特許第6302146号(P6302146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6302146
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】TOF距離センサ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20180319BHJP
   G01S 17/89 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
   G01S7/481 Z
   G01S17/89
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-541848(P2017-541848)
(86)(22)【出願日】2016年1月22日
(86)【国際出願番号】EP2016051296
(87)【国際公開番号】WO2016128198
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2017年10月31日
(31)【優先権主張番号】15154379.0
(32)【優先日】2015年2月9日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515321108
【氏名又は名称】エスプロス フォトニックス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ポップ マルティン
【審査官】 中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−112614(JP,A)
【文献】 特開2012−83221(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0145281(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01S 7/48− 7/51
17/00−17/95
H01L 31/00−31/02
31/0232
31/0248
31/0264
31/08
31/10
31/107−31/108
31/111
31/18
51/42
DB名 JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物によって反射された放射波(23)を受波することによって、対象物(22)までの距離を捉えるためのTOF距離センサ(40)であって、放射源(20)から出射される前記放射波は、変調周波数によって変調され、
前記TOF距離センサ(40)は、複数の復調ピクセル(0)のピクセル画像を記録するためのピクセルマトリクス(41)を備え、
前記複数の復調ピクセル(0)は、
前記放射波を裏面で受波するように、それぞれ、
受波した放射波から荷電担体(25)を発生させるための変換領域(60)と、
変調周波数に従って前記荷電担体を分離するための分離装置(70)と、
前記荷電担体に関して前記変換領域を前記分離装置から仕切るためのストップ(80)と、
を備え、更に、
前記荷電担体を前記変換領域から前記分離装置へと通過させるための開口部(81)
を備え、少なくとも2つの復調ピクセルがそれぞれ、共通の開口部(82)を形成するTOF距離センサ(40)において、
前記分離装置は、前記荷電担体を前記変換領域から前記分離装置へと誘引するための、ドリフトゲートを備え、
共通の開口部を形成する前記複数の復調ピクセルは、
それぞれ、少なくとも1つの共通のドリフトゲート(72)を形成し、正確には、
それぞれ、少なくとも1つの共通のドリフトゲート(72)と、個別に割り当てられたドリフトゲート(71)と、を形成し、前記個別に割り当てられたドリフトゲート71は、電気的に分離された方式で前記共通のドリフトゲートと交差し、前記個別に割り当てられたドリフトゲート及び前記共通のドリフトゲートは、単一のドリフトゲートであるように機能し、光電子が前記共通のドリフトゲートから前記個別に割り当てられたドリフトゲートに向かうように、前記個別に割り当てられたドリフトゲートには前記共通のドリフトゲートよりも高い電位が印加される
ことを特徴とするTOF距離センサ(40)。
【請求項2】
請求項1に記載のTOF距離センサであって、
前記共通の開口部は、閉じた周囲を形成すること
を特徴とするTOF距離センサ。
【請求項3】
求項1又は請求項2に記載のTOF距離センサであって、
前記複数の復調ピクセルがそれぞれ、電子評価領域(90)を備え、
少なくとも2つの復調ピクセルがそれぞれ、空間を共有する評価領域(91)を形成すること
を特徴とするTOF距離センサ。
【請求項4】
求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のTOF距離センサであって、
4つの復調ピクセルがそれぞれ、共通の開口部を形成し、
4つの復調ピクセルがそれぞれ、空間を共有する評価領域を形成し、
それにより、前記開口部および評価領域がチェッカー盤のパターンを形成すること
を特徴とするTOF距離センサ。
【請求項5】
求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のTOF距離センサであって、
前記変換領域(60)は、
ドープされた基板(61)、および、
前記基板を空乏化するための透明な裏面電極(62)
から形成されること
を特徴とするTOF距離センサ。
【請求項6】
求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のTOF距離センサであって、
前記変換領域(60)が、ドープされた基板(61)を有し、
前記分離装置(70)が、
前記基板(61)の上面の、少なくとも1つのドリフトゲート(71)であって、前記荷電担体(25)を前記変換領域(60)から前記分離装置(70)へと誘引するためのドリフトゲート(71)、および、
前記基板の上面の、少なくとも2つの変調ゲート(73)であって、前記ドリフトゲートの対向する位置に、前記変調周波数に従って前記荷電担体を前記ドリフトゲートから前記変調ゲートへと交互に案内するための変調ゲート(73)、および、
前記基板の上面の、少なくとも2つのストレージゲート(74)であって、それぞれ、変調ゲートに割り当てられ、当該割り当てられた変調ゲートに向かう前記荷電担体を集めるためのストレージゲート(74)、および、
前記基板の上面の、少なくとも2つのトランスファゲート(75)であって、それぞれが、ストレージゲートに割り当てられ、前記ストレージゲートにて集められた前記荷電担体を断続的にフローティングディフュージョンへと搬送するためのトランスファゲート(75)、およ
前記基板の上面内の、少なくとも2つのフローティングディフュージョン(76)であって、それぞれがトランスファゲートに割り当てられ、前記トランスファゲートによって搬送された前記荷電担体を受け取り、更には、前記評価領域に同一の電圧を供給するための、フローティングディフュージョン(76
を備え、前ドリフトゲート、前記変調ゲート、前記ストレージゲート、及び前記トランスファゲートが非導電層(77)によって前記基板から分離されていることを特徴とするTOF距離センサ。
【請求項7】
請求項6に記載のTOF距離センサであって、
前記フローティングディフュージョン(76)は、n+ドープされたウェルであること
を特徴とするTOF距離センサ。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載のTOF距離センサであって、
前記ドープされた基板(61)は、n−−ドープされた半導体基板から形成されること
を特徴とするTOF距離センサ。
【請求項9】
求項5〜請求項8のいずれか一項に記載のTOF距離センサであって、
前記ストップ(80)が、前記基板内に埋め込まれたを備えること
を特徴とするTOF距離センサ。
【請求項10】
請求項9記載のTOF距離センサであって、
前記ストップ(80)が、前記基板内に埋め込まれた層として、p+によってドープされたpSub層を備えること
を特徴とするTOF距離センサ。
【請求項11】
求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のTOF距離センサであって、
電子評価領域(90)が前記復調ピクセルに形成され、前記電子評価領域(90)は、
ソースフォロアと、
リセットスイッチと、
選択トランジスタとを備えること
を特徴とするTOF距離センサ。
【請求項12】
求項1〜請求項11のいずれか一項に記載のTOF距離センサであって、
前記分離装置は、伝導チャネルを形成すること
を特徴とするTOF距離センサ。
【請求項13】
請求項6又は請求項7に記載のTOF距離センサであって、
前記分離装置は、前記ストップと、前記変調ゲート及び/又は前記ストレージゲート及び/又は前記トランスファゲートと、の間に伝導チャネルを形成し、
記ストップが前記基板内に埋め込まれた層によって形成されること
を特徴とするTOF距離センサ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ピクセルフィールドを備えるTOF距離センサに関する。
【0002】
従来技術は、対象物に向かって出射され、対象物で反射される変調光の位相シフトを検知し、そこから前記対象物までの距離を導出するTOF(飛行時間)距離センサを開示する。請求項1のプリアンブルに記載のセンサは、US 2014/145281 A1より明らかになる。
【0003】
本発明の目的は、改良された距離センサを提供することにある。
【0004】
冒頭に記載されたタイプの距離センサに続き、この目的は、請求項1に記載の距離センサによって達成される。有利な構成は、更なる従属項において明らかにされる。
【0005】
本発明に係る距離センサは、変調周波数によって変調された、放射源からの対象物によって反射された放射波を受波することによって、対象物までの距離を捉えるためのTOF距離センサである。前記センサは、ピクセル画像を記録するためのピクセルマトリクスを備える。ピクセルマトリクスは、放射波を裏面で受波するように構成される複数の復調ピクセルで構成されている。復調ピクセルは、受波した放射波から荷電担体を発生させるための変換領域と、変調周波数に従って荷電担体を分離させるための分離装置と、荷電担体に関して変換領域を分離装置から仕切るためのストップと、荷電担体を変換領域から分離装置へと通過させるための開口部とを備える。好ましくは、TOF距離センサは、少なくとも2つの復調ピクセルが共通の開口部を形成するように実現され得る。
【0006】
共通の開口部は、復調ピクセルの感度を向上させて距離センサをより効果的にするという利点を実現し得る。また、共通の開口部は、ピクセル寸法を小さく設計することが可能になるという利点を有し得る。ピクセルマトリクスは、画像、特には3D画像を生成するという利点を実現してもよい。
【0007】
放射波を裏面で受波するための復調ピクセルの実施は、変換領域への放射波の入射が分離装置および評価領域から離れた側から行われるということを意味する。
そのため、変換領域は、例えば50μmの厚さの薄い半導体層で形成されていることが好ましく、薄い半導体層は、その表側で、例えばCCD技術を用いて、分離装置を形成しているのが好ましい。
【0008】
共通の開口部は、閉じた周囲を形成していることが好ましい。
【0009】
複数の復調ピクセルはそれぞれ電子評価領域を備え、少なくとも2つの復調ピクセルがそれぞれ空間を共有する評価領域を形成することが好ましい。
【0010】
これは、共有する評価領域の一部が共に使用され、それによって評価領域の一部が縮小され得る、という利点を実現し得る。
【0011】
4つの復調ピクセルは、それぞれ共通の開口部を形成することが好ましい。4つの復調ピクセルは、それぞれ空間を共有する評価領域を形成することが好ましい。開口部および評価領域がチェッカー盤のパターンを形成することが好ましい。ピクセルマトリクスは、共通の開口部に関してそれぞれ実質的に点対称であることが好ましい。ピクセルマトリクスは、共通の評価領域に関してそれぞれ実質的に点対称であることが好ましい。
【0012】
これは、復調ピクセルの下方領域で生成された荷電担体が正確にこの復調ピクセルの分離装置に達する、という利点を実現し得る。これは、個々の復調ピクセルに関して、荷電担体がその空間情報を保持する、という利点を実現していてもよい。このことにより、ピクセルマトリクスの解像度が向上されてもよい。
【0013】
変換領域は、ドープされた基板を備えることが好ましい。変換領域は、透明の裏面電極を備えることが好ましい。基板は、半導体基板であることが好ましい。基板は、軽度にn−−ドープされていることが好ましい。
【0014】
これは、放射波によって光電効果が生じるように、変換領域が空乏化され得るという利点を実現し得る。
【0015】
分離装置は、基板の上面に、荷電担体を変換領域から分離装置へと誘引するためのドリフトゲートを備えることが好ましい。また、ドリフトゲートは、複数のドリフトゲートによって形成されていることが好ましく、特には、荷電担体を誘引するために変調ゲートに向かって増え続ける電位を有する、複数のドリフトゲートによって形成されていることが好ましい。好ましくは、ドリフトゲートは、2つの変調ゲートが対向する位置に配置されていてもよい実施の形態を有していてもよい。例えば、ドリフトゲートと同様の、補足的な一定の電位が変調ゲート又は複数の変調ゲートに印加される場合、任意には、ドリフトゲートは、変調ゲートあるいは複数の変調ゲートによって同時に実現されてもよい。
【0016】
分離装置は、基板の上面に、少なくとも1つの、特には2つの変調ゲート備えることが好ましく、特には、ドリフトゲートの対向する位置に、変調周波数に従ってドリフトゲートから変調ゲートへと交互に荷電担体を案内するための、少なくとも1つの、特には2つの変調ゲートを備えることが好ましい。
【0017】
分離装置は、基板の上面に、少なくとも1つの、特には2つのストレージゲートであって、いずれも、1つの変調ゲート又はその変調ゲートに割り当てられ、割り当てられた変調ゲートに導かれる荷電担体を集めるための、少なくとも1つの、特には2つのストレージゲートを備えることが好ましい。
【0018】
分離装置は、基板の上面に、少なくとも1つの、特には2つのトランスファゲートであって、いずれも、1つのストレージゲート又はそのストレージゲートに割り当てられ、ストレージゲートにて集められた荷電担体を断続的にフローティングディフュージョンへと搬送するための、少なくとも1つの、特には2つのトランスファゲートを備えることが好ましい。
【0019】
分離装置は、基板の上側に、特にはn+ドープされたウェルとして、少なくとも1つの、特には2つのフローティングディフュージョンを備えることが好ましく、いずれも、1つのトランスファゲート又はそのトランスファゲートに割り当てられた、トランスファゲートによって搬送された荷電担体を受け取り、それを評価領域に電圧として供給するためのフローティングディフュージョンを備えることが好ましい。
【0020】
前記ゲートは、非導電層によって基板から分離されていることが好ましい。ストップとゲートとの間の復調ピクセル、特には、ストップと変調ゲート、ストレージゲート、トランスファゲートとの間の復調ピクセルは、ゲートによって制御可能な荷電担体の伝導チャネルを形成することが好ましい。ゲートが伝導チャネル内の荷電担体をCCDの方式で制御することが好ましい。伝導チャネルは、復調ピクセルの効率を上げる、有利な裏面の照射を促進してもよい。
【0021】
本発明によれば、分離装置は、荷電担体を変換領域から分離領域へと誘引するためのドリフトゲートを備え、共通の開口部を形成する復調ピクセルはそれぞれ、少なくとも1つの共通ドリフトゲートを形成する。共通のドリフトゲートは、共通の開口部の領域を実質的に同程度覆うことが好ましい。本発明によれば、共通ドリフトゲートは、個々のピクセルに個々に割り当てられたドリフトゲートによって補足されていることが好ましい。変調ゲートは、個々に割り当てられたドリフトゲートに割り当てられていることが好ましい。上記共通ドリフトゲートは、複数の共通ドリフトゲートで構成されていることが好ましい。
【0022】
これは、TOF距離センサが更に効率的になるという利点を実現し得る。
【0023】
ストップは、基板に埋め込まれた層を備えていることが好ましい。当該埋め込まれた層は、p+ドープされたpSub層であることが好ましい。
【0024】
これは、生成された電子がその層によって確実にブロックされるという利点を実現し得る。
【0025】
開口部は、閉じた凹部を形成していることが好ましい。
【0026】
これは、ピクセル寸法が特に小さく設計され得るという利点を実現し得る。
【0027】
接合FET効果によって、基板の厚さに対して任意で開口部を小さくすることが可能でなくなるかもしれない。組み合わせにより共通の開口部を形成することによって、ピクセル寸法は、個々に開口部を設ける場合と比べて、所定の最小の開口部に対してより小さく設計され得る。
【0028】
評価領域は、少なくともソースフォロアと、リセットスイッチと、選択トランジスタとを備えることが好ましい。
【0029】
本発明の更なる特徴は図に明示されている。
【0030】
記載された利点は、いずれも、記載されていない特徴の組み合わせにおいて実現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
[図面の概要]
本発明の例示的な実施の形態が、図面に示され、以下により詳細に説明されている。ここでは、各図面における同一の符号は、互いに対応する要素を示す。
【0032】
図1】TOF距離センサシステムおよび対象物を示す。
図2】復調ピクセルの概略的な側断面図である。
図3】復調ピクセルの上面図である。
図4】共通の開口部を有する4つの復調ピクセルを示す。
図5】6×6の復調ピクセルで構成されたピクセルマトリクスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[図面の詳細な説明]
図1は、TOF距離センサシステム10および対象物22を示す。
【0034】
対象物22は、TOF距離センサシステム10から離間している。一例によれば、放射源20は、LEDあるいは複数のLEDの配列である。当該放射源は、変調周波数を用いた強度変調方式で放射源を動作させる電子デバイス13によって作動される。一例によれば、放射源は、単色光21を放射し、単色光21は対象物で拡散するように反射され、TOF距離センサ40に反射波23として入射する。当該TOF距離センサにおいて、受波された放射波は、誘起された光電子の値プロファイル、したがって受波された放射波の信号曲線を生成する。
【0035】
電子デバイス13およびTOF距離センサ10は、チップ上に一体化され、CMOSおよびCCDを合わせた方法で実現されている。当該チップおよび放射源20は、共通の担体11に配置され、ハウジング12によって囲まれている。当該放射源および受光装置はそれぞれ、対象物の距離が決定されるべき空間の方向に焦点を合わせる図示されていない光学装置を有している。
【0036】
放出された放射波21は、860nmの波長を有し、20MHzの正弦波信号あるいは矩形信号でパルス化される。TOF距離センサ10で受波された反射波は、20MHzの正弦波信号あるいは矩形信号でパルス化されたままであり、放射源20によって放出された放射波の変調信号に対して、光路の時間分、位相シフトされる。発射された矩形信号と受信された矩形信号との位相シフトは、TOF距離センサと対象物との間の距離の2倍に相当する。
【0037】
図2は、復調ピクセル50の概略的な側断面図である。
【0038】
側断面は、図3の平面図における切断線52に、比例してはいないが、沿っている。
【0039】
復調ピクセル50は、約50マイクロメートルの厚さ、および2000Ωcm以上の所定の電気シート抵抗を有する、N−ドープ・フロートゾーン・シリコン半導体基板61を備える。半導体基板の表面で、当該基板上の非導電性のSiO分離層77の上に配置されているのは、ドリフトゲート71であり、両側に対称的に配列され、互いに離間して配置されているのは、それぞれ変調ゲート73、ストレージゲート74、トランスファゲート75であり、基板内にはフローティングディフュージョン76が配置されている。層およびコンタクトは便宜上、図示されていない。ストップ80は、これらのゲートと透明な裏面のコンタクトとの間に設けられ、入射する反射波23との関係において、各ゲートの下に配置されている半導体基板を含め、ストレージゲート、トランスファゲート、およびフローティングディフュージョンの陰になっている。当該ストップは、開口部81をドリフトゲートの下の領域に備えている。半導体基板は、少なくともドリフトゲートの下において、とりわけ全体的に空乏となっている。正電位がドリフトゲートに印加され、ドリフトゲートは当該半導体基板内に空乏領域を形成する。
【0040】
分離装置70は、ドリフトゲートと、変調ゲートと、ストレージゲートと、トランスファゲートと、分離層と、フローティングディフュージョンと、ストップと、開口部と、ストップとこれらのゲートとの間に配置された基板とを備え、基板は変換領域60における半導体基板61と同様のタイプである。変換領域60は半導体基板61と、裏面電極62と、ストップ80とを備える。基板は、約50マイクロメートルの厚さを有する。
【0041】
透明の裏面電極62を介してドリフトゲートの下の半導体基板61に入射する反射した赤外線の放射波23は、半導体基板内に電子・ホールのペア24を誘起する。光電子は、ドリフトゲート71によって形成される空乏領域によってドリフトゲートに向かって誘引される。ドリフトゲートは、約4Vの電位を有する。誘引される光電子の数は、受波した放射波の強度に比例する。
【0042】
最大変調電位がドリフトゲート71の電位とストレージゲート74における電位との間にあって、最小変調電位がドリフトゲートよりも低い変調電位が、変調ゲート73に印加されてもよい。変調ゲート73の電位は、例えば0Vと5Vとの間の値で変調する。
当該2つの変調ゲートは、相互に反転した電位20で、すなわち一方の変調ゲート電位が0Vであるとき、他方の変調ゲートの電位は正の電位で、その逆も同様に、作動される。そのため、常に0Vの電位が一方の変調ゲートに印加され、5Vの電位が他方の変調ゲートに印加される。最小電位、すなわちこの場合は0Vによってドリフトゲートの下の光電子に対する電位障壁がもたらされ、そのため、いずれの光電子もこの変調ゲートに割り当てられたストレージゲートに達することができない。最大電位、すなわちこの場合は5V、によってドリフトゲートの下の光電子がこの変調ゲートを通過し、関連するストレージゲートへと排出される。
【0043】
受波された放射波の強度によって生じた光電子の流れは、相互に反転された正弦波信号あるいは矩形信号に相当する電位を、当該2つの変調ゲートにそれぞれ印加することによる切り替えに対応して誘導される。よって、これらの変調ゲートの下に発生するこれらの光電子の流れは、乗算、すなわち対応する正弦波信号あるいは矩形信号と、受波された放射波の信号との相互関係に相当する。正弦波信号あるいは矩形信号は相関する信号の特性を有し、ここでは相関信号と示される。
【0044】
ドリフトゲート71に印加される電位よりも高い電位がストレージゲート74に印加され、ストレージゲート74は、変調ゲート73の状態に応じて、交互に、その下の光電子25を集める。ストレージゲート74は、例えば10Vの電位を有する。光電子によってストレージゲートの下で集められた電荷は、相関値に相当する。よって、当該相関値は電荷領域内に存在する。対応するストレージゲートの下の光電子の集まりは、相関信号と受波された放射波信号との上記相互関係の時間積分に相当する。
【0045】
ストレージゲート74の下で集められた光電子25を検出するため、変調ゲート73の電位はまず0Vに設定され、ポテンシャル電子に対する電位障壁をドリフトゲート71の方向に形成する。次に、トランスファゲートの電位は中間値、例えば6Vまで上げられ、フローティングディフュージョン76の方向への光電子の適切な排出が促進される。
【0046】
両方のストレージゲート74の約10Vの正電位は、タイムランプ(time ramp)によって同時に下げられる。ストレージゲートに印加される降下正電位、及び、その下に位置する電荷の負電位の、工程中に変化する補足的な電位が、トランスファゲート75を介して電荷が排出可能であるかを決定する。ここでは、下降工程が3段階に細分化される。タイムランプの第1段階において、上記補足的な電位は、まだ、両方のストレージゲートについて、トランスファゲートの一定かつ均等な正電位25よりも正であり、電荷の排出はない。続くタイムランプの第2段階において、上記補足的な電位は、トランスファゲートの一定且つ均等な正電位と比較すると、一方のストレージゲートではより正であり、他方のストレージゲートではより負である。その結果、より正の補足的な電位を有するストレージゲートの下の電荷は、関連するトランスファゲートを介して、関連するフローティングディフュージョンへと、補足的な電位が再度、対応するトランスファゲートの電位と等しくなるように排出される。続くタイムランプの第3段階において、両方のストレージゲートの上記補足的な電位は、上記一定かつ均等な電位よりも高い。その結果、電荷は両方のストレージゲートの下から、それぞれ関連するトランスファゲートを介して、それぞれ関連するフローティングディフュージョンへと排出される。タイムランプは、第3段階が始まるとすぐに停止される。すなわちストレージゲートの電位がそれ以上下がることはなく、第2段階からの電荷の排出のみが実質的に関連する。よって、荷電されたフローティングディフュージョンにこの時点で存在する電荷の量は、両方のストレージゲートからの電荷の量の差に相当する。よって、タイムランプによって2つのストレージゲートの下の電荷の量の減算が行われる。
【0047】
上述のタイムランプを実行後、チャージされた一方のフローティングディフュージョンにおける電荷の量は、放出された放射波21と反射波23との位相差の値に相当する。
【0048】
上記チャージされた一方のフローティングディフュージョンにおける電荷の量は、ここでソースフォロアによって、対応する電圧に変換され、更に処理される。ソースフォロアは、復調ピクセルの評価領域の一部である。ソースフォロアに加えて、評価領域は、リセットスイッチと選択トランジスタとを備える。
【0049】
対象物への距離は、一つの方法によって、対応する電圧から算出され得る。一例によれば、このような方法は、出願人によってEP 2 743 724 A1に記載される。
【0050】
図3は、復調ピクセル50の上面図である。開口部81は、略同様な形状を有する第1ドリフトゲート72によって覆われている。第2ドリフトゲート71は、電気的に分離された状態で、第1ドリフトゲートと交差している。第2ドリフトゲートおよび第1ドリフトゲートは、単一のドリフトゲートのように機能し、光電子が第1ドリフトゲートから第2ドリフトゲートへと搬送されるように、高い電位は第1ドリフトゲートよりも、第2ドリフトゲートに印加される。復調ピクセルは、2つの変調ゲート73を第2ドリフトゲートの一端の対向する位置に備えている。第2ドリフトゲートの反対側には、ストレージゲート74がそれぞれ変調ゲートの隣に配置されている。トランスファゲート75はそれぞれストレージゲートの一端に配置されている。ストレージゲートの反対側には、フローティングディフュージョン76が、それぞれトランスファゲートの隣に配置されている。フローティングディフュージョンは、評価領域とそのソースフォロアとに接続されている。
【0051】
断面線52は、図2における側断面の非比例的な輪郭を概略的に示している。
【0052】
図4は、共通の開口部82を有する4つの復調ピクセル50を示している。共通の開口部82の周囲に配置された復調ピクセル50は、図3に示された復調ピクセル50に正確に対応しており、それぞれ90°回転されている。共通の開口部82と同一の形状を有し、重ねられているのは、中央の共通ドリフトゲート72である。幾何学的に同一な図の構成要素は、図3における対応する装置に対応している。
【0053】
図5は、6×6の復調ピクセル50で構成されたピクセルマトリクス41を示している。当該配列は、共通の開口部82に加えて、共通の評価領域91も形成する。中央の共通ドリフトゲートは、それぞれ共通の開口部82に重ねられている。幾何学的に同一な図の構成要素は、図4における対応する装置に対応している。
【0054】
[参考文献]
TOF距離センサ評価方法は、同出願人によるDieter Huber、Markus LedergerberのEP 2 743 724 A1に記載されている。
【0055】
TOF距離センサの別の評価方法は、Robert Lange、Peter Seitz、Alice Biber、Stefan Lauxtermannの、飛行時間測距のためのCCD及びCMOS技術における復調ピクセル(Demodulation Pixels in CCD and CMOS Technologies for Time−of−Flight Ranging)、IST/SPIE電子撮像に関する国際シンポジウム(IST/SPIE International Symposium on Electronic Imaging)、科学/産業用途のセンサ、カメラ、システムに関する会議II(Conference on Sensors、Cameras、 and Systems for Scientific/Industrial Applications II)、SPIEの会報(Proc. SPIE)、3965A巻(Vol.3965A)、サンノゼ(San Jose)、米国(USA)、2000年1月24日−25日(24th−25th January 2000)に記載されている。
【0056】
裏面電極は、半導体基板61を通じてポテンシャルトンネルによって連絡されていてもよい。ポテンシャルトンネルによってTOF距離センサの裏面電極62に連絡するための装置は、同出願人によるMartin Popp,Beat De Coi,Marco AnneseのUS 8,901,690 B2に記載されている。
【0057】
復調ピクセルは、アナログCCD技術にて実施されてもよく、評価領域は、デジタルCMOS技術にて実施されてもよい。復調ピクセル(CCD)および評価領域(CMOS)の共通の製造方法は、同出願人によるMartin Popp,Beat De Coi,Marco AnneseのUS 8,802,566 B2に記載されている。
【0058】
システム・オン・チップとしての、チップ上での復調ピクセル(CCD、アナログ)および評価領域(CMOS、デジタル)の共通の実施方法は、同出願人によるDe Coi,Martin PoppのEP 2 618 180 B1に記載されている。
【符号の説明】
【0059】
10…TOF距離センサシステム、11…担体、12…ハウジング、13…電子デバイス、20…放射源、21…放出された放射波、22…対象物、23…反射波、24…電子−ホールペア、25…光電子、40…TOF距離センサ、41…ピクセルマトリクス、50…復調ピクセル、51…障壁、52…切断線、60…変換領域、61…半導体基板、62…裏面電極、70…分離装置、71…ドリフトゲート、72…共通ドリフトゲート、73…変調ゲート、74…ストレージゲート、75…トランスファゲート、76…フローティングディフュージョン、77…分離層、80…ストップ、81…開口部、82…共通の開口部、90…評価領域、91…共通の評価領域。
【要約】
本発明は、対象物によって反射された放射波を受波することによって、対象物までの距離を検出するためのTOF距離センサであって、放射源から出射される放射波が、変調周波数によって変調され、複数の復調ピクセルのピクセル画像を記録するためのピクセルマトリクスを備えるTOF距離センサに関する。ピクセルマトリクスは、放射波を裏面で受波するように構成された複数の復調ピクセルで構成される。複数の復調ピクセルは、受波した放射波から荷電担体を発生させるための変換領域と、変調周波数に従って荷電担体を分離するための分離装置と、荷電担体に関して変換領域を分離装置から仕切るためのストップと、を備え、更に、荷電担体を変換領域から分離装置へと通過させるための開口部を備える。TOF距離センサは、少なくとも2つの復調ピクセルがそれぞれ、共通の開口部を形成するように構成されている。
図1
図2
図3
図4
図5