特許第6302114号(P6302114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302114
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】運動案内装置用のキャップ
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20180319BHJP
【FI】
   F16C29/06
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-57603(P2017-57603)
(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公開番号】特開2017-180835(P2017-180835A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2017年9月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-61077(P2016-61077)
(32)【優先日】2016年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】岸 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 諭
(72)【発明者】
【氏名】古澤 竜二
(72)【発明者】
【氏名】田中 惇博
【審査官】 尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−113671(JP,A)
【文献】 特開2013−137101(JP,A)
【文献】 特開2014−137140(JP,A)
【文献】 中国実用新案第202971574(CN,U)
【文献】 特開2007−192282(JP,A)
【文献】 特開2002−048138(JP,A)
【文献】 AMA TECH CORP,TW M503494 U,TW,2015年 6月21日,[0017]、[0019]、第8-10図,(ファミリーなし)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/00−31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動案内装置の案内レールの締結部材挿入用の孔を塞ぐためのキャップであって、
円盤状の上面部と、
前記上面部から垂下する円筒状の側面部と、
前記側面部の外周面に設けられる複数の突起と、を備え、
前記複数の突起は、前記側面部の前記外周面に円周方向に互いに離れると共に、前記外周面の上端部又は前記上端部から軸方向の中間部まで存在し、
前記突起間における前記側面部の厚さが、前記上面部の厚さよりも薄く、
前記上面部は、厚さが厚い中央部と、前記中央部よりも厚さが薄い周辺部と、を有し、
リング状の前記周辺部の全範囲内において、前記周辺部は前記中央部よりも厚さが薄い運動案内装置用のキャップ。
【請求項2】
前記上面部の下面の周縁には、リング状の溝が設けられることを特徴とする請求項1に記載の運動案内装置用のキャップ。
【請求項3】
前記突起間における前記側面部の厚さが、前記上面部の前記中央部の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項2に記載の運動案内装置用のキャップ。
【請求項4】
前記側面部の前記外周面の前記上端部には、前記締結部材挿入用の孔の面取り部に載置される鍔が設けられることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の運動案内装置用のキャップ。
【請求項5】
前記鍔の上面には、断面円弧状の面取り部が設けられることを特徴とする請求項4に記載の運動案内装置用のキャップ。
【請求項6】
前記突起間における前記側面部の厚さが、前記上面部の前記周辺部の厚さ以上であること特徴とする請求項3に記載の運動案内装置用のキャップ。
【請求項7】
前記上面部の上面からの前記突起の下端までの突起高さが、前記キャップの全高さの1/2以上であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の運動案内装置用のキャップ。
【請求項8】
前記側面部の前記外周面の全周のうち前記複数の突起が前記締結部材挿入用の孔に接触する総範囲が20%以上60%以下であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の運動案内装置用のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動案内装置の案内レールの締結部材挿入用の孔を塞ぐためのキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
運動案内装置は、テーブル等の可動体の線運動(直線又は曲線運動)を案内するのに用いられる。運動案内装置は、ベースに取り付けられる案内レールと、案内レールに線運動可能に組み付けられるキャリッジと、案内レールとキャリッジとの間に転がり運動可能に介在する多数の転動体と、を備える。キャリッジが案内レールに対して相対移動すると、これらの間を多数の転動体が転がり運動する。転動体の転がり運動を利用することで、可動体を高精度にかつ軽快に案内することができる。
【0003】
案内レールには、締結部材挿入用の孔が長さ方向に一定のピッチで設けられる。締結部材挿入用の孔には、案内レールをベースに締結するためのボルト等の締結部材が通される。この締結部材挿入用の孔に塵芥等の異物が溜まると、キャリッジに設けたシールでも異物を掻き出すことができない。異物がキャリッジ内に侵入し、転動体の円滑な転がり運動を妨げるのを防止するため、案内レールをベースに締結部材で取り付けた後、案内レールの締結部材挿入用の孔をキャップで塞ぐことが行われている(特許文献1参照)。
【0004】
従来のキャップとして、特許文献1には、円盤状のキャップ本体の周囲に複数の突起を設けたものが知られている。このキャップは、締結部材挿入用の孔の上に仮置きされた後、ハンマ等を用いて締結部材挿入用の孔に打ち込まれる。キャップの突起には、締め代が設けられていて、キャップは、締め代によって締結部材挿入用の孔に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−227838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の運動案内装置用のキャップにあっては、キャップを締結部材挿入用の孔に打ち込むとき、突起が削れてばりが発生するという課題がある。そのため、打ち込み作業の後にばりを取り除く必要があり、工数がかかる。ばりの発生を抑えるために、突起の締め代を小さくすると、案内レールへのキャップの固定力が弱まってしまう。
【0007】
そこで本発明は、ばりの発生を抑制でき、案内レールへのキャップの固定力も高めることができる運動案内装置用のキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、運動案内装置の案内レールの締結部材挿入用の孔を塞ぐためのキャップであって、円盤状の上面部と、前記上面部から垂下する円筒状の側面部と、前記側面部の外周面に設けられる複数の突起と、を備え、前記複数の突起は、前記側面部の前記外周面に円周方向に互いに離れると共に、前記外周面の上端部又は前記上端部から軸方向の中間部まで存在し、前記突起間における前記側面部の厚さが、前記上面部の厚さよりも薄く、前記上面部は、厚さが厚い中央部と、前記中央部よりも厚さが薄い周辺部と、を有し、リング状の前記周辺部の全範囲内において、前記周辺部は前記中央部よりも厚さが薄い運動案内装置用のキャップである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、キャップの側面部の剛性が上面部の剛性よりも低いので、キャップの側面部が弾性変形する。キャップの側面部にばねの機能を持たせることにより、ばりの発生を抑制でき、キャップの固定力も高めることができる。また、突起が側面部の外周面の上端部又は上端部から中間部まで存在するので、キャップを締結部材挿入用の孔に仮置きしたとき、キャップの座りを安定させることができると共に、突起の下の側面部にもばねの機能を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態のキャップが打ち込まれる運動案内装置の斜視図である。
図2】上記運動案内装置の正面図である。
図3】本実施形態のキャップの上面側斜視図である。
図4】本実施形態のキャップの底面側斜視図である。
図5】本実施形態のキャップの底面図である。
図6】本実施形態のキャップの断面図(突起が存在しない部分の断面図)である。
図7】本実施形態のキャップの断面図(突起が存在する部分の断面図)である。
図8図7のVIII部拡大図である。
図9】本実施形態のキャップの打込み作業の工程図である(図9(a)はキャップを締結部材挿入用の孔に仮置きした状態を示し、図9(b)はキャップを締結部材挿入用の孔に打ち込んだ状態を示す)。
図10】本発明の第2の実施形態のキャップの底面図である。
図11図10のX-X線断面図である。
図12】本発明の第3の実施形態のキャップの上面側斜視図である。
図13】本発明の第3の実施形態のキャップの底面側斜視図である。
図14】本発明の第3の実施形態のキャップの底面図である。
図15図14のXIV-XIV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態の運動案内装置用のキャップを詳細に説明する。ただし、本発明の運動案内装置用のキャップは種々の形態で具体化することができ、明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明の範囲を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(第1の実施形態)
【0012】
キャップが打ち込まれる運動案内装置の構成は、以下のとおりである。図1は、運動案内装置の斜視図を示し、図2はエンドプレートを外した運動案内装置の正面図を示す。運動案内装置は、長さ方向に直線状に伸びる案内レール1と、この案内レール1にボール、ローラ等の多数の転動体3を介して長さ方向に直線運動可能に組み付けられるキャリッジ2と、を備える。なお、以下では、案内レール1を水平面に取り付け、案内レール1を長さ方向から見たときの方向、すなわち図1図2の上下、左右、前後方向を用いて、運動案内装置の構成を説明するが、運動案内装置の配置はこれに限られるものではない。また、図面において、同一の構成要素には同一の符号を附す。
【0013】
図1に示すように、案内レール1の上面には、長さ方向に相互に間隔を置いて複数の締結部材挿入用の孔5(以下、単に孔5という)が開口する。孔5には、案内レール1をベースに固定するための締付け部材としてのボルト4が挿入される。図2に示すように、孔5には、ボルト4の頭部4aよりも径の大きなザグリ部5aと、ボルト4のねじ部4bよりも僅かに大きいボルト挿入穴5bとが同心円状に形成される。ザグリ部5aの内径はΦ1である。ザグリ部5aの上面の内周縁には、面取り部5aが設けられる(図9(a)も参照)。ボルト4が孔5内に完全に埋没するように、ザグリ部5aの高さはボルト4の頭部4aの高さよりも高く設定される。孔5にボルト4を通し、ボルト4をベース18にねじ込むことによって、ボルト4の頭部4aが案内レール1のザグリ部5aの座面に着座し、案内レール1がベース18に固定される。
【0014】
テーブル等の線運動する可動体は、キャリッジ2の上面に図示しないボルトを用いて取り付けられる。図1及び図2には、案内レール1の孔5にボルト4を通し、ボルト4をベース18に締めた状態が示されている。その後孔5はキャップによって塞がれるが、図1及び図2には孔5をキャップで塞ぐ前の状態が示されている。
【0015】
図2に示すように、案内レール1は、断面略四角形状で、その上面及び側面には、転動体が転がり運動する複数の転動体転走部1aが形成される。転動体転走部1aは、案内レール1の長さ方向に沿って細長く形成される。
【0016】
図1に示すように、キャリッジ2は、キャリッジ本体11と、キャリッジ本体11の移動方向の両端面に設けられるエンドプレート12と、を備える。キャリッジ本体11は、案内レール1の上面に対向する中央部11と、その中央部11の幅方向の左右両側から垂下して案内レール1の左右側面に対向する側壁部11と、を備える。キャリッジ本体11には、案内レール1の転動体転走部1aに対向する負荷転動体転走部2a及び負荷転動体転走部2aに平行な無負荷戻し路7が形成される。エンドプレート12には、負荷転動体転走部2a及び無負荷戻し路7を接続する方向転換路6´の外周側が形成される。
【0017】
キャリッジ2の負荷転動体転走部2a、無負荷戻し路7、及び方向転換路6´によって転動体循環路が形成される。転動体循環路には、複数の転動体3が配列・収容される。複数の転動体3は、リテーナ8に一連に回転自在に保持される。リテーナ8は、転動体3間に介在する間座部9と、間座部9を連結するバンド10と、を備える。
【0018】
案内レール1とそれを囲むキャリッジ2との間には断面U字形状のすきまが空く。このすきまを塞ぐために、キャリッジ2の移動方向の両端面には案内レール1の外形形状に対応するシール13が取り付けられる。シール13によって塵、埃、きり屑等の異物がキャリッジ2の内部に侵入し、転動体3に付着するのが防止される。
【0019】
運動案内装置を塵芥の多い環境で使用した場合、案内レール1の孔5にも異物が溜まる。孔5に溜まった異物は、案内レール1の上面を掻き取るシール13では除去することができず、キャリッジ2の内部に侵入する可能性がある。キャリッジ2の内部に侵入した異物は、転動体転走部1a及び負荷転動体転走部2aに付着し、転動体3の円滑な転がり運動を妨げる可能性がある。これを防止するために、案内レール1の孔5はキャップ21によって覆われる。
【0020】
図3は本発明の第1の実施形態のキャップ21の上面側斜視図を示し、図4は本発明の第1の実施形態のキャップ21の底面側斜視図を示す。図3図4に示すように、キャップ21は、円盤状の上面部22と、上面部22から垂下する円筒状の側面部23と、側面部23の外周面に設けられる複数の突起24と、を備える。キャップ21は、樹脂の成型品であり、上面部22、側面部23、突起24は、一体に形成される。以下に、キャップ21の各部の構成を順番に説明する。
【0021】
図3図4に示すように、キャップ21の上面部22は円盤状である。上面部22の周縁から側面部23が垂下する。図6の断面図に示すように、上面部22は、厚さが厚い中央部22aと、中央部22aよりも厚さが薄い周辺部22bと、を有する。上面部22の上面22は、後述する鍔27の上面を除いて平坦に形成される。
【0022】
図5の底面図に示すように、中央部22aは小径の円状であり、周辺部22bは中央部22aを囲むリング状である。中央部22aは、円状の範囲内において一定の厚さBを持つ。周辺部22bは、リング状の範囲内において一定の厚さCを持つ。上面部22の下面の周縁(言い換えれば周辺部22bの周縁)には、リング状の溝25が設けられる。図6に示すように、溝25の断面は、円弧状である。なお、溝25のある部分の上面部22の厚さAは、特に限定されないが、後述する側面部23の厚さDよりも厚いのが望ましい。
【0023】
図3図4に示すように、側面部23は円筒状である。側面部23には、スリットは設けられていない。側面部23にスリットを設けると、側面部23の弾性変形に伴って、上面部22が弾性変形し易くなる。側面部23を完全な円筒状にするのは、これを防止するためである。図6に示すように、側面部23は、一定の厚さDを持つ。図5に示すように、側面部23の外径Φ2は、孔5のザグリ部5aの内径Φ1よりも小さい。
【0024】
側面部23の厚さDは、上面部22の周辺部22bの厚さCよりも薄い。側面部23の厚さD<上面部22の周辺部22bの厚さC<上面部22の中央部22aの厚さB、の関係がある。キャップ21の各部の肉厚は、各部の剛性と相関関係があり、側面部23の剛性<上面部22の周辺部22bの剛性<上面部22の中央部22aの剛性、が成立する。
【0025】
図4に示すように、側面部23の外周面23aの上端部には、鍔27が設けられる。キャップ21を孔5に打ち込んだとき、この鍔27は、ザグリ部5aの面取り部5aの上に載る(図9(b)参照)。側面部23の外周面23aの下端部には、導入用テーパ面23bが設けられる。孔5にキャップ21を導入し易くするためである。
【0026】
図3図4に示すように、複数の突起24(この実施形態では6つの突起24)は、側面部23の外周面23aに円周方向に等ピッチで互いに離れて配置される。突起24は、側面部23の外周面23aの上端部から軸方向の中間部まで存在する。突起24は、必ずしも中間部まで存在しなくても、例えば上端部のみに存在していてもよい。突起24は、導入用テーパ面23bまで軸方向に延ばされることはなく、導入用テーパ面23bよりも上方に存在する。図5に示すように、側面部23の外周面23aのうち複数の突起24が存在する範囲(図5において、α度×6個/360度で表される)は、30%以下である。
【0027】
図5に示すように、突起24の外周面24aは、側面部23の外周面23aと同心円上に位置する。突起24の外周面24aの外径Φ3は、孔5のザグリ部5aの内径Φ1よりも大きい(図9(a)、(b)参照)。このため、突起24は、締め代をもって孔5のザグリ部5aに打ち込まれる。図3に示すように、側面視において突起24の形状は四角形であるが、特に限定されることはなく、三角形にすることもできる。各突起24の下端部には、楔状の傾斜面24bが形成される。
【0028】
図7は、突起24がある部分のキャップ21の断面図を示し、図8は、図7のVIII部拡大図を示す。図7に示すように、突起24がある部分の側面部23の厚さD´も、周辺部22bの厚さCよりも薄い。図8の拡大図に示すように、鍔27の上面には、断面円弧状の面取り部27aが設けられる。この面取り部27aは、上面部22の平坦な上面22に連続する。
【0029】
図9は、本実施形態のキャップ21を孔5に打ち込むときの工程図を示す。図9では、ボルトが省略されているが、実際には孔5内にはボルト4が挿入されている。
【0030】
まず、図9(a)に示すように、キャップ21を孔5のザグリ部5aに導入し、キャップ21をザグリ部5a上に仮置きする。突起24の外径Φ3は、ザグリ部5aの内径Φ1よりも大きいので、突起24がザグリ部5aの面取り部5a1に引っ掛かった状態で、キャップ21がザグリ部5a上に仮置きされる。キャップ21の側面部23の、突起24よりも下方の部分が、ザグリ部5a内に挿入される。
【0031】
次に、図9(b)に示すように、キャップ21をザグリ部5aに打ち込む。仮置きした状態のキャップ21の座りが安定しているので、キャップ21を傾けて打ち込むことがない。キャップ21の打ち込みは、キャップ21の上に上下面が平らな当て金具を置き、この当て金具をプラスチックハンマで打つことによって行われるのが望ましいが、プラスチックハンマで直接キャップ21を打ち込むこともできる。キャップ21を打ち込んでも、キャップ21は図示しないボルト4に当たることはなく、キャップ21とボルト4との間にはすきまが空く。
【0032】
キャップ21は、上面部22の上面22が案内レール1の上面1と同一の高さになるまでザグリ部5aに打ち込まれる。複数の突起24は締め代をもっているので、複数の突起24はザグリ部5aの内面に押し付けられ、キャップ21がザグリ部5aに固定される。キャップ21の打ち込みにより、キャップ21の鍔27は、ザグリ部5aの面取り部5a上に載る。
【0033】
本実施形態のキャップ21によれば、以下の効果をする。突起24がザグリ部5aの内面に押し付けられるとき、側面部23の剛性が上面部22の剛性よりも低いので、側面部23が弾性変形する。側面部23にばねの機能を持たせることにより、突起24が削れてばりが発生するのを抑制でき、ザグリ部5aへのキャップ21の固定力も高めることができる。また、突起24が側面部23の外周面23aの上端部又は上端部から中間部までしか設けられていないので、キャップ21を仮置きしたとき、キャップ21の座りを安定させることができると共に、突起24の下の側面部23にもばねの機能を持たせることができる。
【0034】
キャップ21の上面部22の中央部22aの剛性が周辺部22bの剛性よりも高いので、キャップ21の上面部22の中央部22aの盛り上がりを抑制することができ、キャップ21の上面部22の上面22を平坦に保つことができる。また、側面部23の弾性変形では足りない分を上面部22の周辺部22bの弾性変形で補うこともできる。
【0035】
上面部22の周辺部22bの剛性が側面部23の剛性よりも高いので、キャップ21の側面部23の弾性変形を上面部22に伝わりにくくすることができる。
【0036】
上面部22の下面の周縁にリング状の溝25を設けるので、キャップ21の側面部23の弾性変形を上面部22により伝わりにくくすることができる。
【0037】
側面部23にザグリ部5aの面取り部5aに載置される鍔27を設けるので、キャップ21上をキャリッジ2のシール13が走行してもキャップ21が沈むのを防止できる。
【0038】
鍔27の上面に断面円弧状の面取り部27aを設けるので、キャップ21上をキャリッジ2のシール13が走行してもシール13が鍔27に引っ掛かるのを防止できる。
【0039】
側面部23の外周面23aの全周のうち複数の突起24が存在する範囲が30%以下であるので、側面部23を弾性変形させ易い。
(第2の実施形態)
【0040】
図10は本発明の第2の実施形態のキャップ31の底面図を示し、図11図10のX−X線断面図を示す。第2の実施形態のキャップ31も、円盤状の上面部22と、上面部22から垂下する円筒状の側面部23と、側面部23の外周面に設けられる複数の突起24と、を備える。上面部22は、厚さが厚い中央部22aと、中央部22aよりも厚さが薄い周辺部22bと、を有する。上面部22の周縁には、鍔27が設けられる。側面部23の外周面には、円周方向に等ピッチで複数の突起24(この実施形態では6つの突起24)が設けられる。第1の実施形態と同様に、突起24は、側面部23の外周面23aの上端部から軸方向の中間部まで存在する。
【0041】
第2の実施形態では、上面部22の中央部22aの厚さB、上面部22の周辺部22bの厚さC、側面部23の厚さD(突起24が無い部分の厚さD)の関係が第1の実施形態と異なる。具体的には、側面部23の厚さDは、上面部22の中央部22aの厚さBよりも小さく、周辺部22bの厚さC以上に設定される。すなわち、C≦D<Bの関係がある。
【0042】
また、上面部22の下面の周縁(言い換えれば周辺部22bの周縁)には、リング状の溝25が設けられておらず、周辺部22bと側面部23とは断面円弧状の連結部32で連結される。
【0043】
上面部22の中央部22a、周辺部22b、側面部23のその他の構成は、第1の実施形態のキャップ21と略同一であるので、同一の符号を附してその詳しい説明を省略する。
【0044】
第2の実施形態のキャップ31によれば、以下の効果をする。突起24がザグリ部5aの内面に押し付けられるとき、側面部23の厚さDが上面部22の中央部22aの厚さBよりも薄いので、側面部23が弾性変形する。側面部23にばねの機能を持たせることにより、突起24が削れてばりが発生するのを抑制できる。
【0045】
キャップ31の上面部22の中央部22aの厚さBが周辺部22bの厚さCよりも厚いので、キャップ31の上面部22の中央部22aの盛り上がりを抑制することができる。
【0046】
側面部23の厚さDが上面部22の周辺部22bの厚さC以上であるので、ばねの機能を持たせた側面部23の弾性変形を抑制することができ、これにより抜去力及び保持力が向上する。抜去力は、キャップ31の抜けにくさを表すもので、キャップ31の抜き取り試験を行うことで測定される。保持力は、ザグリ部5aへのキャップ31の落ち込みにくさを表すもので、キャップ31の押し込み試験を行うことで測定される。キャップ31の抜去力及び保持力を向上することで、高温環境や低温環境などの耐環境性が高いキャップにすることができる。
【0047】
上面部22の下面の周縁にリング状の溝25(図6参照)が設けられておらず、円弧状の連結部32が設けられるので、側面部23の変形をより抑制することができ、これにより抜去力及び保持力が向上する。
(第3の実施形態)
【0048】
図12は第3の実施形態のキャップ41の上面側斜視図を示し、図13はキャップ41の底面側斜視図を示す。キャップ41も、円盤状の上面部22と、上面部22から垂下する円筒状の側面部23と、側面部23の外周面に設けられる複数の突起24と、を備える。
【0049】
図14はキャップ41の底面図を示し、図15図14のXIV−XIV線断面図を示す。このキャップ41では、抜去力及び保持力をより大きくするために、突起24の面積(高さ×幅)を第1及び第2の実施形態のキャップ21,31よりも大きくしている。突起24は、側面部23の外周面23a の上端部から軸方向の中間部まで存在する。上面部22の上面22から突起24の下端(すなわち、突起24の、ザグリ部5aに接触する部分の下端)までの突起高さEは、キャップ41の全高さFの1/2以上、この実施形態では、約2/3に設定される。ただし、突起24は、導入用テーパ面23bまで軸方向に延びることはなく、導入用テーパ面23bよりも上方に存在する。
【0050】
突起24は、円周方向に等ピッチで複数、この実施形態では6つ設けられる。側面部23の外周面の全周のうち6つの突起24がザグリ部5aに接触する総範囲(図13のクロスハッチングで示す部分)は、20%以上60%以下、望ましくは20%以上50%以下である。
【0051】
第2の実施形態のキャップ31と同様に、上面部22は、厚さが厚い中央部22aと、中央部22aよりも厚さが薄い周辺部22bと、を有する。上面部22の周縁には、鍔27が設けられる。側面部23の厚さDは、上面部22の中央部22aの厚さBよりも小さく、周辺部22bの厚さC以上に設定される。すなわち、C≦D<Bの関係がある。周辺部22bと側面部23とは断面円弧状の連結部32で連結される。
【0052】
上面部22の中央部22a、周辺部22b、側面部23のその他の構成は、第1の実施形態のキャップ21と略同一であるので、同一の符号を附してその詳しい説明を省略する。
【0053】
第3の実施形態のキャップ41によれば、以下の効果を奏する。突起24の高さEがキャップ41の全高さFの1/2以上であるので、突起24がザグリ部5aに接触する面積を大きくすることができ、これにより抜去力及び保持力を大きくすることができる。
【0054】
側面部23の外周面の全周のうち突起24がザグリ部5aに接触する総範囲が20%以上60%以下であるので、突起24がザグリ部5aに接触する面積を大きくすることができ、これにより抜去力及び保持力を大きくすることができる。なお、総範囲が20%未満であると、必要な抜去力及び保持力を確保できないという問題がある。また、総範囲が60%を超えると、突起24が削れてばりが発生するという問題がある。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々に変更可能である。
【0056】
キャップの形状は、本発明の要旨を変更しない範囲で他の形状を採用することができる。例えば、突起の個数は2個以上の任意の個数を設定することができるし、突起の形状は四角形以外に円形、三角形、五角形等を採用することができる。
【0057】
キャップが小さい場合、側面部の外周面の全周のうち複数の突起が存在する範囲を50%程度にすることもできる。
【0058】
キャップの材質は樹脂に限られることはなく、ステンレス、アルミニウム、真鍮等の金属でもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…案内レール、5…締結部材挿入用の孔、5a…締結部材挿入用の孔のザグリ部の面取り部、21,31,41…キャップ、22…上面部、22a…中央部、22b…周辺部、23…側面部、23a…側面部の外周面、24…突起、25…リング状の溝、27…鍔、27a…鍔の面取り部、B…上面部の中央部の厚さ(上面部の厚さ)、C…上面部の周辺部の厚さ、D…突起間における側面部の厚さ
図1
図2
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図15