(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302013
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】安全針アセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20180319BHJP
【FI】
A61M5/32 500
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-153965(P2016-153965)
(22)【出願日】2016年8月4日
(62)【分割の表示】特願2014-116070(P2014-116070)の分割
【原出願日】2009年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-185490(P2016-185490A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】61/028,983
(32)【優先日】2008年2月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー マクダウン
(72)【発明者】
【氏名】エリオット ザイケン
(72)【発明者】
【氏名】ルアン ティエミン
【審査官】
和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05578014(US,A)
【文献】
米国特許第05389085(US,A)
【文献】
特表2006−517437(JP,A)
【文献】
米国特許第04911693(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0100576(US,A1)
【文献】
特開2006−149513(JP,A)
【文献】
米国特許第05688241(US,A)
【文献】
米国特許第05167640(US,A)
【文献】
特開平11−319090(JP,A)
【文献】
米国特許第04915701(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射のために形成された遠位端を有する針と、
該針を支持し、注射器に取り付けるために構成されたキャリアと、
前記針の前記遠位端を選択的にカバーするための遮蔽部であって、近位端と、遠位端と、それらの間に延在する側壁とを有し、該側壁が、遠位端の部位またはその近傍で第1の外径をなすとともに、該第1の外径よりも近位側に位置する1以上の位置の部位またはその近傍で、前記第1の外径より大きい少なくとも1つの外径をなしている当該遮蔽部と、
前記第1の外径をなす部位と、前記第1の外径より大きい前記少なくとも1つの外径をなす部位との間で、前記遮蔽部の前記遠位端に隣接して前記側壁に配された開口であって、プライミングの間に前記針の前記遠位端をユーザが視認することを許容し、前記針から放出された薬剤が出て行くことを許容する開口と、
を含み、
前記遮蔽部の前記遠位端は、前記開口を横切って途切れることなくかかっている部分を有することを特徴とする注射器用の安全針アセンブリ。
【請求項2】
前記側壁が、前記第1の外径から近位側に窪んだ形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の注射器用の安全針アセンブリ。
【請求項3】
前記側壁が、前記第1の外径から近位側に傾斜した形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の注射器用の安全針アセンブリ。
【請求項4】
前記側壁は、前記第1の外径から近位側に段階的に径が変化していることを特徴とする請求項1に記載の注射器用の安全針アセンブリ。
【請求項5】
前記側壁は、前記遮蔽部の前記近位端に近い位置で、前記遮蔽部の遠位端よりも大きい最大外径をなしていることを特徴とする請求項1に記載の注射器用の安全針アセンブリ。
【請求項6】
前記遮蔽部の前記外径は、前記第1の外径から前記最大外径まで漸増することを特徴とする請求項5に記載の注射器用の安全針アセンブリ。
【請求項7】
前記遮蔽部は、前記最大外径をなしている前記位置から前記近位端にわたって延在する円筒状部分を有していることを特徴とする請求項5に記載の注射器用の安全針アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器のための針アセンブリに関し、より詳しくは安全針アセンブリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ペン型注射器(pen injector)とともに用いられる安全ペン型針アセンブリを含む安全針アセンブリが知られている。アセンブリは一般に、注射器に取り付け可能である。アセンブリは、注射後には使用済みの針を遮蔽して、使用者が不慮の「針刺し」を被らないように構成されている。一般に、アセンブリは注射器から取り外し可能で、使用後には処分されるように形成されている。
【0003】
ペン型針は制限された長さをもっており、従来の安全ペン型アセンブリの設計は、注射の実行時における患者の皮膚に対するペン型針の位置づけの視認性を制限するものであることがわかっている。加えて、ペン型針は、使用に先立って準備され(primed)なければならない。準備の手順の間に排出される薬剤は安全ペン型針アセンブリ内に集められることがわかる。注射の間、排出される薬剤は好ましく患者の皮膚に移送され得なくなるため、適切な用量が投与されたか否かが曖昧なものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,389,085号明細書
【特許文献2】米国特許第6,203,529号明細書
【特許文献3】米国特許第6,547,764号明細書
【特許文献4】米国特許第6,986,760号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0038392号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために、本発明の第1の形態では、注射のために形成された遠位端を有する針と、該針を支持し、注射器に取り付けるために構成されたキャリアと、を含む注射器用の安全針アセンブリが提供される。該アセンブリはさらに、選択的に前記針の前記遠位端をカバーするための遮蔽部を含んでいる。該遮蔽部は、少なくとも1つの貫通開口(through aperture)を含み、該貫通開口は注射に先立つ初期状態において、前記針の前記遠位端に重畳している。有利には、準備の間、貫通開口は薬剤がそれを通って通過するのを許容し、これによって安全針アセンブリ内に集められた薬剤の排出量は最小限にとされる。
【0006】
本発明のさらなる形態では、注射のために形成された遠位端を有する針と、該針を支持し、注射器に取り付けるために構成されたキャリアと、選択的に前記針の前記遠位端をカバーするための遮蔽部と、を含む注射器用の安全針アセンブリが提供される。前記遮蔽部は近位端と、遠位端と、それらの間に延在する側壁と、を含んでいる。該側壁は、遠位端の部位またはその近傍で第1の外径をなすとともに、該第1の外径よりも近位側に位置する1以上の位置の部位またはその近傍で、前記第1の外径より大きい少なくとも1つの外径をなしている。有利には、この構成配置とともに、注射の間に使用者にとって目障りなものではなく、特に注射のポイントを観測できる遮蔽部を設けることができる。
【0007】
当業者であれば、上述した2つの形態を組み合わせて、または個別に用いることができることがわかるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に従って形成された貫通開口を示す図である。
【
図1A】本発明に従って形成された貫通開口を示す図である。
【
図2】本発明に従って形成された貫通開口を示す図である。
【
図3】本発明に従って形成された貫通開口を示す図である。
【
図4】本発明に従って形成された貫通開口を示す図である。
【
図5】本発明に従って形成された貫通開口を示す図である。
【
図6】本発明に従って形成された貫通開口を示す図である。
【
図7】本発明に従って形成された貫通開口を示す図である。
【
図8】本発明に従って減少させた外径を有する遮蔽部を示す図である。
【
図9】本発明に従って減少させた外径を有する遮蔽部を示す図である。
【
図10】本発明に従って減少させた外径を有する遮蔽部を示す図である。
【
図11】本発明に従って減少させた外径を有する遮蔽部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の上述した特徴および他の特徴は、以下の説明および添付の図面を検討することによってよりよく理解される。
【0010】
図を参照するに、概してキャリアすなわちハブ12、遮蔽部14および針16を含んだ安全針アセンブリ10が示されている。ここに説明する本発明に合わせて、種々構成のキャリア12、遮蔽部14および針16を含んだ安全針アセンブリ10を利用することができる。針16は、キャリア12またはこれに支持されるその他の物に対し、直接または1以上の中間構成要素を介して、剛に固定されるものとすることができる。キャリア12はまた、注射器Pへの取り付けを許容するための特徴部15を有したものであってもよく、この特徴部としては、例えば、ねじ、ルアー型(luer-type)コネクタまたはそれらの組み合わせとすることができる。あるいは、キャリア12は注射器に一体に形成されるものでもよいし、剛に固定されるものでもよい。注射器Pはペン型注射器ないしはシリンジとすることができる。
【0011】
針16は、ペン型針などを含め、公知の設計のものとすることができる。一般にペン型針は29〜33ゲージの範囲の寸法を有する。針16の末端は遠位端(distal end)18となっており、患者に対し注射を行うために構成されている。技術分野で知られているように、針16は、注射器Pの内容物と連通するべく形成された第2端である近位端(proximal end)17を有するものとすることができる。例えば、第2端である近位端17は、注射を行うために、注射器P内に収容された薬カートリッジの隔膜(septum)を穿刺し、内部の医療用内容物にアクセスするように形成されたものとすることができる。
【0012】
遮蔽部14は、特に使用後において選択的に針16の遠位端18をカバーするように形成されている。遮蔽部14は使用前には遠位端18をカバーしていることが好ましい。従って、使用時には、
図1Aの破線で示されるように、遮蔽部14はその後退が許容されて注射のために遠位端18を露出させるものででなければならない。使用後には、遮蔽部14はカバーを行う遮蔽位置に前進するべく駆動されるものでなければならず、好ましくはその使用後位置(post-use position)にロックされる。遮蔽部14の後退方向(近位方向)への駆動と、ロック位置に向う前進方向(遠位方向)への駆動とを許容するために、公知のいかなる構成も使用することができる。遮蔽部14は、注射器Pに固定されるキャリア12に対して相対的に移動することができる。遮蔽部14を移動させるためには、自動化されたシステム(「受動的」システム)または手動の介在を要するシステム(「能動的」システム)を利用することができる。ここで用いる「近位」という用語は、患者から離れる方向(すなわち非注射端側)として参照される一方、「遠位」という用語は、患者に向かう方向(すなわち注射端側)として参照される。
【0013】
技術分野において、使用のために初期のカバー位置から後退し、使用後には針をカバーする遮蔽部(すなわち、使用の前後で針の遠位端をカバーする遮蔽部)を有する安全針アセンブリが知られている。かかるアセンブリの例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4に見出され、参照によってこれらの内容をここに包含するものとする。これらの遮蔽構成は、本願発明とともに利用可能なものである。
【0014】
図1〜
図7に示されるように、本発明の第1の形態においては、遮蔽部14には少なくとも1つの貫通開口が形成されている。
図6に最もよく示されているように、使用に先立つ安全針アセンブリ10の初期状態において、針16と直交して位置する軸方向に沿って見た場合、貫通開口20は針16の遠位端18に重畳していることが好ましい。これによれば、針16と直交して位置する軸方向に沿って見た場合、貫通開口20の設置範囲(footprint)内において針16の遠位端18を視認可能となる。この構成により、注射に先立って針16を準備(prime)することができるとともに、針16を準備する間に針16から放出される薬剤が貫通開口20を介して出て行くことができるようになる。遮蔽部14の遠位端24に開口22を設け、針16を準備する間に針16から放出される薬剤が安全針アセンブリから排出されるようにすることもできる。使用時には、針18は開口22を介して延在し、遠位端18による患者への注射が許容される。
【0015】
使用者の利便性のために、少なくとも2つの貫通開口20を設けることが好ましく、これらは遮蔽部14の周方向に沿って、径方向の反対側に配置される。針16を準備する間には、針16は水平または下方を向くようにされていることが好ましく、これによって、放出された薬剤が貫通開口20の少なくとも1つからより排出され易くなる。
【0016】
遮蔽部14は側壁26を含み、これは遠位端24から近位方向に延在している。貫通開口20は、遠位端24に隣接する又はその近傍の位置において、側壁26を通して形成されていることが好ましい。好適には、遠位端24は、貫通開口20を横切って途切れることなくかかっている(span)部分を有する。この構成により遠位端24での剛性が提供され、貫通開口20が1以上存在することに起因した、少なくともいくらかの剛性の低下を補うことができる。図に示すように、側壁24は、例えば円筒形状、傾斜した形状およびその他の種々の形状に形成することができる。
【0017】
貫通開口20は異なる寸法および形状で形成されていてもよい。
図6を参照するに、貫通開口20の幅Lは制限されていることがわかる。幅が大き過ぎれば、遮蔽部14が弱くなり過ぎるからである。幅Lは、貫通開口20の位置における遮蔽部14の外周の20%〜90%とすることができる。
【0018】
貫通開口20は、遠位端18から距離Hに位置する下側縁28をもつ矩形状を有するものとすることが好ましい。
図6および
図7を参照するに、下側縁28は、使用前の安全ペン型針アセンブリ10の初期状態において遠位端18よりも近位側に好ましく位置し(
図6)、使用後(例えば遮蔽部14がロックされた遮蔽状態にあるとき)には遠位端18よりも遠位側に好ましく位置する。よって、貫通開口20は、使用後そして使用前には、キャリア12からさらに遠位側に位置する。使用者は、遠位端18に対する下側縁28の位置を観測し、安全ペン型針アセンブリ10の使用状態がどのようであるかを容易に判断することができる。従って、下側縁28は安全針アセンブリ10の使用状態を示すためのインジケータとして働く。これは特に、使用に先立って針16を遮蔽する安全針アセンブリにとって有用である。使用状態をさらに明示するために、しるし(例えばロゴ)またはその他の視認可能な特徴部30を遮蔽部14上に設け、これが初期状態ではキャリア32によってカバーされ(
図6)、遮蔽状態では露出するようにする(
図7)こともできる。
【0019】
当業者であれば明らかであろうが、たとえ不透明な材料で形成された遮蔽部14が用いられる場合であっても、貫通開口20は、針16を準備する際にその遠位端18を使用者が視認できるようにするものである。貫通開口20はまた、針16の幾何学的形状を使用者が確認できるようにするものでもある。
【0020】
図8〜
図11に示すように、本発明の第2の形態において、側壁28はその外面32上に、近位側に位置する遮蔽部14の部分に比べて、遠位端24の部位またはその近傍において減少させた外径D1を有するものでもよい。側壁28は遠位端18から近位端36までの間に延在し、外面32は遮蔽部14の長手方向軸34から離れてゆく。遠位端24および近位端36は概して、それぞれ遠位側および近位側において長手方向軸34に沿って対向するよう配置されている。
【0021】
本発明では、外面32上に、減少させた外径D1よりも近位側に位置する1以上の位置において少なくとも1つの外径が定められており、これは減少させた外径D1よりも大きい。このようにすることで、遠位端18から遮蔽部14に沿って近位側に進む外径の変化が遮蔽部14に提供される。
図8および
図9に示すように、その変化は漸進的なものであり、側壁26に対して窪んだ形状を与えるようになっている。あるいは、
図10に示すように、側壁26が傾斜した形状を有していてもよいし、
図11に示すように段階的変化を呈するものでもよい。外壁26をその他の形状とすることも可能であり、弧状、直線状および/または不均一な複数の部分(irregular segments)でなるものなどを含むことができる。
図8および
図9に示すような窪んだ形状の側壁26とすることが好ましい。
【0022】
遮蔽部14の外径は、遮蔽部14の近位端36の近傍の位置で遮蔽部14の遠位端18よりも大きい最大値(Dmax)となることが好ましい。遮蔽部14には一定の最大外径Dmaxを有する部分を形成することができ、それによって最大外径Dmaxを有する円筒部33が形成される。円筒部33は遮蔽部14の近位端36から延在するものとすることができる。さらに、遮蔽部14の外径は、減少した外径D1から最大外径Dmaxまで漸増するものであることが好ましい。
【0023】
好適な構成においては、最大外径Dmaxをもつ最遠位の位置は、遮蔽部14の近位端36から距離T1、かつ遮蔽部14の遠位端18から距離T2の位置にある。ここで、T2>T1である。
【0024】
遠位端24における減少外径D1は、美観的に好ましい外観を安全針アセンブリ10に提供し得る。加えて、遠位端24は、注射時における安全ペン型針アセンブリ10の向きを定めるためのガイドともなり得る。
【0025】
遠位端24は最小表面積を有するように形成されていることが好ましい。遠位端24は、側壁26の厚みに概ね等しい幅を有した環状の(開口22を囲んでいる)ものであることが好ましい。好適には、側壁26には、遠位端24に隣接して0.110〜0.325インチの範囲の内径が形成されている(この内径は開口22の直径に等しいものとすることができる)。患者に与える不快感をより低減するために、遠位端24に面取り部38を設け、これが患者の皮膚に係合するようにすることができる。面取りを施した形状とすることで、注射時においてさらに不快感の少ない係合が提供される。
【0026】
当業者であれば、上述した2つの形態を組み合わせて、または個別に用いることができることがわかるであろう。