(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持部材は、拡大された状態と拡大されていない状態との間で屈曲可能であり、前記拡大された状態は、所定の形状構成を有し、前記瞳孔を拡張するように寸法決めされる、請求項1に記載の瞳孔拡大器システム。
前記複数の係合部は、前記支持部材の周囲に離間配置された第1の係合部および第2の係合部を含み、凹部を通るカニューレを通過させるように寸法決めされる前記第1の係合部と第2の係合部との間の前記凹部を作り出す、請求項1に記載の瞳孔拡大器システム。
前記複数の係合部のうちの少なくとも1つの係合部の前記前方フランジおよび前記後方フランジのうちの一方は、他方とは異なって寸法決めされ、成形される、請求項17に記載の瞳孔拡大器システム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面は、本明細書に開示されるデバイスおよび方法の実施形態を図示し、説明とともに、本開示の原理を説明する役目を果たす。
【0018】
本開示の原理の理解を促す目的で、ここで図面に図示される実施形態を参照し、特定の用語を使用してそれらの実施形態を説明する。しかし、本開示の範囲が限定されるものではないことに理解されたい。本開示が関連する当業者なら通常思いつくように、記載されたデバイス、器具、方法、ならびに本開示の原理の任意のさらなる応用に対する任意の変更およびさらなる修正が完全に企図される。具体的には、一実施形態に関して記載される特徴、構成要素、および/またはステップは、本開示の他の実施形態に関連して記載される特徴、構成要素、および/またはステップと組み合わせられ得ることを完全に企図されたい。簡略化のために、いくつかの場合では、同じ参照番号は、同じまたは類似の部品を指すために図面にわたって使用される。
【0019】
本開示は概して、眼科用瞳孔拡大器、関連する搬送システム、ならびに非限定的な例として、白内障手術、硝子体網膜手術、および他の後眼部手術等、眼球の内部の適切な視覚化を必要とする眼科手術および処置に使用される方法に関する。いくつかの場合では、本開示の実施形態は、眼科手術システムの一部であるように構成されてもよい。
【0020】
本開示は、瞳孔を拡張し、眼科手術または処置中に眼房安定性を維持しながら拡張された状態で瞳孔を維持するために虹彩カップとともに形状記憶リングを利用する瞳孔拡大器を提供する。瞳孔拡大器は、一次切開を通って眼球の中への非侵襲的な挿入およびそこからの取り外しを容易にする拡大されていない状態をとることができ、眼球内の所定の拡大された状態をとることができる。その拡大された状態では、瞳孔拡大器は、虹彩に対して瞳孔拡大器を支持する虹彩カップとしてここで参照される実質的に屈曲可能な虹彩係合部とともに実質的に円形リングを備え、瞳孔拡大器が手術(すなわち、縫合、鋲、または手動で保持された器具を使用しない)にわたって眼球内で自己安定化され、自己保持されることを可能にする。したがって、本明細書に開示される瞳孔拡大器は、眼科手術または他の処置にわたって瞳孔拡張および瞳孔拡張の維持を強化し、それにより様々な眼疾患の診断および/または治療を容易にする。本開示はまた、瞳孔拡大器を挿入し、取り外すために使用され得る挿入器を提供する。
【0021】
図1は、本開示の一実施形態による拡大された状態の瞳孔拡大器100を図示する。
図1に示される瞳孔拡大器100は、硝子体網膜手術等の眼科手術に使用するために構成されるが、瞳孔拡大器は、診断、治療、体外評価、および死後評価を含むあらゆる眼科的状況で使用され得る。外科的処置にわたって患者の眼球上に自己保持することを可能にする瞳孔拡大器100は、硝子体網膜の処置中の後眼部内など、眼球の内部の中の構造の視覚化およびそこへのアクセスを強化することができる。瞳孔拡大器100のいくつかの実施形態は、使い捨ての単一使用デバイスとして構成されてもよく、それにより各患者に新しい瞳孔拡大器の使用を可能にする。
【0022】
瞳孔拡大器100は、中央開口部115を有する支持部材110と、支持部材110上に円周方向に配設された複数の虹彩カップ120、125とを備える。描写される実施形態では、瞳孔拡大器100は、5つの虹彩カップ120と、支持部材110上に対称なパターンで固定して配列された2つの虹彩カップ125とを含む。虹彩カップ120、125は、複数の凹部130および凹部140を形成するように支持部材110に沿って離間配置される。虹彩カップ120、125は、瞳孔拡大器100が眼球の瞳孔内に拡大された状態で中心に位置決めされる場合、虹彩カップが眼球の虹彩と接触し、それを伸ばすように、支持部材110から半径方向に延在する。
【0023】
他の実施形態では、瞳孔拡大器は、眼球内の適切な瞳孔拡張および自己安定化を可能にする虹彩カップの任意の数および配列を含むことができる。虹彩カップ120、125の数および配列は、他の要因の中で、実施される処置のタイプ、外科医の好ましい外科技術、または手術器具(例えば、トロカールカニューレ)が眼科の外科的処置(例えば、眼球の後眼部および後眼房を伴う外科的処置)のために典型的に配置される位置を考慮して選択されてもよい。
【0024】
支持部材110は、眼球の内部領域の視覚化またはそこへのアクセスを可能にするように十分な瞳孔拡張を可能にするように成形され、構成される。支持部材110は、拡大されていない状態から所定の形状構成を有する拡大された状態に拡大可能である。例えば、
図1に描写される実施形態では、支持部材110は、拡大された状態では、平均のヒトの瞳孔の形状に実質的に対応する所定の円形状を有する連続的な閉じた環状リングを含む。他の実施形態では、支持部材は、開いたリングまたはC字形リングを含む。他の実施形態では、支持部材は、非限定的な例として、卵形、馬蹄形、または楕円形状を含む、拡大された状態で様々な所定の形状のいずれかを有することができる。
【0025】
支持部材110は、その完全性を危うくすることなく弾性的または塑性的に変形させ得る構造的に変形可能な生体適合性材料から構築される。支持部材110は、ニチノールもしくは弾性ポリマー等の自己拡大の生体適合性材料、または弾性的に圧縮されたスプリング調質の生体適合性材料から製造されてもよい。特定の金属合金等の形状記憶特質を有する他の材料も使用されてもよい。形状記憶材料は、支持部材が眼球への搬送中に薄型構成で抑えられ、かつ搬送プロセス後にその拡張された形状を体内で回復および維持することを可能にする。支持部材110の材料組成は、支持部材を拡大された状態に弾性的に付勢する。具体的には、この例では、支持部材は、支持部材が小さい切開を通って(例えば、管状搬送器具を通って)搬送することを容易にするために拡大されていない状態に弾性的に変形し、かつそれが眼球に入るとき、拡大された状態に戻すことを可能にする弾性材料から形成される。他の実施形態では、支持部材は、拡張された構成で記憶形状を有する形状記憶合金で製造されてもよい。支持部材110は、非限定的な例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、様々な生体適合性材料のいずれかでコーティングされてもよい。
【0026】
支持部材110は、眼科処置中に他の手術器具および/または外科医の手で干渉を制限するのに十分に小さいままでありながら、眼球の内部の適切な視覚化またはそこへのアクセスを提供するために拡大された状態で、単に例として、約6.0〜8.0mmの範囲の外径D1を有するように寸法決めされてもよい。他の直径範囲が企図される。
図1および2に描写される実施形態では、支持部材110は、約0.05〜0.15mmの範囲の実質的に円形断面および断面直径D2を有するが、他の寸法が企図される。他の実施形態では、支持部材110は、これに限定されないが、矩形、卵形、正方形、菱形、および三日月形を含む、様々な断面形状のいずれかを有することができる。
【0027】
図1に示されるように、凹部130、140のいずれか1つは、支持部材110、虹彩カップ120の周辺部145、および/または虹彩カップ125の周辺部150によって成形され、画定される。例えば、凹部140は、支持部材110、周辺部145、および周辺部150によって成形され、画定される。描写される実施形態では、虹彩カップ120、125は、互いに実質的に均等に離間配置され、それにより実質的に均等に寸法決めされた凹部130を形成する。他の実施形態では、虹彩カップは、互いに不均等に離間配置され、それにより不均等に寸法決めされた凹部を作り出す。凹部140は、非限定的な例として、水晶体チップ等の手術器具を通過させるように凹部130より広く寸法決めされる。凹部130、140の数および配列は、虹彩カップ120、125の数および配列に相当する。例えば、描写される実施形態では、瞳孔拡大器100は、7つすべての虹彩カップ120、125と、7つすべての凹部130、140とを含む。代替的実施形態は、凹部130、140の任意の数および配列を含むことができる。いくつかの実施形態は、広い凹部140の代わりに空間または空隙を有する開いた支持部材を含むことができる。
【0028】
説明の簡略化のために、虹彩カップ(120)のうちの1つのみが詳細に記載され、虹彩カップ120、125は、本明細書に記載される違いを除き、実質的に同一であるということを理解されたい。
【0029】
図2は、支持部材110の一部分および
図3に再び図示される1つの虹彩カップ120を示す瞳孔拡大器100の一部分を図示する。虹彩カップ120は、瞳孔拡大器100が平均の眼球内に位置決めされるとき、虹彩の内縁を取り囲むように成形され、構成される。描写される実施形態では、虹彩カップ120は、瞳孔拡大器100の最も遠い周辺部を形成するように支持部材110から離れて半径方向に延在する。
【0030】
図2および
図3に示されるように、虹彩カップ120は、前方フランジ160と、後方フランジ170と、中心部180とを含む。中心部180は、虹彩カップ120と支持部材110との間に接合部を形成する。
図3の描写される実施形態では、中心部180は、支持部材を貫通して受容する中空管200を含む。いくつかの実施形態では、前方フランジおよび後方フランジは、虹彩の内縁の周囲に適合するように構成される。
【0031】
前方フランジ160、後方フランジ170、および中心部180は、接触面210を形成するように協働し、これは、虹彩の内縁で虹彩組織と接触し、それと係合し、かつ虹彩の内縁の一部分を収容するように成形され、構成される。描写される実施形態では、接触面210は、前方フランジと後方フランジとの間に形成された受容凹部として成形される。接触面210は、前方フランジ160と後方フランジ180との間に延在する幅Wを有する。幅Wは、凹部の高さを形成する。一実施形態では、幅Wは、約0.30〜0.70mmの範囲内、好ましくは、約0.35〜0.60mmの範囲内である。接触面210は、虹彩カップの全長にわたる長手方向の長さLを有する。一実施形態では、長さLは、約0.50〜1.5mmの範囲内、好ましくは、約0.65〜1.0mmの範囲内である。この長さは、虹彩上の荷重が虹彩周囲のより大きな割合にわたって分布されることを可能にし、点荷重で生じ得る外傷を減少させる。加えて、荷重を分布する複数の虹彩カップを使用することによって、虹彩は、さらに保護され、これは、回復率を増加させ、改善された手術結果をもたらし得る。
【0032】
様々な実施形態では、接触面210は、これに限定されないが、C字形、より顕著なU字形、矩形状、V字形、および楕円形状を含む、虹彩と係合するように設計された様々な形状のいずれかを有することができる。いくつかの実施形態では、接触面は、虹彩の内縁の湾曲に実質的に対応する湾曲を有する。描写される実施形態では、接触面210は、実質的に平滑である。他の実施形態では、接触面は、テクスチャ加工されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、虹彩カップは、例えば、射出成形によって支持部材と一体的に形成される。他の実施形態では、瞳孔拡大器は、接着剤、ねじ込み係合、スナップ嵌め係合、摩擦係合、過剰成形、熱収縮、熱溶接、および/または虹彩カップを支持部材に固定して接続するための任意の他の機構のうちの1つ以上を含む、様々な取り付け機構のいずれかによって中心部で支持部材に取り付けられた虹彩カップを有する多構成要素デバイスを備える。
【0034】
いくつかの実施形態では、虹彩カップ120は、ある程度の変形および屈曲性を可能にする屈曲可能な材料から形成される。代替的実施形態では、虹彩カップは、剛性または半剛性材料から形成される。虹彩カップ120は、非限定的な例として、シリコーン、シリコーンポリイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ナイロン、ポリプロピレン、ポリウレタン、シラスティック、ポリアミド、もしくはこれらの組み合わせを含む様々な生体適合性材料のいずれか、または眼科処置に使用するための弾性、可撓性、および適合性の必要特性を有する任意の他の生体適合性材料から形成されてもよい。虹彩カップ120は、非限定的な例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む様々な生体適合性材料のいずれかでコーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、前方フランジ160、後方フランジ170、および中心部180を含む虹彩カップ120の個々の構成要素は、様々な程度の屈曲性の異なる生体適合性材料から形成されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、後方フランジは、眼球のレンズおよびカプセルへの接触損傷または外傷を最小限にするように、前方フランジより可撓性かつ屈曲性材料から形成されてもよい。
【0035】
図4は、
図1に示される瞳孔拡大器100の線4−4に沿った断側面図を図示する。描写される実施形態では、虹彩カップ120は、実質的に等しい寸法および断面形状の前方フランジ160および後方フランジ170を含む対称な断面輪郭を有する。さらに、各虹彩カップ120は、実質的に同一である。したがって、瞳孔拡大器の虹彩カップ120は、実質的に同じ程度および実質的に同じ様式で虹彩の前面および後面と係合するように成形され、構成される。
【0036】
瞳孔拡大器100の虹彩カップ120は、実質的に同一の寸法および断面形状であるが、他の実施形態は、様々な寸法および形状の虹彩カップを含むことができる。
【0037】
例えば、
図5は、本開示の別の実施形態による瞳孔拡大器250の断側面図を図示する。瞳孔拡大器250は、様々な断面輪郭の虹彩カップを含む。具体的には、瞳孔拡大器250は、虹彩カップ260と、虹彩カップ270とを含み、これは、本明細書に記載される違いを除き、虹彩カップ120に実質的に類似する。虹彩カップ260は、前方フランジ275と、後方フランジ280とを含み、虹彩カップ270は、前方フランジ285と、後方フランジ290とを含む。
図5に示されるように、虹彩カップ260、270は、虹彩カップ270の前方フランジ285および虹彩カップ260の後方フランジ280が、虹彩カップ270の後方フランジ290および虹彩カップ260の前方フランジ275よりそれぞれ長い、正反対の断面輪郭を有する。さらに、虹彩カップ270の前方フランジ285および虹彩カップ260の後方フランジ280の遠位端部295、296はそれぞれ、先細りであってもよい。したがって、瞳孔拡大器250の異なる虹彩カップ260、270は、異なる程度および異なる様式で虹彩の前面および後面と係合するように成形され、構成される。様々なフランジのこの組み合わせは、眼球内で瞳孔拡大器を中心に合わせ、安定させる傾向があり得る。
【0038】
図6〜8は、異なる形状および構成を有する虹彩カップの様々な例を図示する。例えば、
図6は、本開示の別の実施形態による虹彩カップ300を図示する。虹彩カップ300は、
図6と
図3との比較によって分かり得るか、または本明細書に記される違いを除き、虹彩カップ120に類似する。虹彩カップ300は、虹彩組織への圧縮力を把持し、および/またはそれを加えるように構成された末端部310を含む。加えて、虹彩カップ300は、末端部310によって一部を部分的に閉じたD字形に成形された接触部320を含む。
【0039】
図7は、本開示の別の実施形態による虹彩カップ340の側面図を図示する。虹彩カップ340は、
図7と
図3との比較によって分かり得るか、または本明細書に記される違いを除き、虹彩カップ120に類似する。虹彩カップ340は、虹彩組織への圧縮力を把持し、および/またはそれを加えるように構成された末端部350を含む。加えて、虹彩カップ340は、接触部を部分的に閉じた拡大したD字形に成形するように末端部350と協働する細長く、伸長されたフランジ370を含む。虹彩カップ340はまた、拡大される中心部380を含み、虹彩カップ340に、例えば、虹彩カップ120より大きい断面輪郭を付与する。
【0040】
図8は、本開示のさらに別の実施形態による虹彩カップ400の側面図を図示する。虹彩カップ400は、
図8と
図3との比較によって分かり得るか、または本明細書に記される違いを除き、虹彩カップ120に類似する。虹彩カップ260と同様に、虹彩カップ400は、後方フランジ410が前方フランジ420より長い、非対称の断面輪郭を含む。したがって、前方フランジ420および後方フランジ410は、異なる程度に虹彩の前面および後面にそれぞれ係合するように成形され、構成される。加えて、虹彩カップ400は、
図3に示される虹彩カップ120の接触面210より深いU字形の接触面430を含む(したがって、より大きい接触面積を提供することができる)。
【0041】
図1に戻って参照することにより、虹彩カップ120および虹彩カップ125は、各虹彩カップ125がタブ128を含むことを除き実質的に類似し、これは、ユーザに瞳孔拡大器100のための把持面を提供する中央開口部115の中に延在する隆起または縁を備える。タブ128は、ユーザが虹彩と接触する必要なく眼科処置中に瞳孔拡大器を操作(すなわち、位置決め、再配置、取り外し、および/または別の方法で移動)することを可能にする。描写される実施形態では、タブは、適切な位置決め工具を受容するように寸法決めされる穿孔の形態で器具係合特徴450を含む。他の実施形態では、タブ128は、非限定的な例として、溝、突起部、ループ、および/またはフックを含む、様々な器具係合特徴のいずれかを含むことができる。代替的実施形態では、タブ128は、凹部130内の支持部材110上に位置決めされてもよい。タブ128は、別個の接触面を提供することによって、瞳孔拡大器100がパッケージング内にしっかりと収容される間、瞳孔拡大器100を損傷から保護するように機能することもできる。いくつかの実施形態では、虹彩カップ120はそれ自体が、器具係合特徴450に実質的に類似する器具係合特徴を含む。例えば、いくつかの実施形態では、虹彩カップ120は、中心部180(
図2に示される)上に器具係合特徴を含むことができる。
【0042】
瞳孔拡大器100は、非限定的な例として、下層組織、血管、気泡、および/または出血を観察するために、支持部材110および虹彩カップ120を通って視覚化のために提供するのに十分に透明であるように成形され、構成されてもよい。代替的実施形態では、支持部材110および/または虹彩カップ120は、眼科処置中に明確に視認できるように、半透明または不透明であってもよい。
【0043】
図9a〜11は、本開示の一実施形態による眼球500内の瞳孔拡大器100を使用して、虹彩510を伸ばし、瞳孔520を拡大する方法を示す。簡略化のために、2つの虹彩カップ120のみが
図11に示される。
図9および11を参照することにより、角膜530、強膜535、または縁郭540)のいずれかで2〜4mmの切開(図示せず)がされた後、前眼房545は、角膜530が破れるのを防ぎ、かつ手術器具の後続の挿入のための潤滑および支持を提供する粘弾性流体を有する従来の様式で充填される。
【0044】
図9aを参照すると、瞳孔拡大器100が搬送器具555のルーメン550の中に、そしてそれを通って通過される際、支持部材110は、拡大されていない状態にある。例示的な一方法では、ユーザは、虹彩510に対して最も遠位(ユーザから)の虹彩カップ125aにのみ係合するように搬送器具555から瞳孔拡大器100を前進させることができる。いくつかの場合では、ユーザは、搬送器具555または別の切開(図示せず)のいずれかを通って挿入される位置決め器具(図示せず)を使用して、虹彩510に対して虹彩カップ125aを位置決めするように虹彩カップ125a上のタブ128(
図1に標識付けされる)の器具係合特徴450に係合することができる。他の実施形態では、最も遠位の虹彩カップは、虹彩カップ120のうちの1つであってもよい。
【0045】
図9bに示されるように、虹彩カップ125aが虹彩510に係合した後、ユーザは、瞳孔拡大器100の残り部分を搬送器具555から瞳孔520の中に前進させることができる。瞳孔拡大器100が搬送器具555から瞳孔520の中に現れると、支持部材110は、拡大されていない構成から実質的に円形状を有する拡大された構成に移行する。位置決め器具(図示せず)は、虹彩カップ120、125を虹彩510の内縁560の周囲に位置決めするように虹彩510および/または瞳孔拡大器100を操作するために利用されてもよい。いくつかの場合では、ユーザは、位置決め器具を利用して、虹彩カップ125a、125上のタブ128の器具係合特徴450に係合し、瞳孔拡大器100を再配置することができる。
【0046】
図10および11は、瞳孔の元の解剖学的形状を模倣する実質的に円形状で瞳孔520を拡張するように眼球500内に位置決めされた瞳孔拡大器100を図示する。
図10に示されるように、虹彩カップ120、125のすべては、虹彩組織に対して位置決めされ、それにより虹彩510を伸ばし、虹彩カップ120、125の中心部180の厚さの結果として瞳孔拡大器の外径D1をわずかに超える、直径D3まで瞳孔径を拡大する。瞳孔拡大器100は、眼科処置中に広いアクセスまたは視覚化領域を提供するために拡張された状態で瞳孔520を維持することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、
図11に示されるように、虹彩カップ120、125の屈曲性は、虹彩カップの接触面210が虹彩内縁560で虹彩510と接触し、密接に取り囲むことを可能にする。いくつかの実施形態では、虹彩カップ120、125は、虹彩510の内縁560に対して圧縮力を加え、それにより虹彩組織に対して瞳孔拡大器100を安定させることができる。
【0048】
図11に図示されるように、瞳孔拡大器100は、眼球に対して優れた自己保持を提供するように構成され、それにより眼科処置中に瞳孔拡大器100のハンズフリーおよび器具を使用しない使用を可能にする。換言すれば、瞳孔拡大器を瞳孔520内の適所に保持するための別個の手段が必要とされない。虹彩カップ120、125の形状および輪郭によって提供される瞳孔拡大器100の自己保持性質は、先行技術の眼科用瞳孔拡大デバイスによって必要とされることが多い使用中に、縫合または瞳孔拡大器100の保持の必要性を排除する。
【0049】
拡張を必要とする手順が終了すると、
図9aおよび9bに描写される挿入手順の逆が実施される。例えば、いくつかの場合では、ユーザは、位置決め器具を使用して、瞳孔拡大器100を把持し、タブ128のうちの少なくとも1つの器具係合特徴450に係合し、瞳孔拡大器100を眼球500内に挿入されたカニューレ(図示せず)の中に格納することができる。カニューレは、搬送器具555に実質的に類似し得る。瞳孔拡大器100がカニューレの中に格納されると、瞳孔拡大器100は、拡大された状態から拡大されていない状態に移行する。瞳孔拡大器100全体をカニューレの中に格納した後、拡大されていない状態で瞳孔拡大器100を担持するカニューレは、眼球500から引き抜かれ得る。
【0050】
図12は、本開示の一実施形態による瞳孔拡大器を挿入し、および/または取り外すための例示的な搬送/抽出器具600の概略図を図示する。
図12に示されるように、搬送/抽出器具600は、ルーメン610と連通する遠位端部605を含む。搬送/抽出器具600は、ルーメン610内に長手方向に配設された挿入棒またはプランジャ615を含む。瞳孔拡大器100は、拡大されていない状態でルーメン610内のプランジャチップ620に遠位に位置決めされる。いくつかの実施形態では、搬送/抽出器具600は、プランジャ615が搬送/抽出器具600の遠位端部605に向かって移動される時、プランジャチップ620が瞳孔拡大器100を、ルーメン610から、遠位端部605を通って、かつ眼球の中に変位させるように構成される。いくつかの実施形態では、瞳孔拡大器100が遠位端部605から現れるにつれて、瞳孔拡大器は、前述の様式で拡大されていない状態からより拡大された状態に移行する。
【0051】
図13aに示される実施形態では、プランジャ615は、プランジャチップ620に隣接して位置決めされたコネクタ630を含む。コネクタ630は、瞳孔拡大器100に係合するように成形され、構成される。コネクタ630は、非限定的な例として、フック、ループ、突起部、棒、らせん、タブ、および留め釘を含む、様々な形状のいずれかを備えることができる。いくつかの実施形態では、コネクタ630は、瞳孔拡大器100のタブ128(
図1に標識付けされる)の器具係合特徴450に係合するように成形され、構成される。いくつかの実施形態では、器具係合特徴450およびコネクタ630は、選択的に取り外し可能な締結具の嵌合対として成形され、構成される。他の実施形態では、プランジャは、コネクタを含まない。
【0052】
いくつかの実施形態では、コネクタ630は、プランジャ615に固定して取り付けられる。他の実施形態では、コネクタ630は、プランジャ615から選択的に取り外し可能であり、瞳孔拡大手順の一部分のみの間に利用されてもよい。コネクタ630は、非限定的な例として、接着剤、ねじ込み係合、スナップ嵌め係合、摩擦係合、過剰成形、熱収縮、熱溶接、フックおよびループ系、ラッチ系、ならびに/またはコネクタ630をプランジャ615に固定して、もしくは選択的に結合する任意の他の機構のうちの1つ以上を使用することを含む、様々な締結機構のいずれかによってプランジャ615に結合されてもよい。
【0053】
コネクタ630は、任意の好適な生体適合性材料から構築されてもよい。いくつかの実施形態では、コネクタ630は、その完全性を危うくすることなく弾性的または塑性的に変形させ得る構造的に変形可能な生体適合性材料から構築される。例えば、
図13bに描写される実施形態では、コネクタ630は、プランジャ615に選択的に取り付け得る拡大可能なコレット634から延在するフック632を含む。このようなコレットは、プランジャチップ620を取り囲むように伸ばし、プランジャチップ620を把持するように弛緩させ、コネクタ630をプランジャ615に一時的に固定することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、コネクタ630は、眼球から瞳孔拡大器を取り外す間に使用される。コネクタ630は、瞳孔拡大器の搬送/抽出器具600を眼球の中に挿入する(または再挿入する)前に(すなわち、
図9aおよび9bに描写される挿入手順の逆を実施する前に)、プランジャ615に選択的に結合されてもよい。搬送/抽出器具600は、搬送器具555が
図9aおよび9bで位置決めされるのと実質的に同様の様式で眼球内に位置決めされてもよい。例えば、いくつかの場合では、ユーザは、コネクタ630を使用して、瞳孔拡大器100を搬送/抽出器具600のルーメン610の中に格納する前にタブ128のうちの少なくとも1つの器具係合特徴450に係合することによって瞳孔拡大器100を把持することができる。眼球から瞳孔拡大器100全体を動力作動抽出した後、ルーメン610内に拡大されていない状態で瞳孔拡大器100を担持する搬送/抽出器具600は、眼球から引き抜かれ得る。
【0055】
図14および15は、本開示の一実施形態による例示的な瞳孔拡大器の搬送/抽出器具650を図示する。いくつかの場合では、瞳孔拡大器の搬送/抽出器具の態様は、2008年10月13日に出願された「Automated Intraocular Lens Injector Device」と題される米国特許出願第12/249,996号、および2010年4月20日に出願された「Modular Intraocular Lens Injector Device」と題される米国特許出願第12/763,322号に開示される特徴を含み、これらはその全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
描写される実施形態では、搬送/抽出器具650は、ケーブルアセンブリ655と、筐体660と、遠位部663と、遠位端部665とを含む。ケーブルアセンブリ655は、別個のユーザコンソール(図示せず)から電力を運び、および/または信号を制御する。搬送/抽出器具650は、筐体660のルーメン669内に長手方向に配設されるプランジャ667を含む。プランジャ667は、遠位端部665から離れ、およびそれに向かって長手方向に移動させるように構成される。搬送/抽出器具650はまた、取り外し可能に取り付けられた挿入カートリッジ675を保持する遠位端部665上のカートリッジ取り付け具670を備える。
【0057】
挿入カートリッジ675は、瞳孔拡大器100を収容するように成形され、構成される。いくつかの実施形態では、挿入カートリッジ675は、射出装置650が挿入カートリッジ675の内容物を認識することを可能にする識別子を含む。識別機構は、これに限定されないが、無線周波数識別子タグ、電子製品コード、およびバーコードを含む、様々な識別機構のいずれかを含むことができる。例えば、識別子は、挿入カートリッジが瞳孔拡大器または非限定的な例として、眼内レンズ等の異なる眼球デバイスを担持するか射出装置に通知することができる。いくつかの場合では、識別子は、瞳孔拡大器のどの特定のタイプまたは寸法が挿入カートリッジ内に担持されるか搬送/抽出器具に通知することができる。このような識別情報は、搬送/抽出器具がその挿入および取り外し手順を適切に調整することを可能にすることができる。
【0058】
図16は、
図14に示される瞳孔拡大器の搬送/抽出器具650の例示的な作動機構680の一部切り欠き斜視図を図示する。プランジャ667に加えて、作動機構680は、管状カプラ690および電気駆動系695の内側の長手方向移動のために構成されたアクチュエータ685を含む。いくつかの実施形態では、電気駆動系695は、電気モータを含む。作動機構680は、筐体660の長手方向軸LAに沿ってプランジャ667を線形的に移動させるように構成される。作動機構680は、瞳孔拡大器100の動力作動挿入を可能にする。
【0059】
いくつかの実施形態では、作動機構680はまた、瞳孔拡大器100の動力作動抽出を可能にする。
【0060】
例えば、
図14および15に戻ると、プランジャ667が挿入カートリッジ675を通って前方に移動されると、瞳孔拡大器100は、遠位端部665に向かって変位される。瞳孔拡大器100が遠位端部665を通って搬送/抽出器具650を出るにつれて、瞳孔拡大器100は、拡大されていない状態から拡大された状態に移行する。
【0061】
拡張を必要とする手順が完了すると、搬送/抽出器具650は、瞳孔拡大器100を眼球から抽出するか、または引き出すために使用されてもよい。作動機構680は、プランジャ667が挿入カートリッジ675を通って後方に移動させることを可能にし、それにより瞳孔拡大器100を眼球からルーメン610の中に格納する。プランジャ667が後方に移動するにつれて、瞳孔拡大器100は、遠位端部665から離れてルーメン610を通って長手方向に引っ張られる。瞳孔拡大器100がルーメン610の中に格納されると、瞳孔拡大器100は、拡大された状態から拡大されていない状態に移行する。いくつかの実施形態では、搬送/抽出器具650の抽出の自動化された機構は、米国特許出願第12/249,996号および米国特許出願第12/763,322号に記載される挿入の自動化された機構と逆だが同様の様式で作動し、これらは上記の全体が参照により組み込まれる。
【0062】
眼球から瞳孔拡大器100を動力作動抽出した後、ルーメン610内の拡大されていない状態で瞳孔拡大器100を担持する、搬送/抽出器具650は、眼球から手動で引き抜かれ得る。
【0063】
本開示の様々な瞳孔拡大器の実施形態は、単一使用後に使い捨てることを意図される単一使用の瞳孔拡大器として構成されてもよく、それにより各々の新しい患者のために新しい瞳孔拡大器を可能にする。したがって、瞳孔拡大器は、エンドユーザへの輸送前に予め殺菌され、エンドユーザによる受領時に使用可能な状態であってもよい。単一使用後、瞳孔拡大器は廃棄されてもよい。単一使用の瞳孔拡大器は、エンドユーザ(すなわち、外科医)による殺菌の必要なく各患者に殺菌した瞳孔拡大器を確保し、それにより眼科処置の効率性および安全性を高める。さらに、使い捨てレンズが比較的安価な生体適合性材料で構築され得ることにより、単一使用の瞳孔拡大器としての構成は、手術用瞳孔拡大器がより低コストで製造されることを可能にする。
【0064】
本明細書に記載される様々な瞳孔拡大器の実施形態は、虹彩カップとともに形状記憶リングを利用して、眼科手術または処置中に瞳孔を拡張し、拡張された状態で瞳孔を維持することができる。本明細書に記載される瞳孔拡大器は、一次切開を通って眼球の中への非侵襲的な挿入およびそこからの取り外しを容易にする拡大されていない状態をとることができ、眼球内の所定の拡大された状態をとることができる。さらに、本明細書に記載される様々な瞳孔拡大器の実施形態は、その位置を眼球上に安定させ、自己保持し、手術または診断手順中に必要に応じて眼球とともに移動させることができる。本明細書に記載される様々な瞳孔拡大器の実施形態は、位置決め器具の支援なしに使用され得るが、いくつかの実施形態では、瞳孔拡大器の実施形態は、眼球内の瞳孔拡大器のさらなる制御および/または操縦性を提供するために位置決め器具とともに使用されてもよい。
【0065】
当業者であれば、本開示によって包含された実施形態が上述される特定の例示的な実施形態に限定されないことを理解されるであろう。それに関して、例示的な実施形態が示され、記載されたが、広範な修正、変更、および置換が前述の開示で企図される。このような変形は、本開示の範囲から逸脱することなく前述のものになされ得ることを理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲は、幅広く、本開示と一致する様式で解釈されることが適切である。