【文献】
東 秀賢,外2名,映像解析技術を用いた手洗い検査システムの開発,第8回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム (第14回日本データベース学会年次大会),日本,電子情報通信学会データ工学研究専門委員会 日本データベース学会 情報処理学会データベースシステム研究会,2016年,DEIM Forum 2016 E4−2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クリーンルーム入室者である被検者が、入室前に検査室においてローラー掛けを適切に行ったか否かを画像処理によって判定することにより、クリーンルーム入室者の清浄度を管理するための方法であって、
前記検査室において撮影された被検者を含む取得画像と背景画像とを比較することによる背景差分によって、前記被検者の人物領域と前記被検者が手にするローラーの領域とを抽出することと、
前記人物領域の各部位に対する前記ローラーの動きをオプティカルフローによって取得して解析し、ローラーの動きが所定の範囲のものであるか否かにより、ローラー掛けが適切に行われたか否かを判定することと、
を含むことを特徴とするクリーンルーム入室者の清浄度管理方法。
クリーンルーム入室者である被検者が、入室前に検査室においてローラー掛けを適切に行ったか否かを画像処理によって判定することにより、クリーンルーム入室者の清浄度を管理するための方法であって、
前記検査室においてローラーを所持する被検者を撮影して当該被検者を含む画像を取得するための監視カメラの位置設定を行う初期設定ステップと、
前記監視カメラによる取得画像から被検者を特定する被検者特定ステップと、
前記被検者にローラー掛けを開始させるローラー掛け開始ステップと、
前記取得画像と背景画像との比較から前記被検者の人物領域を抽出する人物領域抽出ステップと、
前記取得画像からローラー領域を抽出するローラー領域抽出ステップと、
抽出された前記人物領域から、身体の部位を抽出する部位抽出ステップと、
抽出された前記人物領域の部位ごとに前記ローラーのオプティカルフローを抽出するオプティカルフローの抽出ステップと、
抽出された前記オプティカルフローから、前記部位ごとに擦り状態の良否を判定する擦り判定ステップと、
を含むことを特徴とするクリーンルーム入室者の清浄度管理方法。
クリーンルーム入室者である被検者が、入室前に検査室においてローラー掛けを適切に行ったか否かを画像処理によって判定することにより、クリーンルーム入室者の清浄度を管理するためのシステムであって、
前記検査室においてローラーを所持する被検者を撮影するための撮影手段と、前記撮影手段によって撮影された前記被検者の人物画像から当該被検者を特定すると共に、前記人物画像を解析して、身体の部位ごとに前記ローラーによる擦り状態の良否を判定する解析装置と、前記解析装置による解析結果をアバター表示するモニタとから成り、
前記解析装置は、前記撮影手段によって撮影された前記被検者の人物画像を取り込む画像取得手段と、前記人物画像から被検者を特定する被検者特定手段と、前記人物画像から前記被検者の人物領域及び前記ローラーのローラー領域とを抽出する人物・ローラー領域抽出手段と、抽出された前記人物領域から身体部位を抽出する身体部位抽出手段と、前記人物領域における前記ローラーのオプティカルフローを前記部位ごとに抽出するオプティカルフロー抽出手段と、抽出された前記オプティカルフローからローラー掛けの良否を判定する擦り判定手段と、前記擦り判定手段による判定結果を前記モニタにアバタ表示させる表示手段とから成ることを特徴とするクリーンルーム入室者の清浄度管理システム。
【背景技術】
【0002】
特に近年、食の安全並びに品質向上の要請が高まるに伴い、作業現場におけるクリーン化の意識も高まってきている。そこで、食品工場、薬品工場、精密機器取り扱い工場等の施設に従事する者は、身体に付着しているおそれのある繊維、毛髪、動植物組織等の異物や塵埃が作業室内に入り込まないようにするために、作業室内に入る前にその身体に対する清浄化処理を行わなければならないものとされている。その清浄化処理は、例えば、ローラー掛け、手洗い、粘着マット上の歩行、エアシャワーの通過の各処理をこの順に行うといったものである。
【0003】
作業者にこれらの清浄化処理を適正に行わせるためにマニュアルが用意され、また、そのための教育がなされる。しかし、そのマニュアル等に基づいて適正に清浄化処理が実行されたか否かは、結局は各作業者自身が判断することになるため、慣れや手抜き等によって、適正な清浄化処理が実行されない場合も起こり得る。
【0004】
このような場合を考慮して、医師や看護婦等の医療従事者に手指衛生行動を実行させるための、手指衛生励行システムが提案されている(特許第5097965号公報)。このシステムは、被検者に装着されて当該被検者の体の動きを検出する動き検出手段、 前記動き検出手段の検出結果に基づいて前記被検者の行動を認識して行動情報を作成する行動認識手段、前記行動認識手段によって作成した行動情報に基づいて前記被検者による手指衛生行動の動作回数および動作量の少なくとも1つを含む実行状態を評価する評価手段、及び、前記評価手段の評価結果に関連して前記被検者にアドバイスを行うアドバイス手段を備えることを特徴とするものである。
【0005】
しかし、このシステムの場合は、各医療従事者に体の動きを検出する動き検出手段を装着して、その体の動きを検出し、その検出結果を評価して所定の手指衛生行動が実行されたか否かを判定するものであって、動き検出手段を従事者ごとに用意しなければならないためにコストがかかり、また、各従事者がその都度動き検出手段を装着しなければならない煩わしさがあり、更に、動き検出手段の非装着者に対しては適用できないという問題がある。
【0006】
また、特表2012−502343号公報において、個人の衛生習慣を監視するための方法及びシステムが開示されているが、このシステムの場合も、当該システム使用者に、複数の個人衛生事象を検出するための個人衛生モニタを装着する必要があるので、上記の場合と同様の問題が生ずる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来提案されている手指衛生励行システムや個人衛生習慣監視システムの場合は、利用者ごとに動き検出センサや個人衛生モニタ等を用意して装着させなければならないため、コストがかかるだけでなく、その都度それらのセンサ等を着脱しなければならない煩わしさがあり、また、それらのセンサ等の非装着者に対しては適用できないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような上記従来システムにおける問題を解決するためになされたもので、比較的シンプルな構成で低コストにて導入でき、被検査者は、何らの機器類も身体に装着する必要がなく、単に、検査室において所定のローラー掛けを行うだけで清浄度の検査を行うことができる、クリーンルーム入室者の清浄度管理方法及び管理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、クリーンルーム入室者である被検者が、入室前に検査室においてローラー掛けを適切に行ったか否かを画像処理によって判定することにより、クリーンルーム入室者の清浄度を管理するための方法であって、
前記検査室において撮影された被検者を含む取得画像と背景画像とを比較することによる背景差分によって、前記被検者の人物領域と前記被検者が手にするローラーの領域とを抽出することと、
前記人物領域の各身体部位に対する前記ローラーの相対的動きをオプティカルフローによって取得して解析し、ローラーの動きが所定の範囲のものであるか否かにより、ローラー掛けが適切に行われたか否かを判定することと、
を含むことを特徴とするクリーンルーム入室者の清浄度管理方法である。
【0011】
好ましい実施形態においては、更に、前記ローラー掛けの判定結果を反映したアバター表示を行うことを含む。
【0012】
上記課題を解決するための請求項3に係る発明は、クリーンルーム入室者である被検者が、入室前に検査室においてローラー掛けを適切に行ったか否かを画像処理によって判定することにより、クリーンルーム入室者の清浄度を管理するための方法であって、
前記検査室においてローラーを所持する被検者を撮影して当該被検者を含む画像を取得するための監視カメラの位置設定を行う初期設定ステップと、
前記監視カメラによる取得画像から被検者を特定する被検者特定ステップと、
前記被検者にローラー掛けを開始させるローラー掛け開始ステップと、
前記取得画像と背景画像との比較から前記被検者の人物領域を抽出する人物領域抽出ステップと、
前記取得画像からローラー領域を抽出するローラー領域抽出ステップと、
抽出された前記人物領域から、身体の部位を抽出する部位抽出ステップと、
抽出された前記人物領域の部位ごとに前記ローラーのオプティカルフローを抽出するオプティカルフローの抽出ステップと、
抽出された前記オプティカルフローから、前記身体部位ごとに擦り状態の良否を判定する擦り判定ステップと、
を含むことを特徴とするクリーンルーム入室者の清浄度管理方法である。
【0013】
好ましい実施形態においては、更に、前記擦り状態の判定結果を反映したアバター表示を行うアバター表示ステップを含む。
【0014】
上記課題を解決するための請求項5に係る発明は、クリーンルーム入室者である被検者が、入室前に検査室においてローラー掛けを適切に行ったか否かを画像処理によって判定することにより、クリーンルーム入室者の清浄度を管理するためのシステムであって、
前記検査室においてローラーを所持する被検者を撮影するための撮影手段と、前記撮影手段によって撮影された前記被検者の人物画像から当該被検者を特定すると共に、前記人物画像を解析して、身体の部位ごとに前記ローラーによる擦り状態の良否を判定する解析装置と、前記解析装置による解析結果をアバター表示するモニタとから成り、
前記解析装置は、前記撮影手段によって撮影された前記被検者の人物画像を取り込む画像取得手段と、前記人物画像から被検者を特定する被検者特定手段と、前記人物画像から前記被検者の人物領域及び前記ローラーのローラー領域とを抽出する人物・ローラー領域抽出手段と、抽出された前記人物領域から身体部位を抽出する身体部位抽出手段と、前記人物領域における前記ローラーのオプティカルフローを前記部位ごとに抽出するオプティカルフロー抽出手段と、抽出された前記オプティカルフローからローラー掛けの良否を判定する擦り判定手段と、前記擦り判定手段による判定結果を前記モニタにアバター表示させる表示手段とから成ることを特徴とするクリーンルーム入室者の清浄度管理システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るクリーンルーム入室者の清浄度管理方法及びシステムは、上記のとおり、被検者の人物領域とローラー領域とを抽出し、人物領域の各身体部位に対するローラーの動きをオプティカルフローによって取得して解析することにより、ローラー掛けが適切に行われたか否かを判定するものであって、クリーンルーム入室者である被検者が、入室前に検査室においてローラー掛けを適切に行ったか否かを自動的に適切に判定することができ、以て、クリーンルーム入室者の清浄度を有効且つ確実に管理することができる効果がある。
【0016】
また、本発明に係るクリーンルーム入室者の清浄度管理方法及びシステムは、比較的シンプルな構成で低コストにて導入でき、被検者は、何らの機器類も身体に装着する必要がなく、単に、所定のローラー掛けを行うだけで検査を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するため形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本発明に係るクリーンルーム入室者の清浄度管理方法及びシステムは、食品工場、薬品工場、精密機器取り扱い工場等に設置されるクリーンルームに作業員が立ち入る際に、作業着に付着している塵埃除去のためのローラー掛けを正しく実行したか否かを監視するための方法並びにシステムである。本発明において言うローラー掛けは、粘着テープを巻装した回転ローラーを用い、作業着の上から身体に当接させて転動させることにより、身体に付着している繊維、塵埃、髪の毛等を粘着除去する作業であり、頭部から足先まで、身体全体に対して行う。このローラー掛けは、例えば、頭部、両腕、胸腹、背、両脚の順に行う。
【0019】
本発明に係るクリーンルーム入室者の清浄度管理方法は、クリーンルーム入室者である被検者が、入室前に検査室においてローラー掛けを適切に行ったか否かを画像処理によって判定することにより、クリーンルーム入室者の清浄度を管理するための方法であって、検査室において撮影された被検者を含む取得画像と背景画像とを比較することによる背景差分によって、被検者の人物領域と被検者が手にするローラーの領域とを抽出することと、人物領域の各身体部位に対するローラーの相対的動きをオプティカルフローによって取得して解析することにより、ローラー掛けが適切に行われたか否かを判定することを含むことを特徴とするものである。
【0020】
より詳細には、本発明に係る方法は、以下のステップを含むことを特徴としている。
−検査室においてローラーを所持する被検者を撮影して当該被検者を含む画像を取得するための監視カメラの位置設定を行う初期設定ステップ
−監視カメラによる取得画像から被検者を特定する被検者特定ステップ
−被検者にローラー掛けを開始させるローラー掛け開始ステップ
−取得画像と背景画像との比較から被検者の人物領域を抽出する人物領域抽出ステップ
−取得画像からローラー領域を抽出するローラー領域抽出ステップ
−抽出された人物領域から、身体の部位を抽出する身体部位抽出ステップ
−抽出された人物領域の身体部位ごとにローラーのオプティカルフローを抽出するオプティカルフローの抽出ステップ
−抽出されたオプティカルフローから、身体部位ごとに擦り状態の良否を判定する擦り判定ステップ
【0021】
図1は、本発明に係る方法を実施するためのシステムの概略構成を示すブロック図であり、そこに示されるように本システムは、検査室においてローラーを所持する被検者を撮影するための撮影手段である監視カメラ1と、監視カメラ1によって撮影された被検者の人物画像から当該被検者を特定すると共に、前記人物画像を解析して、身体の部位ごとにローラーによる擦り状態の良否を判定する解析装置2と、解析装置2による解析結果をアバター表示するモニタ3とから成る。
【0022】
そして、解析装置2は、監視カメラ1によって撮影された被検者の人物画像を取り込む画像取得手段4と、人物画像から被検者を特定する被検者特定手段5と、人物画像から被検者の人物領域及びローラーのローラー領域とを抽出する人物・ローラー領域抽出手段6と、抽出された人物領域から身体部位を抽出する身体部位抽出手段7と、人物領域におけるローラーのオプティカルフローを身体の部位ごとに抽出するオプティカルフロー抽出手段8と、抽出されたオプティカルフローからローラー掛けの良否を判定する擦り判定手段9と、擦り判定手段9による判定結果をモニタ3にアバター表示させる表示手段10とを含んで構成される。
【0023】
図2は、本発明に係るクリーンルーム入室者の清浄度管理方法の全体の流れを示すフロー図であり、そこに示されるように、本方法における処理は、大別して、監視カメラ位置の初期設定ステップ(S1)、被検者の特定ステップ(S2)、指定部位のローラー掛け開始ステップ(S3)、フレーム処理ステップ(S4)、ローラー掛け完了ステップ(S5)の順に推移する。
【0024】
監視カメラ位置の初期設定ステップ(S1)
監視カメラ位置の初期設定ステップ(S1)は、本発明に係る方法の実施に当たり、検査室に設置される撮影手段である監視カメラ1の位置を調整するための初期設定を行うステップである。この初期設定において監視カメラ1は、正面斜め上方から、例えば、身長190cmの人物の全身が写るように位置調整される。なお、監視カメラ1は固定カメラであって、被検者は、室内の定位置においてローラー掛けを行うものとされる。
【0025】
被検者の特定ステップ(S2)
被検者の特定ステップ(S2)は、画像取得手段4により取り込んだフレーム画像から、被検者特定手段5によって被検者を特定するステップである。被検者の特定は、例えば、各人が有するICチップやQRコード(登録商標)を読み取る等の方法によって行う。
【0026】
指定部位のローラー掛け開始ステップ(S3)
指定部位のローラー掛け開始ステップ(S3)は、被検者が室内の定位置において、所定の順序(例えば、頭部、両腕、胸腹、背、両脚の順)で行うローラー掛けを開始するステップである。通例、このローラー掛け開始に際し、「前を向いてください。」、「頭を擦ってください。」、「右腕を擦ってください。」といった、ローラー掛けをする身体部位を指定するための音声案内が流され、被検者はそれに合わせて行動する。
【0027】
なお、ローラーは予め検査室内に用意されていて、被検者はこれを入室後に手にすることになる。ローラーとしては、一般家庭用に市販されているものと同様の、粘着テープを巻装した回転ローラーを用いるが、後出のステップにおいてその抽出を容易にするために、例えば、粘着テープが黄色等の特定の色(作業着の色と異なる色)のものとされ、また、その回転度合の検出を可能にするために、端部に標識が付されることもある。
【0028】
フレーム処理ステップ(S4)
フレーム処理ステップ(S4)においては、画像取得手段4によって取り込まれたローラー掛けの画像を解析し、擦り判定手段9において身体の各部位ごとに擦り状態の適否の判定を行い、その判定結果をモニタ3にアバター表示すると共に、判定結果についての音声案内(例えば、「右腕が擦れていません」といった内容のもの)を流す処理が行われる。このフレーム処理ステップ(S4)の詳細については、後述する。
【0029】
なお、人物領域は、例えば、頭領域、体領域(胴部)、腕領域、足領域に部位分けされる。また、擦り状態の適否の判定結果のアバター表示は、アバター領域を分割して個別に行われ、その良否に応じて色分けして表示される。アバター領域の分割は、例えば、頭領域を上下2つに分け、また、体領域を左右に分け、そのそれぞれについて上部、中間部、下部に分ける如くして行われる(
図10参照)。
【0030】
ローラー掛け完了ステップ(S5)
フレーム処理ステップ(S4)において、アバター領域のすべてについて適切との判定がなされた段階でローラー掛け完了となり、例えば、「きれいに拭けました。お疲れ様でした。」といった音声が流される(S5)。
【0031】
次いで、
図3のフロー図を参照しつつ、フレーム処理ステップ(S4)の流れについて説明する。
【0032】
人物領域抽出ステップ(S11)
フレーム処理ステップ(S4)においては、先ず、人物・ローラー領域抽出手段6によって人物領域の抽出が行われる(ステップS11)。人物領域は、正規化距離を用いた背景差分によって求めることができる。
【0033】
即ち、上記のように初期設定された監視カメラ1により、検査室に入室して所定のローラーを所持した被検者の全身が収まるようにして、室内を撮影したフレーム画像(取得画像)が、画像取得手段4を介して解析装置2内に取り込まれ、このフレーム画像と、予め解析装置2の人物・ローラー領域抽出手段6に記憶されている、被検者が入室する前に撮影した室内の背景画像とが比較され、両画像から注目画素を中心としたN×Nの局所領域の輝度値を抽出する方法により、ローラーを含む人物領域を抽出することができる。なお、被検者が着用する作業着は各工場等において、白色、薄いピンク、薄いブルー等に定められているので、これを予め人物・ローラー領域抽出手段6に記憶させておき、背景差分に利用する。後述するローラーの色についても同様である。
【0034】
身体部位抽出ステップ(S12)
人物領域の抽出後、身体部位抽出手段7によって、指定されたローラー掛けの対象となる身体の部位が抽出されると共に(ステップS12)、人物・ローラー領域抽出手段6によって、ローラー領域が抽出される(ステップS13)。指定された身体部位の抽出ステップ(ステップS12)においては、頭領域、体領域、腕領域、足領域のいずれかが特定される。これら各領域の特定に当たっては、先ず、人物領域の横幅と縦幅が抽出され、その横幅を用いることによって頭領域(横幅大)と足領域(横幅小)とが特定され、また、縦幅を用いることによって腕領域(縦幅小)と体領域(縦幅大)とが特定される。
【0035】
人物領域の横幅の抽出は、背景差分によって人物領域が抽出された取得画像において、各行ごとに人物領域の横幅を求めることによって行う(
図4参照)。横幅を用いて頭領域と足領域を特定するに当たっては、先ず、人物領域を上半身と下半身とに分けるための基準線を設定する。この基準線は、人物領域の縦幅の中間位置に対応するA線と、腕の最下点(体領域の横幅をチェックしていき、細くなった部分)に対応するB線の中間線とする。この基準線の体領域上における横幅を求め、その基準線よりも上の行において、基準線の横幅の3分の2以下の部分を頭領域と特定し、基準線より下の行において、基準線の横幅の3分の2以下の部分を足領域と特定する。
【0036】
人物領域の縦幅の抽出は、各列ごとに人物領域の縦幅を求めることによって行う(
図5参照)。縦幅を用いての腕領域と体領域の識別は、縦幅の最大値の5分の1以下の部分を腕領域と特定して抽出し、他の部分を体領域と特定して抽出することによって行う。
【0037】
このようにして特定される腕領域につき、長さが抽出される(
図6参照)。腕領域の長さの抽出に際しては、先ず、足領域の行ごとの中点を求め、中点の平均座標を求める。次いで、体領域の横幅の半分長さから肩の点を求め、この肩の点と腕端の点とのユークリッド距離により、腕領域の長さを抽出する。また、腕領域について各列ごとの縦幅の平均値を求め、腕領域の縦幅とする。なお、腕領域の長さには、作業着からはみ出ている手の部分(ローラ掛け不要部分)も含まれているので、後述する擦り判定ステップ(S15)において、その部分を除くための補正が行われる。
【0038】
ローラー領域抽出ステップ(S13)
ローラー領域の抽出(ステップS13)においては、RGB情報とHSV表色系とを用い、領域ラベリングして最大面積の領域を抽出することによって、ローラー領域を抽出する処理が行われる。本件の場合、ローラーは、例えば、黄色に設定されているので、最大面積の黄色領域を以て、ローラー領域とする。
【0039】
オプティカルフロー抽出ステップ(S14)
次いで、擦り判定手段9により、上記のようにして特定された人物領域の指定部位に対するローラー領域の動きから、部位ごとに擦り状態の良否が判定されるが(擦り判定ステップS15)、その良否判定に際し、ローラー領域の動きが抽出される。ローラー領域の動きの抽出は、ローラーのオプティカルフローを抽出して、ローラーの位置の変化を観察することにより行われる。即ち、取得画像中の輝度値情報の変化からローラーの動きが解析され、速度ベクトルによりローラーの動きが取得される。
【0040】
擦り判定ステップ(S15)
擦り判定ステップ(S15)においては、オプティカルフローによりローラー掛けした領域が推測される。腕領域の場合におけるローラー掛けした領域の推測に際しては、擦り判定の対象となる作業着部分と、その対象とはならない手の部分とを識別し、手の部分を除くための補正が行われる(
図7参照)。
図7に示す例は、左腕の一半部(手側)をローラー掛けしている例であり、その場合先ず、ローラーから発生したオプティカルフローを用いて、ローラーの移動範囲におけるX、Y座標の最大値と最小値とが抽出され、ローラーの移動範囲が推測される(領域a)。
【0041】
ところで、ローラーを仮に右下方向に擦り移動させた場合でも、発生するフローには右下以外に左方向や下方向など、ノイズが少なからず含まれている。これらのノイズを含むフローから正しい移動方向を絞り込むために、本発明では、一番大きいフローの方向を擦り判定の方向として抽出する(最大値を抽出する)。フローの大きさの比較には、ベクトルの強度を用いる。なお、最小値は、この処理で削除されるため、擦り判定において使用されることはない。
【0042】
この領域a内には、擦り判定の対象とはならない手の部分が含まれているので、この部分を除いた領域bに補正される(向きでの補正)。また、領域a内には、前フレームにおける擦り判定領域(領域c)と重複する部分が含まれているので、この重複部分を除いた領域dに補正される(前フレームでの補正)。そして、領域b,dの重なり合う領域eが、擦り判定の対象領域とされ、その領域内におけるローラーの動きから擦り状態の良否が判定される。
【0043】
また、取得画像と一つ前のフレーム画像との間での重なり部分を除くための補正(擦り判定の補正)が行われる。この場合、ローラーが存在する領域付近は、(t−2)→(t−1)フレームでは終点、(t−1)→(t)フレームでは始点となるため、2フレーム連続してフローが抽出されることになる。よって、実際に1度擦っただけであっても、2度擦ったという判定が行われてしまう。そこで、(t−2)→(t−1)フレーム間に発生したフロー領域と、(t−1)→(t)フレーム間に発生したフローの領域を比較し、2フレーム連続で発生しているフローの位置はダブルカウントしないという処理を入れることにより、擦り判定の補正が行われる。
【0044】
アバター表示ステップ(S15)
上記のようにして得られたアバターの分割領域ごとの擦り状態の判定結果が、その分割領域ごとにアバター表示される(アバター表示ステップS15)。このアバター表示に際しては、アバター画像に人物領域を反映させる処理が行われる。即ち、アバター画像における人物領域の反映は、アバター画像から背景差分で抽出した人物画像への縮尺を計算することによって行う。
【0045】
具体的には、
図8に示すようなアバターと画像を用いて対応点抽出の計算を行う。そこに示す例では、アバターの頭の横幅が50pxで、抽出された人物領域の頭の横幅が200pxであり、ここにおいて、アバターから任意の点(i,j)を抽出する。この任意の点(i,j)は、アバターの上端までの距離と、横端までの距離である(画像全体での距離ではなく、アバター端から求めた距離であることに注意)。求めた(i,j)を基に人物座標へ変換する場合は、下記式を用いて座標変換する。
人物領域(x,y)=アバターの任意座標(i,j)×人物領域の部位の横幅/アバターの部位の横幅
上記例の場合は、(25,25)×200/50= (100,100)となる。つまり、人物領域で(100,100)に該当する部分が、アバターの任意座標(i,j)に対応する点となる(
図9参照)。身体や腕についても、その部位の横幅を用いて同様の処理を行う。
【0046】
この手法は、比率によって長さが変化することが特徴となるもので、この手法によれば、人物が画像全体に対して大きい場合であっても、小さい場合であっても、反映を行うことが可能となる。そして、アバターでの任意の画素と、人物領域に変換した座標とを対応付けすることにより、人物領域におけるある点について擦り判定が行われた場合、それをアバター側における対応画素に反映させることが可能となる。この反映点の計算は、アバターでの身体領域の全画素に対して行われる。
【0047】
擦り判定の評価は、上記アバターの分割領域ごとに行われ、その評価は、その分割領域面積と擦り判定面積とを求め、各分割領域ごとに擦り判定の割合を求めることにより行われる。例えば、擦り判定の割合は、次式から求める。
分割領域中の擦り判定面積/分割領域面積×100≧80
そして、アバター表示は、判定結果に応じて色分けして行われる(
図10参照)。例えば、ローラー掛けが1回の場合は青色、2回の場合は水色、3回の場合は黄色、4回の場合は緑色、擦り完了の場合は赤色で表示される。
【0048】
本発明に係るクリーンルーム入室者の清浄度管理方法及び管理システムは上記のとおり、被検者の人物領域とローラー領域とを抽出し、人物領域の各身体部位に対するローラーの相対的動きをオプティカルフローによって取得して解析することにより、ローラー掛けが適切に行われたか否かを判定することを骨子とするものであり、この方法及びシステムによれば、シンプルな構成にて、クリーンルーム入室者である被検者が、入室前に検査室においてローラー掛けを適切に行ったか否かを自動的に容易に判定することができ、以て、クリーンルーム入室者の清浄度を適切に管理することができるものであって、産業上の利用可能性は大である。