(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の温度制御装置の構成の概要を示したものである。本実施形態の温度制御装置は、輸送機器内の所定の空間の温度を制御する温度制御装置であって、温度情報取得手段1と、気温予測手段2と、温度制御手段3を備えている。
【0015】
温度情報取得手段1は、通信ネットワークを介して輸送機器の目的地の周辺の気温の情報を周辺気温データとして取得する。気温予測手段2は、周辺気温データを基に目的地の気温を予測気温として予測する。温度制御手段3は、目的地に到達する際に所定の空間の温度が予測気温に応じた温度になるように、所定の空間の温度を変化させる。
【0016】
本実施形態の温度制御装置は、温度情報取得手段1が通信ネットワークを介して輸送機器の目的地の周辺気温データを取得し、取得した周辺気温データを基に気温予測手段2が目的地の気温を予測している。また、温度制御手段3は、目的地に到達する際に目的地の予測気温に応じた温度になるように所定の空間の温度の制御を行っている。
【0017】
本実施形態の温度制御装置は周辺気温データを基に輸送機器の目的地の気温を予測することで、目的地の気温データが得られない場合でも、目的地の気温に応じた輸送機器内の所定の空間の温度の制御を行うことができる。また、温度制御手段3は、目的地に到達する際に予測温度に応じた温度になるように所定の空間の温度を変化させるので、変化開始前の所定の空間を適温に設定することで快適性も得ることができる。その結果、本実施形態の温度制御装置は、目的地の温度情報が直接、得られないような場合にも輸送機器内の温度を快適に保ちつつ目的地における室内と室外の温度差を小さくすることができる。
【0018】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
図2は、本実施形態の温度制御システムの構成の概要を示したものである。本実施形態の温度制御システムは、温度制御装置11と、気温情報サーバ12と、通信ネットワーク13を備えている。また、温度制御装置11は、自動車等の輸送機器に備えられ輸送機器内の空調を制御する装置である。本実施形態では、温度制御装置11は、自動車である車両14に備えられ、車両14内の所定の空間、すなわち車両14の室内の温度を管理する装置である。車両14の室内とは、車両14の搭乗者が乗車している空間のことをいう。また、車両14の室内は、車両14に備えられた貨物室等の他の空間であってもよい。温度制御システムに、車両14および温度制御装置11は、複数、存在してもよい。以下では、説明の簡略化のため車両14および温度制御装置11が1つのみの構成を例として説明を行う。
【0019】
本実施形態の温度制御装置11は、通信ネットワーク13を介して気温情報サーバ12から車両14の目的地周辺の気温の情報を取得し、取得した気温の情報を基に目的地の気温を予測して車両14の室内温度を管理する。本実施形態の温度制御装置11は、車両14が目的地に近づくにつれ、車両14の室内温度を目的地の予測気温に近づけるように制御し、目的地において車両14の室温と気温の差を小さくしている。
【0020】
温度制御装置11の構成の詳細について説明する。
図3は、本実施形態の温度制御装置11の構成の概要を示した図である。温度制御装置11は、温度算出部21と、温度制御部22と、ナビゲーション部23と、通信部24と、室内温度センサ25と、空調部26を備えている。
【0021】
温度算出部21は、目的地周辺の気温データから目的地の予測気温を算出する機能を有する。温度算出部21は、目的地の位置情報と目的地に到達するまでに要する時間の情報をナビゲーション部23から受け取る。目的地の位置情報は、例えば、目的地の緯度と経度の情報によって構成されている。温度算出部21は、ナビゲーション部23から受け取った目的地の位置情報を基に、目的地の周辺の気温の情報を通信部24を介して気温情報サーバ12から受け取る。温度算出部21は、目的地周辺の気温データを基に、目的地の気温を予測して、予測した気温と目的地に到達するまでに要する時間の情報を、設定温度信号S24として温度制御部22に送る。
【0022】
本実施形態では、温度算出部21は、目的地周辺の3地点で観測された気温の情報を気温情報サーバ12から受け取る。温度算出部21は、3地点の気温の平均値を算出し、算出した平均値を目的地で予想される気温、すなわち、予測気温とする。予測気温の算出は4地点以上の気温に基づいて行ってもよく、また、目的地の最寄りの2地点の気温を基に行ってもよい。また、本実施形態の温度算出部21の目的地の予測気温を算出する機能は、第1の実施形態の気温予測手段2に相当する。
【0023】
温度制御部22は、目的地の予測気温に基づいた室内温度となるように空調部26を制御する機能を有する。温度制御部22は、温度算出部21から受け取った予測気温の空調部26の設定温度を基に、車両14の室内温度を予測気温と同じ温度にするまでに要する時間を算出する。空調部26の温度制御特性は、あらかじめ温度制御部22に保存されている。温度制御部22は、温度の変更に要する時間が目的地までの所要時間以上となると、車両14が目的地に到達した際の室温が温度算出部21によって算出された予測気温になるように空調部26を制御する。温度制御部22は、設定温度の情報を示す信号を空調制御信号S25として空調部26に送ることにより空調部26を制御する。
【0024】
ナビゲーション部23は、設定された目的地の情報と現在地の情報を基に目的地に到着するまでに要する所用時間を算出する機能を有する。本実施形態のナビゲーション部23は、作業者、すなわち、車両14の搭乗者が設定した目的地の情報を基に、経路案内を行うカーナビゲーションシステムとして備えられている。
【0025】
ナビゲーション部23は、GPS(Global Positioning System)機能および自立航法による位置検出機能を備え、現在位置の情報を収集し、目的地までの所要時間、すなわち、車両14が目的地に到達するまでに要する時間を算出する。ナビゲーション部23は、所用時間を予測する際に用いる地図情報をあらかじめ保存している。ナビゲーション部23は、目的地の位置情報および目的地までの所要時間の情報を目的地情報信号S21として温度算出部21に送る。
【0026】
通信部24は、通信ネットワーク13を介して気温情報サーバ12と通信を行う機能を有する。通信部24は、通信ネットワーク13の無線通信規格に沿って気温情報サーバ12と通信を行う。通信部24は、温度設定部21から目的地情報要求信号S22として受け取った信号を通信ネットワーク13の規格に沿った無線信号に変換し、温度情報要求信号S11として通信ネットワーク13に送信する。また、通信部24は、通信ネットワーク13から温度情報信号S12として受信した信号を、温度制御装置11内で用いる信号形式に変換して、目的地温度情報信号S23として温度算出部21に送る。また、本実施形態の温度算出部21および通信部24の気温情報サーバ13から目的地周辺の気温データを取得する機能は、第1の実施形態の温度情報取得手段1に相当する。
【0027】
室内温度センサ25は、車両14の室内の温度を計測する機能を有する。室内温度センサ25は、車両14の室内温度の測定を行い、測定データを温度制御部22に送る。温度センサ25は、車両14内に複数、備えられていてもよい。例えば、温度センサ25は、車両14の室内の上方、下方、座席の下ごと、前方および後方などのように複数、備えられていてもよい。車両14内に室内温度センサ25を複数、備えている場合には各室内温度センサ25が計測した温度の平均値が車両14の室内温度として用いられる。
【0028】
空調部26は、温度制御部22の制御に基づいて室内の温度を設定温度に保つ機能を有する。空調部26は、車両14の室内温度を設定温度となるように保つ、エアーコンディショナーとして備えられている。空調部26は、温度制御部22から空調制御信号S25として送られてくる設定温度になるように室内温度を保つ。また、空調部26は、動作開始直後など初期状態では、作業者、すなわち、車両14の搭乗者が設定した室温を保つように動作する。車両14内に互いに仕切られた空間が複数ある場合には、それぞれの空間ごとに空調部26が備えられていてもよい。また、本実施形態の温度制御部22および空調部26の機能は、第1の実施形態の温度制御手段3に相当する。
【0029】
気温情報サーバ12は、各地の気温の情報を収集して保存する機能を有する。気温情報サーバ12は、各観測地点で測定された気温、気温の測定位置および測定日時の情報のデータベースを備えている。気温情報サーバ12は、気温の観測地点ごとに最も新しい気温の情報を保存している。気温情報サーバ12に保存されている気温の情報には、例えば、気象観測機関が各地で測定した気温の情報が用いられる。また、温度制御システムに専用に設置された観測所からネットワークを介して気温のデータが気温情報サーバ12に送られてくるようにしてもよい。
【0030】
気温情報サーバ12は、温度制御装置11から温度情報要求信号S11として送られてくる目的地の位置情報を基に、車両14の目的地周辺の気温の情報を抽出する。本実施形態では、気温情報サーバ12は、車両14の目的地周辺の3つの観測地点の気温の情報を目的地周辺の気温の情報として抽出する。気温情報サーバ12は、3つの観測地点の気温の情報を抽出すると、抽出した3つの観測地点の位置情報とそれぞれ気温の情報を温度情報信号S12として温度制御装置11に送る。
【0031】
通信ネットワーク13は、無線通信ネットワークシステムとして構成されている。本実施形態の通信ネットワーク13は、LTE(Long Term Evolution)規格に基づいた無線通信ネットワークシステムである。通信ネットワーク13は、3G等のLTE以外の他の無線通信規格に基づく無線通信ネットワークシステムであってもよい。また、気温情報サーバ12は、無線通信ネットワークシステムと有線回線によって接続されていてもよい。
【0032】
車両14は、自動車である。車両14は、航空機や鉄道等の他の輸送機器であってもよい。また、輸送機器である車両14内の所定の空間は、車両14の搭乗者が搭乗している客室や運転席等の空間に代えて、貨物室等の室内であってもよい。また、温度制御装置11が航空機等に備えられている場合には、所定の空間は客室だけでなくコックピットや貨物室であってもよい。
【0033】
本実施形態の温度制御システムの動作について説明する。
図4は、本実施形態の温度制御システムの動作フローの概要を示したものである。
【0034】
作業者、すなわち、車両14の搭乗者がナビゲーション部23を操作して目的地を設定する(ステップ101)。目的地の情報が設定されると、ナビゲーション部23は、現在地と目的地の情報を基に目的地に到着するまでに要する予測時間、すなわち目的地までの所要時間を算出する(ステップ102)。
【0035】
目的地に到着するまでの所要時間を算出すると、ナビゲーション部23は、目的地の位置情報と目的地までの所要時間の情報を目的地情報信号S21として温度算出部21に送る。目的地情報信号S21として目的地と所要時間の情報を受け取ると、温度算出部21は目的地周辺の気温情報の要求と目的地の位置情報とを示す信号を目的地情報要求信号S22として通信部24に送る。通信部24は目的地情報要求信号S22を受け取ると、目的地の位置情報と目的地周辺の気温情報の要求を示す信号を温度情報要求信号S11として通信ネットワーク13に送信する(ステップ103)。
【0036】
温度制御装置11から送信された温度情報要求信号S11は、通信ネットワーク13を介して気温情報サーバ12へ送られる。気温情報サーバ12は、通信ネットワーク13を介して目的地周辺の気温情報を要求する温度情報要求信号S11を受け取ると、保存している温度データから目的地の周辺の気温の情報を抽出する。
【0037】
気温情報サーバ12は、車両14の目的地周辺の気温の情報を抽出する際に、温度情報要求信号S11として受け取った目的地を取り囲む3つの観測地点の気温データを抽出する。
図5は、本実施形態の温度制御システムにおいて目的地周辺の3地点として選ばれる観測地点を模式的に示した図である。
図5において、車両14の現在地が地点A、車両14の目的地が地点Bであるとする。また、気温情報サーバ12は、目的地周辺の気温の情報として、地点C、地点D、地点Eおよび地点Fにおける気温データを保存しているとする。このとき、気温情報サーバ12は、車両14の目的地である地点Bを囲む観測地点のうち地点Bにより近い地点C、地点Dおよび地点Eの3つの観測地点の気温データを抽出して温度制御装置11に送る。
【0038】
目的地周辺の気温の情報を抽出すると、気温情報サーバ12は、気温の測定地点、気温の測定日時および気温データの情報を温度情報信号S12として通信ネットワーク13を介して温度制御装置11に送信する。
【0039】
気温情報サーバ12から送信された温度情報信号S12は、通信ネットワーク13を介して温度制御装置11に送られる。通信ネットワーク13を介して温度制御装置11に送られた温度情報信号S12は、通信部24に入力される(ステップ104)。通信部24は、温度情報信号S12を受け取ると、受け取った信号を温度制御装置11の内部で用いる形式の信号に変換して、変換後の信号を周辺温度信号S23として温度算出部21に送る。
【0040】
温度算出部21は、周辺温度信号S23として目的地周辺の気温等の情報を受け取ると、受け取った情報を一時保存する。温度算出部21は、目的地周辺の気温等の情報を一時保存すると、目的地周辺の気温の情報を基に目的地の予測気温を算出する(ステップ105)。
【0041】
本実施形態では、温度算出部21は、目的地の周辺の3地点の気温の平均値を算出して算出した平均値を目的地の予測気温とする。平均値を算出する際は、目的地から測定箇所までの距離に応じた重みづけを行って算出してもよい。目的地から近い観測地点ほど重みづけを大きくすることで、目的地の気温の予測精度を向上することができる。また、気温の観測日時からの経過時間の長さに応じて重みづけを行って平均値を算出してもよい。そのような場合には、経過時間が短い気温データほど重みづけを大きくすることで気温の予測精度が向上する。
【0042】
温度算出部21は、目的地の予測気温を算出すると算出した予測気温と目的地までの所要時間の情報を温度制御部22に設定温度信号S24として送る。
【0043】
温度制御部22は設定温度信号S24として、目的地の予測気温等の情報を受け取ると、受け取った予測気温および目的地までの所要時間の情報を一時保存する。予測気温等を一時保存すると、温度制御部22は、目的地までの所要時間が温度設定の変更を開始する基準として設定されている所定の時間内であるかを確認する。
【0044】
本実施形態では、所定の時間は、空調部26の設定温度および目的地の予測気温を基に、現在の温度から目的地の気温に応じた温度に車両14の室内温度を変化させる際に要する時間として設定されている。目的地の予測気温に応じた温度への温度設定の変更を開始する基準として設定されている所定の時間は、一定の時間としてあらかじめ設定されていてもよい。また、所定の時間は、外気温または外気温と室内温度との差に応じた時間としてあらかじめ設定されていてもよい。
【0045】
温度制御部22は、所定の時間として、空調部26の設定温度および目的地の予測気温を基に、現在の温度から目的地の気温に応じた温度に車両14の室内温度を変化させる際に要する時間を算出する。空調部26が車両14の室内温度を変化させる際の温度特性は、あらかじめ温度制御部22に保存されている。
【0046】
車両14の室内温度の変更に要する予想時間を算出すると、温度制御部22は、目的地に到達するまでに要する所用時間と、温度変化に要する時間とを比較する。温度変化に要する時間よりも目的地に到達するまでに要する所用時間が長いとき(ステップ106でNo)、温度制御部22は、現在の設定温度を維持するように空調部26を制御する(ステップ110)。温度制御部22は、現在の設定温度を維持することを示す信号を空調制御信号S25として空調部26に送ることにより室内温度を制御する。
【0047】
空調部26は、現在の設定を維持することを示す空調制御信号S25を受け取ると、室温が現在の設定温度になるように動作する。また、空調制御信号S25を空調部26に送ると、温度制御部22は、所定の経過時間ごとにステップ106の判断を行う。温度制御部22が、ステップ106の判断を行う時間間隔は、あらかじめ設定されている。
【0048】
温度変化に要する時間が目的地に到達するまでに所要時間以上となると(ステップ106でYes)、温度制御部22は、現在の設定温度から目的地の気温に応じた温度へ変化させる制御を開始する(ステップ107)。温度制御部22は、一定の時間ごとに空調部26に設定温度の情報を示す空調制御信号S25を送って空調部26を制御して室温を変化させる。
【0049】
車両14の搭乗者である作業者が設定した空調部26の初期の設定温度が20度、目的地の予測温度が30度、目的地に到着するまでの所要時間の予測が60分であったとする。また、10度の温度差を無くすように変化させるためには、目的地に到着する10分前から温度を変化させる設定であったとする。このようなとき、所用時間が60分の段階では、温度制御部22は、設定温度を維持するように温度制御部25を制御する。目的地に到着するまでの所要時間が9分になると、温度制御部22は、空調部26に設定温度を21度に変更する信号を空調制御信号S25として送る。
【0050】
空調部26は、設定温度を21度にする空調制御信号S25を受け取ると、室温が21度になるように動作する。温度制御部22は、目的地に到着するまでの所要時間が1分短くなるごとに、空調部26に設定温度を1度ずつ上げた空調制御信号S25を送る。空調部26は、設定温度を上げた空調制御信号S25を受け取ると、信号に示された設定温度で動作する。空調部26が空調制御信号S25に基づいて徐々に車両14の室内温度を変更することで、室温が目的地の予測気温に基づいて算出された目標温度に到達する(ステップ108)。
【0051】
また、目的地に到着するまでに要する予測時間に基づいて温度を変化させているので、目標温度に到達するころに車両14は目的地に到着する(ステップ109)。このように、目的地に到着するまでに要する残りの時間が所定の時間以内となったときに、一定の時間ごとに設定温度を上昇させることで、本実施形態の温度制御システムは目的地に到達する際に室内温度を外部の気温に応じた温度にすることができる。その結果、車両14の搭乗者が、車両14から外に出る際に感じる温度差の影響は抑制される。
【0052】
本実施形態の温度制御システムでは、温度制御装置11の温度算出部21が輸送機器である車両14の目的地の予測気温を目的地周辺の複数の観測地点における気温を基に算出している。車両14の目的地周辺の複数の観測地点における気温は、通信ネットワーク13を介して気温情報サーバ12から取得されている。車両14の目的地までの所要時間が所定の時間内となったときに、温度制御装置の温度制御部22が、目的地の予測気温に応じた温度に車両14の室温を変化させることで、目的地に到着した際の車両14の室内と室外の温度差を小さくすることができる。その結果、目的地に到達した際に、車両14の搭乗者に対する温度差の影響を抑制することができる。また、本実施形態の温度制御システムでは、目的地周辺の気温を基に算出した予測気温に応じて室内温度を制御しているので、目的地の気温データの有無に関わらず目的地の気温と室内温度の差を小さくする温度制御が可能となる。
【0053】
本実施形態の温度制御装置11の温度算出部21は、目的地周辺の観測地点の気温から予測気温を算出しているので、周辺において目的地よりも先に気温変化が現れた場合には目的地の気温が変動を予測しやすい。その結果、目的地の気温の予測精度が向上するので、予想気温と実気温がずれることによって目的地に到達した際に、車両14の室温と外気温の差が大きくなる事態を避けることができる。
【0054】
また、本実施形態の温度制御装置11では、予測気温に応じた温度への室温の制御は、目的地までの所要時間が所定の時間内となったときに目的地の予測気温に応じた温度への変更が行われている。そのため、温度制御装置11では、車両14が目的地から離れているときには目的地の気温に関わらずより快適な温度設定を行うことができる。また、温度制御装置11では、目的地の予測気温に応じて室温を設定しているので、途中の外気温には左右されずに室温を制御することができる。そのため、途中の地点の外気温の変化によって生じる空調部の設定温度の変動は生じないので、車両14の室内の快適性が高くなる。
【0055】
以上より、本実施形態の温度制御システムでは、目的地の温度情報が直接、得られないような場合にも輸送機器内の温度を快適に保ちつつ目的地における室内と室外の温度差を小さくすることができる。
【0056】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
図6は、本実施形態の温度制御システムの構成の概要を示したものである。本実施形態の温度制御システムは、温度制御装置31と、気温情報サーバ12と、通信ネットワーク13を備えている。また、温度制御装置31は、第2の実施形態と同様に輸送機器である車両14に備えられ、車両14内の所定の空間、すなわち車両14の室内の温度を管理する装置である。温度制御システムは、車両14および温度制御装置31を複数、備えていてもよい。以下では、説明の簡略化のため車両14および温度制御装置31が1つのみの構成を例として説明を行う。
【0057】
本実施形態の温度制御装置31は、第2の実施形態と同様に、気温情報サーバ12から車両14の目的地周辺の気温の情報を取得し、取得した気温の情報を基に目的地の気温を予測して車両14の室内温度を管理する。本実施形態の温度制御装置31は、目的地周辺に近づいた際に、自装置が測定した外気温と気温情報サーバ12から取得した気温データとを基に目的地の気温を予測して室温を制御する。本実施形態の温度制御システムは、温度制御装置31が測定した外気温を考量して目的地の気温を予測することで目的地の気温の予測精度が向上し、室内温度と目的地の外気温との差をより抑制することができることを特徴とする。
【0058】
気温情報サーバ12、通信ネットワーク13および車両14の構成と機能は第2の実施形態と同様である。
【0059】
温度制御装置31の構成の詳細について説明する。
図7は、本実施形態の温度制御装置31の構成の概要を示した図である。
【0060】
温度制御装置31は、温度算出部41と、温度制御部42と、ナビゲーション部43と、通信部44と、室内温度センサ45と、空調部46、室外温度センサ47を備えている。温度制御部42、ナビゲーション部43、通信部44、室内温度センサ45および空調部46の構成と機能は第2の実施形態の同名称の部位と同様である。
【0061】
温度算出部41は、第2の実施形態の温度算出部21と同様の機能に加え、目的地から所定の距離内に入ったときに、自装置で測定した外気温と目的地周辺の温度に基づいて目的地の温度を予測する機能を有する。
【0062】
温度算出部41は、自装置の位置が、目的地の気温の予測に用いた3つの観測地点間を結んで形成される三角形の内側となったときに、室外温度センサ47が測定した外気温と2つの観測地点の気温の3つの温度を基に目的地の気温を予測する。温度算出部41は、3つの観測地点うち自装置から最も遠い観測地点の気温、2番目に遠い観測地点の気温および室外温度センサ47が測定した気温を用いて目的地の予測気温を算出する。すなわち、温度算出部41は、3つの観測地点の気温のうち自装置から最も近い観測地点の気温に代えて、室外温度センサ47が測定した気温を用いて目的地の予測気温の算出を行う。
【0063】
また、予測気温の算出に4つ以上の観測地点の気温データを用いている場合には、温度算出部41は、車両14がそれらの観測地点を頂点とする多角形の内側に入ったときに、最も近い観測地点の気温と自装置で測定した気温データを置き換える。
【0064】
室外温度センサ47は、車両14の室外の温度を測定する機能を有する。室外温度センサ47は、車両14の外気温の測定を行い、測定結果を温度算出部41に送る。
【0065】
本実施形態の温度制御システムの動作について説明する。
図8は、本実施形態の温度制御システムの動作フローの概要を示したものである。
【0066】
車両14の搭乗者である作業者がナビゲーション部43を操作して目的地を設定する(ステップ121)。目的地が設定されると、ナビゲーション部43は、現在地と目的地の情報を基に目的地に到着するまでに要する所用時間を算出する(ステップ122)。
【0067】
目的地に到着するまでの所要時間を算出すると、ナビゲーション部43は、目的地の位置情報と予測した所用時間の情報を目的地情報信号S41として温度算出部41に送る。
【0068】
目的地の位置情報と目的地までの所要時間の情報を受け取ると、温度算出部41は目的地の位置情報と目的地周辺の気温の情報の要求を示す信号を目的地情報要求信号S42として通信部44に送る。通信部44は目的地情報要求信号S42を受け取ると、目的地の位置情報と目的地周辺の気温の情報の要求を示す信号を温度情報要求信号S11として通信ネットワーク13に送信する(ステップ123)。
【0069】
温度制御装置31から送信された温度情報要求信号S11は、通信ネットワーク13を介して気温情報サーバ12へ送られる。気温情報サーバ12は、通信ネットワーク13を介して気温の情報を要求する温度情報要求信号S11を受け取ると、保存している気温データから目的地の周辺の観測地点における気温の情報を抽出する。
【0070】
気温情報サーバ12は、目的地周辺の気温の情報を抽出する際に、温度情報要求信号S11として位置情報を受け取った目的地を取り囲む3つの観測地点の気温データを抽出する。目的地周辺の気温の情報を抽出すると、気温情報サーバ12は、気温の測定地点、気温の測定日時および気温データの情報を温度情報信号S12として通信ネットワーク13を介して温度制御装置31に送信する。
【0071】
気温情報サーバ12から送信された温度情報信号S12は、通信ネットワーク13を介して温度制御装置31に送られる。通信ネットワーク13を介して温度制御装置31に送られた温度情報信号S12は、通信部44に入力される(ステップ124)。通信部44は、温度情報信号S12を受け取ると、受け取った信号を温度制御装置31の内部で用いる形式の信号に変換して、変換後の信号を周辺温度信号S43として温度算出部41に送る。
【0072】
温度算出部41は、周辺温度信号S43として目的地周辺の気温等の情報を受け取ると、受け取った情報を一時保存する。温度算出部41は、目的地周辺の気温等の情報を一時保存すると、ナビゲーション部43が検出する現在の位置情報を参照し、自装置が所定の領域よりも内側にいるかを確認する。本実施形態では、所定の領域は、目的地周辺における3つの観測地点が形成する三角形よりも内側の領域として設定されている。
【0073】
自装置が所定の領域内にいる場合には(ステップ125でYes)、温度算出部41は、室外温度センサ47が取得した外気温および自装置から遠い2つの観測地点の気温の3つの温度の平均値を算出する(ステップ126)。
【0074】
温度算出部41は、3つの温度の平均値として目的地の予測気温を算出すると、目的地の予測気温と目的地に到着するまでの所要時間の情報を温度制御部44に設定温度信号S44として送る。
【0075】
温度制御部42は設定温度信号S44として、目的地の予測気温等の情報を受け取ると、受け取った予測気温および目的地までの所要時間の情報を一時保存する。予測気温等を一時保存すると、温度制御部42は、空調部46の設定温度および目的地の予測気温を基に、現在の温度から目的地の気温に応じた温度に室内温度を変化させる際に要する時間を所定の時間として算出する。また、所定の時間は第2の実施形態と同様にあらかじめ設定されていてもよい。
【0076】
温度変化に要する時間を算出すると、温度制御部42は、目的地に到達するまでに要する所用時間と、所定の時間として算出した温度変化に要する時間とを比較する。温度変化に要する時間よりも目的地に到達するまでに要する時間が長いとき(ステップ127でNo)、温度制御部42は、現在の設定温度を維持するように空調部46を制御する(ステップ132)。
【0077】
温度制御部42は、現在の設定温度を維持することを示す信号を空調制御信号S45として空調部46に送ることにより車両14の室内温度を制御する。空調部46は、現在の設定を維持することを示す空調制御信号S45を受け取ると、車両14の室温が現在の設定温度になるように動作する。また、空調制御信号S45を空調部46に送ると、温度制御部42は、所定の経過時間ごとにステップ127の判断を行う。
【0078】
温度変化に要する時間が目的地に到達するまでの所要時間以上となると(ステップ127でYes)、温度制御部42は、現在の設定温度から目的地の予測気温に応じた温度へ変化させる制御を開始する(ステップ128)。温度制御部42は、第2の実施形態と同様に一定の時間ごとに空調部46に設定温度の情報を示す空調制御信号S45を送って空調部46を制御して車両14の室温を変化させる。
【0079】
空調部46が空調制御信号S45に基づいて徐々に温度を変更することで、室温が目的地の予測気温に応じた目標温度に到達する(ステップ129)。また、目的地に到着するまでに要する予測時間に基づいて車両14の室内温度を変化させているので、目標温度に到達するころに車両14は目的地に到着する(ステップ130)。
【0080】
また、ステップ125において自装置が所定の領域内に無い場合には(ステップ125でNo)、温度算出部41は、気温情報サーバ12から取得した3つの観測地点の気温データの平均値として予測気温を算出する(ステップ131)。3つの観測地点の気温データを基に予測気温を算出すると、ステップ127からの動作が同様に行われる。
【0081】
図9および
図10を用いて、現在地と所定の領域との関係について説明する。
図9は、現在地が、目的地である地点Bを囲む3つの気温の観測地点、地点C、地点Dおよび地点Eを頂点とする三角形よりも外側にある場合の例を示している。
図9の例では、所定の領域は地点C、地点Dおよび地点Eを頂点とする三角形の内側である。すなわち、
図9の例では温度制御装置31の現在地は、所定の領域の外側である。
図9のような場合には。温度算出部41は、第2の実施形態と同様に目的地の地点Bを囲む3つの気温の観測地点、地点C、地点Dおよび地点Eにおける気温から目的地の予測気温を算出する。
【0082】
一方で、
図10は、現在地が、目的地である地点Bを囲む3つの気温の観測地点、地点C、地点Dおよび地点Eを頂点とする三角形よりも内側にある場合の例を示している。
図10の例では、地点C、地点Dおよび地点Eを頂点とする三角形の内側である所定の領域よりも内側に現在地が存在する。このような場合には、温度算出部41は、現在地で室外温度センサ47が特定した外気温と2つの観測地点、地点Dおよび地点Eの気温を基に、目的地である地点Bの予測気温を算出する。すなわち、温度算出部41は、所定の領域の三角形を形成する3つの観測地点のうち、もっとも現在地に近い観測地点の気温データの代わりに、自装置の室外温度センサ47を用いて予測気温の算出を行う。このような方法で算出することで、目的地の気温の予測精度が向上し得る。
【0083】
本実施形態の温度制御システムでは、第2の実施形態の温度制御システムと同様の効果を得ることができる。また、本実施形態の温度制御装置31の温度算出部41は、車両14の目的地周辺の気温の観測地点より車両14が目的地に近くなったときに、室外温度センサ47で測定した外気温と気温情報サーバ12から得た気温データを基に予測気温を算出している。
そのため、車両14が目的地に近づいた際の気温の予測精度がより向上する。その結果、車両14の目的地におけると外気温の差をより抑制することが可能となる。
【0084】
第3の実施形態の温度制御装置は、目的地周辺で所定の領域内に入ったときに気温情報サーバから受け取った気温データと、自装置の室外温度センサで測定した外気温を基に目的地の予測気温を算出して室内温度の制御を行っていた。そのような構成に加えて、目的地から所定の距離内にさらに近づいたときに、温度制御装置は、自装置の室外温度センサで測定した外気温に室内温度を近づけるように温度制御を行ってもよい。目的地近傍では予測気温よりも自装置の室外温度センサの測定値の方が目的地の気温により近い可能性が高い。そのため、目的地近傍に近づいた際に、室外温度センサで測定した外気の温度を基に室温の目標温度を設定することで、車両が目的地に到達した際の、室内温度と外気温の差をより小さくすることができる。
【0085】
第3の実施形態の温度制御システムの気温情報サーバは、各観測地点から収集した気温情報を保存し、各車両の温度制御装置の要求に応じて気温データを送信していた。そのような構成に代えて、各車両が室外温度センサで測定した気温データが気温情報サーバに送信されて各観測地点の気温データとして保存されるようにしてもよい。そのような構成とした場合には、各車両の温度制御装置は、室外温度センサで測定した気温データに、自装置の位置情報と測定日時の情報を付加して気温情報サーバにデータを送信する。各車両が測定した気温データを収集することで、気温の測定地点をより密にすることが可能になり気温の予測精度が向上する。また、各車両から集めた気温データを用いることで固定的な観測地点の数を減らすことも可能となる。
【0086】
各車両から集めた気温データを用いる場合には、固定的な観測地点を設けなくともよい。また、各車両が測定したデータと気象予報機関や自治体などの外部機関が観測した気温データが併用される構成としてもよい。外部機関や固定的な観測地点で観測された気温データと各車両が測定した気温データを併用することで、各車両からの収集された気温データが少ない地域でも、目的地の気温を予測することが可能となる。
【0087】
第2の実施形態および第3の実施形態の温度制御システムの温度制御装置で設定される目的地は、車両の最終目的地でなくともよい。例えば、最終目的地までの間に経由する地点を、予測気温を算出して温度制御を行う際の目的地としてもよい。また、経由地が複数ある場合には、そのうちの1つの地点を、予測気温を算出して温度制御を行う際の目的地としてもよい。
【0088】
第2の実施形態および第3の実施形態の温度制御システムでは、目的地に到達する際に目的地の予測気温となるように車両の室内温度の制御を行った。目的地に到達する際の室内温度の設定温度は、予測気温に応じて設定された他の温度であってもよい。例えば、目的地の予測気温が30度、車両の搭乗者である作業者が設定する室内温度が25度であったときに、目的地に到達した際の室内温度が28度になるように温度制御を行ってもよい。
【0089】
目的地に到達した際の室内温度の設定温度は、例えば、目的地の予測温度と作業者による設定温度の差に応じて設定されるようにしてもよい。そのような場合には、例えば、温度差に対する所定の割合分を変化させるように温度制御を行う。このような構成とすることで温度差を小さくしつつ室内温度を快適な温度に近いにすることで、快適さと温度差の抑制のバランスがより向上する。