(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周方向に複数の爪状磁極を有する第1及び第2ロータコアを各ロータコアの爪状磁極が周方向に交互となるように組み合わせ、各ロータコアの爪状磁極が交互に異なる磁極として機能するように前記第1及び第2ロータコアの間に軸方向に磁化された界磁磁石を配置してなるロータ本体に対し、前記磁極と対応して周方向に多極着磁された円環状のセンサマグネットを接着剤にて固定する構造をなすランデル型ロータであって、
前記接着剤による固定のための前記センサマグネットの固定面と並んで凹状部を設け、前記ロータ本体側の固定部位と前記センサマグネットの固定面との間から溢れ出る前記接着剤の余剰分を溜める接着剤溜まりとして前記凹状部を機能させるべく構成されていることを特徴とするランデル型ロータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者は、接着剤を用いてセンサマグネットを直接的にロータコアに対して保持することを考えている。この場合、ロータコアの一部を含むロータ本体側の固定部位に対してセンサマグネットを強固に固定するには十分な接着剤を用いたいが、反面、ロータ本体側の固定部位とセンサマグネットとから接着剤の余剰分が溢れ出ることがある。両部材間から溢れ出た接着剤は、例えばセンサマグネットの組み付け時に用いる治具等に付着し、次のセンサマグネットの組み付けに悪影響を与えることから、治具に付着した接着剤の拭き取り作業が必要となることを懸念するところである。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、センサマグネットを接着剤を用いて固定する際、接着剤の余剰分が周囲に溢れ出ることを抑制できる構造としたランデル型ロータ及びランデル型モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するランデル型ロータは、周方向に複数の爪状磁極を有する第1及び第2ロータコアを各ロータコアの爪状磁極が周方向に交互となるように組み合わせ、各ロータコアの爪状磁極が交互に異なる磁極として機能するように前記第1及び第2ロータコアの間に軸方向に磁化された界磁磁石を配置してなるロータ本体に対し、前記磁極と対応して周方向に多極着磁された円環状のセンサマグネットを接着剤にて固定する構造をなすランデル型ロータであって、前記接着剤による固定のための前記センサマグネットの固定面と並んで凹状部を設け、前記ロータ本体側の固定部位と前記センサマグネットの固定面との間から溢れ出る前記接着剤の余剰分を溜める接着剤溜まりとして前記凹状部を機能させるべく構成される。
【0008】
この構成によれば、ロータ本体側の固定部位とセンサマグネットの固定面との間に接着剤を塗布してセンサマグネットの固定を図る際、固定面と並んで設けた凹状部がその接着剤の余剰分を溜めるための接着剤溜まりとして機能する。これにより、接着剤の余剰分が周囲に溢れ出ることが抑えられ、溢れ出た接着剤による悪影響の発生を抑制できる。
【0009】
また、上記のランデル型ロータにおいて、前記凹状部は、前記センサマグネットの内側周縁部及び外側周縁部の少なくとも一方に前記センサマグネットの全周に亘って設けられていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、センサマグネットの内側周縁部及び外側周縁部の少なくとも一方にその全周に亘って凹状部が設けられるため、周方向の何れにおいて接着剤の余剰分が生じてもその余剰分を凹状部にて確実に保持することが可能である。
【0011】
また、上記のランデル型ロータにおいて、前記爪状磁極は軸方向に延びる部位を有し、その軸方向先端部と前記センサマグネットの前記凹状部とが対向する位置関係にて構成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、爪状磁極の軸方向先端部とセンサマグネットの凹状部とが対向する位置関係にて構成されることから、爪状磁極とセンサマグネットとの間で無用な磁束が作用することが抑制される。
【0013】
また、上記のランデル型ロータにおいて、前記爪状磁極の両側及び背面での漏れ磁束を低減するための整流磁石が備えられるものであり、前記整流磁石と前記ロータコアとに跨って円環状をなす前記ロータ本体側の固定部位に対して前記センサマグネットが固定されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、爪状磁極の両側及び背面での漏れ磁束を低減する整流磁石とロータコアとに跨るように円環状にロータ本体側の固定部位が構成され、この円環状の固定部位に対してセンサマグネットが固定される。つまり、センサマグネットを十分強固に固定することが可能である。
【0015】
また、上記課題を解決するランデル型モータは、上記のランデル型ロータを備える。
この構成によれば、ランデル型モータのロータにおいて、センサマグネットの固定時に用いる接着剤が周囲に溢れ出ることを抑制できる構造のものとして提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のランデル型ロータ及びランデル型モータによれば、センサマグネットを接着剤を用いて固定する際、接着剤の余剰分が周囲に溢れ出ることを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、ランデル型ロータ及びランデル型モータの一実施形態について説明する。
図1に示す本実施形態のブラシレスモータMは、ランデル型モータであって、車両エンジンルームに配置される位置制御装置用、詳しくはエンジンに連結されるバルブタイミング可変装置に用いられるモータである。
【0019】
ブラシレスモータMは、モータケース1を有している。モータケース1は、有蓋筒状に形成された磁性体よりなる筒状フロントハウジング2と、その筒状フロントハウジング2の開口部を閉塞するアルミ(非磁性体)よりなるエンドフレーム3とを有している。
【0020】
ブラシレスモータMは、筒状フロントハウジング2の内周面にステータ5が固定され、そのステータ5の内側には、回転軸6に固着され同回転軸6とともに一体回転する所謂ランデル型構造のロータ7が配設されている。回転軸6は、非磁性体のステンレス製シャフトであって、筒状フロントハウジング2に形成した軸受保持部2aに収容固定された軸受8及びエンドフレーム3に形成した軸受保持部3aに収容固定された軸受9にて、モータケース1に対して回転可能に支持されている。なお、軸受9は非磁性体よりなる。
【0021】
回転軸6の先端部は、筒状フロントハウジング2から突出している。そして、回転軸6の回転駆動によって、運転状態に応じたバルブタイミング(エンジンのクランクシャフトに対するカムシャフトの相対回転位相)が適宜変更されるようになっている。
【0022】
[ステータ5]
図1及び
図2に示すように、筒状フロントハウジング2の内周面にはステータ5が固定されている。ステータ5は、円筒状のステータコア11を有し、そのステータコア11の外周面が筒状フロントハウジング2の内側面に固定されている。ステータコア11の内側には、軸線方向に沿って形成され、かつ、周方向に等ピッチに配置される複数のティース12が、径方向内側に向かって延出形成されている。各ティース12は、T型のティースであって、その径方向の内周面は、回転軸6の中心軸線Oを中心として同心円の円弧を軸線方向に延出した円弧面である。
【0023】
各ティース12には、インシュレータ13(
図1参照)を介して3相の巻線のそれぞれが巻回されている。具体的には、
図2に示すように、12個のティース12には、周方向に3相巻線、即ちU相巻線14、V相巻線15、W相巻線16が順番に集中巻きにて巻回されている。そして、これら巻回した巻線14,15,16に3相の駆動電流が供給されてステータ5に回転磁界を形成し、同ステータ5の内側に配置した回転軸6に固着されたロータ7を、正逆回転させるようになっている。
【0024】
[ロータ7]
図1〜
図3に示すように、回転軸6に固着されるロータ7は、ステータ5の内側に配置されている。ロータ7は、第1及び第2ロータコア20,30、界磁磁石40、整流磁石42、センサマグネット50を有している。
【0025】
[第1ロータコア20]
第1ロータコア20は、軟磁性材よりなる電磁鋼板にて形成され、エンドフレーム3側に配置される。第1ロータコア20は、円板状の第1コアベース21を有し、その中心位置に貫通穴21aが貫通形成されている。貫通穴21aのエンドフレーム3側の外周部には、略円筒状のボス部21bが突出形成されている。本実施形態では、バーリング加工により、貫通穴21aとボス部21bを同時に形成している。なお、ボス部21bの外径は、回転軸6の一側を回転可能に支持する軸受9の外径、即ちエンドフレーム3の設けた軸受9を収容固定する軸受保持部3aの内径より短く形成されている。
【0026】
貫通穴21a(ボス部21b)には回転軸6が圧入して貫挿され、第1コアベース21が回転軸6に対して圧着固定される。この時、ボス部21bを形成することによって、第1コアベース21は、回転軸6に対して強固に圧着固定される。そして、この第1コアベース21が回転軸6に圧着固定されたとき、ボス部21bは、軸受保持部3aに収容固定された軸受9に対して、軸方向において離間するように配置されるようになっている(
図1参照)。
【0027】
第1コアベース21の外周面21cには、等間隔に複数(本実施形態では4つ)の第1爪状磁極22が径方向外側に突出されるとともに軸方向に延出形成されている。ここで、第1爪状磁極22において、第1コアベース21の外周面21cから径方向外側に突出した部分を第1基部23といい、軸方向に屈曲された先端部分を第1磁極部24という。
【0028】
第1基部23と第1磁極部24からなる第1爪状磁極22の周方向両端面22a,22bは、径方向に延びる(軸方向から見て径方向に対して傾斜していない)平坦面となっている。そして、各第1爪状磁極22の周方向の角度、即ち前記周方向両端面22a,22b間の角度は、周方向に隣り合う第1爪状磁極22同士の隙間の角度より小さく設定されている。
【0029】
また、第1磁極部24の径方向外側面25は、軸直交方向断面形状が回転軸6の中心軸線Oを中心とする同心円形状の円弧面を有し、その径方向外側面25に2つの補助溝26を有している。補助溝26は、径方向外側面25の周方向中心から両側にそれぞれ同角度だけずれた位置に形成されている。補助溝26は、軸直交方向断面形状がU字状、即ち底面が湾曲面にて形成されている。
【0030】
[第2ロータコア30]
第2ロータコア30は、第1ロータコア20と同一材質及び同形状であって、筒状フロントハウジング2側に配置される。第2ロータコア30は、円板状の第2コアベース31を有し、その中心位置に貫通穴31aが貫通形成されている。貫通穴31aの筒状フロントハウジング2側の外周部には、略円筒状のボス部31bが突出形成されている。本実施形態では、バーリング加工により、貫通穴31aとボス部31bを同時に形成している。なお、ボス部31bの外径は、回転軸6の他側を回転可能に支持する軸受8の外径、即ち筒状フロントハウジング2の設けた軸受8を収容固定する軸受保持部2aの内径より短く形成されている。
【0031】
貫通穴31a(ボス部31b)には回転軸6が圧入して貫挿され、第2コアベース31が回転軸6に対して圧着固定される。この時、ボス部31bを形成することによって、第2コアベース31は、回転軸6に対して強固に圧着固定される。そして、この第2コアベース31が回転軸6に圧着固定されたとき、ボス部31bは、軸受保持部2aに収容固定された軸受8に対して、軸方向において離間するように配置されるようになっている(
図1参照)。
【0032】
第2コアベース31の外周面31cには、等間隔に複数(本実施形態では4つ)の第2爪状磁極32が径方向外側に突出されるとともに軸方向に延出形成されている。ここで、第2爪状磁極32において、第2コアベース31の外周面31cから径方向外側に突出した部分を第2基部33といい、軸方向に屈曲された先端部分を第2磁極部34という。
【0033】
第2基部33と第2磁極部34からなる第2爪状磁極32の周方向両端面32a,32bは径方向に延びる平坦面とされている。そして、各第2爪状磁極32の周方向の角度、即ち前記周方向両端面32a,32b間の角度は、周方向に隣り合う第2爪状磁極32同士の隙間の角度より小さく設定されている。
【0034】
また、第2磁極部34の径方向外側面35は、軸直交方向断面形状が回転軸6の中心軸線Oを中心とする同心円形状の円弧面を有し、その径方向外側面35に2つの補助溝36を有している。補助溝36は、径方向外側面35の周方向中心から両側にそれぞれ同角度だけずれた位置に形成されている。補助溝36は、軸直交方向断面形状がU字状、即ち底面が湾曲面にて形成されている。
【0035】
そして、このような第2ロータコア30は、各第2爪状磁極32が第1ロータコア20の各第1爪状磁極22間となるようにして第1ロータコア20と対向させて組み合わされる。このとき、第2コアベース31の内側面31dと第1コアベース21の内側面21dとの軸方向の間に界磁磁石40が介在される。
【0036】
[界磁磁石40]
図3に示すように、界磁磁石40は、円板状の永久磁石であって、その中央部に貫通穴40aが形成されている。界磁磁石40は、その貫通穴40aに円筒状のスリーブ41が貫挿されている。スリーブ41は、非磁性体よりなり本実施形態では回転軸6と同じステンレス製にて形成されている。界磁磁石40の外径は、第1及び第2コアベース21,31の外径と一致するように設定されている。従って、界磁磁石40の外周面40bが第1及び第2コアベース21,31の外周面21c,31cと面一となる。
【0037】
界磁磁石40は、軸方向に磁化されていて、第1ロータコア20側をN極、第2ロータコア30側をS極となるように磁化されている。従って、この界磁磁石40によって、第1ロータコア20の第1爪状磁極22はN極として機能し、第2ロータコア30の第2爪状磁極32はS極として機能する。
【0038】
従って、本実施形態のロータ7は、界磁磁石40を用いた所謂ランデル型ロータである。ロータ7は、N極となる第1爪状磁極22と、S極となる第2爪状磁極32とが周方向に交互に配置されており、磁極数が8極となる。すなわち、本実施形態のブラシレスモータMは、ロータ7の極数が2×n(但し、nは自然数)に設定されるとともに、ステータ5のティース12の数が3×nに設定され、具体的には、ロータ7の極数が「8」に設定され、ステータ5のティース12の数が「12」に設定されている。
【0039】
[整流磁石42]
ロータ7は、界磁磁石40の外周側に円環状の整流磁石42を備えている。なお、界磁磁石40と整流磁石42とは、異なる材料で構成される。具体的には、界磁磁石40は、例えば異方性の焼結磁石であり、例えばフェライト磁石、サマリウムコバルト(SmCo)磁石、ネオジム磁石等で構成される。整流磁石42は、例えばボンド磁石(プラスチックマグネット、ゴムマグネット等)であり、例えばフェライト磁石、サマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁石、サマリウムコバルト(SmCo)系磁石、ネオジム磁石等で構成される。
【0040】
図3に示すように、整流磁石42は、背面磁石部43,44と極間磁石部45とを有し、背面磁石部43,44及び極間磁石部45のそれぞれで漏れ磁束を抑えるように磁化された極異方性磁石である。
【0041】
詳述すると、一方の背面磁石部43は、第1爪状磁極22の第1磁極部24の内周面と、第2コアベース31の外周面31cとの間に配置される。そして、背面磁石部43は、第1磁極部24の内周面に当接する側がその第1磁極部24と同極のN極に、第2コアベース31の外周面31cに当接する側がその第2コアベース31と同極のS極となるように径方向成分を主として磁化されている。
【0042】
他方の背面磁石部44は、第2爪状磁極32の第2磁極部34の内周面と、第1コアベース21の外周面21cとの間に配置される。そして、背面磁石部44は、第2磁極部34の内周面に当接する側がその第2磁極部34と同極のS極に、第1コアベース21の外周面21cに当接する側がその第1コアベース21と同極のN極となるように径方向成分を主として磁化されている。
【0043】
極間磁石部45は、第1爪状磁極22と第2爪状磁極32との周方向の間に配置されている。極間磁石部45は、周方向において第1爪状磁極22側がN極に、第2爪状磁極32側がS極となるように周方向成分を主として磁化されている。
【0044】
[センサマグネット50]
図1及び
図3に示すように、円環状をなし周方向に多極着磁、この場合ロータ7の磁極数と同じ8磁極として着磁されたセンサマグネット50は、ロータ7のエンドフレーム3側の端面に対し接着剤W1を以て直接的に固定されている。
【0045】
センサマグネット50は、断面略矩形状で円環状をなしているが、軸方向一端面において、径方向中央部分がロータ7の本体側の固定部位A1に対して固定するための固定面51となっている。固定面51は、センサマグネット50の全周に亘って設けられる円環状の平坦面をなしている。また、固定面51の両側、即ちセンサマグネット50の内側周縁部及び外側周縁部はそれぞれ凹状部52,53となっている。凹状部52,53についても、固定面51と同様にセンサマグネット50の全周に亘って設けられている。
【0046】
これに対し、センサマグネット50を固定するためのロータ7の本体側の固定部位A1としては、第1ロータコア20と整流磁石42とに跨る円環状の面、詳しくは、第1コアベース21の第1爪状磁極22における第1基部23の端面と、整流磁石42における背面磁石部44の端面とがなす周方向に略面一となる円環状の平坦面である。
【0047】
そして、センサマグネット50は、固定面51とロータ7の本体側の固定部位A1との間に塗布される接着剤W1にてその固定部位A1に対して加圧されて接着固定される。その際、センサマグネット50の固定面51とロータ7の本体側の固定部位A1との間に十分な接着剤W1を塗布すると、固定面51から径方向内側や径方向外側に溢れ出す場合があるが、固定面51の両側に設けた凹状部52,53が接着剤W1の余剰分を溜める接着剤溜まりとして機能する。
【0048】
このようにしてセンサマグネット50は、自身の磁極とロータ7の磁極、即ち第1及び第2爪状磁極22,32とが対応するようにして接着固定されている。また、センサマグネット50の固定に用いる接着剤W1は、センサマグネット50とロータ7の本体側との間で互いに磁気的に悪影響を生じさせることを抑える効果もある。また、第2爪状磁極32における軸方向に延びる部位の第2磁極部34の先端部がセンサマグネット50に近接するが、その先端部が対向するのはセンサマグネット50の外側周縁部の凹状部53である。つまり、第2爪状磁極32とセンサマグネット50とが凹状部53の空隙にて非当接となっており、相互間で無用な磁束が作用することが抑制される構成ともなっている。
【0049】
[磁気センサ60]
エンドフレーム3の軸方向内側面3bには、センサマグネット50に対して軸方向に一定の間隔を開けて対向するホールIC等の磁気センサ60が支持されている。なお、磁気センサ60は、エンドフレーム3に直接固定されていてもよいし、保持部材(図示略)を介してエンドフレーム3に対し間接的に保持されていてもよい。そして、ロータ7と一体的にセンサマグネット50が回転することで、磁気センサ60はそのセンサマグネット50の磁極に応じた検出信号を出力する。磁気センサ60からの検出信号を受けた図示略の制御回路は、その検出信号に基づいてロータ7の回転位置(角度)を算出するとともに回転数(速度)等を算出し、ブラシレスモータMの駆動制御を行う。
【0050】
次に、ロータ7の製造方法(組付手順)について
図4及び
図5を用いて説明する。
[第1工程]
図4(a)に示すように、センサマグネット50が固定面51側を上にして治具70にセットされる。センサマグネット50の固定面51には全周に亘って接着剤W1が塗布されるが、センサマグネット50を治具70にセットする前、若しくはセット後にその塗布が行われる。なお、センサマグネット50の内周面に設けた凹部54を治具70との位置決めに用いてもよい。
【0051】
[第2工程]
図4(b)に示すように、第1ロータコア20が第1爪状磁極22の突出側を上にして接着剤W1の塗布状態にあるセンサマグネット50上に載置される。この場合、第1ロータコア20に設けた孔27を治具70の位置決めに用いてもよい。因みに、第2ロータコア30の孔37は、第1ロータコア20と同一部品であるが故に形成される孔である。そして、第1ロータコア20がセンサマグネット50に対して加圧される。
【0052】
第1ロータコア20が加圧されることで、センサマグネット50の固定面51とロータ7の本体側の固定部位A1の一部である第1爪状磁極22の第1基部23の端面との間に一様に接着剤W1が押し広げられる。この場合、接着剤W1に余剰分が生じると、その余剰分は、センサマグネット50の固定面51の両側に設けた接着剤溜まりとして機能する凹状部52,53に移動し、ここに溜まる。
【0053】
[第3工程]
図4(c)に示すように、整流磁石42が組み付けられる。整流磁石42は、背面磁石部43が第1爪状磁極22の背面側に位置するように第1ロータコア20に対して嵌め合わされる。そして、整流磁石42が第1ロータコア20及びセンサマグネット50に対して加圧される。
【0054】
整流磁石42が加圧されることで、センサマグネット50の固定面51とロータ7の本体側の固定部位A1の一部である背面磁石部44の端面との間に一様に接着剤W1が押し広げられる。この場合、接着剤W1に余剰分が生じると、その余剰分は、センサマグネット50の固定面51の両側に設けた接着剤溜まりとして機能する凹状部52,53に移動し、ここに溜まる(
図1及び
図5(d)参照)。そして、センサマグネット50、第1ロータコア20及び整流磁石42が組み付けられた中間製品が硬化炉(図示略)を経ることで、接着剤W1の硬化が図られる。
【0055】
[第4工程]
図4(d)に示すように、第1ロータコア20のコアベース21の内側面21dに接着剤W2が塗布される。接着剤W2は、例えば対向の第1爪状磁極22をそれぞれ結ぶように十字状に塗布される。
【0056】
[第5工程]
図5(a)に示すように、界磁磁石40及びスリーブ41が組み付けられる。界磁磁石40は、接着剤W2により第1ロータコア20に対して固定される。なお、後工程で、界磁磁石40は、接着剤W3により第2ロータコア30に対しても固定される。スリーブ41は、界磁磁石40の貫通穴40aに対して図示略の接着剤にて固定される。
【0057】
[第6工程]
図5(b)に示すように、界磁磁石40及び整流磁石42の上面に接着剤W3が塗布される。接着剤W3は、例えば対向の背面磁石部44をそれぞれ結ぶように十字状に塗布される。
【0058】
[第7工程]
図5(c)に示すように、第2ロータコア30が組み付けられる。第2ロータコア30は、第2爪状磁極32の背面側に背面磁石部44が位置するように界磁磁石40上に嵌め合わされ、接着剤W3にて界磁磁石40及び整流磁石42の背面磁石部44に対して固定される。
【0059】
このような手順を経ることで本実施形態のロータ7が組み付けられている。また、この組み付け際に用いる治具70においては、
図5(d)に示すように接着剤W1によるセンサマグネット50の固定の際にその固定面51から溢れ出た接着剤W1の余剰分の付着が懸念されるが、本実施形態では固定面51の両側に設けた凹状部52,53に接着剤W1の余剰分が溜まるようになっている。そのため、治具70への接着剤W1の付着が抑えられ、治具70に付着してしまった接着剤W1の拭き取り(メンテナンス)を長期間に亘って行わなくて済む。また、固定面51より外側の凹状部52,53に接着剤W1の余剰分が溜まることで、それよりも外側にはみ出る、即ちロータ7の最外周面からはみ出ることも抑えられる。つまり、ステータ5側との干渉を抑制するために、ロータ7の最外周面からはみ出た接着剤W1を切除するといった作業を低減すること等の効果が期待できる。
【0060】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)ロータ7の本体側の固定部位A1(第1ロータコア20と整流磁石42とに跨る円環状の面)とセンサマグネット50の固定面51との間に接着剤W1を塗布してセンサマグネット50の固定が図られる。その際、固定面51と並んで設けた凹状部52,53がその接着剤W1の余剰分を溜めるための接着剤溜まりとして機能する。これにより、接着剤W1の余剰分が周囲に溢れ出ることを抑えることができ、溢れ出た接着剤W1による悪影響の発生を抑制することができる。
【0061】
(2)センサマグネット50の内側周縁部及び外側周縁部にその全周に亘って凹状部52,53が設けられるため、周方向の何れにおいて接着剤W1の余剰分が生じてもその余剰分を凹状部52,53にて確実に保持することができる。
【0062】
(3)第2爪状磁極32(第2磁極部34)の軸方向先端部とセンサマグネット50の凹状部53とが対向する位置関係で爪状磁極32とセンサマグネット50とが互いに非当接にて構成されることから、爪状磁極32とセンサマグネット50との間で無用な磁束が作用することを抑制することができる。
【0063】
(4)爪状磁極22,32の両側及び背面での漏れ磁束を低減する整流磁石42と第1ロータコア20とに跨るように円環状にロータ7の本体側の固定部位A1が構成され、この円環状の固定部位A1に対してセンサマグネット50が固定される。つまり、センサマグネット50を十分強固に固定することができる。
【0064】
(5)センサマグネット50、第1ロータコア20、界磁磁石40、第2ロータコア30の各部材を順次重ねて組み付けつつ、各組み付け間において第1〜第3の接着剤W1〜W3が用いられて固着される。これにより、センサマグネット50に設けた凹状部52,53にて自身の固定時に用いる接着剤W1が周囲に溢れ出にくく、各部材を順次重ねて接着剤W1〜W3にて組み付けていくことから、ロータ7を安定確実に固着することができる。
【0065】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・センサマグネット50の両側にその全周に亘って凹状部52,53を設けたが、接着剤溜まりとして機能させる凹状部の位置や形状はこれに限定されるものではない。例えば、内側周縁部及び外側周縁部の両方でなく、一方にのみ凹状部を設けてもよい。また、径方向両側(周縁部)でなく、径方向中間部に凹状部を設けてもよい。また、周方向に沿った凹状部でなく、径方向やそれ以外の方向に延びる凹状部を設けてもよい。また、周方向に連続した凹状部でなく、周方向に部分的に凹状部を設けてもよい。
【0066】
・センサマグネット50を固定するためのロータ7の本体側の固定部位A1を適宜変更してもよい。例えば、ロータコア20(爪状磁極22の基部23)と整流磁石42(背面磁石部44)とに跨って固定部位A1を設定したが、コアベース21の一部を含めてもよい。また、ロータコア20のみ(コアベース21)に固定部位を設定してもよい。
【0067】
・上記の接着剤W1〜W3の塗布態様は一例であり、適宜変更してもよい。
・整流磁石42を備えたロータ7に適用したが、整流磁石を省略したロータに適用してもよい。
【0068】
・上記実施形態以外の用途向けのモータ(ロータ)に適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ) 周方向に複数の爪状磁極を有する第1及び第2ロータコアを各ロータコアの爪状磁極が周方向に交互となるように組み合わせ、各ロータコアの爪状磁極が交互に異なる磁極として機能するように前記第1及び第2ロータコアの間に軸方向に磁化された界磁磁石を配置してなるロータ本体に対し、前記磁極と対応して周方向に多極着磁された円環状のセンサマグネットを接着剤にて固定する構造をなすランデル型ロータの製造方法において、
前記センサマグネットに第1の接着剤を塗布する工程と、前記第1の接着剤にて前記第1ロータコアを固着する工程と、前記第1ロータコアに第2の接着剤を塗布する工程と、前記第2の接着剤にて前記界磁磁石を固着する工程と、前記界磁磁石に第3の接着剤を塗布する固定と、前記第3の接着剤にて前記第2ロータコアを固着する工程とを含むことを特徴とするランデル型ロータの製造方法。
【0069】
この構成によれば、センサマグネット、第1ロータコア、界磁磁石、第2ロータコアの各部材を順次重ねて組み付けつつ、各組み付け間において第1〜第3の接着剤が用いられて固着される。これにより、センサマグネットに設けた凹状部にて自身の固定時に用いる接着剤が周囲に溢れ出にくく、また各部材を順次重ねて接着剤にて組み付けていくことから、ロータを安定確実に固着することが可能である。