特許第6301892号(P6301892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6301892発癌性融合タンパク質を検出するための近接媒介性アッセイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6301892
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】発癌性融合タンパク質を検出するための近接媒介性アッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20180319BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20180319BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20180319BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20180319BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20180319BHJP
   C12Q 1/28 20060101ALI20180319BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   G01N33/574 A
   G01N33/543 545A
   G01N33/543 597
   G01N33/53 U
   G01N33/543 575
   C12Q1/04
   C12Q1/02
   C12Q1/28
   C12Q1/48 Z
【請求項の数】69
【外国語出願】
【全頁数】102
(21)【出願番号】特願2015-193770(P2015-193770)
(22)【出願日】2015年9月30日
(62)【分割の表示】特願2012-535336(P2012-535336)の分割
【原出願日】2010年10月20日
(65)【公開番号】特開2016-28251(P2016-28251A)
(43)【公開日】2016年2月25日
【審査請求日】2015年10月26日
(31)【優先権主張番号】61/253,393
(32)【優先日】2009年10月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/305,084
(32)【優先日】2010年2月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/327,487
(32)【優先日】2010年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/383,037
(32)【優先日】2010年9月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517208115
【氏名又は名称】ダイアテック ホールディングス, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DiaTech Holdings, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】シン シャラット
(72)【発明者】
【氏名】リュウ シンジュン
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−502404(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/108637(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/036802(WO,A2)
【文献】 特表2007−503593(JP,A)
【文献】 特開2008−261764(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/025847(WO,A2)
【文献】 国際公開第2009/124901(WO,A2)
【文献】 特表平09−501767(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/061684(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0190689(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
C12Q 1/02
C12Q 1/04
C12Q 1/28
C12Q 1/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発癌性融合タンパク質の発現レベル又は活性化状態を決定する方法であって、前記方法は、以下の工程を含む:
(a)サンプルから単離された細胞の抽出物を含む細胞抽出物を生成する工程であって、前記単離された細胞を溶解の前に洗浄せずに、前記細胞抽出物を生成し、
前記単離された細胞を、溶解前に抗癌剤とインキュベートするか、前記細胞は、抗ガン剤で治療された患者から単離されたものである工程;
(b)細胞抽出物中に存在する第1全長タンパク質を、前記第1全長タンパク質と第1結合成分とを含む複合体に変換するのに適した条件下で、前記細胞抽出物を、前記第1全長タンパク質の第1ドメインに特異的な前記第1結合成分と接触させる工程であって、
前記第1全長タンパク質は、前記第1全長タンパク質の第1ドメイン及び前記第1全長タンパク質の第2の異なるドメインを含み、
前記第1全長タンパク質の第1ドメインは、第2の異なる全長タンパク質の第1ドメインに融合する前記第1全長タンパク質の前記第2の異なるドメインを含む対応する発癌性融合タンパク質に存在せず、
前記第2の異なる全長タンパク質は、前記第2の異なる全長タンパク質の第1ドメイン及
び前記第2の異なる全長タンパク質の第2の異なるドメインを含み、
前記細胞抽出物は、前記第1全長タンパク質、前記第2の異なる全長タンパク質及び前記発癌性融合タンパク質を含む、
前記工程;
(c)前記細胞抽出物から工程(b)からの前記複合体を除去し、前記第1全長タンパク質を含まない細胞抽出物を形成する工程;
(d)前記細胞抽出物中に存在する前記発癌性融合タンパク質を、前記発癌性融合タンパク質と第2、第3及び第4結合成分とを含む複合体に変換するのに適した条件下で、工程(c)からの前記細胞抽出物を、第2、第3及び第4結合成分と接触させる工程であって、
前記第2結合成分は前記第1全長タンパク質の前記第2の異なるドメインに特異的であり、前記第2結合成分がアドレス可能なアレイにおける固体支持体上に拘束されており、前記第3結合成分が、促進成分を用いて標識化されており、そして、下記の内の1つに特異的であり:
(i)前記第2の異なる全長タンパク質の前記第1ドメイン;
(ii)前記第1全長タンパク質の前記第2の異なるドメイン;又は
(iii)前記第1全長タンパク質の前記第2の異なるドメインと前記第2の異なる全長タンパク質の前記第1ドメインとの間の融合部位、
前記第4結合成分が、シグナル増幅対の第1メンバーを用いて標識化されており、そして
前記第2の異なる全長タンパク質の前記第1ドメインに特異的であり、そして
前記促進成分が、前記シグナル増幅対の第1メンバーへチャネリングしかつ前記シグナル増幅対の第1メンバーと反応する酸化剤を生成する、前記工程;
(e)工程(d)からの前記複合体を、前記シグナル増幅対の第2メンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成する工程;及び
(f)前記シグナル増幅対の第1及び第2メンバーから生成される増幅シグナルを検出し、それによって前記発癌性融合タンパク質の発現レベル又は活性化状態を決定する工程。
【請求項2】
前記サンプルが、全血、血清、血漿、尿、痰、気管支洗浄液、涙液、乳頭吸引液、リンパ液、唾液、微細針吸引液(FNA)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルが癌を有する患者から得られたものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
癌細胞中の染色体転座による発癌性融合タンパク質の形成によって、前記癌が引き起こされる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が、血液悪性腫瘍、骨原性肉腫、又は軟部組織肉腫である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記血液悪性腫瘍が、白血病又はリンパ腫である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記白血病が、慢性骨髄性白血病(CML)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記単離された細胞が、循環腫瘍細胞、白血球、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記単離された細胞を、インビトロで、成長因子で刺激する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記単離された細胞を、成長因子刺激の前に抗癌剤とインキュベートする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記単離された細胞を成長因子刺激の後に溶解し、前記細胞抽出物を生成する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記発癌性融合タンパク質が、BCR−ABL、DEK−CAN、E2A−PBX1、RARα−PML、IREL−URG、CBFβ−MYH11、AML1−MTG8、EWS−FLI、LYT−10−Cα1、HRX−ENL、HRX−AF4、NPM−ALK、IGH−MYC、RUNX1−ETO、TEL−TRKC、TEL−AML1、MLL−AF4、TCR−RBTN2、COL1A1−PDGF、E2A−HLF、PAX3−FKHR、ETV6−NTRK3、RET−PTC、TMRSS−ERG、TPR−MET、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記発癌性融合タンパク質がBCR−ABLである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1全長タンパク質がBCR又はABLである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1全長タンパク質の前記第1ドメインが、BCRのカルボキシル末端領域(BCR−C)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1全長タンパク質の前記第2の異なるドメインが、BCRのアミノ末端領域(BCR−N)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の異なる全長タンパク質がABL又はBCRである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の異なる全長タンパク質の前記第1ドメインが、ABLのカルボキシル末端領域(ABL−C)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記活性化状態が、リン酸化状態、ユビキチン化状態、複合体形成状態、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
1以上のシグナル伝達分子の発現レベル 又は活性化状態を決定することを更に含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記1以上のシグナル伝達分子がBCR−ABL基質である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記BCR−ABL基質が、CRKL、JAK2、STAT5、VAV、BAP−1、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1結合成分が第1抗体を含み、前記第1抗体が固体支持体に結合してい、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記固体支持体が、ガラス、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2結合成分が第2抗体を含み、前記第2抗体が固体支持体に結合してい、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記固体支持体が、ガラス、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程(d)及び(e)が、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、フローサイトメトリー測定法、又はタグ選別測定法を含、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ELISAが、サンドイッチELISAを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記フローサイトメトリー測定法が、蛍光活性化細胞選別(FACS)測定法を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
工程(c)からの細胞抽出物を、前記第2結合成分の希釈系列と接触させ、前記発癌性融合タンパク質と前記第2結合成分とを含む複数の複合体を形成する、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第3及び第4結合成分が、第3及び第4抗体をそれぞれ含む、請求項1〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
第3及び第4抗体が、両方とも活性化状態非依存性抗体である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記シグナル増幅対の第1及び第2メンバーから生成される前記増幅シグナルが、前記発癌性融合タンパク質の総量と相関的である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第3抗体が活性化状態非依存性抗体であり、そして前記第4抗体が活性化状態依存性抗体であるか、前記シグナル増幅対の第1及び第2メンバーから生成される前記増幅シグナルが、活性化した発癌性融合タンパク質の量と相関的である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記第3結合成分を、前記促進成分を用いて直接的に標識化するか、前記第4結合成分を、前記シグナル増幅対の第1メンバーを用いて直接的に標識化するか、前記第4結合成分にコンジュゲートされる結合対の第1メンバーと、前記シグナル増幅対の第1メンバーにコンジュゲートされる前記結合対の第2メンバーとの間の結合を介して、前記第4結合成分を、前記シグナル増幅対の第1メンバーを用いて標識化する、請求項1〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記促進成分が、グルコースオキシダーゼである、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
以下の工程を更に含む:
(g)前記細胞抽出物中に存在する第2の異なる全長タンパク質を、前記第2の異なる全長タンパク質と第5結合成分とを含む複合体に変換するのに適した条件下で、前記細胞抽出物を、前記第2の異なる全長タンパク質の第2ドメインに特異的な前記第5結合成分と接触させる工程であって、前記第2の異なる全長タンパク質の第2ドメインが、前記発癌性融合タンパク質に存在しない、前記工程;及び
(h)前記細胞抽出物から工程(g)からの前記複合体を除去し、前記第2の異なる全長タンパク質を含まない細胞抽出物を形成する工程であって、工程(g)を、工程(b)の前、中、又は後に実施する、前記工程、
請求項1〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第5結合成分が第5抗体を含み、前記第5抗体が固体支持体に結合してい、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記固体支持体が、ガラス、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
癌を有し、且つ癌治療のための治療過程を受ける被験者において療法を最適化するため及び/又は毒性を減少するための方法であって、前記方法が以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後に単離された癌細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程であって、前記単離された細胞を溶解の前に洗浄しない工程;
(b)請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法に従って、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;及び、
(c)被験者のための治療過程の今後の用量を決定するか、又は異なる治療過程を被験者に施すかどうかを決定するために、測定した前記発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを、治療過程の間の初期に測定される前記発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルと比較する工程。
【請求項41】
前記発癌性融合タンパク質がBCR−ABLである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記被験者が、治療過程を受ける前に、前記発癌性融合タンパク質を発現する癌細胞を有することを決定された被験者である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記被験者がBCR−ABLについて陽性である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
発癌性融合タンパク質についての発現のレベルと活性化のレベルとの両方を、前記細胞抽出物中で測定する、請求項40〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
工程(b)が、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比を計算することを更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
工程(c)が、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の前記計算比を、初期に前記被験者のために計算されるトータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比と比較することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の前記計算比が、抗癌剤治療における前記活性化した発癌性融合タンパク質のパーセント阻害と相関するか、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の前記計算比が、対照タンパク質レベルに関連しているか、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の前記計算比が、ホスホ/トータルBCR−ABLタンパク質レベルの比を含む、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
前記対照タンパク質が、前記発癌性融合タンパク質内で見つけられる配列又はドメインを含有する天然全長タンパク質を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記対照タンパク質が、全長BCR、全長ABL、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記発癌性融合タンパク質の活性化の50%より低い阻害が、治療過程の今後の用量を増加させることの必要性、又は異なる治療過程を施すことの必要性を示す、請求項4049のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記発癌性融合タンパク質の活性化レベルの50%未満の阻害が、治療過程への被験者によるコンプライアンスの不足、治療過程と関連した副作用若しくは毒性の可能性の存在、又はそれらの組み合わせを示す、請求項40〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記発癌性融合タンパク質の活性化レベルの80%を超える阻害が、被験者が正しい用量で正しい治療にあることを示す、請求項40〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記癌が慢性骨髄性白血病(CML)である、請求項4052のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記抗癌剤が、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、化学療法剤、ホルモン療法剤、放射線療法剤、ワクチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項40〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記工程(b)〜(c)が以下の工程を代わりに含む、請求項404のいずれか一項に記載の方法:
(b’)請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法に従って前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質の発現及び/又は活性化のレベルを測定し、前記細胞抽出物中の経路における、1以上のシグナル伝達分子についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;
(c’)被験者のための治療過程の今後の用量を決定するか、又は異なる治療過程を被験者に施すかどうかを決定するために、測定した前記発癌性融合タンパク質及びシグナル伝達分子についての発現及び/又は活性化のレベルを、治療過程の間の初期に測定される前記発癌性融合タンパク質及びシグナル伝達分子についての発現及び/又は活性化のレベルと比較する工程。
【請求項56】
癌の治療のために、適した抗癌剤を選択するための方法であって、前記方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの後に単離された癌細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程であって、前記単離された細胞を溶解の前に洗浄しない工程;
(b)請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法に従って、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;及び、
(c)前記抗癌剤が、癌の治療のために適切であるか不適切であるかを決定するために、前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程。
【請求項57】
抗癌剤を用いる治療に対して癌の応答を同定するための方法であって、前記方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの後に単離された癌細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程であって、前記単離された細胞を溶解の前に洗浄しない工程;
(b)請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法に従って、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;及び、
(c)前記抗癌剤を用いる治療に対して、癌が応答性又は非応答性であると同定するために、前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程。
【請求項58】
抗癌剤を用いる治療に対して、癌を有する被験者の応答を予測するための方法であって、前記方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの後に単離された癌細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程であって、前記単離された細胞を溶解の前に洗浄しない工程;
(b)請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法に従って、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;及び、
(c)被験者が、前記抗癌剤を用いる治療に対して応答することの可能性を予測するために、前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程。
【請求項59】
癌を有する被験者が、抗癌剤を用いる治療に対して耐性があるかどうかを決定するための方法であって、前記方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの後に単離された癌細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程であって、前記単離された細胞を溶解の前に洗浄しない工程;
(b)請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法に従って、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;及び、
(c)被験者が、前記抗癌剤を用いる治療に対して、耐性があるか又は感受性があるかどうかを決定するために、前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、初期に抗癌剤がある状態又は抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程。
【請求項60】
前記癌が慢性骨髄性白血病(CML)である、請求項409のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記抗癌剤が、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、化学療法剤、ホルモン療法剤、放射線療法剤、ワクチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項40〜60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記モノクローナル抗体が、トラスツズマブ(Herceptin(商標))、アレムツズマブ(Campath(商標))、ベバシズマブ(Avastin(商標))、セツキシマブ(Erbitux(商標))、ゲムツズマブ(Mylotarg(商標))、パニツムマブ(Vectibix(商品名))、リツキシマブ(Rituxan(商標))、及びトシツモマブ(BEXXAR(商標))、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記チロシンキナーゼ阻害剤が、イマチニブメシレート(Gleevec(商標))、ニロチニブ(Tasigna(商標))、ダサチニブ(Sprycel(商標))、ボスチニブ(SKI−606)、ゲフィチニブ(Iressa(商標))、スニチニブ(Sutent(商標))、エルロチニブ(Tarceva(商標))、ラパチニブ(Tykerb(商標))、カネルチニブ(CI1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY43−9006)、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ(ZACTIMA(商品名);ZD6474)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記化学療法剤が、ペメトレキセド(ALIMTA(商標))、ゲムシタビン(Gemzar(商標))、シロリムス(ラパマイシン)、ラパマイシンアナログ、白金化合物、カルボプラチン、シスプラチン、サトラプラチン、パクリタキセル(Taxol(商標))、ドセタキセル(Taxotere(商標))、テムシロリムス(CCI−779)、エベロリムス(RAD001)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記ホルモン療法剤が、アロマターゼ阻害剤、選択的エストロゲン受容体調節剤、ステロイド剤、フィナステリド、ゴナドトロピン放出性ホルモンアゴニスト、それらの薬学的に許容することのできる塩、それらの立体異性体、それらの誘導体、それらのアナログ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記放射線療法剤が、47Sc、64Cu、67Cu、89Sr、86Y、87Y、90Y、105Rh、111Ag、111In、117mSn、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、211At、212Bi、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
前記第1結合成分が全長BCRタンパク質のC末端に特異的な抗BCR抗体であり、前記第2結合成分が全長BCRタンパク質のN末端に特異的な抗BCR抗体であ、請求項13に記載の方法。
【請求項68】
前記第3結合成分が全長ABLタンパク質のC末端に特異的な抗ABL抗体である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記第4結合成分がホスホABL−Cに結合する抗ホスホチロシン抗体である、請求項68に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2009年10月20日出願の米国仮特許出願第61/253393号、2010年2月16日出願の米国仮特許出願第61/305084号、2010年4月23日出願の米国仮特許出願第61/327487号、及び2010年9月15日出願の米国仮特許出願第61/383037号による優先権を主張し、これらの開示内容は、あらゆる目的のためにこれらの全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【発明の背景】
【0002】
キメラタンパク質としても知られている融合タンパク質は、最初は別々のタンパク質をコードする2つ以上の遺伝子を接合することによってつくられるタンパク質である。この融合遺伝子の翻訳は、オリジナルタンパク質の各々に由来する機能的特性を有する単一のポリペプチドをもたらす。大規模な突然変異(典型的には、染色体移動)が2つの異なる遺伝子のコード配列の部分を含んでいる新規なコード配列をつくるときに、キメラ変異体タンパク質は発生する。天然に存在する融合タンパク質は癌において重要であり、ここで、それらは腫瘍性タンパク質として機能する。
【0003】
BCR−ABL融合タンパク質は、発癌性融合タンパク質の周知の例である。それは、慢性骨髄性白血病(CML)の主要な発癌性要因であると考えられるが、急性リンパ性血病(ALL)にも関連している。実際、CMLの細胞遺伝学的な特質は、フィラデルフィア染色体(Ph)であり、それは210kDaのタンパク質をコードしているBCRABL融合遺伝子の形成をもたらす。実際、結果として生じるBCR−ABL融合タンパク質は、活性化したチロシンキナーゼであり、CMLの病因にきわめて重大である。イマチニブ(Gleevec(商標))が、CMLとして新しく診断された患者のための現在における第1次療法であるにもかかわらず、患者の約20−25%は、永続的にかつ完全には細胞遺伝学的な反応が得られていない。継続的なイマチニブ治療の場合には、BCR−ABLシグナリングの再活性化が耐性の主な原因であるという調査結果が示されている。大多数の患者において、再活性化は、薬剤耐性の誘導に導かれるイマチニブの結合を損なうBCR−ABLキナーゼ領域の突然変異から生じる。このように、BCR−ABL活性の測定は、イマチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤を有する治療への反応を予測したり、このような阻害剤に対する耐性を高める患者を同定したりする際における、有用性を発見する。
【0004】
現時点では、BCR−ABL活性を検出するために利用される方法は、リン酸化されたCRKL(pCRKL)、BCR−ABL基板を測定することに依存している。例えば、La Roseeら(Haematologica, 93:765-9 (2008))は、BCR−ABLの代用としてpCRKLレベルを決定するために、全白血球溶解物のウェスタンブロット法を記載している(Hochhausら, Leukemia, 16:2190-6 (2002);Whiteら, J. Clin. Oncol. 25:4445-51 (2007)参照)。同様に、Khorashadら(Haematologica, 94:861-4 (2009))は、BCR−ABL活性を評価するために、pCRKLレベルを測定するフローサイトメトリーに基づく方法を記載している(Hamiltonら、Leukemia, 20:1035-9 (2006)参照)。しかしながら、これらの方法は、サロゲートタンパク質(surrogate protein)のリン酸化を検出することに依存する単一の抗体分析であるので、サンプル中のBCR−ABL活性の存在又はレベルを決定するために必要とされる特異性及び感度を欠いている。したがって、特異性がありかつ感度の高い方法は、診断目的、予後目的及び治療目的のために、BCR−ABL活性、並びに他の発癌性融合タンパク質の活性を検出するために必要である。本発明は、この必要性を満たして、更に関連した利点も提供する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、生体サンプル[例えば、全血(例えば、単離された希少循環細胞又は白血球から調製された溶解物)又は腫瘍組織(例えば、微細針吸引液)]中における1又は複数の発癌性融合タンパク質についての活性化状態及び/又は総量を検出するための、抗体に基づく近接アレイ、及びそれらの使用方法を提供する。所定の場合において、サンプル中に存在する発癌性融合タンパク質の活性化状態及び/又は総量を、1又は複数のシグナル伝達分子との組み合わせで、測定することができる。本発明の組成物及び方法は、酵素結合抗体免疫測定法と関連する特異性、シグナル増幅と関連する感度、及びマイクロアレイと関連する高スループットな多重化(high-throughput multiplexing)の利点を有する。
【0006】
1つの観点では、本発明は、発癌性融合タンパク質のレベル又は活性化状態を決定する方法であって、前記方法は、以下の工程を含む:
(a)細胞抽出物中に存在する第1の全長タンパク質を、前記第1全長タンパク質と第1結合成分とを含む複合体に変換するのに適した条件下で、前記細胞抽出物を、前記第1全長タンパク質の第1ドメインに特異的な前記第1結合成分と接触させる工程であって、前記の第1全長タンパク質の第1ドメインは、第2の異なる全長タンパク質の第1ドメインに融合する前記第1全長タンパク質の第2の異なるドメインを含む対応する発癌性融合タンパク質に存在しない、前記工程;
(b)前記細胞抽出物から工程(a)からの前記複合体を除去し、前記第1全長タンパク質を含まない細胞抽出物を形成する工程;
(c)前記細胞抽出物中に存在する前記発癌性融合タンパク質を、前記発癌性融合タンパク質と第2結合成分とを含む複合体に変換するのに適した条件下で、工程(b)からの前記細胞抽出物を、前記第1全長タンパク質の前記第2の異なるドメインに特異的な前記第2結合成分と接触させる工程;及び
(d)工程(c)からの前記複合体のレベル又は活性化状態を決定し、それによって前記発癌性融合タンパク質のレベル又は活性化状態を決定する工程を提供する。
【0007】
特定の実施形態において、発癌性融合タンパク質のレベル又は活性化状態を決定することは、(例えば、細胞抽出物中の)発癌性融合タンパク質の発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)の(例えば、濃度)レベルを測定することを含む。
【0008】
好ましい実施形態において、本発明の方法の工程(c)及び(d)は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、フローサイトメトリー測定法、タグ選別測定法、又は本明細書に記載の近接二重検出アッセイ(proximity dual detection assay)を含む。
【0009】
近接二重検出アッセイの1つの特定の実施形態において、本発明は、発癌性融合タンパク質のレベル又は活性化状態を決定する方法を提供して、前記方法が以下の工程を含む:
(a)細胞抽出物を、発癌性融合タンパク質に特異的な捕捉抗体の希釈系列とインキュベートして、複数の捕捉された発癌性融合タンパク質を形成する工程であって、前記捕捉抗体が、固体支持体上に拘束されており、前記発癌性融合タンパク質が、第1のタンパク質に対応する第ドメインと第2の異なるタンパク質に対応する第ドメインを含み、そして、前記捕捉抗体が、融合タンパク質の第1ドメインに特異的である、前記工程;
(b)複数の捕捉された発癌性融合タンパク質を、前記発癌性融合タンパク質の第2ドメインに特異的な少なくとも2つのタイプの検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された発癌性融合タンパク質を形成する工程であって、前記検出抗体が以下を含む:
(1)促進成分を用いて標識化される複数の活性化状態非依存性抗体、及び
(2)シグナル増幅対の第1メンバーを用いて標識化される複数の活性化状態依存性抗体、
前記促進成分が、前記シグナル増幅対の第1メンバーにチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する、前記工程;
(c)複数の検出可能な捕捉された発癌性融合タンパク質を、前記シグナル増幅対の第2メンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成する工程;及び
(d)前記シグナル増幅対の第1及び第2メンバーから生成される増幅シグナルを検出する工程。
【0010】
近接二重検出アッセイの1つの別の特定の実施形態において、本発明は、発癌性融合タンパク質のレベル又は活性化状態を決定する方法を提供して、前記方法が以下の工程を含む:
(a)細胞抽出物を、発癌性融合タンパク質に特異的な捕捉抗体の希釈系列とインキュベートして、複数の捕捉された発癌性融合タンパク質を形成する工程であって、前記捕捉抗体が、固体支持体上に拘束されており、前記発癌性融合タンパク質が、第1のタンパク質に対応する第ドメインと第2の異なるタンパク質に対応する第ドメインを含み、そして、前記捕捉抗体が、融合タンパク質の第1ドメインに特異的である、前記工程;
(b)複数の捕捉された発癌性融合タンパク質を、少なくとも2つのタイプの検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された発癌性融合タンパク質を形成する工程であって、前記検出抗体が以下を含む:
(1)促進成分を用いて標識化される複数の活性化状態非依存性抗体(前記活性化状態非依存性抗体が、前記融合タンパク質の第1ドメインに特異的である)、及び
(2)シグナル増幅対の第1メンバーを用いて標識化される複数の活性化状態依存性抗体(前記活性化状態依存性抗体が、前記融合タンパク質の第2ドメインに特異的である)、
前記促進成分が、前記シグナル増幅対の第1メンバーにチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する、前記工程;
(c)複数の検出可能な捕捉された発癌性融合タンパク質を、前記シグナル増幅対の第2メンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成する工程;及び
(d)前記シグナル増幅対の第1及び第2メンバーから生成される増幅シグナルを検出する工程。
【0011】
別の観点では、本発明は、癌を有し、且つ癌治療のための治療過程を受ける被験者において療法を最適化するため及び/又は毒性を減少するための方法であって、前記方法が以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後に癌細胞を単離する工程;
(b)前記単離された細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)本明細書に記載の方法を使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;及び、
(d)測定した前記発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを、治療過程の間の初期に測定される前記発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルと比較する工程;及び
(e)工程(d)からの比較に基づいて、被験者のための治療過程の今後の用量を決定するか、又は異なる治療過程を被験者に施すかどうかを決定する工程。
【0012】
所定の実施形態において、細胞抽出物中に存在する1以上のシグナル伝達分子は、1以上の発癌性融合タンパク質に加えて検出される。シグナル伝達分子の例として、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ、チロシンキナーゼシグナル伝達カスケード成分、1以上の発癌性融合タンパク質のための基質(例えば、BCR−ABL基質)が挙げられるが、これに限定されるものではない。或る場合には、シグナル伝達分子は、本明細書において記載されている方法を使用して検出される[但し、アッセイに応じて、2つの抗体(すなわち、捕捉抗体及び検出抗体)又は3つの抗体(すなわち、捕捉抗体及び両方の検出抗体)が、同じタンパク質に向けられる場合を除く]。他の場合において、シグナル伝達分子は、当業者に知られているいかなる方法も使用して検出される。特定の実施形態において、細胞抽出物中に存在する1以上のシグナル伝達分子は、本明細書において記載されている分析(例えば、イムノアッセイ)を使用して、1以上の発癌性融合タンパク質と共に検出される。
【0013】
所定の実施形態では、本発明は、以下を含む、本願明細書において記載されている近接二重検出アッセイ実施するためのキットも提供する:
(a)固体支持体上に拘束される1又は複数の捕捉抗体の希釈系列[前記捕捉抗体は、目的の1以上の分析物(例えば、発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子)に特異的である];及び
(b)目的の分析物ごとの、複数の(例えば、少なくとも2つのタイプ)検出抗体。
前記キットは、他の試薬(例えば、シグナル増幅対の第1及び第2メンバー)を任意に更に含むことができる。
【0014】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な記載及び図面から当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のアセイフォーマット(assay format)の1実施形態を示す図である。このフォーマットは、結合した各標的発癌性融合タンパク質ごとに、後続のチャネリング事象のための酵素と結合される2つの付加的な検出抗体の共局在性に依存している。
【0016】
図2】癌治療過程の全体を通じて、薬剤選択のための本発明のアレイについての用途を模式的に示す図である。
【0017】
図3A】発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)の発現及び活性化レベルを検出するための本発明のアセイフォーマットの種々の実施形態を示す図である。
図3B】発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)の発現及び活性化レベルを検出するための本発明のアセイフォーマットの種々の実施形態を示す図である。
図3C】発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)の発現及び活性化レベルを検出するための本発明のアセイフォーマットの種々の実施形態を示す図である。
図3D】発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)の発現及び活性化レベルを検出するための本発明のアセイフォーマットの種々の実施形態を示す図である。
【0018】
図4】遊離なBCRの除去後における、K562細胞中のBCR−ABLシグナルを示す図である。
【0019】
図5】遊離なBCRの除去後における、K562細胞中のBCRシグナルを示す図である。
【0020】
図6】K562細胞中のBCR−ABLのトータル及びリン酸化されたレベルの検出を示す図である。
【0021】
図7】BCRC末端抗体結合ビーズを使用して、BCRの減少についての有無にかかわらず、K562ヒト慢性骨髄性白血病細胞中で検出されるBCR−ABLについてのリン酸化レベル(「ホスホBCR−ABL」)及び総量(「トータルBCR−ABL」)を示す図である。
【0022】
図8A】BCRC末端抗体結合ビーズを使用して、遊離なBCRの除去の有無にかかわらず、K562細胞中のリン酸化したBCR−ABLシグナルを示す図である。図8Aは、全長BCRの除去の有無にかかわらず、K562細胞可溶化物中で検出されるリン酸化されたBCR−ABLシグナルのマイクロアレイ比較を提供する[「非ビーズ処理」(=BCRが除去されない)に対する「ビーズ処理」(=BCRが、ビーズにコンジュゲートされる全長BCRのC末端に特異的な抗体を含有するビーズで除去される)]。
図8B】BCRC末端抗体結合ビーズを使用して、遊離なBCRの除去の有無にかかわらず、K562細胞中のリン酸化したBCR−ABLシグナルを示す図である。図8Bは、細胞数の関数として、相対的な蛍光ユニット(RFU)を用いて、マイクロアレイデータのグラフ図を提供する。
【0023】
図9A】BCRC末端抗体結合ビーズを使用して、遊離なBCRの除去の有無にかかわらず、K562細胞中のトータルBCR−ABLシグナルを示す図である。特に、図9Aは、全長BCRの除去の有無にかかわらず、K562細胞可溶化物中で検出されるトータルBCR−ABLシグナルのマイクロアレイ比較を提供する[「非ビーズ処理」(=BCRが除去されない)に対する「ビーズ処理」(=BCRが、ビーズにコンジュゲートされる全長BCRのC末端に特異的な抗体を含有するビーズで除去される)]。
図9B】BCRC末端抗体結合ビーズを使用して、遊離なBCRの除去の有無にかかわらず、K562細胞中のトータルBCR−ABLシグナルを示す図である。図9Bは、細胞数の関数として、相対的な蛍光ユニット(RFU)を用いて、マイクロアレイデータのグラフィック描写を提供する。
【0024】
図10A】細胞抽出物をBCRC末端抗体結合ビーズと接触させた後に、K562細胞の抽出物から遊離な全長BCRを除去することを示す図である。特に、図10Aは、全長BCRの除去の有無にかかわらず、K562細胞可溶化物中で検出されるトータルBCRシグナルのマイクロアレイ比較を提供する[「非ビーズ処理」(=BCRが除去されない)に対する「ビーズ処理」(=BCRが、ビーズにコンジュゲートされる全長BCRのC末端に特異的な抗体を含有するビーズで除去される)]。
図10B】細胞抽出物をBCRC末端抗体結合ビーズと接触させた後に、K562細胞の抽出物から遊離な全長BCRを除去することを示す図である。図10Bは、細胞数の関数として、相対的な蛍光ユニット(RFU)を用いて、マイクロアレイデータのグラフィック描写を提供する。
【0025】
図11】遊離な全長BCR及びABLタンパク質(BCR−ABL融合タンパク質ではない)が、白血球(WBC)中に存在することを示す図である。
【0026】
図12】このようなK562細胞抽出物をWBC抽出物と混合する際に、WBC中に存在する遊離な全長BCRが、K562細胞抽出物中のホスホBCR−ABLシグナルを阻害したことを示す図である。
【0027】
図13】BCRC末端抗体結合ビーズを使用して、遊離なBCRの除去後に、WBC抽出物と混合されるK562細胞中のトータルBCR−ABLシグナルを示す図である。特に、図13Aは、K562細胞抽出物をWBC抽出物で混合した際に、遊離なBCRシグナルが飽和したことを示す。BCRC末端抗体結合ビーズで処理した後に、遊離なBCRを取り出した。図13Bは、BCR−ABLシグナルが、同様の実験中におけるビーズ処理の有無にかかわらず、変化しなかったことを示す。
【0028】
図14】BCR−ABL阻害剤イマチニブ(Gleevec(商標)が、K562細胞中のBCR−ABLタンパク質についての、発現(すなわち、トータルレベル)でなく、活性(すなわち、リン酸化)を、用量依存的に阻害したことを示す図である。
【0029】
図15】BCR−ABL阻害剤ニロチニブ(Tasigna(商標))が、K562細胞中のBCR−ABLタンパク質についての、発現(すなわち、トータルレベル)でなく、活性(すなわち、リン酸化)を、用量依存的に阻害したことを示す図である。
【0030】
図16】BCR−ABL阻害剤ダサチニブ(Sprycel(商標))が、K562細胞中のBCR−ABLタンパク質についての、発現(すなわち、トータルレベル)でなく、活性(すなわち、リン酸化)を、用量依存的に阻害したことを示す図である。
【0031】
図17】CRKLが、K562細胞中で存在しかつ活性化(すなわち、リン酸化)している両方のことを示す図である。
【0032】
図18】CRKLが、A431ヒト上皮癌細胞に存在し、そしてEGF処理に応じて活性化(すなわち、リン酸化)していることを示す図である。
【0033】
図19】CRKLが、T47Dヒト腺管上皮腫瘍細胞中に存在するが、EGF処理に応じて活性化(すなわち、リン酸化)していないことを示す図である。
【0034】
図20】CRKLが、T47D細胞中に存在して、そしてヘレグリン(HRG)処理に応じて低レベルで活性化(すなわち、リン酸化)していることを示す図である。
【0035】
図21】CRKLが、MCF−7ヒト胸部腺癌細胞に存在して、そしてヘレグリン(HRG)処理に応じて低レベルで活性化(すなわち、リン酸化)していることを示す図である。
【0036】
図22】種々のドナーの白血球(WBC)中における活性化した(すなわち、リン酸化した)CRKLの存在を示す図である。
【0037】
図23】JAK2が、K562細胞及びA431細胞中において活性化する(すなわち、リン酸化する)ことを示す図である。
【0038】
図24】抗CD45磁気ビーズを使用して、リン酸化したBCR−ABLを、血液から単離されるK562細胞から調製される細胞溶解物中で検出し測定することができることを示す図である。
【0039】
図25】BCR−ABLのN末端領域に向けられた抗体のように、天然の全長BCRのC末端(C末端ドメインは、BCR−ABL中に存在しない)に向けられた抗体が、同じパッド中の同じスライド上にスポットされた際に、トータルBCR−ABLレベルが変化しなかったことを示す図である。
【0040】
図26】天然のBCRのC末端に向けられた抗体が同じパッド中のスライド上にスポットされる際に、N末端に特異的なBCR抗体で検出される遊離で天然なBCRシグナルが減少することを示す図である。
【発明の詳細な記載】
【0041】
I.序論
血液悪性腫瘍は、血液、骨髄及びリンパ節に影響を及ぼす癌の種類である。その3つが免疫系によって親密に結びついているので、3つのうちの1つに影響を及ぼしている疾患は、しばしば他のものにも影響を及ぼすであろう。例えば、リンパ腫が技術的にはリンパ節の病気であるにもかかわらず、それはしばしば骨髄及び血液まで広がる。2つの異なる遺伝子のコード配列の部分を含んでいる新規なコード配列を有する融合タンパク質をつくる染色体移動は、これらの疾患の一般的な原因であるが、固形腫瘍のより一般的でない原因である。このように、この種の癌患者に適切な予後及び処理を提供するために、血液悪性腫瘍に関連する発癌性融合タンパク質の存在及び/又は活性を確認することは、重要である。
【0042】
例えば、BCR−ABL融合タンパク質は、急性リンパ性白血病(ALL)及び慢性骨髄性白血病(CML)と関係している。特に、BCR−ABLタンパク質は、癌病因にきわめて重大である活性化したチロシンキナーゼである。イマチニブ(Gleevec(商標))が、CMLとして新しく診断された患者のための現在における第1次療法であるにもかかわらず、患者の約20−25%は、永続的にかつ完全には細胞遺伝学的な反応が得られていない。継続的なイマチニブ治療の場合には、BCR−ABLシグナリングの再活性化が耐性の主な原因であるという調査結果が示されている。このように、BCR−ABL活性の測定は、イマチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤を有する治療への反応を予測したり、このような阻害剤に対する耐性を高める患者を同定する際における、有用性を発見する。
【0043】
本発明は、単離された細胞の1又は複数の融合タンパク質(単独、あるいは1又は複数のシグナル伝達分子との組み合わせ)についての活性化状態及び/又は総量を検出するための、抗体に基づくアレイアッセイシステムを用いた方法を提供する。単離された白血球、循環細胞、又は、他の種類の細胞から抽出された細胞抽出物は、本明細書において記載されている方法において特に有用である。いくつかの実施形態では、本発明による多重で高スループットなイムノアッセイが、単一細胞レベルでの、1以上の発癌性融合タンパク質及び/又はシグナル伝達分子についての活性状態を検出することができる。事実、EGFRのようなシグナル伝達分子を、約100ゼプトモルの感度、及び約100ゼプトモルから約100フェムトモルまでの線形動的範囲で検出することができる。このように、1以上の発癌性融合タンパク質及び/又はシグナル伝達分子の活性化状態の単一細胞検出は、癌の予後及び診断、並びに個人的に目標を定めた治療法の設計を容易にする。
【0044】
図1は、発癌性融合タンパク質、例えば、BCR−ABLが、捕捉抗体及び2つの検出抗体(すなわち、活性化状態非依存性抗体及び活性化状態依存性抗体)に結合している本発明の代表的な近接二重検出アッセイを図示している。捕捉抗体1は、その活性化状態から独立している融合タンパク質のBCR部分に結合する。活性化状態非依存性抗体2が、その活性化状態から独立している融合タンパク質のABL部分に結合して、活性化状態依存性抗体3が、その活性化状態に依存している融合タンパク質のABL部分に結合する(例えば、活性化状態依存性抗体は、リン酸化された残基を有するBCR−ABLの活性形に結合するだけである)。活性化状態非依存性抗体には、促進成分4(「酵素A」)で標識化され、そして、活性化状態依存性抗体には、シグナル増幅対5(「酵素B」)の第1のメンバーで標識している。促進成分によって発生するシグナルが、シグナル増幅対の第1のメンバーにチャネリングして、検出可能な及び/又は増幅可能なシグナルをもたらすことができるように、両方の検出抗体を融合タンパク質のABL部分に結合することによって、シグナル増幅対の第1のメンバーに対して充分な近接範囲内に促進成分を運ぶ。近接チャネリングのための様々な方法が、本明細書において記載されており、そして、これらの方法は、FRET、時間分解蛍光−FRET、LOCI(それらに限定されない)などを含む公知技術でもある。本発明の方法において用いられているような近接チャネリングの利点は、単一の検出可能なシグナルを、全3つの抗体を結合したそれらの分析物(例えば、融合タンパク質又はシグナル伝達分子)のためにだけ発生するということであり、この利点は、増加したアッセイの特異性、より低いバックグラウンド、及び単純化された検出をもたらす。
【0045】
本明細書でより詳細に説明するように、個別患者に対して有望な抗癌療法を評価するために、単離した細胞を様々な量の抗ガン剤1種又は2種以上とインキュベートすることができる。次いで、成長因子刺激を数分間(例えば、約1〜5分間)又は数時間(例えば、約1〜6時間)にわたり実施することができる。抗ガン剤を用いた及び用いないシグナル伝達経路の活性化の差異は、各個別患者に対する適正用量での適切な癌療法の選択に役立つことができる。細胞を抗ガン剤治療中の患者から単離し、成長因子1種又は2種以上を用いて刺激することにより、療法の変更を実施すべきかどうかを決定することもできる。従って、図2に示すように、本発明の方法は、有利なことに、医師が患者ごとに適切な時点で適切な用量の適切な抗ガン剤を提供することを支援する。
【0046】
II.定義
本明細書で使用する場合に、以下の用語は、他に特に規定しない限り、それらに与えられた意味を有する。
【0047】
用語「癌」は、異常細胞の制御されない増殖を特徴とする疾患クラスの任意のメンバーを含むことを意図する。この用語は、悪性、良性、軟組織、若しくは固形、又は転移前及び転移後癌を含むあらゆるステージ及びグレードの癌のいずれであると特徴付けられようと、あらゆる公知の癌及び腫瘍状態を含む。様々な癌のタイプの限定的でない例として、血液悪性腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫);骨原性肉腫(例えば、ユーイング肉腫);軟部組織肉腫(例えば、隆起性皮膚線維(DFSP)、横紋筋肉腫);他の軟部組織悪性、乳頭甲状腺の癌腫;前立腺ガン;胃癌(例えば、胃);乳癌;肺癌(例えば、非小細胞肺癌);消化器及び消化管癌(例えば、結腸直腸癌、消化管間質腫瘍、消化管カルチノイド腫瘍、結腸癌、直腸癌、肛門癌、胆管癌、小腸癌、及び胃癌);食道癌;胆嚢癌;肝臓癌;膵臓癌;虫垂癌;卵巣癌;腎臓癌(例えば、腎細胞癌);中枢神経系の癌;皮膚癌;リンパ腫;絨毛腫;頭頸部癌を挙げることができる。本明細書で使用する「腫瘍」は、癌性細胞(cancerous cell)1個又は2個以上を含む。1つの実施形態では、乳房腫瘍は、浸潤性若しくは非浸潤性の乳管癌又は小葉癌を有する被験者に由来する。
【0048】
「血液悪性腫瘍」は、血液、骨髄及び/又はリンパ節に影響を及ぼす癌のいかなる種類も含む。血液悪性腫瘍の実施例は、白血病、リンパ腫及び多発性骨髄腫を含むが、それらに限定されるものではない。様々な種類の白血病の限定的でない例として、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)及び大きい顆粒性リンパ性白血病を挙げることができる。CMLのサブタイプは、例えば、慢性単球の白血病を含む。ALLのサブタイプは、例えば、前駆体B細胞急性リンパ性白血病、プロB細胞急性リンパ性白血病、前駆体T細胞急性リンパ性白血病及び急性双表現型白血病を含む。CLLのサブタイプは、例えば、B細胞プロ・リンパ性白血病を含む。AMLのサブタイプは、例えば、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄芽球性白血病及び急性巨核芽球白血病を含む。様々な種類のリンパ腫の例として、HL(4つのサブタイプ)及び非ホジキン・リンパ腫(例えば、例えば小さいリンパ性リンパ腫(SLL)、拡散大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、小胞リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、毛様細胞白血病(HCL)、周辺帯リンパ腫(MZL)、バーキットリンパ腫(BL)、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、T−細胞プロ・リンパ性白血病(T−PLL)、B−細胞プロ・リンパ性白血病(B−PLL)、Waldenstrmのマクログロブリン血症(別名リンパ形質細胞性リンパ腫))、そして、他のNK細胞又はT細胞リンパ腫が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0049】
用語「分析物」には、目的の任意の分子、典型的にはその存在、量、及び/又は同一性が決定されるポリペプチドなどの高分子が含まれる。所定の場合には、分析物は、例えば、HER2(ErbB2)シグナル伝達経路の成分などのシグナル伝達分子である。特定の例において、分析物は、ガン細胞(好ましくは発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子)の細胞構成要素である。
【0050】
用語「変換」又は「変換する」は、本明細書で定義されるように、分析物を抽出するか、又は分析物を変化若しくは修正するための、分析物又はサンプルの物理的な及び/又は化学変化を含む。本明細書で使用しているように、分析物のレベル、濃度又は活性化状態を測定するための、分析物又はサンプルの抽出、操作、化学沈殿、ELISA、複合体形成、免疫抽出、物理学的又は化学的な改変すべては、変換を構成する。言い換えれば、分析物又はサンプルが変換ステップの前後で同一でない限り、変化又は改変は変換である。
【0051】
本明細書で使用する用語「希釈系列」は、特定の試料(例えば、細胞溶解物)又は試薬(例えば、抗体)の一連の減少する濃度を含むことを意図する。希釈系列は、典型的には、測定された量の出発濃度の試料又は試薬を希釈液(例えば、希釈バッファ)と混合して低濃度の試料又は試薬を作成するプロセスと、所望の数の連続希釈液を得るために充分な回数にわたり前記プロセスを繰り返す工程によって生成される。試料又は試薬を、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、500、又は1,000倍に連続的に希釈して、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、又は50の減少濃度の試料又は試薬を含む希釈系列を生成することができる。例えば、出発濃度1mg/mLの捕捉抗体試薬の2倍連続希釈を含む希釈系列は、或る量の前記出発濃度の捕捉抗体を等量の希釈バッファと混合して0.5mg/mL濃度の捕捉抗体を作成することと、該プロセスを繰り返して0.25mg/mL、0.125mg/mL、0.0625mg/mL、0.0325mg/mLなどの捕捉抗体濃度を得ることによって生成することができる。
【0052】
本明細書で使用する用語「優れたダイナミックレンジ」とは、1個という少ない細胞内又は数千個という多数の細胞内で特異的分析物を検出するアッセイの能力を意味する。例えば、本明細書に記載したイムノアッセイは、有利には希釈系列の捕捉抗体濃度を用いて約1〜10,000細胞(例えば、約1、5、10、25、50、75、100、250、500、750、1,000、2,500、5,000、7,500、若しくは10,000細胞)中で目的の特定シグナル伝達分子を検出するので、優れたダイナミックレンジを有する。
【0053】
「融合タンパク質」又は「キメラタンパク質」という用語は、最初は別々のタンパク質をコードする2つ以上の遺伝子を接合することによってつくられるタンパク質を含む。染色体移動によって、1つの遺伝子の末端エキソンを、第2の遺伝子からのそのままのエキソンに置き換える際に、この種の遺伝子融合は典型的に発生する。これは、機能的な融合タンパク質を生産するために、転写され、スプライシングされ、翻訳されることが可能な単一の遺伝子をつくる。発癌性融合タンパク質の例としては、BCR−ABL,DEKCAN,E2A−PBX1、RARα−PML、IREL−URG、CBFβ−MYH11、AML1−MTG8、EWS−FLI、LYT−10−Cα1、HRX−ENL、HRX−AF4、NPM−ALK、IGH−MYC、RUNX1−ETO、TEL−TRKC、TEL−AML1、MLL−AF4、TCR−RBTN2、COL1A1−PDGF、E2A−HLF、PAX3−FKHR、ETV6−NTRK3、RET−PTC、TMRSS−ERG、及びTPR−METが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0054】
用語「シグナル伝達分子」又は「シグナル伝達物質」は、それにより細胞が細胞外シグナル又は刺激を応答に転換するプロセスであって、典型的には細胞の内部での順序付けられた生化学反応の順序を含むプロセスを実施するタンパク質及び他の分子を含む。シグナル伝達分子の例として、受容体チロシンキナーゼ、例えば、EGFR(例えば、EGFR/HER1/ErbB1、HER2/Neu/ErbB2、HER3/ErbB3、HER4/ErbB4)、VEGFR1/FLT1、VEGFR2/FLK1/KDR、VEGFR3/FLT4、FLT3/FLK2、PDGFR(例えば、PDGFRA、PDGFRB)、c−MET、c−KIT/SCFR、INSR(インスリン受容体)、IGF−IR、IGF−IIR、IRR(インスリン受容体関連受容体)、CSF−1R、FGFR1−4、HGFR1−2、CCK4、TRK A−C、MET、RON、EPHA1−8、EPHB1−6、AXL、MER、TYRO3、TIE1−2、TEK、RYK、DDR1−2、RET、c−ROS、V−カドヘリン、LTK(白血球チロシンキナーゼ)、ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)、ROR1−2、MUSK、AATYK1−3、RTK106、及び;受容体チロシンキナーゼの切断形、例えば、p95ErbB2;非受容体チロシンキナーゼ、例えば、Src、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、Ack、及びLIMK;チロシンキナーゼシグナル伝達カスケード成分、例えば、AKT、MAPK/ERK、MEK、RAF、PLA2、MEKK、JNKK、JNK、p38、Shc(p66)、Ras(例えば、K−Ras、N−Ras、H−Ras)、Rho、Rac1、Cdc42、PLC、PKC、p70S6キナーゼ、p53、サイクリンD1、STAT1、STAT3、PIP2、PIP3、PDK、mTOR、BAD、p21、p27、ROCK、IP3、TSP−1、NOS、PTEN、RSK1−3、JNK、c−Jun、Rb、CREB、Ki67、及びパキシリン;核ホルモン受容体、例えば、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、アンドロゲン受容体、グルココルチコイド受容体、鉱質コルチコイド受容体、ビタミンA受容体、ビタミンD受容体、レチノイド受容体、甲状腺ホルモン受容体、及びオーファン受容体;核受容体コアクチベーター及びリプレッサー;並びにそれらの組み合わせを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0055】
本明細書で使用する用語「試料」は、患者から得られる任意の生物学的検体を含む。試料として、限定的でなく、全血、血漿、血清、乳管洗浄液、乳頭吸引液、リンパ液(例えば、リンパ節の播種性腫瘍細胞)、骨髄吸引液、唾液、尿、便(すなわち大便)、痰、気管支洗浄液、涙液、微細針吸引液(例えば、乳輪周囲の無作為微細針吸引により採取)、任意の他の体液、腫瘍の生検(例えば、針生検)又はリンパ節の生検(例えば、センチネルリンパ節生検)などの組織試料(例えば、腫瘍組織)、並びにそれらの細胞抽出物を挙げることができる。或る実施形態において、試料は、全血又は血漿、血清、赤血球、白血球(例えば末梢血単核細胞)及び/又は希少循環細胞などの全血の分画成分である。特定の実施形態において、当業者に公知である任意の技術を用いて全血又はその細胞分画から固形腫瘍の白血球又は循環細胞を単離することによって試料を入手する。他の実施形態において、試料は、例えば、固形腫瘍由来の、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織試料である。
【0056】
本明細書で使用する用語「循環細胞」は、固形腫瘍から転移した又は微小転移したいずれかである腫瘍外細胞を含む。循環細胞の例として、循環腫瘍細胞、癌幹細胞、及び/又は腫瘍へ移動中である細胞(例えば、循環内皮前駆細胞、循環内皮細胞、循環前血管新生骨髄性細胞、循環樹状細胞など)を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0057】
「生検」は、診断的又は予後診断的評価のために組織試料を取り出す工程及び組織検体自体を意味する。当分野において公知の任意の生検技術を、本発明の方法及び組成物に適用することができる。適用される生検技術は、一般には、他の因子の中でも特に、評価すべき組織タイプ並びに腫瘍の大きさ及びタイプ(すなわち、固形又は浮遊型(すなわち、血液又は腹水))に依存するであろう。代表的な生検技術には、切除生検、切開生検、針生検(例えば、コア針生検、微細針吸引生検など)、外科生検、及び骨髄生検が含まれる。生検技術は、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine,Kasper, et al, eds., 16th ed., 2005, Chapter 70及びPart V全体において考察されている。当業者であれば、所定の組織試料中で癌性及び/又は前癌性細胞を同定するために生検技術を実施できることを理解されよう。
【0058】
用語「被験者」又は「患者」又は「個人」は、典型的にはヒトを含むが、例えば、他の霊長類、齧歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタなどの他の動物も含むことができる。
【0059】
「アレイ」又は「マイクロアレイ」は、例えば、ガラス(例えば、ガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ(例えば、磁気ビーズ、ポリスチレンビーズなど)、紙、膜(例えば、ナイロン、ニトロセルロース、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)、繊維束、又は任意の他の適切な基材などの固体支持体上に固定化又は拘束された(restrained)個別のセット及び/又は希釈系列の捕捉抗体を含む。捕捉抗体は、一般に共有又は非共有相互作用(例えば、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、双極子間結合)を介して固体支持体上に固定化又は拘束される。所定の場合には、捕捉抗体は、固体支持体に結合した捕捉剤と相互作用する捕捉タグを含む。本発明によるアッセイにおいて使用されるアレイは、典型的には、異なる既知/アドレス可能な場所において固体支持体の表面に結合している複数の異なる捕捉抗体及び/又は捕捉抗体濃度を含む。
【0060】
用語「捕捉抗体」は、白血球又は希少循環細胞の細胞抽出物などの試料中の目的の分析物1種又は2種以上に特異的である(すなわち、結合し、それによって結合され、又は一緒に複合体を形成する)固定化された抗体を含むことを意図している。好ましい実施形態において、捕捉抗体は、アレイ内の固体支持体上に拘束される。固体支持体上で様々な発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子のいずれかを固定化するのに適切な捕捉抗体は、Upstate社(カリフォルニア州テメキュラ)、Biosource社(カリフォルニア州カマリロ)、CellSignaling Technologies社(マサチューセッツ州ダンバーズ)、R&D Systems社(ミネソタ州ミネアポリス)、Lab Vision社(カリフォルニア州フレモント)、SantaCruz Biotechnology社(カリフォルニア州サンタクルーズ)、Sigma社(ミズーリ州セントルイス)、及びBD Biosciences社(カリフォルニア州サンノゼ)から入手することができる。
【0061】
本明細書で使用する用語「検出抗体」は、試料中の目的の分析物1種又は2種以上に特異的である(すなわち、結合し、それによって結合され、又は一緒に複合体を形成する)検出可能な標識を含む抗体を含む。この用語は、目的の分析物1種又は2種以上に特異的である抗体を含み、該抗体を検出可能な標識を含む別の種に結合させることができる。検出可能な標識の例として、ビオチン/ストレプトアビジン標識、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)標識、化学的反応性の標識、蛍光標識、酵素標識、放射活性標識、及びそれらの組み合わせを挙げることができるがそれらに限定されない。様々なシグナル伝達分子のいずれかの活性化状態及び/又は全量を検出するのに適切な検出抗体は、Upstate社(カリフォルニア州テメキュラ)、Biosource社(カリフォルニア州カマリロ)、CellSignaling Technologies社(マサチューセッツ州ダンバーズ)、R&D Systems社(ミネソタ州ミネアポリス)、Lab Vision社(カリフォルニア州フレモント)、SantaCruz Biotechnolgy社(カリフォルニア州サンタクルーズ)、Sigma社(ミズーリ州セントルイス)、及びBD Biosciences社(カリフォルニア州サンノゼ)から入手することができる。限定的でない例として、EGFR、c−KIT、c−Src、FLK−1、PDGFRA、PDGFRB、AKT、MAPK、PTEN、Raf、及びMEKなどのシグナル伝達分子の様々なリン酸化形に対するリン特異的抗体は、SantaCruz Biotechnology社から入手することができる。
【0062】
用語「活性化状態依存性抗体」は、試料中の目的の分析物1種又は2種以上の特定の活性化状態に特異的である(すなわち、結合し、それによって結合され、又は一緒に複合体を形成する)検出抗体を含む。好ましい実施形態において、活性化状態依存性抗体は、発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子1種又は2種以上などの分析物1種又は2種以上のリン酸化、ユビキチン化、及び/又は複合体形成状態を検出する。いくつかの実施形態では、BCR−ABL融合タンパク質のABLキナーゼ領域のリン酸化は、活性化状態依存性抗体を使用して検出される。他の実施形態において、受容体チロシンキナーゼのEGFRファミリーのメンバーのリン酸化及び/又はEGFRファミリーメンバー間のヘテロ二量体複合体の形成を、活性化状態依存性抗体を用いて検出する。
【0063】
活性化状態依存性抗体を有する検出に適している発癌性融合タンパク質の活性化状態の限定的でない例として、BCR−ABL、DEK−CAN、E2A−PBX1、RARα−PML、IREL−URG、CBFβ−MYH11、AML1−MTG8、EWS−FLI、LYT−10−Cα1、HRX−ENL、HRX−AF4、NPM−ALK、IGH−MYC、RUNX1−ETO、TEL−TRKC、TEL−AML1、MLL−AF4、TCR−RBTN2、COL1A1−PDGF、E2A−HLF、PAX3−FKHR、ETV6−NTRK3、RET−PTC、TMRSS−ERG、及びTPR−METのリン酸化形が挙げられる。活性化状態依存性抗体を有する検出に適しているシグナル伝達分子の活性化状態の限定的でない例(括弧内にリストされる)として、EGFR(EGFRvIII、phosphorylated(p−)EGFR、EGFR:Shc、ubiquitinated(u−)EGFR、p−EGFRvIII);ErbB2(p95:truncated(Tr)−ErbB2、p−ErbB2、p95:Tr−p−ErbB2、HER−2:Shc、ErbB2:PI3K、ErbB2:EGFR、ErbB2:ErbB3、ErbB2:ErbB4);ErbB3(p−ErbB3、ErbB3:PI3K、p−ErbB3:PI3K、ErbB3:Shc);ErbB4(p−ErbB4、ErbB4:Shc);c−Met(p−c−Met又はc−Met/HGF complex)、ER(p−ER(S118、S167);IGF−1R(p−IGF−1R、IGF−1R:IRS、IRS:PI3K、p−IRS、IGF−1R:PI3K);INSR(p−INSR);KIT(p−KIT);FLT3(p−FLT3);HGFRI(p−HGFRI);HGFR2(p−HGFR2);RET(p−RET);PDGFRa(p−PDGFRa);PDGFRP(p−PDGFRP);VEGFRI(p−VEGFRI、VEGFRI:PLCg、VEGFR1:Src);VEGFR2(p−VEGFR2、VEGFR2:PLCy、VEGFR2:Src、VEGFR2:heparin sulfate、VEGFR2:VE−cadherin);VEGFR3(p−VEGFR3);FGFR1(p−FGFR1);FGFR2(p−FGFR2);FGFR3(p−FGFR3);FGFR4(p−FGFR4);Tie1(p−Tie1);Tie2(p−Tie2);EphA(p−EphA);EphB(p−EphB);NFKB及び/又はIKB(p−IK(S32)、p−NFKB(S536)、p−P65:IKBa);Akt(p−Akt(T308、S473));PTEN(p−PTEN);Bad(p−Bad(S112、S136)、Bad:14−3−3);mTor(p−mTor(S2448));p70S6K(p−p70S6K(T229、T389));Mek(p−Mek(S217、S221));Erk(p−Erk(T202、Y204));Rsk−1(p−Rsk−1(T357、S363));Jnk(p−Jnk(T183、Y185));P38(p−P38(T180、Y182));Stat3(p−Stat−3(Y705、S727));Fak(p−Fak(Y576));Rb(p−Rb(S249、T252、S780));Ki67;p53(p−p53(S392、S20));CREB(p−CREB(S133));c−Jun(p−c−Jun(S63));cSrc(p−cSrc(Y416));及びpaxillin(p−paxillin(Y118))が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0064】
用語「活性化状態非依存性抗体」は、それらの活性化状態とは無関係に試料中の目的の分析物1種又は2種以上に特異的である(すなわち、結合し、それによって結合され、又は一緒に複合体を形成する)検出抗体を含む。例えば、活性化状態非依存性抗体は、例えばシグナル伝達分子1種又は2種以上などの分析物1種又は2種以上のリン酸化形及び非リン酸化形の両方を検出することができる。
【0065】
用語「核酸」又は「ポリヌクレオチド」は、例えば、DNA及びRNAなどの一本鎖形又は二本鎖形のいずれかにあるデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそれらのポリマーを含む。核酸には、合成、天然型、及び非天然型である、並びに参照核酸と同様の結合特性を有する、公知のヌクレオチドアナログ又は修飾バックボーン残基若しくは結合を含有する核酸が含まれる。このようなアナログの例として、限定的でなく、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2’−O−メチルリボヌクレオチド、及びペプチド−核酸(PNA)を挙げることができる。特に限定しない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有する天然ヌクレオチドの公知のアナログを含有する核酸を包含する。他に特に規定しない限り、特定の核酸配列はまた、保存的に修飾されたそれらの変異体及び相補的配列を黙示的に並びに指示された配列を明示的に含む。
【0066】
用語「オリゴヌクレオチド」は、RNA、DNA、RNA/DNAハイブリッド、及び/又はそれらの模倣剤の、一本鎖オリゴマー若しくはポリマーを意味する。所定の場合に、オリゴヌクレオチドは、天然型(すなわち、未修飾)核酸塩基、糖、及びインターヌクレオシド(バックボーン)結合から構成される。所定の他の場合には、オリゴヌクレオチドは、修飾された核酸塩基、糖、及び/又はインターヌクレオシド結合を含む。
【0067】
本明細書で使用する用語「ミスマッチモチーフ」若しくは「ミスマッチ領域」は、その相補的配列に対して100%相補性を有していないオリゴヌクレオチドの一部分を意味する。オリゴヌクレオチドは、少なくとも1、2、3、4、5、6、又は7以上のミスマッチ領域を有していることができる。ミスマッチ領域は隣接していることができ、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13以上のヌクレオチドによって分離されていることができる。ミスマッチモチーフ又は領域は、単一のヌクレオチドを含んでいることができ、又は2、3、4、5、又は6以上のヌクレオチドを含んでいることができる。
【0068】
語句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、オリゴヌクレオチドがその相補性配列にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件を意味する。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、異なる状況では異なるであろう。長い配列は、詳細には高温でハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する広汎なガイドは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and MolecularBiology--Hybridization with Nucleic Probes,“Overview ofprinciples of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)に見出される。一般に、規定のイオン強度pHで特異的配列に対して熱融点(Tm)より約5〜10℃低くなるようにストリンジェントな条件を選択する。Tmは、標的に相補的であるプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度(規定のイオン強度、pH、及び核酸濃度下で)である(標的配列が過剰に存在するとき、Tmにおいて、プローブの50%は平衡状態で占められる)。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によって達成することもできる。選択的又は特異的ハイブリダイゼーションに対して、陽性シグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。
【0069】
用語「実質的に同一」又は「実質的同一性」は、核酸が2種又は3種以上のある状況において、配列比較アルゴリズムを用いて又は手動アラインメント及び目視検査によって測定されるように比較窓若しくは指定領域にわたって最大対応について比較及びアライメントした場合に、同一であるか又は同一であると規定されるパーセンテージのヌクレオチド(すなわち、規定領域にわたって少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%の同一性)を有する2種又は3種以上の配列又はサブシーケンスを意味する。この定義は、その状況が示す場合は、配列の補体(complement)も意味する。好ましくは、実質的同一性は、長さが少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、又は100ヌクレオチドである領域にわたって存在する。
【0070】
用語「チロシンキナーゼ阻害剤」は、選択的若しくは非選択的阻害剤である受容体及び/又は非受容体チロシンキナーゼとして作用する様々な治療剤又は薬剤のいずれかを含む。いかなる特定の理論にも縛られずに、チロシンキナーゼ阻害剤は、酵素のATP−結合部位と結合することによって、一般に標的チロシンキナーゼを阻害する。チロシンキナーゼ阻害剤の例として、イマチニブ(Gleevec(商標);STI571)、ニロチニブ(Tasigna(商標))、ダサチニブ(Sprycel(商標))、ボスチニブ(SKI−606)、ゲフィチニブ(Iressa(商標))、スニチニブ(Sutent(商標);SU11248)、エルロチニブ(Tarceva(商標);OSI−1774)、ラパチニブ(GW572016;GW2016)、カネルチニブ(CI1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY43−9006)、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ(Zactima(商品名);ZD6474)、それらの誘導剤、それらのアナログ、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。本発明の使用に適している追加のチロシンキナーゼ阻害剤は、例えば、米国特許番号5,618,829、5,639,757、5,728,868、5,804,396、6,100,254、6,127,374、6,245,759、6,306,874、6,313,138、6,316,444、6,329,380、6,344,459、6,420,382、6,479,512、6,498,165、6,544,988、6,562,818、6,586,423、6,586,424、6,740,665、6,794,393、6,875,767、6,927,293及び6,958,340に記載されている。当業者は、本発明の使用に適している他のチロシンキナーゼ阻害剤を知っているだろう。所定の場合には、チロシンキナーゼ阻害剤は、限定的でなく、アルカリ又はアルカリ土類金属塩(例えばアルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム又は亜鉛塩;アンモニウム塩(例えば三級アミン又は4原子のアンモニウム塩);そして、酸性塩(例えばコハク酸塩、歯石酸塩、双歯石酸塩、二塩化水素化物、サリチル酸塩、ヘミスクシネート、クエン酸塩、イソ・クエン酸塩、リンゴ酸塩、マレアート、メシラート、塩酸塩、ハイドロ臭化物、リン酸塩、酢酸塩、カルバミン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、グルクロン酸で、グルコン酸塩)ピルビン酸塩、オキサル酢酸塩、フマル酸エステル、プロピオン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩又はベンゾアート塩を含む、薬学的に許容することのできる形態で投与される。
【0071】
用語「インキュベートする」は、「接触させる」及び「曝露させる」と同義的に使用され、他に規定しない限り任意の特定の時間又は温度要件を意味しない。
【0072】
用語「完全な細胞遺伝学的な反応」、「完全な細胞遺伝学的な寛解」、「CCyR」及び「CCgR」は、骨髄から単離される細胞の染色体分染法によって定められ、中期の少なくとも20の細胞の集団における、中期のフィラデルフィア染色体陽性細胞の欠如であると定められる臨床的に認められた基準を含む。骨髄から単離される中期細胞を染色体分染法によって得ることができないか又は評価することができない所定の場合には、用語は、血液細胞の間期蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)によって決定されるように、記録される少なくとも200の核の存在から1%未満のBCR−ABL陽核の存在として定義することができる。間期FISHは、例えば、BCR−ABL外部信号、二重色、二重融合、又は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーションプローブによって実行することができる。これらの用語の追加の説明については、O’Brienら, N. Engl.J. Med., 348:994-1004 (2003); Hughes et al., N. Eng.l J. Med., 349:1423-1432(2003); 及びBacaraniら, J. Clin.Oncol., 27:6041-6051 (2009)を参照。
【0073】
「大きな分子反応」、「大きな分子寛解」又は「MMR」は、発癌性融合タンパク質、例えばBCR−ABLのレベルが、1以上の対照タンパク質レベル、例えば全長BCR及び/又は全長ABLに対して、少なくとも約2−3ログ(log)に減少する場合に、達成される。或る実施形態では、大きな分子反応は、抗ガン剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)療法での、対照タンパク質レベル(例えば、BCR又はABLレベル)に対する発癌性融合タンパク質レベル(例えば、BCR−ABLレベル)の比が、抗ガン剤治療の前の同じタンパク質の比と比べて、少なくとも約2−3ログ(log)に低下する場合に達成される。mRNA転写レベルの検出に依存する大きな分子反応の定義とは対照的に、本発明の抗体に基づく近接二重検出アッセイは、健常なドナーから約100,000の細胞のバックグラウンド中の1つの癌(例えば、CML)細胞を検出する能力を有利に提供する。それによって、BCR−ABL、BCR及び/又はABLタンパク質レベルを測定して、比較することによって大きな分子反応の決定を可能にする。他の実施態様において、大きな分子反応は、ABL又はBCRのmRNA転写レベルのパーセンテージとして表されるABL又はBCRのmRNAいずれかに対する、BCR−ABLのmRNA転写の比において、対数目盛スケール(10を底とする)での標準化されたベースラインスケールより下に少なくとも3ログの減少としても定義される臨床分類である。特定の例において、mRNA反訳記録のレベルは、リアルタイム定量的RT−PCR(qPCR)方法を使用して決定される。所定の場合には、更なる実施形態において、大きな分子反応は、ABL、BCR又は対照mRNA転写に対するBCR−ABLの比が、国際的なスケール(IS)に関する0.1%未満であるとして定められる値とすべきqPCRで決定される場合を条件とする。ISは、インターフェロン対STI571(IRIS)臨床研究のインターナショナルRandomized Studyの参加している研究室によって確立されるログ減少スケールに固定される。例えば、Hughesら, N. Engl. J. Med., 349:1423-1432(2003); Hughesら, Blood, 108:28-37 (2006), Brandら, Blood, 112:3330-3338 (2008); 及び Baccaraniら, J. Clin. Oncol., 27:6041-6051 (2009)を参照。
【0074】
「完全な分子反応」、「完全な分子寛解」又は「CMR」は、発癌性融合タンパク質、例えば、BCR−ABLのレベルが、1以上の対照タンパク質レベル(例えば全長BCR及び/又は全長ABL)に対して、少なくとも約3−4ログに減少する場合に、達成される。或る実施形態では、完全な分子反応は、抗ガン剤治療中での対照タンパク質レベル(例えば、BCR又はABLレベル)に対する発癌性融合タンパク質レベル(例えば、BCR−ABLレベル)の比が、抗ガン剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)療法の前の同じタンパク質の比に対して、少なくとも約3−4のログに低下する場合に、達成される。mRNA転写レベルの検出に依存する完全な分子反応の定義とは対照的に、本発明の抗体に基づく近接二重検出アッセイは、健常なドナーから約100,000の細胞のバックグラウンド中の1つの癌(例えば、CML)細胞を検出する能力を有利に提供する。それによって、BCR−ABL、BCR及び/又はABLタンパク質レベルを測定して、比較することによって大きな分子反応の決定を可能にする。他の実施態様において、完全な分子反応は、BCR−ABLのmRNA転写が、BCR−ABLのmRNAレベル中で4.0−4.5ログ低下を検出する能力を確実にするような十分な品質の少なくとも2つの連続的な血液サンプルのqPCR及び/又はネストPCRによって検出不可能な、臨床分類である。所定の場合には、完全な分子反応は、パーセンテージとして表されるABL、BCR又は対照mRNA転写に対するBCR−ABLの比において、対数目盛スケールでの標準化されたベースライン値より下の少なくとも4.5−ログの減少として定義することができる。例えば、 Pressら, Blood, 107:4250-4256 (2006); Mullerら, Leukemia., 23:1957-1963 (2009); 及び Baccaraniら, J. Clin. Oncol., 27:6041-6051 (2009)を参照。
【0075】
用語「治療過程」は、癌、例えば血液悪性腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫、その他))と関連する1以上の症状を緩和するか又は予防するためにとられるいかなる療法アプローチを含む。用語は、癌をもつ個人の健康を増進することに有用ないかなる化合物、薬剤、手順及び/又はレジメンを投与することを包含し、そして本明細書において記載されている治療剤のいずれかを含む。治療過程又は現在の治療過程の用量のいずれかを、本発明の方法を使用することで決定される1つ以上の発癌性融合タンパク質及び/又はシグナル伝達分子の発現及び/又は活性レベルに基づいて変えることができる(例えば、増加するか、又は減少する)ことを、当業者は理解するであろう。
【0076】
III.実施形態の説明
本発明は、生体サンプル、例えば細胞抽出物又は溶解物中の1以上の発癌性融合タンパク質及び/又はシグナル伝達分子についての活性化状態及び/又は総量を検出するための抗体に基づくアレイを提供する。本発明は、癌の予後及び診断、薬物治療に対する耐性についての予測又は同定、並びに各個人の標的化療法を容易にするためのこのようなアレイを使用する方法も提供する。特定の実施形態において、本発明の組成物及び方法は、有利なことに、標的プロテインキナーゼ(例えば、BCR−ABL)の突然変異、療法レジメンを有するノンコンプライアンス、及び/又は最適以下の薬剤用量投与のせいで、チロシンキナーゼ阻害剤、例えばイマチニブを用いる治療に耐性する患者を同定する。
【0077】
ある特定の実施形態では、本発明は、BCR−ABLの発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)のレベル、それらの基板、及び/又は生体サンプル(例えば、細胞抽出物又は溶解物)の他のシグナル伝達分子についてのリアルタイム検出用のアッセイ、例えば、イムノアッセイを提供する。このように、本発明は、有利なことに、治療過程の全体にわたってそれらをスクリーニング及びモニタリングすることによって、並びに、軽微な毒性を有する標的分子(例えば、BCR−ABL)を効果的に阻害するために、それらを代替標的療法、例えばnilotinib(Tasigna(商標))に移動しなければならないかどうか評価を評価することによって1以上の標的療法を受け入れている、血液悪性腫瘍、例えばCMLを有する患者に利益を提供する。
【0078】
或る実施形態では、本発明は、発癌性融合タンパク質、例えばBCR−ABL検出用の優れた感度範囲を有する方法を提供する。細胞抽出物中のBCR−ABLタンパク質を検出するための現在のイムノアッセイは、一般には、10−0.001%の検出感度に等しい、10−100,000の通常細胞中の1つのBCR−ABL陽性の白血病細胞を検出することができる(例えば、Jilaniら, Leuk. Res., 32:936-943 (2008);Weerkampら, Leukemia, 23:1106-1117 (2009); Raponiら, Haematologica, 94:1767-1770 (2009); 及びU.S.Patent Publication No. US 2006/0172345を参照)。本明細書において記載されている近接アッセイは、有利なことに、約1:100,000−10,000,000細胞(すなわち、100,000−10,000,000通常細胞に対して1つの白血病細胞;約0.001−0.00001%の検出感度に相当する)、又は約1:1,000,000−10,000,000細胞(すなわち、1,000,000−10,000,000通常細胞に対して1つの白血病細胞;約0.0001−0.00001%の検出感度に相当する)に増加した感度を示し、そして、例えば、約1:100,000細胞、1:200,000細胞、1:300,000細胞、1:400,000細胞、1:500,000細胞、1:600,000細胞、1:700,000細胞、1:800,000細胞、1:900,000細胞、1:1,000,000細胞、1:2,000,000細胞、1:3,000,000細胞、1:4,000,000細胞、1:5,000,000細胞、1:6,000,000細胞、1:7,000,000細胞、1:8,000,000細胞、1:9,000,000細胞、1:10,000,000細胞、1:100,000−500,000細胞、1:100,000−1,000,000細胞、1:500,000−1,000,000細胞、1:100,000−5,000,000細胞、1:500,000−10,000,000細胞、1:2,000,000−10,000,000細胞、1:5,000,000−10,000,000細胞、1:1,000,000−7,500,000細胞、1:1,000,000−5,000,000細胞、及びその中の他のいかなる範囲を含む。本明細書において記載されている方法の感度は、標準核酸ベースのBCR−ABLアッセイ(例えば、qPCR又はネスト化したPCR)の感度(10,000−1,000,000通常細胞中に1つの白血病細胞の検出範囲内に入る)と同程度か、又は上回ることもできる。核酸ベースのBCR−ABLアッセイの感度範囲の追加の説明については、例えば、Pressら, Blood, 107:4250-4256 (2006)及びRadish JP, Blood, 114:3376-3381 (2009)を参照。
【0079】
特定の実施形態において、本発明の抗体に基づく近接アッセイは、有利なことに、BCR−ABLを検出するための現在のイムノアッセイ及び核酸ベースのアッセイと比較して、発癌性融合タンパク質、例えばBCR−ABLの存在、レベル、及び/又は活性化状態を検出するためのより高度な感度及び/又は特異性を可能にする。これによって、反応インジケータ、例えば、完全な細胞遺伝学的な反応、大きな分子反応、完全な分子反応及びそれらの組み合わせについてのより正確な決定を提供する。限定的でない例として、現在の核酸ベースのアッセイは、患者試料中の超微量のBCR−ABL転写を検出するには感度が十分高くないので、現在の核酸ベースのアッセイを使用している完全な分子反応による決定は、患者が治っており、そしてBCR−ABL介在性疾患(例えば、CML)にもはやかかっていないことを必ずしも意味するわけではない。
【0080】
1つの観点では、本発明は、発癌性融合タンパク質のレベル又は活性化状態を決定する方法であって、前記方法は、以下の工程を含む:
(a)細胞抽出物中に存在する第1の全長タンパク質を、前記第1全長タンパク質と第1結合成分とを含む複合体に変換するのに適した条件下で、前記細胞抽出物を、前記第1全長タンパク質の第1ドメインに特異的な前記第1結合成分と接触させる工程であって、前記の第1全長タンパク質の第1ドメインは、第2の異なる全長タンパク質の第1ドメインに融合する前記第1全長タンパク質の第2の異なるドメインを含む対応する発癌性融合タンパク質に存在しない、前記工程;
(b)前記細胞抽出物から工程(a)からの前記複合体を除去し、前記第1全長タンパク質を含まない細胞抽出物を形成する工程;
(c)前記細胞抽出物中に存在する前記発癌性融合タンパク質を、前記発癌性融合タンパク質と第2結合成分とを含む複合体に変換するのに適した条件下で、工程(b)からの前記細胞抽出物を、前記第1全長タンパク質の前記第2の異なるドメインに特異的な前記第2結合成分と接触させる工程;及び
(d)工程(c)からの前記複合体のレベル又は活性化状態を決定し、それによって前記発癌性融合タンパク質のレベル又は活性化状態を決定する工程を提供する。
【0081】
1つの実施形態において、細胞抽出物は、試料から単離される細胞からの抽出物を含む。所定の場合には、試料は、全血、血清、血漿、微細針吸引液(FNA)、尿、痰、気管支洗浄液、涙液、乳頭吸引液、リンパ液、唾液及びそれらの組み合わせから選択される。別の実施形態において、試料は、癌を有する患者から得られる。所定の場合には、癌は、癌細胞の染色体移動のせいで、発癌性融合タンパク質の形成によって生じる場合がある。このような癌の例として、血液悪性腫瘍、骨原性肉種、軟部組織肉腫及びそれらの組み合わせを挙げることができるがそれらに限定されない。特定の実施形態において、血液悪性腫瘍は、白血病又はリンパ腫である。1つの好ましい実施形態において、白血病は、慢性骨髄性白血病(CML)である。別の実施形態において、単離された細胞(細胞抽出物又は溶解物を、その単離された細胞から調製する)は、循環腫瘍細胞、白血球又はそれらの組み合わせを含むことができる。或る実施形態において、単離された細胞は、成長因子によってインビトロで刺激される。ある場合には、単離された細胞は、成長因子の刺激の前に抗ガン剤とインキュベートされる。他の場合には、単離された細胞は、細胞抜粋を生成するために、成長因子刺激の後溶解する。
【0082】
或る実施形態において、細胞抽出物は、収集した直後か冷凍された骨髄又は全血試料から調製される。限定的でない例として、抗凝固剤(例えば、EDTA、ヘパリン及び/又は酸性クエン酸ブドウ糖(ACD))で処理された全血試料は、血漿又は血清分画及び細胞分画に最初に分離される。細胞分画を、塩化アンモニウムで赤血球の低張性溶解及び/又はFicoll-HyPaque密度−勾配遠心分離によって処理し、白血球を血液サンプルから分離することができる。細胞分画に存在する単離された細胞を溶解し、これによって、公知技術(例えば、Raponiet al., Leuk Res, 32:923-43 (2008); Weerkampet al., Leukemia, 23:1106-1117(2009); 及びU.S. Patent Nos. 6,610,498及び6,686,165)で、単離された細胞を細胞抽出物に変えることができる。
【0083】
ある場合には、単離された白血球は、溶解の前に一つ以上の細胞透過性プロテアーゼ阻害剤で処理することができる。細胞透過性プロテアーゼ阻害剤としては、ジイソプロピルフルオロホスフェート[(DFP)、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフッ化物塩酸塩(AEBSF)、フェニルメタンスルホニルフッ化物(PMSF)及びそれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されるものではない。限定的でない例として、単離された白血球を、PBS中の20mMのAEBSF及び1mMのPMSFを含有するバッファ中の氷上で10−30分間インキュベートする。4℃、520gで5分間穏やかに細胞を遠心分離して、上澄み及び単離された白血球を分離する。プロテアーゼ阻害剤を有する単離された白血球の処理は、例えば、Weerkampら, Leukemia, 23:1106-1117 (2009)に記載されている。
【0084】
ある場合には、単離された白血球を、1以上のプロテアーゼ阻害剤を含有するRIPA溶解バッファ中の氷上で最高30分間インキュベートすることができる。RIPAバッファは、50mMのトリスHCl、pH7.5、150mMのNaCl、1%のNP40、及び0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを含むか、又はこれらから本質的になる。或る他の場合には、RIPAバッファは、デオキシコール酸ナトリウムを含まない。培養の後、細胞混合物を、4℃、1〜10分間、18,000g未満で遠心分離して、細胞抽出物及び細胞破片を切り離す。細胞抽出物を採取する。細胞溶解プロトコールの追加の説明については、例えば、Raponi et al., Haematologica, 94:1767-1770 (2009); Weerkamp et al.,Leukemia, 23:1106-1117 (2009);及びU.S. Patent PublicationNo. US 2006/0172345を参照。
【0085】
或る実施形態では、血漿は、1以上の抗凝固剤(例えば、EDTA、ヘパリン又はACD)で収集及び処理される新しい全部の末梢血試料から調製される(例えば、Jilaniら, Leuk. Res., 32:936-943 (2008)に記載されている)。限定的でない例として、血液試料は、血漿又は血清分画及び細胞分画に分離することができる。血漿は、アッセイされるまでか、又は血液試料の収集から96時間以内にアッセイされるまで、70−80℃で保存することができる。
【0086】
或る実施形態では、発癌性融合タンパク質は、BCR−ABL、DEK−CAN、E2A−PBX1、RARα−PML、IREL−URG、CBFβ−MYH11、AML1−MTG8、EWS−FLI、LYT−10−Cα1、HRX−ENL、HRX−AF4、NPM−ALK、IGH−MYC、RUNX1−ETO、TEL−TRKC、TELAML1、MLL−AF4、TCR−RBTN2、COL1A1−PDGF、E2A−HLF、PAX3−FKHR、ETV6−NTRK3、RET−PTC、TMRSS−ERG、TPR−MET、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態において、発癌性融合タンパク質は、BCR−ABLである。ある場合には、第1の全長タンパク質はBCRであり、第1の全長タンパク質の第1ドメインは、BCR(BCR−C)のカルボキシ末端領域を含み、そして、第1の全長タンパク質の第2の異なるドメインは、BCR(BCR−N)のアミノ末端領域を含む。或る他の場合には、第2の異なる全長タンパク質はABLであり、第2の異なる全長タンパク質の第1ドメインは、ABL(ABL−C)のカルボキシ末端領域を含み、そして、第2の異なる全長タンパク質の第2の異なるドメインは、ABL(ABL−N)のアミノ末端領域を含む。1つの別の実施形態において、第1の全長タンパク質はABLであり、そして、第2の異なる全長タンパク質はBCRである。
【0087】
或る実施形態では、活性化状態は、リン酸化状態、ユビキチン化状態、複合体形成状態及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施形態では、発癌性融合タンパク質は、BCR−ABLであり、そして、活性化状態は、リン酸化状態である。
【0088】
他の実施形態において、本発明のアッセイ方法は、1以上のシグナル伝達分子のレベル又は活性化状態を決定することを更に含む。特定の実施形態において、1以上のシグナル伝達分子は、BCR−ABL基板、例えば、CRKL、JAK2、STAT5、Src、FAK、c−ABL、c−CBL、SHC、SHP−2、VAV、BAP−1及びそれらの組み合わせを含む。
【0089】
1つの特定の実施形態では、第1の結合成分は、第1の抗体を含む。或る場合には、第1の抗体は、固体支持体に結合している。固体支持体の限定的ではない例としては、ガラス、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束及びそれらの組み合わせを挙げることができる。好ましい実施形態では、第1の抗体は、ビーズ(例えば、磁気ビーズ、ポリスチレンビーズ等)に結合して、そして、ビーズは、細胞抽出物から第1の全長タンパク質を除去するための減少用タグ(depletion tag)として機能する。
【0090】
別の特定の実施形態において、第2の結合成分は、第2の抗体を含む。或る場合には、第1の抗体は、固体支持体に結合する。固体支持体の限定的でない例としては、ガラス、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束及びそれらの組み合わせを挙げることができる。1つの好ましい実施形態では、第2の抗体は、固体支持体、例えば、アドレス可能なアッセイ中の膜(例えば、ナイロン、ニトロセルロース、PVDFなど)に拘束される。別の実施形態では、第2の抗体はビーズ(例えば、磁気ビーズ、ポリスチレンビーズなど)に結合して、そのビーズは、染料(例えば、フルオロフォア(例えば、着色したビーズ))を任意に含むことができる。複数のビーズを使用する場合において、各ビーズは、独立して選択されたダイ、例えば、異なる強度、又は、異なる励起及び/又は発光スペクトルを有するフルオロフォア(例えば、赤又は赤外線のフルオロフォア)を含むことができる。
【0091】
好ましい実施形態では、本明細書において記載されているように、ステップ(c)及び(d)は近接二重検出アッセイ(別名COllaborative Proximity ImmunoAssay(「COPIA」))を含む。他の実施形態において、本明細書において記載されているように、ステップ(c)及び(d)は酵素結合抗体免疫測定法(ELISA)、フローサイトメトリー測定法又はタグ選別測定法を含む。
【0092】
工程(c)及び(d)が近接二重検出アッセイを含む実施形態では、工程(c)が更に以下の工程を含む:
(c’)前記細胞抽出物中に存在する前記発癌性融合タンパク質を、前記発癌性融合タンパク質と前記の第2、第3及び第4結合成分とを含む複合体に変換するのに適した条件下で、工程(b)からの前記細胞抽出物を、第3結合成分及び第4結合成分と接触させる工程であって、
前記第3結合成分が、促進成分を用いて標識化されており、そして、下記のドメイン又は配列中に存在する1以上のエピトープに特異的であり(例えば、特に結合して):
(i)第2の異なる全長タンパク質の第1ドメイン;
(ii)前記第1全長タンパク質の第2の異なるドメイン;又は
(iii)前記第1全長タンパク質の前記第2の異なるドメインと前記第2の異なる全長タンパク質の前記第1ドメインとの間の融合部位、前記第4結合成分が、シグナル増幅対の第1メンバーを用いて標識化されており、そして前記第2の異なる全長タンパク質の前記第1ドメインに特異的であり、そして前記促進成分が、前記シグナル増幅対の第1メンバーへチャネリングしかつ前記シグナル増幅対の第1メンバーと反応する酸化剤を生成する、前記工程。
【0093】
工程(c)及び(d)が近接二重検出アッセイを含む実施形態では、工程(d)が更に以下の工程を含む:
(d’)工程(c’)からの前記複合体を、前記シグナル増幅対の第2メンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成する工程;及び
前記シグナル増幅対の第1及び第2メンバーから生成される増幅シグナルを検出する工程。
【0094】
或る実施形態では、ステップ(b)からの細胞抽出物は、第2の成分の希釈系列によって接触して、発癌性融合タンパク質及び第2の結合成分から成る複数の複合体を形成することができる。或る実施形態では、それぞれ、第3及び第4の結合成分は、第3及び第4番目の抗体を含むことができる。ある場合には、第3及び第4番の抗体は、活性化状態依存性抗体の両方である。このような場合には、シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから発生する増幅シグナルは、発癌性融合タンパク質の総量と相互に関連する。他の場合において、第3の抗体は活性化状態非依存性抗体であり、そして、第4の抗体は活性化状態依存性抗体である。このような場合には、シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから発生する増幅シグナルは、活性化した(例えば、リン酸化された)発癌性融合タンパク質の量相互に関連する。
【0095】
他の実施形態において、第3の結合成分は、促進成分を用いて直接的に標識化することができる。さらに他の実施形態では、第4の結合成分は、シグナル増幅対の第1のメンバーを用いて直接的に標識化することができる。代わりの実施形態において、第4の結合成分は、第4の結合成分にコンジュゲートされた結合対の第1のメンバーとシグナル増幅対の第1のメンバーにコンジュゲートされた結合対の第2のメンバーとの間の結合を介して、シグナル増幅対の第1のメンバーを用いて標識化される。これらの実施形態では、結合対の第1のメンバーはビオチンであり、及び/又は、結合対の第2のメンバーはストレプトアビジンである。
【0096】
更なる実施形態において、促進成分は、グルコースオキシダーゼである。所定の場合において、グルコースオキシダーゼ及び第3の結合成分は、スルフヒドリル活性化デキストラン分子にコンジュゲートさせる。このような場合には、スルフヒドリル活性化デキストラン分子は、約500kDaの分子量を有する。他の場合において、酸化剤は、過酸化水素(H)である。このような場合には、シグナル増幅対の第1のメンバーは、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)等のペルオキシダーゼであり、及び/又は、シグナル増幅対の第2のメンバーは、例えば、ビオチン−チラミド等のチラミド試薬である。特定の実施形態において、増幅シグナルは、ビオチン−チラミドのペルオキシダーゼ酸化によって発生し、活性化チラミドを生成する。所定の場合において、活性化チラミドは、直接検出される。或る他の場合において、活性化チラミドは、シグナル検出性試薬の添加により検出される。信号検出用試薬の限定的でない例としては、ストレプトアビジン標識化ペルオキシダーゼと、例えば、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)などの発色試薬との組み合わせを挙げることができる。
【0097】
所定の実施形態では、本発明のアッセイ方法は、以下の工程を更に含む:
(e)前記細胞抽出物中に存在する第2の異なる全長タンパク質を、前記第2の異なる全長タンパク質と第5結合成分とを含む複合体に変換するのに適した条件下で、前記細胞抽出物を、前記第2の異なる全長タンパク質の第2ドメインに特異的な前記第5結合成分と接触させる工程であって、前記第2の異なる全長タンパク質の第2ドメインが、前記発癌性融合タンパク質に存在しない、前記工程;及び
(f)前記細胞抽出物から工程(e)からの前記複合体を除去し、前記第2の異なる全長タンパク質を含まない細胞抽出物を形成する工程であって、工程(e)を、工程(a)の前、中、又は後に実施する、前記工程。
【0098】
1つの特定の実施形態では、第5の結合成分は、第5の抗体を含む。或る場合には、第5の抗体は、固体支持体に結合する。固体支持体の限定でない例としては、ガラス、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束及びそれらの組み合わせを含む。好ましい実施形態では、第5の抗体は、ビーズ、例えば、磁気ビーズ、ポリスチレンビーズ等に結合し、そして、ビーズは、細胞抽出物からの第2の異なる全長タンパク質を除去するための減少用タグとして機能する。
【0099】
図3Aは、発癌性融合タンパク質、例えば、BCR−ABL(310)の存在(トータルレベル)及び/又は活性化状態(リン酸化レベル)を検出するための代表的な近接アッセイ(300)を図示する。キメラBCR−ABL遺伝子によってコードされる発癌性融合タンパク質は、BCR遺伝子の切断点に応じて、大きさが変化する。BCR−ABL融合遺伝子は、染色体9の長い腕に位置するABL遺伝子、及び染色体22の長い腕に位置するBCR遺伝子の相互転座によって発生して、染色体22q−(また、フィラデルフィア染色体と呼ばれる)に関する発癌性融合遺伝子をもたらす。例えば、Kurzockら, N. Engl. J. Med. 319:990-8 (1988);Rosenberg et al., Adv. In Virus Res. 35:39-81 (1988)を参照。BCR遺伝子のN末端上にABL遺伝子を転位させる染色体切断点に応じて、BCR−ABL融合遺伝子の異なる長さは、形成される。ABL遺伝子の切断点が、エキソン1bとa2との間のほぼ200kbにわたって分布され、そして、BCR遺伝子の切断点が、3つの領域;エキソン13−15(b2−b4)間の主要な切断点(M−BCR);選択的エキソン1と2(e1及びe2)と間のより小さい切断点(m−BCR);そして、イントロン19(e19)のミクロな切断点(μ−BCR)の中でクラスターされていることを決定する。従って、BCR−ABL遺伝子再配列に応じて、特有なBCLABLタンパク質が形成される。例えば、Konopkaら, Cell 37:1035-42 (1984); vanDongen, JJM, Leukemia 19:1292-5 (2005)を参照。
【0100】
p210 BCR−ABLタンパク質はb3a2(e14a2)及び/又はb2a2(e13a2)遺伝子転写から発生して、CMLケース及びALLのサブセットの95%より大きく検出される。このタンパク質は、1790のアミノ酸を含み、N末端でのBCRからのオリゴマー化ドメイン(OLI)から構成され、そして、BCRからのS/Tキナーゼドメイン、常のBCRに存在しないBCRからのアミノ酸配列の挿入に続き、ABLからのSH3、SH2及びYキナーゼドメイン並びにABLのC末端のプロリンの豊富なドメインに続く。p190 BCR−ABL融合タンパク質は、Ph陽性のALLと主に関係しているe1a2融合遺伝子転写によってコードされる。CMLのまれなケースでは、p190−タイプBCR−ABL遺伝子移動に起因して、これらにおいて、疾患は、慢性骨髄単球の白血病(CMML)に似ている顕著な単球の構成要素を有する傾向がある。p230BCR−ABLタンパク質は、好中球CML、古典的なCML及びAMLと関係するe19a2遺伝子転写から形成される。例えば、Konopkaら, Cell 37:1035-42 (1984); vanDongen, JJM, Leukemia 19:1292-5 (2005)を参照。例外的なCMLケースは、3つの定義したクラスタードメインの外側のBCR切断点で、又は、ABLの普通でない切断点で表される(例えば、Melo, Baillieres Clin. Haematol., 10:203-22 (1997)を参照)。本明細書において記載されている近接アッセイは、BCR遺伝子内における任意の位置で切断点を有するキメラBCR−ABL遺伝子によってコードされるBCR−ABLタンパク質のトータル及び活性化レベルを検出することができる。
【0101】
図3Aにて図示するように、全長BCRタンパク質は、全長BCR(331)のカルボキシ末端領域に特異な減少用タグを用いて、患者試料から最初に除去することができる。このような減少用タグの限定的でない例としては、全長BCRのカルボキシ末端領域に特異的な抗体が取り付けられている(321b)ビーズである。一旦、全長BCRが試料から取り除かれると、BCR(BCR−N)のアミノ末端領域に特異的な捕捉抗体は、BCR−ABL融合タンパク質を捕捉するために用いられる。一旦、BCR−ABLがBCR−NとBCR−Nに特異的な捕捉抗体との間の結合を介して捕捉されると、BCR−ABLの全濃度が決定され(340)、そして、活性化したBCR−ABL(350)も測定される。或る実施形態では、促進成分(例えば、GO)が、ABL(ABL−C)のカルボキシ末端領域に特異的な抗体に結合して、そして、シグナル増幅対(例えば、HRP)の第1部のメンバーはが、促進成分結合抗体によって認識されるものより、異なるエピトープでのABL−Cに特異的な抗体に結合する。特定の場合において、シグナル増幅対結合抗体は、その活性化状態に関係なく、ABL−Cと結合する活性化状態非依存性抗体であり、これによって、BCR−ABL(340)の全濃度を測定する。或る他の場合において、シグナル増幅対結合抗体は、燐酸−ABL−C(例えば、pY245、pY412)に結合する活性化状態依存性抗体であり、これによって、活性化したBCR−ABL(350)の集中を測定する。1つの代わりの実施形態において、促進成分(例えば、GO)は、BCR−ABL捕捉抗体によって認識されるものより、異なるエピトープでのBCR−Nに特異的な抗体に結合して、シグナル増幅対(例えば、HRP)の第1部材は、ABL−Cに特異的な抗体に結合する。本明細書において記載されているように、シグナル増幅対結合抗体は活性化状態非依存性抗体又は活性化状態依存性抗体とすることができる。
【0102】
或る実施形態では、全長ABLタンパク質は、全長ABL(330)のアミノ末端領域に特異的な減少用タグを用いて、BCR−ABL発現及び/又は活性化の捕捉及び検出の前に、患者試料からさらに又は代わりに除去することができる。このような減少用タグの限定的でない例としては、全長ABLのアミノ末端領域に特異的な抗体が結合される(321a)ビーズである。これらの実施形態では、一旦、BCR−ABLが、ABL−CとABL−Cに特異的な捕捉抗体との間の結合を介して捕えられ、BCR−ABLの全濃度が決定され(360)、そして、活性化したBCR−ABL(370)も測定される。いくつかの実施形態では、促進成分(例えば、GO)が、BCR−ABL捕捉抗体によって認識されるものより、異なるエピトープでのABL−Cに特異的な抗体に結合して、シグナル増幅対(例えば、HRP)の第1のメンバーが、BCR−Nに特異的な抗体に結合する。所定の場合において、促進成分結合抗体は、その活性化状態に関係なく、ABL−Cに結合する活性化状態非依存性抗体であり、これによって、BCR−ABL(360)の全濃度を測定する。所定の他の場合には、促進成分結合抗体は、燐酸−ABL−C(例えば、pY245、pY412)に結合する活性化状態依存性抗体であり、これによって、活性化したBCR−ABL(370)の濃度を測定する。
【0103】
促進成分がGOであり、シグナル増幅対の第1のメンバーがHRPである実施形態において、GO成分(すなわち、H)によって発生するシグナルが、HRP成分にチャネリングすることができるように、BCR−ABL融合タンパク質へのGO結合抗体とHRP結合抗体との結合は、HRP成分に充分に近接する範囲内にGO成分を運び、検出可能な及び/又は増幅可能なシグナルの発生をもたらす。本明細書において記載されている方法において用いられているように、近接チャネリングの利点は、トータル又は活性化したBCR−ABLタンパク質レベルと相関する単一の検出可能なシグナルが、全3つの抗体(例えば、捕捉抗体、促進成分結合抗体及びシグナル増幅対結合抗体)の結合のみに基づいて発生して、増加したアッセイの特異性、より低いバックグラウンド、及び単純化された検出をもたらすことである。
【0104】
BCR−ABL(410)の存在(トータルレベル)及び/又は活性化状態(リン酸化レベル)を、接合抗体を使用して検出するための代わりの実施形態(400)を、図3Bに示す。また、ビーズ(421a及び/又は421b)は、それぞれ全長BCR及び/又は、それらのカルボキシ及びアミノ末端等によって、ABLタンパク質を除去するために用いられる。それから、固体支持体に固定化される特異的な結合成分を使用してBCRABLのN末端部分を捕捉することによって、BCR−ABLの全濃度は決定され(440)、そして、活性化したBCR−ABL(450)も測定される。全BCR−ABL(460)及び活性化したタンパク質(470)は、ABL−Cを捕捉することによって、並びにトータルBCR−ABLレベルを測定するために接合抗体を使用するか又は活性化したBCR−ABLレベルを測定するためにABLリン酸化−特異抗体を使用するかのいずれかによって、決定することができる。
【0105】
特に、図3B(440)は、血清のような生体サンプルに存在するBCR−ABLの総量が、(i)BCR(BCR−N)のアミノ末端領域とABL(ABL−C)のカルボキシ端末領域との間の融合の部位及びポイントに特異的な第1の検出抗体(すなわち、接合抗体)、及び(ii)ABL−Cに特異的な第2の検出抗体を、捕捉された分析物を接触させることによって、検出することができることを図示している。第1及び第2の検出抗体の両方が、その活性化状態から独立しているBCR−ABLと結合する。第1の検出抗体(すなわち、接合抗体)は、グルコースオキシダーゼ(GO)で標識化され、そして、第2の検出抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識化される。BCR−ABL融合タンパク質への第1及び第2の両方の検出抗体の結合は、GO成分(すなわち、H)によって発生するシグナルがHRP成分にチャネリングすることができるように、HRP成分に対して十分に近接した範囲内にGO成分を運び、検出可能な及び/又は増幅可能なシグナルの生成をもたらす。
【0106】
図3B(450)は、血清のような生体サンプルに存在する活性化したBCR−ABLの量が、(i)BCR−NとABL−Cと間の融合の部位及びポイントに特異的な第1の検出抗体(すなわち、接合抗体)、及び(ii)BCR−ABLの活性化した形状(例えば、リン酸化された形状)に特異的な第2の検出抗体に、捕捉された分析物を接触させることによって検出されることができることを更に図示している。第1の検出抗体はその活性化状態から独立しているBCR−ABLと結合し、一方、第2の検出抗体は融合タンパク質のABL−Cドメインに存在する活性化(例えば、リン酸化)の部位と結合する。第1の検出抗体(すなわち、接合抗体)はグルコースオキシダーゼ(GO)で標識化され、そして、第2の検出抗体は西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識化される。BCR−ABL融合タンパク質への第1及び第2の両方の検出抗体の結合は、GO成分(すなわち、H)によって発生するシグナルがHRP成分にチャネリングすることができるように、HRP成分に対して十分に近接した範囲内にGO成分を運び、検出可能な及び/又は増幅可能なシグナルの生成をもたらす。
【0107】
ステップ(c)及び(d)がELISAを含む実施形態において、ELISAは、サンドイッチELISAを含むことができる。適切な任意の抗体対を、捕捉及びサンドイッチELISAの抗体を検出するために使用することができる。当業者であれば、アッセイのための適当な抗体対を選択する方法を心得て理解するであろう。一般には、第1の(捕捉)抗体についての結合が第2の(検出)抗体を妨げないように、2つの抗体は、異なるエピトープでの目的の標的、例えば、BCR−ABLに結合することを選択する。好ましい実施形態では、第1の(捕捉)抗体は、第1の全長タンパク質、例えば、BCR−Nについての第2の異なるドメインに結合し、第2の(検出)抗体は、第2の異なる全長タンパク質、例えば、ABL−Cについての第1ドメインに結合する。或る実施形態では、検出抗体は、複合体の検出を助けるために、酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)又はアルカリ性ホスファターゼ(AP)にコンジュゲートされるであろう。他の実施態様において、検出抗体と結合する、酵素(例えば、HRP又はAP)にコンジュゲートされる第2の抗体は、アッセイにおいて使用することができる。一般的には、次に、複合体は、発光基質、例えば、Ultra LITE(商品名)(NAG研究所);SensoLyte(商標)(AnaSpec);スーパーシグナルELISAフェムト最大感度基質(Thermo Scientific);スーパーシグナルELISAピコ化学発光基質(Thermo Scientific);及びCPSD(2ナトリウム3−(4−メトキシトスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルフォスフェート;Tropix,Inc)を用いて検出されるであろう。CPSD基質は、化学発光検出システム、例えば、ELISA−ライトシステム(アプライドバイオシステム)等で発見することができる。1つの好ましい実施形態では、BCR−ABLサンドイッチELISAは、捕捉抗体(捕捉抗体は、固体支持体、例えばよくマイクロプレートウェル上に拘束されている(restrained))としての抗−BCR−N抗体の使用、及び、検出抗体(検出抗体は、活性化状態非依存性又は活性化状態依存性(例えば、燐酸に特異的な)抗体)としてのHRP−コンジュゲートされた抗−ABL−C抗体の使用を含む。
【0108】
図3Cは、BCR−ABL(510)の存在(トータルレベル)及び/又は活性化状態(リン酸化レベル)を検出するための代表的なサンドイッチELISAの実施形態(500)を図示する。ビーズ(521a及び/又は521b)は、全長BCR及び/又はABLタンパク質を、それらのカルボキシル末端及びN末端のそれぞれによって除去するために使用される。ついで、ELISAを使用し、そして、特異的な結合成分を用いてBCR−ABLのN末端部分を捕捉して、BCR−ABLの全濃度が決定され(540)、そして、活性化したBCR−ABL(550)も測定される。トータルBCR−ABL(560)及び活性化されたタンパク質(570)は、ELISAを使用して、ABL−Cを捕捉して、それからBCR−Nに特異的な検出抗体又はABL−C上のphophorylation部位に特異的な検出抗体、それぞれに、捕捉されたBCR−ABL融合タンパク質を接触させることで測定することもできる。
【0109】
ステップ(c)及び(d)がフローサイトメトリー(FCM)測定法を含む実施形態において、FCMアッセイは、蛍光活性化細胞選別機(FACS)アッセイを含むことができる。フローサイトメトリーは、微細粒子、例えば細胞を、流体のストリームにそれらを懸濁して、電子検出装置によってそれらを通過させることによって、計数し調べるための技術である。フローサイトメトリーは、秒当たりに最高何千もの粒子の物理的な及び/又は化学的特性についての同時マルチパラメータの分析を可能にする。フローサイトメトリーにおいて、単一波長の光ビーム(通常、レーザ光)は、流体力学的に集中する流体のストリームの上に向けられる。多くの検出器は、ストリームが光線を通過する位置を狙う:光線(前方散乱又はFSC)に沿う及びそれに対していくつかの垂直な(横方散乱(SSC))1つ、及び1以上の蛍光検出器。ビームを通過する約0.2から約150マイクロメートルの各々に懸濁された粒子は、光線を散乱させ、そして、粒子中で見つかるか又は粒子に結合する蛍光化学薬品は光源よりも長い波長で発光するように励起することができる。散乱し蛍光を発する光のこの組合せは、検出器によって拾われ、そして、各検出器(各蛍光発光ピークのための1つ)で明るさの変動を分析することによって、個々の粒子の理化構造に関する様々なタイプの情報を引き出すことがそれらから可能である。FSCは、細胞量に相関して、SSCは、粒子の内部の複雑さに依存する。或るフローサイトメトリーは、蛍光の必要を除去して、測定のための光散乱だけを使用し、一方、他のフローサイトメトリーは、個々の粒子の蛍光、散乱光及び透過光の像を形成する。
【0110】
FACSは、専門型のフローサイトメトリーである。それは、特有の光散乱及び各粒子の蛍光特性に基づいて、時間に1つの粒子を、1以上の容器に、粒子の不均質混合物を選別するための方法。それは、有用な科学的な機器であり、そして、それは、個々の粒子からの蛍光シグナルの早く、客観的で、定量的な記録、並びに特定の目的の粒子の物理的な分離を提供する。粒子懸濁液は、急速に流れる液体のストリーム、狭い中央に運ばれる粒子の直径と関連して粒子の間での大規模な分離が存在するように、フローが配置される。振動機構によって、粒子のストリームを、個々の液滴に分解させる。液滴当たり、1より大きい粒子の低い確率となるように、システムは調整される。ストリームが液滴に分解する直前に、フローは、各粒子の目的の蛍光特性が測定されている蛍光測定ステーションを通過する。電気をチャージしているリングが、ストリームを液滴に分解するポイントにまさに配置される。チャージは、直ちにimmediately−prior蛍光強度測定に基づいて、リング上に配置され、そして、負のチャージが、それをストリームから分解するように液滴にトラップされる。次に、チャージされた液滴は、それらの充電に基づき容器に液滴を転換する静電偏向システムによって落下する。或るシステムにおいて、チャージは、ストリームに直接付与して、終了する(breaking off)液滴は、ストリームとして同じサインのチャージを保持する。次に、液滴が終了したあと、ストリームは中性に戻る。FACSアッセイは、BDバイオサイエンス(サンノゼ、CA)から入手可能なFACS校正フローサイトメトリーを使用して行なうことができる。
【0111】
或る実施形態では、FACSアッセイは、第1の(捕捉)抗体の結合が第2の(検出)抗体を妨げないように、異なるエピトープでの、目的の標的と結合する2つの抗体、例えば、BCR−ABLを使用して実行される。好ましい実施形態では、第1の(捕捉)抗体は、第1の全長タンパク質(例えば、BCR−N)の第2の異なるドメインと結合して、第2の(検出)抗体は、第2の異なる全長タンパク質(例えば、ABL−C)の第1ドメインに結合する。或る実施形態では、捕捉抗体は、ビーズ、例えば、ポリスチレンビーズに結合して、ビーズは、フルオロフォアによって内部に染色される。或る実施形態では、複合体の検出のために、検出抗体は、フルオロフォア又は酵素にコンジュゲートされる。検出抗体は、活性化状態非依存性抗体又は活性化状態依存性(例えば、リン特異的)抗体を含むことができる。他の実施形態において、検出抗体に結合する、フルオロフォア、酵素又は他の検出成分が、アッセイにおいて使用することができる。一般的には、次に、複合体は、上記の通りに検出することができる。
【0112】
ステップ(c)及び(d)が、タグ選別測定法を含む実施形態において、タグ選別測定法がLuminex(商標)アッセイを含むことができる。Luminex(商標)アッセイが、例えば、Invitrogen社(カールズバッド、CA)から入手可能である。所定の場合には、タグ選別測定法は、複合Luminex(商標)アッセイフォーマットを含む。一般的には、第1の(捕捉)抗体の結合が、第2の(検出)抗体を妨げないように、異なるエピトープでの、目的の標的に結合する2つの抗体、例えば、BCR−ABLが選択される。好ましい実施形態では、第1の(捕捉)抗体は、第1の全長タンパク質(例えば、BCR−N)の第2の異なるドメインと結合して、第2の(検出)抗体は、第2の異なる全長タンパク質(例えば、ABL−C)の第1ドメインと結合する。或る実施形態では、捕捉抗体はポリスチレンビーズに結合して、ビーズは、異なる強度の赤外及び赤外線のフルオロフォアによって内部的に染色される。或る実施形態では、複合体の検出のために、検出抗体は、フルオロフォア又は酵素にコンジュゲートされる。検出抗体は、活性化状態非依存性抗体又は活性化状態依存性(例えば、リン特異的)抗体を含むことができる。他の実施形態において、検出抗体と結合する、フルオロフォア、酵素又は他の検出成分を、アッセイに使用することができる。一般的には、複合体は、それから、例えば、検出システム、例えばLuminex(商標)100(商品名)又は200(商品名)検出システム等(ビーズが各分析物の分類化及び定量化のためのデュアルレーザによって一つのファイルで読むことができる)を用いて、検出することができる。
【0113】
図3Dは、BCR−ABL(610)の存在(トータルレベル)及び/又は活性化状態(リン酸化レベル)を検出するためのフローサイトメトリー及びタグ選別についての代表的な実施例(600)を図示する。ビーズ(621a及び/又は621b)は、全長BCR及び/又はABLタンパク質を、例えば、それらのカルボキシ末端及びN末端それぞれによって、除去するために用いる。次に、特異的な捕捉成分を使用してBCR−ABLのN末端部分を捕捉に特異的なビーズ、及びABLのC末端に特異的なビーズを使用する。トータルタンパク質(640)は、2つの特異的なタグ又は着色したビーズを有する分子を計数することによって決定される。同様に、活性化したタンパク質の量は、ABLのリン酸化した部分及びBCR−ABLのN末端に特異的な捕捉抗体を有するビーズを用いて決定することができる。こうした2つの特異的な着色したビーズ又はタグを計数することによって、活性化したBCR−ABLの量が、計量される(650)。トータルBCRABL(660)及び活性化されたタンパク質(670)は、特異的な捕捉ビーズを有するABLのC末端を捕捉することによって、そして、BCR−Nに特異的なビーズ又はABLのリン酸化された部分に特異的なビーズに、捕捉されたBCR−ABL融合タンパク質を接触させることによって、測定することもできる。こうした2つの特異的な着色したビーズ又はタグを計数することによって、トータル(660)又は活性化された(670)BCR−ABLタンパク質の量が計量される。
【0114】
図3A〜3Dに図示したような、BCR−ABL総量及び/又は活性化したタンパク質濃度を測定する方法における使用に適している抗体についての限定的でない例としては、下記の表1に記載されるものを含む。
【表1】
【0115】
腫瘍特異性BCR−ABL融合タンパク質と非発癌性天然全長BCR又はABLタンパク質のいずれかと結合する抗体の追加の例としては、Dhutら,Oncogene, 3:561-6 (1988)に記載されているb2a2 p210 BCR−ABL,b3a2 p210 BCRABL,
p160 BCR,及びp130 BCRタンパク質を認識するBCR b2−エピトープ特異性モノクローナル抗体7C6;米国特許第5,369,008号及び6,610,498に記載されているe1a2 p190 BCR−ABL,b2a2,b3a2,及びp145 ABLタンパク質を認識するSH2ドメイン−特異性抗体8E9;及び、サンタクルスバイオテクノロジー社(サンタクルス、CA)からのABLのカルボキシ末端−特異性(24−11)マウスモノクローナル抗体#SC−23を含むが、これに限定されるものではない。
【0116】
BCR−ABLキメラタンパク質の範囲内の融合の部位又はポイントに結合することに適している接合抗体の例としては、Cell Signaling Technology社(ダンヴァーズ、MA)から入手可能なBCR−ABL b2a2接合−特異性(L99H4)マウスモノクローナル抗体#3908、米国特許公開番号20050214301に記載したp210 BCR−ABL融合タンパク質−特異性単離された抗体、van Denderenら,Leukemia,6:1107−12(1992)に記載したBCR−ABL b3a2接合−特異性ポリクローナル抗体BP−2、及びvan Denderenら,Leukemia,8:1503−9(1994)に記載したBCR−ABL e1a2接合−特異性モノクローナル抗体(ER−FP1)を含むが、それらに限定されるものではない。Ph陽性の白血病、それらに限定されるものではないが、と関連するBCR−ABL融合タンパク質の検出のために、BCR−A接合抗体を使用することができる。
【0117】
或る実施形態では、本発明の方法は、細胞回収又は単離後にいかなる洗浄ステップなしに、抗CD45抗体及び/又は抗CD45抗体を有する磁気ビーズ捕捉を使用して、白血球(例えば、慢性の骨髄性白血病(CML)細胞)などの目的の細胞を回収又は単離することによって、採取後又は凍結された骨髄(例えば、骨髄吸引物)又は全血試料からの細胞抽出物を調製することを提供する。このように得られた細胞抽出物は、一つ以上の発癌性融合タンパク質、例えばBCR−ABL、それらの基質、それらの経路、又はそれらの組み合わせについての発現及び/又は活性化のレベルのために分析することができる。いかなる特定の理論にも縛られずに、細胞単離後の任意の洗浄ステップの必要性を除去することは有利である。なぜならば、目的の細胞が、抗ガン剤、例えばチロシンキナーゼ抑制剤の細胞内濃度を変えずに、血液又は骨髄サンプルから回収することができるからである。下記の実施例9にて説明したように、本願明細書において記載されている任意の洗浄ステップがない細胞単離は、単離後に細胞を洗浄すること(例えば、ビーズに拘束された細胞を洗浄すること)の技術的に認められた習慣とは反対であり、細胞内部の抗ガン剤、例えば、チロシンキナーゼ抗ガン剤(例えば、Gleevec(商標)、Tasigna(商標)、Sprycel(商標)など)の実質的な希釈をしないで、回収された細胞から細胞抽出物を提供する。
【0118】
代わりの実施形態では、本発明の方法は、発癌性融合タンパク質(例えば、全長BCR及び/又はABL)内で見つかる配列又はドメインを含有する天然全長タンパク質の一方又は両方と結合して、発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)の総量又は活性化状態の同時検出を提供する。1つの特定の実施形態では、本発明の方法は、生体サンプル、例えば血液又は骨髄吸引物サンプル中における、トータルBCR−ABLレベルの両方並びにトータル天然全長BCR及び/又はABLレベルについての検出及び/又は測定を可能にする。所定の実施形態では、天然タンパク質(例えば、全長BCR及び/又はABL)レベルは、単一のパッド上の多重化方法の発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルに沿って決定される。こうした実施形態では、これらの分子のレベルが同じパッド上で決定されるように、天然全長タンパク質は、有利には、発癌性融合タンパク質に沿って単離することができる。
【0119】
下記の実施例10にて説明するように、本発明の方法に対するこうした代わりの実施形態は、トータルBCR−ABLレベル並びにトータル天然全長BCR又はABLレベルを検出して及び/又は測定するために使用することができ、そして、天然全長BCR又はABLレベルに対するトータルBCR−ABLレベルの比を計算することができる。或る場合には、天然全長BCR又はABLレベルに対するBCR−ABLレベルの比を計算して、反応インジケータ、例えば、大きな分子反応(MMR)、完全な分子反応(CMR)、完全な細胞遺伝学的な反応(CCyR)及びそれらの組み合わせのより正確な決定を提供する。他の場合において、本発明の方法に対するこうした代わりの実施形態は、治療、例えば、チロシンキナーゼ抗ガン剤療法の関数として、(例えば、天然全長BCR又はABLレベルに対するトータルBCR−ABLレベルの比を計算することによって、)天然全長BCR又はABL等のコントロールに関して、BCR−ABLの発現の変更をモニタリングするために使用することができる。
【0120】
本発明の方法は、癌(例えば、血液悪性腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫等))に発達する危険があるか、有する疑いがあるか、と診断されている患者における、BCR−ABLのような1以上の発癌性融合タンパク質の活性化(例えば、リン酸化)状態を決定することに特に有用である。所定の場合において、本発明の方法は、活性(例えば、リン酸化)発癌性融合タンパク質レベル(例えば、燐酸−BCR−ABLレベル)を測定することによって、被験者の癌の診断を補助するか、援助するか、又は容易にして、被験者が発癌性融合タンパク質の活性形(例えば、BCR−ABL陽性の患者)を表すかどうかを決定する。他の実施態様において、本発明の方法は、発癌性融合タンパク質の活性形を表すことをすでに決定している被験者に関して、治療を最適化にしたり、毒性を減らしたり、及び/又は、治療処理の有効性をモニタリングしたりするために行なわれる。こうした実施形態の1つの特定の観点において、活性化されたBCR−ABLタンパク質のレベルは、治療過程中(例えば、患者が、抗ガン剤治療(例えば、Gleevec(商標)、Tasigna(商標)、Sprycel(商標)などにある)のBCR−ABL陽性の患者において、治療を最適化するために、毒性を減らすために、及び/又は、治療処理の有効性をモニタリングするために、決定することができる。或る実施形態では、両方の総量及び活性化した(例えば、リン酸化した)発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルを、本発明の抗体に基づくアッセイに従って測定して、そして、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/総量BCR−ABLタンパク質レベルの比)が、計算され、そして、この比が、例えば、発癌性融合タンパク質レベルのホスホ/トータル比と、初期の時期において(例えば、抗ガン剤の薬物治療の初期の時期状態にあるか、又は、抗ガン剤の薬物治療よりも前の時にある)被験者のために計算した同様の比とを比較することによって、被験者のための治療過程を評価するために使用される。所定の実施形態では、トータル発癌性融合タンパク質に対する活性化の比(例えば、ホスホ/総量BCR−ABLタンパク質濃度の比)は、1以上の対照タンパク質、例えば、発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL融合タンパク質のためのBCR及び/又はABL)内で見つけられる配列又はドメインを含有する天然全長タンパク質の一方又は両方のレベルに関して、計算することができる。好ましい実施形態では、対照タンパク質のトータルレベルは、抗ガン剤の薬物治療によって影響を受けないか又は実質的に変化しない。
【0121】
本発明の方法は、癌(例えば、血液悪性腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫等))に発達する危険があるか、有する疑いがあるか、と診断されている患者における、BCR−ABLのような発癌性融合タンパク質と関連する1以上の複数の経路中の1以上のシグナル伝達分子についての活性化(例えば、リン酸化)状態を決定することに特に有用である。代表的なシグナル伝達分子は、BCR−ABL基質、例えば、CRKL、JAK2、STAT5、Src、FAK、c−ABL、c−CBL、SHC、SHP−2、VAV、BAP−1及びそれらの組み合わせなどを含む。所定の場合において、本発明の方法は、活性(例えば、リン酸化)発癌性融合タンパク質レベル(例えば、リン−BCR−ABLレベル)、及び活性化した(例えば、リン酸化された)シグナル伝達分子(例えば、リン酸CRKL、リン酸JAK2、リン酸STAT5等のレベル)を測定することによって、被験者の癌の診断を補助するか、援助するか、又は容易にして、被験者が発癌性融合タンパク質の活性形(例えば、BCR−ABL陽性の患者)及び/又は経路中の1以上のシグナル伝達分子の活性形を表すかどうかを決定する。他の実施態様において、本発明の方法は、発癌性融合タンパク質の活性形を表すことをすでに決定している被験者に関して、治療を最適化にしたり、毒性を減らしたり、及び/又は、治療処理の有効性をモニタリングしたりするために行なわれる。こうした実施形態の1つの特定の観点において、活性化されたBCR−ABLタンパク質のレベル及びシグナル伝達経路成分(例えば、CRKL、JAK2、STAT5、Src、FAKなど)は、治療過程中(例えば、患者が、抗ガン剤治療(例えば、Gleevec(商標)、Tasigna(商標)、Sprycel(商標)などにある)のBCR−ABL陽性の患者に対して、治療を最適化するために、毒性を減らすために、及び/又は、治療処理の有効性をモニタリングするために、決定することができる。或る実施形態では、両方の総量及び活性化した(例えば、リン酸化した)発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルを、本発明の抗体に基づくアッセイに従って測定して、そして、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/トータルBCR−ABLタンパク質レベルの比)が、(例えば、1以上の対照タンパク質のレベルに関して)計算され、そして、この比が、例えば、発癌性融合タンパク質レベルのホスホ/トータル比と、初期の時期において(例えば、抗ガン剤の薬物治療の初期の時期状態にあるか、又は、抗ガン剤の薬物治療よりも前の時にある)被験者のために計算した同様の比とを比較することによって、被験者のための治療過程を評価するために使用される。或る実施形態では、両方の総量及び活性化した(例えば、リン酸化した)シグナル伝達経路成分レベルを、本発明の抗体に基づくアッセイに従って測定して、そして、シグナル伝達経路成分レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/トータルCRKL、JAK2又はSTAT5タンパク質レベルの比)が、(例えば、1以上の対照タンパク質のレベルに関して)計算され、そして、この比が、例えば、シグナル伝達経路成分レベルのホスホ/トータル比と、初期の時期において(例えば、抗ガン剤の薬物治療の初期の時期状態にあるか、又は、抗ガン剤の薬物治療よりも前の時にある)被験者のために計算した同様の比とを比較することによって、被験者のための治療過程を評価するために使用される。所定の場合において、発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)の発現のレベルは、下流のシグナル伝達経路成分、例えば、CRKL、JAK2、STAT5、Src、FAKなどの活性化(例えば、リン酸化)のレベルと相関させるか、又は関係させることができる。
【0122】
1つの特定の観点では、本発明は、癌を有し、且つ癌治療のための治療過程を受ける被験者において療法を最適化するため及び/又は毒性を減少するための方法であって、前記方法が以下の工程を含む:
(a)抗癌剤(例えば、1以上のチロシンキナーゼ阻害剤[例えば、Gleevec(商標)、Tasigna(商標)、Sprycel(商標)等)]の投与後に癌細胞を単離する工程;
(b)前記単離された細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)本明細書に記載のアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)のレベルを測定する工程;及び、
(d)測定した前記発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを、治療過程の間の初期に測定される前記発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルと比較する工程;及び
(e)工程(d)からの比較に基づいて、被験者のための治療過程の今後の用量を決定するか、又は異なる治療過程を被験者に施すかどうかを決定する工程
を提供する。
【0123】
特定の実施形態において、発癌性融合タンパク質についての発現レベル及び活性化レベルの両方が、例えば本願明細書において記載されている近接アッセイのうちの1つを行なうことによって、細胞抽出物において測定される。所定の好ましい実施形態において、発癌性融合タンパク質は、BCR−ABLを含む。所定の他の好ましい実施形態において、被験者は、発癌性融合タンパク質の活性形を表す。特定の好ましい実施形態では、被験者は、BCR−ABL陽性である(例えば、被験者は、抗ガン剤の投与前にホスホ−BCR−ABLの検出可能なレベルを有することを決定された)。
【0124】
両方の総量及び活性化した(例えば、リン酸化した)発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルを、本発明の抗体に基づくアッセイに従って細胞抽出物で測定して、そして、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/トータルBCR−ABLタンパク質レベルの比)が、計算され、そして、この比が、例えば、発癌性融合タンパク質レベルのホスホ/トータル比と、初期の時期において(例えば、抗ガン剤の薬物治療の初期の時期状態にあるか、又は、抗ガン剤の薬物治療よりも前の時にある)被験者のために計算した同様の比とを比較することによって、被験者のための治療過程を評価するために使用される。後述する実施例6に図示したように、抗ガン剤阻害における発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルのホスホ/トータルの比は、抗ガン剤治療における活性化した(例えば、リン酸化された)発癌性融合タンパク質(例えば、ホスホ−BCR−ABL)シグナルのパーセント阻害と相関する(例えば、図14C、15C、及び16C)。他の実施形態では、トータル発癌性融合タンパク質に対する活性化の比(例えば、ホスホ/トータルBCR−ABLタンパク質レベルの比)は、1以上の対照タンパク質のレベル、例えば、発癌性融合タンパク質内で見つけられる配列又はドメインを含有する天然全長タンパク質の一方又は両方(例えば、BCR−ABLでのBCR及び/又はABL)に関して、計算することができる。好ましい実施形態では、対照タンパク質のトータルレベルは、抗ガン剤治療によって影響を受けないか又は実質的に変化しない。
【0125】
治療を最適化するための本明細書において記載されている方法についての或る観点において、被験者における発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルの活性化(例えば、リン酸化)の約50%より低い阻害は、被験者の再発から癌の危険性を防止するか又は低下させるために、治療過程の今後の用量を増加させるか、又は異なる治療過程を施すか(例えば、異なる抗ガン剤へ切り替えることによって、現在の治療過程を変更する)の必要性を示す。被験者がGleevec(商標)治療である場合における、限定的でない例として、BCR−ABL融合タンパク質のリン酸化レベルについての約50%の阻害が、Gleevec(商標)の今後の用量を増加させるか、又は被験者をTasigna(商標)治療に切り替えるかの必要性を示す。所定の場合において、被験者における発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルの活性化(例えば、リン酸化)の約49%、48%、47%、46%、45%、44%、43%、42%、41%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%又は5%未満の阻害は、治療過程の今後の用量を増加させるか、又は現在の治療過程を変えるかの必要を示す。或る実施形態では、発癌性融合タンパク質レベルの活性化のパーセント阻害は、トータル発癌性融合タンパク質レベル(例えば、ホスホ/トータルBCR−ABLタンパク質レベルの比)に対する活性化の比[場合により、1以上の対照タンパク質(例えば、BCR−ABLにおける全長BCR及び/又はABL)レベルに関して]を計算し、そして初期の時期において(例えば、抗ガン剤の薬物治療の初期の時期状態にあるか、又は、抗ガン剤の薬物治療よりも前の時にある)被験者のために計算した同様の比に対する発癌性融合タンパク質レベルのホスホ/トータル比とを比較することによって、決定することができる。薬物治療が、例えば、現在の用量よりも少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50又は100倍高いか又は低い今後の用量を最適化するように、現在の治療過程を、適切なより高いかより低い用量に調整することができることを、当業者は知っている。
【0126】
治療を最適化する方法の所定の他の観点において、被験者における発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルの活性化(例えば、リン酸化)の約50%未満の阻害は、治療過程への被験者によるコンプライアンスの不足(例えば、被験者は、定期的に抗ガン剤をとっていないか、又は医師によって指示されたものをとっていない)及び/又は治療過程と関連した毒性又は副作用の可能性の存在を示す。こうした実施形態では、現在の治療過程をコンプライアンスのために(例えば、医師又は他の介護者によって)慎重にモニタリングするか、又は、コンプライアンスを増加及び/又は副作用の危険度を防止するか又は減らすために、異なる治療過程を施す(例えば、現在の治療過程が、異なる抗ガン剤へ切り替えることによって変更する)ように勧める。所定の場合において、被験者における発癌性融合タンパク質レベルの活性化の約49%、48%、47%、46%、45%、44%、43%、42%、41%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%又は5%未満の阻害は、治療過程への被験者によるコンプライアンスの不足及び/又は治療過程と関連した毒性又は副作用の可能性の存在を示す。或る実施形態では、発癌性融合タンパク質レベルの活性化のパーセント阻害は、トータル発癌性融合タンパク質レベル(例えば、ホスホ/トータルBCR−ABLタンパク質レベルの比)に対する活性化の比[場合により、1以上の対照タンパク質(例えば、BCR−ABLにおける全長BCR及び/又はABL)レベルに関して]を計算し、そして初期の時期において(例えば、抗ガン剤の薬物治療の初期の時期状態にあるか、又は、抗ガン剤の薬物治療よりも前の時にある)被験者のために計算した同様の比に対する発癌性融合タンパク質レベルのホスホ/トータル比とを比較することによって、決定することができる。
【0127】
治療を最適化するために、本願明細書において記載されている方法の更なる観点において、被験者における発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルの活性化(例えば、リン酸化)の約80%を超える阻害は、被験者が正しい用量で正しい治療にあることを示す。所定の場合において、被験者の発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルの活性化(例えば、リン酸化)の約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%を超える阻害は、被験者が正しい用量で正しい抗ガン剤治療にあることを示す。或る実施形態では、発癌性融合タンパク質レベルの活性化のパーセント阻害は、トータル発癌性融合タンパク質レベル(例えば、ホスホ/トータルBCR−ABLタンパク質レベルの比)に対する活性化の比[場合により、1以上の対照タンパク質(例えば、BCR−ABLにおける全長BCR及び/又はABL)レベルに関して]を計算し、そして、次に、初期の時期において(例えば、抗ガン剤の薬物治療の初期の時期状態にあるか、又は、抗ガン剤の薬物治療よりも前の時にある)被験者のために計算した同様の比に対する発癌性融合タンパク質レベルのホスホ/トータル比とを比較することによって、決定することができる。
【0128】
関連した観点では、本発明は、癌を有し、且つ癌治療のための治療過程を受ける被験者において療法を最適化するため及び/又は毒性を減少するための方法であって、前記方法が以下の工程を含む:
(a)抗癌剤(例えば、1以上のチロシンキナーゼ阻害剤[例えば、Gleevec(商標)、Tasigna(商標)、Sprycel(商標)等)]の投与後に癌細胞を単離する工程;
(b)前記単離された細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)本明細書に記載のアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の経路における発癌性融合タンパク質及び1以上のシグナル伝達分子についての発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)のレベルを測定する工程;及び、
(d)測定した前記発癌性融合タンパク質及びシグナル伝達分子についての発現及び/又は活性化のレベルを、治療過程の間の初期に測定される前記発癌性融合タンパク質及びシグナル伝達分子についての発現及び/又は活性化のレベルと比較する工程;及び
(e)工程(d)からの比較に基づいて、被験者のための治療過程の今後の用量を決定するか、又は異なる治療過程を被験者に施すかどうかを決定する工程
を、提供する。
【0129】
特定の実施形態において、発癌性融合タンパク質についての発現レベル及び活性化レベル、並びに1以上のシグナル伝達分子は、例えば、近接アッセイの1つを実行することによって、細胞抽出物において測定される。特定の好ましい実施形態において、発癌性融合タンパク質は、BCR−ABLを含む。所定の他の好ましい実施形態において、シグナル伝達分子は、例えば、BCR−ABL基質、例えば、CRKL、JAK2、STAT5、Src、FAK、c−ABL、c−CBL、SHC、SHP−2、VAV、BAP−1及びそれらの組み合わせ等を含む。更なる実施形態において、被験者は、発癌性融合タンパク質の活性形を表す。特に好ましい実施態様では、被験者は、BCR−ABL陽性である(例えば、被験者は、抗ガン剤の投与の前にリン−BCR−ABLの検出可能なレベルを有することを決定された)。
【0130】
或る実施形態では、トータル及び活性化した(例えば、リン酸化した)発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベル、並びにシグナル伝達経路(例えば、CRKL、JAK2、STAT5)成分は、本発明の抗体に基づくアッセイに従って測定され、そして、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/トータルBCR−ABLタンパク質レベルの比)並びにトータルシグナル伝達経路成分レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/総量CRKL、JAK2又はSTAT5タンパク質レベルの比)が、計算され、そして、この比が、例えば、発癌性融合タンパク質レベルとシグナル伝達経路成分レベルのホスホ/トータル比と、初期の時期において(例えば、抗ガン剤の薬物治療の初期の時期状態にあるか、又は、抗ガン剤の薬物治療よりも前の時にある)被験者のために計算した同様の比とを比較することによって、被験者のための治療過程を評価するために使用される。他の実施態様において、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/トータルBCR−ABLタンパク質レベルの比)及びシグナル伝達成分レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/トータルCRKL、JAK2又はSTAT5タンパク質レベルの比)が、1以上の対照タンパク質レベル、例えば、発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABLのためのBCR及び/又はABL)内で見つけられる配列又はドメインを含有する天然全長タンパク質の一方又は両方のレベルに関して、計算することができる。他の好ましい実施形態では、対照タンパク質のトータルレベルは、抗ガン剤治療によって影響を受けないか又は実質的に変更する。
【0131】
治療を最適化するための本明細書において記載されている方法についての或る観点において、被験者における1、2、3、4、5、6、又はそれ以上の発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベル及び/又はシグナル伝達経路成分(例えば、CRKL、JAK2、STAT5)レベルの活性化(例えば、リン酸化)の約50%より低い阻害は、被験者の再発から癌の危険性を防止するか又は低下させるために、治療過程の今後の用量を増加させるか、又は異なる治療過程を施すか(例えば、異なる抗ガン剤へ切り替えることによって、現在の治療過程を変更する)かの必要性を示す。被験者がGleevec(商標)治療である場合における、限定的でない例として、BCR−ABL融合タンパク質及び/又はシグナル伝達経路成分(例えば、CRKL、JAK2又はSTAT5)のリン酸化レベルについての約50%の阻害が、Gleevec(商標)の今後の用量を増加させるか、又は被験者をTasigna(商標)治療に切り替えるかの必要性を示す。所定の場合において、被験者における1、2、3、4、5、6、又はそれ以上の発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベル及び/又はシグナル伝達経路成分(例えば、CRKL、JAK2、STAT5)レベルの活性化(例えば、リン酸化)の約49%、48%、47%、46%、45%、44%、43%、42%、41%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%又は5%未満の阻害は、治療過程の今後の用量を増加させるか、又は現在の治療過程を変えるかの必要を示す。或る実施形態では、発癌性融合タンパク質レベルの活性化及び/又はシグナル伝達分子レベルのパーセント阻害は、トータル発癌性融合タンパク質レベル(例えば、ホスホ/トータルBCR−ABLタンパク質レベルの比)に対する活性化の比及び/又はシグナル伝達経路成分レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/トータルCRKL、JAK2又はSTAT5タンパク質レベルの比)[場合により、1以上の対照タンパク質(例えば、BCR−ABLにおける全長BCR及び/又はABL)レベルに関して]を計算し、そして初期の時期において(例えば、抗ガン剤の薬物治療の初期の時期状態にあるか、又は、抗ガン剤の薬物治療よりも前の時にある)被験者のために計算した同様の比に対する計算したホスホ/トータル比とを比較することによって、決定することができる。薬物治療が、例えば、現在の用量よりも少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50又は100倍高いか又は低い今後の用量を最適化するように、現在の治療過程を、適切なより高いかより低い用量に調整することができることを、当業者は知っている。
【0132】
治療を最適化する方法の所定の他の観点において、被験者における1、2、3、4、5、6、又はそれ以上の発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベル及び/又はシグナル伝達経路成分(例えば、CRKL、JAK2、STAT5)レベルの活性化(例えば、リン酸化)の約50%未満の阻害は、治療過程への被験者によるコンプライアンスの不足(例えば、被験者は、定期的に抗ガン剤をとっていないか、又は医師によって指示されたものをとっていない)及び/又は治療過程と関連した毒性又は副作用の可能性の存在を示す。こうした実施形態では、現在の治療過程をコンプライアンスのために(例えば、医師又は他の介護者によって)慎重にモニタリングするか、又は、コンプライアンスを増加及び/又は副作用の危険度を防止するか又は減らすために、異なる治療過程を施す(例えば、現在の治療過程が、異なる抗ガン剤へ切り替えることによって変更する)ように勧める。所定の場合において、被験者における1、2、3、4、5、6、又はそれ以上の発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベル及び/又はシグナル伝達経路成分(例えば、CRKL、JAK2、STAT5)レベルの活性化(例えば、リン酸化)の約49%、48%、47%、46%、45%、44%、43%、42%、41%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%又は5%未満の阻害は、治療過程への被験者によるコンプライアンスの不足及び/又は治療過程と関連した毒性又は副作用の可能性の存在を示す。或る実施形態では、発癌性融合タンパク質レベルの活性化及び/又はシグナル伝達分子レベルのパーセント阻害は、トータル発癌性融合タンパク質レベル(例えば、ホスホ/トータルBCR−ABLタンパク質レベルの比)に対する活性化の比及び/又はシグナル伝達経路成分レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/トータルCRKL、JAK2又はSTAT5タンパク質レベルの比)[場合により、1以上の対照タンパク質(例えば、BCR−ABLにおける全長BCR及び/又はABL)レベルに関して]を計算し、そして初期の時期において(例えば、抗ガン剤の薬物治療の初期の時期状態にあるか、又は、抗ガン剤の薬物治療よりも前の時にある)被験者のために計算した同様の比に対する発癌性融合タンパク質レベルのホスホ/トータル比とを比較することによって、決定することができる。
【0133】
治療を最適化するために、本願明細書において記載されている方法の更なる観点において、被験者における1、2、3、4、5、6、又はそれ以上の発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベル及び/又はシグナル伝達経路成分(例えば、CRKL、JAK2、STAT5)レベルの活性化(例えば、リン酸化)の約80%を超える阻害は、被験者が正しい用量で正しい治療にあることを示す。所定の場合において、被験者における1、2、3、4、5、6、又はそれ以上の発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベル及び/又はシグナル伝達経路成分(例えば、CRKL、JAK2、STAT5)レベルの活性化(例えば、リン酸化)の約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%を超える阻害は、被験者が正しい用量で正しい抗ガン剤治療にあることを示す。或る実施形態では、発癌性融合タンパク質レベルの活性化及び/又はシグナル伝達分子レベルのパーセント阻害は、トータル発癌性融合タンパク質レベル(例えば、ホスホ/トータルBCR−ABLタンパク質レベルの比)に対する活性化の比及び/又はシグナル伝達経路成分レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/トータルCRKL、JAK2又はSTAT5タンパク質レベルの比)[場合により、1以上の対照タンパク質(例えば、BCR−ABLにおける全長BCR及び/又はABL)レベルに関して]を計算し、そして、次に、初期の時期において(例えば、抗ガン剤の薬物治療の初期の時期状態にあるか、又は、抗ガン剤の薬物治療よりも前の時にある)被験者のために計算した同様の比に対する発癌性融合タンパク質レベルのホスホ/トータル比とを比較することによって、決定することができる。
【0134】
治療を最適化するために、本願明細書において記載されている方法の他の観点において、代替のシグナル伝達経路の活性化は、現在の治療過程を変えるか又は調整する(例えば、異なる抗ガン剤への切り替え)必要性を示す。被験者がGleevec(商標)にある場合において、限定的ではない例として、代替のシグナル伝達経路(例えば、Src)の活性化(例えば、リン酸化)は、被験者をSprycel(商標)又はTasigna(商標)での治療に切り替える必要を示す。
【0135】
別の観点では、本発明は、癌の治療のために、適した抗癌剤を選択する方法であって、
前記方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)本明細書に記載のアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;及び、
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較することによって、前記抗癌剤が、癌の治療のために適切であるか不適切であるかを決定する工程を提供する。
【0136】
好ましい観点では、癌の治療のために、適した抗癌剤を選択する方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)発癌性融合タンパク質に特異的な捕捉抗体の希釈系列を含むアッセイを使用して、細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質の発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)のレベルを決定する工程であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている、前記工程;
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗ガン剤がない状態で作成される参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程;及び
(e)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルが、前記参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較して変化する(例えば、実質的に減少する)場合には、抗癌剤が癌の治療に適していることを示す工程。
【0137】
或る実施形態では、本発明の方法は、癌(例えば、血液悪性腫瘍など)の治療のための適切な抗ガン剤の選択を、補助するか、援助するために有用であることがある。他の実施態様において、本発明の方法は、癌(例えば、血液悪性腫瘍など)の治療のための適切な抗ガン剤の選択を改善することに有用であることがある。或る実施形態では、発癌性融合タンパク質のために検出される発現又は活性化のレベルが、参照用の発現又は活性化プロフィールと比較して変わらない(例えば、実質的に減少しない)場合に、前記方法は、抗ガン剤が癌の治療に不適当なことを示すステップを更に又は代替的に含む。更なる実施形態において、細胞抽出物に存在する1以上のシグナル伝達分子は、一つ以上の発癌性融合タンパク質に加えて検出され、そして、抗がん剤は、この「分子プロフィール」に基づいて適切であるか不適切であるかを決定される。
【0138】
さらに別の観点では、本発明は、抗癌剤を用いる治療に対して癌の応答を同定する方法であって、前記方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)本明細書に記載のアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化(リン酸化)のレベルを決定する工程;及び、
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較することによって、前記抗癌剤を用いる治療に対して、癌が応答性又は非応答性であると同定する工程。
【0139】
好ましい実施形態では、抗癌剤を用いる治療に対して癌の応答を同定する方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記発癌性融合タンパク質に特異的な捕捉抗体の希釈系列を含むアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化(リン酸化)のレベルを決定する工程であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている、前記工程;及び、
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗ガン剤がない状態で作成される参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程;及び
(e)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルが、前記参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較して変化する(例えば、実質的に減少する)場合には、癌が抗癌剤を用いる治療に応答性があることを示す工程。
【0140】
或る実施形態では、本発明の方法は、癌(例えば、血液悪性腫瘍など)の反応の識別を補助するか、援助するために有用であることがある。或る実施形態において、本発明の方法は、抗がん剤での治療に対する、癌(例えば、血液悪性腫瘍など)の反応の識別を改善することに有用であることがある。或る実施形態では、発癌性融合タンパク質のために検出される発現又は活性化のレベルが、参照用の発現又は活性化プロフィールと比較して変わらない(例えば、実質的に減少しない)場合に、前記方法は、抗ガン剤が癌の治療に非応答なことを示すステップを更に又は代替的に含む。更なる実施形態において、細胞抽出物に存在する1以上のシグナル伝達分子は、1以上の発癌性融合タンパク質に加えて検出され、そして、抗がん剤は、この「分子プロフィール」に基づく治療に対して、応答するか非応答のように識別される。
【0141】
更になお別の観点では、本発明は、抗癌剤を用いる治療に対して、癌を有する被験者の応答を予測する方法であって、前記方法が以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)本明細書に記載のアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化(リン酸化)のレベルを決定する工程;及び、
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較することによって、被験者が、前記抗癌剤を用いる治療に対して応答することの可能性を予測する工程を提供する。
【0142】
好ましい実施形態では、抗癌剤を用いる治療に対して、癌を有する被験者の応答を予測する方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記発癌性融合タンパク質に特異的な捕捉抗体の希釈系列を含むアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化(リン酸化)のレベルを決定する工程であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている、前記工程;及び、
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗ガン剤がない状態で作成される参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程;及び
(e)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルが、前記参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較して変化する(例えば、実質的に減少する)場合には、被験者が抗癌剤を用いる治療に対して応答しそうであることを示す工程。
【0143】
或る実施形態では、本発明の方法は、癌(例えば、血液悪性腫瘍など)のための抗ガン剤治療に反応する被験者の可能性の予測を改善するために有用であることがある。或る実施形態では、発癌性融合タンパク質のために検出される発現又は活性化のレベルが、参照用の発現又は活性化プロフィールと比較して変わらない(例えば、実質的に減少しない)場合に、前記方法は、被験者が抗ガン剤治療におそらく応じないことを示すステップを更に又は代替的に含む。更なる実施形態において、細胞抽出物に存在する1以上のシグナル伝達分子は、1以上の発癌性融合タンパク質に加えて検出され、そして、被験者が治療に応じるであろう可能性が、この「分子プロフィール」に基づいて予測される。
【0144】
更なる観点では、本発明は、癌を有する被験者が、抗癌剤を用いる治療に対して耐性があるかどうかを決定する方法あって、前記方法が以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)本明細書に記載のアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化(リン酸化)のレベルを決定する工程;及び、
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、初期に抗癌剤がある状態又は抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較することによって、前記抗癌剤を用いる治療に対して、耐性があるか又は感受性があるかどうかを決定する工程を提供する。
【0145】
好ましい実施形態では、癌を有する被験者が、抗癌剤を用いる治療に対して耐性があるかどうかを決定する方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記発癌性融合タンパク質に特異的な捕捉抗体の希釈系列を含むアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化(リン酸化)のレベルを決定する工程であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている、前記工程;
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗ガン剤がない状態で作成される参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程;及び
(e)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルが、前記参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較して変化しない(例えば、実質的に減少しない)場合には、被験者が抗癌剤を用いる治療に対して耐性があることを示す工程。
【0146】
或る実施形態では、本発明の方法は、癌を有する被験者が、抗ガン剤治療に抵抗があるかの識別、又は、癌を有する被験者が、抗ガン剤治療に抵抗があるかどうかの決定を補助するか、援助するために有用であることがある(なお、被験者は、癌(例えば、血液悪性腫瘍など)を有する)。他の実施形態において、本発明の方法は、癌を有する被験者が、抗ガン剤治療に抵抗があるかの改善、又は、癌を有する被験者が、抗ガン剤治療に抵抗があるかどうかの決定を補助するか、援助するために有用であることがある(なお、被験者は、癌(例えば、血液悪性腫瘍など)を有する)。
【0147】
或る実施形態では、発癌性融合タンパク質のために検出される発現又は活性化のレベルが、参照用の発現又は活性化プロフィールと比較して変わらない(例えば、実質的に減少しない)場合に、前記方法は、抗ガン剤が癌の治療に影響されることを示すステップを更に又は代替的に含む。癌を有する被験者が、抗ガン剤に抵抗することがある理由の限定的でない例としては、目的の発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)の1以上の突然変異の存在、療法レジメンを有するノンコンプライアンス、及び/又は最適以下の薬剤用量の投与を含む。抗ガン剤の最適以下の薬剤用量に関して、前記方法は、被験者に投与される抗ガン剤の次又は今後の用量を増加するステップをさらに含むことができる。更なる実施形態において、細胞抽出物に存在する1以上のシグナル伝達分子は、1以上の発癌性融合タンパク質に加えて検出され、そして、被験者が、この「分子プロフィール」に基づいて、治療に抵抗があるか、又は影響があるかについて識別される。
【0148】
特定の実施形態において、発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子についての発現(例えば、トータル)レベル又は活性化(例えば、リン酸化)レベルは、抗がん剤が存在しないよりも、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%より大きいか若しくは小さい発現若しくは活性化する場合には、抗ガン剤の存在で「変化する」と考慮される。1つの実施形態において、発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子についての発現(例えば、トータル)レベル又は活性化(例えば、リン酸化)レベルは、抗がん剤が存在しないよりも、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%より小さく発現若しくは活性化する場合には、抗ガン剤の存在で「実質的に減少する」と考慮される。更なる実施形態において、発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子の発現(例えば、トータル)レベル又は活性化(例えば、リン酸化)レベルは、(1)抗ガン剤なしで発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子についての高いか強い発現及び/又は活性化から、抗ガン剤ありで発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子についての中程度、弱い、低い、若しくは非常に弱い発現及び/又は活性化への変化がある場合、又は(2)抗ガン剤なしで発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子についての中程度の発現及び/又は活性化から、抗ガン剤ありで発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子についての弱い、低い、若しくは非常に弱い発現及び/又は活性化への変化がある場合において、抗ガン剤の存在で「実質的に減少する」と考慮される。
【0149】
或る実施形態では、発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子の発現レベル及び/又は活性化レベルは、例えば本願明細書において記載されている近接アッセイ(Collaborative近接イムノアッセイ(COPIA)など)を使用して決定される目的の分析物に関するシグナル強度に相当する相対的な蛍光ユニット(RFU)値として表される。他の実施形態においては、発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子の発現レベル及び/又は活性化レベルは、例えば、近接アッセイ(COPIAなど)を使用して決定される目的の分析物に関する増加するシグナル強度に相当する“−”、“±”、“+”、“++”、“+++”、又は“++++”として表される。或る場合には、例えば近接アッセイ(COPIAなど)を使用して決定される目的の特定の分析物の発現又は活性化の検出不可能であるか最小限検出可能なレベルは、“−”又は“±”として表わすことがある。他の場合において、例えば近接アッセイ(COPIAなど)を使用して決定される目的の特定の分析物の発現又は活性化の低いレベルは、“+”として表わすことがある。さらに他の場合では、例えば近接アッセイ(COPIAなど)を使用して決定される目的の特定の分析物の発現又は活性化の低いレベルは、“++”として表わすことがある。よりさらに他の場合では、例えば近接アッセイ(COPIAなど)を使用して決定される目的の特定の分析物の発現又は活性化の高いレベルは、“+++”として表わすことがある。さらなる場合では、例えば近接アッセイ(COPIAなど)を使用して決定される目的の特定の分析物の発現又は活性化の高いレベルは、“++++”として表わすことがある。
【0150】
さらに他の実施形態において、発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子の発現レベル及び/又は活性化レベルは、目的の特定の分析物に関して作成される検量線に対して、例えば近接アッセイ(COPIAなど)を使用して決定されるRFU値を、校正するか、又は標準化することによって、数量化される。所定の場合において、コンピュータ化されたユニット(CU)値は、検量線に基づいて計算することができる。他の場合において、CU値は、シグナル強度に関する前記説明に従って、“−”、“±”、“+”、“++”、“+++”、又は“++++”として表わすことができる。
【0151】
所定の実施形態では、目的の特定分析物の発現又は活性化レベル(“−”、“±”、“+”、“++”、“+++”、又は“++++”として表される場合)は、(例えば、IgGコントロールなどのネガティブコントロールと比較される場合、目的の分析物に関して作成される検量線と比較される場合、pan−CKコントロールなどのポジィティブコントロールと比較される場合、抗ガン剤の存在下で決定される発現又は活性化レベルと比較される場合、及び/又は抗ガン剤の不存在下で決定される発現又は活性化レベルと比較される場合)、参照用の発現レベル又は活性化レベルよりも、少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50又は100倍より高いか若しくはより低い(例えば、約1.5−3、2−3、2−4、2−5、2−10、2−20、2−50、3−5、3−10、3−20、3−50、4−5、4−10、4−20、4−50、5−10、5−15、5−20、又は5−50倍より高いか若しくはより低い)発現又は活性化レベルに相当することがある。或る場合には、相関は、分析物に特有である。限定的でない例としては、例えば近接アッセイ(COPIAなど)を使用して決定される発現又は活性化の“+”レベルは、参照用の発現又は活性化レベルと比較される場合、1つの分析物に関して発現又は活性化の2倍の増加、及び他の分析物に関して5倍の増加に相当することがある。
【0152】
特定の実施形態において、両方のトータル及び活性化した(例えば、リン酸化した)発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)又はシグナル伝達分子レベルは、本発明の抗体に基づくアッセイに従って細胞抽出物で測定して、そして、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/総量BCR−ABLタンパク質レベルの比)、又はシグナル伝達経路成分レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/総量CRKL、JAK2又はSTAT5タンパク質レベルの比)が計算され、次に、この比が、抗ガン剤の不存在下で作成される参照用の発現及び活性化プロフィールに基づいて計算される同様の比と比較される。
【0153】
或る実施形態では、ステップ(c)において決定される発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子の参照用の発現及び活性化レベルは、癌(例えば、血液悪性腫瘍)を有しない健常な個人からの、通常の細胞(非ガン細胞など)から得られる。所定の他の実施形態において、ステップ(c)において決定される発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子の参照用の発現及び活性化レベルは、癌(例えば、白血病又はリンパ腫)を有する患者からのサンプル(例えば、細胞抽出物)から腫瘍細胞から得られる。
【0154】
或る実施形態において、ステップ(c)において決定される発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子の参照用の発現及び活性化レベルは、抗ガン剤で治療されていない細胞(例えば、患者試料から得られる腫瘍細胞)から得られる。特定の実施形態において、抗がん剤で治療されていない細胞は、細胞抽出物を生成するために使用される単離された細胞(例えば、interrogateされるべきテスト細胞)から得られる同じサンプルから、得られる。所定の場合において、参照用の発現及び活性化レベルと比較される発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子についての発現及び活性化のより低いレベルの存在は、抗ガン剤がガンの治療に適していること(例えば、腫瘍は、抗ガン剤に対して反応が高まる可能性があること)を示す。所定の場合において、参照用の発現及び活性化レベルと比較される発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子についての発現及び活性化の同じか、同程度であるか、又はより高いレベルの存在は、抗ガン剤がガンの治療に適していないこと(例えば、腫瘍は、抗ガン剤に対して反応が減少する可能性があること)を示す。
【0155】
代わりの実施例では、ステップ(c)において決定される発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子の参照用の発現及び活性化レベルは、抗ガン剤で治療される、抗ガン剤に敏感な細胞から得られる。所定の場合において、参照用の発現及び活性化レベルと比較される発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子についての発現及び活性化の同じか、同程度であるか、又はより低いレベルの存在は、抗ガン剤がガンの治療に適していること(例えば、腫瘍は、抗ガン剤に対して反応が高まる可能性があること)を示す。このような実施形態において、ステップ(c)において決定される発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子の参照用の発現及び活性化レベルは、抗ガン剤で治療される、抗ガン剤に対して抵抗がある細胞から得られる。このような実施形態において、参照用の発現及び活性化レベルと比較される発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子についての発現及び活性化の同じか、同程度であるか、又はより高いレベルの存在は、抗ガン剤がガンの治療に適していないこと(例えば、腫瘍は、抗ガン剤に対して反応が減少する可能性があること)を示す。
【0156】
或る実施形態では、ステップ(c)において決定される発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子の発現及び活性化のより高いレベルは、発現又は活性化のレベルが、抗ガン剤で治療される細胞(例えば、患者サンプルから得られる癌細胞)における、抗ガン剤で治療される抗ガン剤感受性細胞における、又は抗ガン剤で治療される薬物抵抗性細胞における、相当する分析物の参照用の発現及び活性化レベルよりも、少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50又は100倍より高い(例えば、約1.5−3、2−3、2−4、2−5、2−10、2−20、2−50、3−5、3−10、3−20、3−50、4−5、4−10、4−20、4−50、5−10、5−15、5−20、又は5−50倍より高い)場合に、細胞抽出物中に存在すると考慮される。
【0157】
他の実施形態では、ステップ(c)において決定される発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子の発現及び活性化のより低いレベルは、発現又は活性化のレベルが、抗ガン剤で治療されるい細胞(例えば、患者サンプルから得られる癌細胞)における、抗ガン剤で治療される抗ガン剤感受性細胞における、又は抗ガン剤で治療される薬物抵抗性細胞における、相当する分析物の参照用の発現及び活性化レベルよりも、少なくとも約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、50又は100倍より低い(例えば、約1.5−3、2−3、2−4、2−5、2−10、2−20、2−50、3−5、3−10、3−20、3−50、4−5、4−10、4−20、4−50、5−10、5−15、5−20、又は5−50倍より低い)場合に、細胞抽出物中に存在すると考慮される。
【0158】
A.抗体配列
1つの観点において、本発明は、細胞抽出物における1以上の分析物に対して特異的である複数の希釈系列の捕捉抗体を含む優れたダイナミックレンジを有するアレイ(前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている)を提供する。
【0159】
或る実施形態では、細胞抽出物は、全血、尿、痰、気管支洗浄液、涙液、乳頭吸引液、リンパ液、唾液及び/又は微細針吸引液(FNA)サンプルから調製される。限定的でない例として、全血サンプルは、血漿又は血清分画及び細胞分画(すなわち、細胞ペレット)に最初に分けられる。細胞分画は、典型的には、赤血球、白血球(leukocytes)、及び/又は固形腫瘍の循環細胞、例えば、循環腫瘍細胞(CTC)、循環内皮細胞(CEC)、循環内皮前駆細胞(CEPC)、癌幹細胞(CSC)及びそれらの組み合わせを含有する。細胞分画に存在する単離細胞を溶解させ、それによって当分野で公知の任意の技術により単離細胞を細胞抽出物に変換することができる。
【0160】
或る場合には、細胞抽出物は、固形腫瘍の循環細胞の抽出物を含む。前記循環細胞を、典型的には、例えば、免疫磁気分離法(例えば、Racila et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:4589-4594 (1998);Bilkenroth et al., Int. J. Cancer, 92:577-582 (2001)参照)、マイクロ流体分離法(例えば、Mohamed et al., IEEE Trans. Nanobiosci., 3:251-256 (2004);Lin et al., Abstract No. 5147, 97th AACR Annual Meeting, Washington,D.C. (2006)参照)、FACS(例えば、Mancuso et al., Blood,97:3658-3661 (2001)参照)、密度勾配遠心分離法(例えば、Baker et al.,Clin. Cancer Res., 13:4865-4871 (2003)参照)、及び枯渇法(例えば、Meyeet al., Int. J. Oncol., 21:521-530 (2002)参照)を含む1つ又は2つ以上の分離方法を用いて患者試料から単離する。
【0161】
他の場合において、細胞抽出物は、例えば、好中球、好塩基球及び好酸球を含む顆粒白血球(多形核白血球)のような白血球;例えば、リンパ球及び単球のような末梢血単核細胞並びに大食細胞を含む無顆粒白血球(単核白血球);それらの混合物の抽出を含む。白血球は、例えば、Ficoll−HyPaque密度−勾配遠心分離、赤血球の低張性溶解、及びLymphoprep(商品名)及びPolymorphprep(商品名)(Axis−Shield;Oslo,Norway)のような密度勾配媒体の使用を含む、公知技術の任意の分離方法を使用する、全血から単離することができる。
【0162】
或る実施形態では、単離された白血球、循環細胞又は他の細胞(例えば、微細針吸引液を介して固形腫瘍から得られる細胞)は、目的の1以上の抗ガン剤でのインキュベーションの前、その間、及び/又はその後、インビトロで成長因子によって刺激することができる。刺激性成長因子として、上皮成長因子(EGF)、ヘレグリン(HRG)、TGF−α、PIGF、アンジオポエチン(Ang)、NRG1、PGF、TNF−α、VEGF、PDGF、IGF、FGF、HGF、サイトカインなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。他の場合において、離された細胞を、例えば、今後の成長因子刺激及び/又は抗ガン剤治療で溶解して、任意の公知技術を使用して細胞抽出物(例えば、細胞溶解物)を生成する。好ましくは、細胞溶解を、成長因子刺激後約1〜360分間の間に、及びより好ましくは2つの異なる時間間隔:(1)成長因子刺激の約1〜5分間後;及び(2)成長因子刺激後約30〜180分間で、開始する。代わりに、溶解物を、使用まで−80℃で保存することができる。循環細胞の単離、刺激及び溶解のためのプロトコールは、国際公開第2008/036802号パンフレットに記載されており、それはあらゆる目的のためにこれらの全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。組織、生検又は一次培養物からの腫瘍細胞抽出物の調製のためのプロトコールは、国際公開第2009/108637号パンフレットに記載されており、それはあらゆる目的のためにこれらの全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0163】
所定の実施形態において、抗癌剤は、抗シグナル伝達剤(すなわち、細胞増殖抑制薬)、例えば、モノクローナル抗体若しくはチロシンキナーゼ阻害剤;抗増殖剤;化学療法剤(すなわち、細胞毒性薬);ホルモン療法剤;放射線療法剤;ワクチン;及び/又は癌性細胞などの異常な細胞の制御されない増殖を低減又は阻害する能力を有する任意の他の化合物を含む。或る実施形態において、化学療法剤少なくとも1種と組み合わせた1種又は2種以上の抗シグナル伝達剤、抗増殖剤、及び/又はホルモン療法剤を用いて単離された細胞を処理する。
【0164】
抗シグナル伝達剤の例として、限定的でなく、モノクローナル抗体、例えば、トラスツズマブ(Herceptin(商標))、アレムツズマブ(Campath(商標))、ベバシズマブ(Avastin(商標))、セツキシマブ(Erbitux(商標))、ゲムツズマブ(Mylotarg(商標))、パニツムマブ(Vectibix(商品名))、リツキシマブ(Rituxan(商標))、及びトシツモマブ(BEXXAR(商標));チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、イマチニブメシレート(Gleevec(商標))、ニロチニブ(Tasigna(商標))、ダサチニブ(Sprycel(商標))、ボスチニブ(SKI−606(商標))、ゲフィチニブ(Iressa(商標))、スニチニブ(Sutent(商標))、エルロチニブ(Tarceva(商標))、ラパチニブ(GW−572016;Tykerb(商標))、カネルチニブ(CI1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY43−9006;Nexavar(商標))、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ(ZACTIMA(商品名);ZD6474);並びにそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0165】
典型的な抗増殖剤として、mTOR阻害剤、例えば、シロリムス(ラパマイシン)、テムシロリムス(CCI−779)、及びエベロリムス(RAD001);AKT阻害剤、例えば、1L6−ヒドロキシメチル−chiro−イノシトール−2−(R)−2−O−メチル−3−O−オクタデシル−sn−グリセロカーボネート、9−メトキシ−2−メチルエリプチシニウムアセテート、1,3−ジヒドロ−1−(1−((4−(6−フェニル−1H−イミダゾ[4,5−g]キノキサリン−7−イル)フェニル)メチル)−4−ピペリジニル)−2H−ベンズイミダゾール−2−オン、10−(4’−(N−ジエチルアミノ)ブチル)−2−クロロフェノキサジン、3−ホルミルクロモンチオセミカルバゾン(Cu(II)Cl2複合体)、API−2、プロトオンコジーンTCL1のアミノ酸10〜24に由来する15−merペプチド(Hiromura et al., J. Biol. Chem., 279:53407-53418 (2004), KP372-1, 及びKozikowski et al., J. Am. Chem. Soc., 125:1144-1145 (2003)及びKau et al., Cancer Cell, 4:463-476 (2003)に記載の化合物;並びにそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0166】
化学療法剤の限定的でない例として、白金に基づく薬剤(例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、スピロプラチン、イプロプラチン、サトラプラチンなど)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イフォスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソウレアなど)、代謝拮抗薬(例えば、5−フルオロウラシル、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、ロイコボリン、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン(Gemzar(商標))、ペメトレキセド(ALIMTA(商標))、ラルチトレキセドなど)、植物アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセル(Taxol(商標))、ドセタキセル(Taxotere(商標))など)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド(VP16)、エトポシドホスフェート、テニポシドなど)、抗腫瘍抗生物質(例えば、ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシンなど)、それらの薬学的に許容することのできる塩、それらの立体異性体、それらの誘導体、それらのアナログ、並びにそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0167】
ホルモン療法剤の例として、限定的でなく、アロマターゼ阻害剤(例えば、アミノグルテチミド、アナストロゾール(Arimidex(商標))、レトロゾール(Femara(商標))、ボロゾール、エキセメスタン(Aromasin(商標))、4−アンドロステン−3,6,17−トリオン(6−OXO)、1,4,6−アンドロスタトリエン−3,17−ジオン(ATD)、フォルメスタン(Lentaron(商標))など)、選択的エストロゲン受容体調節剤(例えば、バゼドキシフェン、クロミフェン、フルベストラント、ラソフォキシフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、トレミフェンなど)、ステロイド剤(例えば、デキサメタゾン)、フィナステリド、及びゴセレリンなどのゴナドトロピン放出性ホルモンアゴニスト(GnRH)、それらの薬学的に許容することのできる塩、それらの立体異性体、それらの誘導体、それらのアナログ、並びにそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0168】
癌ワクチンの限定的でない例として、Active Biotech社からのANYARA、Northwest Biotherapeutics社からのDCVax−LB、IDMPharma社からのEP−2101、Pharmexa社からのGV1001、Idera Pharmaceuticals社からのIO−2055、Introgen Therapeutics社からのINGN225及びBiomira/Merck社からのStimuvaxを挙げることができる。
【0169】
放射線療法剤の例として、限定的でなく、腫瘍抗原に向けられた抗体に場合によりコンジュゲートされていることがある、例えば47Sc、64Cu、67Cu、89Sr、86Y、87Y、90Y、105Rh、111Ag、111In、117mSn、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、211At、及び212Biなどの放射性核種を挙げることができる。
【0170】
特定の実施形態において、細胞抜粋に存在する1以上の分析物は、1つ又は複数の発癌性融合タンパク質単独、又は、1つ又は複数のシグナル伝達分子の組み合わせを含む。目的の発癌性融合タンパク質及びシグナル伝達分子の限定的でない例として、上述した通りである。
【0171】
或る実施形態において、各捕捉抗体の希釈系列は、一連の減少する捕捉抗体濃度を含む。所定の場合には、捕捉抗体を連続的に少なくとも2倍(例えば、2、5、10、20、50、100、500、又は1000倍)に希釈してアレイ上にスポットされる減少する捕捉抗体濃度の或るセット数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25又は25を超える)を含む希釈系列を生成する。好ましくは、それぞれの捕捉抗体希釈液を少なくとも2、3、4、5、又は6回反復してアレイ上にスポットする。
【0172】
他の実施形態において、固体支持体は、ガラス(例えば、ガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜(例えば、ナイロン、ニトロセルロース、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)、繊維束、又は任意の他の適切な基材を含む。好ましい実施形態において、捕捉抗体は、例えば、Whatman社(ニュージャージー州フローラムパーク)から商業的に入手することができるFAST(商標)スライドなどの、ニトロセルロースポリマーでコーティングされたガラススライド上に(例えば、共有結合性又は非共有結合性相互作用によって)拘束される。
【0173】
限定的でない例として、本発明のアドレス可能なマイクロアレイは、細胞抽出物におけるBCR−ABLの活性化状態を決定するために、捕捉抗体希釈系列を含み、捕捉抗体はBCR−ABL融合タンパク質のBCRドメインに向かっており、そして検出抗体(例えば、活性化状態非依存性抗体及び活性化状態依存性抗体)はABLドメインに向けられている。代わりの実施形態では、捕捉抗体及び活性化状態非依存性抗体の両方は、BCRABL融合タンパク質のBCRドメインに向けられており、活性化状態依存性抗体は、ABLドメインに向けられている。アレイは、一連の減少する濃度(すなわち、連続希釈液)の追加の融合タンパク質及び/又はシグナル伝達分子に向けられた複数の異なる捕捉抗体を更に含むことがあり、捕捉抗体は異なるアドレス可能な位置の固体支持体の表面に結合している。
【0174】
当業者であれば、アレイが、活性化された発癌性融合タンパク質及び/又はシグナル伝達分子の各々のための別々のシグナルが検出することを可能にする任意の構成を理解されよう。例えば、アレイは、支持表面上の異なった領域(例えば、ドット又はスポット)のライン又はグリッドとすることができ、各領域は、異なる捕捉抗体又は捕捉剤(すなわち、捕捉抗体に存在する捕捉タグを結合するために)を含む。アレイは、複数の発癌性融合タンパク質及び/又はシグナル伝達分子の活性化状態が単一、多重アッセイにおいて検出される方法において使用されるために構成することができる。種々の実施形態において、複数は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50又はより大きい発癌性融合タンパク質及び/又はシグナル伝達分子を含む。特定の実施形態において、複数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50又はより大きい追加の発癌性融合タンパク質及び/又はシグナル伝達分子との組み合わせの、BCR−ABL融合タンパク質を含む。
【0175】
B.近接二重検出アッセイ
特定の観点において、腫瘍細胞などの細胞の細胞抽出物中の目的の特定の分析物の活性化状態を検出するための本発明のアッセイは、優れたダイナミックレンジを有する多重で高スループットの近接(すなわち、3抗体)アッセイである。
【0176】
分析物が単一のタンパク質(例えば、EGFR)である場合における限定的でない例として、前記近接アッセイにおいて使用される3つの抗体は:(1)分析物に特異的な捕捉抗体;(2)分析物の活性化形に特異的な検出抗体(すなわち、活性化状態依存性抗体);及び(3)分析物の総量を検出する検出抗体(すなわち、活性化状態非依存性抗体)を含むことができる。活性化状態依存性抗体は、例えば、分析物のリン酸化、ユビキチン化、及び/又は複合体形成状態を検出することができる。活性化状態非依存性抗体は、分析物の活性化及び非活性化形態の両方を一般的に検出することができる。
【0177】
別の限定的でない例として、分析物が別のタンパク質(例えば、ABL)に相当する第2ドメインに融合する1つのタンパク質(例えば、BCR)に相当する第1ドメインを含んでいる融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)である場合において、近接アッセイにおいて使用する3つの抗体は、以下を含むことができる:
(1)融合タンパク質の第1ドメインに特異的な捕捉抗体;
(2)融合タンパク質(すなわち、活性化状態依存性抗体)の第2ドメインの活性型に特異的な検出抗体である;及び
(3)特に融合タンパク質の第2の領域と結合することによって[その活性化状態(すなわち、活性化状態から独立した抗体)に関わらず]、融合タンパク質の総量を検出する検出抗体。活性化状態依存性抗体は、例えば、前記分析物のリン酸化、ユビキチン化、及び/又は複合体形成状態を検出することができる。代わりに、検出抗体は、細胞抽出物中の前記分析物の総量を検出する、活性化状態非依存性抗体を含む。
【0178】
好ましい観点では、本発明は、優れたダイナミックレンジを有する多重で高スループットなイムノアッセイを実施する方法であって、前記方法が以下の工程を含む:
(a)細胞抽出物を、1以上の発癌性融合タンパク質に特異的な1又は複数の捕捉抗体の希釈系列とインキュベートして、複数の捕捉された発癌性融合タンパク質を形成する工程であって、各々の捕捉抗体が、固体支持体上に拘束されており、前記発癌性融合タンパク質が、第1のタンパク質に対応する第ドメインと第2の異なるタンパク質に対応する第ドメインを含み、そして、前記捕捉抗体が、融合タンパク質の第1ドメインに特異的である、前記工程;
(b)複数の捕捉された融合タンパク質を、前記融合タンパク質の第2ドメインに特異的な検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された融合タンパク質を形成する工程であって、前記検出抗体が以下を含む:
(1)促進成分を用いて標識化される複数の活性化状態非依存性抗体、及び
(2)シグナル増幅対の第1メンバーを用いて標識化される複数の活性化状態依存性抗体、
前記促進成分が、前記シグナル増幅対の第1メンバーにチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する、前記工程;
(c)複数の検出可能な捕捉された融合タンパク質を、前記シグナル増幅対の第2メンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成する工程;及び
(d)前記シグナル増幅対の第1及び第2メンバーから生成される増幅シグナルを検出する工程。
【0179】
1つの別の観点では、優れたダイナミックレンジを有する多重で高スループットなイムノアッセイを実施する方法が、以下の工程を含む:
(a)細胞抽出物を、1以上の発癌性融合タンパク質に特異的な1又は複数の捕捉抗体の希釈系列とインキュベートして、複数の捕捉された発癌性融合タンパク質を形成する工程であって、各々の捕捉抗体が、固体支持体上に拘束されており、前記発癌性融合タンパク質が、第1のタンパク質に対応する第ドメインと第2の異なるタンパク質に対応する第ドメインを含み、そして、前記捕捉抗体が、融合タンパク質の第1ドメインに特異的である、前記工程;
(b)複数の捕捉された融合タンパク質を、検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された融合タンパク質を形成する工程であって、前記検出抗体が以下を含む:
(1)促進成分を用いて標識化される複数の活性化状態非依存性抗体(前記活性化状態非依存性抗体が、前記融合タンパク質の第1ドメインに特異的である)、及び
(2)シグナル増幅対の第1メンバーを用いて標識化される複数の活性化状態依存性抗体(前記活性化状態依存性抗体が、前記融合タンパク質の第2ドメインに特異的である)、
前記促進成分が、前記シグナル増幅対の第1メンバーにチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する、前記工程;
(c)複数の検出可能な捕捉された発癌性融合タンパク質を、前記シグナル増幅対の第2メンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成する工程;及び
(d)前記シグナル増幅対の第1及び第2メンバーから生成される増幅シグナルを検出する工程。
【0180】
別の代わりの観点では、優れたダイナミックレンジを有する多重で高スループットなイムノアッセイを実施する方法が、以下の工程を含む:
(a)細胞抽出物を、1以上の発癌性融合タンパク質に特異的な1又は複数の捕捉抗体の希釈系列とインキュベートして、複数の捕捉された発癌性融合タンパク質を形成する工程であって、各々の捕捉抗体が、固体支持体上に拘束されており、前記発癌性融合タンパク質が、第1のタンパク質に対応する第ドメインと第2の異なるタンパク質に対応する第ドメインを含み、そして、前記捕捉抗体が、融合タンパク質の第1ドメインに特異的である、前記工程;
(b)複数の捕捉された融合タンパク質を、検出抗体とインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された融合タンパク質を形成する工程であって、前記検出抗体が以下を含む:
(1)促進成分を用いて標識化される複数の活性化状態非依存性抗体[前記活性化状態非依存性抗体が、前記融合タンパク質の第1と第2ドメインとの間の融合の配列、サイト、又はポイントに特異的である(すなわち、接合抗体)]、及び
(2)シグナル増幅対の第1メンバーを用いて標識化される複数の活性化状態依存性抗体(前記活性化状態依存性抗体が、前記融合タンパク質の第2ドメインに特異的である)、
前記促進成分が、前記シグナル増幅対の第1メンバーにチャネリングして該メンバーと反応する酸化剤を生成する、前記工程;
(c)複数の検出可能な捕捉された発癌性融合タンパク質を、前記シグナル増幅対の第2メンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成する工程;及び
(d)前記シグナル増幅対の第1及び第2メンバーから生成される増幅シグナルを検出する工程。
【0181】
所定の実施形態では、細胞抽出物に存在する1以上のシグナル伝達分子は、1以上の融合タンパク質に加えて検出される。目的のシグナル伝達分子の例として、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ及び/又はチロシンキナーゼシグナル伝達カスケード成分が挙げられ、記載されているが、これに限定されるものではない。シグナル伝達分子は、本明細書において記載されている方法を使用するか[全3つの抗体(すなわち、捕捉抗体及び両方の検出抗体)が同じタンパク質に向けられていることを除く]、又は当業者で公知の任意の方法を使用して、検出することができる。加えて、シグナル伝達分子は、あらゆる目的のためにこれらの全体が参照することにより本明細書に組み込まれる、国際公開第2008/036802号パンフレットに記載されている単一の検出(すなわち、2抗体)アッセイを使用して検出することができる。特定の実施形態において、細胞抽出物に存在する1以上のシグナル伝達分子は、本願明細書において記載されているイムノアッセイ及びアッセイを使用して、1以上の融合タンパク質と共に検出される。
【0182】
ある場合には、細胞抽出物は、固体支持体にすでに拘束される捕捉抗体とインキュベートされる。他の場合において、細胞抽出物は、溶液の捕捉抗体と最初にインキュベートされ、次に固体支持体と接触して、例えば固体支持体に結合する捕捉剤と相互作用する捕捉抗体に存在する捕捉タグを介して、捕捉された分析物を固定化する。
【0183】
或る実施形態では、検出抗体は、溶液の捕捉抗体に結合するか、又は固体支持体に拘束される分析物とインキュベートされる。所定の場合において、複数の分析物を含む細胞抽出物は、溶液中の検出抗体と最初にインキュベートされ、次に溶液中の捕捉抗体と接触するか、又は固体支持体に拘束される。所定の他の場合において、複数の分析物を含む細胞抽出物は、溶液の捕捉抗体及び検出抗体と最初にインキュベートされ、次に固体支持体と接触して、例えば固体支持体に結合する捕捉剤と相互作用する捕捉抗体又は検出抗体に存在する捕捉タグを介して、抗体−分析物複合体を固定化する。検出ステップの前に、固定された複合体は、複合されていない抗体を除去するために洗浄することができ、その洗浄された複合体は、支持体表面から順次放出することができ、そして、アッセイされている分析物の各々のための近接チャネリングは、本願明細書において記載されている適切な方法によって検出することができる。
【0184】
支持表面が、アレイにおいて拘束されている捕捉剤を含む実施形態において、インキュベートステップは、反応を終了に導くための過剰な全3つの抗体を使用して、溶液中に複数の分析物を含む細胞抽出物を、捕捉抗体及び検出抗体と接触させることを含むことができる。方法の1つの変形において、得られた抗体−分析物複合体は、固相に結合しており、結合していない抗体を除去するために洗浄される。あらゆる目的のためにこれらの全体が参照することにより本明細書に組み込まれる、国際公開第2008/036802号パンフレットにおける図2に図示するように、捕捉抗体1は、捕捉タグ10を含むことができる。固相に付着され捕捉タグを結合する捕捉剤11を介して、複合体は固相12に結合して、これによって、複合体を固定化する。固定された複合体は、適切なバッファによって洗浄されて、そして、放出剤13を添加することによって、固相から放出される。放出剤は、洗浄された複合体の放出をもたらす任意のメカニズムによっても機能することができる。1つの実施形態において、捕捉タグは、放出剤によって認識されて、切断される開裂可能な部位を含む。別の実施形態では、図2で示すように、放出剤は、捕捉剤に結合するための捕捉タグと競争する。例えば、捕捉剤は、捕捉抗体に付着される部分的な相補的オリゴヌクレオチド(すなわち、捕捉タグ)とハイブリダイズする第1のオリゴヌクレオチドであることがあり;そして、放出剤は、ストランド置換及び固相からの洗浄された複合体の放出をもたらす、捕捉剤に完全に相補的であるオリゴヌクレオチドであることがある。使用することが可能な、適切な捕捉タグ/捕捉剤/放出剤は、2,4−ジニトロフェノール(DNP)/抗DNP抗体/2,4−DNPリジン;T2/反T3抗体/T3;ウアバイン/抗ジゴキシン抗体/ジゴキシン;そして、デチオ・ビオチン/ストレプトアビジン/ビオチン(例えば、Ishikawa et al., J. Clin. Lab Anal., 12:98-107 (1998)参照)を含むが、これに限定されるものではない。
【0185】
洗浄した複合体が固相から放出されたあと、それは、(1)捕捉抗体上の捕捉タグを特異的に結合するアレイ中で拘束された捕捉分子を含む支持体表面と接触するか、又は(2)解離するかのどちらかであり、そして解離した検出抗体が、検出抗体上の捕捉タグを特異的に結合する捕捉剤を含む支持体表面と接触する。国際公開第2008/036802号パンフレットにおける図2は、洗浄した複合体が解離し、そして、解離した検出抗体が、支持面14と接触する実施形態を表している。支持体表面は、「アドレス可能な」又は「ジップコード」アレイにおいて拘束される複数の捕捉分子を含む。配列の各々別個の領域は、活性化状態非依存性検出抗体2又は活性化状態依存性抗体3に存在する捕捉タグ8と特異的に結合する特有な捕捉剤9を含み、これによって、アレイ中のタグを付けられた検出抗体を拘束し組織化される。好ましい実施形態において、捕捉剤及び捕捉タグは、お互いに特異的にハイブリダイズされるオリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチド捕捉分子を含むアドレス可能なアレイは、公知技術である(例えば、Keramas et al., LabChip, 4:152-158 (2004); Delrio-Lafreniere et al.,Diag. Microbiol. Infect. Dis., 48:23-31 (2004)参照)。
【0186】
アレイの各々別個の領域での検出抗体の存在によって、成分、例えば、促進成分又はシグナル増幅対の第1のメンバーと、直接又は間接的に検出することができる。直接検出することができる成分の例として、フルオロフォア、発色団、コロイド状金、着色したラテックスが挙げられる。1つの実施形態において、両方の成分は、独立して選択されたフルオロフォアである。お互いに近く近接しながら識別可能に読み出しを提供するフルオロフォアの任意のペアとしては、例えば、Cy3/Cy5、Cy5/フィコエリトリンなどを使用することができる。代わりに、オリゴヌクレオチドのアドレス可能なアレイを使用する場合、両方の成分は異なるジップコードに送達される同じフルオロフォアであることが可能である。レーザー読取り共焦顕微鏡検査は、アレイ上に付着されるフルオロフォア成分を検出するために使用することができる。複合体が検出前にアレイから放出されるアッセイ、例えば、ストランド置換アッセイにおいて、フルオロフォア成分を検出する適切な方法は、蛍光、ナノHPLC、マイクロ毛管電気泳動などを含むキャピラリーフロー共焦レーザーを含む。
【0187】
或る実施形態において、活性化状態非依存性抗体は、検出可能な成分を更に含む。このような場合に、前記検出可能な成分の量は、細胞抽出物中の分析物1種又は2種以上の量と相関的である。検出可能な成分の例として、蛍光標識、化学的に反応性の標識、酵素標識、放射活性標識などを挙げることができるがそれらに限定されない。好ましくは、検出可能な成分は、フルオロフォア、例えば、AlexaFluor(商標)ダイ(例えば、Alexa Fluor(商標)647)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Oregon Green(商品名);ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、CyDye(商品名)フルオル(例えば、Cy2、Cy3、Cy5)である。検出可能な成分は、当分野において周知の方法を用いて活性化状態非依存性抗体に直接的又は間接的に結合させることができる。
【0188】
所定の場合に、活性化状態非依存性抗体は、検出可能な成分を更に含む。促進成分を、当分野において周知の方法を用いて活性化状態非依存性抗体に結合させることができる。本発明において使用するのに適した促進成分として、該促進成分に近接した(すなわち、空間的に近接する又は近い)別の分子へチャネリングして(すなわち、該分子へ方向付けられて)該分子と反応する(すなわち、結合する、それによって結合される、又は一緒に複合体を形成する)酸化剤を生成することができる任意の分子を挙げることができる。促進成分の例として、限定的でなく、グルコースオキシダーゼ(GO)又は電子受容体として分子酸素(O)を含む酸化/還元反応を触媒する任意の他の酵素などの酵素、及びメチレンブルー、ローズベンガル、ポルフィリン、スクアレート染料、フタロシアニンなどの光増感剤を挙げることができる。酸化剤の限定的でない例として、過酸化水素(H)、一重項酸素、及び酸化/還元反応において酸素原子を移動させ又は電子を獲得する任意の他の化合物を挙げることができる。好ましくは、適切な基質(例えば、グルコース、光など)の存在下で、促進成分(例えば、グルコースオキシダーゼ、光増感剤など)は、2つの成分が相互に近接している場合に、シグナル増幅対の第1のメンバー(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、保護基によって保護されたハプテン、酵素阻害剤へのチオエーテル結合によって不活性化された酵素など)へチャネリングして該第1のメンバーと反応する酸化剤(例えば、過酸化水素(H)、一重項酸素など)を生成する。
【0189】
スルフヒドリル活性化デキストラン分子の調製、及び抗体と促進成分(例えば、グルコースオキシダーゼ(GO))との間にコンジュゲートさせるためのそれらの使用は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/108637号パンフレットに記載されている。
【0190】
所定の他の場合に、第1の活性化状態非依存性抗体を、活性化状態非依存性抗体にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドリンカーと促進成分にコンジュゲートされた相補的オリゴヌクレオチドリンカーとの間のハイブリダイゼーションを介して促進成分を用いて間接的に標識化する。オリゴヌクレオチドリンカーを、当分野において周知の方法を用いて促進成分又は活性化状態非依存性抗体に結合することができる。或る実施形態において、促進成分にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドリンカーは、活性化状態非依存性抗体にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドリンカーに対して100%の相補性を有する。他の実施形態では、オリゴヌクレオチドリンカー対は、例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイゼーションする際に、少なくとも1、2、3、4、5、6以上のミスマッチ領域を含む。当業者であれば、異なる分析物に特異的な活性化状態非依存性抗体を、同一のオリゴヌクレオチドリンカー又は異なるオリゴヌクレオチドリンカーのいずれかにコンジュゲートさせることができることを理解されよう。
【0191】
促進成分又は活性化状態非依存性抗体にコンジュゲートするオリゴヌクレオチドリンカーの長さは、様々であることができる。一般に、リンカー配列は、長さが少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、又は100ヌクレオチドであることができる。典型的には、結合のためのランダム核酸配列が生成される。限定的でない例として、オリゴヌクレオチドリンカーのライブラリーは、3つの別個の隣接するドメイン:スペーサードメイン;シグニチャードメイン;及びコンジュゲーションドメインを有するように設計することができる。好ましくは、オリゴヌクレオチドリンカーは、それらがコンジュゲートされる促進成分又は活性化状態非依存性抗体の機能を破壊することなく効率的に結合するように設計される。
【0192】
オリゴヌクレオチドリンカー配列は、様々なアッセイ条件下で任意の二次構造形成を防止し又は最小にするように設計することができる。典型的には、リンカー内の各セグメントについて融解温度を注意深く監視して、全アッセイ手順においてそれらが関与できるようにする。一般には、リンカー配列のセグメントの融解温度の範囲は、5℃以下である。規定されたイオン濃度下で融解温度、二次構造、及びヘアピン構造を決定するためのコンピュータアルゴリズム(例えば、OLIGO 6.0)を用いて、各リンカー内の3つの異なるドメインそれぞれを分析することができる。その全結合配列を、それらの構造的特徴付け及び他のコンジュゲートされるオリゴヌクレオチドリンカー配列に対するそれらの相補性についても、例えば、それらがストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で相補的なオリゴヌクレオチドリンカーにハイブリダイズするか否かについても分析することができる。
【0193】
オリゴヌクレオチドリンカーのスペーサー領域は、オリゴヌクレオチド架橋部位からのコンジュゲートドメインの適切な分離を与える。コンジュゲートドメインは、相補的オリゴヌクレオチドリンカー配列で標識化された分子を核酸ハイブリダイゼーションによってコンジュゲーションドメインへ結合させるように機能する。核酸媒介ハイブリダイゼーションは、抗体−分析物(すなわち、抗原)複合体形成の前後のいずれかで実施することができるので、より柔軟性のあるアッセイフォーマットを提供することができる。多数の直接的抗体コンジュゲーション方法と異なり、抗体又は他の分子への比較的に小さなオリゴヌクレオチドの結合は、標的分析物に対する抗体の特異的親和性又はコンジュゲートされた分子の機能に与える影響を最小にする。
【0194】
或る実施形態において、オリゴヌクレオチドリンカーのシグニチャー配列ドメインは、複合多重化タンパク質アッセイに用いることができる。異なるシグニチャー配列を有するオリゴヌクレオチドリンカーと複数の抗体とをコンジュゲートさせることができる。多重イムノアッセイにおいて、適切なプローブで標識化されたレポーターオリゴヌクレオチド配列を用いて、多重アッセイフォーマットにおける抗体とそれらの抗原との間の交差反応性を検出することができる。
【0195】
オリゴヌクレオチドリンカーを、幾つかの異なる方法を用いて抗体又は他の分子にコンジュゲートすることができる。例えば、5’又は3’末端上のチオール基を用いてオリゴヌクレオチドリンカーを合成することができる。還元剤(例えば、TCEP−HCl)を用いてチオール基を脱保護することができ、生じたリンカーを脱塩スピンカラムを用いることによって精製することができる。得られた脱保護オリゴヌクレオチドリンカーを、SMCCなどのヘテロ二官能性架橋剤を用いて抗体又は他のタイプのタンパク質の第一アミンにコンジュゲートすることができる。代わりに、水溶性カルボジイミドEDCを用いてオリゴヌクレオチド上の5’−リン酸基を処理してリン酸エステルを形成しそして引き続いてアミン含有分子に結合することができる。所定の場合に、3’−リボース残基上のジオールをアルデヒド基へ酸化し、次いで還元的アミノ化を用いて抗体又は他のタイプのタンパク質のアミン基にコンジュゲートすることができる。所定の他の場合に、オリゴヌクレオチドリンカーを、3’又は5’末端上でのビオチン修飾により合成し、ストレプトアビジン標識化分子へコンジュゲートすることができる。
【0196】
オリゴヌクレオチドリンカーは、当分野において公知である様々な技術のいずれか、例えば、Usman et al., J. Am. Chem. Soc., 109:7845 (1987); Scaringe et al.,Nucl. Acids Res., 18:5433 (1990); Wincott et al., Nucl. Acids Res.,23:2677-2684 (1995); 及びWincott et al., Methods Mol.Bio., 74:59 (1997)に記載されている技術を用いて合成することができる。一般に、オリゴヌクレオチドの合成は、例えば、5’末端におけるジメトキシトリチル及び3’末端におけるホスホルアミジットなどの共通の核酸保護基及び結合基を利用する。オリゴヌクレオチド合成に適切な試薬、核酸脱保護の方法、及び核酸精製の方法は、当業者には公知である。
【0197】
トータル及びリン酸化された分析物を同時検出するための、抗体がコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドの調製及び使用は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/036802号パンフレットに記載されている。
【0198】
所定の場合に、活性化状態依存性抗体を、シグナル増幅対の第1のメンバーを用いて直接的に標識化する。当分野において周知の方法を用いて、活性化状態依存性抗体にシグナル増幅対のメンバーを結合させることができる。所定の他の場合に、活性化状態依存性抗体にコンジュゲートされた結合対の第1のメンバーとシグナル増幅対の第1のメンバーにコンジュゲートされた結合対の第2のメンバーとの間の結合を介してシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて活性化状態依存性抗体を直接的に標識化する。当分野において周知の方法を用いてシグナル増幅対のメンバー又は活性化状態依存性抗体に結合対メンバー(例えば、ビオチン/ストレプトアビジン)を結合することができる。シグナル増幅対のメンバーの例として、ペルオキシダーゼ、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、カタラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、チトクロームcペルオキシダーゼ、好酸球ペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、甲状腺ペルオキシダーゼ、脱ヨード酵素などを挙げることができるがそれらに限定されない。シグナル増幅対のメンバーの他の例として、保護基によって保護されたハプテン及び酵素阻害剤へのチオエーテル結合によって不活性化された酵素を挙げることができる。
【0199】
捕捉抗体、活性化状態非依存性抗体及び活性化状態依存性抗体を、代表的に、分析物結合に関するそれらの間の競合を最小化するように選択する(すなわち、すべての抗体は、それらの対応する融合タンパク質又はシグナル伝達分子に同時に結合することができる)。
【0200】
近接チャネリングの1つの例において、促進成分はグルコースオキシダーゼ(GO)であり、シグナル増幅対の第1のメンバーは西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である。GOをグルコースなどの基質と接触させると、GOは酸化剤(すなわち、過酸化水素(H))を生成する。HRPがGOに対してチャネリング近接内にあると、GOによって生成されたHは、HRPへチャネリングしHRPと複合体化してHRP−H複合体を形成し、該複合体はシグナル増幅対の第2のメンバー(例えば、ルミノール若しくはイソルミノールなどの化学発光基質又はチラミド(例えば、ビオチン−チラミド)、ホモバニリン酸、若しくは4−ヒドロキシフェニル酢酸などの蛍光発生性基質)の存在下で増幅シグナルを生成する。近接アッセイにおいてGO及びHRPを使用する方法は、例えば、Langry et al., U.S. Dept. of Energy Report No. UCRL-ID-136797 (1999)に記載されている。ビオチン−チラミドをシグナル増幅対の第2メンバーとして用いる場合、HRP−H複合体はチラミドを酸化して、近くの求核性残基に共有的に結合する反応性チラミド基を生成する。活性化されたチラミドは、直接的に検出されるか、又は、例えば、ストレプトアビジン標識化フルオロフォア若しくはストレプトアビジン標識化ペルオキシダーゼと発色試薬との組み合わせなどのシグナル検出性試薬の添加により検出される。本発明において用いるのに適切なフルオロフォアの例として、AlexaFluor(商標)ダイ(例えば、Alexa Fluor(商標)555)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Oregon Green(商品名);ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)、CyDye(商品名)フルオル(例えば、Cy2、Cy3、Cy5)などを挙げることができるがそれらに限定されない。当分野において周知の方法を用いてフルオロフォア又はペルオキシダーゼに直接的又は間接的にストレプトアビジン標識を結合することができる。本発明において用いるのに適切な発色試薬の限定的でない例として、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、4−クロロ−1−ナフトール(4CN)、及び/又はポルフィリノーゲンを挙げることができる。
【0201】
近接チャネリングの別の例において、促進成分は光増感剤であり、シグナル増幅対の第1のメンバーは特異的結合パートナー(例えば、リガンド、抗体など)へのハプテンの結合を防止する保護基を用いて保護されている複数のハプテンを用いて標識化された大分子である。例えば、シグナル増幅対のメンバーは、保護されたビオチン、クマリン、及び/又はフルオレセイン分子で標識化されたデキストラン分子であることができる。適切な保護基として、フェノキシ−、アナリノ−、オレフィン−、チオエーテル−、及びセレノエーテル−保護基が含まれるがそれらに限定されない。本発明の近接アッセイにおいて使用するのに適切な追加の光増感剤及び保護されたハプテン分子は、米国特許第5,807,675号明細書に記載されている。光増感剤は光で励起されると、酸化剤(すなわち、一重項酸素)を生成する。ハプテン分子が光増感剤に対してチャネリング近接内に存在する場合は、光増感剤によって生成された一重項酸素は、ハプテンの保護基上のチオエーテルへチャネリングし、そして該チオエーテルと反応してカルボニル基(ケトン又はアルデヒド)及びスルフィン酸を生じて、ハプテンから保護基を遊離させる。次いで、この保護されていないハプテンは、前記シグナル増幅対の第2のメンバー(例えば、検出可能なシグナルを生成することができる特異的結合パートナー)へ特異的に結合するのに利用することができる。例えば、ハプテンがビオチンである場合は、特異的結合パートナーは酵素標識化されたストレプトアビジンであることができる。典型的な酵素として、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、HRPなどを挙げることができる。洗浄して未結合の試薬を除去した後、酵素の検出可能な(例えば、蛍光、化学発光、発色性などの)基質を添加することによって検出可能なシグナルを生成し、そして当分野において公知の適切な方法及び計測手段を用いてこれを検出することができる。代わりに、チラミドシグナル増幅を用いて検出可能なシグナルを増幅し、そして活性化されたチラミドを直接的に検出し又は前記のようにシグナル検出性試薬の添加により検出することができる。
【0202】
近接チャネリングの更に別の例において、促進成分は光増感剤であり、そしてシグナル増幅対の第1のメンバーは酵素−阻害剤複合体である。酵素及び阻害剤(例えば、ホスホン酸で標識化されたデキストラン)を、開裂可能なリンカー(例えば、チオエーテル)によって一緒に結合する。光増感剤は光で励起されると、酸化剤(すなわち、一重項酸素)を生成する。酵素−阻害剤複合体が光増感剤に対してチャネリング近接内に存在する場合、前記光増感剤によって生成された一重項酸素は、開裂可能なリンカーへチャネリングされて該リンカーと反応し、酵素から阻害剤を遊離させ、それにより酵素を活性化する。酵素基質を添加して検出可能なシグナルを生成するか、又は代わりに、増幅試薬を添加して増幅シグナルを生成する。
【0203】
近接チャネリングの更なる例において、促進成分はHRPであり、シグナル増幅対の第1のメンバーは前記のように保護されたハプテン又は酵素−阻害剤複合体であり、そして保護基はp−アルコキシフェノールを含む。フェニレンジアミン及びHの添加は、保護されたハプテン又は酵素−阻害剤複合体にチャネリングしp−アルコキシフェノール保護基と反応して露出されたハプテン又は反応性酵素を生ずる、反応性フェニレンジイミンを生成する。増幅シグナルは、前記のように生成及び検出される(例えば、米国特許第5,532,138号明細書及び第5,445,944号明細書参照)。
【0204】
当業者は、抗体以外の結合パートナーが、本願明細書において記載されている近接(すなわち、3抗体)アッセイに従う細胞抽出物から1以上の分析物を固定化及び/又は検出するために使用することができることを理解されよう。このような結合パートナーの限定的でない例として、分析物のリガンド又は受容体、分析物の基質、結合ドメイン(例えば、PTB、SH2など)、アプタマーなどの配位子又はレセプタを含む。
【0205】
本明細書に記載した近接アッセイを実施するための典型的なプロトコールは、実施例1に与えられている。
【0206】
別の実施形態において、本発明は、前記の2近接アッセイを実施するためのキットであって、以下:(a)固体支持体上に拘束された希釈系列の複数の捕捉抗体;及び(b)複数の検出抗体(例えば、活性化状態非依存性抗体及び活性化状態依存性抗体)を含むキットを提供する。或る場合には、前記キットは、1つ又は複数の融合タンパク質及び/又はシグナル伝達分子の活性化状態を検出するキットの使用方法の説明書をさらに含んでいることができる。前記キットはまた、本発明の固有の方法を実施することに関して前記の追加の試薬のいずれか、例えば、シグナル増幅対の第1及び第2のメンバー、チラミドシグナル増幅試薬、促進成分の基質、洗浄バッファなども含んでいることができる。
【0207】
IV.抗体アッセイの構築
所定の観点において、本発明は、固体支持体に拘束される希釈系列の捕捉抗体を使用して、細胞抽出物の1つ又は複数の融合タンパク質の活性化状態を検出するための抗体に基づくアレイを提供する。本発明のアッセイに使用されるアレイは、代表的に、異なるアドレス可能な位置の固体支持体の表面に結合される捕捉抗体濃度の範囲で、複数の1以上の異なる捕捉抗体を含む。
【0208】
固体支持体は、タンパク質を固定化するのに適切な任意の基材を含むことができる。固体支持体の例として、ガラス(例えば、ガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ(例えば、磁気ビーズ、ポリスチレンビーズなど)、紙、膜、繊維束、ゲル、金属、セラミックなどを挙げることができるがそれらに限定されない。ナイロン(Biotrans(商品名)、ICNBiomedicals社(カリフォルニア州コスタメサ);Zeta−Probe(商標)、Bio−Rad Laboratories社(カリフォルニア州ハーキュリーズ))、ニトロセルロース(Protran(商標)、Whatman社(ニュージャージー州フローラムパーク))、及びPVDF(Immobilon(商品名)、Millipore社(マサチューセッツ州ビルリカ))などの膜は、本発明のアレイにおける固体支持体として使用するのに適切である。好ましくは、捕捉抗体は、例えば、Whatman社(ニュージャージー州フローラムパーク)から商業的に入手することができるFAST(商標)スライドなどのニトロセルロースポリマーでコーティングされたガラススライド上に拘束される。
【0209】
固体支持体の望ましい特定の側面には、大量の捕捉抗体と結合する能力、最小の変性で捕捉抗体と結合する能力、及び他のタンパク質を結合することができない能力が含まれる。別の適切な側面は、固体支持体が、捕捉抗体を含有する抗体溶液が前記支持体に適用される場合に最小の「ウィッキング(wicking)」を示すことである。最小のウィッキングを有する固体支持体は、前記支持体に適用された捕捉抗体溶液の小アリコートが固定化された捕捉抗体の小さな規定スポットを生じさせることを可能にする。
【0210】
捕捉抗体は、典型的には、共有結合性又は非共有結合性相互作用(例えば、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、双極子間結合)を介して固体支持体上に直接的又は間接的に(例えば、捕捉タグを介して)拘束される。或る実施形態では、標準架橋方法及び条件を用いるホモ二官能性又はヘテロ二官能性架橋剤を用いて前記固体支持体へ捕捉抗体が共有結合される。適切な架橋剤は、例えば、PierceBiotechnology社(イリノイ州ロックフォード)などの販売業者から商業的に入手することができる。
【0211】
本発明のアレイを生成するための方法として、タンパク質又は核酸アレイを構築するために用いられる任意の技術を挙げることができるがそれらに限定されない。或る実施形態では、捕捉抗体は、典型的にはスプリットピン、ブラントピン、又はインクジェットプリンティングを備えたロボットプリンターである、マイクロスポッターを用いてアレイ上にスポットされる。本明細書に記載した抗体アレイをプリントするのに適切なロボットシステムとして、ChipMaker2スプリットピン(TeleChemInternational社;カリフォルニア州サニーベール)を備えるPixSys 5000ロボット(Cartesian Technologies社;カリフォルニア州アーヴィン)並びにBioRobics社(マサチューセッツ州ウォバーン)及びPackardInstrument社(コネチカット州メリデン)から入手することができる他のロボットプリンターを挙げることができる。好ましくは、各捕捉抗体希釈液を少なくとも2、3、4、5、又は6回反復してアレイ上にスポットする。
【0212】
本発明において使用するのに適切なアレイを生成するための別の方法は、支持体上に規定容量の液体を引き出すのに有効な条件下で固体支持体上にキャピラリーディスペンサを接触させることによって、それぞれの選択されたアレイ位置に既知容量の捕捉抗体希釈液を分注する工程を含み、それぞれの選択されたアレイ位置において選択された捕捉抗体希釈液を用いてこのプロセスが繰り返されて完全なアレイを作成する。前記方法は、複数のこのようなアレイを形成する際に実施することができるが、ここで溶液堆積工程は複数の各固体支持体上の選択された位置にそれぞれ反復サイクルで適用される。このような方法の詳細な説明は、例えば、米国特許第5,807,522号明細書の中に見出すことができる。
【0213】
所定の場合には、紙にプリントするためのデバイスを用いて本発明の抗体アレイを生成することができる。例えば、デスクトップ型ジェットプリンターのプリントヘッド内に所望の捕捉抗体希釈液を充填して適切な固体支持体上にプリントすることができる(例えば、Silzel et al., Clin. Chem., 44:2036-2043 (1998)参照)。
【0214】
或る実施形態において、固体支持体上に生成されたアレイは、少なくとも約5スポット/cm、及び好ましくは、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000又は9000、又は10,000スポット/cmの密度を有する。
【0215】
所定の場合に、固体支持体上のスポットは各々、異なる捕捉抗体を表す。所定の他の場合に、固体支持体上の複数のスポットは、例えば、一連の減少する捕捉抗体濃度を含む希釈系列として、同一の捕捉抗体を表す。
【0216】
固体支持体上に抗体アレイを調製及び構築するための方法の追加の例は、米国特許第6,197,599号明細書、第6,777,239号明細書、第6,780,582号明細書、第6,897,073号明細書、第7,179,638号明細書、及び第7,192,720号明細書;米国特許出願公開第20060115810号明細書、第20060263837号明細書、第20060292680号明細書、及び第20070054326号明細書;並びにVarnum et al., Methods Mol. Biol., 264:161-172 (2004)に記載されている。
【0217】
抗体アレイを走査する方法は当分野において公知であり、そしてその方法として、限定的でなく、タンパク質又は核酸アレイを走査するために用いられる任意の技術を挙げることができる。本発明において使用するのに適切なマイクロアレイスキャナーは、PerkinElmer社(マサチューセッツ州ボストン)、AgilentTechnologies社(カリフォルニア州パロアルト)、Applied Precision社(ワシントン州イサクアー)、GSI Lumonics社(マサチューセッツ州ビルリカ)、及びAxonInstruments社(カリフォルニア州ユニオンシティ)から入手することができる。限定的でない例として、蛍光検出用のGSI ScanArray3000を、定量に対してImaGeneソフトウエアとともに使用することができる。
【0218】
V.癌療法のための薬剤の選択及び最適化
所定の観点において、本発明は、1以上の無秩序なシグナル伝達経路をダウンレギュレート又は活動停止させるために適切な療法を選択するための方法を提供する。所定の他の観点において、本発明は、癌を有し、且つ癌治療のための治療過程を受ける被験者において療法を最適化するため及び/又は毒性を減少するための方法を提供する。従って、本発明は、所定の患者の癌又は腫瘍における活性化された発癌性融合タンパク質及び/又はシグナル伝達タンパク質の収集によって提供される特定分子シグニチャーに基づいて各個人の療法の設計を促進することができる。
【0219】
従って、1つの特定の観点では、本発明は、癌を有し、且つ癌治療のための治療過程を受ける被験者において療法を最適化するため及び/又は毒性を減少するための方法であって、前記方法が以下の工程を含む:
(a)抗癌剤(例えば、1以上のチロシンキナーゼ阻害剤[例えば、Gleevec(商標)、Tasigna(商標)、Sprycel(商標)等)]の投与後に癌細胞を単離する工程;
(b)前記単離された細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)本明細書に記載のアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)のレベルを測定する工程;及び、
(d)測定した前記発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを、治療過程の間の初期に測定される前記発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルと比較する工程;及び
(e)工程(d)からの比較に基づいて、被験者のための治療過程の今後の用量を決定するか、又は異なる治療過程を被験者に施すかどうかを決定する工程
を、提供する。
【0220】
特定の実施形態では、両方の総量及び活性化した(例えば、リン酸化した)発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルを、本発明の抗体に基づくアッセイに従って測定して、そして、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/総量BCR−ABLタンパク質レベルの比)が、計算され、そして、この比が、例えば、発癌性融合タンパク質レベルのホスホ/トータル比と、初期の時期において(例えば、抗ガン剤の薬物治療の初期の時期状態にあるか、又は、抗ガン剤の薬物治療よりも前の時にある)被験者のために計算した同様の比とを比較することによって、被験者のための治療過程を評価するために使用される。
【0221】
関連した観点では、本発明は、癌を有し、且つ癌治療のための治療過程を受ける被験者において療法を最適化するため及び/又は毒性を減少するための方法であって、前記方法が以下の工程を含む:
(a)抗癌剤(例えば、1以上のチロシンキナーゼ阻害剤[例えば、Gleevec(商標)、Tasigna(商標)、Sprycel(商標)等)]の投与後に癌細胞を単離する工程;
(b)前記単離された細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)本明細書に記載のアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の経路における発癌性融合タンパク質及び1以上のシグナル伝達分子についての発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)のレベルを測定する工程;及び、
(d)測定した前記発癌性融合タンパク質及びシグナル伝達分子についての発現及び/又は活性化のレベルを、治療過程の間の初期に測定される前記発癌性融合タンパク質及びシグナル伝達分子についての発現及び/又は活性化のレベルと比較する工程;及び
(e)工程(d)からの比較に基づいて、被験者のための治療過程の今後の用量を決定するか、又は異なる治療過程を被験者に施すかどうかを決定する工程
を、提供する。
【0222】
特定の実施形態では、トータル及び活性化した(例えば、リン酸化した)発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベル、並びにシグナル伝達経路(例えば、CRKL、JAK2、STAT5)成分は、本発明の抗体に基づくアッセイに従って測定され、そして、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/トータルBCR−ABLタンパク質レベルの比)並びにトータルシグナル伝達経路成分レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/総量CRKL、JAK2又はSTAT5タンパク質レベルの比)が、計算され、そして、この比が、例えば、発癌性融合タンパク質レベルとシグナル伝達経路成分レベルのホスホ/トータル比と、初期の時期において(例えば、抗ガン剤の薬物治療の初期の時期状態にあるか、又は、抗ガン剤の薬物治療よりも前の時にある)被験者のために計算した同様の比とを比較することによって、被験者のための治療過程を評価するために使用される。
【0223】
別の観点では、本発明は、癌の治療のために、適した抗癌剤を選択する方法であって、
前記方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)本明細書に記載のアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;及び、
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較することによって、前記抗癌剤が、癌の治療のために適切であるか不適切であるかを決定する工程
を提供する。
【0224】
好ましい実施形態では、癌の治療のために、適した抗癌剤を選択する方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)発癌性融合タンパク質に特異的な捕捉抗体の希釈系列を含むアッセイを使用して、細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質の発現及び/又は活性化(例えば、リン酸化)のレベルを決定する工程であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている、前記工程;
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗ガン剤がない状態で作成される参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程;及び
(e)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルが、前記参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較して変化する(例えば、実質的に減少する)場合には、抗癌剤が癌の治療に適していることを示す工程。
【0225】
所定の場合において、好ましい実施形態は、発癌性融合タンパク質のために検出される発現又は活性化のレベルが、参照用の発現又は活性化プロフィールと比較して変わらない(例えば、実質的に減少しない)場合に、前記方法は、抗ガン剤が癌の治療に不適当なことを示すステップを、(すなわち、工程(f)として)更に含むか、又は(すなわち、工程(e)として)代替的に含む。他の場合において、細胞抽出物に存在する1以上のシグナル伝達分子は、一つ以上の発癌性融合タンパク質に加えて検出され、そして、抗がん剤は、この「分子プロフィール」に基づいて適切であるか不適切であるかを決定される。
【0226】
特定の実施形態では、両方の総量及び活性化した(例えば、リン酸化した)発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルを、本発明の抗体に基づくアッセイに従って測定して、そして、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/総量BCR−ABLタンパク質レベルの比)が、計算され、そして、この比が、例えば、発癌性融合タンパク質レベルのホスホ/トータル比と、抗癌剤が無い状態で作成された参照用の発現及び活性化プロフィールに基づいて計算した同様の比とを比較することによって、抗癌剤が癌の治療のために適切であるか不適切であるかを決定するために使用される。
【0227】
別の観点では、本発明は、抗癌剤を用いる治療に対して癌の応答を同定する方法であって、前記方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)本明細書に記載のアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化(リン酸化)のレベルを決定する工程;及び、
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較することによって、前記抗癌剤を用いる治療に対して、癌が応答性又は非応答性であると同定する工程。
【0228】
好ましい実施形態では、抗癌剤を用いる治療に対して癌の応答を同定する方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記発癌性融合タンパク質に特異的な捕捉抗体の希釈系列を含むアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化(リン酸化)のレベルを決定する工程であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている、前記工程;及び、
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗ガン剤がない状態で作成される参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程;及び
(e)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルが、前記参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較して変化する(例えば、実質的に減少する)場合には、癌が抗癌剤を用いる治療に応答性があることを示す工程。
【0229】
所定の場合において、発癌性融合タンパク質のために検出される発現又は活性化のレベルが、参照用の発現又は活性化プロフィールと比較して変わらない(例えば、実質的に減少しない)場合に、好ましい実施形態は、抗ガン剤が癌の治療に非応答なことを示す工程を、(すなわち、工程(f)として)更に含むか、又は(すなわち、工程(e)として)代替的に含む。他の所定の場合において、細胞抽出物に存在する1以上のシグナル伝達分子は、1以上の発癌性融合タンパク質に加えて検出され、そして、抗がん剤は、この「分子プロフィール」に基づいて、治療に対して応答するか非応答として識別される。
【0230】
特定の実施形態では、両方の総量及び活性化した(例えば、リン酸化した)発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルを、本発明の抗体に基づくアッセイに従って測定して、そして、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/総量BCR−ABLタンパク質レベルの比)が、計算され、そして、この比が、例えば、発癌性融合タンパク質レベルのホスホ/トータル比と、抗癌剤が無い状態で作成された参照用の発現及び活性化プロフィールに基づいて計算した同様の比とを比較することによって、癌が抗癌剤を用いる治療に対して応答性又は非応答性であるかを同定するために使用される。
【0231】
更に別の観点では、本発明は、抗癌剤を用いる治療に対して、癌を有する被験者の応答を予測する方法であって、前記方法が以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)本明細書に記載のアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化(リン酸化)のレベルを決定する工程;及び、
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較することによって、被験者が、前記抗癌剤を用いる治療に対して応答することの可能性を予測する工程を提供する。
【0232】
好ましい実施形態では、抗癌剤を用いる治療に対して、癌を有する被験者の応答を予測する方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記発癌性融合タンパク質に特異的な捕捉抗体の希釈系列を含むアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化(リン酸化)のレベルを決定する工程であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている、前記工程;及び、
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、
抗ガン剤がない状態で作成される参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する
工程;及び
(e)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルが、前記参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較して変化する(例えば、実質的に減少する)場合には、被験者が抗癌剤を用いる治療に対して応答しそうであることを示す工程。
【0233】
所定の場合において、好ましい実施形態は、発癌性融合タンパク質のために検出される発現又は活性化のレベルが、参照用の発現又は活性化プロフィールと比較して変わらない(例えば、実質的に減少しない)場合に、被験者が抗癌剤を用いる治療に対して応答しそうに無いことを示す工程を、(すなわち、工程(f)として)更に含むか、又は(すなわち、工程(e)として)代替的に含む。他の所定の場合において、細胞抽出物に存在する1以上のシグナル伝達分子は、1以上の発癌性融合タンパク質に加えて検出され、そして、被験者が治療に応答しそうなことを、この「分子プロフィール」に基づいて、予測される。
【0234】
特定の実施形態では、両方の総量及び活性化した(例えば、リン酸化した)発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルを、本発明の抗体に基づくアッセイに従って測定して、そして、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/総量BCR−ABLタンパク質レベルの比)が、計算され、そして、この比が、例えば、発癌性融合タンパク質レベルのホスホ/トータル比と、抗癌剤が無い状態で作成された参照用の発現及び活性化プロフィールに基づいて計算した同様の比とを比較することによって、被験者が、抗癌剤を用いる治療に応答する可能性を有することがあるかどうかを予測するために使用される。
【0235】
更なる観点では、本発明は、癌を有する被験者が、抗癌剤を用いる治療に対して耐性があるかどうかを決定する方法あって、前記方法が以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)本明細書に記載のアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化(リン酸化)のレベルを決定する工程;及び、
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、初期に抗癌剤がある状態又は抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較することによって、前記抗癌剤を用いる治療に対して、耐性があるか又は感受性があるかどうかを決定する工程を提供する。
【0236】
好ましい実施形態では、癌を有する被験者が、抗癌剤を用いる治療に対して耐性があるかどうかを決定する方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に、癌の細胞を単離する工程;
(b)前記単離した細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(c)前記発癌性融合タンパク質に特異的な捕捉抗体の希釈系列を含むアッセイを使用して、前記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化(リン酸化)のレベルを決定する工程であって、前記捕捉抗体が固体支持体上に拘束されている、前記工程;
(d)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗ガン剤がない状態で作成される参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程;及び
(e)前記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルが、前記参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較して変化しない(例えば、実質的に減少しない)場合には、被験者が抗癌剤を用いる治療に対して耐性があることを示す工程。
【0237】
所定の場合において、好ましい実施形態は、発癌性融合タンパク質のために検出される発現又は活性化のレベルが、参照用の発現又は活性化プロフィールと比較して変化する(例えば、実質的に減少する)場合に、被験者が、抗癌剤を用いる治療に対して感受性があることを示す工程を、(すなわち、工程(f)として)更に含むか、又は(すなわち、工程(e)として)代替的に含む。他の所定の場合において、細胞抽出物に存在する1以上のシグナル伝達分子は、1以上の発癌性融合タンパク質に加えて検出され、そして、被験者が、この「分子プロフィール」に基づいて、耐性があるか、又は感受性があるかとして同定される。
【0238】
特定の実施形態では、両方の総量及び活性化した(例えば、リン酸化した)発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)レベルを、本発明の抗体に基づくアッセイに従って測定して、そして、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比(例えば、ホスホ/総量BCR−ABLタンパク質レベルの比)が、計算され、そして、この比が、例えば、発癌性融合タンパク質レベルのホスホ/トータル比と、初期に抗癌剤がない状態又は抗癌剤がある状態で作成された参照用の発現及び活性化プロフィールに基づいて計算した同様の比とを比較することによって、被験者が、抗癌剤を用いる治療に対して耐性があるか又は感受性があるかどうかを決定するために使用される。
【0239】
或る実施形態では、本発明の方法は、工程(d)の結果を、臨床家(例えば、腫瘍医又は一般開業医)に送るか又は報告することを更に含むことができる。他の実施態様において、本発明の方法は、例えば研究室における、コンピュータデータベース又は情報を保存するために適した他の機械若しくはデバイス中に、工程(d)の結果を記録するか又は保存することを更に含むことができる。
【0240】
或る実施形態では、本発明の方法は、癌を有する被験者[細胞(例えば、癌細胞)は、この被験者から単離される]からサンプルを得る工程をさらに含むことができる。サンプルは、抗癌剤治療の前(例えば、抗癌剤とのインキュベーションの前)か、又は抗癌剤の投与後(例えば、癌治療過程の全期間を通じて任意のとき)のどちらかにおいて、被験者から得ることができる。適切なサンプルとして、限定的でなく、全血、血漿、血清、乳管洗浄液、乳頭吸引液、リンパ液(例えば、リンパ節の播種性腫瘍細胞)、骨髄吸引液、唾液、尿、便(すなわち大便)、痰、気管支洗浄液、涙液、微細針吸引液(例えば、乳輪周囲の無作為微細針吸引により採取)、任意の他の体液、腫瘍の生検(例えば、針生検)又はリンパ節の生検(例えば、センチネルリンパ節生検)などの組織試料(例えば、腫瘍組織)、並びにそれらの細胞抽出物を挙げることができる。或る実施形態において、試料は、全血又は血漿、血清、赤血球、白血球(例えば末梢血単核細胞)及び/又は希少循環細胞などの全血の分画成分である。特定の実施形態において、当業者に公知である任意の技術を用いて全血又はその細胞分画から固形腫瘍の白血球又は循環細胞を単離することによって試料を入手する。単離された細胞が抗癌剤を用いる処理を受けなかった被験者から得られる場合、単離された細胞を、工程(c)において検出されるべき1以上の分析物を標的とする抗癌剤の1つ又は混合物(cocktail)と、適切な条件で、生体外でインキュベートすることができる。
【0241】
所定の実施形態において、癌は、血液悪性腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫);骨原性肉腫(例えば、ユーイング肉腫);軟部組織肉腫(例えば、隆起性皮膚線維(DFSP)、横紋筋肉腫);他の軟部組織悪性、乳頭甲状腺の癌腫;前立腺ガンを含む。特定の実施形態において、癌は、ガン細胞又は腫瘍の染色体転座による発癌性融合タンパク質の形成によってもたらされる。
【0242】
或る実施形態において、単離された細胞は、本明細書に記載されている成長因子によってインビトロで刺激される。抗癌剤は、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、化学療法剤、ホルモン療法剤、放射線療法剤、及びワクチンを含む(これに限定されるものではない)、本明細書に記載されている1以上の治療剤を含むことができる。
【0243】
或る実施形態では、細胞抽出物に存在する発癌性融合タンパク質のために検出される活性化状態は、例えば、リン酸化状態、ユビキチン化状態、複合体形成状態及びそれらの組み合わせとすることができる。他の実施形態において、固体支持体は、例えば、固体支持体の限定的ではない例としては、ガラス、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束及びそれらの組み合わせを含むことができる。更なる他の実施形態において、捕捉抗体は、アドレス可能なアレイ中の固体支持体上に拘束される。
【0244】
所定の実施形態では、工程(c)中のアレイは、以下の工程を含む:
(i)前記細胞抽出物を、捕捉抗体の希釈系列とインキュベート(例えば、接触)して、複数の捕捉した発癌性融合タンパク質を形成する(例えば、細胞抽出物中に存在する発癌性融合タンパク質を、発癌性融合タンパク質と捕捉抗体とを含む捕捉された発癌性融合タンパク質の複合体に変換する)工程;
(ii)複数の捕捉した発癌性融合タンパク質を、発癌性融合タンパク質の同じか若しくは異なるドメインに特異的な活性化状態非依存性抗体と活性化状態依存性抗体とを含む検出抗体とインキュベート(例えば、接触)して、複数の検出可能な捕捉された発癌性融合タンパク質を形成する(例えば、捕捉された発癌性融合タンパク質の複合体を、捕捉された発癌性融合タンパク質と検出抗体とを含む検出可能な捕捉された発癌性融合タンパク質の複合体に変換する)工程であって、前記活性化状態非依存性抗体が促進成分を用いて標識化され、前記活性化状態依存性抗体がシグナル増幅対の第1メンバーを用いて標識化され、前記促進成分が、シグナル増幅対の第1メンバーにチャネリングし、かつシグナル増幅対の第1メンバーと反応する酸化剤を生成する、前記工程;
(iii)複数の検出可能な捕捉された分析物を、シグナル増幅対の第2メンバーとインキュベート(例えば、接触)して、増幅シグナルを生成する工程;及び
(iv)シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成される増幅シグナルを検出する工程。
【0245】
活性化状態非依存性抗体は、促進成分を用いて直接的に標識化することができ、又は促進成分を用いて、例えば、該活性化状態非依存性抗体にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドと該促進成分にコンジュゲートされた相補的オリゴヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションによって、間接的に標識化することができる。同様に、活性化状態依存性抗体は、シグナル増幅対の第1のメンバーを用いて直接的に標識化することができ、又はシグナル増幅対の第1のメンバーを用いて、例えば、該活性化状態依存性抗体にコンジュゲートされた結合対の第1のメンバーと該シグナル増幅対の第1のメンバーにコンジュゲートされた結合対の第2のメンバーとの間の結合によって、間接的に標識化することができる。所定の場合に、結合対の第1のメンバーはビオチンであり、結合対の第2のメンバーはストレプトアビジン又はニュートラビジンなどのアビジンである。
【0246】
或る実施形態において、促進成分は、例えば、グルコースオキシダーゼ(GO)であることができる。所定の場合には、GO及び活性化状態非依存性抗体を、スルフヒドリル活性化デキストラン分子にコンジュゲートさせることができる。スルフヒドリル活性化デキストラン分子は、典型的には、約500kDa(例えば、約250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、又は750kDa)の分子量を有する。他の実施形態では、酸化剤は、例えば、過酸化水素(H)であることができる。さらに他の実施形態では、シグナル増幅対の第1のメンバーは、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などのペルオキシダーゼであることができる。更なる実施形態では、シグナル増幅対の第2のメンバーは、例えば、チラミド試薬(例えば、ビオチン−チラミド)であることができる。好ましくは、増幅シグナルは、活性化チラミドを生成する(例えば、ビオチン−チラミドを活性化チラミドに変換する)ビオチン−チラミドのペルオキシダーゼ酸化によって生成される。活性化チラミドは、直接的に検出することができるか、又は、例えば、シグナル検出性試薬の添加により間接的に検出することができる。シグナル検出性試薬の限定的でない例として、ストレプトアビジン標識化フルオロフォア、及びストレプトアビジン標識化ペルオキシダーゼと、例えば、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)などの発色試薬との組み合わせを挙げることができる。
【0247】
所定の場合には、HRP及び活性化状態依存性抗体は、スルフヒドリル活性化デキストラン分子にコンジュゲートさせることができる。スルフヒドリル活性化デキストラン分子は、典型的には、約70kDa(例えば、約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100kDa)の分子量を有している。
【0248】
VI.抗体の製造
本発明による、生体サンプル、例えば、細胞抽出物又は溶解物中の発癌性融合タンパク質又はシグナル伝達分子の活性化状態を分析するための未だ商業的に入手することができない抗体の生成及び選択は、幾つかの方法によって達成することができる。例えば、1つの方法は、当分野において公知のタンパク質発現及び精製方法を用いて目的のポリペプチド(すなわち、抗原)を発現及び/又は精製する方法であり、一方、別の方法は当分野において公知の固相ペプチド合成法を用いて目的のポリペプチドを合成する方法である。例えば、Guide to Protein Purification, Murray P. Deutcher, ed., Meth.Enzymol., Vol. 182 (1990);Solid Phase PeptideSynthesis, Greg B. Fields, ed., Meth. Enzymol., Vol. 289 (1997);Kiso et al., Chem. Pharm. Bull., 38:1192-99 (1990);Mostafavi et al., Biomed. Pept. Proteins Nucleic Acids, 1:255-60,(1995);及びFujiwara et al., Chem. Pharm. Bull.,44:1326-31 (1996)を参照されたい。精製又は合成されたポリペプチドは、次に、例えば、マウス又はウサギに注射して、ポリクローナル又はモノクローナル抗体を生成することができる。当業者であれば、例えば、Antibodies, A Laboratory Manual, Harlow and Lane, Eds., Cold SpringHarbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1988)に記載されているように、抗体を製造するために多くの方法が利用できることを認識しているであろう。当業者であれば、抗体を模倣する(例えば、抗体の機能的結合領域を保持する)Fab断片又は結合断片も様々な方法によって遺伝情報から調製できることも理解しているであろう。例えば、Antibody Engineering: A Practical Approach, Borrebaeck, Ed., OxfordUniversity Press, Oxford (1995);及びHuse et al., J.Immunol., 149:3914-3920 (1992)を参照されたい。
【0249】
さらに、多くの刊行物は、選択された標的抗原に結合するためのポリペプチドのライブラリーを生成及びスクリーニングするファージディスプレイ技術の使用を報告している(例えば、Cwirla et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6378-6382 (1990);Devlin et al., Science, 249:404-406 (1990);Scottet al., Science, 249:386-388 (1990);及びLadnerら、米国特許第5,571,698号明細書参照)。ファージディスプレイ法の基本的概念は、ファージDNAによってコードされたポリペプチドと標的抗原との間の物理的会合の確立である。この物理的会合は、ポリペプチドをコードするファージゲノムを取り囲むカプシドの一部としてポリペプチドをディスプレイする、ファージ粒子によって提供される。ポリペプチドとそれらの遺伝子材料との間の物理的会合の確立は、種々のポリペプチドを有する極めて多数のファージの同時マススクリーニングを可能にする。標的抗原に対して親和性を有するポリペプチドをディスプレイするファージは標的抗原に結合し、これらのファージは標的抗原に対する親和性スクリーニングによって濃縮される(enriched)。これらのファージからディスプレイされたポリペプチドの同一性を、それらの各ゲノムから決定することができる。これらの方法を使用すると、所望の標的抗原に対する結合親和性を有すると同定されたポリペプチドを、常用手段によって大量に合成することができる(例えば、米国特許第6,057,098号明細書参照)。
【0250】
次いで、これらの方法によって生成される抗体を、目的の精製ポリペプチド抗原との親和性及び特異性に対する最初のスクリーニングによって、及び必要に応じて、その結果を、結合から排除されることが望ましい他のポリペプチド抗原を有する抗体の親和性及び特異性と比較することによって選択することができる。スクリーニング法は、マイクロタイタープレートの個々のウェル内での精製ポリペプチド抗原の固定化を含んでいることができる。次いで、潜在的な抗体又は抗体群を含有する溶液を、各マイクロタイターウェル内に配置し、約30分間〜2時間にわたりインキュベートする。次いで、このマイクロタイターウェルを洗浄し、標識化された二次抗体(例えば、産生された抗体がマウス抗体であればアルカリホスファターゼにコンジュゲートされた抗マウス抗体)をウェルに添加し、約30分間にわたりインキュベートした後に洗浄する。基質をウェルに添加すると、固定化されたポリペプチド抗原に対する抗体が存在する場合は、呈色反応が現れるであろう。
【0251】
次いで、このように同定された抗体を、親和性及び特異性についてさらに分析することができる。標的タンパク質に対するイムノアッセイの開発において、精製された標的タンパク質は、選択された抗体を用いてイムノアッセイの感受性及び特異性を判断するための標準として機能する。様々な抗体の結合親和性は相異することがあり、例えば、所定の抗体の組み合わせが相互に立体的に干渉することがあるので、抗体のアッセイ性能は、その抗体の絶対的な親和性及び特異性より重要な尺度となることがある。
【0252】
当業者であれば、抗体又は結合断片を生成し並びに目的の様々なポリペプチドに対する親和性及び特異性についてスクリーニング及び選択する際に多くのアプローチを採用することができるが、これらのアプローチが本発明の範囲を変化させるものではないことを理解されよう。
【0253】
A.ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、目的のポリペプチド及びアジュバントの複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって動物において産生される。二官能性剤又は誘導体化剤を用いて、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシ・チログロブリン、又はダイズトリプシン阻害剤などの、免疫されるべき種において免疫原性であるタンパク質担体へ、目的のポリペプチドをコンジュゲートするのが有用であることがある。二官能性剤又は誘導体化剤の限定的でない例として、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介するコンジュゲーション)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、及びR1N=C=NR(式中、R及びR1は異なるアルキル基である)を挙げることができる。
【0254】
例えば、100μg(ウサギに対して)又は5μg(マウスに対して)の抗原又はコンジュゲートを3容量のフロイント完全アジュバントと一緒にしてその溶液を動物の複数の部位に皮下的に注射することによって、目的のポリペプチド又はその免疫原性コンジュゲート若しくは誘導体に対して動物を免疫する。1カ月後、複数部位での皮下注射によってフロイント完全アジュバント中最初の量の約1/5〜1/10のポリペプチド又はコンジュゲートを用いて動物を追加免疫する。7〜14日後に、動物から採血し、抗体力価についてその血清をアッセイする。一般には、力価が安定状態に達するまで動物を追加免疫する。好ましくは、同一のポリペプチドのコンジュゲートを用いて動物を追加免疫するが、異なる免疫原性タンパク質に対する及び/又は異なる架橋試薬を介したコンジュゲーションを用いることができる。コンジュゲートは、融合タンパク質として組換え細胞培養において作成することもできる。所定の場合には、ミョウバンなどの凝集剤を用いて免疫応答を強化することができる。
【0255】
B.モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、一般には、実質的に均質な抗体の集団から得られ、すなわち、少量で存在することがある可能性のある天然型変異を除いて前記集団を含む個別の抗体は同一である。このように、修飾語句「モノクローナル」は、抗体の性質が個々別々の抗体の混合物ではないことを示している。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法を用いて又は当分野において公知の任意の組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書参照)によって作成することができる。
【0256】
ハイブリドーマ法において、マウス又は他の適切な宿主動物(例えば、ハムスター)を前記のように免疫して、免疫に用いられる目的のポリペプチドに特異的に結合する抗体を産生する又は産生することができるリンパ球を誘発する。代わりに、リンパ球をインビトロで免疫する。次いで、免疫されたリンパ球をポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いてリンパ球骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を形成する(例えば、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, AcademicPress, pp. 59-103 (1986)参照)。このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、融合していない親骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する物質1種又は2種以上を好ましくは含有する適切な培地中に播種して増殖させる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)を欠く場合には、ハイブリドーマ細胞のための培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の増殖を防止する、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT培地)を含んでいるであろう。
【0257】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定的な高レベルの産生を支持し、及び/又はHAT培地などの培地に感受性である骨髄腫細胞である。ヒトモノクローナル抗体の産生に対しこのような好ましい骨髄腫細胞系の例として、MOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍から誘導されたマウス骨髄腫系(SalkInstitute Cell Distribution Center;カリフォルニア州サンディエゴから入手できる)などのマウス骨髄腫系、SP−2又はX63−Ag8−653細胞(アメリカンタイプカルチャーコレクション;メリーランド州ロックビルから入手できる)、及びヒト骨髄腫又はマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系(例えば、Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);及びBrodeuret al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, MarcelDekker, Inc., New York, pp. 51-63 (1987)参照)を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0258】
目的のポリペプチドに対するモノクローナル抗体の産生のためにハイブリドーマ細胞が増殖する培地をアッセイすることができる。好ましくは、免疫沈降法によって又はラジオイムノアッセイ(RIA)若しくは酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性を決定する。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、the Scatchardanalysis of Munson et al., Anal. Biochem., 107:220(1980)を用いて、決定することができる。
【0259】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンを限定希釈法によってサブクローニングし、標準的方法によって増殖させることができる(例えば、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, AcademicPress, pp. 59-103 (1986)参照)。この目的のために適切な培地として、例えば、D−MEM又はRPMI−1640培地を挙げることができる。さらに、ハイブリドーマ細胞を、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖することができる。サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体を、例えば、タンパク質A−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動法、透析法、又はアフィニティークロマトグラフィーなどの常用の抗体精製方法によって培地、腹水液、又は血清から分離することができる。
【0260】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、常用の方法を用いて(例えば、マウス抗体のH鎖及びL鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することのできるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離しシーケンシングすることができる。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として機能する。単離後に、DNAを発現ベクター中に配置し、次いでこの発現ベクターを他の場合には抗体を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞などの宿主細胞中にトランスフェクトしてこの組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を誘導することができる。例えば、Skerra et al., Curr. Opin. Immunol., 5:256-262 (1993);及びPluckthun, Immunol Rev., 130:151-188 (1992)を参照されたい。例えば、相同性マウス配列に代えてヒトH鎖及びL鎖定常ドメインをコードする配列に置換することによって(例えば、米国特許第4,816,567号明細書;及びMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851 (1984)参照)、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドをコードする配列の全部若しくは一部を共有的に結合させることによって、DNAを修飾することもできる。
【0261】
更なる実施形態において、例えば、McCafferty et al.,Nature, 348:552-554 (1990);Clackson et al., Nature,352:624-628 (1991);及びMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597(1991)に記載された技術を用いて生成された抗体ファージライブラリーから、モノクローナル抗体又は抗体断片を単離することができる。チェーンシャッフリングによる高親和性(nM範囲)ヒトモノクローナル抗体の産生は、Marks et al., BioTechnology, 10:779-783 (1992)に記載されている。極めて大きなファージライブラリーを構築するための戦略としてのコンビナトリアル感染及びインビボ組換えの使用は、Waterhouse et al., Nuc. Acids Res., 21:2265-2266 (1993)に記載されている。このように、これらの技術は、モノクローナル抗体を生成するための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な代替法である。
【0262】
C.ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当分野において公知である。好ましくは、ヒト化抗体は、非ヒトである起源から導入されたアミノ酸残基1個又は2個以上を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「インポート」残基と呼ばれることが多く、典型的には「インポート」可変ドメインから取られる。ヒト化は、本質的には、非ヒト抗体の超可変性領域配列をヒト抗体の対応する配列に置換することによって実施することができる。例えば、Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986);Riechmannet al., Nature, 332:323-327 (1988);及びVerhoeyen et al.,Science, 239:1534-1536 (1988)を参照されたい。従って、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(例えば、米国特許第4,816,567号明細書参照)であって、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない配列が非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は一般にヒト抗体であって、一部の超可変性領域残基及び可能な一部のフレームワーク領域(FR)残基が齧歯類抗体の類似部位由来の残基によって置換される。
【0263】
本明細書に記載したヒト化抗体を作成するのに用いられるL鎖及びH鎖両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を減少させるために重要な検討事項である。いわゆる「ベストフィット」法によれば、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対して齧歯類抗体の可変ドメインの配列をスクリーニングする。次いで、齧歯類の配列に最も近いヒト配列をヒト化抗体のためのヒトFRとして許容する(例えば、Sims et al., J. Immunol., 151:2296 (1993);及びChothiaet al., J. Mol. Biol., 196:901 (1987)参照)。別の方法は、L鎖又はH鎖の特定のサブグループの全ヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のFRを用いる。数種の異なるヒト化抗体に対して同一のFRを用いることができる(例えば、Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);及びPresta etal., J. Immunol., 151:2623 (1993)参照)。
【0264】
抗原に対する高親和性及びその他の好適な生物学的特性を保有する抗体をヒト化することもまた重要である。この目標を達成するために、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを用いて親配列及び様々な概念的ヒト化生成物を分析するプロセスによってヒト化抗体を調製することができる。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の考え得る三次元立体配座構造を図解し表示するコンピュータプログラムを利用することができる。これらの表示を検査することにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性のある役割の分析、すなわち、前記候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を与える残基の分析が可能となる。このようにして、標的抗原に対する増大した親和性などの所望の抗体特性が達成されるように、レシピエント配列及びインポート配列からFR残基を選択し組み合わせることができる。一般に、超可変領域残基は、抗原結合に影響を与えることに直接的かつ特異的に関与する。
【0265】
本発明によれば、様々な形態のヒト化抗体が意図される。例えば、ヒト化抗体は、Fab断片などの抗体断片であることができる。代わりに、ヒト化抗体は、インタクトなIgA、IgG、又はIgM抗体などのインタクト抗体であることができる。
【0266】
D.ヒト抗体
ヒト化の代替法として、ヒト抗体を生成することができる。或る実施形態において、免疫によって、内因性免疫グロブリンを産生することなくヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することができる。例えば、キメラマウス及び生殖系列突然変異マウスにおける抗体H鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合欠失は内因性抗体産生の完全な阻害を生じさせると記載されている。このような生殖系列突然変異マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、抗原チャレンジに基づくヒト抗体の産生をもたらす。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993);Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993);Bruggermann et al., Year in Immun., 7:33 (1993);並びに米国特許第5,591,669号明細書、第5,589,369号明細書、及び第5,545,807号明細書を参照されたい。
【0267】
代わりに、ファージディスプレイ技術(例えば、McCafferty etal., Nature, 348:552-553 (1990)参照)を用いて、非免疫化ドナーに由来する免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーを使用し、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を生成することができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、M13又はfdなどの繊維状バクテリオファージの主要又は微量コートタンパク質遺伝子のいずれかの中にインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能的抗体断片として提示される。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するので、抗体の機能的特性に基づいた選択は、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択も生じさせる。このように、ファージは、B細胞の特性の一部を模倣する。ファージディスプレイは、例えば、Johnson et al., Curr. Opin. Struct. Biol., 3:564-571 (1993)に記載されたように、様々なフォーマットで実施することができる。V遺伝子セグメントの幾つかの供給源をファージディスプレイに使用することができる。例えば、Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)を参照されたい。非免疫化ヒトドナー由来のV遺伝子の一レパートリーを構築することができ、様々な抗原アレイ(自己抗原を含む)に対する抗体を、Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991);Griffith et al., EMBO J., 12:725-734 (1993);並びに米国特許第5,565,332号明細書及び第5,573,905号明細書に記載された技術に本質的に従って単離することができる。
【0268】
所定の場合には、例えば、米国特許第5,567,610号明細書及び第5,229,275号明細書に記載されたように、インビトロ活性化B細胞によってヒト抗体を生成することができる。
【0269】
E.抗体断片
抗体断片の生成について、様々な技術が開発されてきた。伝統的には、インタクト抗体のタンパク質分解によってこれらの断片を得た(例えば、Morimoto et al., J. Biochem. Biophys. Meth., 24:107-117 (1992);及びBrennan et al., Science, 229:81 (1985)参照)。しかしながら、今や、組換え宿主細胞を用いてこれらの断片を直接的に生成することができる。例えば、前記の抗体ファージライブラリーから抗体断片を単離することができる。代わりに、Fab’−SH断片を大腸菌細胞から直接的に回収し、化学的に結合させてF(ab’)2断片を形成することができる(例えば、Carter et al., BioTechnology, 10:163-167 (1992)参照)。別のアプローチによれば、F(ab’)2断片を、組換え宿主細胞培養物から直接的に単離することができる。抗体断片を生成するための他の技術は、当業者には明白であろう。他の実施形態において、好適な抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。例えば、国際公開第93/16185号パンフレット;並びに米国特許第5,571,894号明細書及び第5,587,458号明細書を参照されたい。抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号明細書に記載されたような線状抗体であることもできる。このような線状抗体断片は、単一特異的又は二重特異的であることができる。
【0270】
F.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。典型的な二重特異性抗体は、目的の同一のポリペプチドの2つの異なるエピトープに結合することができる。他の二重特異性抗体は、目的のポリペプチドに対する結合部位を追加の抗原1種又は2種以上に対する結合部位と組み合わせることができる。二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製することができる。
【0271】
二重特異性抗体の作成方法は、当分野において公知である。全長二重特異性抗体の伝統的な作成は、2つの免疫グロブリンH鎖−L鎖対の共発現に基づいており、ここで前記2つの鎖は異なる特異性を有する(例えば、Millstein et al., Nature, 305:537-539 (1983)参照)。免疫グロブリンH鎖及びL鎖の無作為組合せのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ(quadroma))は10個の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、そのうちの1つだけが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製を、通常はアフィニティークロマトグラフィーによって実施する。同様の方法は、国際公開第93/08829号パンフレット及びTraunecker et al., EMBO J., 10:3655-3659 (1991)に開示されている。
【0272】
異なるアプローチによれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)を、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合する。この融合は、好ましくはヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリンH鎖定常ドメインを用いる。L鎖結合に必要な部位を含有する第1H鎖定常領域(CH1)が融合の少なくとも1つに存在することが好ましい。免疫グロブリンH鎖融合をコードするDNA、及び、所望であれば、免疫グロブリンL鎖を、別個の発現ベクター内に挿入し、適切な宿主生物内に同時トランスフェクトする。これにより、構築に使用される不等比率の3つのポリペプチド鎖が最適の収率を与える場合の実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互比率を調整するのに大きな柔軟性が与えられる。しかしながら、等しい比率の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現がより高い収率を生じさせる場合、又は比率が特に有意ではない場合は、2つ又は3つ全てのポリペプチド鎖をコードする配列を1つの発現ベクターに挿入することができる。
【0273】
このアプローチの好ましい実施形態において、二重特異性抗体は、一方のアーム中の第1の結合特異性を備えるハイブリッド免疫グロブリンH鎖、及び他方のアーム中の(第2の結合特異性を与える)ハイブリッド免疫グロブリンH鎖−L鎖対から構成される。二重特異性分子の半分にのみ免疫グロブリンL鎖が存在することで容易な分離方法が提供されるので、この非対称構造は望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離を促進する。例えば、国際公開第94/04690号パンフレット及びSuresh et al., Meth. Enzymol., 121:210 (1986)を参照されたい。
【0274】
米国特許第5,731,168号明細書に記載された別のアプローチによれば、抗体分子対の間の境界面を操作して、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の百分率を最大化することができる。好ましい境界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法において、第1の抗体分子の境界面から小さいアミノ酸側鎖1つ又は2つ以上を、より大きい側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)に置き換える。大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)に置き換えることによって第2抗体分子の境界面上に、前記の大きい側鎖と同一又は同様のサイズの代償的な「空洞(cavities)」を作成する。これにより、ホモ二量体などの他の望ましくない最終生成物に比してヘテロ二量体の収率を増加させる機構が提供される。
【0275】
二重特異性抗体は、架橋抗体又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の一方をアビジンに、他方をビオチンに結合させることができる。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋法を用いて作成することができる。適切な架橋剤及び架橋技術は、当分野において周知であり、例えば、米国特許第4,676,980号明細書に開示されている。
【0276】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するのに適切な技術も当分野において公知である。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を用いて調製することができる。所定の場合には、インタクト抗体をタンパク質分解により切断してF(ab’)断片を生成する方法によって二重特異性抗体を生成することができる(例えば、Brennan et al., Science, 229:81 (1985)参照)。これらの断片をジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元して、隣接ジチオールを安定化させ分子間ジスルフィド形成を防止する。次いで、生成したFab’断片をチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に転換する。次いで、Fab’−TNB誘導体の1つを、メルカプトエチルアミンを用いた還元によってFab’−チオールへ再転換し、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合して二重特異性抗体を形成する。
【0277】
或る実施形態では、Fab’−SH断片を、大腸菌から直接的に回収し化学的に結合させて二重特異性抗体を形成することができる。例えば、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子を、Shalaby et al., J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992)に記載された方法によって生成することができる。各Fab’断片を大腸菌から別個に分泌させ、インビトロでの指向性(directed)化学結合に付して二重特異性抗体を形成する。
【0278】
組換え細胞培養物から直接的に二重特異性抗体断片を作成し及び単離するための様々な技術も記載されてきた。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて生成されてきた。例えば、Kostelny et al., J. Immunol., 148:1547-1553 (1992)を参照されたい。遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分にFosタンパク質及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを結合した。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、次いで再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法は、抗体ホモ二量体の生成にも利用することができる。Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)に記載された「ディアボディ(diabody)」技術は、二重特異性抗体断片を作成するための代替的機構を提供している。該断片は、同一鎖上で2つのドメイン間の対合を行うことができないほど短いリンカーによってL鎖可変ドメイン(VL)に連結されたH鎖可変ドメイン(VH)を含む。従って、1つの断片のVH及びVLドメインは、別の断片の相補的VL及びVHドメインと対合することを余儀なくされ、それによって2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)二量体を用いることにより二重特異性抗体断片を作成する別の戦略が、Gruber et al., J. Immunol., 152: 5368 (1994)に記載されている。
【0279】
3以上の結合価(valencies)を有する抗体も意図している。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。例えば、Tutt et al., J. Immunol., 147:60 (1991)を参照されたい。
【0280】
G.抗体精製
組み換え技術を使用すると、抗体を、単離された宿主細胞内で、宿主細胞の細胞周辺腔内で産生させることができ、又は宿主細胞から培地中へ直接分泌させることができる。抗体を細胞内で産生させる場合に、最初に微粒子破片を、例えば、遠心分離又は限外濾過によって除去する。Carter et al., BioTech., 10:163-167 (1992)は、大腸菌の細胞周辺腔内に分泌される抗体を単離する方法を記載している。簡単に説明すると、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分間にわたり細胞ペーストを溶かす。遠心分離によって細胞破片を取り除くことができる。抗体が培地中に分泌される場合、一般には、例えば、Amicon社又はMilliporePellicon社製の限外濾過装置である商業的に入手することができるタンパク質濃縮フィルターを用いて、そのような発現系由来の上澄を濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記工程のいずれかに含めてタンパク質分解を阻害することができ、そして抗生物質を含めて外来性汚染菌の増殖を防止することができる。
【0281】
細胞から調製された抗体組成物を、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができる。プロテインAの親和性リガンドとしての適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種類及びアイソタイプに依存する。プロテインAを用いて、ヒトγ1H鎖、ヒトγ2H鎖、又はヒトγ4H鎖に基づく抗体を精製することができる(例えば、Lindmark et al., J. Immunol. Meth., 62:1-13 (1983)参照)。プロテインGは、全てのマウスのアイソタイプ及びヒトγ3に対して推奨される(例えば、Guss et al., EMBO J., 5:1567-1575 (1986)参照)。親和性リガンドが結合するマトリックスは、多くの場合にアガロースであるが、他のマトリックスも利用することができる。制御された細孔ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスは、アガロースを用いて達成することができる場合より高い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合は、BakerbondABX(商品名)樹脂(J.T.Baker社;ニュージャージー州フィリップスバーグ)が精製に有用である。他のタンパク質精製技術、例えば、イオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商品名)上のクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂上のクロマトグラフィー(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿も回収すべき抗体に応じて利用することができる。
【0282】
任意の予備精製工程の後、目的の抗体及び夾雑物を含む混合物を、pH約2.5〜4.5の溶出バッファを用い、好ましくは低塩濃度(例えば、塩約0〜0.25M)で実施される、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに付することができる。
【0283】
当業者であれば、抗体に類似する機能を有する任意の結合分子、例えば、試料中の目的の分析物1種又は2種以上に特異的である結合分子又は結合パートナーも、本発明の方法及び組成物において使用することができることを理解されよう。適切な抗体様分子の例として、ドメイン抗体、ユニボディ、ナノボディ、サメ抗原反応性タンパク質、アビマー、アドネクチン、アンチカルム(anticalm)、親和性リガンド、フィロマー(phylomer)、アプタマー、アフィボディ、トリネクチンなどを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0284】
VII.投与方法
本発明の方法によれば、本明細書に記載した抗癌剤を、当分野において公知の任意の簡便手段によって被験者に投与する。本発明の方法は、被験者の癌(例えば、血液悪性腫瘍)の治療のための適切な抗がん剤又は抗ガン剤の組合せを選択するために使用することができる。本発明の方法は、抗ガン剤又は抗ガン剤の組合せを用いた治療に対する被験者の癌(例えば、血液悪性腫瘍)の応答を同定するために使用することもできる。更に、本発明の方法は、抗ガン剤又は抗ガン剤の組合せを用いた治療に対する癌(例えば、血液悪性腫瘍)を有する被験者の応答を予測するために使用することができる。さらに、本発明の方法は、抗ガン剤又は抗ガン剤の組合せを用いた治療に対して耐性がある癌(例えば、血液悪性腫瘍)を有する被験者を同定するために使用することができる。当業者であれば、本明細書に記載した抗癌剤を単独で、又は、通常の化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、及び/又は手術との併用療法アプローチの一部として投与することができることを理解されよう。
【0285】
所定の実施形態において、抗癌剤は、モノクローナル抗体又はチロシンキナーゼ阻害剤などの抗シグナル伝達剤(すなわち、細胞増殖抑制薬);抗増殖剤;化学療法剤(すなわち、細胞毒性薬);ホルモン療法剤;放射線療法剤;ワクチン;及び/又は癌性細胞などの異常な細胞の制御されない増殖を低減又は阻害する能力を有する任意の他の化合物を含む。或る実施形態では、化学療法薬少なくとも1種との併用により1種又は2種以上の抗シグナル伝達剤、抗増殖剤、及び/又はホルモン療法剤を用いて被験者を治療する。典型的なモノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、抗増殖剤、化学療法剤、ホルモン療法剤、放射線療法剤、及びワクチンは前記に記載されている。
【0286】
或る実施形態において、本明細書に記載の抗癌剤は、通常の免疫療法剤と同時投与することができ、該免疫療法剤として、免疫賦活剤(例えば、カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin)(BCG)、レバミゾール、インターロイキン−2、α−インターフェロンなど)、免疫毒素(例えば、抗CD33モノクローナル抗体−カリケアマイシンコンジュゲート、抗CD22モノクローナル抗体−シュードモナス外毒素コンジュゲートなど)、及び放射免疫療法(例えば、111In、90Y、又は131Iなどにコンジュゲートされた抗CD20モノクローナル抗体)を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0287】
抗癌剤を、必要に応じて適切な医薬賦形剤を用いて投与することができ、許容された投与様式のいずれかによって実施することができる。従って、投与は、例えば、経口、経頬(buccal)、舌下、経歯肉、経口蓋、静脈内、局所、皮下、経皮的、経皮性、筋肉内、関節内、非経口、動脈内、皮内、心室内、頭蓋内、腹腔内、膀胱内、髄腔内(intrathecal)、病巣内、鼻腔内、直腸的、膣的、又は吸入によるものであることができる。「同時投与する」とは、抗癌剤が第2薬(例えば、別の抗癌剤、抗癌剤療法に関連した副作用を減少させるために有用な薬剤、放射線療法剤、ホルモン療法剤、免疫療法剤など)の投与と同時に、その投与直前に、又はその投与直後に投与されることを意味する。
【0288】
治療的有効量の抗癌剤を反復して、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8回、又は9回以上反復して投与することができ、又は、その量を連続注入によって投与することができる。投与は、固形、半固形、凍結乾燥粉末、又は液体の剤形、例えば、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、粉末剤、液剤、懸濁剤、油剤、坐剤、停留浣腸剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ゲル剤、エアロゾル剤、フォーム剤などの剤形であることができ、好ましくは、正確な用量の単一の投与に適した単位剤形であることができる。
【0289】
本明細書で使用する用語「単位剤形」とは、ヒト被験者及び他の哺乳動物に対する単位投与量として適切な物理的に分離した単位を指し、各単位は所望の作用発現、寛容性、及び/又は治療効果を生ずるように計算された予定量の抗癌剤を適切な医薬賦形剤と共に含む(例えば、アンプル)。さらに、より濃縮した剤形を調製することができ、次に該濃縮剤形からより希釈した単位剤形を製造することができる。このように、より濃縮した剤形は、実質的により多量の抗癌剤、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、又は11倍以上の量の抗癌剤を含有する。
【0290】
このような剤形の調製方法は、当業者には公知である(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18TH ED., Mack Publishing Co., Easton, PA(1990)参照)。剤形は、典型的には、通常の医薬担体又は医薬賦形剤を含み、さらに、他の薬剤、担体、アジュバント、希釈剤、組織浸透促進剤、可溶化剤などを含んでいることができる。適切な賦形剤を、当分野において周知の方法によって、特定の剤形及び投与経路に合わせて作成することができる(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、上記参照)。
【0291】
適切な賦形剤の例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、生理食塩液、シロップ、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリアクリル酸、例えば、Carbopol、例えば、Carbopol941、Carbopol 980、Carbopol 981などを挙げることができるがそれらに限定されない。剤形は、さらに、潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油;湿潤剤;乳化剤;懸濁剤;保存剤、例えば、メチル−ヒドロキシ−ベンゾエート、エチル−ヒドロキシ−ベンゾエート、及びプロピル−ヒドロキシ−ベンゾエート(すなわち、パラベン);pH調整剤、例えば、無機及び有機の酸及び塩基;甘味剤;並びに香味剤を含んでいることができる。剤形は、生分解性ポリマービーズ、デキストラン、及びシクロデキストリン包接複合体も含んでいることができる。
【0292】
経口投与に対する治療有効量は、錠剤、カプセル剤、油剤、懸濁剤、液剤、シロップ、スプレー、ロゼンジ、粉末剤、及び持続放出性製剤の形態であることができる。経口投与に対して適切な賦形剤として、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。
【0293】
或る実施形態において、治療有効量は、丸剤、錠剤、又はカプセル剤の形態を取り、従って、その剤形は、抗癌剤と共に、以下:希釈剤、例えば、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウムなど;崩壊剤、例えば、デンプン又はその誘導体;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムなど;及び結合剤、例えば、デンプン、アカシアガム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース及びそれらの誘導体、の任意のものを含んでいることができる。抗癌剤は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)担体中に配置される(disposed)坐剤中に、配合することもできる。
【0294】
抗癌剤及び場合により薬剤学的に許容することのできるアジュバント1種又は2種以上を、例えば、生理食塩水(例えば、塩化ナトリウム0.9w/v%)、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどの担体中に溶解又は分散させて、例えば、経口投与、局所投与、又は静脈内投与のための液剤又は懸濁剤を形成することにより、液体剤形を製造することができる。抗癌剤は停留浣腸中に配合することもできる。
【0295】
局所投与に対して、治療有効量は、油剤、ローション剤、ゲル剤、フォーム剤、クリーム剤、ジェリー剤、液剤、懸濁剤、軟膏剤、及び経皮パッチの形態であることができる。吸入による投与に対して、抗癌剤を、乾燥粉末として又はネブライザーを介する液体形態で送達することができる。非経口投与に対して、治療有効量は、滅菌された注射溶液及び滅菌包装された粉末剤の形態であることができる。好ましくは、注射溶液をpH約4.5〜約7.5で製剤化する。
【0296】
治療有効量を凍結乾燥形態で提供することもできる。このような剤形は、投与前の再構成のために、緩衝剤、例えば、炭酸水素塩を含んでいることができ、又は、例えば、水、を用いた再構成のために凍結乾燥剤形に緩衝剤を含めることができる。凍結乾燥剤形は、適切な血管収縮剤、例えば、エピネフリンをさらに含んでいることができる。凍結乾燥剤形は、再構成された剤形を被験者に直ちに投与することができるように、場合により再構成のための緩衝剤と組み合わせて包装された注射器により提供することができる。
【0297】
所定の療法レジメンの有効性を評価するために周期的な時間間隔で被験者を監視することもできる。例えば、所定の発癌性融合タンパク質及び/又はシグナル伝達分子の活性化状態は、本明細書に記載した抗癌剤1種又は2種以上を用いた治療の治療効果に基づいて変化することがある。被験者を監視して、個別化されたアプローチにおける所定の薬剤又は治療の応答を評価しそれらの効果を理解することができる。さらに、特定の抗癌剤又は抗癌剤の組み合わせに対して初期には応答する被験者が、その薬剤又は薬剤の組み合わせに対して無反応性となるがあり、このことはこれらの被験者が獲得薬剤耐性を生じたことを示している。これらの被験者の現在の療法を中止し、本発明の方法に従って彼らに代わりの療法を処方することができる。
【0298】
所定の側面において、本明細書に記載した方法を、様々な集団における癌の予後診断及び/又は再発の可能性を予測する遺伝子発現マーカーのパネルと共に使用することができる。これらの遺伝子パネルは、再発を経験する可能性が低く、従って、アジュバント化学療法から利益を得る可能性が低い被験者を同定するのに有用であることができる。これらの発現パネルを用いて、無疾患生存率及び全体的生存率(disease-free and overall survival)の結果に悪影響を与えずに、安全にアジュバント化学療法を回避することができる女性を同定することができる。
【0299】
さらに、所定の他の側面において、本明細書に記載した方法を、原発性不明癌(CUP)に対して最初の腫瘍を同定する遺伝子発現マーカーのパネルと共に使用することができる。これらの遺伝子パネルは、初期に癌と診断された被験者に与えられた療法と一致する療法から利益を得られると考えられる転移性癌を有する被験者を同定するのに有用であることができる。適切なシステムとして、92の遺伝子を測定して39の腫瘍タイプに対する原発性起源部位を同定するRT−PCRベース発現アッセイであるAviaraCancerTYPE IDアッセイ;及びマイクロアレイ上で1,600超の遺伝子の発現を測定して15の既知の組織タイプのものに対して腫瘍の遺伝子発現「シグニチャー」を比較するPathwork(商標)Tissueof Origin Testを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0300】
VIII.実施例
以下の実施例を、特許請求の範囲に記載の本発明を限定するためではなく例示するために提供する。
【0301】
実施例1.チラミドシグナル増幅を用いる近接二重検出マイクロアレイELISAを使用する単細胞検出
本実施例は、単離された細胞から調製される細胞抽出物中における融合タンパク質及びシグナル伝達分子の活性化状態を分析することに適している、優れたダイナミックレンジを有する多重で高スループットな近接二重検出マイクロアレイサンドイッチELISAを例示する。特定の実施形態において、近接アッセイは、アドレス可能なマイクロアレイのフォーマットである。
1)捕捉抗体を、1mg/mLから0.004mg/mLまでの連続希釈を用いて、16パッドのFASTスライド(Whatman社)上にプリントした。代わりに、2倍の希釈系列の各捕捉抗体(0.25mg/mL、0.125mg/mL及び0.0625mg/mL)を使用することができ、そして、2重及び4重のスポットを、各捕捉抗体希釈液のために作ることができる。BCR−ABL融合タンパク質を検出するために、典型的な捕捉抗体は、抗BCRモノクローナル又はポリクローナル抗体を含む。
2)一晩乾燥後、スライドをWhatman Blocking Bufferでブロックした。
3)80μLの細胞溶解物は、10倍の連続希釈を用いて各パッド上に追加された。スライドは、室温で、2時間インキュベートされた。
4)TBS−Tweenで6回洗浄した後、80μLの検出抗体を、TBS−Tween/2%BSA/1%FBS中で希釈される近接アッセイのためにスライドに追加した。
BCR−ABL融合タンパク質を検出するための、典型的な検出抗体としては、
(1)グルコースオキシダーゼ(GO)に直接コンジュゲートされる抗ABLモノクローナル又はポリクローナル抗体、及び
(2)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に直接コンジュゲートされる、リン酸化されたABLを認識するモノクローナル又はポリクローナル抗体
が挙げられる。インキュベーションは、室温で、2時間であった。
5)代わりに、検出工程は、リン酸化されたABLを認識する抗体のビオチンコンジュゲートを利用することができる。こうした場合において、6回洗浄した後、1時間、ストレプトアビジン−HRPでのインキュベーションの追加の連続した工程が含まれた。
6)代わりに、検出工程は、抗ABL抗体のオリゴヌクレオチド媒介GOコンジュゲートを利用することができる。リン酸化されたABL抗体に対する、直接コンジュゲートされたか、又はビオチン−steptavidin(SA)結合されたHRPのコンジュゲートのどちらかを使用することができる。
6)シグナル増幅のために、80μLのビオチン−チラミド5mg/mLを追加して、15分間反応した。スライドを、TBS−Tweenによって6回、20%DMSO/TBS−Tweenによって2回、そして、TBSによって1回洗浄した。
7)80μLのSA−Alexa555を追加して、30分間インキュベートした。次に、スライドを、2回洗浄して、5分間乾燥して、マイクロアレイスキャナー(PerkinElmer社)で走査した。
【0302】
有利には、本明細書において記載されている近接アッセイマイクロアレイフォーマットは、2つの検出抗体の間の近接を検出することによって得られる高められた特異性のせいで、(例えば、2抗体アッセイと比較して)非常に低いバックグラウンドを示す。
【0303】
実施例2.薬剤選択用の活性化プロファイルの作成
本発明の組成物及び方法は、癌治療のための薬剤選択のために適用することができる。限定的でない例として、本発明は、こうしたタイプの癌を有する患者のための適切な治療を提供するために、血液悪性腫瘍に関連する1つ又は複数の発癌性融合タンパク質の存在又は活性を同定することの有用性が見出す。典型的なプロトコールは、2つのプロファイル(参照活性化プロファイル及びテスト活性化プロファイル)の作成を伴い、次に、それらは、特定の薬剤治療レジメンの有効性を決定するために比較される(図2参照)。
【0304】
参照活性化プロファイル
参照の活性化プロファイルを引き出すために、血液サンプルは、抗ガン剤治療の前に、特定のタイプの癌(例えば、白血病(例えばCML))有する患者から得られる。腫瘍細胞は、例えば、本願明細書においてより詳細に記載されている任意の技術を使用して、血液サンプルから単離される。単離された細胞は、1以上の成長因子によってインビトロで刺激することができる。次に、刺激された細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する。細胞抽出物は、1つ又は複数の発癌性融合タンパク質[活性化状態が患者のタイプの癌において変更することができる](単独か、又は1つ又は複数のシグナル伝達分子との組み合わせ)に特異的な捕捉抗体のパネルの希釈系列を含んでいるアドレス可能なアレイに付与される。単一の検出又は近接アッセイは、目的の各分析物の活性化状態を決定するために、適当な検出抗体(例えば、活性化状態非依存性抗体及び/又は活性化状態依存性抗体)を使用して実施される。従って、参照の活性化プロファイルは、任意の抗ガン剤がない場合において、患者の癌中における発癌性融合タンパク質のような特定の分析物の活性化状態を提供することを生成する。
【0305】
テスト活性化プロファイル
テストの活性化プロファイルを得るために、第2の血液サンプルは、制癌性の薬物治療の前か、又は、抗ガン剤投与後のいずれかにおいて、特定のタイプの癌(例えば、白血病(例えばCML))を有する患者から得られる(例えば、癌治療過程の全期間を通じて任意のときに)。腫瘍細胞を、血液サンプルから単離する。単離された細胞が、抗ガン剤を用いた治療を受けなかった患者から得られる場合、その単離された細胞を、前記の参照の活性化プロファイルから決定される1以上の活性化された発癌性融合タンパク質及び/又はシグナル伝達分子を標的とする抗ガン剤とインキュベートする。例えば、それがBCR−ABL融合タンパク質が活性化される参照の活性化プロファイルから決定される場合、次に、細胞がイマチニブ(Gleevec(商標))とインキュベートすることができる。次に、単離された細胞は、1以上の成長因子によってインビトロで刺激することができる。次に、単離された細胞を、細胞抽出物を生成するために溶解する。細胞抽出物はアドレス可能なアレイに適用され、単一検出又は近接アッセイは、目的の各分析物の活性化状態を決定するために実施される。従って、患者のためのテストの活性化プロファイルは、特定の抗ガン剤が存在する場合には、特定の分析物、例えば、患者の癌中の発癌性融合タンパク質の活性化状態を提供することを生成する。
【0306】
薬剤選択
抗ガン剤は、テストの活性化プロファイルを参照の活性化プロファイルと比較することによって、患者の癌の治療に適切であるか不適当であるかを決定される。例えば、薬物治療によって、ほとんど又は全ての発癌性融合タンパク質及び/又はシグナル伝達分子が、薬剤が存在しない場合よりも実質的に活性化しない(例えば、薬剤が無い強い活性化から、薬剤が有る弱いか又は非常に弱い活性化への変化)場合には、次に、治療は、患者の癌に適していると決定される。このような場合には、治療は、薬物治療を受けてこなかった患者の適切な抗ガン剤で開始されるか、又は、今後の治療を、すでに薬剤を受けている患者の適切な抗ガン剤によって続けるかのどちらかである。しかしながら、薬物治療が患者の癌の治療に不適当であると考えられる場合、異なる薬が、選択されて、新しいテストの活性化プロファイルを生成するために用いられる(次に、それは、参照の活性化プロファイルと比較される)。このような場合には、治療は、薬物治療を受けてこなかった患者の適切な抗ガン剤で開始するか、又は、今後の治療を、現在不適切な薬剤を受けている患者に対して適切な抗ガン剤に変えるかのどちらかである。
【0307】
また、本実施例で記載されているプロトコールも、標的プロテインキナーゼ(例えば、BCR−ABL)の突然変異、療法レジメンを有するノンコンプライアンス、及び/又は最適以下の薬剤用量の投与のせいで、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、イマチニブを用いた治療に耐性がある患者を同定するために有用である。
【0308】
実施例3.癌と関連する代表的な発癌性融合タンパク質
本実施例は、発癌性融合タンパク質及びそれらの関連する新生物の形成を生じるヒト腫瘍における転座の非徹底的なリストを提供する。
【0309】
バーキットリンパ腫:c−myc遺伝子転座t(8;14)(q24;q32)。最も一般的なキメラ癌タンパクは、c−myc/IGHである。
【0310】
AML:染色体21に対する染色体8の一部の転座。得られたキメラ癌タンパクは、RUNX1/ETOである。別の転座t(12;15)(p13;q25)は、TEL/TrkC(キナーゼ)キメラ癌タンパクをもたらす。
【0311】
CML:フィラデルフィア染色体は、BCR/ABL(キナーゼ)をもたらす転座である。
【0312】
ユーイング肉腫:染色体11と22との間の転座。得られたキメラ癌タンパクは、EWS/FLI(転写因子)である。
【0313】
ALL:キメラ癌タンパク:
【表2】
【0314】
DFSP:95%を超えるDFSP腫瘍は、キメラ癌タンパクCOL1A1/PDGF(PDGFRを結合して、活性化させる)をもたらす染色体転座t(17;22)を有する。
【0315】
急性前骨髄球性白血病:t(15;17)(q22;q12)として表される転座。得られたキメラ癌タンパクは、RARα/PML(転写複合体タンパク質)である。
【0316】
プロB細胞急性リンパ性白血病:キメラ癌タンパクE2A/HLF(アポトーシス阻害剤)をもたらす転座t(17;19)。
【0317】
急性前B細胞白血病:転座t(1;19)。キメラ癌タンパクは、E2A/Pbx1(キナーゼ基質)である。
【0318】
横紋筋肉腫:キメラ癌タンパクPAX3/FKHR(転写因子)をもたらす、t(2:13)(q35;q14)の転座。
【0319】
非常に若い児童の軟部組織悪性:下記のキメラ癌タンパクをもたらす、t(12;15)(p13;q25)転移:タンパク質チロシンキナーゼETV6/NTRK3(キナーゼ)。
【0320】
乳頭甲状腺の癌:キメラ癌タンパクは、RET/PTC(キナーゼ)である。
【0321】
前立腺ガン:キメラ癌タンパクは、TMRSS/ERG(キナーゼ)である。
【0322】
発癌性融合タンパク質及びそれらの関連する新生物の形成を生じるヒト腫瘍における転座についての追加の実施例:
【表3】
【0323】
実施例4.発癌性融合タンパク質のトータル及び活性化レベルを決定するための近接媒介イムノアッセイ
序論
癌遺伝子BCR−ABLは、染色体22の長い腕に位置するBCR遺伝子のN末端一部への染色体9の長い腕に位置する通常のABL遺伝子の転座によって形成され、フィラデルフィア染色体を形成する。転座したABL遺伝子がBCR遺伝子でN末端上でのスプライシングに応じて、異なる長さのBCR−ABL遺伝子生成物を生成し、CML及びALLのサブセットを生じる癌遺伝子としてのp210BCR−ABL遺伝子産物が最も一般的である。他の追記の遺伝子生成物、例えば、p185及びp230BCR−ABLも、生成される。特に、p210BCR−ABL遺伝子生成物は、AMLを引き起こすことに関与している。このタンパク質は、1790のアミノ酸を含む。そして、このタンパク質は、N末端でのBCRからのオリゴマードメイン(OLI)、それに続くBCRからのS/Tキナーゼドメイン(通常のBCRに存在しないBCRからのアミノ酸配列の挿入物)、更にそれに続くABLからのSH3、SH2及びYキナーゼドメイン、並びにABLのC末端プロリンの豊富なドメインから構成される。
【0324】
臨床背景
慢性期の慢性骨髄性白血病(CML)である大部分の患者はイマチニブに十分に反応し、或る患者は所望のエンドポイントを達成せず、そして、他の患者は、結局応答をしないか又は耐性がない。400mg/日のイマチニブ(Gleevec)処理に関して:70−80%の患者には、完全な細胞遺伝学的反応(CCyR)がある;最初の3年において4〜7%/年の比率でCCyRの損失があり、次に、その後、1〜2%/年の損失がある;7年後の全体の生存率は90%であり、7年後の無イベント生存率は81%である;再発率は、5年で約30%である。800mg/日のイマチニブ(Gleevec)治療(CCyR=95%;再発率=5%)に対して良好な応答があるが、このようなイマチニブの用量は、より毒性がある。ニロチニブは、800mg/日のイマチニブと類似の有効性を有するが、それはイマチニブよりも毒性がある。
【0325】
完全なBCR−ABL阻害は、Gleevecに対してより良好な応答を与えるが、不完全なBCR−ABL阻害は、Gleevecに対して再発をもたらす。従って、BCR−ABLの発現のレベル及び活性化の程度についてのリアルタイム検出は、毒性を最小化にしながら、標的を効果的に阻害するために薬剤用量を調整することによって、標的化療法下でCML患者に利益をもたらす。例えば、400mg/日のGleevecを用いる不完全な不活化を有するこうした患者は、すぐに応答を確実にするために、より高い用量(例えば、800mg/日)に位置づけることができる。
【0326】
診断上の課題
全長BCR及びABLの高いベースライン・レベルは、多量BCR−ABL融合タンパク質において比較的低いものを検出することを非常に困難にする。更に、BCR−ABLリン酸化レベルを検出する現在の分析法は、臨床血液サンプルのリン酸化を検出するために、感度を有しない。さらにまた、BCR−ABLのような融合タンパク質に対する抗体は、融合タンパク質の複数の変形にあまり特異的ではない。
【0327】
新規なBCR−ABL検出アッセイ
図3Aは、発癌性融合タンパク質(例えばBCR−ABL(310))の存在(トータルレベル)及び/又は活性化状態(リン酸化レベル)を検出するための代表的な近接アッセイ(300)を図示する。図3Bは、接合抗体を使用して、BCR−ABL(410)の存在(トータルレベル)及び/又は活性化状態(リン酸化レベル)を検出するための本発明の近接アッセイの代わりの実施形態(400)を図示する。
【0328】
図3A〜3Bにおいて図示したように、BCR−ABLトータル及び/又は活性化したタンパク質レベルを測定する方法の使用に適している抗体の限定的でない例として、上記の表1に記載されるものを含む。
【0329】
結果
図4は、図3Aにおいて表される代表的な近接アッセイに従って、ビーズにコンジュゲートされる全長BCRのカルボキシル末端領域に特異的な抗体を使用して、遊離な全長BCRの除去後における、K562細胞(すなわち、人間の慢性骨髄性白血病細胞系からの細胞)中のBCR−ABLシグナルを図示する。特に、図4は、BCR−ABLシグナルが、本発明の新規な近接アッセイを使用して患者サンプルからの遊離なBCRの除去によって、影響を受けないことを証明する。
【0330】
図5は、図3Aにおいて表される代表的な近接アッセイに従って、ビーズにコンジュゲートされる全長BCRのカルボキシル末端領域に特異的な抗体を使用して、遊離なBCRの除去後における、K562細胞のBCRシグナルを図示する。図5に示すように、10,000の細胞におけるBCRシグナルの減少は、BCRだけが本発明の新規な近接アッセイを使用して除去されることを証明する。
【0331】
図6は、図3Aにおいて表される代表的な近接アッセイを使用して、K562細胞中のBCR−ABLのトータル及びリン酸化されたレベルの検出を図示する。
【0332】
結論
本実施例は、BCR−ABLの存在及び/又は活性化状態を検出するための図3A及び3Bにおいて表した代表的な近接アッセイが、少なくとも以下の理由のために有利なことを証明する:
(1)全長BCRタンパク質を、BCRのC末端領域に特異的な減少用タグを使用して、患者サンプル、例えば、血液又は骨髄吸引液から除去することができる;
(2)一旦全長BCRが患者サンプルから除去されれば、BCRのN末端領域に特異的な捕捉抗体が、BCR−ABL融合タンパク質を捕捉することができる;及び
(3)一旦BCR−ABL融合タンパク質が捕捉されれば、それらの発現及び活性化レベルが、近接チャネリングを介して高感度に検出することができる(トータル又は活性化したBCR−ABLタンパク質レベルに相関的である単一の検出可能なシグナルが、すべての3つの抗体上でのみ作り出され、増加したアッセイ特異性、より低いバックグラウンド、及び単純化された検出をもたらす)。
【0333】
実施例5.全長BCR及び/又はABLからの干渉が無い、BCR−ABLのトータル及び活性化したレベルの検出
本実施例は、BCR−ABLの存在(トータルレベル)及び/又は活性化状態(リン酸化レベル)を検出するための図3A及び3Bにおいて表される代表的な近接アッセイの利点を示している追加の実験データを提供する。ある1つの実施形態では、全長BCRタンパク質は、BCRのC末端領域に特異的な減少用タグを使用して、患者サンプルから得られる細胞(例えば、悪性白血球(例えば白血病細胞))の抽出物から、又は細胞系(例えば、白血病細胞系)から得られる細胞の抽出物から除去される。一旦全長BCRが細胞抽出物から除去されると、BCRのN末端領域に特異的な捕捉抗体は、BCR−ABL融合タンパク質を捕捉することができる。一旦BCR−ABL融合タンパク質が捕捉されれば、それらの発現及び活性化レベルが、近接チャネリングを介して高感度に検出することができる(トータル又は活性化したBCR−ABLタンパク質レベルに相関的である単一の検出可能なシグナルが、すべての3つの抗体上でのみ作り出され、増加したアッセイ特異性、より低いバックグラウンド、及び単純化された検出をもたらす)。
【0334】
図7は、図3Aにおいて表される代表的な近接アッセイに従って、ビーズにコンジュゲートされる全長BCRのカルボキシル末端領域に特異的な抗体を使用して、遊離なBCRの除去後における、K562細胞(すなわち、人間の慢性の骨髄性白血病細胞系からの細胞)中で検出されるBCR−ABLについてのリン酸化レベル(「ホスホBCR−ABL」)及び総量(「トータルBCR−ABL」)を図示する。特に、図7A及び7Bは、本発明の新規な近接アッセイを使用して、K562細胞の抽出物をビーズに結合する全長BCRのC末端に特異的な抗体と接触させて、遊離なBCRタンパク質を除去した後に、リン酸化された及びトータルBCR−ABLシグナルが変化しなかったことを示す。図7Cは、BCRC末端抗体結合ビーズで処理した後、遊離な全長BCRを細胞抽出物から実際に除去したことを図示している。
【0335】
図8は、図3Aにおいて表される代表的な近接アッセイに従って、ビーズにコンジュゲートされる全長BCRのカルボキシル末端領域に特異的な抗体を使用して、遊離なBCRの除去後における、K562細胞(すなわち、人間の慢性の骨髄性白血病細胞系からの細胞)中のリン酸化したBCR−ABLシグナルについての別の説明図を提供する。特に、図8Aは、全長BCRの除去の有無にかかわらず、K562細胞可溶化物中で検出されるリン酸化されたBCR−ABLシグナルのマイクロアレイ比較を提供する[「非ビーズ処理」(=BCRが除去されない)に対する「ビーズ処理」(=BCRが、ビーズにコンジュゲートされる全長BCRのC末端に特異的な抗体を含有するビーズで除去される)]。図8Bは、細胞数の関数として、相対的な蛍光ユニット(RFU)を用いて、マイクロアレイデータのグラフィック描写を提供する。これらの図は、ホスホBCR−ABLシグナルが、本発明の新規な近接アッセイを使用して、K562細胞の抽出物から全長BCRを除去することに応じて変化しないことを証明する。
【0336】
図9は、図3Aにおいて表される代表的な近接アッセイに従って、ビーズにコンジュゲートされる全長BCRのカルボキシル末端領域に特異的な抗体を使用して、遊離なBCRの除去後における、K562細胞中のトータルBCR−ABLシグナルについての別の説明図を提供する。特に、図9Aは、全長BCRの除去の有無にかかわらず、K562細胞可溶化物中で検出されるトータルBCR−ABLシグナルのマイクロアレイ比較を提供する[「非ビーズ処理」(=BCRが除去されない)に対する「ビーズ処理」(=BCRが、ビーズにコンジュゲートされる全長BCRのC末端に特異的な抗体を含有するビーズで除去される)]。図9Bは、細胞数の関数として、相対的な蛍光ユニット(RFU)を用いて、マイクロアレイデータのグラフィック描写を提供する。これらの図は、トータルBCR−ABLシグナルが、本発明の新規な近接アッセイを使用して、K562細胞の抽出物から全長BCRを除去することに応じて変化しないことを証明する。
【0337】
図10は、細胞抽出物をBCRC末端抗体結合ビーズと接触させた後に、K562細胞の抽出物から遊離な全長BCRを除去する別の説明図を提供する。特に、図10Aは、全長BCRの除去の有無にかかわらず、K562細胞可溶化物中で検出されるトータルBCRシグナルのマイクロアレイ比較を提供する[「非ビーズ処理」(=BCRが除去されない)に対する「ビーズ処理」(=BCRが、ビーズにコンジュゲートされる全長BCRのC末端に特異的な抗体を含有するビーズで除去される)]。図10Bは、細胞数の関数として、相対的な蛍光ユニット(RFU)を用いて、マイクロアレイデータのグラフィック描写を提供する。これらの図は、全長BCRのC末端に特異的な抗体を含有するビーズで処理される際に、全長BCRが、細胞抽出物から実質的に減少したことを証明する。実際、例えば1000未満の細胞を含有する細胞抽出物は、BCRC末端抗体結合ビーズとインキュベートする際に、著しく上記のバックグラウンド(0の細胞)であったBCRシグナルを生成しなかった。
【0338】
図11は、BCR−ABL融合タンパク質でなく、遊離な全長BCR及びABLタンパク質が、白血球(WBC)中に存在することを示す。図12は、このようなK562細胞抽出物をWBC抽出物と混合する際に、WBC中に存在する遊離な全長BCRが、K562細胞抽出物中のホスホBCR−ABLシグナルを阻害したことを示す。図13は、ビーズにコンジュゲートされる全長BCRのカルボキシル末端領域に特異的な抗体を使用して、遊離なBCRの除去後に、WBC抽出物と混合されるK562細胞中のトータルBCR−ABLシグナルを図示する。特に、図13Aは、K562細胞抽出物をWBC抽出物で混合した際に、遊離なBCRシグナルが飽和したことを示す。BCRC末端抗体結合ビーズで処理した後に、遊離なBCRを取り出した。図13Bは、BCR−ABLシグナルが、同様の実験中におけるビーズ処理の有無にかかわらず、変化しなかったことを示す。
【0339】
或る実施形態では、BCRのアミノ末端領域に特異的な減少用タグを使用することによって、BCR−ABL発現及び/又は活性化の捕捉又は検出の前に、全長ABLタンパク質は、患者サンプルから得られる細胞(例えば、悪性白血球(例えば白血病細胞))の抽出物から、又は細胞系(例えば、白血病細胞系)から得られる細胞の抽出物から更に又は代わりに除去される。このような減少用タグの限定的でない例は、全長ABLのN末端領域に特異的な抗体を結合するビーズである。
【0340】
実施例6.BCR−ABLキナーゼ活性の阻害剤を用いて処理される細胞中のBCR−ABLのトータル及び活性化したレベルの検出
本実施例は、BCR−ABL阻害剤[例えば、イマチニブ(Gleevec(商標))、ニロチニブ(Tasigna(商標))、ダサチニブ(Sprycel(商標))]は、K562細胞(すなわち、人間の慢性骨髄性白血病細胞系からの細胞)中のBCR−ABLタンパク質についての、発現(すなわち、トータルレベル)でなく、活性(すなわち、リン酸化)を、用量依存的に阻害したことを示す。
【0341】
特に、図14A及び14Bは、BCR−ABL阻害剤イマチニブ(Gleevec(商標)が、K562細胞中のBCR−ABLタンパク質についての、発現(すなわち、トータルレベル)でなく、活性(すなわち、リン酸化)を、用量依存的に阻害したことを示す。図14Cは、イマチニブ治療でのホスホBCR−ABLシグナルのパーセント抑制と相関的である、イマチニブ阻害に応じたBCR−ABLのホスホ/トータル比を示す。
【0342】
図15A及び15Bは、BCR−ABL阻害剤ニロチニブ(Tasigna(商標))が、K562細胞中のBCR−ABLタンパク質についての、発現(すなわち、トータルレベル)でなく、活性(すなわち、リン酸化)を、用量依存的に阻害したことを示す。図15Cは、ニロチニブ治療でのホスホBCR−ABLシグナルのパーセント抑制と相関的である、ニロチニブ阻害に応じたBCR−ABLのホスホ/トータル比を示す。
【0343】
図16A及び16Bは、BCR−ABL阻害剤ダサチニブ(Sprycel(商標))が、K562細胞中のBCR−ABLタンパク質についての、発現(すなわち、トータルレベル)でなく、活性(すなわち、リン酸化)を、用量依存的に阻害したことを示す。図16Cは、ダサチニブ治療でのホスホBCR−ABLシグナルのパーセント抑制と相関的である、ダサチニブ阻害に応じたBCR−ABLのホスホ/トータル比を示す。
【0344】
実施例7.種々の癌細胞系中のBCR−ABL基質CRKLについてのトータル及び活性化したレベルの検出
本実施例は、サンドイッチELISAによって決定されるBCR−ABL基質CRKLのトータル及び活性化した(リン酸化した)レベルについての検出を示す。他の実施態様において、2010年7月15日に出願の国際出願第US2010/042182号、及び米国特許第20080261829号明細書、米国特許第20090035792号明細書、米国特許第20100167945号明細書(これらの開示内容は、あらゆる目的のためにこれらの全体が参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されている近接アッセイ[例えば、協調的近接イムノアッセイ(COPIA)]を使用して、BCR−ABL基質(例えば、CRKL)の存在及び/又は活性化状態を測定することができる。
【0345】
図17は、CRKLが、K562細胞(すなわち、人間の慢性骨髄性白血病細胞系からの細胞)中で存在しかつ活性化(すなわち、リン酸化)している両方のことを示す。図18は、CRKLが、A431細胞(すなわち、ヒト上皮癌細胞系からの細胞)に存在し、そしてEGF処理に応じて活性化(すなわち、リン酸化)することを示す。図19は、CRKLが、T47D細胞(すなわち、ヒト腺管上皮腫瘍細胞系からの細胞)中に存在するが、EGF処理に応じて活性化(すなわち、リン酸化)しないことを示す。図20は、CRKLが、T47D細胞中に存在して、そしてヘレグリン(HRG)処理に応じて低レベルで活性化(すなわち、リン酸化)することを示す。図21は、CRKLが、MCF−7細胞(すなわち、ヒト胸部腺癌細胞系からの細胞)に存在して、そしてヘレグリン(HRG)処理に応じて低レベルで活性化(すなわち、リン酸化)することを示す。図22は、患者サンプルの白血球(WBC)中における活性化した(すなわち、リン酸化した)CRKLの存在(活性化のレベルは、ドナー間で異なる)を図示する。
【0346】
実施例8.種々の癌細胞系中のBCR−ABL基質JAK2についてのトータル及び活性化したレベルの検出
本実施例は、サンドイッチELISAによって決定されるBCR−ABL基質JAK2の活性化した(リン酸化した)レベルについての検出を示す。他の実施態様において、2010年7月15日に出願の国際出願第US2010/042182号、及び米国特許第20080261829号明細書、米国特許第20090035792号明細書、米国特許第20100167945号明細書(これらの開示内容は、あらゆる目的のためにこれらの全体が参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されている近接アッセイ[例えば、協調的近接イムノアッセイ(COPIA)]を使用して、BCR−ABL基質(例えば、JAK2)の存在及び/又は活性化状態を測定することができる。
【0347】
図23は、JAK2が、K562細胞(すなわち、人間の慢性骨髄性白血病細胞系からの細胞)及びA431細胞(すなわち、ヒト上皮癌細胞系からの細胞)中において活性化する(すなわち、リン酸化する)ことを示す。
【0348】
実施例9.抗癌剤の希釈が無い場合における血液からの細胞の単離
本実施例は、抗CD45抗体を用いる磁気ビーズ捕捉を使用して、K562細胞と混合される血液からのK562細胞(すなわち、人間の慢性骨髄性白血病細胞系からの細胞)の回収、これに続く、K562細胞可溶化物の調製と、1以上の発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)の発現及び/又は活性化状態、それらの基質、それらの経路、又はそれらの組み合わせの決定とを示す。本実施例は、抗CD45及び/又は抗CD15抗体を用いる磁気ビーズ捕捉を使用して、患者血液サンプルからの白血球の回収、これに続く、細胞可溶化物の調製と、1以上の発癌性融合タンパク質(例えば、BCR−ABL)の発現及び/又は活性化状態、それらの基質、それらの経路、又はそれらの組み合わせの決定とを示す。細胞単離後の任意の洗浄工程の必要性を除去することによって、抗癌剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)の細胞内濃度を変化させないで、目的の細胞を血液から回収することができるので、本願明細書において記載されている方法は有利である。このように、本実施例で記載されている方法は、単離後に細胞を洗浄すること(例えば、ビーズに拘束された細胞を洗浄すること)の技術習慣とは反対であり、そして細胞内部での抗癌剤[例えば、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、Gleevec(商標)、Tasigna(商標)、Sprycel(商標)など)]の実質的な希釈なしに、回収した細胞から細胞溶解物を提供する。
CD45Dynabead(ダイナビーズ)を使用する、1mL血液からのK562細胞回収
1.バッファ1の調製
1.1 PBS500mLへのBSA500mgの添加
1.2 0.5M EDTA2mLの添加
2.血液の調製及びK562細胞との混合
2.1 ドナーからの全血10mLの取得
2.2 血液とバッファ1との1:1希釈の希釈
2.3 自動化細胞カウンタを使用するK562細胞中の細胞カウント(cellcounts )の実行
2.4 各々の濃度における希釈した血液1mLへの5e6、1e6、0.1e6、0 K562細胞の別々の添加
3.Washダイナビーズ(インビトロゲンCat.No.111.53D)の洗浄
3.1 エッペンドルフチューブ1.5mL中に、各1e7細胞のためのビーズ100 μLの移動
3.2 バッファ1(1mL)の添加、及び穏やかな混合
3.3 1分間のマグネティック上へのチューブの配置
3.4 上澄みの除去
3.5 マグネティックからのチューブの除去、及び移動するビーズの開始容量と等し い量のバッファ1中での再懸濁
4.細胞単離
4.1 血液サンプルを混合する各K562への洗浄したビーズ100μLの添加
4.2 冷たい部屋(又は室温)における20分、2時間又は1時間の、回転器上での サンプルのインキュベート
4.3 マグネティック上へのサンプルの配置、及び上澄みの除去
5.細胞溶解物の調製
5.1 5e6 K562細胞と結合するビーズへの冷たい溶解バッファ1mLの添加 5.2 1e6 K562細胞と結合するビーズへの溶解バッファ500μLの添加
5.3 0.1e6 K562細胞と結合するビーズへの溶解バッファ100μLの添 加
5.4 渦(Vortex)及び20’で氷上での配置;断続的に渦
5.5 4度で最大速度で15’の遠心分離
5.6 マイクロアレイ、例えば、本明細書において記載されている近接媒介イムノア ッセイを実施するための、エッペンドルフチューブへの上澄みの移動
CD45及び/又はCD15Dynabead(ダイナビーズ)を使用する、患者血液サンプルからのCML細胞単離
1.バッファ1の調製
1.1 PBS500mLへのBSA500mgの添加
1.2 0.5M EDTA2mLの添加
2.患者血液の調製
2.1 抗凝固剤としてのEDTA(又は、ヘパリン)を使用する、患者からの全血2 −3mLの取得
2.2 プロテアーゼ阻害剤の添加又は非添加
3.Washダイナビーズ(インビトロゲンCat.No.111.53D)の洗浄
3.1 エッペンドルフチューブ1.5mL中への、各1e7細胞のためのビーズ10 0μL(200μL、300μL)の移動
3.2 バッファ1(1mL)の添加、及び穏やかな混合
3.3 1分間のマグネティック上へのチューブの配置
3.4 上澄みの除去
3.5 マグネティックからのチューブの除去、及び移動するビーズの開始容量として のバッファ1(100μL)中での再懸濁
4.細胞単離
4.1 エッペンドルフチューブ1.5mL中の血液サンプル1mLへの洗浄したビー ズ100μLの添加
4.2 冷たい部屋(又は室温)における20分、2時間又は1時間の、回転器上での サンプルのインキュベート
4.3 マグネティック上へのサンプルの配置、及び上澄みの除去
5.細胞溶解物の調製
5.1 細胞と結合するビーズへの溶解バッファ100μLの添加
5.2 渦(Vortex)及び20’で氷上での配置;断続的に渦
5.3 4度、最大速度で15’の遠心分離
5.4 マイクロアレイ、例えば、本明細書において記載されている近接媒介イムノア ッセイを実施するための、エッペンドルフチューブへの上澄みの移動
【0349】
図24は、抗CD45磁気ビーズを使用して、血液から単離されるK562細胞から調製される細胞溶解物中で、リン酸化したBCR−ABLを検出し測定することができることを示す。特に、4G10抗体(ミリポア)(融合タンパク質のAbl部分中のホスホチロシン残基と結合する)を、リン酸化したBCR−ABLレベルを検出するために使用した。同様のアッセイは、抗CD45及び/又は抗CD15磁気ビーズを使用して、患者サンプルの血液から単離される白血球(例えば、慢性骨髄性白血病(CML)細胞)から調製される細胞溶解物上で実施され、リン酸化したBCR−ABLの存在及び/又はレベルを検出して測定することができる。
【0350】
実施例10.患者サンプルにおける、トータル発癌性融合タンパク質とトータル天然全長タンパク質レベルとの両方の検出
本実施例は、発癌性融合タンパク質内で発見される配列又はドメインを含有する天然全長タンパク質の一方又は両方と結合する発癌性融合タンパク質の総量又は活性化状態を同時に検出する方法を示す。1つの特定の実施例では、本方法によって、生体サンプル(例えば、血液又は骨髄吸引液サンプル)中のトータルBCR−ABLレベル並びにトータル天然全長BCR及び/又はABLレベルの両方についての検出及び/又は測定を可能にする。
【0351】
所定の実施形態では、天然タンパク質レベル(例えば、全長BCR及び/又はABLレベル)は、単一のパッド上の多重化方法の発癌性融合タンパク質レベル(例えば、BCR−ABLレベル)に従って決定される。こうした実施形態では、天然全長タンパク質は、有利なことに、こうした分子のレベルを同じパッドに決定されるような発癌性融合タンパク質に従って、単離することができる。
【0352】
図25は、天然の全長BCRのC末端(C末端ドメインは、BCR−ABL中に存在しな)に向けられた抗体が、BCR−ABLのN末端領域に向けられた抗体のように、同じパッド中の同じスライド上にスポットされた際に、トータルBCR−ABLレベルが変化しなかったことを示す。図26は、天然のBCRのC末端に向けられた抗体が同じパッド中のスライド上にスポットされる際に、N末端に特異的なBCR抗体で検出される遊離で天然なBCRシグナルが減少することを示す。
【0353】
特定の実施形態において、本実施例に記載されている方法は、トータルBCR−ABLレベル並びにトータル天然の全長BCR又はABLレベルを、検出及び/又は測定するために使用することができ、そして、天然の全長BCR又はABLレベルに対するトータルBCR−ABLレベルの比を計算することができる。或る場合には、天然の全長BCR又はABLレベルに対するBCR−ABLレベルの比は、反応インジケータ、例えば、大きな分子反応、完全な分子反応、完全な細胞遺伝学的な反応、及びそれらの組み合わせについてのより正確な決定を提供するために計算される。他の場合には、本実施例に記載されている方法は、治療(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤療法)に応じて、(例えば、天然の全長BCR又はABLレベルに対するトータルBCR−ABLレベルの比を計算することによって、)対照に関するBCR−ABL(例えば、天然の全長BCR又はABL)の発現の変化をモニタリングするために使用することができる。
【0354】
本明細書に引用した全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願がそれぞれ参照することにより組み込まれることを明確に及び個別に示されていたかのように、本明細書に参照することにより組み込まれる。理解を明確にする目的で例示及び実施例により本発明を或る程度詳細に記載してきたが、本発明の教示に照らせば、特許請求の範囲に記載の精神又は範囲から逸脱することなしに所定の変更又は修飾をなすことができることは当業者に容易に明白であろう。
【0355】
本発明の好適な実施形態は以下の通りである。
[1]発癌性融合タンパク質のレベル又は活性化状態を決定する方法であって、上記方法は、以下の工程を含む:
(a)細胞抽出物中に存在する第1の全長タンパク質を、上記第1全長タンパク質と第1結合成分とを含む複合体に変換するのに適した条件下で、上記細胞抽出物を、上記第1全長タンパク質の第1ドメインに特異的な上記第1結合成分と接触させる工程であって、
上記第1全長タンパク質は、上記第1全長タンパク質の第1ドメイン及び上記第1全長タンパク質の第2の異なるドメインを含み、
上記第1全長タンパク質の第1ドメインは、第2の異なる全長タンパク質の第1ドメインに融合する上記第1全長タンパク質の第2の異なるドメインを含む対応する発癌性融合タンパク質に存在せず、
上記第2の異なる全長タンパク質は、上記第2の異なる全長タンパク質の第1ドメイン及び上記第2の異なる全長タンパク質の第2の異なるドメインを含み、
上記細胞抽出物は、上記第1全長タンパク質、上記第2の異なる全長タンパク質及び上記発癌性融合タンパク質を含む、
上記工程;
(b)上記細胞抽出物から工程(a)からの上記複合体を除去し、上記第1全長タンパク質を含まない細胞抽出物を形成する工程;
(c)上記細胞抽出物中に存在する上記発癌性融合タンパク質を、上記発癌性融合タンパク質と第2、第3及び第4結合成分とを含む複合体に変換するのに適した条件下で、工程(b)からの上記細胞抽出物を、第2、第3及び第4結合成分と接触させる工程であって、
上記第2結合成分は上記第1全長タンパク質の上記第2の異なるドメインに特異的であり、上記第2結合成分がアドレス可能なアレイにおける固体支持体上に拘束されており、上記第3結合成分が、促進成分を用いて標識化されており、そして、下記の内の1つに特異的であり:
(i)第2の異なる全長タンパク質の第1ドメイン;
(ii)上記第1全長タンパク質の第2の異なるドメイン;又は
(iii)上記第1全長タンパク質の上記第2の異なるドメインと上記第2の異なる全長タンパク質の上記第1ドメインとの間の融合部位、
上記第4結合成分が、シグナル増幅対の第1メンバーを用いて標識化されており、そして
上記第2の異なる全長タンパク質の上記第1ドメインに特異的であり、そして
上記促進成分が、上記シグナル増幅対の第1メンバーへチャネリングしかつ上記シグナル増幅対の第1メンバーと反応する酸化剤を生成する、上記工程;
(d)工程(c)からの上記複合体を、上記シグナル増幅対の第2メンバーとインキュベートして、増幅シグナルを生成する工程;及び
(e)上記シグナル増幅対の第1及び第2メンバーから生成される増幅シグナルを検出し、それによって上記発癌性融合タンパク質のレベル又は活性化状態を決定する工程。
[2]上記細胞抽出物が、サンプルから単離される細胞の抽出物を含み、上記サンプルは、全血、血清、血漿、尿、痰、気管支洗浄液、涙液、乳頭吸引液、リンパ液、唾液、微細針吸引液(FNA)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[3]上記サンプルが癌を有する患者から得られ、上記癌が、癌細胞中の染色体転座による発癌性融合タンパク質の形成によって、引き起こされるものである、[2]に記載の方法。
[4]上記癌が、血液悪性腫瘍、骨原性肉腫、又は軟部組織肉腫である、[3]に記載の方法。
[5]上記の単離された細胞が、循環腫瘍細胞、白血球、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、[2]に記載の方法。
[6]上記発癌性融合タンパク質が、BCR−ABL、DEK−CAN、E2A−PBX1、RARα−PML、IREL−URG、CBFβ−MYH11、AML1−MTG8、EWS−FLI、LYT−10−Cα1、HRX−ENL、HRX−AF4、NPM−ALK、IGH−MYC、RUNX1−ETO、TEL−TRKC、TEL−AML1、MLL−AF4、TCR−RBTN2、COL1A1−PDGF、E2A−HLF、PAX3−FKHR、ETV6−NTRK3、RET−PTC、TMRSS−ERG、TPR−MET、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]上記発癌性融合タンパク質がBCR−ABLである、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[8]上記第1全長タンパク質がBCRであり、
上記第2の異なる全長タンパク質がABLであるか、
上記第1全長タンパク質がABLであり、
上記第2の異なる全長タンパク質がBCRである、
[6]に記載の方法。
[9]上記活性化状態が、リン酸化状態、ユビキチン化状態、複合体形成状態、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10]1以上のシグナル伝達分子のレベル又は活性化状態を決定することを更に含み、
上記の1以上のシグナル伝達分子がBCR−ABL基質であり、上記BCR−ABL基質が、CRKL、JAK2、STAT5、VAV、BAP−1、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[11]上記第1結合成分が第1抗体を含み、
上記第1抗体が固体支持体に結合している、[1]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]上記第2の結合成分が第2抗体を含み、
上記第2抗体が固体支持体に結合している、[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13]工程(c)〜(e)が、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、フローサイトメトリー測定法、タグ選別測定法、又は近接二重検出アッセイを含む、[1]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]工程(b)からの細胞抽出物を、第2結合成分の希釈系列と接触させ、上記発癌性融合タンパク質と上記第2結合成分とを含む複数の複合体を形成し、
上記第3及び第4結合成分が、第3及び第4抗体をそれぞれ含んでいる、[1]に記載の方法。
[15]上記第3抗体が活性化状態非依存性抗体であり、そして上記第4抗体が活性化状態依存性抗体であり、
上記シグナル増幅対の第1及び第2メンバーから生成される上記増幅シグナルが、活性化した発癌性融合タンパク質の量と相関的である、[14]に記載の方法。
[16]上記第3結合成分を、上記促進成分を用いて直接的に標識化する、
[1]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[17]上記第4結合成分を、上記シグナル増幅対の第1メンバーを用いて直接的に標識化するか、
上記第4結合成分にコンジュゲートされる結合対の第1メンバーと、上記シグナル増幅対の第1メンバーにコンジュゲートされる上記結合対の第2メンバーとの間の結合を介して、上記第4結合成分を、上記シグナル増幅対の第1メンバーを用いて標識化する、[1]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[18]以下の工程を更に含む:
(f)上記細胞抽出物中に存在する第2の異なる全長タンパク質を、上記第2の異なる全長タンパク質と第5結合成分とを含む複合体に変換するのに適した条件下で、上記細胞抽出物を、上記第2の異なる全長タンパク質の第2ドメインに特異的な上記第5結合成分と接触させる工程であって、上記第2の異なる全長タンパク質の第2ドメインが、上記発癌性融合タンパク質に存在しない、上記工程;及び
(g)上記細胞抽出物から工程(f)からの上記複合体を除去し、上記第2の異なる全長タンパク質を含まない細胞抽出物を形成する工程であって、
工程(f)を、工程(a)の前、中、又は後に実施する、上記工程、
[1]〜[17]のいずれかに記載の方法。
[19]上記第5結合成分が第5抗体を含み、上記第5抗体が固体支持体に結合している、[18に記載の方法。
[20]癌を有し、且つ癌治療のための治療過程を受ける被験者において療法を最適化するため及び/又は毒性を減少するための方法であって、上記方法が以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後に被験者から単離された癌細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(b)[1]〜[19]のいずれかに記載の方法に従って、上記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;及び、
(c)被験者のための治療過程の今後の用量を決定するか、又は異なる治療過程を被験者に施すかどうかを決定するために、測定した上記発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを、治療過程の間の初期に測定される上記発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルと比較する工程。
[21]上記発癌性融合タンパク質がBCR−ABLであり、上記被験者が、治療過程を受ける前に、上記発癌性融合タンパク質を発現する癌細胞を有することを決定され、
上記被験者がBCR−ABLについて陽性である、[20]に記載の方法。
[22]発癌性融合タンパク質についての発現のレベルと活性化のレベルとの両方を、上記細胞抽出物中で測定し、
工程(b)が、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比を計算することをさらに含んでいる、
[20]又は[21]に記載の方法。
[23]工程(c)が、トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の上記計算比を、初期に上記被験者のために計算されるトータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の比と比較することを含む、[22]に記載の方法。
[24]トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の上記計算比が、抗癌剤治療における上記活性化した発癌性融合タンパク質のパーセント阻害と相関する、
[22]に記載の方法。
[25]トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の上記計算比が、対照タンパク質レベルに関連している、[22]に記載の方法。
[26]トータル発癌性融合タンパク質レベルに対する活性化の上記計算比が、ホスホ/トータルBCR−ABLタンパク質レベルの比を含んでいる、[22]に記載の方法。
[27]対照タンパク質が、上記発癌性融合タンパク質内で見つけられる配列又はドメインを含有する天然全長タンパク質を含む、[24]〜[26]のいずれかに記載の方法。
[28]上記発癌性融合タンパク質の活性化の50%より低い阻害が、治療過程の今後の用量を増加させることの必要性、又は異なる治療過程を施すことの必要性を示す、
[20]〜[27]のいずれかに記載の方法。
[29]上記発癌性融合タンパク質の活性化レベルの50%未満の阻害が、治療過程への被験者によるコンプライアンスの不足、治療過程と関連した副作用若しくは毒性の可能性の存在、又はそれらの組み合わせを示す、[20]〜[27]のいずれかに記載の方法。
[30]上記発癌性融合タンパク質の活性化レベルの80%を超える阻害が、被験者が正しい用量で正しい治療にあることを示す、[20]〜[27]のいずれかに記載の方法。
[31]上記癌が慢性骨髄性白血病(CML)であり、
上記抗癌剤が、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、化学療法剤、ホルモン療法剤、放射線療法剤、ワクチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、[20]〜[28]のいずれかに記載の方法。
[32]上記工程(b)〜(c)が以下の工程を代わりに含む、[20]〜[31]のいずれかに記載の方法:
(b’)[1]〜[19]のいずれかに記載の方法に従って上記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質の発現及び/又は活性化のレベルを測定し、上記細胞抽出物中の経路における、1以上のシグナル伝達分子についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;
(c’)被験者のための治療過程の今後の用量を決定するか、又は異なる治療過程を被験者に施すかどうかを決定するために、測定した上記発癌性融合タンパク質及びシグナル伝達分子についての発現及び/又は活性化のレベルを、治療過程の間の初期に測定される上記発癌性融合タンパク質及びシグナル伝達分子についての発現及び/又は活性化のレベルと比較する工程。
[33]癌の治療のために、適した抗癌剤を選択するための方法であって、上記方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に単離された癌細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(b)[1]〜[19]のいずれかに記載の方法に従って、上記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;及び、
(c)上記抗癌剤が、癌の治療のために適切であるか不適切であるかを決定するために、上記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、
抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程。
[34]抗癌剤を用いる治療に対する癌の応答を同定するための方法であって、上記方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に単離された癌細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(b)[1]〜[19]のいずれかに記載の方法に従って、上記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;及び、
(c)上記抗癌剤を用いる治療に対して、癌が応答性又は非応答性であると同定するために、上記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程。
[35]抗癌剤を用いる治療に対して、癌を有する被験者の応答を予測するための方法であって、上記方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に単離された癌細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(b)[1]〜[19]のいずれかに記載の方法に従って、上記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;及び、
(c)被験者が、上記抗癌剤を用いる治療に対して応答することの可能性を予測するために、上記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程。
[36]癌を有する被験者が、抗癌剤を用いる治療に対して耐性があるかどうかを決定するための方法であって、上記方法が、以下の工程を含む:
(a)抗癌剤の投与後又は抗癌剤とのインキュベーションの前に単離された癌細胞を溶解し、細胞抽出物を生成する工程;
(b)[1]〜[19]のいずれかに記載の方法に従って、上記細胞抽出物中の発癌性融合タンパク質についての発現及び/又は活性化のレベルを測定する工程;及び、
(c)上記抗癌剤を用いる治療に対して、耐性があるか又は感受性があるかどうかを決定するために、上記発癌性融合タンパク質のために検出される発現及び/又は活性化のレベルを、初期に抗癌剤がある状態又は抗癌剤がない状態で作成した参照用の発現及び/又は活性化プロフィールと比較する工程。
[37]上記癌が慢性骨髄性白血病(CML)であり、
上記抗癌剤が、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、化学療法剤、ホルモン療法剤、放射線療法剤、ワクチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、[34]〜[36]のいずれかに記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26