(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302057
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】自動車内装用クッション部材
(51)【国際特許分類】
A47C 27/12 20060101AFI20180319BHJP
D01F 8/14 20060101ALI20180319BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20180319BHJP
D04H 1/541 20120101ALI20180319BHJP
D04H 1/55 20120101ALI20180319BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20180319BHJP
D04H 1/544 20120101ALI20180319BHJP
【FI】
A47C27/12 B
D01F8/14 B
D01F8/06
D04H1/541
A47C27/12 Z
D04H1/55
B60N2/44
D04H1/544
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-525264(P2016-525264)
(86)(22)【出願日】2014年5月22日
(65)【公表番号】特表2016-534784(P2016-534784A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】KR2014004583
(87)【国際公開番号】WO2015005579
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2016年1月8日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0081207
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513269240
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ インダストリアル テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】イム,デヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,キヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ウォンヨン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ヒョジン
【審査官】
大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−024955(JP,A)
【文献】
特開平04−240219(JP,A)
【文献】
特開平10−121361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/12
B60N 2/44
D01F 8/06,8/14
D04H 1/541,1/544,1/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状基材が少なくとも2層以上積層された繊維ウェブと、
前記繊維ウェブの層間に挿入されて層間接着されたスペーサー生地と、を備え、
前記繊維状基材は、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、コーポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(co−PCT)及びポリプロピレン(PP)よりなる群から選ばれるいずれか一種の素材のバインダー繊維が混合されたものであり、
前記スペーサー生地は、PCT素材の繊維の主成分と、PBT、co−PCT及びPPよりなる群から選ばれるいずれか1つの副成分と、からなることを特徴とする自動車内装用クッション部材。
【請求項2】
繊維状基材が少なくとも2層以上積層された繊維ウェブと、
前記繊維ウェブの層間に挿入されて層間接着されたスペーサー生地と、を備え、
前記繊維状基材は、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維の第1の成分、及びポリブチレンテレフタレート(PBT)、コーポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(co−PCT)及びポリプロピレン(PP)よりなる群から選ばれるいずれか一種の素材のバインダー繊維の第2の成分が紡糸された複合繊維により構成されており、
前記スペーサー生地は、PCT素材の繊維の主成分と、PBT、co−PCT及びPPよりなる群から選ばれるいずれか1つの副成分と、からなることを特徴とする自動車内装用クッション部材。
【請求項3】
前記複合繊維が、芯部に第1の成分が紡糸され、且つ、鞘部に第2の成分が紡糸された芯鞘型またはスキンコア型であることを特徴とする請求項2に記載の前記自動車内装用クッション部材。
【請求項4】
前記複合繊維が、第1の成分及び第2の成分がそれぞれのサイドに配列されたサイドバイサイド型であることを特徴とする請求項2に記載の前記自動車内装用クッション部材。
【請求項5】
前記バインダー繊維が、5〜95重量%含有されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の前記自動車内装用クッション部材。
【請求項6】
前記バインダー繊維が、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維に比べて、溶融温度が20℃以上低い低融点繊維であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の前記自動車内装用クッション部材。
【請求項7】
前記スペーサー生地が、熱接着方式とニードルパンチ方式のいずれかまたはこれらの組み合わせによって層間接着されることを特徴とする請求項1に記載の前記自動車内装用クッション部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内装用クッション部材に係り、さらに詳しくは、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(Poly1,4−cyclohexanedimethylene terephthalate;以下、「PCT」と称する。)素材の繊維にバインダー繊維が混合された繊維状基材からなる自動車内装用クッション部材、または、前記繊維状基材が、少なくとも2層以上からなる層間にスペーサー生地が挿入されたものである多層構造の自動車内装用クッション部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の軽量化は、石油資源の枯渇の解消及び燃費の向上による製品競争力の向上を両立させる要素として脚光を浴びており、業界においては、自動車内の軽量素材を10%増やすと、燃費が約5〜10%高くなるものと分析している。
【0003】
この理由から、関連業界においては、自動車の軽量化を図るために、新規なエンジニアリングプラスチックに対する関心が高まりつつある。
【0004】
エンジニアリングプラスチックとは、合成樹脂(レジン)及びガラス繊維などの充填剤を配合して複合化させたプラスチックであり、汎用プラスチックの最大の弱点であると言われる熱的特性及び強度、摩耗性などの機械的な特性を向上させて自動車部品、機械部品、電気・電子部品など様々な産業用材料として汎用されている。なお、金属やガラスなどの素材に比べてデザインの柔軟性及び成形加工性などのメリットを有することから、活用幅も広いというメリットがある。
【0005】
そのようなニーズに応えるための自動車の軽量化素材の一つとしてポリアミド(PA)が挙げられるが、これは、エンジニアリングプラスチックのうち最も多用される素材の一つである。
【0006】
ポリアミド(PA)は、熱変形温度、高い強度、難燃性及び丈夫さなどのメリットを有することから、自動車の中でも内部骨格などに主として用いられる。例えば、ポリアミド(PA)素材は、自動車前面部部品、ペダル補助ブラケット、ブレーキペダルなどの超軽量・高強度の部品の製造に適用されている。
【0007】
また、ポリカーボネート(PC)は、エンジニアリングプラスチックの中で唯一透明な性質を有することから、主としてガラスに代わる用途に汎用されている。
【0008】
これに対し、自動車シートは、最近、高級化を目指す傾向にあり、これに伴い、シートクッションの乗車感を向上させるために反発弾性、振動特性、耐久性などが求められる。このようなシートクッションは、一般に、金属バネと軟質ポリウレタンフォームからなるパッド材とを組み合わせて得られる。しかしながら、自動車の軽量化に伴う重量の減少は、燃費の向上及び二酸化炭素の排出の低減につながり、これは、省エネルギー及び環境保護と密接な関係にある。
【0009】
最近のコスト節減や軽量化の傾向に伴い、軟質フォームそのものにバネ特性を持たせることにより、金属バネを廃止して、フォームタイプの自動車用シートを採用する傾向にある。
【0010】
しかしながら、フォームタイプの自動車用シートは、金属バネを併用しないが故に、軟質ポリウレタンフォームの厚さが厚くなる結果を招き、また、ポリウレタンフォームは、製造工程上において人体に有害な物質により製造され、これを自動車内装材として用いるとき、揮発性有機化合物(VOC)が発生するため人体に有害である。
【0011】
また、現在自動車内装材として用いられているポリウレタンクッション材は通風性を有さないため、長時間に亘って着座したときに汗が出てしまう。この理由から、快適性が低いこと、リサイクルし難いことなどが指摘されており、代替素材の開発が盛んに行われている。
【0012】
最近、自動車に関連する業界を中心として、ポリエステル繊維を用いたクッション材に取り替えるための努力がなされている。
【0013】
代表的なポリエステル繊維であるポリエチレンテレフタレート(Poly(ethylene terephthalate:PET)は、ジメチルテレフタレート(DMT)またはテレフタル酸(TA)とエチレングリコール(EG)との間の反応により得られ、物理的及び機械的な性質に優れた高分子であり、繊維として製造したときに、高強度、高弾性率の特性だけではなく、耐熱性及び加工性にも非常に優れた素材であることが知られている。
【0014】
しかしながら、ポリエチレンテレフタレート(PET)そのものの性質だけで高機能性素材としての様々なニーズを満たすには限界がある。そのため、ポリエチレンテレフタレート(PET)のベンゼン環の代わりにナフタレン環に置換するか、あるいは、第3成分の2価アルコールを添加してポリエチレンテレフタレート(PET)よりもガラス転移温度及び溶融温度が高く、形態安定性及び機械的な物性に優れた高分子の開発への取り組みが行われている。
【0015】
すなわち、ポリエステル繊維の単量体である二官能性アルコールと有機酸との間の反応において、前記反応化合物またはその残基を変更して様々なポリエステル素材を開発することができる。
【0016】
例えば、米国特許出願第1990−5447747号は、特定の触媒システムの存在下で、ジメチルテレフタレートと、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び最高で40mol%のエチレングリコールが含有された1,4−シクロヘキサンジメチレンコンビネーション反応によりポリ(1,4−シクロヘキセンジメチレンテレフタレート)を製造する方法を開示している。
【0017】
このため、本発明者らは、従来のポリウレタンクッション材に取って代わり、自動車内装用クッション部材の用途に適した物性を満たす素材を得るために鋭意努力したところ、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維にバインダー繊維を混合した繊維状基材からなるか、または、前記繊維状基材が、少なくとも2層以上からなる層間にスペーサー生地が挿入されたものである自動車内装用クッション部材を提供し、自動車内装用途に適した物性を確認することにより、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維にバインダー繊維が混合されて強度が最適化された繊維状基材からなる自動車内装用クッション部材を提供することである。
【0019】
本発明の他の目的は、前記繊維状基材が、少なくとも2層以上からなる層間にスペーサー生地が挿入されたものである自動車内装用クッション部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するために、本発明は、第1の実施形態として、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、コーポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(co−PCT)及びポリプロピレン(PP)よりなる群から選ばれるいずれか一種の素材のバインダー繊維が混合された繊維状基材からなる自動車内装用クッション部材を提供する。
【0021】
本発明の好適な第2の実施形態としては、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維の第1の成分、及びポリブチレンテレフタレート(PBT)、コーポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(co−PCT)及びポリプロピレン(PP)よりなる群から選ばれるいずれか一種の素材のバインダー繊維の第2の成分が紡糸された複合繊維が繊維状基材からなる自動車内装用クッション部材を提供する。
【0022】
前記複合繊維は、芯部に第1の成分が紡糸され、且つ、鞘部に第2の成分が紡糸された芯鞘型またはスキンコア型であるか、あるいは、第1の成分及び第2の成分がそれぞれのサイドに配列されたサイドバイサイド型である。
【0023】
このとき、本発明の第1の実施形態または第2の実施形態による自動車内装用クッション部材において、バインダー繊維は、5〜95重量%含有されることが好ましく、バインダー繊維は、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維に比べて、溶融温度が20℃以上低い低融点繊維である。
【0024】
また、本発明は、好適な第2の実施形態として、本発明の第1の実施形態または第2の実施形態により得られた繊維状基材が、少なくとも2層以上からなる層間に、スペーサー生地が挿入されたものである自動車内装用クッション部材を提供する。前記スペーサー生地は、第1の実施形態または第2の実施形態による繊維状基材に含まれているバインダー繊維により層間接着される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ポリエステル繊維の反応化合物のジオール成分として、1,4−シクロヘキサンジメチレンを用いて得られたポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維が含有されたクッション部材を提供することにより、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の環状構造により、従来のポリエチレンテレフタレート(PET)素材に比べて、耐熱性、耐化学性、弾力性及びかさ高性が改善された物性を具現する。
【0026】
このため、本発明のクッション部材は、素材の変更により軽量化の傾向を満たし、さらに、前記ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維に、低い融点のバインダー繊維を混合した繊維状基材からなるか、あるいは、前記繊維状基材が、少なくとも2層以上からなる層間にスペーサー生地を挿入したものである構造を提供することにより、弾性及びクッション材の物性が最適化される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態による繊維状基材からなる自動車内装用クッション部材の表面模式図である。
【
図2】本発明の第3の実施形態による自動車内装用クッション部材の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維に、バインダー繊維が混合されたシート状の自動車内装用クッション部材を提供する。
【0030】
通常のポリエステル繊維の単量体である二官能性アルコールと有機酸との間の反応において、反応化合物の残基を変更して様々な素材を開発することができるが、本発明においては、前記二官能性アルコールとして、1,4−シクロヘキサンジメチレン(CHDM)を用い、ジメチルテレフタレート(DMT)またはテレフタル酸(TA)との反応により得られた下記の一般式1で表わされるポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材を基材として用いる。
【0032】
前記ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の環状構造により、従来のポリエチレンテレフタレート(PET)素材に比べて、耐熱性、耐化学性、弾力性及びかさ高性が改善される。具体的には、従来のポリエチレンテレフタレート(PET)素材の繊維ウェブの比重が1.38であるのに対し、本発明のポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維ウェブの比重は1.23であり、従来のポリエチレンテレフタレート(PET)素材の繊維ウェブの溶融点が250℃であるのに対し、本発明のポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維ウェブの溶融点は290℃である。このため、本発明のポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材が含有された不織布または繊維ウェブは、かさ高性が10%以上向上し、且つ、高い熱安定性が得られる。
【0033】
すなわち、従来のポリエチレンテレフタレート(PET)素材の骨格に比べて、環状構造の特性により、密度が低くて優れたかさ高性が得られ、溶融点が高く、化学安定性に優れている。このため、本発明の自動車内装用クッション部材は、素材そのものの物性の改善により軽量化が満たされ、用途に求められる物性が満たされる。
【0034】
具体的に、本発明の第1の実施形態による自動車内装用クッション部材は、前記ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、コーポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(co−PCT)及びポリプロピレン(PP)よりなる群から選ばれるいずれか一種の素材からなるバインダー繊維が混合された繊維状基材からなる自動車内装用クッション部材であり、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維の物性を維持しながら、軽量素材の強度を最適化させる。
【0035】
本発明の明細書の全文において、「繊維状基材」とは、不織布または繊維ウェブ構造の基材を含む。
【0036】
図1は、本発明の第1の実施形態による繊維状基材10からなる自動車内装用クッション部材の表面模式図であり、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維100に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、コーポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(co−PCT)及びポリプロピレン(PP)よりなる群から選ばれるいずれか一種の素材からなるバインダー繊維200が所定の長さに切断されて混合された構造である。
【0037】
また、本発明の好適な第2の実施形態においては、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維の第1の成分、及びポリブチレンテレフタレート(PBT)、コーポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(co−PCT)及びポリプロピレン(PP)よりなる群から選ばれるいずれか一種の素材のバインダー繊維の第2の成分が紡糸された複合繊維が繊維状基材からなる自動車内装用クッション部材を提供する。
【0038】
前記複合繊維は、芯部に第1の成分が紡糸され、且つ、鞘部に第2の成分が紡糸された芯鞘型またはスキンコア型であるか、あるいは、第1の成分及び第2の成分がそれぞれのサイドに配列されたサイドバイサイド型であることが好ましい。
【0039】
本発明の自動車内装用クッション部材において、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維に混合されるバインダー繊維は、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維の290℃の融点に比べて低い融点の繊維素材であれば使用可能であり、さらに詳しくは、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維に比べて、溶融温度差が20℃以上の低融点繊維の素材であり、例えば、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、コーポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(co−PCT)及びポリプロピレン(PP)よりなる群から選ばれるいずれか一種が含まれるか、あるいは、これらの組み合わせである。このとき、前記バインダー繊維が低い融点を有することから、熱接着により内部の結束が強化される。
【0040】
このため、本発明の第1の実施形態または第2の実施形態による自動車内装用クッション部材において、バインダー繊維の混合量は、5〜95重量%であることが好ましく、さらに好ましくは、20〜50重量%である。このとき、バインダー繊維の混合量が5重量%未満であれば、得られた不織布または繊維ウェブの強度の改善効果があまり高くなく、バインダー繊維の混合量が95重量%を超えると、バインダー繊維間の結束が強すぎてクッション部材として用いられ難く、主成分であるポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の含量が減ってそれから得られる耐熱性、耐化学性、弾力性、かさ高性などの物性が期待されない。
【0041】
また、本発明の第3の実施形態による自動車内装用クッション部材は、本発明の第1の実施形態または第2の実施形態により得られた繊維状基材が、少なくとも2層以上からなる層間にスペーサー生地が挿入されたものである自動車内装用クッション部材を提供する。
【0042】
図2は、本発明の第3の実施形態による自動車内装用クッション部材1’の断面模式図であり、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維にバインダー繊維が混合された繊維状基材10、11の2つの層が積層された構造において、スペーサー生地13が層間に挿入された多層構造であることを特徴とする。また、前記多層構造のクッション部材には、追加のスペーサー生地13’と、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維にバインダー繊維が混合された繊維状基材12がさらに形成される。
【0043】
本発明の第3の実施形態による自動車内装用クッション部材において、スペーサー生地13、13’には、溶融点が290℃であるポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維よりも低い200〜290℃の融点を有する公知の素材であれば使用可能である。
【0044】
本発明の最適な実施形態によれば、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維の主成分に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、コーポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(co−PCT)及びポリプロピレン(PP)よりなる群から選ばれるいずれか一種が副成分として共重合されたものとして、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)/ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)/コーポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(co−PCT)またはポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)/ポリプロピレン(PP)よりなるスペーサー生地が用いられるが、これに限定されず、低融点のポリエステル繊維も使用可能である。
【0045】
具体的に、前記低融点のポリエステル繊維からなるスペーサー生地には、200〜290℃の融点を有するように改質されたポリエステル繊維が使用可能である。
【0046】
本発明の第3の実施形態による自動車内装用クッション部材1’において、スペーサー生地は、2つの分離された繊維状基材と、これらを連結するスペーサー層と、を備える3次元の構造に形成される。スペーサー生地の最大の特徴は、圧縮抵抗性を有するということであり、この圧縮抵抗性は医療用、履物及びスポーツ用の素材に活用可能であり、産業用の複合材料及びコンクリート補強材などへと幅広く応用可能である。特に、スペーサー層により軽量化及び通気性が確保される。
【0047】
このとき、本発明の第3の実施形態による自動車内装用クッション部材1’において、層間接着方式は、熱接着方式単独、またはニードルパンチ方式と熱風接着またはニードルパンチ方式との組み合わせにより行われ、クッション部材に圧縮強度を与える。
【0048】
また、以上の物性を有することから、本発明のクッション部材は、鉄道車両、船舶、航空機などの内装用クッション部材、インテリア家具用クッション部材などに使用可能である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明についてより詳細に説明する。
【0050】
これらの実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されることはない。
【0051】
<実施例1>
ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維(融点290℃)80重量%及び低融点ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維(融点225℃)20重量%を混繊し、ニードルパンチ方式により不織布プレフォームを得、前記混繊されたウェブを上下温度が200℃に保たれ、ベルト速度が1.0m/minのダブルベルトプレスにおいて熱接着させて繊維状基材を確保した。
【0052】
<実施例2>
ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維(融点290℃)80重量%に、低融点ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維(融点225℃)10重量%及びコーポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(co−PCT)繊維(融点220℃)10重量%を混繊した以外は、前記実施例1の方法と同様にしてクッション部材を製造した。
【0053】
<実施例3>
ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)樹脂及びポリプロピレン(PP)樹脂を個別の紡糸ノズルに流入させて紡糸速度600m/minの紡糸条件下で溶融紡糸した後、3.5倍延伸し、120℃において熱処理してポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)/ポリプロピレン(PP)の芯鞘型複合繊維を製造した。このとき、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)樹脂及びポリプロピレン(PP)樹脂間の混合比は、70:30の重量比であった。
【0054】
前記製造された芯鞘型複合繊維からなるウェブを上下温度が200℃に保たれ、ベルト速度が1.0m/minのダブルベルトプレスにおいて熱接着させて繊維状基材を形成した。
【0055】
<実施例4>
ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)樹脂及びポリプロピレン(PP)樹脂をサイドバイサイド型紡糸ノズル付き押出器に入れて溶融紡糸した以外は、前記実施例3の紡糸条件と同様にしてサイドバイサイド型の複合繊維を製造し、前記実施例3の方法と同様にして繊維状基材を形成した。
【0056】
<実施例5>
ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維(融点290℃)を含有する実施例1の繊維状基材の片面に、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)/ポリブチレンテレフタレート(PBT)のスペーサー生地を積層し、その上部にポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維(融点290℃)を含有する前記繊維状基材をさらに積層し、熱プレスを用いて層間接着させてクッション部材を製造した。
【0057】
<実施例6>
前記実施例5の多層構造において、積層された繊維状基材を300回/mim/cm
2のニードルパンチした後、200℃の熱風接着方式を用いて製造した以外は、実施例5の方法と同様にしてクッション部材を製造した。
【0058】
<比較例1>
ポリエチレンテレフタレート(ポリエチレンテレフタレート(PET))繊維(ウンジンケミカル社製、単糸繊度7デニール)に、低融点ポリエチレンテレフタレート(PET)(単糸繊度6デニール)を8:2の重量比で混繊して繊維ウェブを形成した以外は、前記実施例1の方法と同様にしてクッション部材を製造した。
【0059】
<実験例1> 重量及び厚さ測定
実施例1〜実施例4において製造されたクッション部材の重量及び厚さを測定し、その結果を下記表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
上記表1の結果から、単層及び同じ厚さの条件下で、本発明の実施例1〜実施例4において製造されたクッション部材は、比較例1において製造されたクッション部材に比べて優れた軽量性を有することが確認された。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維からなる比較例1のクッション部材に比べて10%以上低い重量を有し、単位密度の低いクッション部材が製造可能であった。
【0062】
これに対し、本発明の実施例5及び実施例6において製造された多層構造のクッション部材では、スペーサー生地との複合化によりさらに厚いクッションパッドが製作され、クッション材としての物性が満たされる。
【0063】
<実験例2> 物性の測定
前記実施例1〜実施例6において製造されたクッション部材に対して、硬度、圧縮永久収縮率、空気透過度、圧縮回復率などを測定してクッション材に活用可能であるか否かを判定した。
【0064】
このとき、硬度は、不織布の厚さの70%まで圧縮したときに加えられる荷重を測定した数値であり、圧縮永久収縮率は、KS M 6672に基づいて70℃において22時間をかけて不織布の厚さの50%まで加圧した後、室温において30分回復させた後の残留永久変形を測定した数値である。
【0065】
また、空気通気度は、フラジア法により125Paの圧力下で空気透過量を測定し 、圧縮回復率は、測定機器(川端の評価システム−FB3)を用いて不織布を50gf/cm
2に圧縮した後に、回復度を測定した数値である。
【0066】
【表2】
【0067】
上記の結果から、本発明の実施例1〜実施例4において製造されたポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材を含有する繊維状基材からなるクッション部材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維により製造された比較例1のクッション部材に比べて、硬度が減少されて柔らかな圧縮感を与えることが確認された。また、圧縮回復率が増加し、これにより、圧縮永久収縮率もまた減少するという物性の改善効果が確認された。
【0068】
さらに、同じ方法により製造された比較例及び実施例を検討したとき、実施例の場合、硬度及び圧縮永久収縮率が低く、圧縮回復率は高いことから、柔らかなクッション感が得られ、高温・高圧の長時間に亘っての圧縮に対する永久変形は少なく、瞬間的な回復性に優れていることから、クッション材としての使用可能性が確認された。
【0069】
特に、実施例5及び実施例6において製造された多層構造のクッション部材は高い硬度を示した。これは、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維状基材の層間にスペーサー生地を挿入して高い結束力を与えることにより得られる。
【0070】
また、このような多層構造のクッション部材は、最高の圧縮回復率及び圧縮永久収縮率を示し、特に、実施例6の場合には、得られたクッション部材ウェブがニードルパンチ工程により押し固められて硬度が向上し、これにより、耐久性が確保される。
【0071】
以上述べたように、本発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)素材の繊維に比べて、耐熱性、耐化学性、弾力性及びかさ高性に優れたポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材にバインダー繊維を混合した繊維状基材からなるか、または、前記繊維状基材が、少なくとも2層以上からなる層間にスペーサー生地が挿入されたものである多層構造の自動車内装用クッション部材を提供する。
【0072】
特に、本発明のクッション部材は、繊維状基材の素材の変更により採択されたポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維がポリエチレンテレフタレート(PET)よりも高い耐熱性、耐化学性、弾性力及びかさ高性を有することから、高い軽量性及び弾性回復率を有し、自動車内装用途に好適に使用可能である。
【0073】
また、本発明のクッション部材は、鉄道車両、船舶、航空機などの内装用クッション部材、インテリア家具用クッション部材などに使用可能である。
【0074】
以上、本発明は、記載された具体例についてのみ詳細に説明されたが、本発明の技術思想の範囲内において様々な変形及び修正が行えるということは当業者にとって自明であり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属するということはいうまでもない。
【符号の説明】
【0075】
10、11、12…ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維にバインダー繊維が混合された繊維状基材
13、13’…スペーサー生地
100…ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)素材の繊維
200…バインダー繊維
1’…クッション部材