特許第6301967号(P6301967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6301967配電グリッドのデータ収集ネットワークのパフォーマンスを解析し最適化するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6301967
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】配電グリッドのデータ収集ネットワークのパフォーマンスを解析し最適化するための方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20180319BHJP
   H04B 3/54 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   H02J13/00 B
   H02J13/00 301A
   H04B3/54
【請求項の数】15
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2015-558888(P2015-558888)
(86)(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公表番号】特表2016-512019(P2016-512019A)
(43)【公表日】2016年4月21日
(86)【国際出願番号】US2014016538
(87)【国際公開番号】WO2014130365
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2017年2月10日
(31)【優先権主張番号】61/779,222
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/896,029
(32)【優先日】2013年5月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/766,551
(32)【優先日】2013年2月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515227464
【氏名又は名称】アストロリンク インターナショナル エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】515227475
【氏名又は名称】ドミニオン エナジー テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】バーンハイム ヘンリック エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ハンセル ジェリット
(72)【発明者】
【氏名】マーティン マルシア レイド
【審査官】 桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−502839(JP,A)
【文献】 特表2012−526515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H04B 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電グリッドにおいてエッジ・ツー・変電所チャネルのパフォーマンスを最適化する方法であって、
プロセッサを含むコンピューティングプラットフォームにより、柱上変圧器の低電圧側において配電グリッドに接続されるリモートハブからエッジ・ツー・変電所チャネルを介して柱上変圧器の高電圧側において配電グリッドに接続される変電所受信機により受信された複数のメッセージを担持する信号の信号特性を特定するデータを検索すること、
メッセージ成功率を改善する送信パラメータを特定するために、前記エッジ・ツー・変電所チャネルを介して変電所受信機により受信された前記複数のメッセージを担持する前記信号の信号特性を特定するデータを解析すること、及び
エッジ・ツー・変電所チャネルを介する変電所受信機への後続の送信において使用するために、前記送信パラメータを前記リモートハブに伝達すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記データは、ビットあたりのエネルギーとノイズパワースペクトル密度の比率、メッセージ検出率、ビットエラー率、インピーダンス変動、クロストーク、ガウスノイズ及びインパルスノイズ、シンボル配置分離、シンボル間干渉、受信時刻のドリフト、又は変調周波数のドリフトのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記解析することには、複数の代替の周波数帯域の履歴的パフォーマンスを比較することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記送信パラメータは、リモートハブに関するポリシー変更を含み、前記方法が、受信すると、所定の将来時刻に、又は、コマンド又は命令によって記述される期間の間待機した後に、前記リモートハブがポリシー変更をアクティブにすることを更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記リモートハブ上の送信機を再較正することを更に含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記送信パラメータは、リモートハブによって実行可能なコマンド又は命令へと符号化される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記データの解析に基づいて前記リモートハブについてのメンテナンス作業命令を生成することをさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
エッジ・ツー・変電所チャネル上のリモートハブによってプリアンブル及びデータ担持セグメントを含むメッセージを送信するための駆動電圧及び選択される周波数帯域を最適化するための方法であって、
a.オングリッド通信ネットワーク内のエッジ・ツー・変電所チャネル上にリモートハブを設けること、
b.スペクトルの利用可能な部分にわたって、選択される周波数で少なくとも1つの較正信号を送信すること、
c.各周波数用の駆動電圧で生成される電流を測定し、駆動電圧と結果として得られる電流との関係を計算すること、
d.駆動電圧と結果として得られる電流の測定され計算された関係に基づいて、データ担持送信の少なくとも1つのパラメータを調整すること
を含む方法。
【請求項9】
所望の電流を生成するために、前記データ担持送信のための前記駆動電圧を調整することを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
最低駆動電圧によって所望の電流レベルを達成するために、ポリシーによって決定されるより広い周波数範囲内でデータ担持周波数帯域を選択することを更に含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
コンピューティングプラットフォーム及び集信装置の少なくとも一方から前記リモートハブへフィードバックを提供することを更に含む、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの較正信号は、個々のトーンのシーケンス又は同時に送信されるトーンのグループを含む、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの較正信号は、前記プリアンブル及びデータ担持セグメントと別に、メッセージのそれ自身のセグメント内に組み込まれる、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記プリアンブルは、プリアンブルパターンの一部として前記少なくとも1つの較正信号を含む、請求項8〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記較正信号は、いずれのメッセージからも独立して送信される、請求項8〜14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願]
本願は、2013年2月19日に出願された米国仮出願第61/766,551号及び2013年3月13日に出願された米国仮出願第61/779,222号に対する優先権を主張し、それらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
[発明の分野]
本発明は、短距離及び長距離の送信媒体及びデータ担持ネットワークとして配電網を使用することに関し、更に、経時的に変化する配電網の図式的及びトポロジーの特性を推測するための、ネットワーク上での信号及びメッセージの使用に関する。
[発明の背景]
電力網は、一般に、2つの論理領域、すなわち、送電網及び配電網からなると考えられる。送電網は、水力発電ダム、原子炉、風力発電所、石炭又はガスを燃料とする火力発電所等の大規模発電所を始まりとする。発電ポイントからの電力は、長い高圧送電線の緩く接続されたネットワークを通じた高電圧交流(AC)として、工場、農場、及び人口中心等の、電力についての需要が存在するポイントまで伝送される。送電網のエッジには、配電変電所の集合体が存在する。配電変電所は、1つ以上の変電所変圧器を含み、変電所変圧器は、電圧を高電圧の送電線レベル(通常130kV〜700kV)から中電圧レベル(通常4kV〜約35kV)まで下げ、そのレベルで、電力が、配電サービスエリア内の需要者に配電される。配電網のエッジには、多数の柱上変圧器が存在し、柱上変圧器は、配電網の中電圧を低電圧(米国では、通常、120V、208V、240V、277V、又は480V)に変換する。これらの電圧の一部に加えて、他の電圧が世界の他の場所で使用され得る。場合によっては、変電所変圧器と柱上変圧器との間に図式的に置かれる、逓降変圧器と呼ばれる1つ以上の変圧器の階層が、変電所と柱上変圧器との間で中間的電圧降下を生じさせる。各柱上変圧器は、1つ以上の従量制の負荷(metered load)に電力供給する。負荷は、住宅、商業用又は産業用建築物、一連の街路灯などの地方自治体のインフラストラクチャの要素、あるいは、灌漑システム等の農業用装置であってもよい。典型的な配電網は、電力潮流のバランスをとって調整するために使用される他の要素を含む。このような要素の例は、コンデンサバンク、電圧調整器、スイッチ、及びリクローザである。図1は、電力網の典型的なセグメントを示す。
【0002】
配電網は、種々のトポロジー構成で設計され配備されてきた。米国においては、配電網の種類は、通常、放射状方式、ループ方式、又はネットワーク方式として特徴付けられる。他の新しく出現した事例は、キャンパスグリッド又はマイクログリッドである。説明はしないが、更なるトポロジーが、世界の他の場所で使用される。
【0003】
図2aは、典型的な放射状方式グリッドのトポロジー概略図である。放射状方式グリッドにおいては、変電所は、1つ以上の変電所変圧器を有する。各変電所変圧器は、1つ以上の変電所母線を有する。1つ以上の3相フィーダは、各変電所母線から外方に「放射状に広がり(radiate)」、単相、2相、又は3相側線(lateral line)がフィーダから分岐し、タップオフポイント(又は、単に「タップ(tap)」ともいう)が、次に、側線から分岐する。放射状方式グリッドは、単純であるため、設計し構築するのが安価であるが、冗長化電力経路を持たないため、停電に対して最も脆弱であり、故障が生じると、少なくとも1箇所の負荷が電力を喪失する。
【0004】
図2bは、典型的なループ方式配電網のトポロジー概略図である。ループ方式グリッドにおいては、選択フィーダの各エッジは、変電所変圧器の母線等の電力源に接続される。ループが損傷を受けていない場合、いずれかの変電所変圧器が動作状態であれば、電力が全ての負荷において利用可能である。ループ内に故障がある場合、両方の変圧器が動作状態であるように装って、電力が全ての負荷において利用可能である。正常な状況において、スイッチのシステムが使用されて、一度に1つの変電所変圧器のみが、グリッドの各セグメントに電力を送出することを保証する。
【0005】
図2cは、典型的なネットワーク方式グリッドのトポロジー概略図である。このトポロジーは最大冗長性を有する。複数の電力源を使用することに加えて、全ての柱上変圧器は、メッシュ構成の2次側で互いに接続される。任意のポイントで停電を生じるには、接続における複数箇所の故障が必要とされる。ネットワーク方式グリッドは、構築し維持するのが最も高価であり、通常、高価値で高重要度の負荷が集中する、マンハッタン又はワシントンDC等の主要な都市部において使用される。
【0006】
図2dは、マイクログリッド又はキャンパスネットワークを示す。マイクログリッドは、配電技術において従来的でないが、省エネルギーと、再生可能エネルギー源からのエネルギーの分散した電力生成とを重視するようになったことに対応して、新しく出現している。多くの変形例が考えられる。このタイプのグリッドは、通常、より広範な配電網に接続されるが、それから切り離すことが可能であり、また、風力発電機、ソーラーパネル、又は再充電式蓄電池等のグリッド自身の電力源ならびに負荷を含むことができる。ネットワーク全体は、低電圧線を使用してもよい。
【0007】
配電変電所は、送電網から高電圧電力を受け取り、1つ以上の大型電力変圧器へ送る。配電変圧器は、負荷タップチェンジャーと呼ばれる調整器のタイプを組み込むことができ、負荷タップチェンジャーは、変圧器の2次巻線回路の一部の巻線部を含むか又は排除し、それにより、入力電圧と出力電圧の比を変えることによって、変圧器が配電母線(power distriburion bas)(変電所母線)に送出する電圧を変更する。1つ以上のフィーダは、変電所母線に依存する。あまりにも多くのフィーダが必要とされる場合、更なる変圧器及び母線が使用される。
【0008】
グリッドのコンポーネントを監視し、制御するために、変流器(CT)又はホール効果センサ等の他の電流センサが、変電所内の電力担持導体に取付けられる。CTは、監視される高電圧導体において送出される電流に正確に比例する低電流をループ式導体に出力する。これらの低電流出力は、変電所内の監視制御及びデータ取得(SCADA)システムに関連するデータ取得サブシステムに接続するのに好適である。1次監視用CTが、設計され、変電所に組み込まれるが、その理由は、高電圧コンポーネントに対してCTを変更するか又は付加することは、電流が流れている間、不可能であるか又は危険であるからである。他方で、付加的なCTが、電力送出に影響を及ぼすことなく、必要に応じて低電流SCADAループに安全に付加されてもよい。
【0009】
電力線それ自体に加えて、配電網は、電力潮流を調整し、絶縁し、安定化し、転換することを意図される多数の他のデバイスを含む。これらのデバイスは、スイッチ、リクローザ、コンデンサバンク(通常、力率補正用)、及び2次電圧調整器を含む。全てのこれらのデバイスは、配電網上の種々の負荷及び2次電力源が配電網の挙動に影響を及ぼすように、データ担持ネットワークとして考えられる場合に配電網の挙動に影響を及ぼす。急激な状態変化を有するデバイスは、ターンオン/ターンオフする負荷がそうする可能性があるように、グリッド上にインパルスノイズを導入することになる。変圧器及びコンデンサバンク等の一部のデバイスは、特定の周波数において信号をフィルタリングし、減衰させる。
【0010】
需要者負荷及び関連するメータを柱上変圧器に接続するワイヤを除いて、柱上変圧器は、電力が需要者に実際に送出される前の、配電網の最も外側の要素である。メータは、柱上変圧器から電力が需要者に送出されるポイントに取付けられる。柱上変圧器は、メータがそうであり得るように、3相、2相、又は単相であり得る。
【0011】
従来、メータの検針は、電気事業者が負担する最大の事業費のうちの1つであった。元々の電気メータは、光学的読取部を有するアナログデバイスであり、アナログデバイスは、電気料金請求プロセスを運営するために、毎月手作業で調べられなければならなかった。1970年代の初め、メータのデータをデジタル化し、その収集を自動化するためのメカニズムが配備され始めた。これらのメカニズムは、メータが、検針者が搬送するデバイスによって受信されたメータの現在の読取値を短距離無線信号を使用してブロードキャストする、ウォークバイ(walk−by)又はドライブバイ(drive−by)システムから進化した。これらの初期のシステムは、自動検針システム、すなわちAMRシステムとして知られていた。後に、メッシュ構成の短距離RFリピータと集められた読取値を転送するためのブロードバンド帰路手段を装備する収集ポイントとの組み合わせを使用する種々の専用のデータ収集ネットワークが配備され始めた。
【0012】
これらのネットワークは、電力事業サービスセンタの「計測ヘッドエンド)」とこのデータ収集ネットワークのエッジのメータとの間で双方向通信が可能であり、これは高度メータリングインフラストラクチャ、すなわちAMIと一般に呼ばれる。AMIは、頻繁に、通常は15分ごと程度の頻度で、読取値を収集し、格納することができ、また、その読取値をほぼその頻度で報告することができる。AMIは、この特徴が少し使用される場合、必要に応じて任意のメータを読み取ることができ、また同様に、必要に応じて任意のメータを接続する又はその接続を解除することができる。AMIメータは、省エネルギー、需要管理、及び可変レート請求のために信号を需要者デバイスに送ることができる。AMIネットワークが配電網から分離しているため、AMIメータは、グリッドトポロジーにおける変化又はグリッド上の特定の条件を認識することもなく、これらの影響を受けることもない。それでも、AMIの導入は、一般に、スマートグリッドの始まりであると考えられている。
【0013】
配電インフラストラクチャの多くの特徴は、グリッド自体を通信媒体として使用する努力の成功を制限してきた。第1に、グリッドはノイズの多い環境である。既に述べたように、グリッド上の負荷の状態変化ならびグリッド自体に関する制御及び調整アーチファクトは、電力線上にインパルスノイズをもたらす。電気モータのような負荷の通常動作、総合負荷の単純な変動、及び周囲RFノイズ(主に落雷及び他の気象関連の原因による)は、有意のガウスノイズを追加する。米国における典型的な変電所における測定ノイズフロアは、60Hz基本波の最大振幅から約80〜90dB下にある。グリッドの複素インピーダンスは、周波数と時間の両方の領域にわたって変動する。これは、インピーダンスが増加するときにグリッドのより高い電圧ポイントに位置する受信機において信号の損失をもたらす場合があり、あるいは、平均的に必要とされるであろうよりも多くのエネルギーを送信機に使用させる場合がある。力率を最適化するためにグリッドに沿ったポイントに位置するコンデンサバンクは、信号減衰をもたらす可能性がある。最も重要なことには、変圧器は、ローパスフィルタとして働き、特定の周波数を超える信号を劇的に減衰させる。閾値周波数は、全ての配電網に関して同一ではない。その理由は、変圧器の異なる配置構成及び種類が使用されるからであり、また、変圧器それ自身が、指定された周波数でフィルタリングするように入念に調整されないからである。全てのこれらの変数は、媒体の周波数応答に影響を及ぼす。
【0014】
更に、変調された電流信号をグリッド上に注入することは、注入された信号同士の間で干渉をもたらし得る。1つの問題となる現象は、1つの電力線上に注入される信号が別の線上で検出可能であるクロストークである。クロストークが同じフィーダの2つ以上の相に関して起こるときには、相の線がフィーダの長さのほとんどにわたって互いに並走するため、クロストークが、誘導又は容量結合によってもたらされる可能性がある。クロストークはまた、同じ変圧器コア上での複数相の巻線による場合もある。フィーダ間クロストークが、同様に測定されており、変電所の電力母線から注入される信号の反射によってもたらされる場合がある。米国及び世界における配電網の複雑さ、多様性、及び使用年数を考えると、これらの現象に関しては、予想されるよりもあまり知られていない。
【0015】
最後に、通信媒体として配電網を使用することには、しばしばグリッドの主要な目的に干渉するという副作用がある。主要な目的とは、もちろん、クリーンで信頼性のある電力を需要者に送出することである。電力下のデバイスが、注入される電流と共鳴する場合、フリッカーと呼ばれる現象をもたらす。LED、CFL、白熱灯、及び蛍光灯は、特定の周波数に応答して目に見えるほどにフリッカーを生じる。目に見えるほどのフリッカーが脳卒中とめまいの両方をもたらすことが証明されているため、これは、悩ましく、時として危険である。ファン及びスピーカ等の他のタイプのデバイスも、特定の周波数で共鳴し、可聴ハムをもたらす。ANSI/IEEE規格519は、フリッカーの発生を回避すべく、特定の周波数及び振幅で共鳴することを回避するために、グリッドに電流を注入する任意のデバイス(通信デバイスとして意図されるかどうかにかかわらず)を要求する。特に、ANSI/IEEE規格519は、第11次高調波において又はそれより低次で、基本波の奇数高調波にノイズが付加されないことを要求する。
【0016】
通信媒体として電力網を使用する際に固有の工学的困難さが多いにもかかわらず、それは、電気事業者にとって魅力的であるままであった。その理由は、事業者が既にそのインフラストラクチャを所有しており、事業者がデータを収集する必要がある全てのポイントに存在しているからである。更に、地方自治体が経営する電気事業(POU)の規制及びコスト構造は、電話又はケーブルプロバイダ等の第三者通信プロバイダに運用費用を支払うのとは異なり、自らの所有するアセット(有利に購入して、課金レート増加により維持されてもよい)を使用するため、事業者にとって非常に好都合である。
【0017】
高周波数(1MHzを超える)送信は、理論的に高いデータレートが達成される可能性があるため魅力的である。電力線にわたるブロードバンド用のBPLと呼ばれるこのようなスキームは、需要者の電気メータ内に位置するゲートウェイを介して需要者にインターネットアクセスを提供するのに十分な潜在的かつ理論的な帯域幅を提供する。21世紀の初頭に、米国の連邦通信委員会(FCC)は、米国の地方の家庭に高速インターネットアクセスを提供する手段として「アクセス BPL」の概念を積極的に奨励した。しかしながら、BPL信号の長距離送信は、実用的でなく、かつ費用がかかる。その理由は、送信機と受信機との間の全ての変圧器がバイパス又はリピータメカニズムを備えるように適合されなければならない、又は、変圧器のローパスフィルタリング特性が信号を遮断することになるからである。柱上変圧器当たりの需要者の数が非常に少ない−地方では、しばしば、たった1人である−傾向がある米国において、BPLを実施するためのコストは非常に高くなる。更に、BPL送信によって生じるRF干渉は、航空機産業、商用ラジオ、アマチュア無線、及び他の産業部門からの反発を生み出した。FCCは、BPL技術を支援しようと試みたが、干渉が報告される周波数を切り取る(回避する)ことが可能であることをBPLインストレーションに要求する新たな妥協規定は、BPLサービスを運営する複雑さを増加させた。BPL需要者サービスを配備する幾つかの試みが廃棄されてきた。
【0018】
電力線通信すなわちPLCという包括的な名前の下で、幾つかの中波電力線プロトコルは、柱上変圧器当たりの需要者の数が米国の場合よりずっと多い、特にヨーロッパ(及びヨーロッパスタイルのグリッドアーキテクチャを有する他の場所)におけるスマートグリッド用途について成功裡に使用された。2つの最も一般的に使用される中波PLCイニシアティブは、ヨーロッパに拠点をおく商用アライアンスによって共に奨励されたPRIME及びG3である。PRIMEは、512の差動位相偏移変調チャネル(DPSK)と共に、物理層における直交周波数分割多重(OFDM)を使用する。PRIMEは、128.6kbps程度の高いデータレートを達成するが、21.4kbpsにおいて最も信頼性がある。その周波数範囲は42〜89kHzである。G3は、OFDMとDPSKの同様の物理層組み合わせを使用し、33.4kbpsのデータレートを有する35kHzと91kHzとの間の256チャネルを提供する。G3及びPRIMEは共に、変圧器によって依然として急激に減衰されるが、ほとんどの場合、柱上変圧器の中電圧側に位置する受信機は、その変圧器によって供給される低電圧サイトからのメータ送信を成功裡に読み取ることができるが、これは、受信機が柱上変圧器の十分近くに位置することを条件とする。これらの理由により、これらのプロトコルに基づくスマートグリッド技術は、ヨーロッパ及びアジアにおいて一般的である。PLCプロトコルはまた、電気自動車の充電を調整すること等の短距離電力線用途にもよく適合する。
【0019】
スペクトルの対極にあるのが、超低周波数システムである。超低周波システムは、データ担持容量をほとんど持たないため、主に制御システムのために使用される。可聴周波数リップル制御(AFRC)システムが、負荷管理のために主に地方エリアで使用され、ピーク負荷時間中に電気ヒータ及び空調装置等の高電力消費デバイスを止めるか、又は、自動農場灌漑システム等の他の制約のある資源の使用を制御する。AFRC送信機は、変電所又は送電変圧器の高電圧側にあり、複数の変電所にサービスを提供してもよい。AFRCデータレートは、2ビット/秒から10ビット/秒まで変動し、最大メッセージ長は約100ビットである。このような送信後に、送信機は、10%オーダの最大デューティサイクルで再び送信できる前に、長いアイドル期間を必要とする。AFRCシステムは、危険な周波数においてではないが、明らかなフリッカーをもたらす。AFRCシステムは、通常、低い人口密度のエリアで使用され、送信が頻繁でないため、副作用は許容される。AFRCは、高電圧から低電圧に向かって働き得るブロードキャスト技術であり、したがって、メータのデータ又はエッジの状況に関する他のデータを収集するために使用することができない。なぜならば、メータのデータ又はエッジの状況に関する他のデータを収集するためには、低電圧側から高電圧側に向かって送信することを必要とするからである。
【0020】
Aclara(登録商標)のTWACA(登録商標)技術は、基本波電力搬送がゼロ点を交差する―50Hz又は60Hzサイクルあたり2回―ときに電力線上にパルスを注入することによって動作する。この方法は、変電所からエッジに、又は、エッジから変電所に向かって働き、ポーリングプロトコルを使用して、1つのエッジ送信が別のエッジ送信と干渉することを回避する。この方法は、基本波に結び付けられるせいで、また、ポーリングアーキテクチャのせいで速度が遅い。この方法は、この方法がグリッド上に導入するインパルス及びブロードバンドノイズの量について需要者集団によって批評されてきた。
【0021】
Landis+Gyrは、グリッド上で長距離にわたる双方向通信を提供するためにAFRCと連携して働くことを意図される、ハント・テクノロジー社(Hunt technologies)によって元々は開発された、低コストの低周波数エッジ送信機を使用する。この送信機を使用するデータ送信方法は、安価でかつ信頼性があるが、制限を受ける。該方法は、電力線に可変インピーダンスを接続することによって電流共振(sympathetic current oscillation)を誘起する。送信機が電力搬送波に比べて電圧に依存するせいでデータレートが低いため、少数のパルスのみが、50Hz又は60Hzサイクルに注入される可能性がある。受信機での検出のために十分な冗長性を達成するため、同じ信号が、幾つかのサイクルについて反復されなければならず、ビット/サイクルではなくサイクル/ビットで測定可能なデータレートをもたらす。該方法はまた、各パルスが広い周波数帯域にわたって共鳴する点で非常にノイズが多い。
【0022】
それらの制限があるにもかかわらず、Aclara及びLandis+Gyrからのシステム等の低周波数システムは、無線システムが高費用である地方エリアにおいて市場浸透を達成した。
【0023】
先に論じた高、中、低周波数PLC方法に関する問題及び制限は、21世紀に、米国においてAMIデータ収集用のオーダーメイドの無線ネットワークの迅速な開発をもたらした。高周波数オングリッド方法は、費用がかかり過ぎ、十分に信頼性がなく、エラーを伴い過ぎ、商業的に実行可能であることが不確実であることが分かった。低周波数を用いる方法は、低コストのエッジ・ツー・変電所送信機で実施され得るが、これらは、最新のAMIによって要求されるデータ担持容量に欠き、AFRCのようなオングリッド低周波数変電所・ツー・エッジ送信機は、大型であり、高価であり、都市設定における使用を制限する望ましくない副作用を有する。1つの考えられる選択肢は、低周波数のエッジ・ツー・変電所送信機と組み合わせて高周波数の変電所・ツー・エッジ送信機を使用することであろう。しかしながら、米国では、市場圧力が、特に都市及び郊外エリアにおいて、無線AMIシステムの急速な浸透をもたらしている。
【0024】
規制のない周波数域の費用制約条件及び利用可能性は、メータからデータを収集し、データセンタへの帰路のために従来のインフラストラクチャ(ファイバー又はセルラー方式)を使用する近傍の集信装置と共に、AMIネットワークのエッジにおけるメッシュアーキテクチャの使用を決定づけた。メッシュアーキテクチャは、使用されるRF送受信機が高いデータレートを個々に有するが、エッジネットワークが容易に飽和することを意味する。これらのネットワークにおける利用可能なデータ担持容量のほとんどは、メータの間隔データを報告するためだけに使用され、制限された容量が、ファームウェア更新及び要求管理等のアプリケーション用の制御パケットのために予約される。
【0025】
既存のAMIインフラストラクチャの事業者を制限する2つの主要な要因が存在する。第1は、もちろん、メッシュの容量制限である。第2に、かつより重要であるのは、AMIネットワークが配電網と一致しないことである。AMIネットワークは、グリッドの動作状態に関する情報をほとんど提供することができない。これは検針においては必要ではないが、省エネルギー、アセットの保護、負荷分散、障害の分離、及び回復管理のためのより精緻なスマートグリッド用途は、グリッドアセットの図式的な関係、グリッドの幾つかのセグメントにおける負荷及び状況、バイモーダル及びマルチモーダルアセットの現在状態に関する正確な情報を必要とする。この情報は、同じアセットの地理空間ロケーションと共に、グリッドマップと呼ばれる。
【0026】
事業者は、通常、グリッドの2つのマップ又はモデルを維持する。物理ネットワークモデル(PNM)は、グリッド上でアセットの地理空間ロケーションを集める。PNMは、最新のGPS技術のおかげで、例えば変電所、コンデンサバンク、変圧器、及び更に個々のメータでさえ、ポイントアセットに関してかなり正確である。不正確さは、修理又は変更が行われるときにマップを更新するのに失敗することに起因する。例えば、柱上変圧器は、街路拡幅の結果として街路の一方の側から他の側に移動する場合がある。長尺状のアセット、特に埋設ケーブルは、PNMにおいてうまく表されにくい。PNMは、設計通りのデータを含むことができるが、多くの場所で、ケーブルは、全地球測位技術が成熟する前に敷設されたため、設計は、地上レベル調査に基づき、元々のマップは、変更を反映するために更新されたものもあるが、更新されなかったものもある。これに続く地表の変更が、中電圧配電線がとる地理的経路を検証するという問題を複雑にしている。
【0027】
第2のモデルは、論理ネットワークモデル、すなわちLNMである。LNMは、グリッドコンポーネントの地理空間ロケーションを参照することなく、グリッドコンポーネントがどのように接続されるかを記述する。LNMは頻繁に変わる。修理の過程で、変圧器がタップ及び側線に取付けられる方法及びメータが変圧器に取付けられる方法が変更される場合がある。このような変更は、LNMとPNMの両方に影響を及ぼす。多くの事業者において、このような変更は、フィールドエージェントによって手作業で記録される。手作業による報告は、LNM及びPNMにおいて更新される場合もあるが、更新されない場合もあり、また、更新が行われるときに、メンテナンスがなされたときとそれが記録されたときとの間のタイムラグが変化する。更に、多くのグリッドコンポーネント、特に、調整器、スイッチ、及びリクローザは、自動的に状態を変更する。これらのコンポーネントが、単にローカル制御システムの影響下にあるのではなく、データセンタに戻る通信を備えなければ、このような動的変更は、LNMにおいて反映されない。しかし、動的変更は、電力経路、配電網の他のコンポーネントに対する負荷及び環境応力、ならびに、需要者に対する供給レベルに実際に影響を及ぼす。
【0028】
(実際の)グリッドマップの重要であるが確実には分かっていない態様の例は、フィーダ及び各メータが現在電力供給されるフィーダ及び相、各フィーダの各相上の、特にグリッドの下位分枝(側線)上の、相対的負荷、各メータに供給される実際の電圧、グリッドのエッジに沿った力率、変圧器で引き出される電力が全て計測されるかどうか、特に停電をもたらした気象事象後の、スイッチ装置の状態である。この情報が確実に分かれば、事業者は、エネルギーを節約し、そこから得られた節約されたエネルギーの多くが需要者に渡され、メンテナンスコストを節約し、現場の機器の寿命を延長し、電力事業及び需要者機器の効率及び寿命を改善し、停電を回避し、不可避的な停電後の回復時間を減少させるであろう。
【0029】
自動化された動的グリッドマッピングの問題は、無線スマートメータによって解決されない。スマートメータは、メータにおいて電流、電圧、及び力率(又は相角度)を測定し、記録することができるが、スマートメータがどれだけの量のデータを格納できるか、また、送信のためにどれだけのデータ容量が利用可能であるかに関する制限があるため、事業者は、これらのデータを報告するようにメータをプログラムしないことを選択する場合がある。説明される他のデータ要素は、ほとんどの最新のAMIシステムによって検出できない。クーリッジ(Coolidge)等に付与された米国特許第7,948,255号は、相検出用の器具を開示する。しかしながら、クーリッジの器具は、スマートグリッドに組み込まれるのではなく、フィールドエンジニアによって使用されることを意図されている。
【0030】
事業者間のコンセンサスは、LNMのデータの変更頻度(volatility)が、グリッドマップの変化する属性を測定し、監視するためにフィールドエンジニアを使用することが費用効果がないか又は実行可能な解決策でないようなものであるということである。例えば、保全電圧調整努力が、静的測定に基づいて1990年代に行われ、その後、測定値があまりに急速に陳腐化するため廃棄された。今日では、事業者は、日常的に需要者に過剰給電し、住宅内の15又は20アンペア定格回路に122vACの平均実効電圧を送出して、負荷変動、家庭内配線内の電力損失等が、建物の内部の個々のコンセントにおいて、家庭用器具等にとって一般的に最適である110vAC実効電圧未満に、一部需要者の供給が降下することをもたらさないことを保証する。十分に計装済のきめ細かな保全電圧調整システムの目標は、典型的な240vAC供給の一方のレッグから中性点まで測定されるように、単相メータにおける典型的な実効電圧を114vACまで低減することであり得る。メータにおける114vAC実効電圧は、家庭又はオフィスの内部で典型的である更なる損失によって、建物内の一部のコンセントに過少に電力供給することがないことが妥当である程度の低さ(すなわち、任意のコンセントにおいて110vAC以上)である。
【0031】
電気デバイスは、その定格範囲の上限で電力供給されると、より多くのエネルギーを消費するため、過剰送出するというこの慣行は、需要者の電気料金に直接影響を及ぼすと共に、発電の不充分な事業者に電力を購入させ、事業者のコストを増加させる。最終的に、その慣行は、より多くの化石燃料が必要以上に消費されることをもたらす。
【0032】
コスト上の制約もまた、全ての中電圧フィールドアセットにSCADA計装(instrumentation)を配置することが非実用的であることを決定づける。配電網上の「タッチポイント」はほとんどが、良かれ悪しかれ、エッジにおけるメータ及び変電所内の計装である。これは、無線AMIによって検出不能なグリッドマッピング情報を推測すると共に報告するために、電力線上を移動する信号を使用することができるため、電力線通信のための技術が再考されることを決定づける。メータデータを報告するための無線AMIのユビキタスな存在は、代わりにグリッドマッピングシステムを支援する低周波数のオングリッド送信方法の制限されたデータ担持容量から解放されるという点で、有効なグリッドマッピング技術を探索する際の利点として考えることができる。しかしながら、エッジにおいて低コストであり、AMR又はAMIと共存し、オングリッド送信の、先に述べた落とし穴、すなわち、エッジと変電所の間におけるリピータ等の中間デバイスについての要件、許容できないフリッカー、RF干渉、インパルスノイズ等のいずれも引き起こさない送信方法を特定することが必要である。最後に、送信機を駆動して消費されるエネルギーが、得られる省エネルギー利益を減少させるため、送信は、非常にわずかな電力を要求しなければならない。
【0033】
先に論じたように、一部の既存のPLC方法は、無線変調技術及びチャネルアクセス方法を配電網の媒体に適合させている。例えば、PRIMEは、DPSKと共にFDMAを使用する。
【0034】
更に、符合分割多元接続(CDMA)方式は、セルラー方式電話規格のcdmaOne、WCDMA、及びCDMA2000において非常によく使用されるチャネルアクセス方法である。CDMAは、他の同様の技術がそうするように、周波数のある範囲又は帯域にわたってその信号を拡散する(したがって、ブロードバンドという用語が使用される)。多元接続とは、1つの送信機からの信号が別の送信機の信号と破壊的に干渉することなく、2つ以上の送信機が同じチャネル(ここでは電力線)を使用することができることを意味する。CDMAにおいて、同じ帯域を使用する各送信機は、識別可能な参照コード又はチップを割り当てられる。送信信号は、チップとデータ信号との排他的論理和(XOR)に等しい。チップ(バイナリベクトルとして扱われる)が数学的に直交する場合、受信機は、加法的受信波形(additive received waveform)から幾つかのデータ信号を分離することができる。無線アプリケーションで使用される標準的なCDMAの要件は、異なる送信機から受信する幾つかの信号の電力が受信機において同じか又はほぼ同じであることを保証するために、受信機から送信機への動的フィードバックループが存在することである。フィードバックループは、送信機が、バランスを維持するために、その送信電力を迅速かつ動的に調整することを可能にする。
【0035】
周波数分割多元接続(FDMA)とは、媒体内の複数のチャネルが、異なる送信機に異なる周波数(又は異なる周波数帯域)を使用させることによって生成されることを意味する。電力線上に注入される信号は、異なる振幅の高調波信号を生成する。周波数分割帯域が間違って選択される場合、異なる帯域からの高調波は、一致し、意図する信号に破壊的に干渉する擬似信号を生成する可能性がある。この作用をなくす明らかな手段は、周波数スペクトル上でチャネル同士を離して配置することである。しかしながら、これは、スペクトルを「無駄に使う」ことによって、媒体の総合的なデータ担持容量を減少させる。
【0036】
第3のチャネルアクセス方法は、時間分割多元接続、すなわちTDMAである。TDMAでは、チャネルは、所定時間にわたって周期的に分割され、各送信機は、その送信機が送信するための許可を一意的に有する特定のタイムスロットをサイクル内で割り当てられるチャネルを共有する。TDMAは、1つのチャネルアクセサが、その送信を別のチャネルアクセサの送信と重複させないほどに十分に近い許容範囲内で互いに同期されるシステムクロックを、全ての送信機が有することを必要とする。
[発明の概要]
本発明は、それぞれがスマートメータの内部に存在するのに十分に小さい、リモートハブエッジ送信機と呼ばれる少なくとも1つのインテリジェントエッジ送信機を備えるシステムを含む。リモートハブエッジ送信機を含むスマートメータは、リモートハブGLAスマートメータ又は単にリモートハブと呼ばれる。リモートハブは、電気メータに給電する主電源内に変調済電流を注入することによって送信する。システムはまた、インテリジェント送信機からの送信を受信するように動作可能な、少なくとも1つの配電変電所に位置する少なくとも1つの受信機も含む。受信機がエッジ送信機からの送信を確実に検出して復号することを可能にするために、スマートメータと変電所との間において配電網に対する追加又は変更は全く必要とされない。システムは、少なくとも1つの受信機を含む各変電所について1つのコンピューティングプラットフォームを更に備え、コンピューティングプラットフォームは、少なくとも1つの受信機から取得されるデータをデータセンタに送信するために、インターネット等の従来の高速ネットワークへのアクセスを有し、データセンタにおいて、受信されたデータは、集中型コンピュータシステム又は集信装置によって使用されて、限定はしないが、LNM及びPNM等の他の電力事業システムを更新する。一部のマイクログリッド配備において、コンピューティングプラットフォーム及び集信装置は、同じサーバであってもよく、データセンタはマイクログリッドのサービスエリア内に位置する。システムは、スマートメータ、又は、現場に配備されるスイッチ及び電圧調整器等の他のデバイスであって、リモートハブでなく、少なくとも1つのリモートハブと通信するために、G3又はPRIME等の公知のプロトコルを使用して短距離PLC送信を使用するように動作可能なインテリジェントプラットフォームによって増強された、他のデバイスを更に備えることができる。リモートハブでない増強されたこのようなデバイスは、下位リモート(Subordinate Remote)と呼ばれ、増強されたいずれのデバイスも、下位リモートであるか、それともリモートハブであるかにかかわらず、総称してリモートと呼ぶことができる。各リモートハブは、そのリモートハブと同じ柱上変圧器によって電力供給されるリモートのみを管理する。少なくとも1つのリモートハブ及びゼロ個又は1つ以上の下位リモートを備えるリモートの集合体からなる短距離オングリッドネットワークは、変圧器エリアネットワーク、すなわちTANと呼ばれる。リモートは、TAN内で通信できる任意のデバイスである。下位リモート及びリモートハブは、リモートの種類である。全てのリモートは、TAN送受信機を有し、全てのリモートハブは、エッジ送信機を有する。
【0037】
下位リモート、リモートハブ、変電所受信機、ならびに関連するコンピューティングプラットフォーム及び集信装置は全て、グリッドロケーションアウェア(商標)(GLA)ネットワークを動作させるための命令が格納される不揮発性コンピュータ可読メモリ上に格納されたプログラムを含む。下位リモート、リモートハブ、変電所受信機、ならびに関連するコンピューティングプラットフォーム及び集信装置はまた、格納された命令を実行する中央処理装置(CPU)を含み、これにより、ネットワーク内の各ノードは、格納されたプログラムとして具現化される他の方法を可能にするために、オングリッドネットワークを編成し、ネットワーク上でメッセージを送受信するための方法、ならびに、少なくとも1つの変電所受信機、コンピューティングプラットフォーム、及び集信装置上において、ネットワークの図式的グリッドロケーション属性を検出して推測し、検出し推測された属性を、論理及び物理ネットワークモデルを維持する地理空間情報システムを含む他のアプリケーションシステムにパブリッシュすることを実行するための方法を実施することを可能にする。
【0038】
リモートハブ及び変電所受信機によって実施される一方法は、信号が変電所受信機において受信され、変電所受信機が、その信号が送信された特定のフィーダの電気的相を推測することができるように、配電変電所のサービスエリア内で少なくとも1つのリモートハブから送信される電流信号をチャネル化し、変調することを可能にする。信号は、チャネルと呼ばれる周波数スペクトルの広い帯域上で送信されるが、チャネルの周波数帯域は、その周波数が、エッジ送信機に電力供給する柱上変圧器のローパス閾値より低くなるように選択される。幾つかの変調技術が、この文脈において使用されており、変調技術には、周波数拡散変調、バイナリ位相偏移変調(BPSK)、及び直交位相偏移変調(QPSK)を含む。高次モードの位相偏移変調(mPSK)が使用されてもよい。しかしながら、BPSK及びQPSKは、周波数拡散と共に好ましい実施形態である場合がある。その理由は、高次PSKが、受信機において同じ信号強度を達成するために送信機においてより多くの電力を必要とするからである。本方法の幾つかの実施形態によれば、エッジ送信機は、低いが適切な電流においてバースト送信でFEC(前方誤り訂正)後のデータを少なくとも80ビット/秒で符号化することが可能であるため、信号は、変電所受信機による受信を妨害するほどには、中間変圧器、コンデンサ、長い線、地中配線等によってそれほど大幅には減衰されない。他の実施形態において、エッジ送信機は、より低いビットレートで符号化することが可能である場合がある。より低いビットレートで符号化することは、信頼性を向上させるが、送信されるデータ量を制限する。少なくとも80bpsで送信しながら、同じFEC後のメッセージ成功率を得るために、異なる変調タイプは、異なる前方誤り訂正率を必要とする場合がある。本方法は、信号を注入するためにほとんど電力を必要としないため、変調される信号は、RFスペクトルにおいてエネルギーを放射せず、送信に近接したデバイス上でフリッカー又はハムを生じず、又は、オングリッドメッセージングの従来の方法の他の望ましくない特性のいずれも示さない。本方法は、本明細書で先に述べた全てのグリッドトポロジー上で働き、最大規模の変電所さえも、結果として得られるグリッドロケーションアウェア(商標)ネットワークによって完全にカバーされ得るような十分な数のリモートハブを変電所変圧器ごとに有することができる。
【0039】
変電所受信機はまた、電力線上で複数の周波数帯域で周囲波形をサンプリングする、基本電力波の高エネルギー高調波をフィルタリング除去する、複数の電力線(所与の変電所変圧器の各母線から出る各フィーダの3相線のそれぞれを含む)の1つ以上の電力線上で信号を検出する、電力線のそれぞれの比較解析に基づいて、信号が送信された相とフィーダの組み合わせを推測する、関心のあるスペクトル全体にわたる複数のポイントにおける信号品質、誤り性能、及び/又は振幅対周波数に基づいてそれらをランク付けする、という種々の方法を実施してもよい。変電所受信機が送信を完全に処理したときに、変電所受信機は、復号された送信を、受信機ロジックによって推測されるメッセージに関する更なる情報、例えば、メッセージが送信された相とフィーダ、メッセージが送信されたチャネル、及び、その送信のために使用された変調方法のパラメータの指示と共にパッケージ化する。変電所受信機は、HTTP等の通常のTCP/IPベースのプロトコルを使用してメッセージパッケージ全体を変電所コンピューティングプラットフォームに転送する。
【0040】
本発明の別の態様は、どの周波数帯域が各変電所変圧器において最良のデータキャリアであるかを特定し、少なくとも1つのデータ担持チャネルを候補周波数帯域上で定義し、任意選択で、エッジデバイスが送信を行い得る各チャネル上の一連のタイムスロットを定義し、変調技術を選択し、周波数拡散が選択された変調技術である場合、送信を変調するために使用される少なくとも1つの直交コード又は「チップ」のセットをチャネルごとに定義する方法である。組み合わされたチャネル化モデルは、その後、変電所によって電力を供給される、リモートハブと下位リモートの両方を含むGLAスマートメータの集合体をプロビジョニングする方法によって使用されて、少なくとも1つのリモートハブの各々に、リモートハブがどの周波数に基づくデータ担持チャネルで送信することができるか、また、どんな状況下でリモートハブが送信しなければならないかを記述するポリシーを割り当てる。ポリシーは、変調方法、周波数帯域、チップが使用される場合にはチップ選択アルゴリズム、及びメッセージプリアンブルパターンを含む、チャネルの複数の態様を記述する。周波数に基づくチャネル及びチップは、グリッドのセグメントが、例えば、1つの変電所変圧器から別の変電所変圧器に切り換えられるときに、送信が破壊的でないように割り当てられなければならない。プロビジョニングスキームは、クロストークの問題を予測して最小限にし、また、変電所受信機、変電所コンピューティングプラットフォーム、及び集信装置上にロジック用の手段を設けて、各リモートハブから受信されるメッセージを階層的に処理し、それらを使用して、電力線内のスイッチ、リクローザ、及び断路等の、グリッドの、処理状態を把握する非エッジフィーチャの状態を推測する。送信の他の特性は、リモートハブ上のファームウェア及び計装によって動的に決定される。例えば、送信するときに使用される電力は、送信する直前に測定された線路のインピーダンスに関連していてもよい。
【0041】
本発明の幾つかの実施形態においては、AMI、AMR、及び/又は無線ブロードキャスト送信機等の、隣接するネットワークからの変電所・ツー・エッジブロードキャスト能力の可用性に応じて、チャネル品質を管理するために多数の技術を使用することができる。変電所受信機及びコンピューティングプラットフォーム上のソフトウェアは、チャネル品質の態様を監視し、リモートハブからのメッセージが許容可能に高い成功率を経験することを保証する対策をとってもよい。本発明の一態様によれば、許容可能に高い成功率は、少なくとも1つの非構造化チャネルが交替で受け持たされる(rotate)のではなく、プロビジョニング及び警報専用のままであることを除いて、幾つかのチャネルの責任を交替で受け持つことによって確保されてもよい。例えば、2つのデータ担持チャネルが特定され、一方のデータ担持チャネルが他方のデータ担持チャネルより高い成功率を示す場合、ネットワークは、より良好なチャネル上で送信することと他のチャネル上で送信することとをリモートハブに交互に行わせるようにプロビジョニングされてもよい。これは、所与のリモートハブが許容できないほどに高いメッセージ失敗率を経験する総合確率を減少させる。
【0042】
チャネル管理のための他の選択肢は、チャネルが、より広い周波数拡散を有する、かつ/又は、バースト当たりより多くのFECビットを使用するように、チャネルの定義を変更することであってもよい。更に別の選択肢は、永久的に又は1日のうちの異なる時刻に、インピーダンスの観察されるサイクル、インパルスノイズ、又はメッセージ成功率に関連するチャネルの幾つかの他の特徴に基づいて、チャネルをスペクトルの異なる場所に移動させることである。これらのメカニズムはいずれも、CDMA等の一部の変調技術に関して通例であるように、エッジ送信機と変電所との間に高速フィードバックループを必要としない。むしろ、変電所の装置は、ネットワークの挙動についての時間−持続時間解析を行い、その後、解析に基づいて新しいプロビジョニングポリシーをブロードキャストする。クロストークの観測されるパターン、インピーダンスの変動、調波混合等、ポリシーの変更を行うときに、ネットワークの多くの特徴が考慮に入れられてもよい。ポリシーの変更は、スイッチングシステム又は他の形態の冗長性によって相互接続され得る複数の変電所に影響を及ぼす場合がある。
【0043】
本発明の更に別の態様は、エッジ・ツー・変電所GLAネットワークを、AMI(AMIアーキテクチャにかかわらず)及びより高周波数のPLCベースの変圧器エリアネットワーク等の近傍のネットワーク、ならびに、スマートメータプラットフォーム自体のネイティブインテリジェンスと統合するために、少なくとも1つのリモートハブのそれぞれに格納されたプログラムによって使用される方法である。この方法において、リモートハブの高周波数PLCプロトコルスタック(例えば、PRIME)がTAN内でマスタノードとして該リモートハブが働くことを可能にし、該リモートハブはTAN管理アクティビティを実施する。TAN管理アクティビティは、新しく発見された下位リモートを検出するようにPLCプロトコルスタックをポーリングすることを含むが、それに限定されない。リモートハブはまた、電流、電圧、及び相角度等のローカルデータを得るためにローカルのネイティブスマートメータインテリジェンスをポーリングし、下位リモートにおいてネイティブスマートメータインテリジェンスから同様のデータを得るために下位リモートの到達可能な群をポーリングする。リモートハブは、その後、収集されたデータポイントから結果を導出する。リモートハブは、使用可能なポリシーが、収集データ及び/又は収集データの導出結果がリモートハブのエッジ送信機モジュールによって変電所受信機に送信され得ることを決定するまで、リモートハブ上のポリシー及びアプリケーションアルゴリズムに従って、収集データを、格納し、圧縮し、かつ/又は処理する。例として、リモートハブは、1時間の間、それ自身を含む各リモートからRMS電圧をサンプリングし、該サンプルを格納しかつ/又は加算し、その後、測定される最大電圧及び最低電圧、これらの外縁値(outlying value)が測定されたリモートの識別、及びその期間についての全てのリモートにわたる平均電圧を含むメッセージを構成する。このような「導出結果」は、大量のデータが変電所に送信されることを必要とすることなく、TAN内の状況の特徴付けを提供する際に有用である。これらのポリシーに基づく「導出結果」は、リモート用の「アプリケーション(apps)」と考えることができ、時々改変又は変更することができる。
【0044】
リモートハブは、そのプロビジョニングされたポリシー及び発見されたTAN構成データを使用して、警報メッセージをフォーマットし、符号化し、エッジ・ツー・変電所チャネル上で送信することが適切であるかどうかを判定することに更に関与する。このようなメッセージには、新しい下位リモートの発見を報告する対形成メッセージ、分かっている下位リモートとの通信の喪失を報告する対形成警報、(電力サージ、サグ、及びスパイク等の)TAN内の又はメータにおける変化を報告する他の警報、及び、TAN内のネイティブスマートメータインテリジェンスから収集され導出されたデータを変電所の装置に送信するスケジュールされたデータ報告を含むことができる。本発明の幾つかの実施形態において、チャネルはタイムスロット化されず、リモートハブは、所望のレートで少なくとも1回の成功裡の送信を達成する許容可能な確率を提供するために、適切な数の送信が実施されるランダムポスティングスケジュール上で例外報告又は算出データ報告のみを送信してもよい。最終的にエッジ送信機メッセージをトリガーする全ての状況は、リモートにおいて検出される不成功から、導出結果を計算し報告するために必要とされる状況を達成することに至るまで、事象として記述され得る。
【0045】
スロット化されたチャネル及び/又は時間スケジュール化送信ポリシーが使用される場合、リモートハブは、そのシステムクロックを、同じサービスエリア内の他のリモートハブと既知の許容範囲まで同期化する方法を必要とする場合がある。各リモートハブは、ローカルメータ又はAMIネットワークをポーリングして、AMIネットワーク時間を取得してもよく、リモートハブは、そのAMIネットワーク時間を使用して、スケジュールされた送信がいつ起こらなければならないかを決定し、リモートハブ上又は下位ハブ上のグリッドロケーションアウェア(商標)インテリジェンスのために意図されるAMIを介して受信されるデータブロックを取得する。このようなデータブロックは、下位リモートのその後の挙動に影響を及ぼすことになるファームウェア更新及びネットワークポリシー又はプロビジョニングの変更を含み得る。リモートハブは、ファームウェア更新及びポリシー変更をTANのローカルPLCチャネルを介して必要に応じて下位リモートに配信する。更に、リモートハブは、無線ブロードキャスト信号に基づいて同期してもよい。同期方法が利用可能でない場合、チャネルアクセスは、タイムスロットに全く基づかないこともある。これは、ネットワークのデータ担持能力を減少させるが、システムがグリッドロケーションデータを提供する能力には影響を及ぼさない。幾つかの実施形態において、リモートハブ及び/又は下位リモートは、全地球測位システム(GPS)受信機を含むことができる。GPS信号は、論理ネットワークモデルを物理ネットワークモデルに関連付ける手段を提供することに加えて、リモートハブを同期化するために使用してもよい。
【0046】
本発明の更に別の態様において、コンピューティングプラットフォーム及び集信装置は、最初に事業者のPNM及び/又はLNMから抽出される可能性がある、又は、リモートハブからの報告から全体的に蓄積される可能性がある、2つのマスタデータテーブルを維持する。これらのデータテーブルは、検出された全てのリモートハブ及び下位リモートのテーブルであるインベントリ、及び、LNMと同様の、グリッドのトポロジー及び状態の図式的な表現であるグリッドマップである。変電所コンピューティングプラットフォームにおけるグリッドマップ及びインベントリは、少なくともある時間に変電所にアクセス可能なグリッドの部分のみを示す、部分的なものであってもよい。集信装置におけるグリッドマップ及びインベントリは、一般に、事業者サービスエリア全体を示すが、リモートハブ及び下位リモートを有するサービスエリアの計装が不完全である場合、グリッドマップ内に欠落部が存在する可能性がある。変電所のコンピューティングプラットフォームは、下位リモートから任意のメッセージを受信すると、メッセージ内のデータ及び変電所受信機によって推測されるメッセージエンハンスメントをインベントリ及びグリッドマップ内のデータと比較する。コンピューティングプラットフォーム上のロジック及びポリシーが使用されて、グリッドマップ及びインベントリのローカルコピーが更新される必要があるかどうか、また、その更新が集信装置に送出されて、マスタグリッドマップ及びインベントリを更新しなければならないかどうかを判定する。コンピューティングプラットフォームにおいて効力のあるポリシーがそのように命令する場合、エッジから収集されるデータもまた、集信装置に転送される。集信装置は、次に、どの事象及びスケジュールされた報告が他のデータセンタアプリケーションにパブリッシュされなければならないかを決定するポリシーを実施する。更に、エッジ・ツー・変電所チャネル上での送信を検出する各インスタンスのトランザクション履歴は、送信のメッセージのみならず、オングリッドデータ収集ネットワークのパフォーマンス及び有用性を解析し最適化するときに有用であり得る送信についての観測され測定される他の特性を含む、データアーカイブとして維持されてもよい。トランザクション履歴のデータアーカイブはコンピューティングプラットフォーム内で維持されてもよく、あるいは、集信装置にアップロードされてもよい。しかしながら、主要な使用は、各コンピューティングプラットフォームに対してローカルであり、経時的なローカルグリッド特徴の解析が使用されて、リモートハブの送信が正しく受信される確率をどのように最大化するかを記述するデータ及びポリシーをリモートハブに提供してもよい。
【0047】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する添付図面は、本発明の実施形態を示し、明細書の説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】発電ポイントから配電変電所へ、そして需要者までの電力経路の略図であり、配電網の高電圧領域、中電圧領域、及び低電圧領域を示し、配電網の主要なフィーチャのいくつかを示す。
図2a】グリッドトポロジーにおけるサイクルの欠如を示す放射状方式アーキテクチャ配電網の略部分図である。
図2b】それぞれが、図示する住宅群に低電圧電力を送出する柱上変圧器に電力を送出することができる、2つの変電所を示すループ方式アーキテクチャ配電網の略部分図である。左側の変電所は、住宅群に現在電力供給している。
図2c】ネットワーク方式アーキテクチャ配電網の略部分図である。図示する4つのフィーダは、単一の変電所(通常の場合)又は複数の変電所から始まり得る。矩形のグリッドは、低電圧側で柱上変圧器をピア・ツー・ピアで接続するため、全てのフィーダは、変電所の下の負荷に同時に電力を送出する。
図2d】キャンパスネットワークの例示的な略部分図である。3相変圧器は、480ボルト母線に電力供給し、個々の電気コンセントに電力供給するキャンパスを通って延びる複数の3相側線が、その480ボルト母線に依存する。母線に低電圧発電ポイントを付加し、母線を配電線から絶縁する手段を設けると、キャンパスネットワークが自給自足的なマイクログリッドに変換される。
図3】バックオフィスフィーチャ、変電所装置、及び、リモートハブ及び下位リモートにおけるインテリジェンスを含む変圧器エリアネットワーク(1つが拡大される)を含むグリッドロケーションアウェア(商標)ネットワークの高レベルソフトウェア配備モデルの図である。
図4】グリッドロケーションアウェア(商標)ネットワーク内の変電所装置の略ブロック図であり、グリッドロケーションアウェア(商標)ネットワーク装置が変電所内の既存のSCADA線にどのように結合するか、また、変電所受信機からのデータがデータセンタにどのようにバックホールされるかを示す。
図5】変電所受信機内のマルチスレッド式ソフトウェアアーキテクチャのブロック図であり、どのようにエッジ・ツー・変電所信号が、処理及びバックホールのために、取得され、チャネル化され、検出され、復調され、復号され、格納されるかを示す。
図6】リモートハブGLAスマートメータの立面図である。
図7a】フォーム2S住宅メータ用のリモートハブGLAスマートメータのエッジ送信機モジュールの一実施形態の正確な3次元モデルの上面図である。
図7b】エッジ送信機モジュールの同じモデルの底面図である。
図7c】リモートハブGLAのエッジ送信機モジュールの電子コンポーネントの略ブロック図である。
図7d】リモートハブの絶縁回路の詳細図である。
図8】下位リモートGLAスマートメータの立面図である。
図9】下位リモートのPLC通信モジュールの電子コンポーネントの略ブロック図である。
図10a】メータ接続ポイントにおける配電網上のAC波形のスナップショットのグラフ(一定比例尺に従わない)である。電力基本波及びその奇数高調波が強調され、3つのCDMAに似たブロードバンド周波数分割式エッジ・ツー・変電所チャネルが示され、1つのチャネルは時間分割を示すために時間について拡張されている。
図10b】2つのスケジュール化チャネル及び1つの非スケジュール化チャネルを示す3つのエッジ・ツー・変電所チャネルの時間領域図である。
図10c】本発明の一実施形態における単一のエッジ・ツー・変電所メッセージバーストの典型的な構造を示す図である。
図10d】本発明の別の実施形態におけるエッジ・ツー・変電所メッセージバーストの代替の構造を示す図である。
図10e】同じ周波数帯域上で複数のチップを使用することが、どのように衝突を防止することができるかを示す図である。
図11】GLAスマートメータ内と、リモートハブと下位ハブとの間の両方における変圧器エリアネットワークに対してローカルな通信経路を示す図である。図11では、リモートの立面図が、2次通信モジュールが使用されない実施形態を示すことに留意されたい。
図12a】3つのTANを有する3相柱上変圧器を示す図である。
図12b】1つのTAN及び複数のプロキシリモートを有する3相柱上変圧器を示す図である。
図13】最良のネットワークパフォーマンスについて、使用可能な周波数の利用を最適化するために、エッジ・ツー・変電所送信について利用可能な周波数帯域の使用がどのように操作されるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
[発明の詳細な説明]
本発明は、オングリッドデータ収集ネットワークをエッジの他の隣接ネットワーク及びデバイス、変電所、及び配電ネットワークのフィーチャと統合するように、オングリッドデータ収集ネットワークを構築し、動作させるためのシステム及び方法を含み、他の隣接ネットワーク及びデバイスは、スマートメータとAMIとインターネット等の従来のネットワークを含むことができる。システム及び方法は、データセンタにおいてオングリッドデータ収集ネットワークによって収集されたデータを更に統合し、収集されたデータを他のアプリケーションにパブリッシュしてもよい。システム及び方法はまた、統合ネットワークの能力を使用して、配電網の普通なら知られていない静的及び過渡的属性を推測し、スマートグリッドの物理ネットワーク及び論理ネットワークモデルを改良するために、該静的及び過渡的属性を統合ネットワークを介して報告してもよい。これは、保全電圧低減、ボルト/Var最適化、負荷分散、障害の分離、及び回復管理等のスマートグリッドアプリケーションをサポートするモデルの能力をもたらす。
【0050】
図3は、本発明の一実施形態のインテリジェントプラットフォームの論理ブロック図であり、異なるインテリジェンスが、コンバージドネットワークに関して存在し、コンバージドネットワークは、インターネット等の従来の広域ネットワーク、高度メータリングインフラストラクチャ、中電圧配電網、及び、少なくとも1つの柱上変圧器を介して中電圧配電網のエッジにおいて接続された少なくとも1つの変圧器エリアネットワークを含む。図3は、システムを3つの領域又は階層に分割できることを示す。エッジ階層301は、少なくとも1つの変圧器エリアネットワーク(TAN)302を備える。各TANは、柱上変圧器303、少なくとも1つのリモートハブ304、及びゼロ個又は1つ以上の下位ハブ305を備える。下位ハブ305が存在する場合には、リモートハブは、PRIME等の標準的な短距離PLCプロトコルを介して下位ハブと通信する。リモートハブ305は、電流変調信号を送信するように動作可能であってもよい。複数のリモートハブがTAN上に意図せずにインストールされることを回避するために、インストレーションプロシージャは、いずれかのタイプの新しくインストールされるリモートが、ローカルTAN上にリモートハブが既に存在するかどうかを検出することを可能にするメカニズムを提供してもよい。本発明は、エッジ階層と変電所階層との間に通信デバイス又は他の改変物のインストレーションを必要としない。しかしながら、コンデンサバンク等の中電圧網のフィーチャからデータを収集することが望ましい場合、リモートハブデバイスの変形物をそこにインストールしてもよい。このようなリモートハブは、技術的には、依然としてエッジ階層にある。その理由は、このようなリモートハブが、グリッドフィーチャがインストールされる中電圧線から直接ではなく、フィーチャに位置する低電圧コンセントによって電力供給されるからである。
【0051】
依然として図3を参照すると、変電所階層306は、配電網の中電圧インフラストラクチャ上にインストールされる任意の信号増幅器、バイパスメカニズム、又はブリッジに頼ることなく、エッジ階層内のリモートハブからの送信を受信するように動作可能な少なくとも1つの変電所受信機307を備える。変電所受信機は、ローカルエリアネットワークを介してコンピューティングプラットフォーム308に接続され、コンピューティングプラットフォーム308は、インベントリ及びグリッドマップデータベースを維持すると共にコンバージドデータネットワークをプロビジョニングし、管理するタスクを実施するソフトウェア309を格納し実行するために、不揮発性コンピュータ可読メモリ及びCPUを含む。更に、コンピューティングプラットフォームは、ソフトウェア310を格納し、実行する。ソフトウェア310は、変電所受信機307から受信されるメッセージと組み合わせてインベントリ及びグリッドマップデータを処理して、到来する送信のみに基づいて変電所受信機単独で検出できる事項に加えてグリッドの状態に関する情報を推測する。本発明の幾つかの実施形態において、変電所受信機のコンピュータベースのコンポーネント及びコンピューティングプラットフォームのコンポーネントは、同じサーバ上でホストされる。このような実施形態において、変電所受信機ソフトウェアコンポーネントとコンピューティングプラットフォームソフトウェアコンポーネントとの間でデータを転送するために使用される通信プロトコル(HTTP等)は、必要とされる物理ローカルエリアネットワークが存在しなくても、変える必要はない。コンピューティングプラットフォーム308は、データセンタ階層313内の集信装置312と通信するために、インターネット等の従来の広域ネットワーク311に接続される。本発明の幾つかの実施形態において、また、コンピューティングプラットフォーム及び変電所受信機が同じサーバであるか、別個のサーバであるかにかかわらず、サーバは、システムの連続動作を保証するために、冗長化クラスタで構成してもよい。
【0052】
再び図3を参照すると、集信装置312は、変電所内のソフトウェアに類似するアーキテクチャを有するソフトウェアをホストし、グリッドロケーションアウェア(GLA)用の1つ以上のアプリケーション315にソフトウェアサービスを提供するネットワーク及びデータ管理コンポーネント314を備える。アプリケーションは、限定はしないが、JMS、SOAP、及びREST等の従来のネットワークベースのメッセージングプロトコルを使用して、地理空間情報システム(GIS)316等の加入者アプリケーションに情報をパブリッシュする。データ及びネットワーク管理コンポーネント314は、AMIネットワークに、エッジ階層301内のリモートハブに対してデータブロックをブロードキャストさせるために、AMIヘッドエンド317と統合されてもよい。データ及びネットワーク管理コンポーネント314は、標準的なプロトコル及び/又はAMIベンダによって定義されたプロプライエタリインタフェースを使用して、AMIヘッドエンド317と統合してもよい。
【0053】
本発明の別の実施形態は、代替の補助的ネットワークコンポーネントのコンバージェンスを備えることができる。例えば、変電所・ツー・エッジブロードキャスト能力及び/又は変電所からリモートハブまでの時刻同期は、この目的のためにAMIを使用するのではなく、変電所においてフィーダに取付けられた中電圧PLC送信機によって提供されてもよい。同様に、変電所から発せられるメッセージをブロードキャストする別個の無線送信機を使用してもよい。変電所のコンピューティングプラットフォームから送信機まで低レイテンシネットワーク接続が存在する限りにおいて、無線送信機は、変電所に物理的に位置している必要はない。同じ無線送信機は、複数の変電所のために変電所・ツー・エッジチャネルとして働いてもよい。変電所・ツー・エッジチャネルがAMIでない場合、リモートハブのクロックの同期化は、「System and Methods for Synchronizing Edge Devices on Channels without Carrier Sense」という名称の米国特許出願第13/566,481号明細書に記載されるように実現してもよく、該出願は参照により本明細書に組み込まれる。チャネルがスロット化されない本発明の実施形態においては、クロック同期化は不要である。
【0054】
図4は、一実施形態において、ここでは、コンピューティングプラットフォームの他のソフトウェアコンポーネントと共に単一サーバ上でホストされる変電所受信機401が、既に所定の場所にあるSCADAループ405に2次電流センサ404を取付けることによって、変電所変圧器403の低電圧側でフィーダ線402を監視する方法を詳細に示している。2次電流センサは、変電所受信機に対する入力を提供する。この結合方法は、変電所受信機が、変電所の運転を乱すことなく変電所変圧器上にインストールされることを可能にする。ホットスティッククランプオン変流器等の他の結合方法が、当技術分野でよく知られており、本明細書で説明するSCADAループ方法に対する2次結合の代わりに同等に使用されてもよい。一部の変電所は、SCADAループを欠いていてもよく、あるいは、物理的配置又は電力事業規制によりアクセス不能であってもよい。
【0055】
図5は、変電所受信機に関連付けられた変電所変圧器によって給電される配電網の部分のエッジにおいてリモートハブから受信される複数の信号を取得し、検出し、微分し、復号するために、変電所受信機ロジック501の一実施形態によって使用されるソフトウェアアーキテクチャ及び方法を詳細に示す。GLA CT線504からの入力は、未処理デジタル化信号として、データ取得(DAQ)モジュール502にリアルタイムで到達し、DAQモジュール502において、その後、バッファリングされ、RAMディスク503に記録される。DAQプロセスと並列に動作しながら、チャネライザ505は、未処理信号を読み取り、該未処理信号を対象の周波数帯域によって再編成して、RAMディスク506上に格納されるチャネライズド信号にする。チャネライザと並列に動作しながら、プリアンブル検出器507は、全てのフィーダ相に関して受信されたチャネライズド信号をサンプリングし、全ての送信に先行する1つ以上のプリアンブルパターンを認識しようと試みる。一実施形態において、プリアンブル検出器は、全ての正当なプリアンブルを探し、それにより、その割り当てられたタイムスロットを外れている送信又は非スロット化チャネル上でなされた送信を受信することを可能にする。プリアンブル検出器はまた、プリアンブル検出器がサンプリングしなければならないチャネライズされた記録の量を最小にするために、チャネルタイムスロットについての知識を使用してもよい。一実施形態において、プリアンブル検出器は、プリアンブルを発見すると、復調器509が処理し始めるべきデータストリーム内の1つ以上のポイントを決定し、マークを付ける。同じメッセージの複数のコピーが、クロストークのせいで検出される場合がある。全てのコピーは復調のために保持される。プリアンブル検出器507は、マーカ情報及びチャネライズド信号データを、RAMディスク508を介して復調器に提供する。プリアンブル検出器と並列に動作しながら、復調器509は、RAMディスク506からメッセージの全てのコピーを読み出し、メッセージが見つかった周波数帯域、場合によってはタイムスロット、及び、リモートハブの既知のポリシーを使用して、メッセージを復号する方法を決定する。ポリシー要素は、チャネル上で使用中の変調技術、使用中の時間ベースのアクセスポリシー、そして、周波数拡散変調が使用される場合には、どのチップが変調中に使用され得たか、を含んでいてもよい。時として、チップの考えられる2つ以上の選択が存在する場合がある。復調器が間違ったチップを適用しようと試みる場合、これは、復調エラー及び/又はFEC失敗によって示されることになる。受信機ロジックのこの並列化された実施形態は、複数のプロセッサコアが各メッセージストリーム上で動作することを可能にし、データフローの早期のモジュールはそれより後の送信に働き、データフローの後期のモジュールはそれより前の送信に働く。
【0056】
依然として図5を参照すると、データマネジャ514は、所与の時刻における各プロセスが、陳腐化又は揮発性バッファにアクセスしようと試みるのではなく、その先行処理プロセスによって出力された完成したデータに働くように、RAMディスク503、506、508、及び510上に格納されたデータに対する幾つかのプロセスのアクセスを同期化することに関与していてもよい。データマネジャはまた、後の検索、調査及び後処理のためにRAMディスクから大容量アーカイブディスク513にデータをコピーすることもできる。アーカイブディスク513は、少なくとも1つのエッジ・ツー・変電所チャネルの履歴についてのアーカイブされたデータを格納してもよく、該データには、送信が検出され得る多数のチャネル上において検出された各送信に加えて、以下に説明するように、検出及び復調プロセス中に受信機によって行われる測定結果の可能性がある全てを含む。本発明の幾つかの実施形態では、すべての測定結果とメッセージのすべてのコピーをアーカイブしてもよく、別の実施形態では、特定のインストレーションに使用される後処理のタイプをサポートする測定結果のみをアーカイブするように選択してもよい。例えば、幾つかの指標は、変電所・ツー・エッジチャネルが存在する場合にのみ有用である。別の指標は、エッジ・ツー・変電所チャネルが1つだけ使用される場合には必要とされない。メッセージが復調され、RAMディスク510に書き込まれる時までに、メッセージは、以下でより詳細に述べるように、送信機を特定し、メッセージが送信されたフィーダ及び相を推測するのに十分な情報を有するようにエンハンスされている。メッセージが受信された各フィーダ−相についてのメッセージバンドルは、エッジ・ツー・変電所送信について利用可能な全周波数帯域内の複数の特性周波数における信号振幅、E/N(ビットあたりのエネルギーとノイズパワースペクトル密度の比率)やメッセージ検出率(プリアンブルパターンが認識される場合、関連するメッセージを復号できるかどうか)等の復調器性能指数測定によって決定される信号品質、信号が受信された時刻、及び、もしあれば、メッセージを符号化したチップを含むことができるが、これらに限定されるものではない。アーカイブされ得る他の指標の例は、チャネルによるビットエラーレート、ガウスノイズレベル及びインパルスノイズ事象、シンボル配置分離、シンボル間干渉、受信時刻のドリフト、及び変調周波数のドリフトである。これらの測定結果は共に、グリッドロケーション干渉をサポートし、経時的に解析される場合、ネットワークの最適化に貢献する。例えば、検出されたメッセージのインスタンスからの複数の周波数における信号振幅を、同時刻に検出された別のインスタンスと比較すると、どのインスタンスがクロストークによるものであるか、また、どのインスタンスがオリジナルの送信であるかを判定するのに役立つ。他方で、振幅における傾向を見出すことは、以下に説明するように、リモートハブにフィードバックを送る必要性を強調する場合がある。得られたメッセージバンドルは、インタフェース511を介してネットワーク管理及びグリッドロケーションアウェアネスソフトウェアに送られる。図5には示さないが、図3で符号309及び310としてそれぞれ示すこれらのソフトウェアコンポーネントは、メッセージ特性及びメッセージコンテンツと共にエッジ送信機のプロビジョニングポリシーを使用して、どのリモートハブのエッジ送信機がメッセージを送出したかを判定し、検出可能であったそれぞれの異なるフィーダ−相入力上で受信されたメッセージのコピーの信号特性を比較して、それにより、どのフィーダ及び相上でメッセージが実際に送信されたかを確立する。この結論は、グリッドトポロジー又は状態の変化が起こったかどうかを判定するために、グリッドマップ内の情報と比較される。これは、グリッドロケーションアウェアネス(GLA)アルゴリズムが、前に分かっていなかったメータの相のみでなく、ループ又はネットワーク式構成におけるスイッチ状態の変化ならびに修理及びメンテナンスに起因する任意のタイプのグリッドの図式的な変更もまた推測することを可能にする。各特定の送信源(リモートハブ)及び複数のチャネルについて、これらの測定結果が経時的にどのように変化するかを解析して、送信構成及びポリシーにおけるどの変動が、個々のリモートハブ及びチャネル全体についてのメッセージ成功率を向上させ得るかを判定することができる。その結果、グリッドロケーションアウェアネスソフトウェアは、測定結果及び行われたグリッドロケーション判定をトランザクション履歴としてアーカイブしてもよい。これらのデータは、ネットワークパフォーマンス最適化のために、後で検索されて解析されてもよい。変調周波数における系統的なドリフトを含め、幾つかの測定結果は、リモートハブが正常に機能しておらず、交換を必要とすることの表示となってもよい。別の傾向が、周波数に基づくあるチャネルを別のチャネルと置換することをもたらしたり、あるいは、ポリシーによって特定のリモートハブが送信することが指示されている時刻を変更することをもたらすこともある。アーカイブされたデータを後処理することによってこの種の推奨が導き出される場合には、その推奨は、集信装置に転送されて、他のアプリケーション(供給及び作業命令管理等)に伝えられてもよく、あるいは、変電所・ツー・エッジチャネルを介してリモートハブに送信されてもよい。更に、変電所受信機において測定される相対的信号レベルが使用されて、リモートハブについての等化パラメータを計算してもよい。リモートハブに伝えられると、リモートハブが、送信される信号を予め等化する(すなわち、特定の周波数を強調する)ことを可能にする。これは、メッセージ成功率を改善する可能性がある。
【0057】
もう一度図3を参照すると、コンピューティングプラットフォーム308上のソフトウェアコンポーネント309及び310は、セマンティックレベルで、変電所受信機から受信された、復調済かつエラー訂正済のメッセージを復号する。セマンティック復号は、解読及び解読されたメッセージに関するCRCチェックを含んでいてもよい。これは、例えば、リモートハブ上のファームウェアの改ざん、又は、悪意の目的でのネットワーク上の異なるサービスエリアからのメータのインストレーションによる、偽りのデータの導入を排除するのに役立つ。メッセージについてこのレベルの復号が行われると、メッセージ内のデータペイロードが、更なるグリッドアウェアネス情報をもたらしてもよい。対形成メッセージは、新しいメータが成功裡にインストールされたこと、又は、既知のメータが、異なる柱上変圧器又は多相変圧器の異なる相に現在接続されていることを示す。スケジュールされたデータメッセージは、エッジにおける電圧レベル、需要、及び力率、ならびに、チャネルのデータ担持容量によってのみ制限される、リモートの計器から入手可能なデータから計算される任意の他のデータ又は結果に関する情報を提供してもよい。スケジュールされたメッセージが到達しないことでさえ、情報価値があり、停電が存在する可能性があることを示す。メッセージが送信されたと判定されたフィーダ及び相からのコピーのみならず、メッセージの任意のコピーが、データを抽出するために使用されてもよい。時として、主コピーは、ビットエラーを含む場合があるが、クロスオーバーコピーはビットエラーを含まない。これらの判定はまた、パフォーマンス最適化に関連する指標であってもよく、また、本明細書において先に述べた送信に関連する指標のアーカイブに含まれていてもよい。チャネルによって、個々の送信ポイントによって、時刻によって、送信時に有効な構成パラメータ及びポリシーによって、また、メッセージ成功率及び推測されるグリッドロケーションの信頼度等のパフォーマンス結果に関連し得る他の因子によって、履歴結果を集めることを容易にするようにデータアーカイブがインデックス化されてもよい。
【0058】
全ての情報が変電所におけるメッセージバンドルから抽出されたとき、コンピューティングプラットフォーム上のソフトウェアコンポーネントは、更なる処理及びパブリケーションのために、従来のネットワーク311を介して集信装置312にどのデータを転送するかを決定するポリシーを適用する。データ管理ポリシーを実行することに加えて、コンピューティングプラットフォーム308は、チャネル管理ポリシーにおける有益な変更が行われるべきかどうかを判定するために、データアーカイブを解析してもよい。このような変更が特定されると、コンピューティングプラットフォーム308は、推奨を集信装置に転送して、ポリシーが実行に移される前に、影響を受ける可能性がある全ての変電所において全ての企図されるポリシー変更の影響が確実に入手されるようにしてもよい。チャネル管理ポリシーの変更が実施されると、ポリシー変更の事実及び性質を、アノテーションとしてデータアーカイブに付加してもよい。このようなアノテーションは、その後のデータ解析を補助する。その理由は、このようなアノテーションが、検出された信号振幅又は周波数帯域等のアーカイブされる指標における不連続性を説明し得るからである。更に、ビットエラーレート、メッセージ検出率等の品質に基づく指標を改善する際にポリシー変更がどれだけ効果的であったかを判定するために、アノテーションが使用されてもよい。
【0059】
ここで、ネットワークのエッジのデバイスについて考えると、図6は、グリッドロケーションアウェア(GLA)ネットワーク内のリモートハブとして働くように動作可能である単相フォーム2sGLAスマートメータ601の立面図を示す。フォーム2sは、米国内の住宅用単相メータ用の標準的フォーマットである。リモートハブデバイスの他の実施形態は、3相メータと統合してもよく、あるいは、メータに連結されるのではなく、120V又は240V、あるいは、建物内、特にネットワークのエッジが典型的な電力事業サービスエリアより高分解能で定義されるマイクログリッド環境内、に位置する他の電圧コンセントに差込まれてもよい。更に他の実施形態において、リモートハブデバイスは、電圧調整器、コンデンサバンク、逓降変圧器等の配電網上の他のデバイス及び器具と統合されてもよい。
【0060】
典型的なスマートメータは、ガラス又はルーサイトで形成された円柱透明ドーム等のメータハウジングに共形の回路基板が層状に配された構成を有する。図示する実施形態において、ドームは、エッジ送信機モジュール604の高さを許容するために、通常より約1.5インチ高くてもよい。しかしながら、メータハウジングの高さは、製造業者及びモデルごとに異なり、メータをフォーム規格に違反状態にさせない。ハウジングの上部の最も近くには、全てのスマートメータの一部である計算及び表示用基板602がある。通常、インジケータライト及び数値表示装置等の、計算及び表示用基板上の表示特徴部は、インタフェース606を介してハウジング内の他のコンポーネントによってアクセスされ得る。通信モジュール603は、AMI送受信機回路及びインテリジェンスを含む。一部のスマートメータにおいて、通信モジュール603のコンポーネントは、計算及び表示用基板上に含まれるが、他のスマートメータは、図示される別個の基板上に通信コンポーネントを配置することによって、複数のタイプの通信モジュールを収容することができる。いずれの構成も一般的である。別個の基板上にある場合、通信モジュール603は、インタフェース及びケーブル606を介して、計算及び表示用基板602上のロジックと通信する。スマートメータの内部の、他のタイプのコンポーネント・ツー・コンポーネントインタフェースも使用され得る。エッジ送信機モジュール604は、長距離GLAエッジ送信機を備え、TAN通信用に短距離PLC送受信機も備える。モジュール604はまた、不揮発性メモリを有するCPU/マイクロコントローラも有し、CPU/マイクロコントローラは、リモートハブ制御ロジックの格納されたプログラムをホストし、実行し、エッジ送信機及びPLC送受信機ならびに他のロジック基板602及び603に対するインタフェースを制御する。
【0061】
図7a、7b、及び7cは、エッジ送信機モジュールの一実施形態の上面図、底面図、及び略図を示す。主に図7cを参照すると、エッジ送信機モジュールは、UART(ユニバーサル非同期送受信機)712を介して、メータ701の他のコンポーネントと通信する。電力は、AC主電源702から電源703に送出される。電源703は、適切な低電圧DC電力を演算装置717、増幅回路705、及びD級増幅器707に提供する。演算装置717は、基板上の揮発性メモリ及び不揮発性メモリを有するマイクロコントローラ処理装置であり、短距離と長距離の両方のデジタル信号処理及びプロトコル704、スケーリング及びフィルタリング713のために、また、増幅器707及び705を駆動するために使用される。PLC増幅回路705及びPLC結合回路706は、以下でより詳細に述べるように、送出される中間周波数信号が、この周波数における柱上変圧器のフィルタリング特性に依存して、TANの外に伝搬しないように調整される。長距離送信用の結合回路708は、それらよりかなり強力であり、特別な絶縁回路711を必要とする。絶縁回路711は、結合回路708が他の長距離送信に共鳴すること、及び、リモートハブが長距離チャネル上で送信していない場合に、結合回路708が感度のある周波数におけるグリッドノイズを防止する。結合回路708の主要なコンポーネントは変圧器709とコンデンサ710である。幾つかの実施形態によれば、エッジ送信機モジュールは、図7cに示すGPS受信機718等のGPS受信機を含んでいてもよい。あるいは、エッジ送信機モジュールは、計算及び表示用基板等のリモートハブの別のコンポーネント上に、又はインストール担当者が使用するモバイルコンピューティングデバイス上に位置するGPS受信機からのGPS信号にアクセス可能であってもよい。リモートハブは、GPS信号を使用して、その地理空間座標を記録してもよく、かつ/又は、他のリモートハブからの送信と衝突しないようスロット化チャネル上で送信を同期化してもよい。更に、リモートハブは、TANのエリア等、リモートハブの地理空間座標又はその地理空間座標の関数をエッジ・ツー・変電所チャネル上で報告するように、又はそれらがモバイルコンピューティングデバイスによって読み取られることを可能にするように、プログラムされてもよい。地理空間座標がインストレーション時に地理空間データベース(例えば、PNM)に記録されたリモートはまた、自分の座標をデータブロックで受信してもよい。
【0062】
図7a及び7bは、図7aのコンポーネントを、フォーム2S電気メータの形状に一致させるようにどのように配置することができるかを示す。図7bから明らかであるように、変圧器709及びコンデンサ710は大型のコンポーネントである場合がある。変圧器を見せるためここでは組立体から取り外されて示されるが、磁束シールド715は、通常、変圧器709を覆って、大きな変圧器からの磁束が変圧器の下の計量ユニットと干渉することを防止する。図7aを参照すると、電源703のコンポーネントは左上に位置するリモートハブモジュールの領域を占め、D級増幅器707のコンポーネントは右上に示されている。この実施形態において、単一のマイクロコントローラ717は、ファームウェアプロトコルスタック及びネットワーク管理ロジック704、705、及び713(図7cから)用の回路、プロセッサ、及び不揮発性メモリを含む。右下の大きなコンポーネントは、PLC結合回路706、絶縁回路711、及び長距離エッジ送信機用の増幅器コンデンサ716である。コネクタ712は、メータハウジング内の他のロジック基板とインタフェースで接続するためのコネクタである。
【0063】
図7dは、絶縁回路711を詳細に示す。この回路は、エッジ・ツー・変電所送信機の結合回路を電力線から切離す能力を提供する。リモートハブは、送信しているときを除いて、電力線から絶縁されることが望ましい。これは、結合回路が、電力線に接続されると、実質的な負荷を示すからである。絶縁回路は、トライアック718及びリレー719からなる。トライアックの目的は、線間電圧のゼロ交差時に電力線に対する接続を可能にすることである。これは、リモートハブ内のコンポーネントを損傷させる可能性がある大きな過渡電流の発生を防止する。更に、トライアックと接続することは、リレーの寿命を減少させるリレー接点上でのアーク放電の懸念を取除く。リモートハブが電力線と相互作用するときの事象のシーケンスは、
a.トライアックが、電力線のゼロ交差時に閉じる;
b.リレーが閉じる;
c.所望のアクション(一般に、送信)が実施される;
d.リレーが開く;
e.トライアックが、電力線のゼロ交差時に開く
である。
【0064】
図8は、標準的な計算及び表示用基板802及び標準的な計量ユニット804を有する標準的なスマートメータ801の立面図である。メータ801は、通信モジュール803上にPLC通信能力を追加されて、下位リモートGLAスマートメータになる。PLC通信コンポーネントは、好ましい場合、計算及び表示用基板802上の空間をAMI通信回路と共有できる程度に十分に小さい。3つ全てのモジュール(3つが存在する場合)は、インタフェース、ここでは、シリアルインタフェース又はUART805を介して通信する。他の実施形態では、異なる、機能的に同等であり、内部の、コンポーネント間インタフェースを使用してもよい。
【0065】
図9は、下位リモートの一実施形態の通信モジュール上のPLC通信コンポーネントの略図である。図7cのエッジ送信機モデル上の類似のコンポーネントとの類似性によって、下位リモートの通信モジュールは、基本メータ901、AC主電源からの電力入力902、基本メータに対するインタフェース907、電源903、マイクロコントローラユニット904、増幅回路905、及びPLC結合回路906を備える。送信機は、柱上変圧器の上で又は隣接する柱上変圧器の下で受信されないように、柱上変圧器によって信号が十分に減衰されることを保証するように調整されてもよい。下位リモートはまた、GPS受信機を含んでいてもよい。あるいは、下位リモートは、インストール担当者が使用するモバイルデバイス内のGPS受信機によってその地理空間座標を用いてプログラムされてもよい。自身の地理空間座標を分かっている下位リモートは、その座標を、変圧器エリアネットワークを通じてリモートハブに報告してもよい。これは、リモートハブが、TANのエリア及び範囲等の拡張された地理空間情報を計算することを可能にする。リモートハブは、エッジ・ツー・変電所チャネル上でこの拡張された地理空間情報を報告してもよく、あるいは、その情報は、インストール担当者又は他のフィールドエンジニアが使用するモバイルデバイスによってリモートハブから読み取られてもよい。
【0066】
図10aは、典型的な配電網のフィーダ−相線上の周波数スペクトルのローエンドの特性と、リモートハブのエッジ送信機によって使用される方法の両方を示す。該方法は、1つの変電所変圧器によって供される全てのTANが、それぞれの24時間期間に少なくとも2回、スケジュールされたグリッドロケーションアウェアネス報告を送信することができることを可能にし、更に、従来技術のオングリッド送信方法に関して観察された、本明細書で先に述べた困難さを生じさせることなく、必要に応じて警報を更に送信することができるように、電流変調信号をグリッド上に注入する。スペクトルの重要な特性は、50Hz又は60Hz電力基本波1001、その高調波1002、及びノイズフロア1003である。時々、インパルスノイズのスパイクが通常のノイズフロアを超える場合があることが留意されるべきである。エッジ送信機によって送信される変調済信号用の1つ以上の定義済のチャネルは、50又は60Hz電力基本波とホスト電力網上のサービス送信機のローパス閾値との間に存在する広い候補スペクトルにある。特定の変電所用の候補スペクトルは、測定によって決定され、ポリシーによって設定され、規制上の制約を受ける。測定により、候補スペクトルの1つ以上の帯域のどれが各変電所変圧器において確実に受信されるかが決定される。使用可能な帯域が、確実な送信に必要とされる帯域幅より広い場合、チャネル帯域は可変として定義されてもよい。このような場合、リモートハブは、送信する前に、本明細書において以下で述べる測定を行って、現在の状況において、より広いチャネルの中でどの部分が現在のところ送信するのに最も好ましいかを判定する。逆に、変電所受信機において、プリアンブル検出器は、使用可能な広い全帯域をサンプリングし、プリアンブルが検出されたところに基づいて送信機によって使用される実際の帯域を決定する。
【0067】
図10aは、長距離エッジ送信機用のチャネルとして定義された3つの周波数帯域1004、1005、及び1006を示す。チャネルとして使用される帯域の数は、3つに限定されるものではなく、3つのチャネルが常に必要とされるわけでもない。各チャネル上での送信は、本明細書で先に特定したような技術等のブロードバンド変調技術を使用して、示される定義済の周波数帯域にわたって拡散される。更に、送信バーストは、1007等のタイムスロット内で生じるように制限されてもよい。スロット化プロトコルの詳細は、本明細書において以下に説明される。
【0068】
依然として図10aを参照すると、本発明の典型的な周波数に基づくチャネルは、電力基本波の幾つかの高調波がチャネル内で起こるように十分に広いスペクトル領域に及んでいてもよい。注入された変調済の電流の振幅をノイズフロアにできる限り近く維持し、送信するために使用される電力量を最小にすることが重要であるため、本発明の幾つかの実施形態においては、電力基本波の高調波のスペクトルに信号が付加されない。整形フィルタがエッジ送信機によって有益に適用されて、高調波にわたって電流を注入することを回避してもよい。この技術はまた、高調波上で信号を処理するためにプリアンブル検出器及び復調器が必要とされないように櫛形フィルタリングを適用する場合がある変電所受信機においても有益である。これは、コンピュートインテンシブな復調プロセスにおいて貴重なプロセッサ容量を節約する。
【0069】
使用される変調技術が周波数拡散である場合、チャネルとして使用される各周波数帯域(1004、1005、及び1006等)は、少なくとも1つのパターン化コード又はチップを割り当てられる。チップの周波数変動レートは、データ信号の変動レートよりずっと大きい。チャネル上に電流として注入される実際の周波数拡散送信は、チャネルのチップとデータ信号の排他的論理和(XOR)である。隣接し、かつ近傍のチャネルは、数学的に直交するチップを割り当てられる。周波数拡散電流信号の振幅は、電力線のノイズフロアにできる限り近い。これは、従来のPLC法に伴う問題をなくす上で有益である。例えば、1つのチャネル上での送信が、クロストークによって別のチャネル内に「折り重ねられる(folded over)」場合、異なる符号化チップを使用することは、受信機に「迷走(stray)」信号をノイズとして解釈させ、受信機が正しい信号を依然として抽出することを可能にする。更に、また、変調技術にかかわらず、隣接チャネル内に広がる1つのチャネルからの任意の高調波も、ノイズとして解釈されることになる。チャネルアクセス制限と変調技術のこの組み合わせの結果は、1つ以上の低周波数で高品質の電流変調済チャネルをもたらし、そのチャネルは、インパルスノイズによる関連するビットの欠落の確率を最小にするためにデータビット及びFECビットを分配するインターリービング技術を使用して、前方誤り訂正後に、120ビット/秒以上、又は例えば、80bpsの未処理データレートを(個々のバーストにおいて)担持することができる。放射状配電網に関して時間−継続期間テストを行うと、変電所から見通し線で3.5マイルの平均距離を送信すると、周波数拡散変調による2/3のFECレートを使用して、1.6e−6のフレームエラー率をもたらした。説明する方法及び装置が、挙げたよりも低いデータレートで更に働き得ることも認識される。
【0070】
図10bは、グリッドマッピングをサポートするために3つの信頼性のあるチャネルのグループを編成する一方法を示す。3つ全てのチャネルが、タイムスロット1007へと編成され、該タイムスロット1007内で、リモートハブは、約5秒バースト1008を送信し、バーストの前に約1秒の無音及びバーストの後に約1秒の無音を有するようにプロビジョニングされる。これは、平均すると2秒の長さであるバースト間間隔1009をもたらす。異なる時間間隔を用いることもできる。例示される実施形態においてバースト間間隔が長い理由は、送信機クロックを同期化するためのメカニズムがAMIネットワークである場合があり、通常はメッシュ又はセルラー式無線アーキテクチャに基づくAMI同期化メカニズムが、プラス又はマイナス1秒程度の精密さであるからである。同じチャネル上での衝突(オーバーラップする送信)は、それらの送信が位相偏移符号化又は同じチップを使用して変調された場合に、送信同士が破壊的に互いに干渉することになるため、防止されなければならない。本発明の一実施形態において、それぞれのデータ担持周波数拡散チャネルは、1つのチップの代わりに複数のチップを割り当てられる。例えば、チャネル当たりのチップの数が2である場合、偶数番号のタイムスロット上での送信はあるチップを使用し、奇数番号のタイムスロット上での送信は、別の、数学的に直交するチップを使用する。複数のチップを使用することは、隣接する送信のオーバーラップが依然として復号され得るため、チャネルのデータ担持容量が、バースト間間隔を減少させることによって増加されることを可能にし得る。タイムスロットの順序数(ordinal number)は、マスタフレーム原点に関して決定され、マスタフレーム原点は、毎日の現地時間の午前零時に始まるものとして定義されてもよく、あるいは、既に参照され、本明細書に組み込まれた米国特許出願第13/566,481号明細書に記載される種々の方法によって確立されてもよい。
【0071】
図10bのチャネル1011の2つは、スケジュール化編成を有する。これは、各リモートハブが、チャネル上で送信が行われ得る特定の時間スロットを割り当てられることを意味する。第3のチャネル1012は、依然としてスロットへと編成されるが、報告すべき例外的な状況を有する任意のリモートハブは、最近警報発信していないことを条件に、任意のタイムスロットで送信するように試みてもよい。特に、チャネル1012は、スロット化ALOHAとして知られる方法によって編成される。警報は、変電所において受信されると、通常、無線AMIネットワーク等の変電所・ツー・エッジチャネルを介して肯定応答される。利用可能である場合、警報に肯定応答するための他の方法を使用してもよい。警報に肯定応答するためのメカニズムが全く利用可能でない場合、各警報は、ランダムに選択された数のスロットが送信の間に経過した状態で、単に複数回送信されてもよい。しかしながら、これは、警報チャネル1012のデータ担持容量を減少させる。その理由は、標準的なスロット化ALOHAにおいて、警報は、肯定応答されない場合にのみ再送信されるからである。メッセージ失敗率は、チャネルのフレームエラー率(非常に低いことが既に開示されている)に衝突率を足した値になることになる。衝突率は、次に、与えられた負荷(offered load)に依存し、2つ以上のリモートハブが所与のスロット内で送信しようと試みることになる確率に基づく。メッセージ成功率を最大にするための非肯定応答による再送信の最適な数は、より高い送信レートによってチャネル飽和が起こり得るため、2又は3等の小さな数である可能性がある。
【0072】
非スケジュール化チャネルの編成はまた、ピュアALOHAと同様の非スロット化プロトコルを使用してもよく、チャネルはタイムスロットに分割されないが、送信機は、予め定義された最近の間隔内で既に送信していない場合、任意の時刻に送信しようと試みてもよい。この編成において、警報は、好ましくは、経過時間の所定の期間以内に肯定応答されない場合にのみ再送信されてもよく、あるいは、警報は、肯定応答型警報が不可能であるか又は望ましくない場合には、複数回、定期的に送信されてもよい。
【0073】
説明されるチャネルの数及び編成は例に過ぎない。一部の変電所に関して、1つの信頼性のあるチャネルだけが利用可能である場合がある。1つのチャネルだけが使用されるとき、状況のせいで又は設計によって、複数のタイムスロットを警報のために予約してもよく、その一方で、他のタイムスロットはスケジュールされる。一部の変電所に関して、複数の信頼性のあるチャネルは、特定可能であることになる。必要とされるスケジュール化チャネルの数は、リモートハブの数、及び、各リモートハブが24時間期間内に送出しなければならないスケジュールされたメッセージの数に依存する。一実施形態においては、12,000のハブが一日に2回送信することを許容するには、2つのチャネルで十分である。変電所変圧器が(通常のように)12,000より少ない数の多数のハブに給電する場合、利用可能であるよりも少ない数のチャネルが、スケジュールされたメッセージのために必要とされ、警報閾値が下げられてもよく、2つ以上のチャネルは、より高い与えられた負荷を許容するために警報専用とされてもよい。図10bは、図示される時間間隔で送信される4つの警報を示す。警報1010の2つは、変電所受信機で検出される可能性が高い。警報1013は図10bにおいて衝突し、正しく受信されないことになる。図10eは、逆に、タイムスロットのモジュラスによって選択されるチップの使用が一部の衝突をどのように防止するかを示す。ここで、クロックの同期化が不十分であるため、ランダムスロット化チャネル1012の偶数番号のスロット内で送信されるメッセージ1014は、それに続く奇数番号のスロット内の同じチャネル上で送信されるメッセージ1015とオーバーラップした。両方のメッセージは、直交チップを使用して符号化されたため、変電所で解読可能である。本発明の更に別の実施形態において、非スケジュール化かつ非スロット化チャネルは、周波数拡散変調を使用し、複数の直交チップを割り当てられてもよい。メッセージを提供する送信機は、ランダムに複数のチップから1つのチップを選択し、それにより、オーバーラップ時間において同じチャネル上の別の送信とメッセージが衝突する確率を減少させることになる。
【0074】
図10cは、一実施形態による、スケジュール化チャネル上あるいはスロット化警報チャネル上のいずれで生じるかにかかわらず、典型的な単一の送信バーストの詳細な編成を示す。タイムスロット1007及びバースト1008内で、メッセージは、プリアンブル1014、インターリーブドデータビット1015、及びFECビット1016からなる。プリアンブルは、チャネル上の全てのメッセージについて同じである。FECレートは、一定比例尺に従って描かれておらず、利用可能なチャネルの品質に基づいて変電所ごとに必要に応じて変更され得る。一部のグリッドロケーションにおいて、かつ/又は、一部の変調に関し、FECが必要とされない場合がある。図10cは、更なる精巧さを加えることなく、帯域幅が同じチャネル内の全ての送信について同じであること、及び、プリアンブル検出のために使用されるパターンが、異なるフィーダの異なる相を示す幾つかの入力上の信号をサンプリングし比較して、信号が実際に送信された線を推測するときに、同様に変電所受信機によって使用されるのにも適すること、を意味するように見える場合がある。本発明の幾つかの実施形態は、メッセージのデータ担持セグメントが要求するよりも、プリアンブル検出についてより大きな帯域幅を必要とする場合がある。更に、幾つかの実施形態において、リモートハブ送信機のグリッドロケーションは、変電所受信機によって監視される全てのフィーダの全ての相に関して変電所でやはり測定される、プローブ送信と呼ばれる特別な送信からより良好に推測することができる。プローブ送信は、既知の変調済信号からなっていてもよく、あるいは、純粋なトーンからなっていてもよい。純粋なトーンを単一トーンのシーケンスとして送信してもよく、あるいは、純粋なトーンの1つ以上のグループを同時に送信してもい。プローブ送信の周波数範囲が、他のメッセージセクションの周波数範囲と異なっていてもよい。図10dは、この帯域幅の変動範囲を示し、プリアンブル用の1つの帯域幅1018、データ担持メッセージ用の別の帯域幅1019、及びGLAトレーラ用の第3の帯域幅1020を示す。GLAトレーラ1020は、プローブ送信がプリアンブル1018内に存在する場合があるため、本発明の全ての実施形態で存在するというわけではない。別の実施形態において、プローブ送信は、メッセージに続くのではなく、プリアンブルに先行してもよい。一般に、メッセージのセグメントは、順序が受信機によって知られていれば、任意の順序で送信してもよい。
【0075】
図11は、本発明の一態様によるTAN内のローカル通信経路を示すリモートハブ1101及び下位リモート1102を示す。この図は、通信モジュールが計算及び表示モジュールと分離されていない一実施形態を示す。リモートハブ1101は、要求経路1103を使用して、PRIME又はG3等のPLCプロトコルを介して、各既知の下位リモートをポーリングすることができる。(異なるPLCプロトコルの使用を可能にするために、これらの規格の特定の言語は本明細書で使用されない。例として、本発明の一実施形態におけるPLCプロトコルがPRIMEであった場合、リモートハブはPRIMEベースノードであり、全ての他のノードはサービスノードであることになる。)ポーリングされた下位リモート1102は、要求されたデータをスマートメータから取り出し、そのデータを、応答1104として送信される応答になるようにフォーマットする。リモートハブのエッジ送信機モジュールは、スマートメータのベンダごとに変わり得る単純な要求/応答プロトコル1105を使用して、UART1107を介して通信モジュール及び計算及び表示用基板コンポーネントと通信する。データ経路1106は、リモートハブと下位リモートの両方が、AMIのメンバであり、TAN関連アクティビティを実施することに加えて、AMIヘッドエンドにメータデータを送信することになることを示す。リモートハブは、TANマネジャとしてのその役割において、下位リモートが利用しない方法で、AMI又は他の代替の統合チャネルを利用してもよい。リモートハブだけが、エッジ・ツー・変電所チャネル上でメッセージを送出することが可能である。リモートハブはまた、AMI等の代替の統合された発信チャネル上でメッセージを送出してもよい。リモートハブは、変電所・ツー・エッジチャネルがAMIによって提供されるか、他の手段によって提供されるかにかかわらず、変電所・ツー・エッジチャネルからデータブロックを更に受信してもよい。このようなデータブロックは、警報確認応答、ファームウェア更新ブロードキャスト、及びポリシー変更を含むことができるが、それらに限定されない。メータクロック同期化メッセージは、ネイティブAMIプロトコルの一部であるが、リモートハブは、AMIが存在する場合に、計算及び表示モジュールから同期化クロック時間を得てもよい。
【0076】
リモートハブ1101は、複数の動作モードで機能する能力を有する。リモートハブは下位リモートとして機能してもよい。リモートハブはまた、プロキシハブと呼ばれる、リモートハブと下位リモートのハイブリッドとして機能してもよい。リモートハブ1101は、最初にインストールされると、別のリモートハブが既に存在しているかどうかを判定するのに十分な期間、TAN上のPLC周波数を監視する。待ち時間は、固定期間に、デバイスの電源がオンされるときにランダム関数によって計算される付加期間を足した値からなる。固定期間は、マスタモードで動作するリモートハブが、その発見アルゴリズムを確実に実行するのに十分であり、発見アルゴリズムは、別のリモートハブが所定の範囲内で動作する場合、新しくインストールされたリモートハブによって検出されることになる。通常、「所定の範囲内」とは、同じ柱上変圧器によって電力供給されることを意味するが、例外が生じる。例外を扱う手段は、本明細書において以下で説明される。
【0077】
第1のリモートハブが既に存在する場合、リモートハブ1101は、別のリモートハブが存在することを、スマートメータの面上の光又はデジタル表示によって示す。この時点で、インストール担当者は、冗長リモートハブ1101を所定の場所に残すか、あるいはそれを下位リモートユニットと置換するかを決めることができる。所定の場所に「予備」として残される場合、リモートハブ1101は、下位リモートとして機能し続け、第1のリモートハブは、TAN内のリモートハブ及びマスタノードとして働き続ける。リモートハブが他に存在しない場合、リモートハブ1101は、TAN上でマスタPLCノードとして動作し始め、同じTAN内の下位リモート1102のリストを発見し、格納する。リモートハブはまた、以下で述べるように、第3のモード、プロキシハブに入ることができる。リモートハブがマスタ又はハブの役割を引き受けるとすぐに、リモートハブ1101は、例えば、スマートメータ内のAMIロジックに問い合わせを行うことによって、利用可能である場合、ネットワークシステム時刻を取得し、プロビジョニング要求を、フォーマットし、符号化し、要求及び警報をプロビジョニングするために予約されたエッジ・ツー・変電所チャネル上で送信する。変電所受信機は、プロビジョニング要求を検出すると、AMIを介して、又は、利用可能なオングリッド又は無線変電所・ツー・エッジチャネルを介して、プロビジョニング応答を送出させてもよい。プロビジョニングデータはまた、インストール担当者によって使用される携帯式デバイス又はドライブバイ送信機によってリモートハブに供給されてもよい。携帯式デバイスは、リモートハブをプログラムするために、Bluetooth(登録商標)、赤外線、USB、又はRS232等のパーソナルエリア有線又は無線プロトコルを使用する。変電所・ツー・エッジチャネルが欠けているか又は非常に制限される本発明の実施形態においては、リモートハブは、リモートハブの推定されたグリッドロケーションの知識がない状態で、携帯式デバイスを介してプロビジョニングされてもよい。携帯式又はドライブバイデバイス内の同じ短距離プロトコルが使用されて、永久的な変電所・ツー・エッジチャネルを欠くリモートハブに対して、ファームウェア又はポリシー更新を配信してもよい。リモートハブの集合体において、ポリシー又はプログラム変更を同時にアクティブにすることが時に望ましい。リモートハブがパーソナルエリアプロトコルによって更新されなければならない場合、プログラミングデバイスは、所望される将来のアクティベーション時刻を、各リモートハブがプログラムされる相対的な待ち時間に変換するため、複数のリモートハブが異なる時間にプログラムされても、それらのリモートハブは、将来のほぼ同じ時刻に更新プログラミングをアクティブにする。リモートハブは、デフォルトポリシーを有するように製造されてもよく、あるいは、製造後であるがインストレーション前にデフォルトポリシーが予め組み込まれていてもよいため、ポリシーがインストレーション時に又はインストレーションに続いて提供されない場合に、リモートハブは、依然として、動作するためのルールを有する。
【0078】
プロビジョニングデータは、リモートハブに、リモートハブがTANを管理するために必要な情報を提供する。該情報には、エッジ・ツー・変電所ネットワーク上の他のチャネルのロケーション及び編成ならびに、このリモートハブが送信する許可を有するスケジュール化チャネル上のスロットの順序数又はシーケンス番号を含む。リモートハブは、下位リモートを発見すると、エッジ・ツー・変電所チャネル上で対形成メッセージを送信して、リモートハブが新しく発見された下位リモートと通信状態にあることをコンピューティングプラットフォームに知らせる。対形成メッセージは、ネットワークによって確立されるポリシーに応じて、警報発信チャネル上で又はスケジュール化チャネル上で送信され得る。マスタの役割で働くリモートハブが、下位の役割で動作する同じ変圧器及び相上の別のリモートハブを発見した場合、結果として得られる対形成メッセージはこれを示す。グリッドマップ内に「予備」リモートハブの存在を含むことにより、マスタリモートハブが万一故障した場合に、予備のリモートハブがマスタの役割を担うことを可能にすることによってTANを再構築することができるという点において、コストを節減し、より迅速なリカバリを提供することができる。マスタリモートハブは、TANを再プロビジョニングしなくてもフェイルオーバーが行われることを可能にするために、そのポリシー情報を、存在する場合には予備のリモートハブ上にキャッシュしてもよい。
【0079】
以降で、リモートデバイスをTANグループに適切に分割するための方法が開示される。PLC送信電力は、柱上変圧器を通過する信号を、他のTANと干渉することを回避するために十分に低く維持するように制御される。特に、本明細書で以下に述べるように、構成における特別な対処が行われなければ、リモートハブは、リモートハブと同じ柱上変圧器の同じ相上の下位リモートだけをポーリングし、そこからデータを収集しなければならない。しかしながら、幾つかのグリッド上の特定のサイトにおいて、PLCの標準電力及び周波数で、リモート内のPLC送受信機が同じ柱上変圧器の他の相上で、あるいは隣接するか又は近傍の柱上変圧器上においてさえも、下位リモート及びリモートハブを発見することができてもよい。本発明のこの態様においては、検出可能なリモートは、各TANが、正確に1つのマスタリモートハブ及び全ての下位リモートを備えるか、あるいは、同じ柱上変圧器の同じ相上で下位リモートとして働くリモートハブを備え、かつ、異なる相上又は異なる柱上変圧器上の任意のタイプのリモートを全く持たないように、可能な限りにおいて任意の箇所で分割することができる。
【0080】
本発明の一実施形態において、リモートハブのPLCプロトコルスタックは、近傍の他のノードに応答させるビーコントーン又はメッセージを送信することを含む発見プロセスを実行する。最初にこれが実行されるときには、標準的な初期電力レベルが使用される。PLCプロトコルスタックの上で働くリモートハブのTAN管理層は、任意のタイプの発見されたリモートのリストを得る。その後、リモートハブのエッジ送信機が使用されて、パイロット信号が、柱上変圧器の高電圧側で検出不能であるように十分に低い振幅でかつ十分に高い周波数でパイロット信号を送出する。(このパイロットトーンはPLC発見ビーコンと同じではない。)パイロット信号は、送信機が存在する相の電力基本波のゼロ交差上で始まる。パイロット信号を検出する(任意のタイプの)他のリモートは、受信した信号が、受信側リモートが存在する相のゼロ交差で始まるかどうかを判定するために、テストを行う。ゼロ交差で始まる場合、受信側リモートは、PLCチャネル上で肯定的応答を送出し、パイロットトーンを送出したリモートハブのアイデンティティを記録する。パイロット送信機と同じ相上の別のリモートハブは、下位リモートモードに入り、予備とみなされる。他の相上の下位リモートは、パイロットトーンに応答しない。パイロットトーンを検出するが、異なる相上にあるリモートハブは、否定的な応答を送出する。送信側リモートハブは、応答を使用して、PLC発見プロセスによって自動的に発見されたTANデバイスのインベントリを更新し、ホームの相上で下位リモート及び予備のリスト、並びに、同じ柱上変圧器の他の相上のリモートハブのリストを記録する。否定的な応答も肯定的な応答も送出しなかったリモートハブは、別の柱上変圧器上にあると推定される。このような状況が存在する場合、PLC発見ビーコン用の「初期」電力レベル(振幅)の値は、完全な発見プロセスが次回実行されるように減少され、他の柱上変圧器上のいずれかのリモートが応答するという可能性が低いことになる。
【0081】
次に、パイロットトーンを送信した第1のリモートハブは、否定的なリスポンダ、すなわち、異なる相上のリモートハブのリストを調べる。第1のリモートハブは、1つのこのような第2のリモートハブを選択し、PLCプロトコルを介して、そのリモートハブにそれ自身のパイロットトーンを送信するように命じる。第1のリモートハブは、依然として柱上変圧器上の少なくとも全てのノードのマスタノードであり、結果として得られる肯定的応答及び否定的応答を収集し、そのインベントリ及び分割用データを更新する。この時点において、第2のリモートハブと同じ相上の任意の予備のリモートハブは、同様に、下位リモートモードに入っており、第1のリモートハブは、今や、相に従ってリモートハブの完全な分割を有し、存在する場合、第3の相上のリモートハブは、第1のリモートハブに否定的応答を送出するリモートハブと第2のリモートハブに否定的応答を送出するリモートハブとの共通部分である。
【0082】
第3の相が存在する場合、第1のリモートハブは、第3の相から第3のリモートハブを選択し、PLCプロトコルを介して、第3のリモートハブにパイロットトーンを送信し、受信した否定的及び肯定的応答を返すように命令する。この時点で、肯定的応答は、柱上変圧器上の全ての下位リモートから受信されていることになり、柱上変圧器上の全てのデバイスの相及びモードが分かっており、各単相TAN用の潜在的なマスタリモートハブが特定されている。更に、変圧器エリアの外部からオリジナルのPLC発見プロセスに応答したノードが特定されている。
【0083】
ここで、第1のリモートハブは、そのPLC送信振幅を非常に低いレベルに設定し、各リモートをポーリングする。この第1の振幅は、リモートが全く応答しないほど低くすべきである。第1のリモートハブは、理想的には、同じ相上の全てのリモートが応答し、別の相上のリモートが全く応答しなくなるまで、その送信振幅を増大させる。第1のリモートハブは、この低い閾値レベルを記録し、その後、別の相上のリモートが応答するまで振幅を増大させ続ける。第1のリモートハブは、これをその高閾値レベルとして記録する。
【0084】
ここで、第1のリモートハブは、その相についてPLCマスタノードの役割を引き受けることを試みるよう、PLCを介して第2のリモートハブに命令し、コマンド内で低閾値振幅及び高閾値振幅を送出する。これは、分割用コマンドと呼ばれる。第2のリモートハブは、PLC送信振幅を低閾値振幅に設定し、マスタノードとしてそのPLCスタックをリスタートし、それ自身のPLC発見プロセスを行う。第2のリモートハブが、それ自身の相上で全ての下位リモート及び予備を発見し、他の相上でノードを全く発見しない場合、単相TANのマスタになり、分割ステップが成功する。そうでない場合には、第2のリモートハブは、そのPLC送信振幅を増大させ、分割ステップが成功するまでプロセスを反復する。第2のリモートハブが、その相上で全てのリモートを発見することなく、高閾値振幅に達する場合、又は、任意の振幅において、低い振幅が同じ相上の全てのリモートを発見しないときに異なる相からのリモートが発見される場合、分割コマンドは失敗している。第2のリモートハブは、第1及び第2のリモートハブがもはやPLCを介して通信できないため、第1のリモートハブによって検出可能なステータスビーコンを送信するエッジ送信機を使用することによって、第1のリモートハブに分割コマンドの失敗を信号送信する。
【0085】
第1のリモートハブが第2のリモートハブから失敗ビーコンを全く検出せず、第3の相が存在する場合、第1のリモートハブは、分割コマンドを第3のリモートハブに送出し、第3のリモートハブは、説明したように分割ステップを実施する。
【0086】
第1のリモートハブが、失敗ビーコンを受信することなく、存在する他の相を分割した場合、第1のリモートハブが分割ステップ自体を実施する。第1のリモートハブの分割ステップが成功する場合には、柱上変圧器は、図12aに示すように、3つの単相TANに成功裡に分割される。本発明の別の実施形態において、第2及び第3のリモートハブは、失敗ビーコン及び成功ビーコンを使用してもよい。成功ビーコンの使用は、分割ステップを終了するために必要とされる時間を短縮することができる。
【0087】
ここで、3相柱上変圧器及びその変圧器が電力を供給するメータの略図である図12aを参照する。このサービスエリアは、3つのTAN1204、1205、及び1206、すなわち、柱上変圧器の各相につき1つのTANを含む。各TANは、リモートハブ1202及びゼロ個又は1つ以上の下位リモート1203を含む。任意の下位リモートが、実際には、予備リモートハブであってもよい。図12aは、本明細書で上述した発見及び分割アルゴリズムに従う、3相変圧器によって電力供給されるリモートの適切な分割を示す。
【0088】
発見及び分割アルゴリズムの先の説明から明らかであるように、一部の多相変圧器について、柱上変圧器上のリモートの単相TANへの問題のない分割をもたらすことになるPLC送信周波数のセットが存在しないという可能性がある。分割アルゴリズムがいずれかのステップにおいて失敗すると、第1のリモートハブは、柱上変圧器の全ての相上にある全てのリモートを含むが、その柱上変圧器上にないリモートを全く含まない多相TANを形成しようと試みる。ここで、多相TANを示す図12bを参照する。第1のリモートハブが柱上変圧器の任意の相上に全てのリモートのインベントリを既に有していること、及び、第1のリモートハブが、各相上のどのノードがリモートハブであるか更に知っていることを想起されたい。先に記録した「初期」PLC送信振幅に始まり、第1のリモートハブは、PLC発見プロセスを開始する。異なる柱上変圧器上にあるリモートが発見されると、第1のリモートハブは、PLC送信振幅を下げて、その振幅が「初期」振幅の古い値にとって代わり、発見プロセスをリスタートし、柱上変圧器上にあることが分かっている全てのリモートが、かつそれらのリモートのみが発見されるまで、そのプロセスを反復する。以前には決して検出されなかった新しいリモートが見つかると、上述したパイロットビーコン法が使用されて、新しいリモートの相、及び、新しいリモートが第1のリモートと同じ柱上変圧器上にあるかどうかを判定する。第1のリモートハブと同じ柱上変圧器上の全てのリモートを、かつそれらのリモートのみを発見する送信振幅を全く見出すことができない場合、第1のリモートハブは、エッジ・ツー・変電所チャネル上でディストレス警報(distress alert)を送信し、柱上変圧器上の一部のノードが応答しなくても、柱上変圧器の外部のノードを全く発見しない最大振幅でTANを編成する。
【0089】
グリッドマップに依存するグリッドロケーションアウェアネス及びエネルギー管理アプリケーションが有効であるために、プローブ送信が、柱上変圧器の各相から発せらなければならない。これを達成するために、第1のリモートハブ、図12bのマスタ1202は、第2(及び、存在する場合、第3)のリモートハブ1208に、第2(及び、存在する場合、第3)のリモートハブ1208をプロキシハブとして動作させるコマンドを送出する。プロキシハブは、そのマスタリモートハブからの、リモートハブがプロキシハブのエッジ送信機を制御することを可能にする特定のコマンドに応答することを除いて、TAN上で下位リモートのように振舞う。リモートハブ1202は、プロキシハブ1208によって通常実施されるであろうエッジ・ツー・変電所プロビジョニングポリシーを格納する。リモートハブ1202は、存在する全ての相上で、プロキシハブを含むリモートについて、下位リモートをポーリングすること、更新を配信すること、及び導出結果を計算すること等、全てのTAN管理アクティビティを実施する。プロキシハブがエッジ・ツー・変電所送信を送出する時間であるとき、第1のリモートハブ1202は、適切なメッセージをフォーマットし、それをTANを通じてプロキシハブに送出する。その後、プロキシハブは、エッジ・ツー・変電所チャネル上でメッセージを再送信する。こうして、エッジ・ツー・変電所送信は、TANマスタが異なる相上にあっても、正しい相上で常に送信される。
【0090】
先に開示した分割及び発見法は、PRIME等の規格ベースPLCプロトコルスタックを許容するように設計される。代替の短距離PLCプロトコルスタックの使用は、該方法に対して少し修正を必要とする場合がある。プロトコルスタックの下層に対するカスタマイズが許容可能である場合には、より簡単な方法を使用してもよい。
【0091】
本発明の幾つかの実施形態において、リモートハブではなく下位リモートが、TANマスタの役割を引き受けてもよい。このような実施形態において、リモートハブは、発見及び分割プロセス中を含め、常に、プロキシハブのように振舞う。プロキシハブは、TANマスタがそのエッジ送信機を制御して発見及び分割プロセス中にパイロット信号を送出することを可能にする機能を含まなければならない。これは、パイロット信号を送出する第2のリモートハブのエッジ送信機を第1のリモートハブが制御することを可能にすることと基本的に異ならない。同様に、任意の下位リモートは、その現在のTANマスタから、それ自身がTANマスタになるコマンドを受け入れることができなければならず、TAN内で指示されるローカルPLC周波数範囲内でTANを形成するように試みることができなければならない。TANマスタは、それ自身のビーコン信号を送信することができるが、その理由は、ローカルPLC送信機がその目的のために使用されるからである。機能のこの分割を使用することは、分割及び発見法に対する修正を必要とするため、第1、第2、及び第3のリモートハブに関してエッジ送信機関連機能を残しながら、TANマスタ関連機能は、第1の下位リモートに、また多相変圧器の場合、第2の及び場合により第3の下位リモートに割り当てられる。変圧器エリア内の唯一のリモートであるリモートハブは、そのローカル計器のみをサンプリングすることによって、エッジ・ツー・変電所送信に関するポリシーを実施する。リモートハブは、更に、下位リモートが、その後、変圧器エリア内にインストールされる場合に、TANに加わる勧誘があるかPLC周波数を監視し続けることになる。
【0092】
リモートハブのチャネル管理能力の別の態様は、リモートハブが、可変データを含まず、かつ、繰り返し送出することが可能な特定のメッセージを予変調し、格納してもよい。予め記録可能なメッセージの例には、プロビジョニング要求等のプロビジョニングチャネル上で送出されるメッセージ、及びサグ、過電圧等の状況に関する標準的な警報を含む。このストラテジは、リモートハブにおける演算能力を節約する。チップ、チャネル配置、ボーレート、FECレート、及び帯域幅の変更といったポリシー変更が起こると、予変調記録は、廃棄され、再計算される必要がある場合がある。これは、エッジ送信機のマイクロコントローラCPUがスケジュールされたメッセージを準備するのに忙しくないアイドル期間中に行われてもよい。これを許容するために、このようなポリシー変更は、前もって通知されて、即座に有効になるのとは対照的に、分かっている将来時刻に効力を生じるようにしてもよい。
【0093】
幾つかの実施形態において、リモートハブは、GLAスマートメータに統合されるのではなく、コンデンサバンク、逓降変圧器、電圧調整器、蓄電池、ローカル発電機、又はスイッチセット等の中電圧配電網の別のフィーチャと関連付けられていてもよい。リモートハブは、そのフィーチャと関連付けられたローカルの又は遠隔制御式のSCADAシステムと統合されてもよい。SCADAシステムは、このように使用されるリモートハブをプロビジョニングするためにエッジ・ツー・変電所チャネルを提供してもよく、あるいは、スマートメータ内のリモートハブに関連付けられたエッジ・ツー・変電所チャネルはまた、このようなフィーチャベースのリモートハブと通信するように動作可能であってもよい。このようなリモートハブは、あるバージョンの変電所受信機を組み込んでいてもよく、グリッドフィーチャを、グリッドフィーチャに対して電気的かつ図式的に下位の他のリモートハブに関連付ける対形成メッセージを送出するように動作可能であってもよい。リモートハブはまた、電気コンセントに差込まれる独立型デバイスとして実施されてもよい。変電所受信機の形態は更に、このような中電圧グリッドフィーチャ又は中電圧配電網上の任意の中間ポイントに関連付けられてもよい。このような中間受信機は、どの変圧器エリアネットワークが、関連する中電圧グリッドフィーチャによって影響を及ぼされるかに関する情報を収集してもよい。このような2次受信機とリモートハブとの組み合わせが使用されて、スイッチ又はリレー等の中間グリッドフィーチャを制御し、それにより、マイクログリッドを絶縁するか、複数の変電所上の負荷をバランスさせるか、又は、電圧調整器上の設定点を変更してもよい。
【0094】
本発明の更なる態様において、リモートハブは、線路測定を実施して、送信のためのローカルに最適な状況を決定してもよい。リモートハブは、注入された信号の振幅を変更する選択肢を常に有し、また、送信のプリアンブル及び/又はデータ担持セグメントの周波数帯域を変更する選択肢を更に有していてもよい。図13を参照すると、周波数スペクトルの図10aと同じ部分を示すが、異なるアノテーションが付されている。片括弧が付けられた周波数範囲1309は、エッジ・ツー・変電所送信に使用可能な周波数の全範囲に広がっている。範囲1304、1305、及び1306は、この周波数範囲1309がどのように3つの周波数下位範囲に分割されるかを示しており、3つの下位範囲は、ポリシーによって定義される3つのチャネルのそれぞれに対応する。各チャネル周波数範囲内において、実際のデータ送信(1301、1302、1303)は、通常、送信のチャネルに割り当てられた帯域の一部のみを使用してもよい。これとは対照的に、以下に説明する較正信号、及び上述したロケータパターンは、より広い周波数帯域に広がっていてもよい。更に、ロケータパターン及びメッセージプリアンブルが異なる場合、メッセージプリアンブルも、より広い周波数範囲に広がっていてもよい。より広い周波数帯域とは、チャネルに割り当てられた全範囲(例えば範囲1304)であってもよく、あるいは、場合によっては、全範囲1309であってもよい。
【0095】
測定を行うために、リモートハブは、純粋なトーンのシーケンス又は同時の組み合わせであり得る較正信号を送信する。これらのトーンは、実際のメッセージ送信とは独立していてもよく、あるいは、これらのトーンがメッセージプリアンブルに組み込まれていてもよい。プリアンブルの帯域幅が送信のデータ担持セグメントの帯域幅と異なり得ることを想起されたい。データ担持セグメントの周波数帯域を選択する機会が存在する場合、トーンは、利用可能なスペクトル範囲全体に及ばなければならない。較正信号の電流が測定され、データ送信に所望されるレベルを生じさせる駆動電圧を算出するために使用される。トーンが送信されると、要求される電圧において生成される電流が測定される。要求される電圧と生成される電流との関係は、各周波数において計算される。その結果は、各周波数について、リモートハブにおけるグリッドの線路インピーダンスに比例することになる。これは、どれだけの駆動電圧が、利用可能な周波数帯域内の各周波数で所望の電流を生成するために必要とされるか、また、所望の電流を達成するために最小の電圧を必要とする周波数範囲を選択するために、使用すべき周波数帯域の選択が存在するかどうか、の両方をリモートハブが推定することを可能にする。リモートハブは、その後、そのエッジ送信機構成を、選択された駆動電圧及び周波数範囲を反映するように調整する。これらの較正が生じる起点となる開始点は、基本駆動電圧及び基本周波数範囲である。図13を再度参照すると、矢印1307は、どのようにデータ送信周波数範囲がチャネル1の許可された周波数帯域内で調整されたかを示し、矢印1308は、駆動電圧を増大させることによって、どのようにチャネル3のデータ信号の振幅が増大されたかを示す。図13においては、調整1307後の調整されたチャネル1の帯域を示す波形のオフセットが、純粋に図面を読みやすくするためのものであり、信号の振幅における垂直方向の変位を示しているわけではないことに留意されたい。通常、有益な調整は、駆動電圧を低下させるのではなく、上昇させることを含むが、リモートハブは、エッジ送信機の仕様が配慮されるように、最大又は最小の許可された駆動電圧を有するように構成されてもよい。変電所・ツー・エッジチャネルが、利用可能であり、かつ、十分な容量を有する幾つかの実施形態においては、コンピューティングプラットフォームは、時々、受信されるメッセージに関するフィードバックを変電所受信機から送出してもよい。このフィードバックは、通常、上述したアーカイブされた履歴の指標を解析することによりなされる傾向解析に基づく。傾向解析は、線形回帰又はより高次の回帰を用いて、インパルスノイズの発生、季節に応じたガウスノイズレベルの変動、気温やその他の気象条件、時刻等、リモートハブが直接入手できない指標を、あるチャネル、個々のリモートハブ、もしくは配電グリッドのトポロジーに基づくリモートハブの集合体についてのメッセージ成功率と相関させることによりなされてもよい。フィードバックに基づいて、リモートハブに、図13において周波数帯域調整1307及び振幅/信号強度調整1308として示されるのと同じタイプの調整の一方又は両方を行わせてもよい。フィードバックは、上述した自己較正プロセスのために開始点として使用される基準値又はデフォルトを変更する等、リモートハブがその測定プロセスを改良し、較正することを可能にしてもよい。例えば、アーカイブデータは、どの基本駆動電圧又は目標電流レベルが受信機において所望の信号振幅を生じさせるかについてのリモートハブの推定を示してもよい。受信機における実際の信号振幅が良好な受信には低すぎる場合、フィードバックに基づいて、リモートハブにその基本駆動電圧を上昇させるようにしてもよい。同様に、アーカイブが、チャネルの利用可能な周波数帯域の上端値において送信されたメッセージが、下端値で送信されたメッセージよりもビットエラーレートが低い状態で受信された場合、リモートハブは、その基本周波数を再び真ん中に戻すように命令されてもよい。このフィードバックの結果は、メッセージ成功率を向上させるために、個々のリモートハブ及び/又はチャネル全体のスロット割当て及び/又は変調方法を変更することも含んでいてもよい。これには、チャネル全体及びそのチャネル上で送信する全リモートハブについて、ポリシーにより許可された周波数帯域を調整することも含み得る。同様に、また、例として、QPSK変調を用いているチャネル1が、周波数拡散変調を用いているチャネル3よりも良好な結果を生じることを履歴解析が示す場合、チャネル3のポリシーが、同様に、全てのリモートハブについてQPSKを用いるように変更されてもよい。更に、リモートハブは、上述したローカルな最適化技術に加えて、ローカルなハードウェア及びファームウェア診断プロセスを有していてもよい。あるリモートハブが、グリッドの同じ地理空間又は図式的セグメント上の他のリモートハブとは大きく異なるパフォーマンス履歴を有している場合、そのリモートハブは、診断を行い、自己で再較正するように命令されてもよい。このプロセスによって、そのリモートハブのパフォーマンスが近隣のリモートハブのパフォーマンスと整合しない場合、人間のエンジニアが当該サイトへ派遣されて調査し、線路の補修やリモートの交換を行ってもよい。
【0096】
本発明の先の説明は、例証及び説明のために提示されており、網羅的であることや、本発明を開示される厳密な形態に制限することを意図するものではない。明らかに、多くの改変及び変形が、先の教示を考慮して可能である。実施形態は、本発明の原理及びその実用的な応用を最もよく説明するように選択され、記載されており、それにより、種々の実施形態において、また、企図される特定の用途に適した種々の改変によって、当業者が本発明を最も良好に利用することを可能にする。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されることが意図される。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
図10e
図11
図12a
図12b
図13