特許第6301982号(P6301982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6301982
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】帯鋸刃交換装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 59/00 20060101AFI20180319BHJP
   B23D 53/00 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   B23D59/00
   B23D53/00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-26057(P2016-26057)
(22)【出願日】2016年2月15日
(65)【公開番号】特開2017-144496(P2017-144496A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2017年7月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302042612
【氏名又は名称】浅見工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122552
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 浩二郎
(72)【発明者】
【氏名】猪平 大典
【審査官】 青山 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−262429(JP,A)
【文献】 特開2005−088129(JP,A)
【文献】 特開平03−170221(JP,A)
【文献】 実開平05−005787(JP,U)
【文献】 特開2008−155322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 45/00 − 65/04
B27B 13/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン手段が連結する連結手段を上端側に有し枠体を下端側に有したハンガー部と、前記枠体の左右両端側の部分で左右両端側中央部分を長径方向中心線を回転軸として回転可能に軸支されながら帯鋸刃を保持する帯鋸刃保持板とを備えており、前記クレーン手段で吊り下げた状態で三次元的に移動操作されながら帯鋸盤の上部に露出している駆動ホイールと従動ホイールに架設した帯鋸刃の交換作業を行う帯鋸刃交換装置であって、
前記帯鋸刃保持板は、その表裏の面に沿って横長のオーバル状をなすように前記帯鋸刃を保持する操作とそれを離脱する操作が可能な状態で横長に構成された保持手段を表裏両面側に備え、且つ、前記枠体の軸支箇所に付設したモータにより180度毎の回転操作が可能とされており、帯鋸刃を保持していない面側を前記帯鋸盤の駆動ホイールと従動ホイールに正面から近接させ古い帯鋸刃を前記保持手段に移動させて保持する操作と、古い帯鋸刃を保持した前記帯鋸刃保持板を180度回転させて新しい帯鋸刃を保持している面側を前記駆動ホイールと前記従動ホイールに正面から近接させ新しい帯鋸刃を前記保持手段から離脱して装着する操作の両方を、連続的に実施可能とされていることを特徴とする帯鋸刃交換装置。
【請求項2】
前記帯鋸刃保持板の両保持手段は、前記帯鋸刃保持板の表裏両面の外縁側所定位置に配設された複数個の電磁石を各々備えており、前記各電磁石の内周面側で帯鋸刃の外周面所定箇所を磁気吸着しながらオーバル状にして保持するものとされ、前記電磁石の励磁と消磁の操作が遠隔的に行えるとともに表裏別個の操作が可能とされており、且つ、前記電磁石のうち長手方向両端側の電磁石は、これらによる長手方向の内周側の空間の幅を前記駆動ホイールと従動ホイールによる装着時の幅よりも大きくなるように配置されているとともに前記電磁石のいずれか又は両方が内周側に所定幅の範囲で摺動操作可能とされている、ことを特徴とする請求項1に記載した帯鋸刃交換装置。
【請求項3】
前記ハンガー部の帯鋸盤に対向する側の所定位置には、帯鋸盤に対する位置合わせを行うための位置合わせポールが位置合わせ時の帯鋸盤側に突出しており、前記位置合わせポールの配置に対応した位置で前記帯鋸盤に設けられて入口側が漏斗状で奥側を筒状にしてなるガイド体に対して前記位置合わせポールを先端側から挿入しながら位置合わせを行うものとされ、且つ、前記位置合わせポールの先端にはCCDカメラが設けられて操作者が前記CCDカメラによる画像を確認しながら位置合わせ作業を実施可能とされている、ことを特徴とした請求項1又は2に記載した帯鋸刃交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯鋸盤の帯鋸刃交換装置に関し、殊に、放射性物質で汚染されたワークの切断作業や放射線被曝の畏れがある等の人体に危険が及ぶような状況で切断作業を行う帯鋸盤において、帯鋸刃を遠隔的かつ安全に交換するための帯鋸刃交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動ホイールと従動ホイールに環状の帯鋸刃を架設して駆動ホイールを回転駆動させることでエンドレスに走行する帯鋸刃によりワークの切断作業を行う帯鋸盤が周知であるが、その高い切断力と切断スピードにより通常の工具では切断が困難な硬質のワークやサイズの大きなワークの切断に多用されており、作業の効率化を実現している。
【0003】
しかし、摩耗した帯鋸刃の交換を行う場合は、駆動ホイールと従動ホイールに架設してある古い帯鋸刃を作業者が取り外して新しい帯鋸刃に交換するのが一般的であるところ、その交換作業には多大な手間を要するとともに危険を伴いやすかった。また、例えば放射性物質で汚染されたワークの切断や放射線被曝の畏れのある作業環境において、人手による帯鋸刃の交換は作業者の安全確保の観点から回避すべきとされている。
【0004】
これに対し、特開平4−105817号公報には、帯鋸刃を複数箇所にて各々着脱可能に支持するクランプ手段を備えたハンドリング部を有するハンドリングホルダと、そのハンドリング部によりハンドリングホルダと鋸刃ハウジングの2つのホイールとの間にて帯鋸刃の授受が行われるべく鋸刃ハウジングに近接した鋸刃交換位置と、これより離れた鋸刃充填回収位置との間にハンドリングホルダを移動させるハンドリングアームとを備えた帯鋸刃交換装置が提案されており、人手を介することなく自動的に帯鋸刃の交換を行えるものとしている。
【0005】
また、特開平6−262429号公報には、2つのホイールを内装したカッティングヘッドの上部フレームに固定鋸刃保持輪とこれに対し近接離反可能な移動鋸刃保持輪を設けた板状体を有して帯鋸刃をストック可能なツールストッカを有しており、その板状体が回転可能とされながらその両面に帯鋸刃を保持可能としたことにより、一方の面側で古い帯鋸刃を回収し他方の面側で新しい帯鋸刃を供給可能とした帯鋸刃交換装置が提案されており、板状体の両面をストッカとして使用可能としたことにより、前述した帯鋸刃交換装置よりもコンパクトなものとしている。
【0006】
しかしながら、近年においては放射線治療施設や原子力発電所等において放射性物質で汚染又は放射能を賦与された設備・機器を廃棄するために、それらを所定の廃棄容器に収納可能なサイズまで切断することのニーズが増大している。この場合、その切断作業のためのスペースが通常よりも限定されることに加え、作業により汚染される帯鋸盤と帯鋸刃交換装置も最終的には安全に廃棄する必要が生じることになる。
【0007】
そのため、このような状況において切断作業を実施する装置については、前述したものよりも一層コンパクトなサイズに抑えることが求められていることから、少ない部品点数による簡易なものであっても、切断作業を安全且つ確実に継続できるような帯鋸盤及び帯鋸刃交換装置の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−105817号公報
【特許文献2】特開平6−262429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、帯鋸刃交換装置について、少ない部品点数による簡易な構成であっても帯鋸刃の遠隔的な交換を可能として、帯鋸盤の切断作業を安全且つ確実に継続出来るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、クレーン手段が連結する連結手段を上端側に有し枠体を下端側に有したハンガー部と、前記枠体の左右両端側の部分で左右両端側中央部分を長径方向中心線を回転軸として回転可能に軸支されながら帯鋸刃を保持する帯鋸刃保持板とを備えており、クレーン手段で吊り下げた状態で三次元的に移動操作されながら帯鋸盤の上部に露出している駆動ホイールと従動ホイールに架設した帯鋸刃の交換作業を行う帯鋸刃交換装置であって、前記帯鋸刃保持板は、その表裏の面に沿って横長のオーバル状をなすように帯鋸刃を保持する操作とそれを離脱する操作が可能な状態で横長に構成された保持手段を表裏両面側に備え、且つ、前記枠体の軸支箇所に付設したモータにより180度毎の回転操作が可能とされており、帯鋸刃を保持していない面側を帯鋸盤の駆動ホイールと従動ホイールに正面から近接させ古い帯鋸刃を保持手段に移動させて保持する操作と、古い帯鋸刃を保持した帯鋸刃保持板を180度回転させて新しい帯鋸刃を保持している面側を駆動ホイールと従動ホイールに正面から近接させ新しい帯鋸刃を保持手段から離脱して装着する操作の両方を、連続的に実施可能とされていることを特徴とするものとした。
【0011】
このように、帯鋸刃交換装置を帯鋸盤とは別体のものとしながらクレーン手段で帯鋸刃交換装置の移動操作を行う方式としたことで、ハンドリングアームの様な帯鋸刃移動手段を省略して簡易な構成を実現することができ、これに加え、一枚の帯鋸刃保持板の表裏両面に帯鋸刃を保持可能な保持手段を設けて回転操作可能としたことにより、空いている保持手段で帯鋸盤の古い帯鋸刃を受け取り、そのまま180度回転して他方の保持手段から新しい帯鋸刃を帯鋸盤に装着することが可能になるため、最小限の部品点数による簡易な構成であっても容易に交換作業を完了可能として、帯鋸盤の切断作業を安全且つ確実に継続できるものとなる。
【0012】
また、この帯鋸刃交換装置において、その帯鋸刃保持板の両保持手段は、帯鋸刃保持板の表裏両面の外縁側所定位置に配設された複数個の電磁石を各々備えており、各電磁石の内周面側で帯鋸刃の外周面所定箇所を磁気吸着しながらオーバル状にして保持するものとされ、その電磁石の励磁と消磁の操作が遠隔的に行えるとともに表裏別個の操作が可能とされている、ことを特徴としたものとすれば、帯鋸刃の保持ホイールのような大きな部品や帯鋸刃を受け渡すチェンジャのような複雑な部品を要することなく、帯鋸刃の保持・離脱・受け渡しが容易に行えるものとなり、これに加え、その電磁石のうち長手方向両端側の電磁石が、これらによる長手方向の内周側の空間の幅を駆動ホイールと従動ホイールによる装着時の幅よりも大きくなるように配置されているとともに、これらの電磁石のいずれか又は両方が内周側に所定幅の範囲で摺動操作可能とされている、ことを特徴としたものとすれば、帯鋸刃を架設した駆動ホイールと従動ホイールの両方をそのまま内側空間に納めることができることに加え、従動ホイールを駆動ホイール側に寄せて横幅が縮小した着脱時の状態にも容易に対応可能としてスムースに交換作業を実施できるものとなる。
【0013】
さらに、上述した帯鋸刃交換装置において、そのハンガー部の帯鋸盤に対向する側の所定位置に、帯鋸盤に対する位置合わせを行うための位置合わせポールが位置合わせ時の帯鋸盤側に突出しており、この位置合わせポールの配置に対応した位置で帯鋸盤に設けられて入口側が漏斗状で奥側を筒状にしてなるガイド体に対してその位置合わせポールを先端側から挿入しながら位置合わせを行うものとされ、且つ、その位置合わせポールの先端にはCCDカメラが設けられて操作者がCCDカメラによる画像を確認しながら位置合わせ作業を実施可能とされていることを特徴としたものとすれば、帯鋸刃交換装置の位置合わせ作業を容易に行えるものとなる。
【発明の効果】
【0014】
帯鋸盤とは別体のものとしながらクレーン手段で帯鋸刃交換装置の移動操作を行うとともに帯鋸刃保持板の表裏両面に帯鋸刃を保持可能な保持手段を設けて回転操作可能とした本発明によると、少ない部品点数による簡易な構成であっても帯鋸刃の遠隔的な交換が可能となって、帯鋸盤の切断作業を安全且つ確実に継続出来るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態である帯鋸刃交換装置の正面図である。
図2】(A)は図1の帯鋸刃交換装置の斜視図、(B)は(A)の状態から帯鋸刃保持板を180度回転させた状態を示す斜視図である。
図3図1の帯鋸刃交換装置を用いて帯鋸盤の帯鋸刃を交換する手順を説明するために帯鋸刃交換装置を位置合わせする状態を示す斜視図である。
図4図3の状態から帯鋸刃交換装置を帯鋸盤に近接させて古い帯鋸刃を移動させる状態を示す斜視図である。
図5図4の状態から帯鋸刃交換装置を帯鋸盤から引き離して古い帯鋸刃を取り外した状態を示す斜視図である。
図6図5の状態から帯鋸刃保持板を180度回転させた状態を示す斜視図である。
図7図6の状態から帯鋸刃交換装置を帯鋸盤に近接させて新しい帯鋸刃を装着する状態を示す斜視図である。
図8図7の状態から帯鋸刃交換装置を帯鋸盤から引き離して帯鋸刃の交換作業を完了した状態を示す斜視図である。
図9図1の帯鋸刃交換装置の応用例を示す斜視図である。
図10図1の帯鋸刃交換装置の他の応用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。尚、本発明において、オーバルには長円形(角丸長方形)・楕円形・卵形が含まれるものとする。
【0017】
図1は、本実施の形態である帯鋸刃交換装置1Aの正面図を示している。この帯鋸刃交換装置1Aは、放射線治療施設や原子力発電所等において放射性物質で汚染又は放射能を賦与された設備・器具を廃棄するために、それらを所定の廃棄容器等に収納可能なサイズまで切断する帯鋸盤において、その帯鋸刃を遠隔的に交換することを想定した装置であり、図示しないクレーン手段で吊り下げられて三次元的に移動操作されながら、図示しない帯鋸盤の上部に露出している駆動ホイールと従動ホイールに架設した帯鋸刃の交換装置を行うようになっている。
【0018】
斯かる帯鋸刃交換装置1Aは、その上部側を構成するハンガー部3と下部側を構成するストック部2からなり、そのハンガー部3は、管状部材を山形に屈曲したアーム体3aとその頂上部に配設された掛リング40a,40b,40c(図中表れない),40dとアーム体3a下端側に配設された枠体3bとで構成され、そのストック部2は、枠体3b内周側に軸支され表裏両面に保持手段を備えた横長の帯鋸刃保持板20と、これを回転駆動させるモータ5とで構成されている。
【0019】
ハンガー部3の掛リング40a,40b,40c,40dは、クレーン手段が連結する連結手段を構成するものであるが、平面視十字形をなす管状部材に等間隔で設けられて平面視正方形の配置とされており、4本のワイヤで吊り下げた場合に帯鋸刃交換装置1Aが揺動しにくいようになっている。また、アーム体3aの掛リング40a,40bの略中間位置からはアーム体3a中を通った配線45が上方に突出して露出しており、図示しない操作手段等に接続するようになっている。
【0020】
ストック部2の帯鋸刃保持板20は、その表裏の面に沿って横長のオーバル状をなすように図示しない帯鋸刃を保持する操作とそれを離脱する操作を可能とする横長の保持手段を表裏両面側に備えている。即ち、その保持手段は、複数個の電磁石21,22,23が帯鋸刃保持板20の表裏両面の外縁側所定位置に配置されてなるもので、各々の内周面側で強磁性体製の帯鋸刃の外周面所定箇所を磁気吸着しながらオーバル状にして保持するものとされ、その消磁と励磁の操作が遠隔的且つ表裏別個に行えるようになっている点を特徴としている。
【0021】
また、この帯鋸刃保持板20の左右両端側中央部分は、ハンガー部3の下向きC字状の枠体3b両端側で軸51,52を介してその長径方向中心線を回転軸として回転可能に軸支されているとともに、図2(B)に示すようにその軸支箇所に付設したモータ5により180度の回転操作ができるようになっている。尚、このモータ5としては、電動のサーボモータのほか、水中で使用する場合等を考慮して油圧モータを使用しても良い。
【0022】
さらに、この帯鋸刃保持板20における電磁石21,22,23の配置は、その磁気吸着により帯鋸刃をオーバル状に保持した状態における帯鋸刃の短径が、帯鋸刃の駆動ホイール及び従動ホイールに架設された状態の短径よりも僅かに大きく、その長径が前記架設された状態の長径よりも僅かに小さくなるようにしてあり、帯鋸盤の帯鋸刃着脱時に、従動ホイールを駆動ホイール側に移動した状態で、総ての電磁石により形成された略オーバル状の内周側空間の内側にその両ホイールが収まるものとされており、電磁石の励磁・消磁操作及び従動ホイールの移動操作を行うだけで、帯鋸刃の着脱作業が容易に行えるようになっている。
【0023】
次に、図3乃至図8を参照しながら、本実施の形態の帯鋸刃交換装置1Aの使用手順を説明する。この帯鋸刃交換装置1Aを用いて帯鋸刃の交換を行う対象である帯鋸盤7は、図3に示すように、基台70の上方で支柱3により上下方向に摺動可能に支持されたカッティングヘッド71の正面側に配設された駆動ホイール71aと従動ホイール71bに帯鋸刃100Aを架設してなるものであり、その駆動ホイール71aと従動ホイール71bが正面側に露出している比較的簡易な構成でコンパクトなものを主に想定している。尚、この帯鋸盤7には切断位置で帯鋸刃の刃先を下側に向けて支持する刃先ひねり機構が配設されているが、帯鋸刃の交換作業時にこれが邪魔にならない位置に退避するようになっている。
【0024】
そして、その帯鋸盤7の摩耗した帯鋸刃100Aを交換する場合は、図示しないクレーン手段で帯鋸刃交換装置1Aを吊り下げた状態にて、帯鋸刃保持板20の帯鋸刃Bを保持していない面側を向けながら帯鋸盤7の駆動ホイール71aと従動ホイール71bの正面に位置するように移動させ、その帯鋸刃保持板20の高さ及びその左右両端側を、駆動ホイール71aと従動ホイール71bに架設された帯鋸刃100Aに対して位置合わせを行ってから、これに近接するように移動させる。
【0025】
図4は、その帯鋸刃保持板20が駆動ホイール71aと従動ホイール71bに近接した状態であるが、図示しない帯鋸刃保持板20裏面の外周側に配置した複数個の電磁石21,22,23による内周側空間の短径が、駆動ホイール71aの直径よりも僅かに大きいため、前記内周側空間の左側部分でそれを収めながら帯鋸刃保持板20の裏面を駆動ホイール71aの前面に略密着した状態となっている。
【0026】
一方、前記内周側空間の長径は、駆動ホイール71aと従動ホイール71bの外周による長径よりも僅かに短いことから、図示しない電磁石21が従動ホイール71b前面側に当接することで前記内周側空間の右側部分には従動ホイール71bが収まらない。そこで、従動ホイール71bを駆動ホイール71a側に移動させ帯鋸刃着脱時の状態にすることで、従動ホイール71bは前記内周側空間に収まることになり、総ての電磁石21,22,23に通電して励磁させることにより、帯鋸刃100Aの外周面側はこれに吸着・保持されて駆動ホイール71a、従動ホイール71bから離脱する。
【0027】
次に、図5に示すように、古い帯鋸刃100Aを保持した帯鋸刃交換装置1Aを帯鋸盤7から所定距離だけ引き離し、図6に示すようにモータ5を駆動させて帯鋸刃保持板20を180度回転させることにより、新しい帯鋸刃100Bを保持している面側を帯鋸盤7の駆動ホイール71aと従動ホイール71bに向ける。
【0028】
そして、図7に示すように、保持している新しい帯鋸刃100Bの内周側空間に空の従動ホイール71bと駆動ホイール71aが収まるように密着させ、従動ホイール71bを駆動ホイール71aから離間操作することで、帯鋸刃100Bの内周面がこれに密着する。この状態で総ての電磁石21,22,23を消磁することで、帯鋸刃100Bは保持状態を解消されて従動ホイール71bを駆動ホイール71aへの架設が完了し、図8に示すように帯鋸刃交換装置1Aを帯鋸盤7から引き離すことにより帯鋸刃100Aの交換作業が完了する。
【0029】
このように、本実施の形態において帯鋸刃交換装置1Aを帯鋸盤7とは別体のものとしながら、既設のクレーン手段でその移動操作を行う方式を採用したことにより、帯鋸盤に帯鋸刃交換装置を一体的に付設した従来例と比べて、少ない部品点数による簡易な構成としながら、安全且つ確実な帯鋸刃の交換作業を実現可能なものとしている。
【0030】
また、一枚の帯鋸刃保持板20の表裏両面に電磁石21,22,23による帯鋸刃100A,100Bの保持手段を設けるとともに、その回転操作を可能なものとしたことで、空いている保持手段で帯鋸盤7の古い帯鋸刃100Aを受け取って180度回転させ、他方の保持手段から新しい帯鋸刃100Bを帯鋸盤7に装着する、という連続的な作業が可能になったことから、上述のような最小限の部品点数による極めて簡易な構成からなる装置であっても、帯鋸刃100A,100Bの交換作業を短時間で完了可能としており、帯鋸盤7による切断作業を安全且つ確実に継続可能なものとしている。
【0031】
図9は、上述した帯鋸刃交換装置1Aの応用例としての帯鋸刃交換装置1Bを示している。この帯鋸刃交換装置1Bは、ハンガー部3Bの一部に帯鋸盤7Bに対する位置合わせを行うための位置合わせポール32a,32bを後方に突出させた点を特徴としている。また、これを適用する帯鋸盤7Bにおいては、前記位置合わせポール32a,32bの配設位置に対応した位置に、入口側が漏斗状で奥側を筒状にしてなるガイド体72a,72bを配設しており、帯鋸刃交換装置1Bの位置合わせ作業を容易に行えるものとしている。尚、その位置合わせポール32a,32bの先端又は付近にCCDカメラを設け、操作者がその画像を確認しながら位置合わせ作業を行えるようにしてもよい。
【0032】
図10は、上述した帯鋸刃交換装置1A,1Bに共通して適用可能な応用例としての帯鋸刃交換装置1Cを示している。この例では、駆動ホイール71aと従動ホイール71b(着脱位置)の中央位置に磁気吸着する電磁石26,26を表裏両面に各々付設してなる帯鋸刃保持板20とした点を特徴としている。
【0033】
これにより、帯鋸刃交換装置1Cの帯鋸盤7Cに対する正確な位置合わせが一層容易なものとなり、且つ、その磁力により位置合わせした状態を維持しやすいものとなる。尚、適用対象である帯鋸盤7Cの駆動ホイール71aと従動ホイール71bにおいても、その中央位置に磁気吸着可能な強磁性体製の吸着体76,76を配設しながらその周囲は磁気吸着しにくい素材とすることが好ましい。
【0034】
尚、上述した総ての実施の形態・応用例に共通して、その帯鋸刃保持板の長手方向両端側の電磁石21,21の配置を、それらによる長手方向の内周側空間の幅を駆動ホイール71aと従動ホイール71bによる装着時の外周側の幅よりも僅かに大きくなるように配置するとともに、その電磁石21,21のいずれか又は両方を内周側に所定幅の範囲で摺動操作なものとすれば、帯鋸刃100Aを架設した状態の駆動ホイール71aと従動ホイール71bの両方をそのままその内周側空間に納めることができ、且つ、従動ホイール71bを駆動ホイール71a側に寄せて横幅が縮小した着脱時の状態にも容易に対応可能としてスムースに交換作業を実施できるものとなる。
【0035】
以上、述べたように、帯鋸刃交換装置について、本発明により少ない部品点数による簡易な構成であっても帯鋸刃の遠隔的な交換を可能なものとして、帯鋸盤の切断作業を安全且つ確実に継続出来るようになった。
【符号の説明】
【0036】
1A,1B,1C 帯鋸刃交換装置、2 ストック部、3,3B,3C ハンガー部、5 モータ、7,7B,7C 帯鋸盤、20 帯鋸刃保持板、21,22,23,26 電磁石、40a,40b,40c,40d 掛リング、71a 駆動ホイール、71b 従動ホイール、100A,100B 帯鋸刃
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10