成、即ち、Siリッチな窒化シリコン膜とNリッチな窒化シリコン膜との積層膜を用いFP電極なしの構成においては、コラプスによる電流変動量が9%、オフ耐圧が120V、ドライエッチングレートが210Å/minであった。(f)の構成、即ち、(e)の構成にFP電極を追加したものにおいては、コラプスによる電流変動量が1〜3%、オフ耐圧が210V、ドライエッチングレートが210Å/minであった。
【0133】
このように、FP電極を適用することによって、FP電極がない場合と比較し、オフ耐圧だけでなくコラプス特性も改善している。フィールドプレート電極は、ゲートのドレイン端への電界集中を緩和して耐圧を向上させる機能を有するとともに、ゲート−ドレイン間の半導体表面における電子トラップを放電させることによりチャネル狭窄を緩和するため、コラプスを抑制する機能も有する。
【0134】
また、フィールドプレート電極を適用しない場合においても、Nリッチ単層膜を用いた場合と比較し、Siリッチな窒化シリコン膜とNリッチな窒化シリコン膜との積層膜を用いた場合には、オフ耐圧だけでなくコラプス特性も改善している。これは、前述したように、Siリッチな窒化シリコン膜が擬似フィールドプレート電極として機能したためであると考えられる。また、Siリッチな窒化シリコン膜により、膜上層部のエッチング耐性が向上する。
【0135】
さらに、Siリッチな窒化シリコン膜とNリッチな窒化シリコン膜との積層膜を用いつつフィールドプレート電極を適用した構造においては、フィールドプレート電極がSiリッチな窒化シリコン膜の上方に延在するため、Siリッチな窒化シリコン膜の擬似フィールドプレート電極としての機能を強化する。このため、コラプス特性を最も改善しつつ、オフ耐圧を十分に確保しながら、さらにエッチング耐性にも優れることが分かる。
【0136】
図31は、Nリッチ単層でFP電極ありの場合の電界分布を模式的に示す図である。また、
図32は、Siリッチな窒化シリコン膜とNリッチな窒化シリコン膜との積層膜を用いFP電極ありの場合の電界分布を模式的に示す図である。それぞれについて上図は、FP電極近傍の断面図であり、等電位線を破線で示す。また、下図は、断面図のA−B間における電界強度分布を示すグラフである。
【0137】
Nリッチ単層でFP電極ありの場合には、
図31に示すように、電界がFP電極のドレイン電極DE側の端部に集中している。これに対し、Siリッチな窒化シリコン膜とNリッチな窒化シリコン膜との積層膜を用いFP電極ありの場合には、
図32に示すように、FP電極のドレイン電極DE側の端部の電界がドレイン電極DE側に分散している。このため、FP電極のドレイン電極DE側の端部における電界集中が緩和する。
【0138】
このように、Siリッチな窒化シリコン膜とNリッチな窒化シリコン膜との積層膜を用いFP電極を適用することにより、半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【0139】
ここで、
図31および
図32においては、Siリッチな窒化シリコン膜が直接フィールドプレート電極FPと接しているが、例えば、
図1に示すように、Siリッチな窒化シリコン膜がゲート絶縁膜GIを介してフィールドプレート電極FPと接する場合にも同様の効果を奏する。即ち、
図1に示すように、Siリッチな窒化シリコン膜とNリッチな窒化シリコン膜との積層膜を用いFP電極を適用することにより、半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【0140】
次いで、フィールドプレート電極の長さ(Lfp)の好適な範囲について、半導体装置に要求されるスイッチング速度や駆動損失などの観点から検討する。
【0141】
まず、半導体装置の寄生容量は、次のように表される。
入力容量Ciss=Cgd+Cgd…(4)
出力容量Coss=Cgd+Cds…(5)
帰還容量Crss=Cgd…(6)
ここで、Cgdは、ゲート・ドレイン間容量、Cgsは、ゲート・ソース間容量、Cdsは、ソース・ドレイン間容量である。各容量は非線形の電圧依存性をもち、低電圧のときに容量値が大きくなる。また、本実施の形態の半導体装置(
図1)は、ゲート電極GEがゲート絶縁膜GIで絶縁されており、ユニポーラ・デバイスである。このため、スイッチング機構は、バイポーラ・トランジスタとは異なり、少数キャリアの蓄積がないため、高速動作が可能となる。
【0142】
さらなる動作の高速化を図るためには、次に述べるように、ゲート・ドレイン間容量Cgdの低減を図る必要がある。
【0143】
本実施の形態の半導体装置(
図1)をオンするためには、ゲート絶縁膜GIによるMISキャパシタを充電し、ゲート電圧Vgを閾値電圧Vth以上にする。一方、オフにするためにはMISキャパシタに蓄積された電荷を引き抜けばよい。よって、本実施の形態の半導体装置(
図1)をスイッチングする速度は、ゲート絶縁膜GIの入力容量Cissを充放電する速度によって決定され、スイッチング速度の向上のためにはゲート電極GEの抵抗の低減と入力容量Ciss(=Cgd+Cgd)の低減が必要となる。また、駆動損失はスイッチング周波数に比例して増加するが、寄生容量の低減により低減できる。
【0144】
本実施の形態の半導体装置(
図1)のようなパワーMOSにおいて、低耐圧用途のものについては、高周波スイッチングさせた場合、ゲート電極GEへの入力波形とドレイン電極DEからの出力波形が180°異なる。このため、ゲート・ドレイン間容量Cgdは、ドレイン電極DEからの出力波形を、ゲート電極GEへの入力波形ゲート波形に、帰還させ、入力波形に悪影響を与える。この悪影響を低減するため、帰還容量であるゲート・ドレイン間容量Cgdの低減が必要となる。回路設計上は帰還容量やバイアスの影響を加味して、容量Cに対応した電荷Qで議論するとわかりやすい。よって、低耐圧用途のものでは、上記議論からスイッチング速度向上のためには、電荷Qg(=Qiss=Ciss×Vg)を低減する必要がある。
【0145】
一方、高耐圧用途のものについては、ドレイン電圧Vdが高いため、スイッチング速度向上のためには、上記電荷Qgに加えて、出力電荷量Qossの低減が必要である。また、駆動損失の低減には、電荷Qgの低減が必要である。
【0146】
このように、本実施の形態の半導体装置(
図1)において、スイッチング速度向上のためには、寄生容量Cgdの低減が必要である。この寄生容量Cgdの低減には、FP電極のドレイン電極DE側の端部からドレイン電極DEまでの距離を長くすることが有効である。
【0147】
本実施の形態の半導体装置(
図1)において、高耐圧用途の場合には、耐圧を確保するためにゲート・ドレイン間距離Lgdを1μm以上とすることが好ましい。また、FP電極の長さ(Lfp)としては、0.5μmより長いことが好ましい。また、FP電極の長さ(Lfp)の上限としては、経験則により√Lgd(単位はμm)とすることが好ましい。
【0148】
以上のことから、FP電極の長さ(Lfp、単位はμm)については、0.5<Lfp<√Lgdとすることが好ましい。
【0149】
以下に、本実施の形態の他の構成および変形例について説明する。
【0150】
図33Aは、本実施の形態の半導体装置の他の構成を示す断面図である。
【0151】
[構造説明]
図33Aに示す半導体装置においても、
図1に示す半導体装置と同様に、基板S上に、核生成層(図示せず)、歪緩和層(図示せず)、バッファ層BU、チャネル層CHおよび障壁層BAが順に形成されている。ゲート電極GEは、絶縁膜IF1および障壁層BAを貫通し、チャネル層CHの途中まで到達する溝の内部にゲート絶縁膜GIを介して形成されている。チャネル層CHや障壁層BAは窒化物半導体よりなり、障壁層BAは、チャネル層CHよりバンドギャップが広い窒化物半導体である。
【0152】
また、絶縁膜IF1は、実施の形態1と同様に、障壁層BA上に形成され、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとの積層膜よりなる。
【0153】
言い換えれば、上記ゲート電極Gと絶縁膜IF1との間には、少なくともSiリッチな窒化シリコン膜IF1bと接触するように設けられたゲート絶縁膜GIが配置されている。また、ゲート電極GEは、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと接触するように設けてもよい(
図42等参照)。
【0154】
この絶縁膜IF1およびゲート電極GE上には、絶縁層IL1が形成されている。この絶縁層IL1は、第1層IL1aとその上部の第2層IL1bの積層膜よりなる。第1層IL1aは、例えば、90nm程度の膜厚の窒化シリコン膜よりなる。この窒化シリコン膜は、組成比[Si]/[N]が0.75程度の化学量論組成膜(Nリッチな窒化シリコン膜)である。よって、このNリッチの窒化シリコン膜(IL1a)により、絶縁膜IF1が覆われることとなる。
【0155】
第2層IL1bは、例えば、プラズマCVD法により形成された500nm程度の膜厚の酸化シリコン膜と、その上部の400nm程度の膜厚のTEOS(テオス)膜との積層膜よりなる。
【0156】
言い換えれば、このNリッチの窒化シリコン膜(IL1a)は、上記ゲート電極GEおよび絶縁膜IF1上に設けられ、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bよりもシリコン(Si)の組成比が小さい。また、このNリッチの窒化シリコン膜(IL1a)上には、酸化シリコン膜よりなる第2層IL1bが設けられている。
【0157】
また、ソース電極SEおよびドレイン電極DEは、それぞれ、ゲート電極GEの両側の障壁層BA上に形成されている。このソース電極SEおよびドレイン電極DEは、それぞれ、配線M1と、絶縁層IL1中に形成されたコンタクトホール内のプラグを介して接続されている。
【0158】
また、配線M1および絶縁層IL1には、保護膜PROが形成されている。この保護膜PROは、第1層PROaとその上部の第2層PRObの積層膜よりなる。第1層PROaは、例えば、酸窒化シリコン膜よりなる。第2層PRObは、例えば、ポリイミド膜よりなる。
【0159】
また、上記ゲート電極GE、ソース電極SEおよびドレイン電極DEは、素子分離領域ISOで区画された活性領域に形成されている。素子分離領域ISOは、例えば、バッファ層BU、チャネル層CHおよび障壁層BA中に、ボロン(B)や窒素(N)などのイオン種が打ち込まれることにより、結晶状態が変化し、高抵抗化した領域である。
【0160】
なお、他の構成は、
図1の場合と同様であるため、その詳細な説明を省略する。また、
図33Aに示す形態においては、配線M1上に保護膜PROを形成したが、配線M1と保護膜PROとの間に、配線層を形成し、多層配線構造としてもよい。
【0161】
[製法説明]
次いで、
図33Aに示す半導体装置の製造方法を説明するとともに、当該半導体装置の構成をより明確にする。
【0162】
まず、
図1に示す半導体装置の場合と同様にして、基板S上に、核生成層(図示せず)、歪緩和層(図示せず)およびバッファ層BUを順次形成する。次いで、バッファ層BU上に、
図1に示す半導体装置の場合と同様にして、チャネル層CHおよび障壁層BAを順次形成する。
【0163】
次いで、素子分離領域を開口するマスク膜を形成し、このマスク膜をマスクとして、ボロン(B)または窒素(N)を打ち込むことにより、素子分離領域ISOを形成する。この後、上記マスク膜を除去する。なお、素子分離領域ISO形成用のイオン種としてボロンを用いる場合には、以降の熱処理を経ても、抵抗値の低下率が小さい。よって、製造フローの比較的初期の段階で素子分離領域を形成する場合に用いて好適である。
【0164】
次いで、障壁層BA上に、
図1に示す半導体装置の場合と同様にして、絶縁膜IF1を形成する。まず、Nリッチな窒化シリコン膜IF1aを、CVD法などを用いて堆積する。次いで、Nリッチな窒化シリコン膜IF1a上に、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bをCVD法などを用いて堆積する。窒化シリコン膜の組成比、即ち、Nリッチとするか、Siリッチとするかは、前述したように、原料ガス(即ち、シリコンの化合物ガスと窒素の化合物ガスとの混合ガス)のガス流量比を変化させることで調整することができる。
【0165】
次いで、
図1に示す半導体装置の場合と同様にして、絶縁膜IF1および障壁層BAを貫通してチャネル層CHの途中まで達する溝を形成し、さらに、溝内および障壁層BAの露出部を含む絶縁膜IF1上に、ゲート絶縁膜GIとなるアルミナおよびゲート電極GEとなるTiN膜を順次形成する。次いで、TiN膜およびアルミナをエッチングすることによりゲート絶縁膜GIおよびゲート電極GEを形成する。
【0166】
次いで、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁膜IF1をパターニングすることにより、ソース電極SEおよびドレイン電極DEの形成領域の障壁層BAを露出させる。
【0167】
次いで、障壁層BAの露出部上に、
図1に示す半導体装置の場合と同様にして、金属膜をスパッタリング法などにより堆積する。金属膜は、例えば、Al/Ti膜よりなる。次いで、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、金属膜をパターニングすることにより、ソース電極SEおよびドレイン電極DEを形成する。
【0168】
次いで、ゲート電極GE、ソース電極SEおよびドレイン電極DE上に、絶縁層IL1を形成する。まず、第1層IL1aとして、窒化シリコン膜をCVD法などを用いて90nm程度の膜厚で堆積する。この窒化シリコン膜は、組成比[Si]/[N]が0.75程度であるNリッチな窒化シリコン膜である。次いで、第1層IL1a上に、第2層IL1bを形成する。例えば、第1層IL1a上に、酸化シリコン膜をプラズマCVD法などを用いて500nm程度の膜厚で堆積する。そして、この酸化シリコン膜上に、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)を原料としたCVD法により400nm程度の膜厚のTEOS膜を形成する。これにより、第2層IL1bとして、酸化シリコン膜とその上部のTEOS膜との積層膜を形成することができる。
【0169】
次いで、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁層IL1中にコンタクトホールを形成する。このコンタクトホールは、ソース電極SEおよびドレイン電極DE上に配置される。
【0170】
次いで、
図1に示す半導体装置の場合と同様にして、ソース電極SEまたはドレイン電極DEと接続される配線M1を形成する。
【0171】
次いで、配線M1上に保護膜PROを形成する。例えば、配線M1および絶縁層IL1上に、第1層PROaとして、酸窒化シリコン膜をCVD法などを用いて堆積する。次いで、この酸窒化シリコン膜上に、第2層PRObとしてポリイミド膜を形成する。例えば、酸窒化シリコン膜(PROa)上に、ポリイミド材料を塗布し、熱処理を施すことにより、ポリイミド膜を形成する。これにより、保護膜PROとして、酸窒化シリコン膜(PROa)とその上部のポリイミド膜(PROb)との積層膜を形成することができる。
【0172】
なお、他の製造工程は、
図1の場合と同様であるため、その詳細な説明を省略する。また、上記工程においては、配線M1上に保護膜PROを形成したが、配線M1と保護膜PROとの間に、絶縁層と配線層との形成工程を繰り返すことにより、多層配線を形成してもよい。
【0173】
このように、
図33Aに示す半導体装置においても、
図1に示す半導体装置の場合と同様に、絶縁膜IF1を、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとで構成したので、半導体装置の特性を向上させることができる。
【0174】
具体的には、絶縁膜IF1の上層をSiリッチな窒化シリコン膜IF1bとすることで、耐圧の向上を図ることができる。また、絶縁膜IF1の下層をNリッチな窒化シリコン膜IF1aとすることで、コラプスを抑制することができる。
【0175】
なお、本形態においても、
図1に示す半導体装置の場合と同様に、絶縁膜IF1(Siリッチな窒化シリコン膜IF1b、Nリッチな窒化シリコン膜IF1a)の好適な組成比や好適なFP電極の長さを適用し得る。例えば、前述したように、コラプスの抑制のために、Nリッチな窒化シリコン膜IF1aの組成比[Si]/[N]を0.65以上0.85以下の範囲とすることが好ましく、さらに、組成比[Si]/[N]を0.75±1%の範囲で調整することがより好ましい。また、オフ耐圧の向上のために、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bの組成比[Si]/[N]を0.85より大きくすることが好ましい。
【0176】
(変形例1)
上記実施の形態(
図1)においては、絶縁膜IF1の溝T側の端部をドレイン電極DE側に後退させたが、この後退量をゼロとしてもよい。
図33Bは、本実施の形態の半導体装置の変形例1の構成を示す断面図である。
【0177】
即ち、
図33Bに示すように、溝Tのドレイン電極DE側の端部から絶縁膜IF1をドレイン電極DE側に延在させている。言い換えれば、絶縁膜IF1、障壁層BAおよびチャネル層CHの積層部に、絶縁膜IF1および障壁層BAを貫通してチャネル層CHの途中まで達する溝Tが形成されている。
【0178】
本変形例においては、例えば、Lgsは1μm、Lgは1μm、Lgdは10μm、Lfpは2.5μmである。また、障壁層BAとして、AlGaNを用い、その厚さは、30nm、Alの組成は25%で、例えば、絶縁膜IF1の上層は20nm、下層は40nmである。他の構成は、上記実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0179】
また、製造方法においては、絶縁膜IF1、障壁層BAおよびチャネル層CHをエッチングすることにより、絶縁膜IF1および障壁層BAを貫通してチャネル層CHの途中まで達する溝Tを形成する(後述の実施の形態2の
図38等を参照)。他の工程は、上記実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0180】
(変形例2)
上記実施の形態(
図1)においては、絶縁膜IF1の溝T側の端部をドレイン電極DE側にのみ後退させたが、絶縁膜IF1の溝T側のドレイン電極DE側の端部およびソース電極SE側の端部のそれぞれを後退させてもよい。
図34は、本実施の形態の半導体装置の変形例2の構成を示す断面図である。
【0181】
図34に示すように、絶縁膜IF1のドレイン電極DE側の端部を、溝Tの端部からドレイン電極DE側に後退量Ldだけ後退させ、さらに、絶縁膜IF1のソース電極SE側の端部を溝Tの端部からソース電極SE側に後退量Lsだけ後退させる。他の構成は、上記実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0182】
また、製造方法においては、開口領域OA1の形成領域を、開口領域OA2からソース電極SE側に距離Lsの幅だけ大きくし、ドレイン電極DE側に距離Ldの幅だけ大きくする。これにより、開口領域OA2より大きい開口領域OA1を設定することができる。そして、開口領域OA1に開口部を有するマスク用の絶縁膜(IFM)を形成し、これをマスクとして絶縁膜IF1をエッチングする。他の工程は、上記実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。なお、絶縁膜IF1の後退量(Ld、Ls)は、マスク用の絶縁膜(IFM)を利用せず、エッチング条件により制御することも可能である。
【0183】
(変形例3)
上記変形例2においては、溝Tの側壁を、障壁層BAやチャネル層CHの表面に対してほぼ垂直(テーパー角θ=90°)に形成したが、溝Tの側壁を、テーパー形状としてもよい。
図35は、本実施の形態の半導体装置の変形例3の構成を示す断面図である。
【0184】
図35に示すように、本例においては、溝Tの側面(側壁)と溝Tの底面の延長面とのなす角度(テーパー角θともいう)が、90°未満である。言い換えれば、溝Tの側面(側壁)と(111)面とのなす角度が、90°未満となっている。他の構成は、上記実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0185】
また、製造方法においては、溝Tの側壁がテーパー形状となるように、溝Tの形成の際のエッチング条件を調整する。例えば、異方的なエッチングガス成分より等方的なエッチングガスの成分が大きい条件下でエッチングを行う。他の工程は、上記実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0186】
(実施の形態2)
実施の形態1の変形例1(
図33B)においては、絶縁膜IF1をドレイン電極DEの近傍まで延在させたが、本実施の形態においては、溝Tとドレイン電極DEとの間に位置する障壁層BA上を絶縁膜IF1とIF2で覆っている。
図36は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【0187】
[構造説明]
図36に示すように、本実施の形態の半導体装置においても、実施の形態1(
図1)と同様に、基板S上に、核生成層NUC、歪緩和層STR、バッファ層BU、チャネル層CHおよび障壁層BAが順に形成されている。ゲート電極GEは、絶縁膜IF1および障壁層BAを貫通し、チャネル層CHの途中まで到達する溝Tの内部にゲート絶縁膜GIを介して形成されている。チャネル層CHや障壁層BAは窒化物半導体よりなり、障壁層BAは、チャネル層CHよりバンドギャップが広い窒化物半導体である。
【0188】
ゲート電極GEは、絶縁膜(保護膜)IF1および障壁層BAを貫通し、チャネル層CHの途中まで掘り込まれた溝Tの内部にゲート絶縁膜GIを介して形成されている。この溝Tは、開口領域OA2に形成される。
【0189】
また、前述したように絶縁膜IF1は、実施の形態1と同様に、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとの積層膜よりなる。そして、この絶縁膜IF1は、開口領域OA2に開口部(T)を有する。この開口領域OA2の外周部(外側)においては、ゲート電極GE、ゲート絶縁膜GIおよび絶縁膜IF1の積層膜が配置されている。ここで、この積層膜のドレイン電極DE側の端部は、ほぼ揃っており、ソース電極SE側の端部も、ほぼ揃っている。
【0190】
このように、本実施の形態においても、絶縁膜IF1を、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとの積層構造としたので、実施の形態1で詳細に説明したように、半導体装置の特性を向上させることができる。
【0191】
具体的には、絶縁膜IF1の上層をSiリッチな窒化シリコン膜IF1bとすることで、耐圧の向上を図ることができる。また、絶縁膜IF1の下層をNリッチな窒化シリコン膜IF1aとすることで、コラプスを抑制することができる。
【0192】
また、本実施の形態の半導体装置においては、ゲート電極GE、ゲート絶縁膜GIおよび絶縁膜IF1の積層膜の上部を含む障壁層BA上には、絶縁膜IF2が形成されている。よって、絶縁膜IF1とドレイン電極DEとの間は絶縁膜IF2で覆われている。絶縁膜IF2は、例えば、窒化シリコン膜や酸窒化シリコン膜などの絶縁膜よりなる。例えば、絶縁膜IF2として、Siリッチな窒化シリコン膜と、この窒化シリコン膜の下部に位置し、この窒化シリコン膜よりもシリコン(Si)の組成比が小さいNリッチな窒化シリコン膜との積層膜が用いられる。これによりソース電極SEおよびドレイン電極DEの形成時のエッチング耐性を向上させることができる。なお、絶縁膜IF2に含まれるこのNリッチな窒化シリコン膜は、その下方に設けられたSiリッチな窒化シリコン膜IF1bよりもシリコン(Si)の組成比が小さい。
【0193】
[製法説明]
次いで、
図37〜
図41を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するとともに、当該半導体装置の構成をより明確にする。
図37〜
図41は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0194】
図37に示すように、基板S上に、実施の形態1の場合と同様にして、核生成層NUC、歪緩和層STRおよびバッファ層BUを順次形成する。次いで、バッファ層BU上に、実施の形態1の場合と同様にして、チャネル層CHおよび障壁層BAを順次形成する。
【0195】
次いで、障壁層BA上に、実施の形態1と同様にして、絶縁膜IF1を形成する。まず、Nリッチな窒化シリコン膜IF1aを、CVD法などを用いて堆積する。次いで、Nリッチな窒化シリコン膜IF1a上に、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bをCVD法などを用いて堆積する。窒化シリコン膜の組成比、即ち、Nリッチとするか、Siリッチとするかは、実施の形態1で説明したように、原料ガス(即ち、シリコンの化合物ガスと窒素の化合物ガスとの混合ガス)のガス流量比を変化させることで調整することができる。
【0196】
次いで、絶縁膜IF1上に、フォトリソグラフィ技術を用いて、開口領域OA2に開口部を有するフォトレジスト膜PR11を形成する。
【0197】
次いで、
図38に示すように、フォトレジスト膜PR11をマスクとして、絶縁膜IF1、障壁層BAおよびチャネル層CHをエッチングすることにより、絶縁膜IF1および障壁層BAを貫通してチャネル層CHの途中まで達する溝Tを形成する。エッチングガスとしては、例えば、塩素系のガス(BCl
3など)を用いる。次いで、プラズマ剥離処理などによりフォトレジスト膜PR11を除去する。
【0198】
次いで、
図39に示すように、溝T内および障壁層BAの露出部を含む絶縁膜IF1上に、実施の形態1と同様に、ゲート絶縁膜GIとなるアルミナを形成し、さらに、ゲート電極GEとなるTiN膜(導電性膜)を形成する。次いで、導電性膜上に、フォトリソグラフィ技術を用いて、開口領域OA2およびその外周部を覆うフォトレジスト膜PR12を形成する。次いで、フォトレジスト膜PR12をマスクとして、絶縁膜IF1、ゲート絶縁膜GIとなるアルミナおよびゲート電極GEとなる導電性膜をエッチングする。例えば、TiN膜およびアルミナは、塩素系のガスでドライエッチングする。また、絶縁膜IF1は、フッ素系のガスでドライエッチングする。これにより、その外形がほぼ同じ形状である絶縁膜IF1、ゲート絶縁膜GIおよびゲート電極GEが形成される。このパターニングの際、ゲート電極GEを、一の方向(
図39中では右側、ドレイン電極DE側)に張り出した形状にパターニングする。言い換えれば、ゲート電極GEの一部として、フィールドプレート電極FPを設けるようにパターニングを行う。次いで、プラズマ剥離処理などによりフォトレジスト膜PR12を除去する。
【0199】
次いで、
図40に示すように、絶縁膜IF1、ゲート絶縁膜GIおよびゲート電極GEの積層膜上を含む障壁層BA上に、絶縁膜IF2を形成する。例えば、絶縁膜IF2として、窒化シリコン膜を、CVD法などを用いて堆積する。これにより、溝Tとドレイン電極DEとの間が、絶縁膜IF1、IF2により覆われる。
【0200】
次いで、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁膜IF2をパターニングすることにより、ソース電極SEおよびドレイン電極DEの形成領域の障壁層BAを露出させる(
図41)。
【0201】
次いで、障壁層BAの露出部を含む絶縁膜IF2上に、金属膜をスパッタリング法などにより堆積する。金属膜は、例えば、Al/Ti膜よりなる。次いで、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、金属膜Eをパターニングすることにより、ソース電極SEおよびドレイン電極DEを形成する(
図36参照)。この際、絶縁膜IF2として、Siリッチな窒化シリコン膜と、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜との積層膜を用いていれば、このパターニング工程においてエッチング耐性を向上させることができる。
【0202】
この後、実施の形態1と同様に、ゲート電極GE、ソース電極SEおよびドレイン電極DE上に、絶縁層、例えば、酸化シリコン膜を形成し、さらに、この絶縁層(IL1)上に、ソース電極SEまたはドレイン電極DEと接続される配線(M1)を形成する。
【0203】
以上の工程により、
図36に示す半導体装置を形成することができる。なお、上記工程は、一例であり、上記工程以外の工程により、本実施の形態の半導体装置を製造してもよい。
【0204】
このように、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、絶縁膜IF1を、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとで構成したので、半導体装置の特性を向上させることができる。
【0205】
具体的には、絶縁膜IF1の上層をSiリッチな窒化シリコン膜IF1bとすることで、耐圧の向上を図ることができる。また、絶縁膜IF1の下層をNリッチな窒化シリコン膜IF1aとすることで、コラプスを抑制することができる。
【0206】
なお、本実施の形態においても、実施の形態1で説明した絶縁膜IF1(Siリッチな窒化シリコン膜IF1b、Nリッチな窒化シリコン膜IF1a)の好適な組成比や好適なFP電極の長さを適用し得る。例えば、実施の形態1で詳細に説明したように、コラプスの抑制のために、Nリッチな窒化シリコン膜IF1aの組成比[Si]/[N]を0.65以上0.85以下の範囲とすることが好ましく、さらに、組成比[Si]/[N]を0.75±1%の範囲で調整することがより好ましい。また、オフ耐圧の向上のために、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bの組成比[Si]/[N]を0.85より大きくすることが好ましい。
【0207】
(実施の形態3)
実施の形態1の変形例1(
図33B)においては、ゲート絶縁膜GIと絶縁膜IF1とを用いているが、絶縁膜IF1をゲート絶縁膜GIとして用いてもよい。
図42は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【0208】
[構造説明]
図42に示すように、本実施の形態の半導体装置においても、実施の形態1(
図1)と同様に、基板S上に、核生成層NUC、歪緩和層STR、バッファ層BU、チャネル層CHおよび障壁層BAが順に形成されている。ゲート電極GEは、障壁層BAを貫通し、チャネル層CHの途中まで到達する溝Tの内部に絶縁膜IF1を介して形成されている。チャネル層CHや障壁層BAは窒化物半導体よりなり、障壁層BAは、チャネル層CHよりバンドギャップが広い窒化物半導体である。この絶縁膜IF1は、実施の形態1と同様に、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとの積層膜よりなる。本実施の形態の半導体装置においては、例えば、Lgsは1μm、Lgは1μm、Lgdは10μm、Lfpは2.5μmである。また、障壁層BAとして、AlGaNを用い、その厚さは、30nm、Alの組成は25%とし、例えば、絶縁膜IF1の上層は30nm、下層は30nmである。
【0209】
このように、本実施の形態においても、絶縁膜IF1を、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとの積層構造としたので、実施の形態1で詳細に説明したように、半導体装置の特性を向上させることができる。
【0210】
具体的には、絶縁膜IF1の上層をSiリッチな窒化シリコン膜IF1bとすることで、耐圧の向上を図ることができる。また、エッチング耐性の向上を図ることができる。また、絶縁膜IF1の下層をNリッチな窒化シリコン膜IF1aとすることで、コラプスを抑制することができる。
【0211】
[製法説明]
次いで、
図43〜
図45を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するとともに、当該半導体装置の構成をより明確にする。
図43〜
図45は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0212】
図43に示すように、基板S上に、実施の形態1の場合と同様にして、核生成層NUC、歪緩和層STR、バッファ層BU、チャネル層CHおよび障壁層BAを順次形成する。
【0213】
次いで、障壁層BA上に、マスク用の絶縁膜IFMとして、例えば、酸化シリコン膜を形成する。次いで、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁膜IFMをパターニングすることにより、開口領域OA2に開口部を形成する。
【0214】
次いで、絶縁膜IFMの積層膜をマスクとして、障壁層BAおよびチャネル層CHをエッチングすることにより、障壁層BAを貫通してチャネル層CHの途中まで達する溝Tを形成する。エッチングガスとしては、例えば、塩素系のガス(BCl
3など)を用いる。次いで、マスク用の絶縁膜IFMをエッチングにより除去する。
【0215】
次いで、
図44に示すように、溝T内を含む障壁層BA上に、実施の形態1と同様にして、絶縁膜IF1を形成する。まず、Nリッチな窒化シリコン膜IF1aを、CVD法などを用いて堆積する。次いで、Nリッチな窒化シリコン膜IF1a上に、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bをCVD法などを用いて堆積する。窒化シリコン膜の組成比、即ち、Nリッチとするか、Siリッチとするかは、実施の形態1で説明したように、原料ガス(即ち、シリコンの化合物ガスと窒素の化合物ガスとの混合ガス)のガス流量比を変化させることで調整することができる。
【0216】
次いで、絶縁膜IF1上に、ゲート電極GEとなるTiN膜(導電性膜)を形成する。次いで、導電性膜上に、フォトリソグラフィ技術を用いて、開口領域OA2およびその外周部を覆うフォトレジスト膜PR12を形成する。次いで、フォトレジスト膜PR12をマスクとして、導電性膜をエッチングし、ゲート電極GEを形成する。例えば、TiN膜は、塩素系のガスでドライエッチングする。次いで、プラズマ剥離処理などによりフォトレジスト膜PR12を除去する。
【0217】
次いで、
図45に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁膜IF1をパターニングする。絶縁膜IF1は、フッ素系のガスでドライエッチングする。これにより、ソース電極SEおよびドレイン電極DEの形成領域の障壁層BAが露出する。
【0218】
次いで、ゲート電極GEの両側の障壁層BA上に、ソース電極SEおよびドレイン電極DEを形成する。このソース電極SEおよびドレイン電極DEは、実施の形態1と同様に、リフトオフ法を用いて形成する(
図42参照)。
【0219】
この後、実施の形態1と同様に、ゲート電極GE、ソース電極SEおよびドレイン電極DE上に、絶縁層(IL1)を形成し、さらに、この絶縁層(IL1)上に、ソース電極SEまたはドレイン電極DEと接続される配線(M1)を形成する。
【0220】
以上の工程により、
図42に示す半導体装置を形成することができる。なお、上記工程は、一例であり、上記工程以外の工程により、本実施の形態の半導体装置を製造してもよい。
【0221】
このように、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、絶縁膜IF1を、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとで構成したので、半導体装置の特性を向上させることができる。
【0222】
具体的には、絶縁膜IF1の上層をSiリッチな窒化シリコン膜IF1bとすることで、耐圧の向上を図ることができる。また、エッチング耐性の向上を図ることができる。また、絶縁膜IF1の下層をNリッチな窒化シリコン膜IF1aとすることで、コラプスを抑制することができる。
【0223】
なお、本実施の形態においても、実施の形態1で説明した絶縁膜IF1(Siリッチな窒化シリコン膜IF1b、Nリッチな窒化シリコン膜IF1a)の好適な組成比や好適なFP電極の長さを適用し得る。例えば、実施の形態1で詳細に説明したように、コラプスの抑制のために、Nリッチな窒化シリコン膜IF1aの組成比[Si]/[N]を0.65以上0.85以下の範囲とすることが好ましく、さらに、組成比[Si]/[N]を0.75±1%の範囲で調整することがより好ましい。また、オフ耐圧の向上のために、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bの組成比[Si]/[N]を0.85より大きくすることが好ましい。
【0224】
(実施の形態4)
実施の形態1の変形例1(
図33B)の半導体装置においては、ゲート絶縁膜GIを用いているが、ゲート絶縁膜GIを用いないショットキーゲート構造の半導体装置としてもよい。
図46は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【0225】
[構造説明]
図46に示すように、本実施の形態の半導体装置においても、実施の形態1(
図1)と同様に、基板S上に、核生成層NUC、歪緩和層STR、バッファ層BU、チャネル層CHおよび障壁層BAが順に形成されている。ゲート電極GEは、絶縁膜IF1を貫通し、障壁層BAの途中まで到達する溝Tの内部に形成されている。チャネル層CHや障壁層BAは窒化物半導体よりなり、障壁層BAは、チャネル層CHよりバンドギャップが広い窒化物半導体である。この絶縁膜IF1は、実施の形態1と同様に、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとの積層膜よりなる。
【0226】
このように、本実施の形態においても、絶縁膜IF1を、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとの積層構造としたので、実施の形態1で詳細に説明したように、半導体装置の特性を向上させることができる。
【0227】
具体的には、絶縁膜IF1の上層をSiリッチな窒化シリコン膜IF1bとすることで、耐圧の向上を図ることができる。また、絶縁膜IF1の下層をNリッチな窒化シリコン膜IF1aとすることで、コラプスを抑制することができる。
【0228】
なお、本実施の形態においては、溝Tを形成しない構成としてもよい。但し、溝Tを設ける構成とすることで、コラプスをより抑制し、また、閾値電圧の調整がし易くなる。
【0229】
[製法説明]
次いで、
図47〜
図49を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するとともに、当該半導体装置の構成をより明確にする。
図47〜
図49は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0230】
図47に示すように、基板S上に、実施の形態1の場合と同様にして、核生成層NUC、歪緩和層STR、バッファ層BU、チャネル層CHおよび障壁層BAを順次形成する。
【0231】
次いで、障壁層BA上に、実施の形態1と同様にして、絶縁膜IF1を形成する。まず、Nリッチな窒化シリコン膜IF1aを、CVD法などを用いて堆積する。次いで、Nリッチな窒化シリコン膜IF1a上に、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bを、CVD法などを用いて堆積する。窒化シリコン膜の組成比、即ち、Nリッチとするか、Siリッチとするかは、実施の形態1で説明したように、原料ガス(即ち、シリコンの化合物ガスと窒素の化合物ガスとの混合ガス)のガス流量比を変化させることで調整することができる。
【0232】
次いで、絶縁膜IF1上に、フォトリソグラフィ技術を用いて、開口領域OA2に開口部を有するフォトレジスト膜(図示せず)を形成し、このフォトレジスト膜をマスクとして、絶縁膜IF1および障壁層BAをエッチングする。これにより、絶縁膜IF1を貫通して障壁層BAの途中まで達する溝Tを形成する。次いで、プラズマ剥離処理などによりフォトレジスト膜(図示せず)を除去する。
【0233】
次いで、
図48に示すように、溝T内を含む絶縁膜IF1上に、ゲート電極GEとなるTiN膜(導電性膜)を形成する。次いで、導電性膜上に、フォトリソグラフィ技術を用いて、開口領域OA2およびその外周部を覆うフォトレジスト膜PR2を形成する。次いで、フォトレジスト膜PR2をマスクとして、ゲート電極GEとなる導電性膜をエッチングする。例えば、TiN膜は、塩素系のガスでドライエッチングする。次いで、プラズマ剥離処理などによりフォトレジスト膜PR2を除去する。
【0234】
次いで、
図49に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁膜IF1をパターニングする。絶縁膜IF1は、フッ素系のガスでドライエッチングする。これにより、ソース電極SEおよびドレイン電極DEの形成領域の障壁層BAが露出する。
【0235】
次いで、ゲート電極GEの両側の障壁層BA上に、ソース電極SEおよびドレイン電極DEを形成する。このソース電極SEおよびドレイン電極DEは、実施の形態1と同様に、リフトオフ法を用いて形成する(
図46参照)。
【0236】
この後、実施の形態1と同様に、ゲート電極GE、ソース電極SEおよびドレイン電極DE上に、絶縁層(IL1)を形成し、さらに、この絶縁層(IL1)上に、ソース電極SEまたはドレイン電極DEと接続される配線(M1)を形成する。
【0237】
以上の工程により、
図46に示す半導体装置を形成することができる。なお、上記工程は、一例であり、上記工程以外の工程により、本実施の形態の半導体装置を製造してもよい。
【0238】
このように、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、絶縁膜IF1を、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとで構成したので、半導体装置の特性を向上させることができる。
【0239】
具体的には、絶縁膜IF1の上層をSiリッチな窒化シリコン膜IF1bとすることで、耐圧の向上を図ることができる。また、エッチング耐性の向上を図ることができる。また、絶縁膜IF1の下層をNリッチな窒化シリコン膜IF1aとすることで、コラプスを抑制することができる。
【0240】
なお、本実施の形態においても、実施の形態1で説明した絶縁膜IF1(Siリッチな窒化シリコン膜IF1b、Nリッチな窒化シリコン膜IF1a)の好適な組成比や好適なFP電極の長さを適用し得る。例えば、実施の形態1で詳細に説明したように、コラプスの抑制のために、Nリッチな窒化シリコン膜IF1aの組成比[Si]/[N]を0.65以上0.85以下の範囲とすることが好ましく、さらに、組成比[Si]/[N]を0.75±1%の範囲で調整することがより好ましい。また、オフ耐圧の向上のために、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bの組成比[Si]/[N]を0.85より大きくすることが好ましい。
【0241】
(実施の形態5)
実施の形態1の変形例1(
図33B)においては、2次元電子ガス2DEGとチャネルCを利用したが、本実施の形態のように、チャネルCのみを利用する構成としてもよい。
図50は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
図50に示す半導体装置は、MIS型の電界効果トランジスタである。
【0242】
[構造説明]
図50に示すように、本実施の形態の半導体装置は、チャネル層CHを有する基板上に、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEが形成されている。チャネル層CHは窒化物半導体(例えば、窒化ガリウム(GaN))よりなる。また、チャネル層CH上には、開口領域OA2に開口部を有する絶縁膜IF1が形成されている。そして、ゲート電極GEは、絶縁膜IF1の開口部の上方からドレイン電極DE側に延在している。また、ゲート電極GEは、絶縁膜IF1の開口部の上方からソース電極SE側に延在している。また、開口領域OA2の両側のチャネル層CH中には、n型の高濃度半導体領域(高濃度不純物領域、ソース、ドレイン領域)NSが形成されている。
【0243】
また、絶縁膜IF1は、実施の形態1と同様に、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとの積層膜よりなる。
【0244】
このように、本実施の形態においても、絶縁膜IF1を、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとの積層構造としたので、実施の形態1で詳細に説明したように、半導体装置の特性を向上させることができる。
【0245】
具体的には、絶縁膜IF1の上層をSiリッチな窒化シリコン膜IF1bとすることで、耐圧の向上を図ることができる。また、エッチング耐性の向上を図ることができる。また、絶縁膜IF1の下層をNリッチな窒化シリコン膜IF1aとすることで、コラプスを抑制することができる。
【0246】
[製法説明]
次いで、
図51〜
図54を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するとともに、当該半導体装置の構成をより明確にする。
図51〜
図54は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0247】
図51に示すように、基板のチャネル層CHの開口領域OA2をマスク膜(図示せず)で覆い、このマスク膜をマスクとして、チャネル層CH中にn型の不純物(例えば、Siイオン)を注入することにより、n
+型の高濃度半導体領域(ソース、ドレイン領域)NSを形成する。この後、注入イオンの活性化のため、例えば、1200℃で5分程度の熱処理を行う。次いで、マスク膜を除去する。
【0248】
次いで、
図52に示すように、チャネル層CHおよびn
+型の高濃度半導体領域NS上に、実施の形態1と同様にして、絶縁膜IF1を形成する。まず、Nリッチな窒化シリコン膜IF1aを、CVD法などを用いて堆積する。次いで、Nリッチな窒化シリコン膜IF1a上に、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bをCVD法などを用いて堆積する。窒化シリコン膜の組成比、即ち、Nリッチとするか、Siリッチとするかは、実施の形態1で説明したように、原料ガス(即ち、シリコンの化合物ガスと窒素の化合物ガスとの混合ガス)のガス流量比を変化させることで調整することができる。
【0249】
次いで、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁膜IF1をパターニングすることにより、開口領域OA2に開口部を形成する。
【0250】
次いで、
図53に示すように、開口部内を含む絶縁膜IF1上に、実施の形態1と同様に、ゲート絶縁膜GIとなるアルミナを形成し、さらに、ゲート電極GEとなるTiN膜(導電性膜)を形成する。次いで、導電性膜上に、フォトリソグラフィ技術を用いて、開口領域OA2およびその外周部を覆うフォトレジスト膜PR12を形成する。次いで、フォトレジスト膜PR12をマスクとして、ゲート絶縁膜GIとなるアルミナおよびゲート電極GEとなる導電性膜をエッチングする。例えば、TiN膜およびアルミナは、塩素系のガスでドライエッチングする。このパターニングの際、ゲート電極GEを、一の方向(
図53中では右側、ドレイン電極DE側)に張り出した形状にパターニングする。言い換えれば、ゲート電極GEの一部として、フィールドプレート電極FPを設けるようにパターニングを行う。次いで、プラズマ剥離処理などによりフォトレジスト膜PR12を除去する。
【0251】
次いで、
図54に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁膜IF1をパターニングする。絶縁膜IF1は、フッ素系のガスでドライエッチングする。これにより、ソース電極SEおよびドレイン電極DEの形成領域のチャネル層CHが露出する。
【0252】
この後、例えば、ゲート電極GEの両側のn
+型の高濃度半導体領域NS上に、ソース電極およびドレイン電極を形成し、さらに、ゲート電極GE、ソース電極およびドレイン電極上に、絶縁層や配線などを形成する。
【0253】
以上の工程により、
図50に示す半導体装置を形成することができる。なお、上記工程は、一例であり、上記工程以外の工程により、本実施の形態の半導体装置を製造してもよい。
【0254】
このように、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、絶縁膜IF1を、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bと、その下部に位置するNリッチな窒化シリコン膜IF1aとで構成したので、半導体装置の特性を向上させることができる。
【0255】
具体的には、絶縁膜IF1の上層をSiリッチな窒化シリコン膜IF1bとすることで、耐圧の向上を図ることができる。また、エッチング耐性の向上を図ることができる。また、絶縁膜IF1の下層をNリッチな窒化シリコン膜IF1aとすることで、コラプスを抑制することができる。
【0256】
なお、本実施の形態においても、実施の形態1で説明した絶縁膜IF1(Siリッチな窒化シリコン膜IF1b、Nリッチな窒化シリコン膜IF1a)の好適な組成比や好適なFP電極の長さを適用し得る。例えば、実施の形態1で詳細に説明したように、コラプスの抑制のために、Nリッチな窒化シリコン膜IF1aの組成比[Si]/[N]を0.65以上0.85以下の範囲とすることが好ましく、さらに、組成比[Si]/[N]を0.75±1%の範囲で調整することがより好ましい。また、オフ耐圧の向上のために、Siリッチな窒化シリコン膜IF1bの組成比[Si]/[N]を0.85より大きくすることが好ましい。
【0257】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、実施の形態2の絶縁膜IF2の構成を実施の形態3〜5の半導体装置に適用してもよい。
【0258】
[付記1]
基板の上方に形成された窒化物半導体層と、
前記窒化物半導体層上に形成され第1領域に開口部を有する第1絶縁膜と、
前記第1領域の前記窒化物半導体層上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記窒化物半導体層上に位置する前記ゲート電極の両側の前記窒化物半導体層中に形成されたソース、ドレイン領域と、
を有し、
前記第1絶縁膜は、前記窒化物半導体層上に形成された第1窒化シリコン膜と前記第1窒化シリコン膜の上方に形成された第2窒化シリコン膜とを有し、
前記第2窒化シリコン膜は、前記第1窒化シリコン膜よりシリコン(Si)の組成比が大きい、半導体装置。
【0259】
[付記2]
付記1記載の半導体装置において、
前記ゲート電極は、前記開口部の端部から前記ドレイン領域側に延在する電極部を有する、半導体装置。
【0260】
[付記3]
基板の上方に形成された第1窒化物半導体層と、
前記第1窒化物半導体層上に形成され、前記第1窒化物半導体層よりバンドギャップが広い第2窒化物半導体層と、
第1領域の前記第2窒化物半導体層を貫通し、その底部が前記第1窒化物半導体層に到達する溝と、
前記溝内に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極の両側の前記第2窒化物半導体層の上方にそれぞれ形成された第1電極および第2電極と、
前記第1領域の外側の前記第2窒化物半導体層上に形成された第1絶縁膜と、
を有し、
前記第1絶縁膜は、前記第2窒化物半導体層上に形成された第1窒化シリコン膜と前記第1窒化シリコン膜の上方に形成された第2窒化シリコン膜とを有し、
前記第2窒化シリコン膜は、前記第1窒化シリコン膜よりシリコン(Si)の組成比が大きい、半導体装置。
【0261】
[付記4]
基板の上方に形成された第1窒化物半導体層と、
前記第1窒化物半導体層上に形成され、前記第1窒化物半導体層よりバンドギャップが広い第2窒化物半導体層と、
ゲート電極と、
前記ゲート電極の両側の前記第2窒化物半導体層の上方にそれぞれ形成された第1電極および第2電極と、
前記第2窒化物半導体層上に形成された第1絶縁膜と、
を有し、
前記第1絶縁膜は、前記第2窒化物半導体層上に形成された第1窒化シリコン膜と前記第1窒化シリコン膜の上方に形成された第2窒化シリコン膜とを有し、
前記第2窒化シリコン膜は、前記第1窒化シリコン膜よりシリコン(Si)の組成比が大きく、
少なくとも前記第1絶縁膜の上面及び前記第2窒化物半導体層の上面が開口されてなる溝であって、前記第1絶縁膜の開口される第1の方向の幅が、その溝により第2窒化物半導体層の開口される前記第1の方向の幅よりも広くなるように前記溝が設けられており、
前記ゲート電極は、前記第1絶縁膜を開口する開口部の上方及び前記第2窒化シリコン膜の上方に設けられる、半導体装置。
【0262】
[付記5]
(a)第1窒化物半導体層を形成し、前記第1窒化物半導体層上に、前記第1窒化物半導体層よりバンドギャップが広い第2窒化物半導体層を形成することにより積層体を形成する工程、
(b)前記第2窒化物半導体層上に第1窒化シリコン膜を形成し、前記第1窒化シリコン膜の上方に、前記第1窒化シリコン膜よりシリコン(Si)の組成比が大きい第2窒化シリコン膜を形成する工程、
(c)前記第2窒化物半導体層の上方に導電性膜を形成し、前記導電性膜を前記第2窒化シリコン膜が露出するまでエッチングすることによりゲート電極を形成する工程、
を有する、半導体装置の製造方法。