(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1と第2の通信機の一方は、当該基地局を自身のハンドオーバの対象から除外し、ハンドオーバして前記別の基地局に切り替える、請求項1または2記載の無線システム。
複数の内の所定の基地局と無線WAN通信する無線WAN部と、複数の内の所定の基地局と無線WAN通信するルータと無線LAN通信を行う無線LAN部と、前記無線WAN部と前記無線LAN部とを制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記ルータが無線WAN通信する基地局が、前記無線WAN部が無線WAN通信する基地局と同じである場合、無線WAN通信可能で当該基地局とは別の基地局の有無を確認し、前記別の基地局が有りの場合、前記無線WAN部のキャパビリティから当該基地局を削除し、前記無線WAN部の無線WAN通信を前記別の基地局に切り替え、
前記別の基地局が無しの場合、前記制御部は、前記無線WAN部の空間多重化数を前記ルータの空間多重化数と前記無線LAN通信を介して比較し、前記無線WAN部の空間多重化数の方が小さい場合、前記無線WAN部の通信を中断する、端末。
基地局と無線WAN通信する無線WAN部と、複数の内の所定の基地局と無線WAN通信する端末と無線LAN通信を行う無線LAN部と、前記無線WAN部と前記無線LAN部とを制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記端末が無線WAN通信する基地局が、前記無線WAN部が無線WAN通信する基地局と同じである場合、無線WAN通信可能で当該基地局とは別の基地局の有無を確認し、前記別の基地局が有りの場合、前記無線WAN部のキャパビリティから当該基地局を削除し、前記無線WAN部の無線WAN通信を前記別の基地局に切り替え、
前記別の基地局が無しの場合、前記制御部は、前記無線WAN部の空間多重化数を前記端末の空間多重化数と前記無線LAN通信を介して比較し、前記無線WAN部の空間多重化数の方が小さい場合、前記無線WAN部の通信を中断する、ルータ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の無線システムの構成を示す図である。本実施形態の無線システム1は、無線LAN通信と、複数の内の所定の基地局との無線WAN通信と、を行う第1の通信機2と、前記第1の通信機2との前記無線LAN通信と、複数の内の所定の基地局との無線WAN通信と、を行う第2の通信機3と、を有する。さらに、前記第1と第2の通信機は、前記無線LAN通信と各々の前記無線WAN通信とを同時に行い、各々の前記無線WAN通信を行う基地局が同じである場合、前記第1と第2の通信機の一方は、無線WAN通信可能で当該基地局とは別の基地局の有無を確認し、前記別の基地局が有りの場合、自身の通信のキャパビリティから当該基地局を削除し、前記別の基地局に切り替えて無線WAN通信する。
【0016】
本実施形態によれば、モバイル端末が無線WAN回線と無線LAN回線とで同時通信する際に、ハンドオーバなどに影響されることなく通信速度を高速化することができる。
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態の無線システムの構成を示す図である。本実施形態の無線システム10は、基地局と無線WAN通信する第1の無線WAN部201と、無線LAN通信する第1の無線LAN部202と、を有するモバイル端末20を有する。さらに、基地局と無線WAN通信する第2の無線WAN部301と、第1の無線LAN部202と無線LAN通信する第2の無線LAN部302と、を有するモバイルルータ30を有する。
【0017】
モバイル端末20とモバイルルータ30は、モバイル端末20がより高速な通信を行う場合、各々の無線WAN通信と、お互いの間での無線LAN通信とを同時に行う。モバイル端末20がより高速な通信を行うモードに切り替えると、モバイル端末20は、第1の無線WAN部201が無線WAN通信する基地局情報をモバイルルータ30に通知する。基地局情報は、基地局名やチャネル(Channel)やバンド(Band、周波数帯域)を有する。
【0018】
モバイルルータ30は、前記基地局情報を受けると、第2の無線WAN部301で無線WAN通信する基地局が第1の無線WAN部201が無線WAN通信する基地局と同じであるか否かを判定する。同じである場合、付近の基地局を探索し、当該の基地局とは別の無線WAN通信可能な基地局の有無を確認する。無線WAN通信可能な別の基地局が有りの場合、モバイルルータ30は、モバイルルータ30のキャパビリティ(Capability)から当該の基地局のチャネルを含むバンドを削除する。さらに、第2の無線WAN部301で、当該の基地局とは別の基地局に切り替えて無線WAN通信する。
【0019】
図3Aは、モバイル端末20の構成を示す図である。モバイル端末20は、第1の無線WAN部201と、第1の無線LAN部202と、制御部203と、記憶部204とを有する。モバイル端末20は、インターネットに接続する基地局と無線WAN通信を行い、モバイルルータ30と無線LAN通信を行う。モバイル端末20は、例えば、スマートフォンとすることができる。
【0020】
第1の無線WAN部201は、LTE、3G(3rd Generation)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)などの無線WAN通信を基地局と行う。第1の無線LAN部202は、モバイルルータ30と無線LAN通信を行う。
【0021】
制御部203は、無線WAN通信や無線LAN通信の制御や、OS(Operating System)やアプリケーションソフトなどの動作を行う。制御部203は、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)とすることができる。
【0022】
記憶部204は、無線WAN通信や無線LAN通信や制御部203の制御に関わるソフトウェアや情報を記憶する。記憶部204は、SRAM(Static Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)やフラッシュメモリなどの半導体メモリや、HDD(Hard Disk Drive)などとすることができる。
【0023】
図3Bは、モバイルルータ30の構成を示す図である。モバイルルータ30は、第2の無線WAN部301と、第2の無線LAN部302と、制御部303と、記憶部304とを有する。モバイルルータ30は、モバイル端末20と無線LAN通信を行い、インターネットに接続する基地局と無線WAN通信を行う。
【0024】
第2の無線WAN部301は、LTE、3G、WiMAXなどの無線WAN通信を基地局と行う。第2の無線LAN部302は、モバイル端末20と無線LAN通信を行う。制御部303は、無線WAN通信や無線LAN通信の制御やルーティングを司る。制御部303は、CPUとすることができる。記憶部304は、無線WAN通信や無線LAN通信や制御部303の制御に関わるソフトウェアや情報を記憶する。記憶部304は、SRAMやDRAMやフラッシュメモリなどの半導体メモリや、HDDなどとすることができる。
【0025】
無線システム10において、モバイル端末20は、無線WAN回線と無線LAN回線とでインターネットに接続して同時通信することで、高速データ通信する機能を有する。無線システム10の動作を、以下に説明する。
【0026】
まず、モバイル端末20が、無線WAN回線と無線LAN回線とを同時接続することによる“高速モード”に設定する。次に、モバイル端末20は、第1の無線LAN部202からモバイルルータ30の第2の無線LAN部302に、高速モードに切り替えたことと、現在モバイル端末20の第1の無線WAM部201が接続している基地局のLTEのチャネル(EARFCN)とを通知する。モバイルルータ30は、通知されたLTEのチャネルと、第2の無線WAM部301が接続しているLTEのチャネルとを比較する。
【0027】
ここで双方のチャネルが異なる場合、現状のままでの高速化が見込まれるため、モバイル端末20は、そのままの接続で高速モードでの通信を行うことができる。
【0028】
一方で、双方のチャネルが同一の場合、モバイルルータ30は周辺のLTEの基地局を検索し、接続可能な別のチャネルの有無を確認する。検索の結果、現在接続しているチャネルを含むバンド以外の接続可能なバンドが存在する場合、モバイルルータ30は、第2の無線WAN部301のLTEとの接続を切断する。次に、モバイルルータ30は、切断したバンドを第2の無線WAN部301のキャパビリティから削除する。次に、モバイルルータ30は、モバイル端末20の第1の無線WAN部201が接続しているLTEとは別のLTEに、第2の無線WAN部301で接続する。
【0029】
以上のように、無線システム10によれば、モバイル端末20とモバイルルータ30とが、それぞれ異なる基地局と無線WAN通信を行うようになるため、モバイル端末20は高速モードでの通信が可能となる。さらに、モバイルルータ30は、切断したバンドをキャパビリティから削除しているので、ハンドオーバが生じて接続する基地局が変わる場合でも、モバイル端末20の接続する基地局と同じ基地局に再接続することはない。よって、高速モードでの通信を継続することができる。
【0030】
なお、以上の説明でのバンドとは、3GPP(3rd Generation Partnership Project)で規定された周波数帯域を示す。すなわち、チャネル(EARFCNと同じ)の番号がわかれば、一意にバンドの番号が判別できる。また、キャパビリティは、端末やルータなどの機器が有する能力を基地局に伝えるパラメータであり、接続可能なバンドの番号などが含まれる。
【0031】
以下に、無線システム10の無線チャネル制御方法を説明する。
図4は、本実施形態の無線チャネル制御方法を示すフローチャートである。ここでは、無線WANと無線LANの同時接続による高速通信が可能なモードを“高速モード”と呼ぶ。
【0032】
動作を開始すると、まず、モバイル端末20の制御部203は、第1の無線WAN部201と第1の無線LAN部202との同時接続による高速モードに設定する(ステップS101)。次に、制御部203は、第1の無線LAN部202からモバイルルータ30の第2の無線LAN部302に、高速モードに切り替えたことを通知する(ステップS102)。モバイル端末20とモバイルルータ30との通信には、無線LAN通信する専用のアプリケーションを使用することができる。
【0033】
さらに、モバイル端末20の制御部203は、第1の無線WAN部201が接続している基地局のチャネル(EARFCN)を、モバイルルータ30に通知する(ステップS103)。モバイルルータ30の制御部303は、第2の無線LAN部302を介して第1の無線WAN部201が接続している基地局のチャネル(EARFCN)の通知を受けると、モバイル端末20とモバイルルータ30の無線WAN接続している基地局が、同一か否かを判定する(ステップS104)。
【0034】
基地局が異なる場合(ステップS104がNO)、制御部303は、現状の接続のままで高速モードとして動作可能と判定し通信を開始し(ステップS105)、終了する。
【0035】
基地局が同一の場合(ステップS104がYES)、モバイルルータ30の制御部303は、第2の無線WAN部301により、周辺に存在する基地局を探索する(ステップS106)。制御部303は、探索の結果から、第2の無線WAN部301と接続が可能で、第1の無線WAN部201と接続している基地局とは別の基地局があるか否かを確認する(ステップS107)。別の基地局がない場合(ステップS107がNO)、制御部303は、高速モードでの通信は不可であるとして(ステップS108)、終了する。これ以降は、これまでの接続のままでの通信を行っても良い。
【0036】
別の基地局がある場合(ステップS107がYES)、制御部303は、第2の無線WAN部301の現在の基地局との接続を切断する(ステップS109)。続いて、制御部303は、モバイル端末20の第1の無線WAN部201が接続している基地局のチャネルを含むバンドを、記憶部304に保存しているモバイルルータ30のキャパビリティから削除し、第2の無線WAN部301を再接続する(ステップS110)。このときモバイルルータ30は、モバイル端末20の接続する基地局とは別の基地局に接続するため、モバイル端末20は高速モードでの通信が可能となる。
【0037】
モバイル端末20の制御部203は、高速モードでの通信を開始し(ステップ111)、終了する。
【0038】
モバイルルータ30が、モバイル端末20の接続する基地局と別の基地局を有せず(ステップS107がNO)、高速モードでの通信が不可な場合、以下の方法で通信速度を向上させることができる。
図5は、本実施形態の無線チャネル制御方法の一部を示すフローチャートであり、通信速度を向上させる方法を示す。
【0039】
図5では、まず、制御部303が、
図4のステップS108で高速モードでの通信が不可と判定したことを確認する(ステップS112)。
【0040】
次に、モバイル端末20とモバイルルータ30の、それぞれの無線WAN部のMIMO(Multiple−Input and Multiple−Output)空間多重化数を比較する(ステップS113)。この比較は以下のように行うことができる。
【0041】
モバイル端末20の記憶部204は、第1の無線WAN部201の空間多重化数を保存している。また、モバイルルータ30の記憶部304は、第2の無線WAN部301の空間多重化数を保存している。ステップS112で制御部303が高速モードでの通信不可を確認すると、制御部303は、無線LAN接続を介してモバイル端末20の制御部203に、高速モードでの通信不可を確認したことと、記憶部304に保存された第2の無線WAN部301の空間多重化数を通知する。モバイル端末20の制御部203は、この通知を受けると、無線LAN接続を介してモバイルルータ30の制御部303に、記憶部204に保存された第1の無線WAN部201の空間多重化数を通知する。制御部203と制御部303は、それぞれで、第1の無線WAN部201と第2の無線WAN部301の空間多重化数を比較する。
【0042】
比較の結果、モバイルルータ30の空間多重化数がモバイル端末20の空間多重化数よりも小さい場合(ステップS114のNO)、制御部303は第2の無線WAN部301を使用しない設定に変更して、第2の無線WAN部301の通信を中断する(ステップS115)。モバイルルータ30の空間多重化数がモバイル端末20の空間多重化数よりも大きい場合(ステップS114のYES)、制御部203は第1の無線WAN部201を使用しない設定に変更して、第1の無線WAN部201の通信を中断する(ステップS116)。モバイル端末20とモバイルルータ30とで空間多重化数が等しい場合、第1もしくは第2の無線WAN部のいずれの使用を中断するか、または、いずれの使用も中断しないとするかを、予め決めておけばよい。
【0043】
モバイル端末20の制御部203は、通常速度である通常モードでの通信を開始し(ステップ117)、終了する。このとき、モバイル端末20もしくはモバイルルータ30の空間多重化数の大きい方の無線WAM部で無線WAN通信が行われるため、モバイル端末20は通信速度を向上させることができる。
【0044】
図6は、本実施形態の無線チャネル制御方法の変形例を示すフローチャートである。
【0045】
動作を開始すると、まず、モバイル端末20の制御部203は、第1の無線WAN部201と第1の無線LAN部202との同時接続による高速モードに設定する(ステップS201)。次に、制御部203は、第1の無線LAN部202からモバイルルータ30の第2の無線LAN部302に、高速モードに切り替えたことを通知する(ステップS202)。
【0046】
さらに、モバイル端末20の制御部203は、第1の無線WAN部201が接続している基地局のチャネル(EARFCN)を、モバイルルータ30に通知する(ステップS203)。モバイルルータ30の制御部303は、第2の無線LAN部302を介して第1の無線WAN部201が接続している基地局のチャネル(EARFCN)の通知を受けると、モバイル端末20とモバイルルータ30の無線WAN接続している基地局が同一か否かを判定する(ステップS204)。
【0047】
基地局が異なる場合(ステップS204がNO)、制御部303は、現状の接続のままで高速モードとして動作可能と判定し通信を開始し(ステップS205)、終了する。
【0048】
基地局が同一の場合(ステップS204がYES)、モバイルルータ30の制御部303は、第2の無線WAN部301により、周辺に存在する基地局を探索する(ステップS206)。制御部303は、探索の結果から、第2の無線WAN部301と接続が可能で、第1の無線WAN部201と接続している基地局とは別の基地局があるか否かを確認する(ステップS207)。別の基地局がない場合(ステップS207がNO)、制御部303は、高速モードでの通信は不可であるとして(ステップS208)、終了する。これ以降は、これまでの接続のままでの通信を行っても良い。
【0049】
以上のフローは、
図4で説明したステップS101からステップS108までのフローと同じである。
【0050】
別の基地局がある場合(ステップS207がYES)、制御部303は、基地局のチャネルにハンドオーバ(チャネル切り替え)するように基地局に第2の無線WAN部301を介して要求を出し、チャネルを切り替える(ステップS209)。これにより、モバイル端末とモバイルルータとは、異なる基地局と無線WAN通信するようになる。
【0051】
続いて、制御部303は、切り替える前に接続していたチャネルのRSSI(Received Signal Strength Indication)やCINR(Carrier to Interference and Noise Ratio)にオフセットを掛けて、記憶部304に記憶する(S210))。これにより、切り替える前に接続していたチャネルは、モバイルルータ30のハンドオーバの対象にならなくなる。切り替える前に接続していたチャネルをモバイルルータ30のハンドオーバ対象から外すことで、モバイルルータ30の無線WAN接続のチャネルがモバイル端末20の無線WAN接続のチャネルに再接続することを防止することができる。
【0052】
モバイル端末20の制御部203は、高速モードでの通信を開始し(ステップ211)、終了する。
【0053】
以上のように、無線システム10の無線チャネル制御方法によれば、モバイル端末20とモバイルルータ30とが、それぞれ異なる基地局と無線WAN通信を行うようになるため、モバイル端末20は高速モードでの通信が可能となる。さらに、モバイルルータ30は、切断したバンドをキャパビリティから削除しているので、ハンドオーバが生じて接続する基地局が変わる場合でも、モバイル端末20の接続する基地局と同じ基地局に再接続することはない。よって、高速モードでの通信を継続することができる。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、モバイル端末が無線WAN回線と無線LAN回線とで同時通信する際に、ハンドオーバなどに影響されることなく通信速度を高速化することができる。
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態の無線チャネル制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の無線チャネル制御方法は、本発明の第2の実施形態の無線システム10のモバイル端末20とモバイルルータ30の構成を用いている。
【0055】
動作を開始すると、まず、モバイル端末20の制御部203は、第1の無線WAN部201と第1の無線LAN部202との同時接続による高速モードに設定する(ステップS301)。次に、制御部203は、第1の無線WAN部201により周辺の基地局を探索し、無線LAN通信によりモバイルルータ30の制御部30に探索結果を通知するとともに、モバイルルータ30の周辺の基地局を探索するよう通知する。制御部30はこの通知を受けて、第2の無線WAN部301により周辺の基地局を探索する(ステップS302)。
【0056】
次に、上記の探索結果から、制御部303は、第1の無線WAN部201と第2の無線WAN部301の各々が、無線WAN通信が可能なチャネルのバンドを抽出する(ステップS303)。
【0057】
次に、制御部303は、抽出したバンドの情報から、モバイル端末20とモバイルルータ30の重複を避けてのバンドの割り振りが可能か否かを判定する(ステップS304)。割り振りが可能でない場合(ステップS304がNO)、制御部303は、高速モードでの通信は不可であるとして(ステップS305)、終了する。割り振りが可能でない場合とは、例えば、検索の結果、モバイル端末20とモバイルルータ30が、各々無線WAN通信できる基地局が、共通する1つの基地局しかない場合などである。
【0058】
割り振りが可能である場合(ステップS304がYES)、制御部303は、モバイル端末20とモバイルルータ30とで基地局が重複しないように割り振り、この割り振りに基づいて、第2の無線WAN部301のキャパビリティを書き換えて再接続する(ステップS306)。これにより、第2の無線WAN部301は、第1の無線WAN部201が接続する基地局とは別の基地局と接続することができる。
【0059】
抽出したバンドの情報から、重複を避けてバンドを割り振る方法の例を以下に説明する。
図8Aは、第1の無線WAN部201と第2の無線WAN部301が無線WAN接続可能な基地局のチャネル番号とバンド番号のリストの例を示す。
図8Aでは、第1の無線WAN部201と第2の無線WAN部301は共通の複数の基地局に接続可能としているが、相互に異なる基地局に接続する例としてもよい。
【0060】
図8Bは、
図8Aのリストに基づいて、制御部303が、通信のモードごとに基地局を割り振った例を示す。通常通信時には、モバイル端末20はバンド1、2、3に接続可能とし、モバイルルータ30はバンド2、3に接続可能とする。モバイル端末20とモバイルルータ30の接続するバンドが同じになっても、通常速度の通信であるため問題ない。
【0061】
一方、高速通信時は、モバイル端末20はバンド1、2に接続可能とし、モバイルルータ30はバンド3に接続可能とする。この割り振りをするためには、例えば、当初、モバイル端末20がバンド2に接続しているとの情報を、予め、ステップS301の際に受けておく。これにより、モバイル端末20のリストではバンド2を挙げてバンド3を削除し、モバイルルータ30のリストではバンド2を削除しバンド3を挙げる割り振りが可能となり、高速通信時にモバイル端末20とモバイルルータ30の接続する基地局が重複しないようにすることができる。
【0062】
モバイルルータ30の制御部303は、
図8Bに示す割り振りを、記憶部304に保存するとともに、無線LAN通信を介してモバイル端末20の制御部203に通知する。制御部203は、この通知を受けて、
図8Bに示す割り振りを記憶部204に保存する。こうすることで、モバイル端末20とモバイルルータ30とは、各々のキャパビリティに基地局が割り振られて登録されるため、ハンドオーバの際にも、異なる基地局との無線WAN通信を行うことができる。
【0063】
モバイル端末20の制御部203は、高速モードでの通信を開始し(ステップ307)、終了する。
【0064】
以上のように、本実施形態によれば、モバイル端末が無線WAN回線と無線LAN回線とで同時通信する際に、ハンドオーバなどに影響されることなく通信速度を高速化することができる。
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態の無線チャネル制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の無線チャネル制御方法は、本発明の第2の実施形態の無線システム10のモバイル端末20とモバイルルータ30の、無線チャネル制御方法における機能を相互に交換したものである。すなわち、第2の実施形態では、モバイルルータ30の側で接続する基地局を変更したが、本実施形態では、モバイル端末20の側で接続する基地局を変更する。
【0065】
以下の
図9のフローチャートの説明では、
図3A、
図3Bのモバイル端末20とモバイルルータ30の構成を用いることができる。
【0066】
動作を開始すると、まず、モバイル端末20の制御部203は、第1の無線WAN部201と第1の無線LAN部202との同時接続による高速モードに設定する(ステップS401)。次に、制御部203は、第1の無線LAN部202からモバイルルータ30の第2の無線LAN部302に、高速モードに切り替えたことを通知する(ステップS402)。
【0067】
この通知を受けて、モバイルルータ30の制御部303は、第2の無線WAN部301が接続している基地局のチャネル(EARFCN)を、モバイル端末20に通知する(ステップS403)。モバイル端末20の制御部203は、第1の無線LAN部202を介して第2の無線WAN部301が接続している基地局のチャネル(EARFCN)の通知を受けると、モバイル端末20とモバイルルータ30の無線WAN接続している基地局が、同一か否かを判定する(ステップS404)。
【0068】
基地局が異なる場合(ステップS404がNO)、制御部203は、現状の接続のままで高速モードとして動作可能と判定し通信を開始し(ステップS405)、終了する。
【0069】
基地局が同一の場合(ステップS404がYES)、モバイル端末20の制御部203は、第1の無線WAN部201により、周辺に存在する基地局を探索する(ステップS406)。制御部203は、探索の結果から、第1の無線WAN部201と接続が可能で、第2の無線WAN部301と接続している基地局とは別の基地局があるか否かを確認する(ステップS407)。別の基地局がない場合(ステップS407がNO)、制御部203は、高速モードでの通信は不可であるとして(ステップS408)、終了する。これ以降は、これまでの接続のままでの通信を行っても良い。
【0070】
別の基地局がある場合(ステップS407がYES)、制御部203は、第1の無線WAN部201の現在の基地局との接続を切断する(ステップS409)。続いて、制御部203は、モバイルルータ30の第2の無線WAN部301が接続している基地局のチャネルを含むバンドを、記憶部204に保存しているモバイル端末20のキャパビリティから削除し、第1の無線WAN部201を再接続する(ステップS410)。このときモバイル端末20は、モバイルルータ30の接続する基地局とは別の基地局に接続するため、モバイル端末20は高速モードでの通信が可能となる。
【0071】
モバイル端末20の制御部203は、高速モードでの通信を開始し(ステップ411)、終了する。
【0072】
なお、本実施形態においても、モバイル端末20が、モバイルルータ30の接続する基地局と別の基地局を有せず(ステップS407がNO)高速モードでの通信が不可な場合がある。この場合、第2の実施形態の
図5のように、モバイル端末20もしくはモバイルルータ30の空間多重化数の小さい方の無線WAM部の無線WAN通信を中断する。そして、空間多重化数の大きい方の無線WAM部で無線WAN通信を行うようにすることで、モバイル端末20の通信速度を向上させることができる。
【0073】
なお、本実施形態においても、第2の実施形態の
図6の変形例のように、モバイル端末20は、モバイルルータ30が無線WAN通信する基地局をハンドオーバの対象から除外する。さらに、モバイル端末20は、ハンドオーバすることで、モバイルルータ30が無線WAN通信する基地局とは別の基地局と無線WAN通信することができる。
【0074】
以上のように、本実施形態によれば、モバイル端末が無線WAN回線と無線LAN回線とで同時通信する際に、ハンドオーバなどに影響されることなく通信速度を高速化することができる。
(第5の実施形態)
図10は、本発明の第5の実施形態の無線チャネル制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の無線チャネル制御方法は、本発明の第3の実施形態の無線チャネル制御方法におけるモバイル端末とモバイルルータの機能を相互に交換したものである。すなわち、第3の実施形態では、モバイルルータ30の側で接続する基地局を変更したが、本実施形態では、モバイル端末20の側で接続する基地局を変更する。
【0075】
以下の
図10のフローチャートの説明では、
図3A、
図3Bのモバイル端末20とモバイルルータ30の構成を用いることができる。
【0076】
動作を開始すると、まず、モバイル端末20の制御部203は、第1の無線WAN部201と第1の無線LAN部202との同時接続による高速モードに設定する(ステップS501)。次に、制御部203は、第1の無線WAN部201により周辺の基地局を探索するとともに、無線LAN通信によりモバイルルータ30の制御部30に、モバイルルータ30の周辺の基地局を探索するよう通知する。制御部30は、この通知を受けて、第2の無線WAN部301により周辺の基地局を探索し、探索結果を無線LAN通信によりモバイル端末20の制御部203へ通知する(ステップS502)。
【0077】
次に、上記の探索結果から、制御部203は、第1の無線WAN部201と第2の無線WAN部301の各々が、無線WAN通信が可能なチャネルのバンドを抽出する(ステップS503)。
【0078】
次に、制御部203は、抽出したバンドの情報から、モバイル端末20とモバイルルータ30の重複を避けてのバンドの割り振りが可能か否かを判定する(ステップS504)。割り振りが可能でない場合(ステップS504がNO)、制御部203は、高速モードでの通信は不可であるとして(ステップS505)、終了する。割り振りが可能でない場合とは、例えば、検索の結果、モバイル端末20とモバイルルータ30が、各々無線WAN通信できる基地局が、共通する1つの基地局しかない場合などである。
【0079】
割り振りが可能である場合(ステップS504がYES)、制御部203は、モバイル端末20とモバイルルータ30とで基地局が重複しないように割り振り、この割り振りに基づいて、第1の無線WAN部201のキャパビリティを書き換えて再接続する(ステップS506)。これにより、第1の無線WAN部201は、第2の無線WAN部301が接続する基地局とは別の基地局と接続することができる。列挙したバンドの情報から、重複を避けてバンドを割り振る方法は、第3の実施形態で説明した方法と同様とすることができる。
【0080】
モバイル端末20の制御部203は、高速モードでの通信を開始し(ステップ507)、終了する。
【0081】
以上のように、本実施形態によれば、モバイル端末が無線WAN回線と無線LAN回線とで同時通信する際に、ハンドオーバなどに影響されることなく通信速度を高速化することができる。
【0082】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものである。
【0083】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0084】
付記
(付記1)
無線LAN通信と、複数の内の所定の基地局との無線WAN通信と、を行う第1の通信機と、
前記第1の通信機との前記無線LAN通信と、複数の内の所定の基地局との無線WAN通信と、を行う第2の通信機と、を有し、
前記第1と第2の通信機は、前記無線LAN通信と各々の前記無線WAN通信とを同時に行い、各々の前記無線WAN通信を行う基地局が同じである場合、
前記第1と第2の通信機の一方は、無線WAN通信可能で当該基地局とは別の基地局の有無を確認し、前記別の基地局が有りの場合、自身の通信のキャパビリティから当該基地局を削除し、前記別の基地局に切り替えて無線WAN通信する、無線システム。
(付記2)
前記第1と第2の通信機の一方は、前記無線LAN通信を介して、相手が無線WAN通信を行う基地局を特定する、付記1記載の無線システム。
(付記3)
前記第1と第2の通信機の一方は、当該基地局を自身のハンドオーバの対象から除外し、ハンドオーバして前記別の基地局に切り替える、付記1または2記載の無線システム。
(付記4)
前記別の基地局が無しの場合、前記第1と第2の通信機は、前記無線LAN通信を介して自身の空間多重化数と相手の空間多重化数とを比較し、自身の空間多重化数が相手の空間多重化数よりも小さい場合、自身の無線WAN通信を中断する、付記1から3の内の1項記載の無線システム。
(付記5)
前記第1と第2の通信機は、各々、無線WAN通信する基地局を重複しないように割り振り登録する、付記1から4の内の1項記載の無線システム。
(付記6)
前記第1の通信機は端末を有し、前記第2の通信機はルータを有する、付記1から5の内の1項記載の無線システム。
(付記7)
前記無線LAN通信と各々の前記無線WAN通信との同時通信は、前記第1の通信機がより高速な通信を行う場合に行う、付記1から6の内の1項記載の無線システム。
(付記8)
前記基地局は、インターネットに接続する、付記1から7の内の1項記載の無線システム。
(付記9)
複数の内の所定の基地局と無線WAN通信する無線WAN部と、複数の内の所定の基地局と無線WAN通信するルータと無線LAN通信を行う無線LAN部と、前記無線WAN部と前記無線LAN部とを制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記ルータが無線WAN通信する基地局が、前記無線WAN部が無線WAN通信する基地局と同じである場合、無線WAN通信可能で当該基地局とは別の基地局の有無を確認し、前記別の基地局が有りの場合、前記無線WAN部のキャパビリティから当該基地局を削除し、前記無線WAN部の無線WAN通信を前記別の基地局に切り替える、端末。
(付記10)
前記制御部は、前記無線LAN通信を介して前記ルータが無線WAN通信する基地局を特定する、付記9記載の端末。
(付記11)
前記制御部は、当該基地局をハンドオーバの対象から除外し、ハンドオーバして前記別の基地局に切り替える、付記9または10記載の端末。
(付記12)
前記別の基地局が無しの場合、前記制御部は、前記無線WAN部の空間多重化数を前記ルータの空間多重化数と前記無線LAN通信を介して比較し、前記無線WAN部の空間多重化数の方が小さい場合、前記無線WAN部の通信を中断する、付記9から11の内の1項記載の端末。
(付記13)
前記制御部は、前記ルータの無線WAN通信と重複しない基地局を登録する、付記9から12の内の1項記載の端末。
(付記14)
前記基地局は、インターネットに接続する、付記9から13の内の1項記載の端末。
(付記15)
基地局と無線WAN通信する無線WAN部と、複数の内の所定の基地局と無線WAN通信する端末と無線LAN通信を行う無線LAN部と、前記無線WAN部と前記無線LAN部とを制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記端末が無線WAN通信する基地局が、前記無線WAN部が無線WAN通信する基地局と同じである場合、無線WAN通信可能で当該基地局とは別の基地局の有無を確認し、前記別の基地局が有りの場合、前記無線WAN部のキャパビリティから当該基地局を削除し、前記無線WAN部の無線WAN通信を前記別の基地局に切り替える、ルータ。
(付記16)
前記制御部は、前記無線LAN通信を介して前記端末が無線WAN通信する基地局を特定する、付記15記載のルータ。
(付記17)
前記制御部は、当該基地局をハンドオーバの対象から除外し、ハンドオーバして前記別の基地局に切り替える、付記15または16記載のルータ。
(付記18)
前記別の基地局が無しの場合、前記制御部は、前記無線WAN部の空間多重化数を前記端末の空間多重化数と前記無線LAN通信を介して比較し、前記無線WAN部の空間多重化数の方が小さい場合、前記無線WAN部の通信を中断する、付記15から17の内の1項記載のルータ。
(付記19)
前記制御部は、前記端末の無線WAN通信と重複しない基地局を登録する、付記15から18の内の1項記載のルータ。
(付記20)
前記基地局は、インターネットに接続する、付記15から19の内の1項記載のルータ。
(付記21)
第1と第2の通信機が、相互の無線LAN通信と、各々、複数の内の所定の基地局との無線WAN通信と、を同時に行い、
各々の前記無線WAN通信を行う基地局が同じである場合、
前記第1と第2の通信機の一方は、
無線WAN通信可能で当該基地局とは別の基地局の有無を確認し、前記別の基地局が有りの場合、自身の通信のキャパビリティから当該基地局を削除し、前記別の基地局に切り替えて無線WAN通信する、無線チャネル制御方法。
(付記22)
前記第1と第2の通信機の一方は、前記無線LAN通信を介して、相手が無線WAN通信を行う基地局を特定する、付記21記載の無線チャネル制御方法。
(付記23)
前記第1と第2の通信機の一方は、当該基地局を自身のハンドオーバの対象から除外し、ハンドオーバして前記別の基地局に切り替える、付記21または22記載の無線チャネル制御方法。
(付記24)
前記別の基地局が無しの場合、前記第1と第2の通信機は、前記無線LAN通信を介して自身の空間多重化数と相手の空間多重化数とを比較し、自身の空間多重化数が相手の空間多重化数よりも小さい場合、自身の無線WAN通信を中断する、付記21から23の内の1項記載の無線チャネル制御方法。
(付記25)
前記第1と第2の通信機は、各々、無線WAN通信する基地局を重複しないように割り振り登録する、付記21から24の内の1項記載の無線チャネル制御方法。
(付記26)
前記第1の通信機は端末を有し、前記第2の通信機はルータを有する、付記21から25内の1項記載の無線チャネル制御方法。
(付記27)
前記無線LAN通信と各々の前記無線WAN通信との同時通信は、前記第1の通信機がより高速な通信を行う場合に行う、付記21から26の内の1項記載の無線チャネル制御方法。
(付記28)
前記基地局は、インターネットに接続する、付記21から27の内の1項記載の無線チャネル制御方法。