特許第6301882号(P6301882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6301882
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法と半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20180319BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20180319BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180319BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20180319BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20180319BHJP
   H01L 21/302 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   H01L29/78 652H
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 652J
   H01L29/06 301D
   H01L29/06 301V
   H01L29/78 658F
   H01L29/78 652T
   H01L21/306 D
   H01L29/78 652K
   H01L21/302
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-164080(P2015-164080)
(22)【出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2017-41613(P2017-41613A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 将和
(72)【発明者】
【氏名】青井 佐智子
【審査官】 恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−119238(JP,A)
【文献】 特表2005−512342(JP,A)
【文献】 特開2010−161241(JP,A)
【文献】 特開平07−245400(JP,A)
【文献】 特開2010−129973(JP,A)
【文献】 特開2006−173551(JP,A)
【文献】 特開2006−066611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/306
H01L 21/3065
H01L 21/336
H01L 29/06
H01L 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面に形成されているトレンチの内面に、酸化物からなる第1絶縁材料を成長させ、前記トレンチの内部に前記第1絶縁材料を充填する充填工程と、
前記トレンチの内部に充填された前記第1絶縁材料の表面側をエッチングして除去する第1エッチング工程と、
前記半導体基板を非酸化雰囲気で加熱し、前記第1エッチング工程で除去されずに前記トレンチの深部側に残存した前記第1絶縁材料の表面を硬化させて硬化部を形成する加熱工程と、
前記トレンチの両側面から成長した前記第1絶縁材料同士の界面であって前記硬化部に残存した前記界面から、前記硬化部より深部側にエッチャントを侵入させて前記硬化部より深部側に残存した前記第1絶縁材料をエッチングして除去し、前記硬化部より深部側に空間を形成する第2エッチング工程と、
前記第2エッチング工程で前記界面に形成された開口部を、第2絶縁材料で塞ぐ閉塞工程を備えている半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記閉塞工程で、前記硬化部の表面と前記トレンチの側面に、前記第2絶縁材料の膜を成長させ、
前記閉塞工程に続けて、前記膜より内側の前記トレンチの内部に前記第2絶縁材料を充填する第2絶縁材料充填工程を備えている請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記閉塞工程で、前記硬化部の表面と前記トレンチの側面に、前記第2絶縁材料の膜を成長させ、
前記閉塞工程の後に、前記膜より内側の前記トレンチの内部に第3絶縁材料を充填する第3絶縁材料充填工程を備えている請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記閉塞工程で、前記硬化部の表面と前記トレンチの側面に、前記第2絶縁材料の膜を成長させ、
前記閉塞工程の後に、前記膜より内側の前記トレンチの内部にゲート電極となる材料を充填するゲート電極充填工程を備えている請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、半導体装置の製造方法と半導体装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の内部に空間(すなわち空洞)を形成することによって半導体装置の特性を改善する技術が知られている。例えば、半導体基板に形成されている複数個の素子領域を絶縁分離するトレンチの内部に絶縁体を充填する際に、絶縁体の内部に空間を残存させる技術が知られている。絶縁体の内部に空間が存在すると、空間が存在しない場合よりも絶縁性が高くなる。
【0003】
また、トレンチの内部にゲート電極が形成されている半導体装置では、トレンチの底面とゲート電極の底面との間に形成されているゲート絶縁膜の厚みを厚くすることによって半導体装置の耐圧を高めることができる。厚いゲート絶縁膜の内部に空間を形成することができれば、耐圧向上効果を高めることができる。
【0004】
トレンチの内部に空間を形成する方法が特許文献1に開示されている。この方法では、半導体基板の表面に酸化膜を形成し、その酸化膜の一部に開口を形成し、その開口から半導体基板を異方性エッチングしてトレンチを形成し、さらに等方性エッチングしてトレンチの幅を広げ、次いで絶縁膜を成長させる。トレンチの内面から成長する絶縁膜によってトレンチが閉じられるよりも前に、前記開口を画定する酸化膜の側面から成長する絶縁膜が開口を閉じる。これによってトレンチ内に空間が残存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−49828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の空間形成方法では、トレンチ内に残存する空間の上端の高さを調整することができず、常に半導体基板の表面近傍に固定される。例えば、トレンチの深部側には空間を残し、トレンチの表面側には絶縁物質または導電物質を充填するといったことはできない。例えば、トレンチの底面とゲート電極の底面との間に形成されているゲート絶縁膜の内部に空間を形成するはできない。
【0007】
本明細書では、トレンチ内に空間を残存させる技術であり、空間の上端の高さ(半導体基板の表面から空間までの距離)を調整することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面に形成されているトレンチの内面に酸化物からなる第1絶縁材料を成長させてトレンチの内部に第1絶縁材料を充填する充填工程と、トレンチの内部に充填された第1絶縁材料の表面側をエッチングして除去する第1エッチング工程と、半導体基板を非酸化雰囲気で加熱して第1エッチング工程で除去されずにトレンチの深部側に残存した第1絶縁材料の表面を硬化させて硬化部を形成する加熱工程を備えている。前記充填工程でトレンチの両側面から成長した第1絶縁材料同士の界面は、硬化後も残部とは異なる特性を持ち、エッチングしやすい部分として残存する。本明細書に開示する製造方法は、硬化部に残存した界面から硬化部より深部側にエッチャントを侵入させて硬化部より深部側に残存した第1絶縁材料をエッチングして除去して硬化部より深部側に空間を形成する第2エッチング工程と、第2エッチング工程で前記界面に形成された開口部を第2絶縁材料で塞ぐ閉塞工程を備えている。
【0009】
上記方法によると、第1エッチング工程のエッチング量を調整することによって、その後にトレンチの深部側に残存する第1絶縁材料の表面の高さを調整することができ、加熱工程で形成する硬化部の高さ(すなわち半導体基板の表面からの深さ)を制御することができる。例えば、第1エッチング工程のエッチング量を多くすることによって硬化部の高さを深部に調整することができる。逆にエッチング量を少なくすることによって硬化部の高さを半導体基板の表面に近づけることができる。本方法では、硬化部より深部側の第1絶縁材料が第2エッチング工程で除去されて空間が形成される。この製造方法によると、硬化部の高さを制御することができ、硬化部の深部側に形成される空間の上端の高さ(半導体基板の表面から空間までの距離)を制御することができる。
【0010】
本明細書に開示する半導体装置は、半導体基板と、半導体基板の表面に形成されているトレンチと、半導体基板の表面より深部側の位置でトレンチの両側面からトレンチの内部に突出している酸化物の第1絶縁材料からなる一対の硬化部と、一対の硬化部の間に形成された開口部を塞いでいる第2絶縁材料を備えている。硬化部より深部側のトレンチの内部に空間が形成されている。
【0011】
このような構成によれば、トレンチの深部に空間が形成されているので、空間が無い構成に比べて、絶縁性や耐圧を向上させることができる。また、硬化部より表面側には絶縁材料や導電材料を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施例に係る半導体装置の製造方法を説明する図である(1)。
図2】第1実施例に係る半導体装置の製造方法を説明する図である(2)。
図3】第1実施例に係る半導体装置の製造方法を説明する図である(3)。
図4】第1実施例に係る半導体装置の製造方法を説明する図である(4)。
図5】第1実施例に係る半導体装置の製造方法を説明する図である(5)。
図6】第1実施例に係る半導体装置の製造方法を説明する図である(6)。
図7】第1実施例に係る半導体装置の製造方法を説明する図である(7)。
図8】第2実施例に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
図9】第3実施例に係る半導体装置の製造方法を説明する図である(1)。
図10】第3実施例に係る半導体装置の製造方法を説明する図である(2)。
図11】第3実施例に係る半導体装置の製造方法を説明する図である(3)。
図12】第3実施例に係る半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施例)
第1実施例に係る半導体装置の製造方法を説明する。第1実施例の製造方法では、まず図1に示すように、半導体基板2の表面28にマスク91を形成し、マスク91に開口部92を形成する。この段階では、開口部92から半導体基板2が露出する。次に、マスク91の開口部92に露出している半導体基板2を異方性エッチングする。これによって、半導体基板2の表面28にトレンチ11が形成される。トレンチ11は、底面112と、左右の側面111,111を備えている。半導体基板2は、例えば、Si(シリコン)またはSiC(炭化ケイ素)から形成されている。マスク91は、例えば、TEOS(Tetraethyl Orthosilicate)から形成されている。本実施例では、フッ素系のガスを用いて半導体基板2を異方性ドライエッチングする。エッチングをした後にマスク91を除去する。
【0014】
次に図2に示すように、半導体基板2の表面28とトレンチ11の内面(両側面111,111と底面112)に第1絶縁材料3を結晶成長させる。すなわち、半導体基板2の表面28とトレンチ11の内面111,112,111に第1絶縁材料3を堆積させる。この工程は、トレンチ11の内部に第1絶縁材料3が充填されるまで続ける。充填工程ということができる。第1絶縁材料3は、酸化物からなる。本実施例では、第1絶縁材料3としてTEOSを用いる。この充填工程は、例えば公知のプラズマCVDによって実行される。第1絶縁材料3は、トレンチ11の内面(両側面111と底面112)から内側に堆積してゆく。また第1絶縁材料3は、半導体基板2の表面28から上側に堆積してゆく。
【0015】
トレンチ11の一方の側面111からトレンチ11の内部に向かって堆積した第1絶縁材料3と、トレンチ11の他方の側面111からトレンチ11の内部に向かって堆積した第1絶縁材料3が接する部分に界面31が形成される。すなわち、トレンチ11の両側面111から成長した第1絶縁材料3同士の間に界面31が形成される。一方の第1絶縁材料3と他方の第1絶縁材料3の界面31は、トレンチ11の幅方向(x方向)の中央部に形成される。界面31は、高さ方向(z方向)に延びている。界面31は、トレンチ11の側面111に沿って延びている。界面31の深部側の端部32は、トレンチ11の底面112より上に位置している。界面31の深部側の端部32は、トレンチ11の底面112から離間している。なお、界面31の一部に隙間が形成されることもある。
【0016】
次に、図3に示すように、半導体基板2に堆積している第1絶縁材料3の一部をエッチングして除去する。本実施例では、フッ素系のガスを用いて半導体基板2の表面側から異方性のドライエッチングをする。第1絶縁材料3は表面側から深部側に向かってエッチングされる。この工程は、少なくとも半導体基板2の表面28に堆積している第1絶縁材料3をエッチングして除去するまで続ける。また、トレンチ11の内部に充填されている第1絶縁材料3の表面側をエッチングして除去するまで続ける(第1エッチング工程)。エッチング時間を調整することによって、エッチング量を調整することができる。第1エッチング工程で除去されなかった第1絶縁材料3はトレンチ11の内部に残存する。第1エッチング工程は、トレンチ11の内部に残存する第1絶縁材料3の中に界面31が残存している状態で終了する。すなわち、第1絶縁材料3の界面31の深部側の端部32よりも上方の位置まで第1絶縁材料3をエッチングして除去する。
【0017】
次に、トレンチ11の内部に第1絶縁材料3が残存している状態で半導体基板2を加熱する(加熱工程)。加熱工程は、非酸化雰囲気で実行される。例えば、N(窒素)雰囲気またはAr(アルゴン)雰囲気で加熱工程が実行される。非酸化雰囲気で第1絶縁材料3が加熱されると、第1絶縁材料3の表面が硬化し、硬化部41が形成される。非酸化雰囲気で加熱すると、界面31によって隔てられている第1絶縁材料3同士の結合が抑制される。その結果、硬化部41にも界面31が残存する。
【0018】
本実施例では、加熱温度を1000℃とし、加熱時間を30分とする。第1絶縁材料3を加熱すると第1絶縁材料3の上部が締め固められて緻密化する。これによって、第1絶縁材料3の表面に硬化部41が形成される。界面31では良好に緻密化しない。その結果、硬化部41に残存する界面31が後述の第2エッチング工程に対する弱点になる。硬化部41に残存する界面31がエッチャントの侵入部になる。硬化部41の界面31におけるエッチングレートは、界面31以外の硬化部41におけるエッチングレートより高い。
【0019】
次に、図5に示すように、トレンチ11の内部に残存している第1絶縁材料3の一部をエッチングで除去する(第2エッチング工程)。より詳細には、第1絶縁材料3が残存しているトレンチ11の内部にエッチャントを導入する。第1絶縁材料3に向けてエッチャントを導入して、硬化部41に形成されている第1絶縁材料3の界面31から硬化部41よりも深部側にエッチャントを侵入させる。第1絶縁材料3の硬化していない部分のエッチングレートは、硬化部41のエッチングレートより高い。エッチャントが硬化部41より深部側の第1絶縁材料3に侵入してゆく。これによって、硬化部41より深部側の第1絶縁材料3をエッチングして除去する。第1絶縁材料3を除去して硬化部41より深部側のトレンチ11の内部に空間5を形成する。空間5の誘電率は第1絶縁材料3の誘電率より小さい。
【0020】
本実施例では、希釈されたHF(フッ酸)を用いて等方性のウェットエッチングをしている。硬化部41に形成されている界面31をエッチャントの侵入部にして第1絶縁材料3を等方性エッチングしている。硬化部41より深部側の第1絶縁材料3が界面31から周囲に向かってエッチングされる。本実施例では、エッチング時間を200秒とした。
【0021】
第1絶縁材料3の硬化部41では他の部分よりもエッチングが抑制される。硬化部41は、一部がエッチングされて除去され、他の一部がエッチングされずに残存する。一対の硬化部41がトレンチ11の内部に残存する。トレンチ11の一方の側面111と他方の側面111のそれぞれから硬化部41が突出している。硬化部41はトレンチ11の側面111からトレンチ11の内部に向かって突出している。第2エッチング工程では、エッチャントが界面31に侵入するときに硬化部41に形成されている界面31が開いて開口部43が形成される。一方の硬化部41と他方の硬化部41の間に開口部43が形成されている。開口部43は、硬化部41より表面側の空間と深部側の空間5を繋いでいる。
【0022】
次に、図6に示すように、半導体基板2の表面とトレンチ11の内面に第2絶縁材料6を薄く堆積させる。より詳細には、半導体基板2の表面28と、トレンチ11の両側面111,111と、硬化部41の表面411,411から、第2絶縁材料6を成長させる。このときに、硬化部41の表面411,411から成長する第2絶縁材料6同士がつながり、開口部43を塞ぐ(閉塞工程)。第2絶縁材料6の膜は、開口部43を覆っている。第2絶縁材料6の膜は、硬化部41より深部側の空間5を封止している。第2絶縁材料6の膜は、硬化部41の表面411とトレンチ11の両側面111を覆っている。第2絶縁材料6は、酸化物からなる。本実施例では、第2絶縁材料6としてTEOSを用いる。第2絶縁材料6は、第1絶縁材料3と同じ材料である。第2絶縁材料6は、第1絶縁材料3と異なる材料であってもよい。閉塞工程は、例えば公知のプラズマCVDによって実行される。
【0023】
次に、図7に示すように、第2絶縁材料6の薄膜の表面に第3絶縁材料9を成長させる。これによって、第2絶縁材料6の膜より内側のトレンチ11の内部に第3絶縁材料9を充填する(第3絶縁材料充填工程)。第3絶縁材料9は、酸化物からなる。第3絶縁材料充填工程は、例えば公知のプラズマCVDによって実行される。本実施例では、第3絶縁材料9としてTEOSを用いている。
【0024】
以上の製造方法によって製造された半導体装置1は、半導体基板2と、半導体基板2の表面28に形成されているトレンチ11を備えている。また、半導体装置1は、半導体基板2の表面28より深部側の位置でトレンチ11の両側面111,111からトレンチ11の内部に突出している酸化物の第1絶縁材料3からなる一対の硬化部41,41を備えている。また、半導体装置1は、一対の硬化部41の間に形成されている開口部43を塞いでいる第2絶縁材料6を備えている。硬化部41より深部側のトレンチ11の内部に空間5が形成されている。
【0025】
上記の説明から明らかなように、上記の製造方法によれば、第1エッチング工程でエッチング量を調整することによって、第1絶縁材料3の除去量を調整することができる。これによって、エッチング後にトレンチ11の内部に残存する第1絶縁材料3の量を調整することができ、第1絶縁材料3の表面の高さを制御することができる。例えば、エッチング量を多くすることによって、第1絶縁材料3の表面の高さを深くすることができる。エッチング量を少なくすることによって、第1絶縁材料3の表面の高さを半導体基板2の表面28に近づけることができる。その結果、加熱工程で第1絶縁材料3の表面に形成される硬化部41の高さを制御することができ、硬化部41より深部側に形成される空間5の表面側の高さ(半導体基板2の表面28と空間5の間の距離)を制御することができる。
【0026】
以上のように、上記の製造方法によれば、トレンチ11の内部に残存させる空間5の表面側の高さを制御することができる。また、空間5の大きさないし高さを制御することによって、トレンチ11の内部の絶縁性を制御することができる。
【0027】
また、上記の半導体装置1では、硬化部41より深部側のトレンチ11の内部に空間5が形成されている。このような構成によれば、空間5の誘電率が第1絶縁材料3の誘電率より小さいので、トレンチ11の内部に空間5を形成することによって、空間5が無い場合よりもトレンチ11の内部の絶縁性を向上させることができる。
【0028】
以上、一実施例について説明したが、具体的な態様は上記実施例に限定されるものではない。以下の説明において、上述の説明における構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0029】
(第2実施例)
上記の実施例では、トレンチ11の内部に第2絶縁材料6を薄く堆積させていたが、この構成に限定されるものではない。第2実施例では、図8に示すように、閉塞工程に続けて第2絶縁材料6を厚く堆積させてもよい。トレンチ11の内部の硬化部41より上の部分全体に第2絶縁材料6を充填してもよい(第2絶縁材料充填工程)。すなわち、第2絶縁材料6の膜より内側のトレンチ11の内部に第2絶縁材料6を更に充填する。この方法によれば、閉塞工程と第2絶縁材料充填工程を続けて実行できるので、トレンチ11の内部に第2絶縁材料6を素早く充填することができる。閉塞工程と第2絶縁材料充填工程を一つの工程として実行することができる。
【0030】
(第3実施例)
第3実施例に係る半導体装置の製造方法について説明する。上記の第1実施例では、閉塞工程の後に、トレンチ11の内部に第3絶縁材料9を充填していたが、この構成に限定されるものではない。第3実施例では、図9に示すように、閉塞工程の後に、トレンチ11の内部に導電材料7(ゲート電極となる材料)を充填する(ゲート電極充填工程)。導電材料7を第2絶縁材料6の薄膜の表面に成長させる。本実施例では、導電材料7としてポリシリコン(Poly Si)を用いている。トレンチ11の内部に導電材料7が堆積してゲート電極が形成される。
【0031】
次に、図10に示すように、第2絶縁材料6の表面に堆積している導電材料7の一部をエッチングで除去する(第3エッチング工程)。本実施例では、フッ素系のガスを用いて異方性のドライエッチングをしている。導電材料7が表面側から深部側に向かってエッチングされる。第2絶縁材料6の表面に堆積している導電材料7をエッチングして除去する。トレンチ11の内部に充填されている導電材料7はエッチングせずに残す。トレンチ11の内部に残存する導電材料7によってゲート電極13が形成される。
【0032】
次に、図11に示すように、第2絶縁材料6の不要な部分をエッチングして除去する。第2絶縁材料6の膜によってゲート絶縁膜12が形成される。また、ゲート電極13の表面側に層間絶縁膜14を形成する。層間絶縁膜14は、ゲート電極13を覆っている。また、半導体基板2の表面28に表面電極51を形成する。また、半導体基板2の裏面29に裏面電極52を形成する。以上の製造方法によって半導体装置1を製造することができる。
【0033】
上記の製造方法によれば、空間5の大きさを制御することによって、ゲート電極13と半導体基板2の間の絶縁性を制御することができる。また、空間5を形成することによって、空間5が無い場合よりも、半導体装置の耐圧を向上させることができる。また、ゲート電極13と半導体基板2の間の絶縁部分の形状異常を抑制することができる。
【0034】
次に、半導体装置1の一例について説明する。図12に示すように、半導体装置1は、半導体基板2と、半導体基板2の表面28を覆っている表面電極51と、半導体基板2の裏面29を覆っている裏面電極52を備えている。また、半導体装置1は、半導体基板2の表面28に形成されているトレンチ11と、トレンチ11の両側面111からトレンチ11の内部に突出している一対の硬化部41,41を備えている。硬化部41,41より深部側のトレンチ11の内部に空間5が形成されている。
【0035】
半導体基板2には半導体素子が形成されている。本実施例では、半導体基板2にMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が形成されている。半導体基板2には、裏面29側から表面28側に向かって順に、ドレイン領域21、ドリフト領域23、ベース領域24、ソース領域25、および、コンタクト領域26が形成されている。また、半導体基板2にはフローティング領域27が形成されている。
【0036】
ドレイン領域21は、p型の領域である。ドレイン領域21は、不純物濃度が高い。ドレイン領域21は、ドリフト領域23の裏面側に形成されている。ドレイン領域21は、半導体基板2の裏面29に露出する範囲に形成されている。ドレイン領域21は、裏面電極52に導通している。
【0037】
ドリフト領域23は、n型の領域である。ドリフト領域23の不純物濃度は、ドレイン領域21の不純物濃度より低い。ドリフト領域23は、ドレイン領域21の表面側に形成されている。ドリフト領域23は、ドレイン領域21とベース領域24の間に形成されている。
【0038】
ベース領域24は、p型の領域である。ベース領域24は、ドリフト領域23の表面側に形成されている。ベース領域24は、ドリフト領域23とソース領域25およびコンタクト領域26との間に形成されている。ベース領域24は、トレンチ11に接する範囲に形成されている。ベース領域24は、硬化部41,41より上の位置に形成されている。
【0039】
ソース領域25は、n型の領域である。ソース領域25の不純物濃度は、ドリフト領域23の不純物濃度より高い。ソース領域25は、ベース領域24の表面側に形成されている。ソース領域25は、トレンチ11に接する範囲に形成されている。ソース領域25は、半導体基板2の表面28に露出する範囲に島状に形成されている。ソース領域25は、表面電極51に導通している。
【0040】
コンタクト領域26は、p型の領域である。コンタクト領域26の不純物濃度は、ベース領域24の不純物濃度より高い。コンタクト領域26は、ベース領域24の表面側に形成されている。コンタクト領域26は、ソース領域25と異なる位置に形成されている。コンタクト領域26は、半導体基板2の表面28に露出する範囲に島状に形成されている。コンタクト領域26は、表面電極51に導通している。
【0041】
フローティング領域27は、p型の領域である。フローティング領域27の不純物濃度は、コンタクト領域26の不純物濃度より低い。フローティング領域27は、ドリフト領域23の内部に形成されている。フローティング領域27は、トレンチ11の底部の周囲に形成されている。フローティング領域27は、トレンチ11の両側面111,111と底面112に接する範囲に形成されている。フローティング領域27は、硬化部41より深部側の位置に形成されている。フローティング領域27の電位は、フローティング状態になっている。
【0042】
トレンチ11は、半導体基板2の表面28から深部側に(z方向に)延びている。トレンチ11は、半導体基板2の表面28からソース領域25とベース領域24を貫通してドリフト領域23に達する深さまで延びている。トレンチ11の内面にゲート絶縁膜12が形成されている。トレンチ11の内部にゲート電極13が形成されている。
【0043】
一対の硬化部41,41は、トレンチ11の表面28より深部側の位置に形成されている。一対の硬化部41,41の間に開口部43が形成されている。
【0044】
ゲート絶縁膜12は、第2絶縁材料6の膜である。ゲート絶縁膜12は、例えば、TEOSから形成されている。ゲート絶縁膜12は、硬化部41の表面411,411とトレンチ11の両側面111,111を覆っている。ゲート絶縁膜12は、開口部43を塞いでいる。ゲート絶縁膜12は、空間5を封止している。ゲート絶縁膜12は、半導体基板2とゲート電極13の間に配置されている。
【0045】
ゲート電極13は、トレンチ11の内部に充填されている導電材料7からなる。ゲート電極13は、例えば、ポリシリコン(Poly Si)から形成されている。ゲート電極13は、ゲート絶縁膜12(第2絶縁材料6の膜)より内側のトレンチ11の内部に充填されている。ゲート電極13は、ゲート絶縁膜12によって半導体基板2と絶縁されている。ゲート電極13の上に層間絶縁膜14が配置されている。
【0046】
層間絶縁膜14は、例えば、酸化シリコン(SiO)から形成されている。層間絶縁膜14は、ゲート電極13の表面を覆っている。層間絶縁膜14は、ゲート電極13と表面電極51を絶縁している。
【0047】
表面電極51は、導電性を有している。表面電極51は、例えばアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、および、金(Au)等の金属を一つ又は複数用いて形成されている。表面電極51は、半導体基板2の表面28と層間絶縁膜14を覆っている。表面電極51の表面にはんだを介して端子が接続される(図示省略)。
【0048】
裏面電極52は、導電性を有している。裏面電極52は、例えばアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、および、金(Au)等の金属を一つ又は複数用いて形成されている。裏面電極52は、半導体基板2の裏面29を覆っている。裏面電極52の裏面にはんだを介して端子が接続される(図示省略)。
【0049】
上記の半導体装置1によれば、ゲート電極13の深部側に空間5が形成されているので、空間5が無い場合よりもゲート電極13と半導体基板2の間の絶縁性を向上させることができる。また、トレンチ11の底部の周囲の半導体基板2にp型のフローティング領域27が形成されていると、MOSの耐圧が向上する。本実施例ではそれに加えて、ゲート電極13の底面とトレンチの底面の間に空間5が形成されているために、MOSの耐圧がさらに向上する。空間5とフローティング領域27を組み合わせによってMOSの耐圧が大いに改善される。
【0050】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0051】
以下に本明細書が開示する技術要素の一例について説明する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものである。
【0052】
1.閉塞工程で、硬化部の表面とトレンチの側面に、第2絶縁材料の膜を成長させ、閉塞工程に続けて、膜より内側のトレンチの内部に第2絶縁材料を充填する第2絶縁材料充填工程を備えていてもよい。
【0053】
この構成によって、閉塞工程と第2絶縁材料充填工程を単一工程で実施することができ、工程数を削減することができる。
【0054】
2.閉塞工程で、硬化部の表面とトレンチの側面に第2絶縁材料の膜を成長させ、閉塞工程の後に、膜より内側のトレンチの内部に第3絶縁材料を充填する第3絶縁材料充填工程を備えていてもよい。
【0055】
この構成によって、第2絶縁材料の膜より内側に第3絶縁材料を充填することによって材料の選択肢を増やすことができる。
【0056】
3.閉塞工程で、硬化部の表面とトレンチの側面に第2絶縁材料の膜を成長させ、閉塞工程の後に、膜より内側のトレンチの内部にゲート電極となる材料を充填するゲート電極充填工程を備えていてもよい。
【0057】
この構成によって、トレンチの内部の表面側にゲート電極を形成し、深部側に空間を形成することができる。
【0058】
4.半導体装置では、硬化部の表面とトレンチの側面が第2絶縁材料の膜で覆われていてもよい。膜より内側のトレンチの内部にゲート電極が充填されており、トレンチの底部の周囲に位置する半導体基板にp型のフローティング領域が形成されていてもよい。
【0059】
このような構成によれば、トレンチの内部のゲート電極より深部側に空間が形成されているので、ゲート電極と半導体基板の間の絶縁性を向上させることができる。p型のフローティング領域と空間の組み合わせによって半導体装置の耐圧が向上する。
【符号の説明】
【0060】
1 :半導体装置
2 :半導体基板
3 :第1絶縁材料
5 :空間
6 :第2絶縁材料
7 :導電材料
9 :第3絶縁材料
11 :トレンチ
12 :ゲート絶縁膜
13 :ゲート電極
14 :層間絶縁膜
21 :ドレイン領域
23 :ドリフト領域
24 :ベース領域
25 :ソース領域
26 :コンタクト領域
27 :フローティング領域
28 :表面
29 :裏面
31 :界面
32 :深部側の端部
41 :硬化部
43 :開口部
51 :表面電極
52 :裏面電極
91 :マスク
92 :開口部
111 :側面
112 :底面
411 :表面
図1
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