(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可動電極は、前記第1仮想円と中心が等しく径が異なる2つの円の周上における2つの円弧と、当該中心から前記単位回転角をなして径方向に伸びる2本の直線上における2本の線分とによって囲まれた平面形状を有し、
前記固定電極が前記可動電極と同様な形状を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の回転式入力装置。
前記固定電極のペアにおける各固定電極は、前記回転軸と平行な方向からみて、前記操作部が前記停止位置にある場合に、共通の前記可動電極と同じ面積の重なりを生じ得る位置に設けられている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の回転式入力装置。
1つの前記固定電極が、2つの前記可変容量素子を形成する2つの固定電極のペアによって共有されており、当該共有された固定電極から前記検出信号生成部へ前記電荷が入力される
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の回転式入力装置。
前記パルス電圧供給部は、前記操作部を所定の停止位置から所定の方向へ前記単位回転角ずつ3ステップ回転させる場合における3つの前記停止位置において前記検出信号生成部により生成される3つの前記検出信号が異なるレベルを有するように、前記複数の可変容量素子にそれぞれパルス電圧を供給し、
前記信号処理部は、前記可変容量素子の静電容量の変化に対応した前記検出信号の変化に基づいて、前記操作部の回転方向を判定する
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の回転式入力装置。
前記複数の可変容量素子は、前記操作部を所定の停止位置から所定の方向へ前記単位回転角ずつ3ステップ回転させる場合における第1ステップの停止位置において前記固定電極のペアと前記可動電極との前記重なりを生じる少なくとも1つの第1可変容量素子、及び、第2ステップの停止位置において前記固定電極のペアと前記可動電極との前記重なりを生じる少なくとも1つの第2可変容量素子を含んでおり、
前記パルス電圧供給部は、前記第1ステップの停止位置において前記第1可変容量素子に蓄積される電荷と、前記第2ステップの停止位置において前記第2可変容量素子に蓄積される電荷とが逆の極性を持つか、又は、同一極性で異なる大きさを持つように、前記第1可変容量素子及び前記第2可変容量素子に対する前記パルス電圧の供給を行い、
前記検出信号生成部は、前記パルス電圧の供給によって前記第1可変容量素子及び前記第2可変容量素子に蓄積される電荷の和に応じた前記検出信号を生成し、前記3ステップの回転を行う場合における第3ステップの停止位置においては、前記第1ステップの停止位置における前記検出信号と前記第2ステップの停止位置における前記検出信号との中間の値を持った前記検出信号を生成する
ことを特徴とする請求項9に記載の回転式入力装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載される回転式静電エンコーダでは、搬送波に含まれる回転角の信号成分を復調するために、アナログの乗算器を設ける必要があり、回路構成が複雑になるという問題や、乗算器の温度特性等によって演算結果に誤差が生じ易いという問題がある。
【0005】
他方、可動電極にグランド電位を与えておき、固定電極からグランド電位に対してパルス電圧を与えることにより、固定電極と可動電極との間に形成されたキャパシタの静電容量を検出する方法も考えられる。しかしながら、この方法では、複数の検出位置において可動電極との静電容量を検出しようとすると、検出位置ごとに駆動電極が必要となり、検出位置ごとにキャパシタの蓄積電荷を検出する回路が必要になるため、回路規模が大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成で操作部の回転を検出できる回転式入力装置回路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る回転式入力装置は、基台部と、前記基台部に回転自在に支持された操作部と、前記操作部に設けられ、前記操作部の回転軸からの距離が等しい第1仮想円の周上において等間隔に配置される複数の可動電極と、前記第1仮想円の周上において隣接する2つの前記可動電極の位置に挟まれた円弧に対応する中心角をN等分(Nは3以上の整数を示す。)した角度である単位回転角ごとに設定された停止位置において、前記操作部の回転を抑制する節度機構と、前記基台部に設けられ、前記回転軸に対して前記第1仮想円を平行に移動した第2仮想円の周上に配置される複数の可変容量素子と、前記複数の可変容量素子にそれぞれパルス電圧を供給するパルス電圧供給部と、前記パルス電圧の供給により前記複数の可変容量素子に蓄積される電荷に応じた検出信号を生成する検出信号生成部と、前記検出信号に基づいて前記操作部の回転方向を判定する信号処理部とを具備する。
前記可変容量素子は、前記基台部に設けられ、前記第2仮想円の周上において隣接して配置された固定電極のペアを含む。
前記固定電極のペアにおける各固定電極は、前記操作部が前記停止位置にある場合に、前記回転軸と平行な方向からみて、共通の前記可動電極と重なりを生じ得る位置に設けられる。前記複数の可変容量素子が、前記第2仮想円の周上の異なる位置に設けられる。
前記検出信号生成部は、前記複数の可変容量素子を形成する固定電極のペアにおける各々一方の固定電極から前記電荷を入力し、当該入力した電荷の和に応じた前記検出信号を生成する。
【0008】
上記の構成によれば、前記固定電極のペアにおける各固定電極は、前記操作部が前記停止位置にある場合に、前記回転軸と平行な方向からみて、共通の前記可動電極と重なりを生じ得る位置に設けられているため、前記可変容量素子の静電容量は、前記可動電極が前記固定電極のペアと重なりを生じる位置にあるか否かに応じて大きく変化する。すなわち、前記操作部の前記停止位置に応じて、各可変容量素子の静電容量が変化する。こうした可変容量素子が前記第2仮想円の周上の異なる位置に設けられるため、各可変容量素子の静電容量の変化に応じて、前記操作部の前記停止位置を求め、前記操作部の回転方向を判定することが可能となる。また、前記検出信号生成部において、前記複数の可変容量素子を形成する固定電極のペアにおける各々一方の固定電極から前記電荷が入力され、当該入力された電荷の和に応じた前記検出信号が生成される。そのため、前記第2仮想円の周上の異なる複数の位置における前記可変容量素子の静電容量の変化が、1つの検出信号によって表されるため、複数の位置のそれぞれについて検出信号を生成する場合に比べて回路構成が簡易になる。
【0009】
好適に、1つの前記固定電極が、2つの前記可変容量素子を形成する2つの固定電極のペアによって共有されており、当該共有された固定電極から前記検出信号生成部へ前記電荷が入力されてよい。
上記の構成によれば、固定電極の数が減るため構成が簡易になる。
【0010】
好適に、前記可動電極は、前記第1仮想円の中心からみて、前記単位回転角の扇型領域の範囲内に含まれてよい。
【0011】
好適に、前記可動電極は、前記第1仮想円と中心が等しく径が異なる2つの円の周上における2つの円弧と、当該中心から前記単位回転角をなして径方向に伸びる2本の直線上における2本の線分とによって囲まれた平面形状を有してよい。前記固定電極は、前記可動電極と同様な形状を有してよい。
【0012】
好適に、前記可動電極は、前記第1仮想円の中心からみて、前記単位回転角の1倍以上1.5倍以下の角度を持つ扇型領域の範囲内に含まれてよく、この場合、前記固定電極は、前記第2仮想円の中心からみて、前記単位回転角の0.5倍以上1倍以下の角度を持つ扇型領域の範囲内に含まれてよい。
【0013】
好適に、前記固定電極のペアにおける各固定電極は、前記回転軸と平行な方向からみて、前記操作部が前記停止位置にある場合に、共通の前記可動電極と同じ面積の重なりを生じ得る位置に設けられてよい。
【0014】
好適に、前記パルス電圧供給部は、前記操作部を所定の停止位置から所定の方向へ前記単位回転角ずつ3ステップ回転させる場合における3つの前記停止位置において前記検出信号生成部により生成される3つの前記検出信号が異なるレベルを有するように、前記複数の可変容量素子にそれぞれパルス電圧を供給してよい。前記信号処理部は、前記可変容量素子の静電容量の変化に対応した前記検出信号の変化に基づいて、前記操作部の回転方向を判定してよい。
【0015】
好適に、前記複数の可変容量素子は、前記操作部を所定の停止位置から所定の方向へ前記単位回転角ずつ3ステップ回転させる場合における第1ステップの停止位置において前記固定電極のペアと前記可動電極との前記重なりを生じる少なくとも1つの第1可変容量素子、及び、第2ステップの停止位置において前記固定電極のペアと前記可動電極との前記重なりを生じる少なくとも1つの第2可変容量素子を含んでよい。
前記パルス電圧供給部は、前記第1ステップの停止位置において前記第1可変容量素子に蓄積される電荷と、前記第2ステップの停止位置において前記第2可変容量素子に蓄積される電荷とが逆の極性を持つか、又は、同一極性で異なる大きさを持つように、前記第1可変容量素子及び前記第2可変容量素子に対する前記パルス電圧の供給を行ってよい。
前記検出信号生成部は、前記パルス電圧の供給によって前記第1可変容量素子及び前記第2可変容量素子に蓄積される電荷の和に応じた前記検出信号を生成し、前記3ステップの回転を行う場合における第3ステップの停止位置においては、前記第1ステップの停止位置における前記検出信号と前記第2ステップの停止位置における前記検出信号との中間の値を持った前記検出信号を生成してよい。
【0016】
好適に、前記基台部の平面部に固定され、前記回転軸に対して垂直に突出したフランジ部を備える支持部材を有してよい。前記操作部は、前記平面部と前記フランジ部との間に嵌入するリング状の縁部を有してよい。前記可動電極は、前記リング状の縁部に設けられてよい。前記支持部材は、グランド電位に接続された導体でよい。
上記の構成によれば、可動電極がグランド電位に接続された導体である前記リング状の縁部によってシールドされるため、操作者の指などから伝搬するノイズの影響を受け難くなる。
【0017】
好適に、前記基台部は、前記平面部の一部がタッチセンサの操作領域として用いられる平板状の部材でよい。前記基台部における前記平面部と反対側の面に前記固定電極が形成されてよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構成で操作部の回転を検出できる回転式入力装置回路装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る回転式入力装置の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る回転式入力装置は、電極間の静電容量の変化を利用してユーザの回転操作を検出する装置であり、静電容量方式のタッチセンサとしての機能も備える。
図1に示す回転式入力装置は、タッチセンサの操作領域1を備えた基台5と、基台5に回転自在に支持された操作部10を有する。基台5は、例えばガラス等の平板状の部材であり、操作部10が取り付けられる面と反対側の面に回転検出用及びタッチセンサ用の電極パターンが形成される。タッチセンサ用の電極パターンが形成される領域に対応する表側の平面部は、タッチセンサの操作領域1として使用される。
【0021】
図2は、
図1におけるA−A’線の断面を示す図である。基台部5の表側の平面部51に、円柱状の支持部材7が固定される。操作部10は、この支持部材7によって基台部5に回転自在に支持される。支持部材7は、回転軸AXに対して垂直に突出したフランジ部71を有する。このフランジ部71と基台部5の平面部51との間に、操作部10のリング状の縁部11が嵌入する。支持部材7と操作部10の間には、複数のベアリング18が設けられている。
【0022】
支持部材7は、導電性を有する材料によって形成されており、グランド電位に接続される。従って、操作部10のリング状の縁部11は、操作部10の表側からみて、グランド電位を有するフランジ部71により覆われた状態となっている。この操作部10の縁部11には、後述する可動電極(EM1〜EM8)が設けられている。
【0023】
図3は、操作部10を裏面側から見た図であり、基台部5の平面部51に対向する操作部10の裏面を示す。
操作部10の裏面には、操作部10の回転軸AXからの距離が等しい第1仮想円IM1の周上において等間隔に配置された8つの可動電極(EM1〜EM8)が設けられている。可動電極EM1〜EM8(以下、任意の1つの可動電極を「EM」と記す。)は、第1仮想円IM1の中心Pからみて、単位回転角θの扇型領域の範囲内に含まれる。具体的には、可動電極EMは、第1仮想円IM1と中心Pが等しく径が異なる2つの円CY1,CY2の周上における2つの円弧Ar1,Ar2と、中心Pから単位回転角θをなして径方向に伸びる2本の直線L1,L2上における2本の線分Se1,Se2とによって囲まれた平面形状を有する。後述する固定電極EF1〜EF4は、この可動電極EM1〜EM8と同様な形状を有する。また単位回転角θは、次に述べる節度機構15による1つの停止位置から次の停止位置までの回転角である。
【0024】
本実施形態に係る回転式入力装置は、単位回転角θごとに設定された所定の停止位置において操作部10の回転を抑制する節度機構15を有する。節度機構15は、例えば、
図2に示すように、支持部材7の外周に設けられた磁石15aと、操作部10の内周に設けられた磁石15bを有する。磁石15a,15bは、それぞれ歯車状の凹凸を同数ずつ有しており、両者の凸部同士が向き合う状態を保つように操作部10の回転を抑制する。
【0025】
単位回転角θは、第1仮想円IM1の周上において隣接する2つの可動電極の位置に挟まれた円弧に対応する中心角φをN等分(Nは3以上の整数を示す。)した角度に設定される。すなわち、1周の回転角(360°)を可動電極EMの個数のN倍で割った角度が単位回転角θとなる。
図3の例において、可動電極数は8であり、Nは3であるため、単位回転角θは15°となる。
【0026】
操作部10に設けられた8つの可動電極EMは同一の形状を持っており、第1仮想円IM1の周上において等間隔に配置されるため、基台部5側からみた可動電極EMの配置は、節度機構15による停止位置をNステップ(
図3の例では3ステップ)だけ一定の方向に回転させる度に同じ状態へ戻る。
【0027】
図4は、基台部5の裏面に設けられた電極パターンの一例を示す図である。
基台部5の裏面には、タッチセンサ用の電極として駆動電極ED1〜ED23及びセンス電極ES1〜ES32が形成されるとともに、回転検出用の電極として固定電極EF1〜EF4が形成される。これらの電極は、例えば、センス電極ES1〜ES32と固定電極EF1〜EF4が第1層に成膜され、駆動電極ED1〜ED23が第1層の上の第2層に成膜された2層構造の成膜層52として形成される。駆動電極ED1〜ED23とセンス電極ES1〜ES32はITOなどの透明導電膜であり、図示しない液晶パネルの光を透過する。
【0028】
駆動電極ED1〜ED23及びセンス電極ES1〜ES32は、
図4において示すように格子状に配置されており、駆動電極とセンス電極との交差点にはそれぞれキャパシタCSが形成される。基台部5の操作領域1に指などの物体が近接すると、指が近接した位置の近くに形成されるキャパシタCSの静電容量が変化する。駆動電極ED1〜ED23は、こられのキャパシタCSに対して、後述のパルス電圧供給部100により生成されたパルス電圧を伝達する。センス電極ES1〜ES32は、パルス電圧の供給によって各交差点のキャパシタCSに蓄積される電荷QSを後述の検出信号生成部110に伝送する。
【0029】
固定電極EF1〜EF4は、回転軸AXに対して第1仮想円IM1を基台部5へ平行に移動した第2仮想円IM2の周上に配置されており、
図4の例では並んで配置されている。この4つの固定電極EF1〜EF4(以下、任意の1つの固定電極を「EF」と記す。)は、可動電極EMとの位置関係に応じて静電容量が変化する3つの可変容量素子VC1〜VC3を形成する(以下、任意の1つの可変容量素子を「VC」と記す。)。第1可変容量素子VC1は、第2仮想円IM2の周上において隣接する固定電極EF1,EF2のペアにより形成される。第2可変容量素子VC2は、第2仮想円IM2の周上において隣接する固定電極EF2,EF3のペアにより形成される。第3可変容量素子VC3は、第2仮想円IM2の周上において隣接する固定電極EF3,EF4のペアにより形成される。従って、固定電極EF2は第1可変容量素子VC1と第2可変容量素子VC2に共有され、固定電極EF3は第2可変容量素子VC2と第3可変容量素子VC3に共有される。2つの可変容量素子によって共有された固定電極EF2,EF3は、後述する検出信号生成部110に接続される。
【0030】
図5は、可動電極EMと固定電極EFの位置関係を示す図である。可変容量素子VCを形成する固定電極EFのペア(
図4,
図5の例ではEF1とEF2のペア,EF2とEF3のペア,EF3とEF4のペア)における各固定電極は、操作部10が上述した節度機構15の停止位置にある場合に、回転軸AXと平行な方向からみて、共通の一つの可動電極EMと重なりを生じ得る位置に設けられている。操作部10を停止位置から一定方向へ単位回転角θずつ3ステップ回転させる場合における3個の停止位置について可変容量素子VCの静電容量を比較すると、当該可変容量素子VCを形成する固定電極EFのペアが可動電極EMと重なりを生じる1つの停止位置における静電容量が、重なりを生じない他の2つの停止位置における静電容量に対して大きな容量差を持つ。従って、可変容量素子VCの静電容量の変化を調べることにより、その可変容量素子VCを形成する固定電極EFのペアと重なりを生じる位置に可動電極EMが存在するか否かを判定することが可能となる。
【0031】
また、
図5の例において、可変容量素子VCを形成する固定電極EFのペアにおける各固定電極は、操作部10が上述した節度機構15の停止位置にある場合に、回転軸AXと平行な方向からみて、共通の一つの可動電極EMと同じ面積で重なりを生じ得る位置に設けられている。すなわち、固定電極EFは可動電極EMと同様な形状を有しており、回転軸AXと平行な方向からみて、操作部10が停止位置にある場合の可動電極EMとぴったり重なる位置に対し、単位回転角θの半分(θ/2)だけ第2仮想円IM2の周上を回転した位置に形成される。固定電極EFのペアが共通の一つの可動電極EMと同じ面積で重なることにより、両者の重なりの面積が異なる場合に比べて、静電容量の変化量が大きくなる。
【0032】
なお、基台部5の裏面の成膜層52には、固定電極EFを覆うようにグランド電極EGが形成される(
図2)。すなわち、固定電極EFと可動電極EMは、グランド電位を有する操作部10の縁部11とグランド電極EGとの間に挟まれる。これにより、基台部5の表側から接近する指先等の物体や、基台部5の裏側に位置する液晶パネル等からのノイズの影響を低減することができる。
【0033】
図6は、本実施形態に係る回転式入力装置において回転の検出に関わる構成の一例を示す図である。
回転式入力装置は、回転検出に関わる構成として、パルス電圧供給部100と、検出信号生成部110と、信号処理部120と、記憶部130を有する。
【0034】
パルス電圧供給部100は、基台部5の3つの可変容量素子(VC1〜VC3)にそれぞれパルス電圧を供給する回路であり、パルス電圧の供給パターン(パターンA,パターンB,パターンC)が異なる3つの動作モード(第1動作モード,第2動作モード,第3動作モード)を順番に時分割で切り替えながら繰り返し実行する。
【0035】
以下の説明では、第1可変容量素子VC1の静電容量の容量差が増大する停止位置(固定電極EF1,EF2のペアと可動電極EMとが重なりを生じる停止位置)を「SP1」、第2可変容量素子VC2の静電容量の容量差が増大する停止位置(固定電極EF2,EF3のペアと可動電極EMとが重なりを生じる停止位置)を「SP2」、第3可変容量素子VC3の静電容量の容量差が増大する停止位置(固定電極EF3,EF4のペアと可動電極EMとが重なりを生じる停止位置)を「SP3」と記す。この場合、停止位置SP3から
図5の右方向へ単位回転角θずつ3ステップだけ操作部10を回転させると、第1ステップの停止位置が「SP1」となり、第2ステップの停止位置が「SP2」となり、第3ステップの停止位置が「SP3」となる。
【0036】
(第1動作モード/パターンA)
第1動作モードにおいて、パルス電圧供給部100は、操作部10が停止位置SP1にあるとき第1可変容量素子VC1に蓄積される第1電荷Q1と、操作部10が停止位置SP2にあるとき第2可変容量素子VC2に蓄積される第2電荷Q2とが逆の極性を持つように、第1可変容量素子VC1及び第2可変容量素子VC2へのパルス電圧の供給を行う。
図5の例において、パルス電圧供給部100は、第1可変容量素子VC1の固定電極EF1に正電圧「+V」のパルス電圧を供給し、第2可変容量素子VC2の固定電極EF3に負電圧「−V」のパルス電圧を供給し、第1可変容量素子VC1及び第2可変容量素子VC2の共通の固定電極EF2にグランド電位を与える。
なお、パルス電圧供給部100は、第1電荷Q1と第2電荷Q2とが同一極性で異なる大きさを持つよう第1可変容量素子VC1及び第2可変容量素子VC2へのパルス電圧の供給を行ってもよい。この場合も、後述する検出信号生成部110において、各停止位置の検出信号Dsが異なるレベルを持つようにすることができる。
【0037】
また、
図5の例において、パルス電圧供給部100は、パルス電圧の供給を行わない第3可変容量素子VC3の固定電極EF4に正電圧「+V」を印加する。
【0038】
(第2動作モード/パターンB)
第2動作モードにおいて、パルス電圧供給部100は、操作部10が停止位置SP2にあるとき第2可変容量素子VC2に第1電荷Q1が蓄積され、操作部10が停止位置SP3にあるとき第3可変容量素子VC3に第2電荷Q2が蓄積されるように、第2可変容量素子VC2及び第3可変容量素子VC3へのパルス電圧の供給を行う。
図5の例において、パルス電圧供給部100は、第2可変容量素子VC2の固定電極EF2に正電圧「+V」のパルス電圧を供給し、第3可変容量素子VC3の固定電極EF4に負電圧「−V」のパルス電圧を供給し、第2可変容量素子VC2及び第3可変容量素子VC3の共通の固定電極EF3にグランド電位を与える。
【0039】
また、
図5の例において、パルス電圧供給部100は、パルス電圧の供給を行わない第1可変容量素子VC1の固定電極EF1に正電圧「+V」を印加する。
【0040】
(第3動作モード/パターンC)
第3動作モードにおいて、パルス電圧供給部100は、操作部10が停止位置SP1にあるとき第1可変容量素子VC1に第1電荷Q1が蓄積され、操作部10が停止位置SP3にあるとき第3可変容量素子VC3に第2電荷Q2が蓄積されるように、第1可変容量素子VC1及び第3可変容量素子VC3へのパルス電圧の供給を行う。
図5の例において、パルス電圧供給部100は、第1可変容量素子VC1の固定電極EF1に正電圧「+V」のパルス電圧を供給し、第3可変容量素子VC3の固定電極EF4に負電圧「−V」のパルス電圧を供給し、第1可変容量素子VC1の固定電極EF2及び第3可変容量素子VC3の固定電極EF3にそれぞれグランド電位を与える。
【0041】
なお、パルス電圧供給部100は、後述するタッチセンサ2において駆動電極ED1〜ED23の一つがタッチセンサ駆動部210により選択されて駆動されるタイミングと同期したタイミングで、上述した各動作モードにおけるパルス電圧の供給を行う。
【0042】
検出信号生成部110は、パルス電圧の供給によって3つの可変容量素子(VC1〜VC3)に蓄積される電荷に応じた検出信号Dsを生成する回路である。検出信号生成部110は、例えば、電荷を入力して電圧に変換するチャージアンプと、その電圧をサンプリングしてデジタル信号に変換するAD変換器を含んで構成される。
検出信号生成部110は、パルス電圧供給部100の動作モードに応じて、それぞれ次のように動作する。
【0043】
(第1動作モード/パターンA)
第1動作モードにおいて、検出信号生成部110は、パルス電圧の供給により第1可変容量素子VC1及び第2可変容量素子VC2に蓄積される電荷の和に応じた検出信号Ds(第1検出信号Ds1)を生成する。すなわち、検出信号生成部110は、第1可変容量素子VC1及び第2可変容量素子VC2において共有される固定電極EF2から、これらに蓄積される電荷の和に相当する電荷を入力し、入力した電荷に応じた第1検出信号Ds1を生成する。
【0044】
操作部10が停止位置SP3にある場合、第1可変容量素子VC1及び第2可変容量素子VC2における静電容量の変化量(可動電極EMが固定電極EFのペアに重なることによる容量変化)が小さいため、静電容量の変化量に応じた電荷が検出信号生成部110に入力されない。この場合、検出信号生成部110は、操作部10が停止位置SP1や停止位置SP2にある場合と停止位置SP3にある場合との区別が付くようにするため、停止位置SP1における第1検出信号Ds1と停止位置SP2における第1検出信号Ds1とから異なる値(例えば中間の値)を持った第1検出信号Ds1を生成する。例えば、検出信号生成部110は、停止位置SP3における第1検出信号Ds1をゼロとした場合に、停止位置SP1及び停止位置SP2における第1検出信号Ds1の一方が正となり、他方が負となるように第1検出信号Ds1を生成する。
【0045】
(第2動作モード/パターンB)
第2動作モードにおいて、検出信号生成部110は、パルス電圧の供給により第2可変容量素子VC2及び第3可変容量素子VC3に蓄積される電荷の和に応じた検出信号Ds(第2検出信号Ds2)を生成する。すなわち、検出信号生成部110は、第2可変容量素子VC2及び第3可変容量素子VC3において共有される固定電極EF3から、これらに蓄積される電荷の和に相当する電荷を入力し、入力した電荷に応じた第2検出信号Ds2を生成する。
【0046】
操作部10が停止位置SP1にある場合、第2可変容量素子VC2及び第3可変容量素子VC3における静電容量の変化量が小さいため、静電容量の変化量に応じた電荷が検出信号生成部110に入力されない。この場合、検出信号生成部110は、操作部10が停止位置SP2や停止位置SP3にある場合と停止位置SP1にある場合との区別が付くようにするため、停止位置SP2における第2検出信号Ds2と停止位置SP3における第2検出信号Ds2とから異なる値(例えば中間の値)を持った第2検出信号Ds2を生成する。例えば、検出信号生成部110は、停止位置SP1における第2検出信号Ds2をゼロとした場合に、停止位置SP2及び停止位置SP3における第2検出信号Ds2の一方が正となり、他方が負となるように第2検出信号Ds2を生成する。
【0047】
(第3動作モード/パターンC)
第3動作モードにおいて、検出信号生成部110は、パルス電圧の供給により第1可変容量素子VC1及び第3可変容量素子VC3に蓄積される電荷の和に応じた検出信号Ds(第3検出信号Ds3)を生成する。すなわち、検出信号生成部110は、第1可変容量素子VC1の固定電極EF2及び第3可変容量素子VC3の固定電極EF3から、これらに蓄積される電荷の和に相当する電荷を入力し、入力した電荷に応じた第3検出信号Ds3を生成する。
【0048】
操作部10が停止位置SP2にある場合、第1可変容量素子VC1及び第3可変容量素子VC3における静電容量の変化量が小さいため、静電容量の変化量に応じた電荷が検出信号生成部110に入力されない。この場合、検出信号生成部110は、操作部10が停止位置SP1や停止位置SP3にある場合と停止位置SP2にある場合との区別が付くようにするため、停止位置SP1における第3検出信号Ds3と停止位置SP3における第3検出信号Ds3とから異なる値(例えば中間の値)を持った第3検出信号Ds3を生成する。例えば、検出信号生成部110は、停止位置SP2における第3検出信号Ds3をゼロとした場合に、停止位置SP1及び停止位置SP3における第3検出信号Ds3の一方が正となり、他方が負となるように第3検出信号Ds3を生成する。
【0049】
信号処理部120は、検出信号生成部110によって生成される検出信号Dsに基づいて、操作部10の回転の有無や回転方向を判定する。すなわち、信号処理部120は、可変容量素子VCの静電容量の変化(可動電極EMが固定電極EFのペアに重なることによる容量変化)に対応する第1検出信号Ds1,第2検出信号Ds2及び第3検出信号Ds3の変化に基づいて、操作部10の回転方向を判定する。具体的には、信号処理部120は、第1検出信号Ds1から第2検出信号Ds2を減算して生成した検出信号(Ds1−Ds2)、第2検出信号Ds2と第3検出信号Ds3とを加算して生成した検出信号(Ds2+Ds3)、並びに、第1検出信号Ds1と第3検出信号Ds3とを加算して生成した検出信号(Ds1+Ds3)の変化に基づいて、操作部10の回転方向を判定する。これら3つの信号の組み合わせは、後述するように操作部10の停止位置の状態を表す。信号処理部120は、3つの信号の組み合わせから特定される停止位置の状態を追跡することにより、一つの停止位置から隣の停止位置への変化を特定し、操作部10の回転方向を判定する。
【0050】
また、信号処理部120は、可変容量素子VCの静電容量の変化(可動電極EMが固定電極EFのペアに重なることによる容量変化)に対応する検出信号の変化を評価するため、基準値Rと検出信号との差に基づいて検出信号の変化のパターンを判別し、判別した変化のパターンに基づいて操作部10の回転方向を判定する。例えば信号処理部120は、第1検出信号Ds1と基準値R1との差、第2検出信号Ds2と基準値R2との差、第3検出信号Ds3と基準値R3との差をそれぞれ算出し、それらの差を改めて第1検出信号Ds1,第2検出信号Ds2,第3検出信号Ds3と見なして、上述した検出信号(Ds1−Ds2)、検出信号(Ds2+Ds3)、並びに、検出信号(Ds1+Ds3)を算出する。そして、信号処理部120は、算出したこれらの検出信号をそれぞれ所定の2つのしきい値と比較することにより、各検出信号が3値のレベルの何れに対応するかを判別する。各検出信号について判別された3値のレベルの組み合わせは、後述するように操作部10の停止位置の状態を表す。そのため、信号処理部120は、この判別したレベル(検出信号の変化のパターン)に基づいて、操作部10の回転方向を判定することができる。
【0051】
信号処理部120は、検出信号の変化のパターンを判別するために用いる上述した基準値Rを、所定の条件で更新する。すなわち、信号処理部120は、検出信号の変化が一定時間継続して発生しない場合、最後の検出信号の変化が発生した後における検出信号の平均値に基づいて、従前の基準値を新たな基準値に更新する。具体的には、信号処理部120は、変化のパターンの判別結果から検出信号に変化が生じたと判定した場合、記憶部130から一つの基準値Rを取得する度に、当該一つの基準値Rを用いて変化のパターンの判別を行うべき検出信号についての変化発生後における平均値を算出し、当該算出した平均値を当該一つの基準値Rと関連付けて記憶部130に格納する。そして、信号処理部120は、検出信号の変化が一定時間継続して発生しない場合には、基準値Rに関連付けて記憶部130に記憶される平均値に基づいて、従前の基準値Rを新たな基準値Rに更新する。
これにより、検出信号の変化が一定時間継続して発生しない場合の安定した検出信号の平均値に基づいて基準値Rが更新されるため、温度変化等に起因するドリフトによって基準値Rが大きく変動する場合でも、この変動に追従して適切な基準値Rを得ることが可能となる。
【0052】
更に、信号処理部120は、タッチセンサ2における駆動電極ED1〜ED23の駆動パルス電圧の影響による基準値Rのばらつきを補償するため、タッチセンサ2の駆動状態ごとに基準値Rを変更する。すなわち、信号処理部120は、タッチセンサ2の駆動状態毎に準備された基準値Rを記憶部130から取得して、検出信号の変化のパターンを判別するために使用する。
【0053】
例えば記憶部130は、タッチセンサ2において選択されて駆動される駆動電極(ED1〜ED3)と、静電容量の検出のために選択されるセンス電極(ES1〜ES32)と、パルス電圧供給部100の動作モード(第1動作モード〜第3動作モード)とに対応付けて、検出信号の基準値Rを記憶する。信号処理部120は、タッチセンサ2において特定の駆動電極及びセンス電極が選択されたタイミングと同期したタイミングで実行された特定の動作モードにより生成された検出信号(Ds1〜Ds3)を入力した場合、当該選択された特定の駆動電極及びセンス電極の組み合わせに対応し、かつ、当該実行された特定の動作モードに対応する基準値Rを記憶部130から取得し、当該取得した基準値Rを用いて検出信号の変化のパターンを判別する。
【0054】
なお、信号処理部120の処理は、例えば、記憶部130に記憶されるプログラムに基づいて処理を実行するコンピュータを用いて実行してもよいし、少なくとも一部の処理を専用のロジック回路(ASIC等)において実行してもよい。あるいは、少なくとも一部の処理を後述するタッチセンサ2の制御部230と同一のコンピュータを用いて実行してもよい。
【0055】
記憶部130は、信号処理部120の処理を実行するコンピュータのプログラムや、処理に利用される定数データ(基準値Rなど)、処理の過程で一時的に利用される変数データなどを記憶する装置であり、例えばDRAMやSRAMなどの揮発性メモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、ハードディスク等を用いて構成される。
【0056】
図7は、タッチセンサ2の構成の一例を示す図である。
図7に示すタッチセンサ2は、駆動電極ED1〜ED23及びセンス電極ES1〜ES32からなるセンサ部200と、タッチセンサ駆動部210と、タッチセンサ検出部220と、制御部230と、記憶部250を有する。
【0057】
タッチセンサ駆動部210は、駆動電極ED1〜ED23から順番に一つの駆動電極を選択し、当該選択した駆動電極にパルス電圧を供給する。
【0058】
タッチセンサ検出部220は、タッチセンサ駆動部210がパルス電圧の供給を行うために行う駆動電極の選択と並行して、センス電極ES1〜ES32から一部のセンス電極を順番に選択し、当該選択したセンス電極において伝送されるキャパシタCSの電荷QSに応じたタッチ検出信号を生成する。
図4において示すように、センス電極ES1〜ES32は16本ずつの2つのセンス電極群ES_A,ES_Bに分かれており、タッチセンサ検出部220は、2つのセンス電極群ES_A,ES_Bを交互に選択し、16本のセンス電極に対応した16のタッチ検出信号を並列に生成する。
【0059】
制御部230は、タッチセンサ2の全体的な動作を制御する回路であり、例えば、記憶部250に格納されるプログラムの命令コードに従って処理を行うコンピュータや、特定の機能を実現するロジック回路(ASIC等)を含んで構成される。制御部230は、タッチセンサ駆動部210における駆動電極の選択や、タッチセンサ検出部220におけるセンス電極の選択、タッチ検出信号の生成のタイミングなどを制御する。また、制御部230は、タッチセンサ検出部220から入力されるタッチ検出信号に基づいて、操作領域1における物体の接触位置などを算出する処理を行う。
【0060】
記憶部250は、制御部230において処理に使用される定数データや変数データを記憶する。制御部230がコンピュータを含む場合、記憶部230は、そのコンピュータにおいて実行されるプログラムを記憶してもよい。記憶部250は、例えば、DRAMやSRAMなどの揮発性メモリ、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、ハードディスク等を用いて構成される。
【0061】
次に、上述した構成を有する本実施形態に係る回転式入力装置の動作を説明する。
【0062】
まず、操作部10の回転方向の判定動作について説明する。
図8は、本実施形態に係る回転式入力装置における可変容量素子VC(固定電極のペア)の駆動方法について説明するための図である。
【0063】
パルス電圧供給部100は、隣接して並んだ4つの固定電極(FE1〜FE4)に対して、3つのパターン(パターンA,パターンB,パターンC)によりパルス電圧を供給する。
第1動作モード(パターンA)において、パルス電圧供給部100は、固定電極FE1に正電圧「+V」のパルス電圧を供給し、固定電極FE2にグランド電位を与え、固定電極FE3,FE4に負電圧「−V」のパルス電圧を供給する。第1動作モードにおいて、検出信号生成部110は、固定電極FE2から伝送される第1可変容量素子VC1及び第2可変容量素子VC2の電荷の和に応じた第1検出信号Ds1を生成する。
第2動作モード(パターンB)において、パルス電圧供給部100は、固定電極FE1,FE2に正電圧「+V」のパルス電圧を供給し、固定電極FE3にグランド電位を与え、固定電極FE4に負電圧「−V」のパルス電圧を供給する。検出信号生成部110は、固定電極FE3から伝送される第2可変容量素子VC2及び第3可変容量素子VC3の電荷の和に応じた第2検出信号Ds2を生成する。
第3動作モード(パターンC)において、パルス電圧供給部100は、固定電極FE1に正電圧「+V」のパルス電圧を供給し、固定電極FE2,FE3にグランド電位を与え、固定電極FE4に負電圧「−V」のパルス電圧を供給する。検出信号生成部110は、固定電極FE2,FE3から伝送される第1可変容量素子VC1及び第3可変容量素子VC3の電荷の和に応じた第2検出信号Ds2を生成する。
【0064】
図9は、パルス電圧の供給パターン、並びに、停止位置の変更による検出信号の変化を示す図である。
図9において丸印で囲った番号は、
図8に示す3つの停止位置SP1,SP2,SP3の番号を示す。また、アルファベットA〜Cは、それぞれパルス電圧の供給パターンを示す。
【0065】
図9Aは、3つの停止位置(SP1,SP2,SP3)に対応する3つの可変容量素子(VC1,VC2,VC3)に印加されるパルス電圧の極性を示す。「P」は正電圧「+V」のパルス電圧を示し、「N」は負電圧「−V」のパルス電圧を示し、「0」はパルス電圧が印加されないことを示す。
【0066】
この
図9Aによれば、操作部10が停止位置SP1から停止位置SP2へ回転した場合、パターンA(第1動作モード)において生成される第1検出信号Ds1には、第1可変容量素子VC1の正電圧「+V」のパルス電圧による電荷から、第2可変容量素子VC2の負電圧「−V」のパルス電圧による電荷への変化に相当するレベルの変化が生じる。この「P」から「N」への変化を仮に数値「2」で表すと、「N」から「P」への変化を示す数値は「−2」で表すことができる。また、「P」から「0」への変化と「0」から「N」への変化は、「P」から「N」への変化の半分に相当するため数値「1」で表すことができる。「N」から「0」への変化と「0」から「P」への変化は、「N」から「P」への変化の半分に相当するため数値「−1」で表すことができる。
【0067】
図9B〜
図9Dは、それぞれ基準となる停止位置から他の停止位置へ回転した場合における検出信号(Ds1〜Ds3)の変化を、上述した「2」,「1」,「−1」,「−2」の数値で表したものである。ただし、基準となる停止位置については数値「0」で表している。この数値は、検出信号(Ds1〜Ds3)の相対的な変化の大きさを5つのレベルで表したものであり、実際の検出信号(Ds1〜Ds3)についてこのレベルを判別するためには、独立した4つのしきい値を用いる必要がある。静電容量の変化が小さい場合を想定すると、判別すべきレベル数はなるべく少ないことが望ましい。
【0068】
そこで、本実施形態に係る回転式入力装置では、このレベル数を削減するとともに、検出信号の変化の振幅を大きくするため、3つのパターンにより生成された3つの検出信号(Ds1〜Ds3)に対して加減算を行う。すなわち、信号処理部120は、第1検出信号Ds1から第2検出信号Ds2を減算して生成した検出信号(Ds1−Ds2)、第2検出信号Ds2と第3検出信号Ds3とを加算して生成した検出信号(Ds2+Ds3)、並びに、第1検出信号Ds1と第3検出信号Ds3とを加算して生成した検出信号(Ds1+Ds3)を算出する。
【0069】
図10は、3つの検出信号(Ds1〜Ds3)に加減算を施して生成された新たな検出信号について、停止位置の変更による信号レベルの変化を表した図である。
図9B〜
図9Dの数値について、「Ds1−Ds2(A−B)」、「Ds2+Ds3(B+C)」、「Ds1+Ds3(A+C)」の加減算を施すと、
図10において示すように、演算結果の数値は、何れも「3」,[0],「−3」の3レベルに集約される。また、3つの検出信号(Ds1〜Ds3)に対する加減算によって、判定対象となる信号の最大振幅が2から3へ大きくなる。従って、微小な検出信号のレベルを正確に判定することができる。
【0070】
図11は、
図10に示す加減算後の3つの検出信号(「A−B」,「B+C」,「A+C」)の組み合わせが表す停止位置の状態を数値化して示した図である。
図11における「ST」は、3つの検出信号(「A−B」,「B+C」,「A+C」)を基数3で数値化したものである。
図10に示す3つの検出信号の数値をそれぞれ[A−B],[B+C],[A+C]の符号で表すと、状態STは次の式で表される。
【0071】
[数1]
ST=[A−B]+[B+C]×3+[A+C]×9 …(1)
【0072】
また
図11では、基準となる停止位置から隣の停止位置へ回転する途中に生じ得る状態STも数値化して表している。この
図11から分かるように、基準となる停止位置が「SP1」「SP2」「SP3」の何れであるかに応じて、状態STの遷移は「α」,「β」,「γ」の3パターンに分かれる。基準となる停止位置が「SP1」の場合に状態遷移は「α」となり、基準となる停止位置が「SP2」の場合に状態遷移は「β」となり、基準となる停止位置が「SP3」の場合に状態遷移は「γ」となる。
【0073】
図12は、
図11に示す各停止位置の状態STの遷移を表す図である。
図12に示す状態遷移のパターンにおいて、各停止位置の状態STの数値は全て異なる。また、一つの停止位置から別の停止位置へ回転する途中で生じ得る状態STの数値は、各停止位置における状態STの数値と重複しない。従って、基準となる停止位置が不明な場合であっても、最初の停止位置の変化が生じたときに、
図10に示す加減算後の3つの検出信号(「A−B」,「B+C」,「A+C」)から式(1)の状態STを求めることにより、信号処理部120は状態遷移のパターンと現在の停止位置を直ちに判定することができる。従って、信号処理部120は、前回の停止位置と今回の停止位置を比較することにより、回転方向を正確に判定することができる。
【0074】
次に、基準値の更新について、
図13のフローチャートを参照して説明する。
信号処理部120は、検出信号生成部110から3パターンの検出信号(Ds1〜Ds3)を入力すると、各検出信号に対応する基準値(R1〜R3)を記憶部130から取得して、検出信号(Ds1〜Ds3)と基準値(R1〜R3)との差を算出する。信号処理部120は、この算出結果を正規の検出信号(Ds1〜Ds3)とみなして、後に続く加減算の処理(
図10)と状態STの算出(式(1))を行い、回転方向の判定を行う。従って、基準値が温度等のドリフトの影響によって変動すると、回転方向の判定を正しく行えなくなる。そこで信号処理部120は、検出信号生成部110から入力される検出信号(Ds1〜Ds3)の平均値に基づいて、基準値を更新する処理を行う。
【0075】
信号処理部120は、検出信号と基準値との差に基づいて検出信号の変化のパターンを判別し、判別した変化のパターンに基づいて操作部10の回転方向を判定する処理を常時繰り返し行う。操作部10の回転に伴う検出信号の変化が生じた場合(ST100)、信号処理部120は、検出信号生成部110が生成する検出信号の平均値の算出を開始する(ST110)。信号処理部120は、記憶部130から一つの基準値を取得する度に、当該一つの基準値を用いて変化のパターンの判別を行うべき検出信号についての変化発生後における平均値を算出し、当該算出した平均値を当該一つの基準値と関連付けて記憶部130に格納する。例えば、第1動作モード(パターンA)において生成される第1検出信号Ds1に対応する基準値R1を記憶部130から読みだした場合、回転による変化が発生した後に入力された第1検出信号Ds1の平均値を算出し、算出した平均値を基準値R1と関連付けて記憶部130に格納する。また、信号処理部120は、検出信号の平均値の算出を開始した場合、その開始時点からの経過時間を計るため、タイマーによる計時を開始する(ST120)。
【0076】
また、信号処理部120は、現在の停止位置が基準となる位置(
図11において状態STがゼロとなる停止位置であり、後述するステップST160の基準値更新が行われた停止位置と同じ)になった場合(ST130)、検出信号生成部110において得られた最新の検出信号に基づいて、現在の基準値を更新する(ST140)。例えば、信号処理部120は、最新の検出信号と現在の基準値にそれぞれ所定の重み付けを与えて加算した結果を、新たな基準値として記憶部130に格納する。これにより、操作部10の回転途中であっても基準値の更新を行うことが可能となる。
【0077】
信号処理部120は、ステップST120においてスタートさせたタイマーの計時値が所定の時間に達した場合(ST150)、ステップST110において算出を開始した平均値に基づいて、従前の基準値を新たな基準値に更新する。例えば、ステップST110において算出した平均値を、そのまま新たな基準値として記憶部130に格納する(ST160)。基準値の更新が完了すると、信号処理部120は、ステップST120においてスタートさせたタイマーを停止させて、計時値をリセットするとともに、平均値の算出処理を終了する(ST170)。信号処理部120は、静電容量の検出と回転方向の判定処理を行う度に、上述したステップST100〜ST170の処理を実行する。
【0078】
以上説明したように、本実施形態に係る回転式入力装置によれば、固定電極EFのペアにおける各固定電極EFは、操作部10が節度機構15の停止位置にある場合に、回転軸AXと平行な方向からみて、共通の可動電極EMと重なりを生じ得る位置に設けられている。そのため、可変容量素子VCの静電容量は、可動電極EMが固定電極EFのペアと重なりを生じる位置にあるか否かに応じて大きく変化する。すなわち、操作部10の停止位置に応じて、各可変容量素子VCの静電容量が変化する。こうした可変容量素子VCが第2仮想円IM2の周上の異なる位置に設けられるため、各可変容量素子VCの静電容量の変化に応じて、操作部10の停止位置を求め、回転方向を判定することが可能となる。また、検出信号生成部110では、複数の可変容量素子VCを形成する固定電極EFのペアにおける各々一方の固定電極EFから静電容量に応じた電荷が入力され、当該入力された電荷の和に応じた検出信号が生成される。そのため、第2仮想円IM2の周上の異なる複数の位置における可変容量素子VCの静電容量の変化が、1つの検出信号によって表されるため、複数の位置のそれぞれについて検出信号を生成する場合に比べて回路構成を簡易化することができる。
【0079】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態では、3種類のパルス電圧の供給パターンにより得られた3つの検出信号(Ds1〜Ds3)に加減算の演算を施すことによって、加減算後の検出信号のレベルを3つに集約するとともに、信号の振幅を増やしている。しかしながら、状態STを算出するために3パターンのパルス電圧の供給動作を行う必要があるため、状態STを得るための処理時間が長くなる。そこで、本実施形態に係る回転式入力装置では、パルス電圧の供給のパターンを3から2に減らしている。
【0080】
図14は、第2の実施形態に係る回転式入力装置における可変容量素子(固定電極のペア)の駆動方法について説明するための図である。
図14において示すように、第2の実施形態に係る回転式入力装置における可変容量素子の2つ動作モード(第1動作モード,第2動作モード)は、
図8に示す第1動作モード,第2動作モードと同じである。
【0081】
図15は、
図14に示す2つの動作モードにおけるパルス電圧の供給パターン、並びに、停止位置の変更による検出信号の変化を示す図である。また
図16は、
図14に示す2つのパルス電圧のパターン(パターンA,パターンB)に対応した2つの検出信号の組み合わせが表す停止位置の状態を数値化して示した図である。パターンA,Bの数値をそれぞれ符号[A],[B]で表すと、状態STは次の式で表される。
【0082】
[数2]
ST=[A]+[B]×5 …(2)
【0083】
ただし、
図15の数値「0」,「1」,「2」は、それぞれ[A]又は[B]の値としてそのまま使用し、数値「−1」,「−2」については、それぞれ「3」,「4」に置き換えて計算している。各停止位置の状態STは、
図17の状態遷移において示すように重複を生じていないため、第1の実施形態と同様に、状態STから1つの停止位置を確定することができる。
【0084】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態及び第2の実施形態に係る回転式入力装置では、3つの可変容量素子(VC1〜VC3)に対して複数のパルス電圧の供給パターンにより複数の検出信号Dsが生成され、複数の検出信号Dsに生じる変化のパターンの組み合わせから停止位置の状態が判別される。これに対し、本実施形態に係る回転式入力装置では、単一のパルス電圧の供給パターンにより得られる1つの検出信号Dsに基づいて、操作部10の回転方向の判定が判定される。
【0085】
本実施形態に係る回転式入力装置において、パルス電圧供給部100は、操作部10を所定の停止位置から所定の方向へ単位回転角ずつ3ステップ回転させる場合における3つの停止位置(SP1〜SP3)において検出信号生成部110により生成される3つの検出信号Dsが異なるレベルを有するように、第1可変容量素子VC1及び第2可変容量素子VC2にそれぞれパルス電圧を供給する。
【0086】
図18は、第3の実施形態に係る回転式入力装置における可変容量素子(固定電極のペア)の駆動方法について説明するための図である。
図18において示すパルス電圧の供給パターン(パターンA)は、既に説明した
図8,
図14における第1動作モードのパルス電圧の供給パターンと同じである。本実施形態に係る回転式入力装置において、パルス電圧供給部100は、
図18に示すパターンAのパルス電圧の供給を繰り返し実行する。
【0087】
図19は、
図18に示す駆動方法におけるパルス電圧の供給パターン、並びに、停止位置の変更による検出信号Dsの変化を示す図である。
図19Aは、3つの停止位置(SP1,SP2,SP3)に対応する3つの可変容量素子(VC1,VC2,VC3)に印加されるパルス電圧の極性を示す。
図19Bは、基準となる停止位置ごとに、その停止位置から他の停止位置へ操作部10が回転した場合における検出信号の変化を「2」,「1」,「0」,「−1」,「−2」の数値で表したものである。
また
図20は、停止位置の変更による検出信号のレベルの相対的な変化を図解した図であり、検出信号Dsのレベルの数値(
図19B)をグラフで表わしたものである。グラフの縦軸の数値は、基準となる停止位置が「SP3」の場合の値であるが、基準となる停止位置が「SP1」や「SP2」の場合も、グラフによって表わされる数値の変化は同様なパターンとなる。
【0088】
図20のグラフから分かるように、左方向への回転が生じた場合の検出信号Dsのレベル変化は「+1」又は「−2」であり、右方向への回転が生じた場合の検出信号Dsのレベル変化は「−1」又は「+2」である。すなわち、左方向への回転と右方向への回転とでは、検出信号Dsのレベル変化のパターンが異なる。これは、所定の停止位置から操作部10を一定方向へ回転させた場合、検出信号Dsのレベルが一定方向(上昇方向又は下降方向)へ変化するように、3つの可変容量素子(VC1〜VC3)にパルス電圧が供給されていることによる。
図20の例では、停止位置SP2から停止位置SP1へ右方向の回転を行うと、検出信号のレベルは「1」ずつ下降し、停止位置SP1から停止位置SP2へ左方向の回転を行うと、検出信号Dsのレベルは「1」ずつ上昇する。
【0089】
信号処理部120は、第1可変容量素子VC1及び第2可変容量素子VC2の静電容量の変化に対応した検出信号Dsの変化に基づいて、操作部10の回転方向を判定する。具体的には、信号処理部120は、検出信号Ds(検出信号生成部110が生成した当初の検出信号Dsから基準値Rを減算したもの)を所定の4つのしきい値と比較することにより、検出信号Dsのレベルが「2」,「1」,「0」,「−1」,「−2」の何れであるかを判別する。操作部10の回転によって検出信号Dsのレベルが変化した場合、信号処理部120は、そのレベル変化が「−1」又は「+2」であれば右方向の回転であると判定し、レベル変化が「+1」又は「−2」であれば左方向の回転であると判定する。
【0090】
本実施形態に係る回転式入力装置によれば、単一のパルス電圧の供給パターンによって操作部10の回転方向を判定できるため、回転方向の判定に要する時間を短くすることができる。
なお、本実施形態に係る回転式入力装置では、上述した第1,第2の実施形態に係る回転式入力装置のように、停止位置が不明な初期状態から1回の停止位置の変更によって直ちに停止位置を特定することはできないが、複数回の停止位置の変更履歴を参照することによって、現在の停止位置を特定することは可能である。
【0091】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、当業者に自明な種々の改変が可能である。
【0092】
上述した実施形態では、可動電極EMと固定電極EFが同様な形状を持つ例を挙げているが、本発明はこの例に限定されない。例えば、可動電極EMは、第1仮想円IM1の中心からみて、単位回転角θの1倍以上1.5倍以下の角度を持つ扇型領域の範囲内に含まれるような形状とし、固定電極EFは、第2仮想円IM2の中心からみて、単位回転角θの0.5倍以上1倍以下の角度を持つ扇型領域の範囲内に含まれるような形状としてもよい。この場合も、各停止位置において固定電極EFのペアに可動電極EMが重なりを持つように配置させることで、固定電極EFのペアを可変容量素子VCとして機能させることができる。